JP2005536226A - ベクターとしての非ヒトヘルペスウイルス - Google Patents
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Abstract
本発明は、それぞれ、動物、ヒトまたは分裂した初代細胞に外来遺伝子および核酸を診断的、治療的および予防的に送達するためのベクターとしての動物ヘルペスウイルスなどの動物ウイルスに関する。前記ウイルスを使用することによって、感染性疾患、自己免疫疾患および腫瘍疾患並びにアレルギーおよび遺伝性疾患の予防および治療を治療することができる。本発明は、さらに、初代ヒト細胞に組換え動物ウイルスをインビトロおよびインビボにおいて効率的に形質導入する手法に関する。本発明は、さらに、(i)先天性および養子免疫応答の診断およびモニタリング並びに(ii)遺伝子治療および(iii)免疫感作の目的のために有用なキットに関する。
Description
本発明は、それぞれ、動物、ヒトまたは分裂した初代細胞に外来遺伝子および核酸を診断的、治療的および予防的に送達するためのベクターとしての動物ヘルペスウイルスなどの動物ウイルスに関する。前記ウイルスを使用することによって、感染性疾患、自己免疫疾患および腫瘍疾患並びにアレルギーおよび遺伝性疾患の予防および治療を実施することができる。本発明は、さらに、インビトロおよびインビボにおいて初代ヒト細胞に組換え動物ウイルスを効率的に形質導入する手法に関する。
ワリセロウイルス属、アルファヘルペスウイルス亜科のメンバー(EHV−1はアルファヘルペスウイルスである)である、ウマヘルペスウイルス1型(EHV−1)は、通常、ウマおよびウマ起源または齧歯類起源の細胞に感染し、複製する。通常、このウイルスによって誘導される疾患は軽度で、世界的にはウマの約90%がこのウイルスを保有しており、動物中で長く生き残る。臨床症状は軽度の呼吸器疾患で、非常に稀に雌ロバの流産および神経疾患である1。
EHV−1の1つの株、Ab4pの全DNA配列は決定されている。EHV−1は、これまでに同定されている8つのウマヘルペスウイルスの1つである。EHV−1およびその近親種、EHV−4はワリセロウイルス属のメンバーであり、EHV−3およびEHV−5〜EHV−8としてアルファヘルペスウイルス亜科に属する。EHV−2およびEHV−5はガンマヘルペスウイルス亜科であり、ウマ集団に広範に分布している1。EHV−1、−4、−3、−5およびEHV−8は、組織特異性、ゲノム、組織化および遺伝子機能に関して密接に関連していると考えられている。EHV−2およびEHV−8は、ガンマヘルペスウイルス亜科に属するが、EHV−1、−4、−3、−5およびEHV−8と全体的なゲノム組織化および遺伝子機能の詳細な点の多くを共有している。
ヘルペスウイルスは、エンベロープを細胞膜に融合することによって標的細胞に侵入する。糖タンパク質は、このような感染の早期段階だけでなく、ビリオンの感染細胞からの流出および直接的な細胞間拡散(ctcs:cell-to-cell spread)に重要に関与する。これまでに、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、原型アルファヘルペスウイルスの11種の糖タンパク質(g)が同定されており、gB、gC、gD、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gLおよびgM3と命名されている。ヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を比較すると、全ての既知のHSV−1糖タンパク質遺伝子がEHV−1に保存されていることが明らかになった。EHV−1糖タンパク質は、HSV−1糖タンパク質の命名法により命名されるが、EHV−1は、gp2と呼ばれるさらに別のエンベロープタンパク質と、グリコシル化されていると報告されている、HSV−1のVP13/14相同物であるテグメントタンパク質とをコードする。アルファヘルペスウイルス亜科は遺伝子的には互いに密接に関連しており、同様の遺伝子を発現し、同様の機序で細胞に侵入するが、この過程並びに流出およびctcsに関与するタンパク質はかなり異なる。例えば、gDは、HSV−1、EHV−1およびウシヘルペスウイルス1型(BHV−1)の侵入およびctcsに絶対に必要とされているが、ワリセロウイルス属の原型メンバー、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella zoster virus)では欠失している4。ウイルス侵入の主要な段階は、(i)ヘパリン−感受性および非感受性の結合、並びに(ii)ウイルスエンベロープと標的細胞の細胞膜との融合に分類することができる。ヘパリン感受性の結合、すなわち、ウイルスエンベロープと細胞表面のグリコサミノグリカンの相互作用によって媒介される一次結合は、仮性狂犬病ウイルス(PRV:pseudorabies virus)、HSV−1およびEHV−1のような数多くのアルファヘルペスウイルス亜科ではgCによって提供される。おそらく、ウイルスエンベロープおよび細胞膜の立体構造変化により、gDと細胞受容体の相互作用によって提供される安定な結合が生じる。安定な結合後、ウイルスと宿主細胞の細胞膜の融合が生じる。この段階は、EHV−1を含むアルファヘルペスウイルス亜科では、少なくともgB、gD、およびgH−gL複合体に関係する過程によって媒介される。しかし、正確な融合機序および融合細孔の形成は不明であり、「融合ペプチド」はまだ同定できていない。糖タンパク質はまた、少なくとも部分的に、アルファヘルペスウイルス亜科のインビボにおける制限された宿主指向性を、すなわち、動物ヘルペスウイルスが、共進化してきた宿主以外の種に感染できないことを決定すると思われる。
最近では、細菌人工染色体(BAC)クローニングおよび突然変異の導入によって大型ヘルペスウイルスゲノムの操作が容易になった。この技法を使用して、EHV−1を含む数種のヘルペスウイルスのゲノムが感染性BACsとしてクローニングされている7,8,9。BACsとしてクローニングされたヘルペスウイルスゲノムの標的突然変異およびランダム突然変異の迅速なプロトコールが使用されており、突然変異は、真核細胞におけるウイルスの増殖に依存せず、大腸菌(Escherichia coli)において実施することができる10。
ヒト遺伝子治療または免疫感作(immunization)に使用可能であると思われる数種のベクターが記載されてきた。これらにはRNAおよびDNAウイルスがある。最も一般的に使用されるベクターはレトロウイルス、ラブドウイルス(rhabodviruses)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)並びにHSV−1、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびヒトサイトメガロウィルス(HCMV)を含むヒトヘルペスウイルスである。RNAウイルス、アデノウイルスまたはAAVに関連する問題は、外来DNAをパッケージングする能力が限られていることであり、通常では鎖長<5kbpのDNAに制限される11。また、アデノ−またはAAウイルスの極めて高いウイルス価はヒト細胞の効率的な形質導入に必要であるが、患者におけるアレルギーまたは毒性反応のリスクを説明している12,13。ヒトヘルペスウイルスはサイズ>100kbpのDNAをパッケージングすることができ、RNA、アデノウイルスまたはAAV系に固有の低いパッケージング能力による限界は、HSV−1、EBVまたはHCMVを使用することによって克服することができる。しかし、ヒトウイルスを使用する大きな欠点は、ほとんどの患者がそのようなウイルスによる感染および/またはワクチン化にすでに遭遇していることである14,15。
従って、本発明の課題は、遺伝子治療方法を成功させ、新規で、効果的な免疫感作スキームを確立する新規ベクター系を提供することである。
本発明の問題は、特許請求の範囲に規定する主題によって解決される。
本発明は、添付の図面を参照することによってより容易に理解することができる。
本明細書において使用する「異種動物」という用語は、本発明によるベクターが感染可能であるが、当該ウイルスの天然宿主または最終宿主(dead-end host)ではない動物、またはその細胞集団をいう。
本明細書において使用する「ベクター」という用語は、動物およびヒトまたは単離したそれらの細胞集団に核酸を導入することができるウイルスまたはその誘導体をいう。
本明細書において使用する「複製能を欠損したEHV(replication-deficient EHV)」という用語は、例えば、ウイルスの複製に必須のゲノム配列の欠失によって、ウマまたは齧歯類起源などの通常は許容状態である細胞または細胞系統(permissive cells or cell lines)において複製しないという意味において遺伝的に改変されているEHV系ベクター(EHV based vector)をいう。
本明細書において使用する「複製能を有するEHV(replication-competent EHV」という用語は、許容細胞系統または初代細胞において複製能を有する組換えウイルスをいう。
本発明は、治療的、予防的または診断的遺伝子送達目的のための、ヒトを天然宿主または最終宿主として使用しない動物ウイルスの使用に関する。このようなウイルスは、ビルナウイルス科(例えば、IBDV、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス)、モノネガウイルス目(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、パラポックス、ヒツジ痘ウイルス、アビポックス)、コロナウイルス科(例えば、伝染性胃腸炎ウイルス、TGEV、鳥類伝染性気管支炎、AIB)、アデノウイルス科(ウシ、ブタ、イヌアデノウイルス)およびヘルペスウイルス科(ウマヘルペスウイルス、EHV)からなる限定するものではない群において見出される。従って、本発明は、ヒトを含む異種の種における普遍的なベクターとして使用するための、このような動物ウイルス、特に動物ヘルペスウイルス、さらに特にEHV−1などのウマヘルペスウイルスの可能性を調査する助けとなった。驚くべきことに、本発明者らは、インビトロおよびインビボにおいて、初代ヒト細胞を含む、多種多様の異種細胞において動物ヘルペスウイルスは、極めて低い粒子数で高い形質導入効率を示すことを見出した。注目すべきことに、(i)ほとんどの動物ウイルスと同様にEHVは、ヒト細胞のように天然の宿主でない異種生物中で複製しないこと、(ii)EHVは、本質的に、長時間持続する体液性免疫応答を誘導しないこと、さらに(iii)形質導入細胞または感染細胞において1つのEHVタンパク質も発現しない組換えEHV由来ベクターを構築することができること、および(iv)最も関連のあるヒトヘルペスウイルスに対して高い抗体価を示すヒト血清はEHVを中和しないことと合わせたこの特徴により、インビトロおよびインビボにおいて高い効率で、反復的な遺伝子送達を可能にするEHV由来ベクターおよび遺伝子送達方法を設計することができる。同時に、このような方法は、ベクターの免疫の誘導を回避する、さもなければ毒性、アレルギー性または自己免疫反応などの有害な副作用の誘導をレシピエントから回避する助けとなる。好ましいウイルス/細胞の組み合わせによると、ヘルペスウイルスはEHV−1であり、細胞は初代ヒト細胞である。さらに好ましくは、インビボにおいてヒトに遺伝子を送達するためのベクターとして組換えEHV−1を使用する。
本発明によると、異種動物およびヒトに遺伝子を送達することができるベクター系が提供される。
本発明の驚くべき態様は、インビトロおよびインビボにおいてEHVは異なる種および初代組織由来の多種多様の細胞に侵入して、効率的に形質導入することができるということに関する。従って、種々の細胞系統の感染以外に、本発明者らは、ニワトリおよびウズラのような鳥類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびヒト細胞を含む脊椎動物起源の初代細胞の感染を証明することができた。
本発明の予想しなかった別の態様は、EHVはヒト細胞を含む試験した実質的に全ての細胞種に侵入し、細胞あたり約100粒子に相当する1未満の感染単位(infectious unit)16,17が、変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)などのマーカー遺伝子の関心対象の細胞への導入に必要とされるということに関する。この態様は、最適な遺伝子送達の平衡を保つと同時に、ベクター免疫の誘導を低下するのに特に重要である。
本発明の予想しなかった別の所見は、例えば、EGFPのEHV媒介性のPBMCsへの遺伝子送達効率は、PBMCsを特異的に刺激することによってまたは例えば、ConAなどのマイトジェンを使用する非特異的な刺激によってかなり増加することができるということである。
本発明の別の態様は、マーカー導入遺伝子が、EGFPを発現する組換えEHVを感染させた後の刺激および未刺激の初代抹消血細胞中で効率的且つ長期間発現されるということに関する。
本発明の驚くべき別の態様は、感染細胞の上清において感染性子孫が存在しない場合におけるEGFPの長期発現によって証明されたように、マーカー導入遺伝子発現は、ヒトCD4+細胞系統MT4などの細胞において数継代にわたって比較的安定して維持されるということに関する。これらの細胞は、EHVにより溶解されないと思われ、いくつかの非許容細胞においてはEHVゲノムのエピソームによる安定な維持によって生じる可能性が高い現象である、増殖性のウイルス複製を明らかに生じさせなかった。
予想しなかった別の所見は、そのウイルスに常に接触している実験室の職員を含むヒトにおいて中和作用のある抗EHV−1抗体が存在しないこと、およびアルファヘルペスウイルス亜科グループの有名なメンバー、例えば、HSV−1および2、ベータヘルペスウイルス亜科、例えば、ヒトサイトメガロウィルス(HCMV)並びに例えば、エプスタイン−バーウイルスなどのガンマヘルペスウイルス亜科などの関連ヒトウイルスに対する高力価の抗血清による交差中和がないことであり、両所見は、免疫感作および遺伝子治療への適用のためのヒトの新規ベクターとして組換えEHVを効率的に使用するために必要な要件を示している。別の所見は、EHVはインビボにおいてマウスの肺細胞に効率的に形質導入することができることである。EGFPの発現は、低用量のEHVの鼻腔内点滴後12日より長い期間にわたって検出することができる。EHVのこのような特性により、系を、例えば、小型動物モデルにおけるインビボにおける治療適用の可能性の試験に利用することができる。
驚くべき別の態様は、EHV系ベクターのインビボにおける投与は、中程度で、短時間の体液性応答を誘導するということにあり、これにより、形質導入または免疫感作の効率を大きく損失することなく反復適用が可能になる。
要約すると、EHV系ベクターは、ヒトにおいて複製する、または少なくともヒトを最終宿主として使用するウイルス由来である現在使用されているベクターを上回る種々の利点を示す。これらの態様をEHVの理論的なパッケージング能力と共に考慮し、外来遺伝子を発現するまたは外来核酸を含有する安全なベクターは、補完/パッケージング細胞系統でのみ増殖されうる条件付きで致死的な突然変異体を導入することによって構築することができることを考慮すると19、本発明によるEHVベクター系をいくつかの異なる方法で調査することができる。
従って、本発明の一目的は、ヒトを宿主として使用せず、自己複製能を有するまたは欠損している、感染多重度1未満でインビトロにおいて天然宿主でない生物由来の初代細胞に形質導入する能力を有する組換え動物ウイルス、好ましくは、ビルナウイルス科(例えば、IBDV、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス)、モノネガウイルス目(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、パラポックス、ヒツジ痘ウイルス、アビポックス)、コロナウイルス科(例えば、伝染性胃腸炎ウイルス、TGEV、鳥類伝染性気管支炎、AIB)、アデノウイルス科(ウシ、ブタ、イヌアデノウイルス)およびヘルペスウイルス科(ウマヘルペスウイルス、EHV)に関する。好ましくは、本発明による組換え動物ウイルスは、約106〜108pfuの範囲の粒子数でインビボにおいて細胞に形質導入する能力をさらに有する。好ましくは、初代細胞はヒト由来である。本発明による組換え動物ウイルスは、好ましくは、導入遺伝子を含む。
本発明のさらに別の態様は、本発明による組換え動物ウイルスの薬剤または診断剤またはワクチンとしての、好ましくは遺伝子ターゲティングベクターとしての使用に関する。
本発明のさらに別の態様は、本発明による組換え動物ウイルスで形質導入した初代細胞に関する。
本発明によるこのような複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスは、動物、例えば、細胞が由来する生物がそのウイルスの天然宿主でない、種々の起源の哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現するために使用することができる。さらに、本発明によるこのような複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスは、予防的または治療的目的で、例えば、ウイルス特異的または腫瘍特異的な免疫応答を誘導するために、または、抗原特異的な免疫寛容、アネルギーを形成するために、または、抗原特異的B細胞、T細胞もしくはその特異な(distinct)サブセットを枯渇させるために、動物、例えば、家畜もしくは愛玩動物またはヒトにおいてワクチンとして免疫感作方法に使用することができる。また、複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルス、例えば、ウマヘルペスウイルスは、細胞の、ウイルスのまたは任意の他の疾患に関連する遺伝子の発現を修復、代償または調節して、常染色体劣性遺伝的疾患、癌、自己免疫疾患または感染性疾患などの遺伝的疾患を治療するために、ヒトの体細胞遺伝子治療のためのベクターとして使用することができる。本発明によるこのような複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスは、遺伝子組換え動物を作製するための遺伝子送達系としても使用することができる。さらに、本発明は、ワクチン化、感染性疾患、癌または自己免疫疾患により形成された抗原特異的T細胞応答を診断または追跡するために選択した抗原を発現する、本発明によるこのような複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスの使用に関する。さらに、例えば、(i)2つの既知のEHV DNA複製開始点であるORIsおよびORILの一方と、(ii)上記適用のために、この場合では複製能力がない感染性のこのような組換えウマヘルペスウイルスを作製するために、パッケージング細胞系統からイントランスで提供される予め形成されたカプシドへ単位長さのウイルスDNAを組込むために必要なパッケージング配列と、を含有する導入遺伝子構築物を少なくとも含有するキットを、本発明により構成することができる。さらに具体的には、このような試験キットにより、感染性および自己免疫疾患、癌並びにアレルギーの診断、予防、治療および治療モニタリングに関連するBおよびT細胞エピトープである、異種または同系細胞において発現した、特異なポリペプチドを同定するために、導入遺伝子構築物への遺伝子ライブラリーのサブクローニングが可能になる。
複製能力のあるウイルスは、材料と方法に記載し、図1に例示するように構築することができる。簡単に説明すると、BACクローニングおよび組換え技術を利用して、ウイルス増殖に影響を与えないで、またはウイルス増殖にわずかしか影響を与えないで、欠失されてもよい遺伝子内領域または非必須遺伝子に外来遺伝子またはDNA配列を完全または部分的に挿入またはそれと置換することができる。このような非必須遺伝子の例はgp2、gC、gEまたはgI遺伝子である(15)。
複製能力のないウイルスは、単独または組合せによりウイルス複製に必須である、例えば、EHV−1遺伝子64によってコードされる唯一の前初期遺伝子(immediate early gene)などの、いくつかのオープンリーディングフレームのEHVゲノムからの欠失に基づくことができる。本質的には、EHV−1は、それ自体並びに全ての非構造タンパク質および構造タンパク質の発現を調節する、1つだけの前初期(IE)トランス活性化因子を発現するので、このIE遺伝子の欠失は、複製能力のないEHV−1を構築する非常に効率的な手段となる。この方法を使用すると、補完作用のある細胞系統にトランスフェクトし、そこで増殖することができる、最初は、IE遺伝子を除いた完全なEHV−1ゲノムを含有するEHV−1系BACとして、EHV−1由来ベクターを構築することができる。このような組換えEHV−1遺伝子ベクターは、例えば、ヒト起源の標的細胞に感染することができる。しかし、インビトロまたはインビボにおける標的細胞への侵入後は、EHV−1由来でない異種プロモーター/エンハンサーの制御下にある導入遺伝子だけが発現され、抗EHV−1免疫応答を完全に回避することができる。
遺伝子治療ベクターは、さらに、「無気力な(gut-less)」EHVの構築物によって開発することができる。このような無気力なEHV、好ましくはEHV−1由来ベクターは、本質的に、2つの既知のEHV DNA複製開始点であるORISおよびORILの一方20−22、並びに予め形成されたヌクレオカプシドへの単位長さのウイルスDNAの組込みに必要なパッケージング(pac)配列22−24を含有するEHV−1由来「レプリコン」ゲノムに基づいている。これらの突然変異体「レプリコン」ゲノムはまた、必須のヌクレオカプシド、テグメントまたはエンベロープ要素からなる遺伝子も含有し得る。このような「レプリコン」ゲノムは、ウイルスパッケージング配列、ORISおよび/またはORILを欠失するが、イントランスにおけるウイルスDNAパッケージングのために必要で必須の、ベクターから除去された遺伝子を提供し、補完する突然変異体EHV−1ゲノムを保有する細胞系統の助けによりパッケージングされ得る。これらの細胞系統はpac部位をコードしないので、「レプリコン」ゲノムだけがパッケージングされ、従って純粋な組換えウイルス集団を提供する。
パッケージング細胞系統はまた、種々の起源の安定な細胞系統の形態でも構築することができ、この場合には、複製能力を欠損するEHV−1由来の「レプリコン」ゲノムは、エプスタイン−バーウイルス(EBV)由来のORIpを含有し、従って、EBV由来のEBNA−1タンパク質を発現するパッケージング娘細胞に分裂する。EBNA−1は、補完作用のある細胞系統によって、例えば、選択のためのG−418耐性を使用して、当該パッケージ細胞に遺伝子を導入後に安定に産生されうる。EBNA−1は、ORIpに結合することによって、EHV−1由来の「レプリコン」ゲノムの分裂および子孫細胞への安定な維持を媒介する23。
標的細胞または標的組織における導入遺伝子情報の維持を延長するために、補完作用のあるパッケージングまたはプロデューサー細胞においてEHV、好ましくはEHV−1ベクター粒子にパッケージングされる「レプリコン」ゲノムにEHV「EBV ORIpおよびEBNA−1 ORFを挿入することもできる。EHVベクターによる標的細胞または標的組織の形質導入が成功すると、導入遺伝子情報を含有するEHV由来の「レプリコン」ゲノムは、EBNA−1のORIpへの結合に媒介されて、有糸分裂中に娘細胞に分裂し、それによって形質導入された細胞の核にEHV由来の「レプリコン」ゲノムが長期間維持される。または、導入遺伝子情報の長期間の維持は、マトリックス結合部位(MAT)をEHV由来レプリコンゲノムに挿入することによっても達成することができる。
本発明によるEHV由来ベクターの、EHV糖タンパク質に関係のない特異的な細胞種への標的化が可能である。例えば、細胞へのEHV−1の結合は、ビリオンが細胞表面のグリコサミノグリカンにgCを介して結合することによって媒介される18。安定な結合および受容体結合は、これまで分析された全てのヘルペスウイルス科(Herpesvirinae)ではgDによって媒介されるが5、ウイルスエンベロープと細胞膜の融合は、gB、gDおよびgH−gL複合体に関係するまだ未知の過程によって生ずる3,24。しかし、gB、gDおよびgH−gLが存在しない場合の、感染細胞からのウイルスの効率的な放出が証明されている25。
例として、シュードタイプEHVベクターは数種の手段によって作製することができる。例えば、ウイルスゲノムからgB、gDおよびgH−gLそれぞれの単独または組み合わせを欠失させ、補完作用のあるそれぞれのパッケージング細胞系統を構築することによって、単一または多重欠失型のEHV−1を作製することができる。これらのウイルスは、「非感染性」ウイルスが放出される補完作用のない細胞に感染させるために使用することができる。表面に露出した膜受容体レベルで細胞種または組織特異性を媒介する、関心対象の受容体標的タンパク質、例えば、gp120/41を、その細胞系統からのそれぞれの遺伝子の発現によって、このウイルスの子孫のエンベロープに挿入することができる。または、例えば、関心対象の受容体標的タンパク質によってEHV−1糖タンパク質gB、gDおよびgH−gLの全てまたは一部を置換することによって、gB、gDおよびgH−gLコード領域を欠失するEHV−1系BACゲノムを直接シュードタイプ化することもできる。次いで、受容体および共同受容体(coreseptor)と思われるものを発現する許容状態の産生細胞系統でこのようなウイルスを容易に産生することができる。gp120/41シュードタイプウイルスの例では、受容体および共同受容体分子は、初代ヒトCD4受容体およびヒト共同受容体、例えば、CXCR4またはCCR5である。必要に応じて、例えば、標的細胞におけるEHV由来の遺伝子産物の発現を回避するために、および/またはEHV由来ベクター(無気力なベクター)のパッケージングサイズを増加するために、gB、gDおよびgH−gL以外に、IE遺伝子および/または他の遺伝子をウイルスゲノムから欠失させることができ、従って、上記パッケージングおよび産生細胞系統において補完される必要がある。
細胞種または組織特異性を媒介する受容体標的タンパク質は、種々の起源由来、例えば、(i)ウイルス、例えば、シュードタイプレトロウイルスによるCD4陽性細胞の特異的な形質導入を支持するHIV−1のgp120/gp41エンベロープタンパク質、(ii)密接な細胞間接触を天然に媒介することが既知の細胞受容体、(iii)異種の膜貫通ドメインを介してビリオン表面に固定されることによって、例えば、(例えば、選択されたケモカインの性質に応じて)抗原提示細胞、未処理のまたは記憶TまたはB細胞への接触を媒介することができる、補体成分またはケモカインなどの同族の細胞受容体を認識することが既知の可溶性リガンド、(iv)遺伝子工作した膜結合抗体、Fab断片または1本鎖抗体などのそれらの代理物、PSTI(膵分泌性トリプシンインヒビター)の誘導体または例えば、ファージもしくはリボソームディスプレイ技術によって選択された任意の別の足場タンパク質、または(v)受容体標的タンパク質もしくは膜融合媒介タンパク質の適当な部位に挿入された補完性決定領域または受容体相互作用決定因子を提示する部分などの由来であってもよい。さらに、例えば、EHV−1ベクター粒子の標的細胞への効率的な融合および侵入は、独立して達成されてもよく、または、例えば、VSV−Gエンベロープタンパク質、MoMLVエンベロープタンパク質もしくはGaLVエンベロープタンパク質など、完全もしくは部分的に非選択性の広宿主性(amphotropic)のウイルスエンベロープタンパク質の発現もしくは同時発現によって細胞種および組織特異的結合を助けてもよい。
例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターなどの非EHVベクターの送達にEHV由来ベクターを使用することができる。このようなハイブリッドEHVベクターを構築するためには、EHV由来ベクター粒子にパッケージングされるEHV由来の「レプリコン」ゲノムは、EHV由来の「レプリコン」ゲノムの複製および補完作用のあるパッケージング細胞系統においてEHVベクター粒子へのパッケージングに必要な最少情報以外に、導入遺伝子情報をコードするレトロまたはレンチウイルスの「レプリコン」DNAゲノムを少なくとも含有する必要がある。EHV「レプリコン」ゲノムに挿入されるレトロまたはレンチウイルスの「レプリコン」DNAゲノムは、レトロまたはレンチウイルスRNAレプリコンの作製、レトロまたはレンチウイルス粒子へのパッケージング、逆転写、レンチウイルス「レプリコン」ゲノムの核標的化および宿主細胞ゲノムへの導入並びに導入遺伝子の発現に必要な全てのシス作用型要素を少なくとも提供する必要が必ずある。感染性であるが、複製しないこのようなハイブリッドEHVに基づいたベクター粒子は、GagPolなどのパッケージング機能および表面に露出した標的タンパク質、例えば、VSV Gタンパク質をイントランスで提供するレトロまたはレンチウイルスパッケージング細胞に感染させることによって、レトロまたはレンチウイルスベクター粒子を作製するために使用することができる。
または、レトロまたはレンチウイルスの「レプリコン」DNAゲノム以外に、EHV由来のベクター粒子にパッケージングされるEHV由来の「レプリコン」ゲノムは、(i)野生型またはコドン最適化したレトロまたはレンチウイルスgagpolパッケージング遺伝子、および(ii)レトロまたはレンチウイルスベクターの細胞特異性を媒介する表面に露出した標的タンパク質をコードするオープンリーディングフレームも含有することができる。このような複合体ハイブリッドEHV系ベクター粒子も、レトロまたはレンチウイルスベクター粒子をインビトロにおいて作製するために使用することができる。このような複合体ハイブリッドEHV系ベクター粒子の好ましい使用は、インサイチューまたはインビボにおける使用であり、ハイブリッドEHV系ベクター粒子を細胞に感染させた結果、レトロまたはレンチウイルス粒子がインサイチューにおいて作製され、次いで導入遺伝子情報を宿主細胞ゲノムに組込むことによって標的細胞の安定な形質導入を可能にすると考えられる。
非EHV−1由来ベクターを送達するための例えば、EHV−1由来のベクターの使用の別の例は、アルファウイルス(例えば、セムリキ森林熱ウイルスSFV、シンドビスまたはベネズエラ脳炎ウイルスVEE)レプリコンの標的細胞への送達である。このようなアルファウイルス由来のレプリコンは、通常、アルファウイルスの非構造タンパク質をコードし、トランス活性化(transactivating)するアルファウイルスの非構造タンパク質によって制御される導入遺伝子の強力な細胞質転写に必要なアルファウイルスプロモーターとなる配列を含有する単位の核転写を誘導する、例えば、ウイルスの、細胞種−特異的または誘導性プロモーターによって調節される。転写単位におけるこれらの要素の順序の例は5’−CMV−プロモーター/エンハンサー−アルファウイルス−非構造タンパク質−アルファウイルスプロモーター−導入遺伝子−3’である。このようなハイブリッドEHV−1ベクターを構築するためには、EHV−1由来のベクター粒子にパッケージングされるEHV−1由来の「レプリコン」ゲノムは、EHV−1由来の「レプリコン」ゲノムの複製および補完作用のあるパッケージング細胞系統におけるEHV−1ベクター粒子へのパッケージングに必要な最少情報以外に、導入遺伝子情報を含む上記アルファウイルスの「レプリコン」を少なくとも含有するべきである。
導入遺伝子情報の転写は、任意の異種の、例えば、ウイルス、細胞または任意の種類のハイブリッドプロモーター/エンハンサー単位によって誘導することができる。構成的な転写は、例えば、ウイルスのヒトサイトメガロウィルス(HCMV)前初期プロモーター/エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーター/エンハンサーもしくはアデノウイルス主要/後期プロモーター/エンハンサーなどの種々のウイルスプロモーター/エンハンサー要素またはアクチンプロモーターなどのハウスキーピング遺伝子の発現を誘導する細胞プロモーター/エンハンサー単位によって達成されうる。または、導入遺伝子発現の細胞種特異的標的化は、例えば、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、MHCクラスIまたはII分子、CD4受容体、インスリン、血液凝固カスケードの因子等などの発現を調節するものなどの細胞種または組織特異的なプロモーター/エンハンサー要素を使用することによって達成または支持されうる。または、例えば、ホルモン誘導性P/E要素などの誘導性プロモーター/エンハンサー要素または好ましくは、テトラサイクリンもしくはその類似物によって誘導されうるプロモーターエンハンサー単位を利用することができる。EHV−1に基づいたベクターによって送達される転写単位は、例えば、診断的、予防的または治療的目的のためのポリペプチド、アプタマーもしくはイントラマー、リボザイム、アンチセンス構築物または短干渉性RNAs(siRNAs)などの種々の生物学的に活性な化合物をコードすることができる。このような組換えEHV−1由来のベクターによって単独または組み合わせて送達されるこのような生物学的に活性な分子は、免疫応答を誘導、増強および調節するため、免疫寛容を破壊もしくは誘導するため、アネルギーを誘導するためまたは特異的なTもしくはB細胞またはそのサブセットを欠失させるために使用することができる。
従って、EHV系ベクターは、診断的、予防的または治療的目的のために細胞培養物において任意の種類のポリペプチドを作製するために簡単に使用することができる。
または、EHV由来のベクターは、ウマ以外の動物およびヒト起源の初代標的細胞またはウマ以外の動物およびヒト起源の細胞系統にインビトロおよびインビボにおいて感染または形質導入するために使用することができる。
半ビボにおいて選択し、作製し、操作し、培養することができるウマ以外の任意の動物およびヒト細胞系統または細胞集団がインビトロにおいて形質導入される対象の標的細胞となりえる。好ましくは、これらの細胞は、動物、例えば、家畜もしくはペットまたはヒトから単離した初代免疫細胞などの初代細胞であり、さらに好ましくは多能性前駆細胞、胚性幹細胞、骨髄系幹細胞、血液系幹細胞、造血幹細胞、B細胞、T細胞またはそれらの別個のサブセットもしくは誘導体である。最も好ましくは、これらの細胞は、それぞれ、B細胞、単球/マクロファージ系統の細胞、樹状細胞またはその誘導体などの抗原提示細胞である。または、これらの細胞は初代腫瘍細胞である。
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはネオマイシンなどの陽性もしくは陰性選択マーカーを使用して、または例えば、蛍光細胞分析法(FACS)のためのNGFRなどの免疫学的マーカーまたはMilenyi BioTechもしくはDynal社製のような磁気ビーズ技術を使用する形質導入細胞の物理的濃縮を使用して、形質導入が成功した細胞を選択することができる。選択した細胞は自己増殖しても、またはさらに具体的には、抗原特異的T細胞などの免疫細胞を増殖するために使用することができる。形質導入した細胞は、例えば、細胞培養上清から分泌されるポリペプチドなどの成分を精製するために、培養でさらに増殖することができる。好ましくは、治療的または予防的目的のために、形質導入した細胞をヒト、愛玩動物、家畜または実験動物に再度導入することができる。
例えば、MHCクラス−Iおよびクラス−IIに制限されるT細胞エピトープおよび/またはB細胞などの関連エピトープの免疫系への望ましい提示を実施するために、本発明による複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスを使用した、好ましくは、細胞、好ましくは初代、最も好ましくは初代ヒト細胞の半ビボにおける形質導入を使用して、選択した疾患関連抗原、キメラまたはハイブリッドタンパク質、例えば、ウイルス抗原、腫瘍抗原を提示するエピトープまたはエピトープ列(strings)、自己免疫もしくはアレルギー反応の原因となる抗原またはエピトープを細胞、さらに具体的には抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞またはその誘導体にそれぞれ送達することができる。免疫応答の強度および種類の成果は、例えば、樹状細胞などの形質導入した細胞において、Th1/Th2バランスに影響を与えるため、規定したサブユニットの免疫細胞を誘引するため、および免疫寛容を破壊するために、例えば、IL−2、gIFN、IL−12、IL−18、IL−10、IL−4、IL−6(単独または組み合わせて)などの選択したサイトカインおよび/または例えば、Rantes、MIP1a、MIP1β、SDF−1、SLC、ECL、BCA−1、DC−CK1、IP−10またはその誘導体(単独または組み合わせて)などのケモカインを、例えば、同時発現することによって影響され、調節されうる。別の方法としてまたは追加の方法として、免疫の誘導から例えば、アネルギーを誘導することによる末梢T細胞免疫寛容にスイッチするために、例えば、リーディングフレーム特異的リボザイム、アンチセンスRNAsまたはsiRNAsを同時転写することによって、同時刺激シグナル、例えば、B7.1、B7.2、CD80、CD86などの細胞内シグナリングに関与する細胞表面受容体またはリガンドの発現レベルを形質導入した細胞において調節することができる。さらに、形質導入した細胞にfas/fasL系を使用することによって、抗原特異的T細胞を枯渇させ、表現型の上では免疫寛容を生じることができる。
または、本発明による複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスを使用した細胞の半ビボにおける形質導入を、例えば、トランス優性ネガティブ突然変異体、分子デコイ、リボザイム、アンチセンス構築物またはsiRNAsを送達することによって、細胞、ウイルスまたは任意の他の疾患に関連する遺伝子の発現を修復、代償または調節して、常染色体劣性遺伝的疾患、癌、自己免疫疾患または感染性疾患などの遺伝的疾患を治療するために、ヒトの体細胞遺伝子治療のためのベクターとして使用することができる。さらに具体的には、例えば、マウスおよび家畜などの遺伝子組換え動物を作製するために、形質導入した胚性幹細胞を使用することができる。
初代ヒト細胞のインビトロにおける形質導入は、例えば、体液性、好ましくは細胞性の、例えば、MHCクラスIおよびMHCクラスII限定の、特にCD4および/またはCD8陽性T細胞応答を同定、具体化およびモニターするために、診断目的に使用することもできる。例えば、精製PBMCs、好ましくは精製抗原提示細胞、最も好ましくは精製樹状細胞またはその誘導体は、免疫学的な標的タンパク質またはその誘導体を発現する複製能力のあるまたは複製能力のない組換えEHV−1に感染させることができる。または、全血試料に、関心対象の導入遺伝子を発現する組換えEHV−1による感受性細胞の感染を直接実施して、選択したエピトープの免疫細胞へのMHCクラスIIおよび/またはMHCクラスI限定提示を実施することができる。抗原特異的なT細胞のその後の刺激は、例えば、3Hチミジンもしくはブロモデソキシウリジンの取り込みによるT細胞増殖の測定、ELISPOTアッセイにおけるサイトカインおよびケモカイン産生細胞の定量などの種々の手段によって、または別の方法としてFACS分析によって、または標準的なクロム放出アッセイを構成することによってモニターすることができる。さらに、例えば、互いに異なる細胞集団からcDNAsを取り出す結果として得られる遺伝子ライブラリーを複製能力のあるまたは複製能力のないEHV−1由来ベクターにクローニングしてベクター集団を作製し、次いでこれに上記に概略した手法による詳細な免疫学的分析を実施して、自己免疫疾患、腫瘍除去および感染性疾患の抑制に関与するMHCクラスIおよびMHCクラスII制限T細胞を同定し、特徴づけることができる。
ヒト、ペットおよび家畜にEHV特異的な既存の免疫が存在しないことを利用し、例えば、初代ヒト細胞の低粒子数による効率的な感染を考慮することによって、本発明の別の好ましい実施態様は、予防的または治療的目的のために標的細胞に事前に半ビボ形質導入を行うことなく、ヒトまたは愛玩動物または家畜にインビボおよびインサイチューにおいてEHV−由来ベクターを直接投与することである。
特に、極めて低い感染多重度により、BおよびT細胞などの初代ヒト細胞の効率的な感染が可能になること並びにMOIs<1はインビトロにおいてヒト細胞系統に効果的に感染するのに十分であることを証明している本発明者らの所見は、EHVベクター粒子によるインビボにおける遺伝子送達は、アデノウイルス媒介性の遺伝子送達と比較して約100〜5000倍効率が良いことを強く示唆している。従って、ヒト、愛玩動物および家畜にインビボにおいて遺伝子を送達するためにこのような低粒子数(106〜108pfu、アデノウイルスベクターと比較して、100〜5000倍低い)のEHV系ベクターを使用する利点は、例えば、アデノウイルスベクターと比較して、毒性の副作用、アレルギーまたは自己免疫疾患を誘導する可能性が低いことである。
このような比較的低い数のEHV−由来の複製能力のないベクター粒子は、そのウィルスベクターに対する免疫応答を少なくする。この事実を、それ自体が短命のEHV特異的体液性免疫応答と合わせて考慮すると、ベクターとして全く同じEHV株を使用して短い間隔で反復追加免疫投与を行うことができ、従って種々の抗原、遺伝子またはDNA配列を送達するための普遍的な搬送体としてEHV由来のベクターを使用することができる。
本発明による複製能力のない動物ウイルス由来のベクターの場合には、例えば、パッケージング後のEHVレプリコンが、例えば、EHVがコードする全初期遺伝子を欠失する場合には、この効果はさらに拡大されうる64。このようなIE遺伝子を欠失するEHV由来ベクターは、EHVタンパク質を全く発現しないで標的細胞にインビボにおいて感染および形質導入することができるので、感染または形質導入が成功している細胞がEHV特異的な免疫応答により排除されない。
それ以外にも、EHV由来のベクターは、PBMCsおよび腫瘍細胞などの分極していない細胞に主に形質導入する傾向を示す。
従って、半ビボにおける標的細胞の形質導入以外に、このような複製能力のあるまたは複製能力のない組換えウマヘルペスウイルスは、予防的または治療的な目的のために、例えば、ウイルスまたは腫瘍特異的な免疫応答を誘導するため、抗原特異的な免疫寛容を形成または破壊するため、抗原特異的なB細胞、T細胞または別個のサブセットを枯渇させるために、動物、例えば、愛玩動物および家畜のワクチンとして免疫感作方法においてインビボまたはインサイチューにおいて直接使用することもできる。
本発明によるこのような複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスのインサイチューまたはインビボにおける直接投与は、例えば、MHCクラスIおよびクラスII制限T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープなどの関連するエピトープを免疫系に好ましく提示するために、選択した疾患関連抗原、キメラまたはハイブリッドタンパク質、例えば、ウイルス抗原、腫瘍抗原を示すエピトープまたはエピトープ列(strings)、自己免疫またはアレルギー反応の原因となる抗原またはエピトープを免疫系、さらに具体的には抗原提示細胞、最も好ましくは樹状細胞またはその誘導体に送達することができる。免疫応答の強度および種類の成果は、Th1/Th2バランスに影響を与えるため、規定したサブユニットの免疫細胞を誘引するためおよび免疫寛容を破壊するために、例えば、IL−2、gIFN、IL−12、IL−18、IL−10、IL−4、IL−6(単独または組み合わせて)などの選択したサイトカインおよび/または例えば、Rantes、MIP1a、MIP1β、SDF−1、SLC、ECL、BCA−1、DC−CK1、IP−10またはその誘導体(単独または組み合わせて)などのケモカインを、例えば、同時発現することによって影響され、調節されうる。別の方法としてまたは追加の方法として、免疫の誘導から例えば、アネルギーを誘導することによる末梢T細胞免疫寛容にスイッチするために、例えば、リーディングフレーム特異的リボザイム、アンチセンスRNAsまたはsiRNAsを同時転写することによって、同時刺激シグナル、例えば、B7.1、B7.2、CD80、CD86などの細胞内シグナリングに関与する細胞表面受容体またはリガンドの発現レベルを形質導入した細胞において調節することができる。さらに、形質導入した細胞にfas/fasL系を使用することによって、抗原特異的T細胞を枯渇させ、表現型の上では免疫寛容を生じることができる。
本発明による複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスをヒトの体細胞遺伝子治療のベクターとしてインビボにおいて使用して、細胞、ウイルスまたは任意の他の疾患に関連する遺伝子の発現を修復、代償または調節して、常染色体劣性遺伝的疾患、癌、自己免疫疾患または感染性疾患などの遺伝的疾患を治療することができる。
望ましい抗原、トランス優性ネガティブ遺伝子突然変異体、リボザイム、アンチセンスRNAsまたはsiRNAsをレシピエントに送達するために異なる投与経路を使用することができる。送達経路の範囲は、(i)例えば、肝細胞を形質導入するために複製能力のあるまたは複製能力のない組換えウマヘルペスウイルスを門脈に注射することによるインサイチュー投与、(ii)遺伝子を肺に送達するための吸入、(iii)例えば、粘膜応答を形成するための鼻腔内、直腸内または膣内投与、(iv)特異的な抗原提示細胞を標的とするための皮下または皮内注射、(v)筋肉内投与、(vi)静脈内注射がある。
免疫系に抗原または核酸を送達する別の方法は、(i)複製能力のあるまたは複製能力のない組換えウマヘルペスウイルスの感染後に細胞を封入化(encapsulate)すること、または(ii)封入化または別の方法で固定もしくは区画化した細胞に本発明による複製能力のあるまたは複製能力のない組換え動物ウイルスを感染させ、感染させた封入または固定したこのような細胞を、特定の器官に向けることによって全身的またはインサイチューにおいてレシピエントに投与することである。このような細胞は、(i)本発明による感染性であるが、複製能力のない動物ウイルスの作製をサポートするパッケージング細胞であっても、または(ii)望ましい抗原の適当な発現および分泌を可能にする同質(syngenic)の遺伝子細胞、細胞集団または細胞系統であってもよい。
従って、例えば、導入遺伝子レポーターをコードするDNA配列をインビトロにおいてヒト以外の起源およびヒト起源の種々の細胞に送達するための普遍的なベクターとしてEHV−1が作用できるかどうかを分析することは本発明の目的の1つであった。さらに具体的には、本発明の一目的は、EHV−1がインビトロおよびインビボにおける遺伝子の発現のための普遍的なベクターとして作用して、ヒト並びに最も重要な哺乳類および鳥類種の感染性疾患に対する免疫を形成することができるかどうかを分析することである。本発明の別の目的は、EHV−1がヒトの抗腫瘍ワクチンとして使用できるかどうかを分析することである。さらに、EHV−1由来ベクターが、遺伝子治療目的、遺伝子組換え動物の作製または診断目的のために大型のDNAを用いて細胞を安定に形質導入するために使用できるかどうかを分析することは本発明の一目的であった。本発明の別の目的は、EHV−1がインビトロにおける適用のためおよび種々の細胞種におけるマウス、ヒトまたは任意の他のゲノムのBAC/PACライブラリーの機能的な試験のための普遍的なベクターとして使用できるかを分析することである23。
特に、高パッケージング能力、細胞あたり低いウイルス数においてのマーカー遺伝子の極めて効率的な送達、ヒト血清による中和がないこと、活発に複製する細胞において潜伏感染を樹立することができることおよびマウスモデルにおいてインビボにおいて効率的で、持続的な導入遺伝子発現を媒介することができることに関しては、EHV−1は、診断的、予防的および治療的目的のために動物およびヒトにおいてベクターとして使用するための極めて有用な新規ツールであることを証明することができる。
体系的に使用し、適用すると、これまでは未知の特性を有する新規送達系を形成する、ヒト、愛玩動物および家畜のベクターとして使用されている他の系を上回るEHV−1の利点が数多くある。これらには、(1)極めて低い粒子数においてヒトなどの異種の種に非常に効率的に感染できること、(2)中和作用のある抗EHV−1抗体がないことおよび(3)関連するヒトウイルスの交差−中和がないこと、(4)EHV自体がごくわずかのベクター特異的免疫応答を誘導するが、(5)補完作用のある/パッケージング細胞系統において増殖することができ19、レシピエント細胞においてEHV由来タンパク質を1つも発現しない安全で、条件的致死性の突然変異体を作成することによってさらに低下することができること、(6)100kbpをはるかに超えるEHV−1の理論的なパッケージング能力並びに外来核酸を発現または送達するEHV−1は小型の動物(齧歯類)モデルにおいて容易に試験することができること24が挙げられる。
本発明を実施するために、本発明者らは以下の材料と方法を使用した。
[材料]
〔ウイルスおよび細胞〕
非病原性EHV−1ワクチン株RacH(継代256代、26)の誘導体を使用し、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したダルベッコの最小必須培地(DMEM)で増殖したRK13細胞で増殖させた。全ての感染実験において、感染性BACクローンpRacHから再構成した非病原性RacHウイルスを使用した(図1)。pRacHから再構成したウイルスは糖タンパク質gp2遺伝子(遺伝子71)を欠失しており、HΔgp2と名づけた7,8。対照ウイルスとして、GFPを発現するウシヘルペスウイルス1型(BHV−1)、Schoenboeken株を使用した。BHV−1の場合には、ウイルスは感染性BACクローンpBHV−1から再構成した。pBHV−1から再構成したBHV−1はBHV−1ΔgEと名づけ、gEオープンリーディングフレーム(ORF)を欠失しており、その代わりにGFP発現カセットを含むミニFプラスミドpHA2を挿入した。
〔ウイルスおよび細胞〕
非病原性EHV−1ワクチン株RacH(継代256代、26)の誘導体を使用し、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したダルベッコの最小必須培地(DMEM)で増殖したRK13細胞で増殖させた。全ての感染実験において、感染性BACクローンpRacHから再構成した非病原性RacHウイルスを使用した(図1)。pRacHから再構成したウイルスは糖タンパク質gp2遺伝子(遺伝子71)を欠失しており、HΔgp2と名づけた7,8。対照ウイルスとして、GFPを発現するウシヘルペスウイルス1型(BHV−1)、Schoenboeken株を使用した。BHV−1の場合には、ウイルスは感染性BACクローンpBHV−1から再構成した。pBHV−1から再構成したBHV−1はBHV−1ΔgEと名づけ、gEオープンリーディングフレーム(ORF)を欠失しており、その代わりにGFP発現カセットを含むミニFプラスミドpHA2を挿入した。
ヒト細胞系統は、CD4+T細胞系統MT4(MRC ARP017)、ヒト黒色腫細胞系統MeWo(ATCC HTB-65)、肝細胞癌細胞系統HuH7(ATCC CCL-185)、腎臓癌細胞系統293(ATCC CRL-1573)、肺癌細胞系統H1299およびヒト子宮頚癌細胞系統HeLa(ATCC CCL-2)であった。本発明者らはまた、ウシMadin Darbyウシ腎臓(MDBK、ATCC CCL-22)細胞、Madin Darbyイヌ腎臓(MDCK、ATCCCCL-34)、ネコ胚細胞(Insel Riemsの連邦動物ウイルス病研究センターの細胞系統コレクション、RIE138)、ブタ腎臓細胞系統PK15(ATCC CCL-33)並びに初代ニワトリ胚細胞(CEC)よびウズラ筋肉QM7を使用した27。細胞系統は、10%FCSを添加したDMEMで維持した。初代ヒト、ブタ、ウシまたはウマ抹消血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)は以下のように調製した。10ミリリッターの静脈血または臍帯血を、2%クエン酸ナトリウム溶液2mlに採取した。PBMCまたは臍帯幹細胞は、Ficoll(Histopaque(登録商標)、Sigma)を使用した密度勾配遠心分離により単離した。PBMCはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、RPMI(Gibco-BRL)に懸濁させた。PBMCは未処理のままか、またはHΔgp2もしくはBHV−1ΔgEウイルス接種の24〜48時間前に1mlあたり5μgの濃度のコンカナバリンA(conA)で刺激した。
[方法]
〔1段階増殖動態およびウイルス価測定〕
1段階増殖動態は、感染多重度(m.o.i.)3で24ウェルプレートに接種した1×105細胞の感染後に測定した。ウイルスは氷上で2時間付着させ、次に37℃において1時間の浸透期間をとった。時間シフト後示した時点において、感染体の上清を回収し、RK13細胞(EHV−1)またはMDBK細胞(BHV−1)で培養することによって両方の調製物のウイルス価を測定した。
〔1段階増殖動態およびウイルス価測定〕
1段階増殖動態は、感染多重度(m.o.i.)3で24ウェルプレートに接種した1×105細胞の感染後に測定した。ウイルスは氷上で2時間付着させ、次に37℃において1時間の浸透期間をとった。時間シフト後示した時点において、感染体の上清を回収し、RK13細胞(EHV−1)またはMDBK細胞(BHV−1)で培養することによって両方の調製物のウイルス価を測定した。
〔間接的免疫蛍光およびフローサイトメトリー〕
間接的な免疫蛍光(IF)については、細胞を24または6ウェルプレートで増殖し、その後GFPを発現するHΔgp2を種々のm.o.i.で感染させた。GFPの発現および種々の蛍光色素を結合させた二次抗体を用いて検出した抗体の結合は、倒立蛍光顕微鏡(Zeiss AxiovertおよびOlympus)によってまたはFACScan(Becton-Dickinson)を使用したフローサイトメトリーによって可視化した。ウイルス感染した細胞をU字型底の96ウェルマイクロタイタープレートに移した(4×104細胞/ウェル)。種々のヒトCDマーカーに対するモノクローナル抗体(mabs)(抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD11b、抗CD16、抗CD319、全ての抗体はDako社製)を添加して氷上で30分間おき、細胞をPBSで2回洗浄した。ALEXA543ヤギ抗マウスIgG結合物(Molecular Probes、米国)を添加して15分間おいた。PBSでさらに2回洗浄してから、細胞を100μlのPBSに懸濁させ、フローサイトメトリーで分析した(少なくとも5000細胞/試料)28。
間接的な免疫蛍光(IF)については、細胞を24または6ウェルプレートで増殖し、その後GFPを発現するHΔgp2を種々のm.o.i.で感染させた。GFPの発現および種々の蛍光色素を結合させた二次抗体を用いて検出した抗体の結合は、倒立蛍光顕微鏡(Zeiss AxiovertおよびOlympus)によってまたはFACScan(Becton-Dickinson)を使用したフローサイトメトリーによって可視化した。ウイルス感染した細胞をU字型底の96ウェルマイクロタイタープレートに移した(4×104細胞/ウェル)。種々のヒトCDマーカーに対するモノクローナル抗体(mabs)(抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD11b、抗CD16、抗CD319、全ての抗体はDako社製)を添加して氷上で30分間おき、細胞をPBSで2回洗浄した。ALEXA543ヤギ抗マウスIgG結合物(Molecular Probes、米国)を添加して15分間おいた。PBSでさらに2回洗浄してから、細胞を100μlのPBSに懸濁させ、フローサイトメトリーで分析した(少なくとも5000細胞/試料)28。
〔ウイルス中和アッセイ〕
10〜100pfuを含有するウイルス懸濁液を、高力価のVZV−、HSV−1、HCMVまたはEBV特異的抗体を含有するヒト抗血清を添加した10%DMEM中で37℃において1〜4時間インキュベーションした。対照は、EHV−1抗体が陰性または陽性のウマまたはマウス血清を含んだ。ウイルス抗体混合物のトリプリケート試料をRK13細胞に添加し、37℃において48〜96時間インキュベーションしてから、細胞変性効果を光学顕微鏡で分析した。
10〜100pfuを含有するウイルス懸濁液を、高力価のVZV−、HSV−1、HCMVまたはEBV特異的抗体を含有するヒト抗血清を添加した10%DMEM中で37℃において1〜4時間インキュベーションした。対照は、EHV−1抗体が陰性または陽性のウマまたはマウス血清を含んだ。ウイルス抗体混合物のトリプリケート試料をRK13細胞に添加し、37℃において48〜96時間インキュベーションしてから、細胞変性効果を光学顕微鏡で分析した。
〔動物実験〕
エーテル麻酔後2×104感染単位のEHV−1(20μl中)をBALB/cまたはC57/ブラックに経鼻的に接種した18。点鼻後1〜14日経過時に、マウスを犠牲にし、肺を切除し、GFPの発現についてインサイチューにおいて速やかに調査した。次いで、肺を液体窒素で急速冷凍し、薄片を調製した。GFP蛍光信号の消光を回避するために固定しなかった。光学顕微鏡および蛍光結合部位によって肺切片を走査した。デジタルカメラ(Olympus)で写真を撮った。
エーテル麻酔後2×104感染単位のEHV−1(20μl中)をBALB/cまたはC57/ブラックに経鼻的に接種した18。点鼻後1〜14日経過時に、マウスを犠牲にし、肺を切除し、GFPの発現についてインサイチューにおいて速やかに調査した。次いで、肺を液体窒素で急速冷凍し、薄片を調製した。GFP蛍光信号の消光を回避するために固定しなかった。光学顕微鏡および蛍光結合部位によって肺切片を走査した。デジタルカメラ(Olympus)で写真を撮った。
[実施例1:EHV−1は種々の起源の細胞系統に効率的に感染し、外来遺伝子を細胞に送達する]
EHV−1はウマおよび齧歯類起源の細胞に効率的に感染し、複製することができることが以前に示されている。EHV−1の増殖のための素材は、鼻上皮、肺、甲状腺および皮膚由来の初代ウマ細胞である18,26。また、EHV−1株は、ウサギRK13細胞、マウスLM細胞およびベビーハムスター腎臓BHK−21/C13細胞において高力価まで増殖することが示されている1,26,29,30。外来遺伝子はこれらの細胞において種々のプロモーターの制御下で効率的に発現することも証明できた17,26,29,31。
EHV−1はウマおよび齧歯類起源の細胞に効率的に感染し、複製することができることが以前に示されている。EHV−1の増殖のための素材は、鼻上皮、肺、甲状腺および皮膚由来の初代ウマ細胞である18,26。また、EHV−1株は、ウサギRK13細胞、マウスLM細胞およびベビーハムスター腎臓BHK−21/C13細胞において高力価まで増殖することが示されている1,26,29,30。外来遺伝子はこれらの細胞において種々のプロモーターの制御下で効率的に発現することも証明できた17,26,29,31。
本発明者らは、鳥類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよび霊長類起源の細胞に感染させるために、HCMV前初期プロモーター/エンハンサーの制御下でGFPを発現するgp2−陰性EHV−1 HΔgp2の能力を調査することに関心を持った。本発明者らは、EHV−1は鳥類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびヒト起源の細胞に効率的に侵入することを証明できた。蛍光顕微鏡によって分析するとき、CEC、QM7、MDBK、PK15、MDCK、CRFK並びにヒト細胞系統MT4、HeLa、HuH7、293、H1299およびMeWoの場合には、2〜100%の細胞は感染後24時間からGFPを発現することを示した(図2)。一方、感染性プラスミドpBHV−1から回収したBHV−1ΔgEはウシ以外の起源の細胞に効率的に感染することができず、EHV−1は、アルファヘルペスウイルス亜科のなかでも、ヒト細胞系統に感染するヒト以外の起源の独自の能力を有することを示している。
[実施例2:EHV−1はブタおよびウシPBMCに効率的に感染する]
次の一連の実験では、本発明者らは、EHV−1が重要な家畜種の抹消血から得られた初代細胞に侵入することができるかどうかを検討した。静脈血をウマ、ブタまたはウシから採取し、0.1のm.o.i.で感染させた。EHV−1の接種の結果、これらの種のPBMCの約0.5%がGFPを発現していたが、ConAによる刺激の24〜48時間後に細胞に感染させた場合には、PBMCの5〜25%がGFPを発現することが示された(図3)。他の種から単離したPBMCについて測定したとき、ウマにおけるEHV−1の溶菌感染部位および潜伏部位であることが記載されているウマPBMCはHΔgp2による感染に対して同様の感受性を示したことに注目することは興味深い。結果は、EHV−1は家畜動物のPBMCに効率的に侵入することができることを証明した。一方、BHV−1ΔgEは、刺激後または未刺激のPBMCにウイルスを添加後にGFPを発現する細胞が存在しないことによって反映されるように、どちらの種のPBMCにも侵入できなかった。
次の一連の実験では、本発明者らは、EHV−1が重要な家畜種の抹消血から得られた初代細胞に侵入することができるかどうかを検討した。静脈血をウマ、ブタまたはウシから採取し、0.1のm.o.i.で感染させた。EHV−1の接種の結果、これらの種のPBMCの約0.5%がGFPを発現していたが、ConAによる刺激の24〜48時間後に細胞に感染させた場合には、PBMCの5〜25%がGFPを発現することが示された(図3)。他の種から単離したPBMCについて測定したとき、ウマにおけるEHV−1の溶菌感染部位および潜伏部位であることが記載されているウマPBMCはHΔgp2による感染に対して同様の感受性を示したことに注目することは興味深い。結果は、EHV−1は家畜動物のPBMCに効率的に侵入することができることを証明した。一方、BHV−1ΔgEは、刺激後または未刺激のPBMCにウイルスを添加後にGFPを発現する細胞が存在しないことによって反映されるように、どちらの種のPBMCにも侵入できなかった。
[実施例3:EHV−1はヒトPBMCおよび臍帯幹細胞に効率的に形質導入する]
他の種のPBMCがEHV−1によって形質導入されるかどうかに関する上記結果は非常に驚くべきである。従って、種々の男性および女性個体のPBMC並びに男児および女児新生児の臍帯幹細胞をそれぞれ入手し、培養した。10%FCSを添加したRPMIまたはConAを含有する培地でPBMCまたは幹細胞を維持した。合計4人の個体のPBMCにEHV−1を感染させることができたことおよびGFPの発現が生じたことを示すことができた。また、男児および女児胎児の幹細胞にEHV−1を使用して効率的に形質導入することができ、単離した幹細胞の15%超がGFPを発現した。ウマ、ブタおよびウシPBMCについて報告したように、ConAを使用してPBMCを24時間刺激した場合には、感染およびGFP発現はより効果的であった(図4)。フローサイトメトリーで測定したとき、未刺激培養物ではPBMCの約1%がEHV−1で形質導入され、ConA刺激した芽細胞の感染後24時間経過時ではPBMCの最高22%がGFP陽性であった。上記のように、BHV−1ΔgEは刺激または未刺激ヒトPBMCに侵入できなかった。これらの結果および上記の結果は、EHV−1は種々の起源の細胞系統に効率的に形質導入できることおよびEHV−1は高い効率でヒトPBMCに侵入できることを証明した。
他の種のPBMCがEHV−1によって形質導入されるかどうかに関する上記結果は非常に驚くべきである。従って、種々の男性および女性個体のPBMC並びに男児および女児新生児の臍帯幹細胞をそれぞれ入手し、培養した。10%FCSを添加したRPMIまたはConAを含有する培地でPBMCまたは幹細胞を維持した。合計4人の個体のPBMCにEHV−1を感染させることができたことおよびGFPの発現が生じたことを示すことができた。また、男児および女児胎児の幹細胞にEHV−1を使用して効率的に形質導入することができ、単離した幹細胞の15%超がGFPを発現した。ウマ、ブタおよびウシPBMCについて報告したように、ConAを使用してPBMCを24時間刺激した場合には、感染およびGFP発現はより効果的であった(図4)。フローサイトメトリーで測定したとき、未刺激培養物ではPBMCの約1%がEHV−1で形質導入され、ConA刺激した芽細胞の感染後24時間経過時ではPBMCの最高22%がGFP陽性であった。上記のように、BHV−1ΔgEは刺激または未刺激ヒトPBMCに侵入できなかった。これらの結果および上記の結果は、EHV−1は種々の起源の細胞系統に効率的に形質導入できることおよびEHV−1は高い効率でヒトPBMCに侵入できることを証明した。
[実施例4:EHV−1は、ヒトCD3+、CD4+、CD8+およびCD11b+、およびCD19+細胞への遺伝子導入を同様の効率で媒介する]
本発明者らは、次に、EHV−1で形質導入したヒトPBMCの性質を同定しようとした。ConAで24時間刺激したヒトPBMCまたは未刺激のヒトPBMCを1のm.o.i.で感染するためにEHV−1を使用した。細胞は、特異的なCDマーカーと共に感染後24時間インキュベーションし、フローサイトメトリーを実施した。感染後24時間経過時にGFPを発現する細胞の表面でそれぞれの識別分子を検出することにより、二重標識細胞の出現によって証明するとき、ヒトBリンパ球(CD19+)並びにCD4+およびCD8+ヒトTリンパ球は、EHV−1を使用して効率的に形質導入されたことを証明することができ、試験した表現型の各々の細胞の約15〜22%がマーカーGFP遺伝子を発現することが示された(図5)。また、GFPの発現は、懸濁培養で増殖させたCD11b+細胞(単球、顆粒球およびナチュラルキラー細胞)の約10%において容易に検出された(図5)。さらに、CD4+MT4細胞も高い効率で形質導入することができた(図6)。結果は、EHV−1は、ConAで刺激した後の多種多様のヒトPBMCを、細胞あたり100未満の粒子に等しい低いm.o.i.で形質導入することができたことを証明した1,18。
本発明者らは、次に、EHV−1で形質導入したヒトPBMCの性質を同定しようとした。ConAで24時間刺激したヒトPBMCまたは未刺激のヒトPBMCを1のm.o.i.で感染するためにEHV−1を使用した。細胞は、特異的なCDマーカーと共に感染後24時間インキュベーションし、フローサイトメトリーを実施した。感染後24時間経過時にGFPを発現する細胞の表面でそれぞれの識別分子を検出することにより、二重標識細胞の出現によって証明するとき、ヒトBリンパ球(CD19+)並びにCD4+およびCD8+ヒトTリンパ球は、EHV−1を使用して効率的に形質導入されたことを証明することができ、試験した表現型の各々の細胞の約15〜22%がマーカーGFP遺伝子を発現することが示された(図5)。また、GFPの発現は、懸濁培養で増殖させたCD11b+細胞(単球、顆粒球およびナチュラルキラー細胞)の約10%において容易に検出された(図5)。さらに、CD4+MT4細胞も高い効率で形質導入することができた(図6)。結果は、EHV−1は、ConAで刺激した後の多種多様のヒトPBMCを、細胞あたり100未満の粒子に等しい低いm.o.i.で形質導入することができたことを証明した1,18。
[実施例5:EHV−1は、ヒトヘルペスウイルスに対して中和作用のある高力価の抗体を含有するヒト血清で中和されない]
EHV−1をヒトワクチン化または遺伝子治療に使用するために、本発明者らは、アルファヘルペスウイルス亜科HSV−1またはVZV並びにベータヘルペスウイルスHCMVおよびガンマヘルペスウイルスEBVに対する高力価の抗体を含有する血清によってEHV−1が中和されるかどうかという疑問に対処した。また、通常EHV−1を用いて研究している3人の研究者の血清を試験した。血清は56℃において30分間不活性化するかまたは未処理のままとし、100μl中100または10p.f.u.のEHV−1株RacHまたはHΔgp2突然変異体ウイルスを、100倍(log2)希釈のヒト血清(100μl)と共にDMEM中で37℃において4時間インキュベーションした。次いで、ウイルス抗血清混合物をRK13細胞と混合した。ヒト血清のどれにおいても、EHV−1に対する中和活性は検出できず、最も低い血清希釈(1:4)およびわずか10p.f.u.のウイルスを使用した場合でも、完全な細胞変性効果が発生した(表1)。一方、RacH32で一旦免疫感作したマウスまたはウマ血清は、10または100p.f.u.のRacHおよびHΔgp2を容易に中和し、1:16〜1:256の力価を示した(表1)。ヒトヘルペスウイルスに対する高力価を含有しても、EHV−1はヒト血清によって中和されないことをこれらの結果は証明した。また、実験条件下において両方の性別のヒトにEHV−1を持続的に接触させてもEHV−1特異的抗体力価を誘導しなかった。
EHV−1をヒトワクチン化または遺伝子治療に使用するために、本発明者らは、アルファヘルペスウイルス亜科HSV−1またはVZV並びにベータヘルペスウイルスHCMVおよびガンマヘルペスウイルスEBVに対する高力価の抗体を含有する血清によってEHV−1が中和されるかどうかという疑問に対処した。また、通常EHV−1を用いて研究している3人の研究者の血清を試験した。血清は56℃において30分間不活性化するかまたは未処理のままとし、100μl中100または10p.f.u.のEHV−1株RacHまたはHΔgp2突然変異体ウイルスを、100倍(log2)希釈のヒト血清(100μl)と共にDMEM中で37℃において4時間インキュベーションした。次いで、ウイルス抗血清混合物をRK13細胞と混合した。ヒト血清のどれにおいても、EHV−1に対する中和活性は検出できず、最も低い血清希釈(1:4)およびわずか10p.f.u.のウイルスを使用した場合でも、完全な細胞変性効果が発生した(表1)。一方、RacH32で一旦免疫感作したマウスまたはウマ血清は、10または100p.f.u.のRacHおよびHΔgp2を容易に中和し、1:16〜1:256の力価を示した(表1)。ヒトヘルペスウイルスに対する高力価を含有しても、EHV−1はヒト血清によって中和されないことをこれらの結果は証明した。また、実験条件下において両方の性別のヒトにEHV−1を持続的に接触させてもEHV−1特異的抗体力価を誘導しなかった。
[実施例6:EHV−1によるインビボにおける効率的で、持続的な導入遺伝子発現]
新規に開発したベクターをワクチン化または遺伝子治療用途に適用するためには、インビボにおいてベクターが媒介して挿入した導入遺伝子の発現が必須である。従って、種々の遺伝的背景を有するマウスに2×104IUのEHV−1を鼻腔内注入することによるGFPのインビボにおける発現を評価した。鼻腔内適用後1日目から12日目まで、BALB/cおよびC57/ブラックマウスの肺におけるGFP発現が容易に観察された。生体から切除直後に、肺を顕微鏡下でスクリーニングしたとき、高いレベルの自己蛍光を示した多数の領域を同定した(図5a)。薄片試料では、高いレベルのGFP発現が細気管支および肺胞の数多くの細胞において観察された。気道上皮における導入遺伝子の長期間の発現は、ベクターの適用後12日目まで検出されたが、未処理の器官における上記に証明した観察を確認するものであった(図5b)。非病原性で、遺伝的に弱毒化したウイルスを使用したので、GFPを発現するEHV−1ベクターを投与したマウスはどれも観察期間中疾患の徴候を全く示さなかったことを強調することは重要である。EHV−1は、臨床症状を全く生じないで、ウマ以外の起源の細胞にインビボにおいて効率的に形質導入できることをこれらの結果は示した。上記の実施例を考慮すると、ウシ、ブタおよびヒトから単離した初代抹消血単核細胞(PBMCs)はEHV−1が効率的に感染できることを明確に証明している。EHV−1のこの特性は、HCMV前初期プロモーター/エンハンサーの転写制御下において変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する組換えウイルスを使用することによって示された。ヒトPBMCsは、単離し、Ficoll濃度勾配で精製し、コンカナバリンAで刺激した細胞の最高25%の効率で感染されたが、未刺激の細胞は約0.5%〜2%が感染可能であった。種々の表現型マーカーを有する細胞(CD3+、CD4+、CD8+、CD11b+およびCD19+)はほとんど同じ効率で感染された。また、1未満の感染多重度を使用すると、CD4+ヒト細胞系統MT4、ヒト黒色細胞腫細胞系統MEWO、ヒト肝細胞癌細胞系統HuH7、ヒト腎臓癌細胞293およびヒト子宮頚癌細胞系統HeLaの実質的に100%はEHV−1で感染可能であった。感染細胞を感染後増殖させると、GFP発現は連続する数継代で検出できた。しかし、細胞はウイルス感染後死滅せず、細胞培養上清への感染力の放出は観察されなかった。これらの結果は、非許容細胞における非溶菌性のEHV−1感染の樹立を示している。また、EHV−1は、ブタ腎臓PK15、ウシMadine Darby腎臓細胞(MDBK)、ネコ胚細胞(KE−R)、ニワトリ胚細胞およびウズラ筋肉細胞QM7に高い効率で侵入することができた。EHV−1を含むヘルペスウイルスは高いパッケージング能力(>100kbp)を示し、EHV−1は複製中の細胞において潜伏感染を樹立することができるので、動物およびヒトにおける免疫感作、抗腫瘍治療、自己免疫疾患の治療および遺伝子治療に関して、外来核酸配列を予防的および治療的に送達するための普遍的なベクターとしてEHV−1を使用することが可能である。
新規に開発したベクターをワクチン化または遺伝子治療用途に適用するためには、インビボにおいてベクターが媒介して挿入した導入遺伝子の発現が必須である。従って、種々の遺伝的背景を有するマウスに2×104IUのEHV−1を鼻腔内注入することによるGFPのインビボにおける発現を評価した。鼻腔内適用後1日目から12日目まで、BALB/cおよびC57/ブラックマウスの肺におけるGFP発現が容易に観察された。生体から切除直後に、肺を顕微鏡下でスクリーニングしたとき、高いレベルの自己蛍光を示した多数の領域を同定した(図5a)。薄片試料では、高いレベルのGFP発現が細気管支および肺胞の数多くの細胞において観察された。気道上皮における導入遺伝子の長期間の発現は、ベクターの適用後12日目まで検出されたが、未処理の器官における上記に証明した観察を確認するものであった(図5b)。非病原性で、遺伝的に弱毒化したウイルスを使用したので、GFPを発現するEHV−1ベクターを投与したマウスはどれも観察期間中疾患の徴候を全く示さなかったことを強調することは重要である。EHV−1は、臨床症状を全く生じないで、ウマ以外の起源の細胞にインビボにおいて効率的に形質導入できることをこれらの結果は示した。上記の実施例を考慮すると、ウシ、ブタおよびヒトから単離した初代抹消血単核細胞(PBMCs)はEHV−1が効率的に感染できることを明確に証明している。EHV−1のこの特性は、HCMV前初期プロモーター/エンハンサーの転写制御下において変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する組換えウイルスを使用することによって示された。ヒトPBMCsは、単離し、Ficoll濃度勾配で精製し、コンカナバリンAで刺激した細胞の最高25%の効率で感染されたが、未刺激の細胞は約0.5%〜2%が感染可能であった。種々の表現型マーカーを有する細胞(CD3+、CD4+、CD8+、CD11b+およびCD19+)はほとんど同じ効率で感染された。また、1未満の感染多重度を使用すると、CD4+ヒト細胞系統MT4、ヒト黒色細胞腫細胞系統MEWO、ヒト肝細胞癌細胞系統HuH7、ヒト腎臓癌細胞293およびヒト子宮頚癌細胞系統HeLaの実質的に100%はEHV−1で感染可能であった。感染細胞を感染後増殖させると、GFP発現は連続する数継代で検出できた。しかし、細胞はウイルス感染後死滅せず、細胞培養上清への感染力の放出は観察されなかった。これらの結果は、非許容細胞における非溶菌性のEHV−1感染の樹立を示している。また、EHV−1は、ブタ腎臓PK15、ウシMadine Darby腎臓細胞(MDBK)、ネコ胚細胞(KE−R)、ニワトリ胚細胞およびウズラ筋肉細胞QM7に高い効率で侵入することができた。EHV−1を含むヘルペスウイルスは高いパッケージング能力(>100kbp)を示し、EHV−1は複製中の細胞において潜伏感染を樹立することができるので、動物およびヒトにおける免疫感作、抗腫瘍治療、自己免疫疾患の治療および遺伝子治療に関して、外来核酸配列を予防的および治療的に送達するための普遍的なベクターとしてEHV−1を使用することが可能である。
Claims (12)
- 天然ではヒトまたは他の動物種を宿主または最終宿主として使用しないウイルス由来の組換え動物ウイルスであって、自己複製能を有するまたは自己複製能を欠損しており、感染多重度1未満でインビトロにおいて天然宿主または最終宿主でない生物由来の初代細胞に形質導入する能力を有する組換え動物ウイルス。
- 生物あたり106〜108未満の範囲の低粒子数でインビボにおいて細胞に効率的に形質導入する能力をさらに有する請求項1に記載の組換え動物ウイルス。
- 形質導入により、処理された生物における、生物学的に測定可能な免疫応答の誘導、予防的、治療的または診断的な効果を誘導するのに十分な導入遺伝子産物の発現を生ずる請求項2に記載の組換え動物ウイルス。
- ウマヘルペスウイルスである請求項1〜3のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- 前記初代細胞が、ヒト、愛玩動物または家畜由来である請求項1〜4のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- 導入遺伝子を含む請求項1〜5のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- 天然宿主またはそれ由来の細胞もしくは細胞系統における複製に必須の遺伝子の少なくとも1つを欠失している請求項1〜6のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- ORISおよび/またはORILならびにパッケージング(pac)配列を含む請求項1〜7のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- 疾患を治療もしくは診断する、または疾患に対して免疫感作する薬剤または診断用剤を製造するための請求項1〜8のいずれかに記載の組換え動物ウイルスの使用であって、前記組換え動物ウイルスが、用量あたり106〜108未満の粒子範囲の低粒子数で治療対象に投与される使用。
- 前記組換え動物ウイルスが、用量あたり106〜108未満の粒子範囲の低粒子数で治療対象に投与される、遺伝子ターゲティングベクターとして使用するための請求項1〜8のいずれかに記載の組換え動物ウイルス。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の組換え動物ウイルスを形質導入した初代細胞。
- ウイルスパッケージング配列、ORISおよび/またはORILを欠失するが、イントランスにおけるウイルスDNAパッケージングのために必要で必須の、ベクターから除去された遺伝子を提供し、補完する、請求項1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つの組換え動物ウイルスを有するパッケージング細胞系統。
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