JPWO2004042902A1 - スパイラル型リニアモータ - Google Patents
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Abstract
Description
ギヤによりモータの出力を減速することにより大きな推力を得る場合には、ギヤによりクーロン摩擦力が位置決め精度に大きく影響するという問題があり、また、ダイレクトドライブ方式により大きな推力を得る場合には、装置が大型になるという問題がある。
特に直動型のアクチュエータの場合には、ギヤを用いた方式として回転型のモータとボールねじを組み合わせた構成が知られているが、回転型のモータとボールねじを組み合わせる構成は位置決め精度の問題の他、装置が複雑になるという問題がある。また、ダイレクトドライブ方式による直動型のアクチュエータとしては、リニアモータを利用した構成が知られている。
また、直進駆動力を発生するモータとして、円筒状表面にN極とS極とをらせん状に交互に等間隔で着磁して回転子とし、軸方向に対して垂直平面上に周囲を囲むように電磁コイルを配置して固定子とするスパイラルモータが提案されている。例えば、このようなスパイラルモータとして特開平9−56143号が提案されている。
従来のモータ構成では、大きな推力を得るには、装置が複雑になるという問題がある。また、上記文献に提案されるスパイラルモータでは、推力は電磁コイルと回転子の外周面との対向面積に依存するため、大きな推力を得ることが困難であるという問題がある。
したがって、従来、直進駆動力を発生するモータとして知られる構成では、小型軽量、高精度、高推力の各点を同時に備えることができないという問題がある。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、直進駆動力を発生するモータにおいて、小型軽量、高精度、高推力の各点を同時に備えることができることを目的とする。
本発明は、ねじ機構を電磁力により非接触とすることにより摩擦による影響を排除し、これにより高精度の位置決め制御が可能となる。また、電磁力を作用させるねじ機構部分の面積を大きくとることができるため磁束を有効に利用することができ、同一体積、同一重量の従来のリニアモータよりも大きな推力を得ることができる。
本発明のスパイラル型リニアモータは、回転子及び固定子を共にらせん状に構成し、両らせん状部分を互いに組み合わせることにより、らせん状に回転しながら軸方向に推力を発生するものであり、らせん状とすることにより減速ギヤと同様に高推力を得ることができ、また、回転子と固定子の軸方向に対向する大きな面積を利用することにより高推力を得ることができる。
また、回転子及び固定子のピッチを小さくすることにより高回転型となり、小型軽量とすることができる。
また、回転子と固定子との間は非接触であるため、摩擦による影響を少なくして高精度の位置決めが可能となる。
本発明のスパイラルモータは、中心軸とこの中心軸の外周に設けたらせん状部とを備える回転子と、回転子と同ピッチのらせん状の中空磁極を備える固定子とを備えた構成とし、回転子の中心軸を固定子の中空磁極内に配置する。そして、回転子のらせん状部を固定子の中空磁極のらせん状の溝内においてらせん状に回転自在とし、回転子を固定子に対してらせん状に回転しながら軸方向に直動させる。
この構成によるスパイラル型リニアモータでは、らせん状に形成された固定子の溝内を、同じくらせん状に形成された回転子のらせん状部をらせん状に回転しながら、ねじ機構と同様に軸方向に直動する。
本発明のスパイラル型リニアモータの回転子は、回転子のらせん状部のらせん側面に永久磁石を備える。また、本発明のスパイラル型リニアモータの固定子は、中空磁極のらせん状の両側面に互いに90度位相をずらした2相の巻き線を軸方向に巻回する。また、固定子は、申空磁極のらせん状の両側面に凹凸部を備え、この凹凸部に巻き線を巻回する。
本発明のスパイラル型リニアモータのトルク及び推力は、回転子と固定子の互いに対向する磁極のらせん状側面間で交差する電磁力により発生し、それぞれ独立して制御することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図1〜図4を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの固定子について、図5〜図7を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの回転子について、図8〜図10を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの回転子と固定子の組み合わせの各構造について説明する。また、図11〜図15を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの推力発生の原理について説明し、図16を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの電機子回路について説明し、図17〜図22を用いて本発明のスパイラル型リニアモータの制御について説明する。
本発明のスパイラル型リニアモータ1は固定子2と回転子3とを含み、回転子3は固定子2に対してらせん状の回転しながら軸方向に直動する。
図1は本発明の固定子2の概略構成を示す図である。固定子2は、軸方向に中空孔2bを有すると共に、軸方向に向かって所定のピッチで形成されたらせん状の磁極2aを備える。らせん状に形成される磁極2aは軸方向に側面2Aと側面2Bを有し、軸方向で隣り合う磁極2aの側面2Aと側面2Bの間には、同ピッチのらせん状の溝2Cが形成される。このらせん状の溝2Cには、本発明の回転子1のらせん状部がらせん状の回転可能に設けられる。
また、磁極2aの側面2A,側面2Bには、軸方向の凹部を有するスロット2cがらせん方向に沿って形成される。このスロット2cには磁界を形成するための巻き線が巻回される。
図2は、巻き線をスロット2cに巻回した固定子を示している。固定子2には2相の巻き線4が巻かれる。一方の相の巻き線4aは、例えば磁極2aの側面2Aに形成されたスロット2cに軸方向に巻かれ、他方の相の巻き線4bは、例えば磁極2aの側面2Bに形成されたスロット2cに軸方向に巻かれ、側面2Aに巻回される巻き線4aと側面2Bに巻回される巻き線4bは、それぞれ90度位相をずらせて巻かれる。
図3は、固定子2に巻かれる2相の巻き線の位相状態を説明するための図である。図3(a)は、固定子を軸方向に投影した状態を示している。なお、ここでは、4極の場合について示している。巻き線を巻回するスロット2cを円周方向で角度αの間隔で形成し、各相の巻き線を2つのスロットに対して巻回する。これにより、各相の巻き線は角度2αを単位として巻回される。
また、各相をa相及びb相としたとき、a相とb相は角度αだけずれて巻回される。図3(b)は例えばa相の巻き線により電流の流れを示し、図3(c)は例えばb相の巻き線により電流の流れを示している。a相の電流とb相の電流は、互いに角度αだけ位相がずれている。
図4は、固定子の作成手順の一例を説明するための概略図である。なお、図4(a)〜(c)中の2つの図は、同一状態の固定子を異なる角度から見た状態を示している。
はじめに、円盤状の電磁鋼板を積層して円筒状の部材を形成する。電磁鋼板は珪素鋼板とすることができる。図4(a)は、この積層した電磁鋼板の外形を示している。次に、積層した電磁銅板を、図4(b)に示すようにスパイラル形状に切削し、スパイラル状の磁極部分を形成する。さらに、スパイラル状の磁極部分を切削して、巻き線を巻くためのスロットを形成する。なお、高調波非同期トルクの異常トルクを防止するために、斜めに切削してスキューを設けるようにしてもよい。
図5は本発明の回転子3の概略構成を示す図である。回転子3は、中心軸3bと、該中心軸3bの軸方向に向かって所定のピッチでらせん状に形成されたらせん状部3aとを備える。らせん状部3aは軸方向に側面3Aと側面3Bを有し、軸方向で隣り合うらせん状部3aの側面3Aと側面3Bの間には、同ピッチのらせん状の溝3Cが形成される。また、らせん状部3aの側面3Aと側面3Bの面には永久磁石3cが取り付けられる。
図6は回転子を軸方向に投影した図である。図6は4極の例を示しており、90度間隔でN極及びS極の永久磁石3cが交互に取り付けられる。永久磁石3cは側面3A及び側面3Bに接着により取り付けることができる。
図7は、回転子の作成手順の一例を説明するための概略図である。なお、図7(a),(b)中の2つの図は、同一状態の回転子を異なる角度から見た状態を示している。はじめに、円柱状の部材を切削加工して中心軸3b及びらせん状部3aを形成する。図7(a)は、切削加工により形成した中心軸3b及びらせん状部3aの外形を示している。回転子3のらせん状部3aのピッチは、固定子2のらせん状の溝2Cのピッチと同ピッチに形成される。次に、図7(b)に示すように、形成したらせん状部3aの軸方向の両側面に3A,3Bに永久磁石3cを接着する。
本発明のスパイラル型リニアモータ1は、固定子2に回転子3を組み込み、回転子3の中心軸3bの両端を軸支すると共に、固定子2をフレームで支持することにより構成することができる。なお、フレームはアルミ材等で形成することができる。
図8は固定子2に回転子3を組み込んだ状態を外側から見た図であり、図9は同じく固定子2に回転子3を組み込んだ状態の一部を切り取って内部状態を示した図である。
回転子3のらせん状部3aは、固定子2のらせん状の溝2C内にらせん状に回転自在となるように組み込まれ、また、回転子3のらせん状の溝3Cには、固定子2のらせん状の磁極2aがらせん状に回転自在となるように組み込まれて取り付けられる。
また、固定子2の磁極2aの側面2A,側面2Bには、軸方向の凹部を形成してなるスロット2cがらせん方向に沿って形成される。このスロット2cには磁界を形成するための巻き線4が巻回される。巻き線4に電流を供給することにより磁極2aには磁界が形成され、この固定子2側に形成される磁界と、回転子3の永久磁石3cによる磁界との相互作用により軸方向の推力及び回転トルクが形成される。
本発明のスパイラル型リニアモータは、固定子2と回転子3の軸方向のギャップを一定値に制御しながら回転力を制御する。回転子3は、固定子2に対してらせん状に進行し、出力軸である回転子3の中心軸3bは直動機構として動作する。
図10は本発明のスパイラル型リニアモータの縦断面図である。本発明のスパイラル型リニアモータ1は、その外周部分にモータフレーム5を備え、これにより固定子2を支持する。図10では、固定子2の磁極2aの外周面をモータフレーム5の内周面に固着することにより固定子2の支持を行っている。なお、この固着は、ねじで行う他に接着材を用いるようにしてもよい。
また、回転子3はモータフレーム5に対して、リニアベアリング6により回転自在に支持される。リニアベアリング6はモータフレーム5の両端に設けた支持部材により取り付けられ、回転子3の中心軸3bの両端部分を回転支持する。
なお、固定子2の側面部分には、回転子3の側面とのギャップを検出するためにギャップセンサ7が取り付けられる。また、回転子3の回転速度を検出するためにロータリエンコーダ8が取り付けられる。
次に、本発明のスパイラル型リニアモータの推力発生の原理について説明する。
図11は本発明のスパイラル型リニアモータの極座標展開図である。極座標展開図において、回転子3から見ると、回転子3は2つの固定子2の磁極により挟まれる。この磁極に設けた隣接する巻き線に対して、位相が90度ずれた電流Ia及びIbを供給することにより回転子3を挟む閉磁路が形成され、回転子3の設けられる永久磁石3はこの閉磁路による磁界の作用を受ける。
ここで、この極座標展開図において、固定子2側のスロットに巻回される巻き線の角度を2αとし、回転子3側の永久磁石の角度を2βとし、固定子2に対する回転子3の回転角度をθとする。また、固定子2と回転子3の側面間のギャップをlgとし、永久磁石の厚さをlmとし、回転子3の固定子2の溝内における偏りをxとし、固定子及び回転子のピッチをlpとし、永久磁石の中心軸から径方向の端部までの距離をそれぞれr1,r2(r1<r2)としている。
なお、ここで用いるパラメータは、以下の表1で示される。
この極座標展開図において、界磁巻き線と永久磁石の相対位置関係に応じて2通りの磁気回路のモデル(とモード2とする)が考えられる。
第1の磁気回路のモデル(モード1)は、永久磁石が巻き線を一つ跨ぐ場合である。図12の極座標展開図及び図13の等価磁気回路はこのモード1の磁気回路モデルの状態を示している。
このモード1では、回転角をθとしたとき、−(α−β)≦θ≦(α−β)が成立する場合であり、このときのパラメータは、以下の表2で示される。
ここで、対称性から領域(iii)−(A),(iv)−(A),(iii)−(B),(iv)−(B)の磁束はそれぞれ−Φ1,−Φ2,−Φ′1,−Φ′2となる。また、電機子巻き線の起磁力も同様に、−F1,−F2,−F′1,−F′2となる。
また、第2の磁気回路のモデル(モード2)は、永久磁石が巻き線を二つ跨ぐ場合である。図14の極座標展開図及び図15の等価磁気回路はこのモード2の磁気回路モデルの状態を示している。
このモード2では、回転角をθとしたとき、(α−β)≦θ≦βが成立する場合であり、このときのパラメータは、以下の表3で示される。
ここで、モード1における推力を求める。回転角θが−(α−β)≦θ≦(α−β)の範囲にある場合の推力について、図12のように、電機子巻き線の各相に電流Ia[A],Ib[A],I′a[A],I′b[A]を流したとき、領域(i),(ii)での電機子巻き線による起磁力F1,F2,F′1,F′2[A]及び永久磁石による起磁力Fm[A]は以下の式(1)〜(5)で表される。
ただし、nは巻数を表す。また、B′r[T]は永久磁石の残留磁束密度を、μ′mは永久磁石の透磁率を表す。また、各磁気抵抗は以下の式(6)〜(15)で表される。
以下、領域(A)について見ると、領域(A)における磁気回路の方程式は図13より以下の式(16)〜(21)で表される。
これより、磁気回路を貫き磁束を求めると、以下の式(22)〜(27)で表される。
これより、電機子巻き線電流Ia,Ib及び等価磁化電流Im=Fmに鎖交する磁束Φa,Φh,Φmは、極対数及び層数を考慮して、以下の式(28)〜(30)で表される。
簡単のために、永久磁石の透磁率μmが真空の透磁率μ0>に等しいとすると、領域(A)における全磁気エネルギーは以下の式(31),(32)で表される。
同様にして、領域(B)における全磁気エネルギーは以下の式(33),(34)で表される。
これより、領域(A)と領域(B)を合わせた全磁気エネルギーは、以下の式(35)で表される。
磁気エネルギーWを変位xgと回転角θで偏微分すると推力fとトルクτを求めることができ、以下の式(36),(37)でそれぞれ表される。
次に、モード2における推力を求める。回転角θが(α−β)≦θ≦βの範囲にある場合の推力は、図14より各磁気抵抗は以下の式(38)〜(44)で表される。
一方、磁気回路の方程式は図15より以下の式(45)〜(49)で表される。
これより、磁束を求めると、以下の式(50)〜(54)で表される。
これより、電機子巻き線電流Ia,Ib及び等価磁化電流Im=Fmに鎖交する磁束Φa,Φb,Φmを極対数及び層数を考慮して、以下の式(55)〜(57)で表される。
簡単のために、永久磁石の透磁率μmが真空の透磁率μ0に等しいとすると、領域(A)における全磁気エネルギーは以下の式(58),(59)で表される。
同様にして、領域(B)における全磁気エネルギーは以下の式(60),(61)で表される。
これより、領域(A)と領域(B)を合わせた全磁気エネルギーは、以下の式(62)で表される。
モード1と同様に、磁気エネルギーWを変位xgと回転角θで偏微分すると推力fとトルクτを求めることができ、以下の式(63),(64)でそれぞれ表される。
ここで、本発明のスパイラル型リニアモータの一数値例について示す。
外径60[mm],中心軸径10[mm],ギャップ長1[mm],永久磁石の厚さ2[mm]とした場合の数値例は以下の式(65)〜(74)で表される。
ここで、変位xg=0[mm]のときの推力fとトルクτは、以下の式(75),(76)でそれぞれ表される。
また、変位xg=0.001[mm]のときの推力fとトルクτは、以下の式(77),(78)でそれぞれ表される。
なお、上記式で現れる定数項は、永久磁石が鉄心を引き付ける力であり、回転子が固定子のギャップのちょうど中間にあるとき、すなわち変位xg=0[mm]のときは、回転子の両側の磁石の力が互いに打ち消し合い零になる。しかし、回転子が固定子の一方にタッチダウンした場合、すなわち変位xg=1[mm]のときは、タッチダウンした側の永久磁石の吸引力が勝り、5740[N]もの吸引力が発生する。この吸引力に打ち勝って回転子を浮上させるためには28.5[A]以上の電流を流さなければならない。
ギャップがある値よりも小さくならないようなストッパーを導入することにより、タッチダウンによる永久磁石の破損を防ぐことができ、また、浮上に必要な電流を小さくすることができる。例えば、0.5[mm]以上変位しないようなストッパーを用いた場合、その最大変位xg=0.0005[m]における推力fとトルクτは、以下の式(79),(80)でそれぞれ表される。
この場合、電流を15.2[A]以上流すことにより浮上が可能となる。
回転子が固定子のちょうど中間になるようにxg=0にギャップを制御した場合、最も推力の出にくい回転角θ=α/2においても、推力定数は122[N/A]となり、仮に電流を10[A]流せば、1200[N]以上の力を発生することができる。
次に、本発明のスパイラル型リニアモータの回路方程式について説明する。電機子抵抗をR,各相の印加電圧をそれぞれVa,Vb,V′a,V′bとすると、印加電圧と誘起起電力の和が抵抗に加わるため、以下の式(81)〜(84)で表される回路方程式が成立する。
簡単のため、μm=μ0とし、上式左辺第2項の誘起起電力を求める。
モード1の場合には、式(28),(29)の両辺を時間微分することにより、以下の式(85),(86)で表される誘起起電力が求まる。
また、モード2の場合には、式(55),(56)の両辺を時間微分することにより、以下の式(87),(88)で表される誘起起電力が求まる。
上式をまとめると、誘起起電力は以下の式(89),(90)で表される。なお、図16は、式(89)で表される電機子回路を示している。
ただし、Lは電機子インダクタンス、KEax,KEaθはA相の誘起電圧定数、KEbx,KEbθはB相の誘起電圧定数であり、以下の式(91)〜(95)で表される。
また、領域(B)の巻き線についても同様にして、誘起起電力は以下の式(96),(97)で表される。
ただし、L′,K′Eax,K′Eaθ,K′Ebx,K′Ebθは以下の式(98)〜(102)で表される。
次に、本発明のスパイラル型リニアモータの制御について説明する。本発明のスパイラル型リニアモータは、推力fとトルクτを独立して制御することができる。
推力の理論式(36),(63)において、ギャップ変位xgが十分基準ギャップlgに比べて十分小さいと仮定し、2次以上の項を無視してxg=0のまわりで線形化すると、以下の式(103)〜(106)で表される近似式が得られる。
上式を一般化すると、推力定数、トルク定数を用いて以下の式(107),(108)で表される。
さらに、まとめると、以下の式(109)〜(113)で表される。
これより、以下の式(114)で表される制御則が得られる。
ただし、H(xg,θ)はK(xg,θ)の疑似逆行列であり、以下の式(115)で定義される。
疑似逆行列の性質として、Eを単位行列とするとK(xg,θ)H(xg,θ)=Eが成り立つ。これにより得られる電流は、所望の推力とトルクを発生させる組み合わせの内、2乗和が最も小さな解となている。
なお、K(xg,θ)の零空間に対応する電流は、推力とトルクに寄与しないことから、無効電流とまっている。式(114)で得られる解は無効分を含まず、無効電流と直交している。
なお、図17に示す推力・トルク−電流変換器を用いることにより、推力とトルクの指令値f*、τ*から各相の電流Ia *,Ib *,I′a *,I′b *を求めることができる。
これにより、本発明のスパイラル型リニアモータでは、推力とトルクをそれぞれ独立して制御することができる。
本発明のスパイラル型リニアモータでは、タッチダウンを避けながら推力を発生させるために、トルクと推力の独立制御系の上位に、所望の推力に見合ったトルク目標値を与える目標値生成器を設ける。
スパイラル曲面の方程式は、進行方向をx軸にとると、以下の式(116)〜(118)のようにθを媒介変数として記述される。
ただし、lpはスパイラルのピッチである。すなわち、一周につきlp[m]進むとする。このとき、半径rの点でのスパイラル曲面の傾きtanφ(r)は以下の式(119)で与えられる。
通常のねじと同様に、このスパイラル面に運動が拘束されるときの推力とトルクの関係は、以下のようにして求めることができる。
摩擦が全く存在しない場合、スパイラル面において、回転方向に加えられた力δfθと、その力から垂直抗力を介して進行方向に作用する力δfの関係は、図18で表され、以下の式(120)で与えられる。
この両辺をδrで割ってδr→0とすると、以下の式(121)で表される関係が得られる。
一方、式(37),(64)で求めたトルクから、上記の回転方向力の分布を求めることができ、推力とトルクの関係を導くことができる。
まず、式(37),(64)で求めたトルクは、以下の式(122)〜(124)で表すことができる。
半径rからr+δrの微小領域により発生されるトルクδτは、上記式より以下の式(125)で表すことができる。
したがって、半径rからr+δrの微小領域により発生される回転方向力は、以下の式(126)で表される。
これより中心から距離rの点での半径方向に対する単位長さ当たりの回転力は、以下の式(127)で与えられる。
したがって、運動がスパイラル面に拘束される場合の推進力は、式(121),(127)により以下の式(128),(129)となる。
理想状態では、発生さえるトルクと推力の目標値は上記式の関係を満たすように与える必要がある。
この関係は、仮想仕事の原理からも求めることができる。すなわち、式(116)の両辺を時間微分したて得られる、以下の式(130)の方程式
及び、瞬時パワーが保持される以下の式(131)で表される制約式を解いても求めることができる。
本発明のスパイラル型リニアモータでは、回転子がタッチダウンしないように、常にギャップxgを零に制御する必要がある。そこで、回転子の質量をMとすると、以下の式(132)で表される、2重積分型となる回転子のダイナミクス
に対して、安定化補償器(レギュレータ)の設計を行うことで制御することができる。
上式を伝達関数表現すると、以下の式(133)で表される。
安定化補償器Cg(s)は、以下の式(134)によりギャップ制御を行う。
安定化補償器Cg(s)の設計は、PI制御、状態フィードバック+オブザーバ、H∞制御など、様々な手法を適用することができる。
次に、推力制御について説明する。図19は推力制御系のブロック図であり、図20は推力制御系の詳細ブロック図である。
図19において、トルク目標値発生器10は、前記式(129)に基づいて、推力の指令値からトルクと推力の目標値(τ*,f*)を求め、推力−電流変換器11に入力する。また、推力−電流変換器11には、スパイラル型リニアモータ1に設けたギャップセンサから求めたギャップ値xgを用いて得たf0(xg)が負帰還される。また、ギャップ制御器15は、前記式(134)に基づいて安定化補償を行う。
推力−電流変換器11は、トルク目標値発生器10からのトルク目標値τ*、推力の目標値f*と、f0(xg)、及びギャップ値xg,回転子の回転角θを用い、式(114)に基づいて電流指令値(Ia *,Ib *I′a *,I′b *)を求め、電流制御器12に入力する。
電流制御器12は、推力−電流変換器11からの電流指令値(Ia *,Ib *,I′a *,I′b *)と、固定子の巻き線に供給される電流値(Ia,Ib,I′a,I′b)とに基づいて、PI制御を行い電圧値(Va,Vb,V′a,V′b)を形成する。インバータ13はこの電圧指令値に基づいて電源14から電力を固定子の巻き線に供給する。
また、本発明のスパイラル型リニアモータをアクチュエータに適用し、このアクチュエータにより位置決めを行う場合には、前記した推力制御系の上位に位置制御系を設ける。
以下、位置制御系について説明する。
ギャップが零に制御されていると仮定すると、回転子の並進位置は回転角によって一意に決定される。したがって、回転子の回転角を制御することにより、回転子の並進位置を制御することができる。
回転子の慣性モーメントをJとすると、回転子に運動方程式は、以下の式(135)で与えられる。
式(116),(129)の関係を用いて式(135)を書き換えると、以下の式において、
で与えられる。
したがって、式(136)の2重積分制御対象に対して、サーボ制御系の設計を行うロバストサーボ制御等が有効である。
図21は位置制御系のブロック図であり、図22は位置制御系の詳細ブロック図である。
図示する位置制御系では、前記した推力制御系の上位に位置制御器16を備える。位置制御器16は、位置指令値xcmdと回転子の回転角θを入力してその偏差を求め、求めた位置偏差に基づいてサーボ制御により推力の指令値を求め、推力制御系のトルク目標値発生器10に入力する。
本発明のスパイラル型リニアモータによれば、回転しながら軸方向に推力を発生することができ、推力を発生する部分をスパイラル型とすることで減速ギアと同様の効果により、高い推力を得ることができる。
また、回転子と固定子のピッチを小さくとることにより、高回転型とすることができ、小型化及び軽量化することができる。
また、ギヤと異なり、回転子と固定子は非接触であり摩擦がないため、ロスやバックラッシュを除くことができる。
また、静止摩擦がないため、高精度な位置決めが可能であり、NC機械などの精密位置決め装置に好適である。
2…固定子
2a…磁極
2b…中心孔
2c…スロット
2A,2B…側面
2C…溝
3…回転子
3a…らせん状部
3b…中心軸
3c…永久磁石
3A,3B…側面
4,4a,4b…巻き線
5…フレーム
6…リニアベアリング
7…ギャップセンサ
8…ロータリエンコーダ
10…トルク目標値発生器
11…推力−電流変換器
12…電流制御器
13…インバータ
14…電源
15…ギャップ制御器
16…位置制御器
20…積層電磁鋼板
Claims (4)
- 中心軸と当該中心軸の外周に設けたらせん状部とを備える回転子と、
前記回転子と同ピッチのらせん状の中空磁極を備える固定子とを備え、
前記回転子の中心軸を前記固定子の中空磁極内とし、前記回転子のらせん状部を前記固定子の中空磁極のらせん状の溝内においてらせん状に回転自在とし、前記回転子は前記固定子に対してらせん状に回転しながら軸方向に直動することを特徴とする、スパイラル型リニアモータ。 - 前記回転子は、前記らせん状部のらせん側面に永久磁石を備えることを特徴とする、請求の範囲第1項に記載のスパイラル型リニアモータ。
- 前記固定子は、前記中空磁極のらせん状の両側面に互いに90度位相をずらした2相の巻き線を軸方向に巻回することを特徴とする、請求の範囲第1項に記載のスパイラル型リニアモータ。
- 前記固定子は、前記中空磁極のらせん状の両側面にスロットを備え、当該スロットに前記巻き線を巻回することを特徴とする、請求の範囲第1項に記載のスパイラル型リニアモータ。
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