JPWO2004039388A1 - α−グルコシダーゼ阻害剤 - Google Patents

α−グルコシダーゼ阻害剤 Download PDF

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Abstract

オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウは、長期間継続的に服用しても安全かつ効果的な、α−グルコシダーゼ阻害剤である。したがって、オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウは、食後の過血糖を顕著に抑制することから、糖尿病、肥満などの予防あるいは改善に有効である。

Description

本発明は長期間服用しても安全で有効なα−グルコシダーゼ阻害剤に関する。
近年、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症・進行に影響を及ぼすとされている生活習慣病が注目されている。先進諸国においては、食習慣、運動習慣との関連が大きいとされる肥満、インスリン非依存型糖尿病(II型糖尿病)、高脂血症、高血圧などの増加が国民の健康維持に支障をきたし、生活の質(QOL)の低下を招くばかりでなく、国民医療費の急激な増加を引き起こすなど、大きな社会問題となってきている。
α−グルコシダーゼは、消化管での糖質の分解を触媒する酵素であり、その働きを阻害すると、糖質の分解が抑制または遅延され、糖質の吸収を抑制することができる。したがって、α−グルコシダーゼ阻害剤は食後の過血糖を顕著に抑制することから、糖尿病、肥満などの予防あるいは改善に有効である。
現在、糖尿病の治療を目的にアカルボース、ボグリボースなどのα−グルコシダーゼ阻害剤が糖尿病用剤として使用されている。これらの薬剤は、腸内ガスの増加など、深刻ではないが患者にとっては不快な症状が報告されており、より良い薬剤が求められていた。
従来、天然物由来のα−グルコシダーゼ阻害剤としては、マオウの水、極性溶媒あるいはそれらの混合溶媒より抽出して得られるα−グルコシダーゼ阻害剤(日本国公開特許平9−2963号公報)、オールスパイス、チョウジの抽出物を有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤(日本国公開特許2001−181194号公報)、甜茶、シマバライチゴ、ワレモコウ、ゴショイチゴ、トックリイチゴ、ローザヘンリュイボウルから得たエラジタンニンを有効成分とする糖質分解消化酵素阻害剤(日本国公開特許平9−176019号公報)、ラフマ、ケイヒ、ユーカリ、ビワ(果実部分を除く)の抽出物を含有するα−グルコシダーゼ阻害剤(日本国公開特許2001−163795号公報)などが知られている。
生薬のハイショウソウ(敗醤草)はオミナエシ科のオトコエシ(Patrinia villosa)、オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia)の全草を乾燥したものが一般的である。また、アブラナ科のグンバイナズナ(Thlaspi arvense)もハイショウソウに分類するという説もあるが、グンバイナズナはセキメイという別の生薬に分類する説もある(上海科学技術出版社 小学館 編、「中薬大辞典 第三巻」、小学館、昭和60年12月10日、p.1450)。
オミナエシ科のオトコエシ(Patrinia villosa)、オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia)は消炎、排膿等の作用を期待して用いられ、アブラナ科のグンバイナズナ(Thlaspi arvense)は眼病の薬として、鎮痛、消炎の作用を期待して用いられている(難波恒夫著、「和漢薬百科図鑑」、保育社、[I]平成5年11月30日全改訂新版、p.64−66)。
しかし、ハイショウソウにはα−グルコシダーゼ阻害作用およびこれに基づく肥満、糖尿病の改善に対する作用は知られていない。
本発明の目的は、長期間継続的に服用しても安全かつ効果的な、α−グルコシダーゼ阻害剤を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、ある種の生薬が優れたα−グルコシダーゼ阻害活性を有すること、および、糖負荷または糖尿病時の血糖上昇を抑制することから医薬品および食品として有用なことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
1.オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
2.オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有する糖尿病の予防または改善剤。
3.オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有する肥満の予防または改善剤。
4.オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
5.オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有する糖尿病の予防または改善剤。
6.オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有する肥満の予防または改善剤。
7.糖尿病または肥満の予防または治療剤製造のためのオミナエシ科植物を基原とするハイショウソウの使用。
8.オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウによる糖尿病または肥満の予防または治療方法。
である。
本発明に用いるハイショウソウは、オミナエシ科植物を基原とするものであり、生薬末の他、水、極性溶媒、それらの混合溶媒などで抽出したエキス、乾燥エキス、流エキスなどの形態で用いる。
一般的に生薬はその由来により効力が異なる場合があるが、本発明のハイショウソウについては、オミナエシ科植物の中でもオトコエシ(Patrinia villosa)、オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia)の全草を乾燥したものが好ましい。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の投与量は、年齢、性別などを考慮して適宜増減できるが、通常成人で1日、原生薬換算量として100mg〜50gの範囲で用いることができ、好ましくは、500mg〜30gである。
本発明は、発明の効果を損なわない質的および量的範囲で、ビタミン、キサンチン誘導体、アミノ酸、賦形剤、pH調製剤、清涼化剤、懸濁化剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを配合して、常法により、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、チュアブル錠、経粘膜剤などの経口または非経口製剤とすることができる。
第1図は本発明のオトコエシを基原とするハイショウソウエキスについてのα−グルコシダーゼ活性阻害率を示した図であり、縦軸に阻害率、横軸に濃度を示した。
第2図は基原の異なる各ハイショウソウエキスについてのα−グルコシダーゼ活性阻害率を示した図であり、各縦軸に阻害率、各横軸に濃度を示した。
第3図はオトコエシを基原とするハイショウソウエキスについてのシュークロース負荷時の血糖上昇に対する作用を示した図であり、縦軸に血糖値、横軸に生薬名および投与量を示した。
第4図は用量依存性について、シュークロース負荷時の血糖上昇に対する作用を示した図であり、縦軸に血糖値、横軸に投与量を示した。
第5図はオトコエシを基原とするハイショウソウエキスについてのob/obマウスの糖尿病に対する作用を示した図であり、縦軸に血糖値、横軸に生薬名および投与量を示した。
以下に実施例および試験例をあげ、本発明を具体的に説明する。
オミナエシ科のオトコエシを基原とするハイショウソウを細切後、10倍量の50%エタノールを加え、約80℃で加熱抽出した。濾過後減圧下でエタノールを留去し、さらに、濃縮を行うことによりエキスを得た。
比較例1
アブラナ科のグンバイナズナの乾燥物を用いて、実施例1と同様にして比較用のエキスを得た。
試験例1(α−グルコシダーゼ阻害作用の測定)
実施例1で得たオトコエシを基原とするハイショウソウエキス(2.5% DMSO で溶解)25μL、リン酸緩衝液(0.25M、pH6.5)125μL、基質溶液50μL(1.4mM p−nitrophenyl−α−D−glucopyranoside)、酵素溶液(Bacillus stearothermophilus由来α−Glucosidase 1.0U/mL)50μLを添加し、37℃で30分間反応させた後、波長405nmにおける吸光度を測定した。なお、各生薬エキスは最終濃度として6.25、12.5、25、50および100μg/mLの各濃度になるように添加した。
結果を表1および図1に示した。
Figure 2004039388
表および図から明らかなように、オトコエシを基原とするハイショウソウはα−グルコシダーゼ阻害作用を示すことが明らかになった。
試験例2(α−グルコシダーゼ阻害作用の測定)
実施例1で得たハイショウソウエキス(2.5%DMSOで溶解)および比較例1で得たグンバイナズナ由来のエキスを用い、試験例1で示した方法で、α−グルコシダーゼ阻害作用を測定した。なお、各生薬エキスは最終濃度として1.56、3.13、6.25、12.5、および25μg/mLの各濃度で添加した。
結果を表2および図2に示した。
Figure 2004039388
表および図から明らかなように、オミナエシ科のオトコエシを基原とするハイショウソウはα−グルコシダーゼ阻害作用を示すことが明らかになった。一方グンバイナズナ由来のエキスには十分な効果がなかった。
試験例3(シュークロース投与後の血糖上昇抑制作用の測定)
実施例1で得たオトコエシを基原とするハイショウソウエキスのシュークロース投与後の血糖上昇に及ぼす影響を検討した。
SD系雄性ラット(6週齢、日本チャールスリバー)に生薬エキスを300mg/kg(乾燥エキス換算)の用量で経口投与し、5分後にシュークロース溶液を2g/kgの用量で経口投与した。また、正常群(シュークロース非投与)および対照群には水を経口投与した。
20分後、エーテル麻酔下で後大静脈より採血し、遠心分離法(3000rpm、20℃)により、血清を分離した。血清中のグルコース濃度はグルコースCIIテストワコー(和光純薬)を用いて定量した。
結果を表3および図3に示した。
Figure 2004039388
表および図から明らかなように、ハイショウソウはシュークロース投与による血糖値の上昇を有意に抑制することが明らかになった。これらのことから、ハイショウソウは糖の吸収を抑制し、糖尿病、肥満に対して予防あるいは改善作用を有することが明らかになった。
試験例4(シュークロース投与後の血糖上昇抑制作用の測定)
実施例1で得たオトコエシを基原とするハイショウソウエキスを150、300、600mg/kg(乾燥エキス換算)の用量で経口投与し、試験例3に記載した方法で、シュークロース投与後の血糖上昇抑制作用の測定を行った。
結果は表4および図4に示した。
Figure 2004039388
表および図から明らかなようにオトコエシを基原とするハイショウソウエキスは濃度依存的にシュークロース負荷による血糖値の上昇を抑制する作用を示し、オトコエシを基原とするハイショウソウが糖尿病、肥満に対して予防あるいは改善作用を有することが明らかになった。
試験例5(ob/obマウスの血糖上昇抑制作用の測定)
ob/obマウス(高血糖を発現するマウス)に実施例1で得たオトコエシを基原とするハイショウソウエキスを300mg/kg(乾燥エキス換算)の用量で1日1回8週間経口投与した。最終投与日の夕方5時から絶食し、翌日にエーテル麻酔下、後大静脈から採血した。得られた血液から遠心分離法(3000rpm、20℃)により血清を分離し、試験例3に記載した方法に従って血清中のグルコース濃度を定量した。
結果を表5および図5に示した。
Figure 2004039388
表および図から明らかなようにオトコエシを基原とするハイショウソウはob/obマウスの血糖上昇を有意に抑制し、糖尿病を予防または改善することが明らかになった。
本発明はα−グルコシダーゼ阻害作用に基づく糖質の吸収阻害、食後の過血糖の改善に有効であることから肥満、糖尿病の予防または改善に有効である。
本発明により、糖質の過剰摂取による血糖値の上昇を予防または改善でき、さらには、肥満、糖尿病等の生活習慣病を予防あるいは改善できる安全性の高い薬剤あるいは食品の提供が可能になった。

Claims (8)

  1. オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
  2. オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有する糖尿病の予防または改善剤。
  3. オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウを含有する肥満の予防または改善剤。
  4. オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
  5. オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有する糖尿病の予防または改善剤。
  6. オトコエシまたはオミナエシを基原とするハイショウソウを含有する肥満の予防または改善剤。
  7. 糖尿病または肥満の予防または治療薬製造のためのオミナエシ科植物を基原とするハイショウソウの使用。
  8. オミナエシ科植物を基原とするハイショウソウによる糖尿病または肥満の予防または治療方法。
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