JPWO2004033670A1 - 共重合ポリエステルの組成をコントロールする培養方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、低コストで高生産性を確保しつつ、生分解性共重合ポリエステルの組成を任意に制御できる技術を開発することである。本発明は、微生物による共重合ポリエステルの生産において、炭素源として使用する油脂の比基質供給速度を、培養の全期間を通じて一定値に制御するか、又は、培養の菌体増殖期とポリエステル蓄積期とで変化させ、それぞれ期間中は一定値に制御することを特徴とする培養方法である。また、本発明は、油脂の種類及び/又は油脂の比基質供給速度の制御値を選択することによって、生産される共重合ポリエステルの組成をコントロールする培養方法である。

Description

本発明は、微生物より生産される共重合ポリエステルの組成をコントロールする培養方法に関する。
現在までに数多くの微生物において、エネルギー貯蔵物質としてポリエステルを菌体内に蓄積することが知られている。その代表例がポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と略す)である。P(3HB)は熱可塑性高分子であり、自然環境中で生物的に分解されることから、環境にやさしいグリーンプラスチックとして注目されている。しかし、P(3HB)は結晶性が高いため、硬くて脆い性質を持っていることから実用的には応用範囲が限られる。この為、この性質の改良を目的とした研究がなされてきた。
その中で、3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと略す)と3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVと略す)からなる共重合体P(3HB−co−3HV)の製造方法が開発された(特開昭57−150393号公報;特開昭59−220192号公報;特表平11−500008号公報)。このP(3HB−co−3HV)はP(3HB)に比べると柔軟性に富むため、幅広い用途に応用できると考えられた。これらの特許文献における共重合体の製造方法は、従来のP(3HB)の製造方法と同様に、前段で菌体を増殖させ、後段で窒素又はリンを制限して微生物を培養し、共重合体を製造するものである。またP(3HB−co−3HV)については、3HVの含有率が増えるにつれて柔軟性が変化することから、3HVの組成比を制御する研究もなされてきた。例えば、特開昭57−150393号公報や特開昭63−269989号公報ではプロピオン酸を使用し、また、特公平7−79705号公報ではプロパン−1−オールを使用し、それらの培地中への添加量を変えることにより3HVの含有率を変化させており、3HV含有率が10〜90mol%のP(3HB−co−3HV)が製造されている。しかしながら、実際のところP(3HB−co−3HV)は3HV含有率を増加させても、それに伴う物性の変化が乏しく、特にフィルム等に使用するのに要求される程には柔軟性が向上しないため、シャンプーボトルや使い捨て剃刀の取っ手等、硬質成型体の分野にしか利用されなかった。
このような状況下、上述の3HBと3HVの共重合体の欠点をカバーすることを目的とし、3HBと3HV以外のヒドロキシ酸、例えば、3−ヒドロキシプロピオン酸(以下、3HPと略す)、3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと略す)、3−ヒドロキシオクタン酸(以下、3HOと略す)、3−ヒドロキシノナン酸(以下、3HNと略す)、3−ヒドロキシデカン酸(以下、3HDと略す)、3−ヒドロキシドデカン酸(以下、3HDDと略す)等を構成要素として含む共重合ポリエステルが精力的に研究されている(Poirier Y.,Nawrath C.,Somerville C,BIO/TECHNOLOGY,13,142−150,1995年)。その中でも、注目すべきものとして、3HBと3HHを含む共重合ポリエステル、特に3HBと3HHのみからなる共重合体P(3HB−co−3HH)と、その製造方法についての研究がある(特開平5−93049号公報;特開平7−265065号公報)。これらの特許文献のP(3HB−co−3HH)の製造方法は、土壌より単離されたアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)を用いて、オレイン酸等の脂肪酸やオリーブオイル等の油脂から発酵生産するものである。また、P(3HB−co−3HH)の性質に関する研究もなされている(Y.Doi,S.Kitamura,H.Abe,Macromolecules 28,4822−4823,1995年)。この報告では炭素数が12個以上の脂肪酸を唯一の炭素源としてアエロモナス・キャビエ(A.caviae)を培養し、3HH含有率が11〜19mol%のP(3HB−co−3HH)を発酵生産している。その結果、このP(3HB−co−3HH)は、3HH含有率が増加するにしたがって、P(3HB)の硬くて脆い性質から次第に柔軟な性質を示すようになり、P(3HB−co−3HV)を上回る柔軟性を示すことが明らかにされた。
また、アエロモナス・キャビエ(A.caviae)のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)シンターゼ遺伝子をクローニングし、この遺伝子を90%以上の高ポリヒドロキシ酪酸(PHB)蓄積能を有するラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)に導入した組換え株を用いて、脂肪酸を炭素源としてP(3HB−co−3HH)を生産するとの報告がなされた(T.Fukui,Y.doi,J.Bacteriol.,vol.179,No.15,4821−4830,1997年;特開平10−108682号公報)。このなかで、オクタン酸ナトリウムを炭素源とすることで、3HH含有率が10〜20mol%のP(3HB−co−3HH)が生産できると報告している。さらに、最近になって、上記組み換え株を用いてポリエステルを生産する際に、複数種の炭素源を用いる方法が開示され、炭素源として用いる油脂や脂肪酸の炭素数が、P(3HB−co−3HH)の3HH含有率に影響を与えることが明らかとなった(特開2001−340078号公報)。
今後、P(3HB−co−3HH)等の共重合ポリエステルのモノマーユニットの組成比、特に3HH含有率を広い任意の範囲でコントロールして共重合体を製造することができれば、硬い共重合体から柔らかい共重合体まで発酵生産可能となり、テレビの筐体等のように硬さを要求されるものから、糸やフィルム等のような柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できると考えられている。
上述のように、P(3HB−co−3HH)等の共重合ポリエステルについては、その組成比を任意に制御できる技術を確立することが実用化、商業化を実現する上で、また消費者の要求を満足する上で、この上なく重要となる。もうひとつ実用化の障壁となっているのは生産コストの問題である。それに対し、従来の共重合ポリエステルの製造方法においては、3HB以外のモノマーユニットを共重合させるために、あるいはその含有率を高めるために、高価な特定の脂肪酸を培地中に添加する必要があった(特表平11−500008号公報;特開2001−340078号公報)。さらに、P(3HB−co−3HH)の場合は、既に開示されているいずれの方法においても菌体の生産性が低く、また3HH含有率を向上させようとすると高価な炭素源が必要となるばかりでなくさらに生産性が低下する傾向があり、従来の方法は本ポリマーの実用化に向けた生産方法としては適用できない。上述したように、共重合ポリエステルについてはそのモノマーユニットの組成比を制御することが幅広い分野へ応用するために必要不可欠である。そこで低コストで高い菌体生産性とポリマー含量を実現し、かつ共重合ポリエステルの組成を任意に制御することができる生産方法の開発が待望されていた。
発明の要約
本発明は、上記現状に鑑み、生分解性共重合ポリエステルの組成を制御でき、かつ低コストで、高い生産性を実現する生産方法を提供するものである。
本発明者らは様々な検討を行い、特に発酵原料に関しては、価格、供給安定性、品質の安定性、菌体あるいはポリマーの収率等を検討した結果、共重合ポリエステルを蓄積する微生物を、安価な油脂を炭素源とする培地を使用して培養し、高い生産性を保持しつつ、かつ、炭素源として特に高価な脂肪酸等を使用しなくてもモノマー組成を任意の範囲内に良好に制御することに成功した。
すなわち、本発明の要旨は、微生物を用いて共重合ポリエステルを生産する際に、炭素源として使用する油脂の比基質供給速度を、培養の全期間を通じて一定値に制御する、又は、培養期間を菌体増殖期とポリエステル蓄積期の2つのフェーズに分けてそれぞれのフェーズで一定値に制御する培養方法に関する。さらに、油脂の種類及び/又は油脂の比基質供給速度の制御値を選択することによって、生産される共重合ポリエステルの組成を任意にコントロールする培養方法に関する。
発明の詳細な開示
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステルの組成をコントロールする培養方法は、微生物による共重合ポリエステルの生産において、炭素源として使用する油脂の比基質供給速度を、培養の全期間を通じて一定値に制御する、又は、培養の菌体増殖期とポリエステル蓄積期とで変化させ、それぞれ期間中は一定値に制御することを特徴とする培養方法である。このように、当該培養方法は、微生物を用いて生分解性の共重合ポリエステルを生産する際に適用される。
本発明の培養方法が適用できる共重合ポリエステルとしては、特に限定されず、少なくとも2種のモノマーユニットを重合して得られる共重合ポリエステルである。当該共重合ポリエステルとしては、具体的には、3HBと3HHからなる共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)や、3HBと3HHと3HVの3成分からなる共重合体、その他シュードモナス(Pseudmonas)属細菌によって生産される3HB、3HH、3HO、3HD、3HDD等の多くの成分をその構成要素として含む共重合体を、その代表的なものとして挙げる事ができる(I.K.P.Tan,K.S.Kumar,M.Theanmalar,S.N.Gan,B.Gordon III,Appl.Microbiol.Biotechnol.,47,207−211,1997; R.D.Ashby,T.A.Foglia,Appl.Microbiol.Biotechnol.,49,431−437,1998)。この中でも、共重合ポリエステルのモノマーユニットの組成比、特に3HHの含有率が変化することにより、非常に幅広くポリエステルの特性が変化するという点で、そのモノマーユニットの一つとして3HHを含む共重合体が好ましく、P(3HB−co−3HH)がより好ましい。
本発明の培養方法において、使用する微生物としては特に制限はなく、天然から単離された微生物や、菌株の寄託機関(例えばIFO、ATCC等)に寄託されている微生物等を使用できる。具体的には、アルカリゲネス(Alcalig enes)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アエロモナス(Aer omonas)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリキア(Escherichia)属等の細菌類を使用することができる。
また、上記微生物が、野生型の状態では目的とする共重合体を生産できない、もしくはその生産量が低い場合には、上記微生物に、目的とする共重合ポリエステルの重合酵素遺伝子を導入して形質転換し、得られた形質転換微生物を用いることができる。形質転換微生物を作製する場合、ポリエステル重合酵素遺伝子を含む組換えベクターを利用する等の一般的な方法を用いることができ、該ベクターには、その菌体内で自律的に増殖しうるプラスミドベクターを用いることができる。また、該ポリエステル重合酵素遺伝子を直接宿主の染色体に組み込んでも良く、宿主としては、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリキア(Escherich ia)属等の細菌類を用いることができる。
本発明の共重合ポリエステルの生産において使用されるポリエステル重合酵素遺伝子としては、特に限定されないが、アエロモナス・キャビエ(Aeromo nas caviae)より単離された遺伝子が好ましく、例えば、特開平10−108682号公報に記載されている遺伝子断片を用いることができる。
また、微生物に組換えベクターを導入するには、公知の方法により行うことができる。例えば、接合法、カルシウム法やエレクトロポレーション法等を用いることができる。
本発明に用いられる微生物の一例として、ラルストニア・ユートロファ(Ra lstonia eutropha)に、アエロモナス・キャビエ(Aerom onas caviae)由来のポリエステル重合酵素遺伝子を導入した、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDEE32d13株(T.Fukui,Y.Doi,Appl.Microbiol.Biotechnol.,49,333−336,1998)を好ましく用いることができる。
なお、当該Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDEE32d13株は、Alcaligenes eutrophus AC32の名称で、FERM BP−6038の受託番号にて、平成9年8月7日付で、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ブダペスト条約に基づいて国際寄託されている。
本発明の培養方法において、共重合ポリエステルの生産には、発酵原料として、価格、供給安定性、品質の安定性、菌体あるいはポリエステルの収率等の点から、安価な油脂を主要な炭素源として使用する。ここで「主要な」とは、炭素源全体の50%以上を占めることを意味する。油脂以外の炭素源としては、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、ラクトース等の糖類を用いることができる。
炭素源以外の栄養源としては、窒素源、無機塩類、ビタミン類、その他の一般的な有機栄養源を含む培地が使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩等の無機窒素源;ペプトン、肉エキス、酵母エキス等の有機窒素源が挙げられる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等が挙げられる。その他の有機栄養源としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸等が挙げられる。しかしながら、生産コスト抑制の観点からは、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等の有機窒素源;グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン類の使用は最少量とする方が好ましい。特に、高価な有機窒素源であるペプトン、酵母エキス、肉エキス等の使用は最少量に留める方が好ましい。
一般に、微生物によるポリエステルの生産は、窒素やリン等の、増殖に必要な栄養素をある程度制限した条件下で好ましく達成される。本発明においても、そのような栄養制限を行うことができ、そのなかでも、窒素又はリンを制限するのがより好ましく、窒素は制限せずにリンを制限するのがさらに好ましい。なお、リンを制限するというのは、培地中にリン原子を全く含まないということではなく、増殖に必要とされる栄養源としてのリンが最低限含まれているということであり、すなわち菌体の増殖量がリンによって規定されている状態をいうのであって、培地中に無機塩として少量含まれるものを排除するものではない。
本発明において炭素源として使用する油脂としては、大豆油、コーン油、綿実油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、落花生油等の比較的安定的に供給される天然油脂;これらの油脂を分別して得られる各画分(例えば、パームWオレイン油(パーム油を2回無溶媒分別した低融点画分)、パーム核油オレイン(パーム核油を1回無溶媒分別した低融点画分)等)である分別油脂;これら天然油脂やその画分を化学的あるいは生物化学的に処理した合成油;さらにはこれらを混合した混合油等が使用できる。このなかでも、天然油脂、分別油脂が好ましく、コストの点からは天然油脂や安価な分別油脂を使用するのがより好ましい。
ここで、使用する油脂の種類を適宜選択することによって、共重合ポリエステルを構成するモノマーユニットの種類やその組成比を制御することができる。例えば、3HHを含む共重合ポリエステルの生産において、3HH含有率の高い共重合ポリエステルを得たい場合には、油脂の構成脂肪酸としてラウリン酸を含有する油脂、俗にラウリン油脂と称される油脂を使用することが好ましい。構成脂肪酸としてラウリン酸を含有する油脂としては、パーム核油やヤシ油等の天然油脂、パーム核油オレイン等の分別油脂や、それらラウリン油脂を含む混合油等が挙げられる。
さらに具体的にP(3HB−co−3HH)の場合を説明すると、ラウリン系の油脂を用いた場合、4〜20mol%の比較的高い3HH含有率を有するP(3HB−co−3HH)を得ることができ、大豆油、コーン油、綿実油、パーム油、落花生油あるいはこれらの分別油脂等を用いた場合は1〜10mol%の比較的低い3HH含有率のP(3HB−co−3HH)が得られる。さらにこれらの油脂を2種類あるいはそれ以上混合した油脂を用い、その混合割合を任意に変化させることで、P(3HB−co−3HH)の3HH含有率を任意にコントロールできる。
また、炭素源として使用する油脂が、その構成脂肪酸としてラウリン酸を含む油脂であり、かつリン制限下で培養することが特に好ましい。
一般に、微生物の培養において油脂を添加する場合、その添加方法としては、一度に大量に添加する、分割して添加する、連続的にあるいは間欠的に流加する等の方法が考えられるが、本発明者の検討結果によれば、一度に多量添加すると生成する脂肪酸により細胞毒性が現れたり、脂肪酸に起因する発泡が激しくなり、実際のオペレーションが困難な状況に陥ることがあることが判った。したがって、本発明においては、炭素源である油脂を、ポンプ等を使用して連続流加あるいは間欠流加する方法を採択する。本発明者らが炭素源である油脂の最適な添加方法を検討した結果、その流加方法を工夫することにより、発泡等の操作上の問題を回避するばかりではなく、生産される共重合ポリエステルの組成をも制御できることを見いだした。以下、本発明の培養方法で実施される油脂の流加方法について具体的に記述する。
本発明の培養方法において、炭素源である油脂は、その比基質供給速度が、培養の全期間を通じて、又は、培養の菌体増殖期とポリエステル蓄積期のそれぞれのフェーズ期間内で、ほぼ一定値となるよう流加される。
ここで、比基質供給速度とは、単位時間に正味の菌体重量あたり供給される油脂の量、つまり、正味の菌体重量あたりの油脂流加速度として定義される培養変数である。また、正味の菌体重量とは、全菌体重量から含有するポリエステル重量を差し引いた菌体重量(乾燥菌体重量)である。すなわち、比基質供給速度は以下の式(1)より求められる値である。
比基質供給速度=油脂流加速度(g/h)/正味の菌体重量(g)
=単位時間あたりの油脂の供給量(g/h)/
(全菌体重量(g)−ポリエステル含有量(g))
本発明において、比基質供給速度を設定し、それを一定値に制御するためには正味の菌体重量の変化を予測する必要がある。本発明者らは正味の菌体重量の変化について鋭意検討した結果、実用に耐えうる正味の菌体の増殖曲線を予備実験を通じて推定することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明者らの検討結果によれば、発泡を抑制し、安定した培養を実現できる油脂の流加速度範囲では、培養液中に存在する油脂のホールドアップ(全培養液量(培地+菌体+油脂)に占める油脂の容積割合)は10%以下と小さく、攪拌条件と通気条件によって決定される油脂の液滴径には大きな変化は見られない。したがって、液滴界面積に支配される基質の取り込み速度にも大きな差がなく、結果的に油脂の種類及び他の培養条件が同じであれば、正味の菌体重量の変化は、安定運転可能な油脂の流加速度範囲では、ほぼひとつの増殖曲線で近似して差し支えないと考えられる。
また、生分解性ポリエステルの生産は、後述するように窒素あるいはリンを制限した培養条件下で行われるので、窒素あるいはリンが枯渇した後は、正味の菌体量はほとんど変化せず、一定となる。したがって、油脂の種類と培養条件が決まれば、その条件下で油脂の流加速度を、油脂供給が不十分とならず、また過剰供給にならない範囲内で適当に変化させ(実操作では培養上清中の油脂層の厚さを観察しながら流加速度を調整する)、正味の菌体量の変化のデータを採取すれば良い。このようにして正味の菌体の増殖曲線を得ることができる。それを基本に、比基質供給速度が培養の全期間、又は、上記特定のフェーズ期間内では設定されたある一定値となるように、上記式(1)に基づいて油脂の流加速度を計算し、その計算結果にしたがって、油脂の流加速度を連続的(段階的)あるいは間欠的に変化させて流加すればよい。
また、間接的な方法としては、通気排ガス中の酸素濃度、二酸化炭素濃度を測定して、酸素消費速度あるいは二酸化炭素発生速度から正味の菌体量を推定してリアルタイムで比基質供給速度を制御することもできる。しかしながら、本発明者らの検討結果によれば、窒素あるいはリンが枯渇していない菌体増殖期と枯渇後のポリエステル蓄積期では上述の呼吸特性に大きな変化が認められるため、予め増殖期及び生産期の呼吸特性を詳細に調べておくことが好ましい。
本発明において、油脂の比基質供給速度を一定値に制御する場合、培養の全期間を通じて油脂の比基質供給速度をある一定値に制御する方法と、培養全期間を菌体増殖期とポリエステル蓄積期の2つのフェーズに分け、それぞれのフェーズにおいて異なる比基質供給速度の値を設定し、それぞれのフェーズ期間内では設定された一定の比基質供給速度となるように制御する方法の2通りがあり、どちらの方法を用いても構わない。油脂の比基質供給速度を、培養の全期間中あるいは培養の特定のフェーズ期間内、一定値に制御するためには、設定された比基質供給速度の値を満たすように油脂の流加速度を連続的(段階的)にあるいは間欠的に変化させる必要がある。
油脂の流加速度を連続的(段階的)に変化させるには、例えばコンピューターを利用して流加速度を制御することができる。また、間欠的あるいは段階的に変化させる場合は、自動で制御することもできるが、手動でも流加速度の操作が可能である点で、簡便である。間欠的あるいは段階的に変化させる場合、厳密には予め設定された比基質供給速度の値を常に完全に満たすわけではないが、その平均値として上記設定された比基質供給速度の値を満たしていればよい。
このように、油脂の比基質供給速度を、培養の全期間、又は、培養の特定のフェーズ期間内で、設定されたある一定値となるように制御する本発明の培養方法により、培養初期に所定量の油脂を全量添加したり、培養期間中一定の油脂流加量で流加培養したり、比基質供給速度に基づかず経験的に油脂の添加量を変化させるといった従来の培養方法では不十分であった、共重合ポリエステルの生産性の向上とモノマーユニットの組成比の制御が初めて達成される。
本明細書において、培養全期間というのは、ポリエステル生産のための本培養における培養開始から培養終了時までの全期間のことである。また、比基質供給速度が培養全期間を通じて一定値となるように制御するというのは、すなわち菌体増殖期とポリエステル蓄積期の両方の期間で同じ一定値の比基質供給速度を選択してその値となるように油脂の流加速度を制御するということである。ここでいう、培養の菌体増殖期やポリエステル蓄積期というのは、培養期間を大きく2つのフェーズに分けた場合の、それぞれ、培地中に窒素あるいはリンが十分量存在し、菌体増殖が活発に行われ、ポリエステルの蓄積速度がそれほど大きくない前半のフェーズ(菌体増殖期)と、培地中の窒素あるいはリンの濃度が低下し、菌体増殖が制限され、ポリエステルの蓄積速度が大きくなった後半のフェーズ(ポリエステル蓄積期)である。それぞれの培養フェーズによって異なる比基質供給速度の値を設定し、各フェーズの期間内では比基質供給速度をその設定された一定値に制御して培養することによって、共重合ポリエステルの生産性の向上と、モノマーユニットの組成比の制御をより効率的に行うことができる。
本発明の方法で適用される油脂の比基質供給速度の範囲は、使用する油脂の種類や培養のフェーズにもよるが、おおむね0.05〜0.20(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1、好ましくは0.06〜0.15(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1、より好ましくは0.07〜0.12(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1である。
本発明において、比基質供給速度が小さいほどP(3HB−co−3HH)の3HH含有率が上昇することが初めて見いだされた。従って、3HH含有率の高いP(3HB−co−3HH)を得たい場合には、比基質供給速度を低く(例えば0.06〜0.08(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1)設定して培養すればよい。また、培養のフェーズによって比基質供給速度を変化させる場合には、培養前半の菌体増殖期における比基質供給速度の値を高め(例えば0.09〜0.13(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量) ×(h;時間)−1)に、培養後半のポリエステル蓄積期における比基質供給速度の値を低め(例えば0.06〜0.08(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1)に設定することで、共重合ポリエステルの生産性を低下させることなく、より効率的に3HH含有率を向上させることができる。
また、上述したように、油脂の種類を適宜選択することでも、生産される共重合ポリエステルの組成を制御することが可能である。従って、油脂の種類、あるいは油脂の比基質供給速度の制御値を変えることにより、さらには両者の適切な組み合わせを選択することにより、生産される共重合ポリエステルの組成、例えばP(3HB−co−3HH)の3HH含有率等を、所望の組成やその割合に制御することが可能となる。
培養温度は、その菌の生育可能な温度であればよいが、20〜40℃が好ましく、より好ましくは25〜35℃である。培養時間としては、特に制限はないが、1〜7日程度で良く、好ましくは40〜70時間である。
以上説明したポリエステル生産の際の、比基質供給速度の制御、油脂の種類の選択や、窒素又はリンの制限等は、ポリエステル生産培地での本培養で行うものである。なお、ポリエステル生産培地での本培養の前に、菌体をある程度まで増殖させておくために、通常、種培地や前培養培地であらかじめ培養する。その場合には、種培地や前培養培地で用いる栄養源等は上述と同様のものを用いることができ、これら培地での培養温度はそれぞれ上記ポリエステル生産培地での本培養と同程度でよく、培養時間はそれぞれ好ましくは1〜2日である。
また、形質転換微生物を使用する際は、例えば前培養培地で培養中に、ベクターに存在する耐性遺伝子に対応するカナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等の抗生物質を添加しても良い。
本発明において、共重合ポリエステルを微生物菌体から回収する方法としては特に限定されず、公知の溶媒抽出法、物理的破砕法、化学的処理等が採用でき、例えば、次のような方法が使用できる。培養終了後、遠心分離器等を用いて、培養液から菌体を分離し、その菌体を蒸留水及びメタノール等により洗浄した後、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてポリエステルを抽出する。このポリエステルを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてポリエステルを沈殿させる。濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてポリエステルを回収する。
得られたポリエステルのモノマーユニットの分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法や核磁気共鳴法等により行う。
図1は、パーム核油オレインを用いた2回の予備実験における、単位培養液量あたりの正味の乾燥菌体重量(g/L)の実測値(図中の▲、◆)の変化と、それより求められる単位培養液量あたりの正味の乾燥菌体重量の増殖曲線を示す図である。
図2は、比基質供給速度を0.09(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に設定した場合の、パーム核油オレインの単位培養液量あたりの流加速度((g−oil/h)L)の理論値(点線)と、実際に実施例で流加した油脂の単位培養液量あたりの流加速度の段階的な変化パターン(実線)を示す図である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例においては、いずれも共重合ポリエステルとして、P(3HB−co−3HH)を生産した。もちろん本発明はこれら実施例にその技術範囲を限定するものではなく、P(3HB−co−3HH)の生産に限られるものではない。
例えば、用いる微生物やポリエステル重合酵素遺伝子の種類を変えたり、炭素源として他の油脂を用いたり、特定の脂肪酸を添加することによって、P(3HB−co−3HH)以外の他の共重合体を生産することが可能である。
なお、下記の各表において、比基質供給速度の単位は、特に断りのない限り、(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1とする。
Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDEE32d13株(T.Fukui,Y.Doi,Appl.Microbiol.Biotechnol.,49,333−336,1998)(以下、Red13株と略す)を次のように培養した。なお、Red13株は、Alcaligeneseutrophus AC32の名称で、FERM BP−6038の受託番号にて、平成9年8月7日付で、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ブダペスト条約に基づいて国際寄託されている。
種培地の組成は、1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v%Yeast−extract、0.9w/v%NaPO・12HO、0.15w/v%KHPO、(pH6.8)とした。
前培養培地の組成は、1.1w/v% NaPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v%(NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、2.5w/v%パームWオレイン油、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、5×10−6w/v% カナマイシンとした。
ポリエステル生産培地の組成は、0.385w/v% NaPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v%(NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、0.05w/v%BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。炭素源は、パーム核油を分別した低融点画分であるパーム核油オレインを用い、培養全期間を通じ、比基質供給速度がそれぞれ、0.08、0.09、0.10(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1となるように流加した。
比基質供給速度の制御の基本となる正味の乾燥菌体重量の増殖曲線については、予備実験として、パーム核油オレインを用いて培養上清中の油脂層の厚さを観察しながら流加速度を調整して培養した結果を用いて求めた。すなわち、予備実験における単位培養液量あたりの正味の乾燥菌体重量の変化のデータから、図1のように培養36時間目までを直線増殖とし、それ以降は単位培養液量あたりの正味の乾燥菌体重量は一定としたものを採用した。
図2及び表1には、図1で求めた正味の乾燥菌体重量の増殖曲線を用い、比基質供給速度を0.09(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に設定した場合の、パーム核油オレインの単位培養液量あたりの流加速度の理論値(点線)と、実際に以下の実施例で流加した油脂の単位培養液量あたりの流加速度の段階的な変化パターン(実線)を示した。
なお、図1,2及び下記表1〜8において、Lは、培養液量(培地、菌体、油脂の合計容量)1リットルあたりを示し、hは時間を示すものである。
Figure 2004033670
Red13株のグリセロールストック(50μl)を種培地(10ml)に接種して24時間培養した後、3Lの前培養培地を入れた5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製MDL−500型)に0.2v/v%接種した。運転条件は、培養温度30℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養した。pHコントロールには7%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
ポリエステル生産培養は、6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製MDL−1000型)に前培養種母を1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量3.6L/minとし、pHは6.7から6.8の間でコントロールした。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。培養は60時間行い、培養16時間目以降4時間おきにサンプリングし、遠心分離によって菌体を回収し、メタノールで洗浄後、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
得られた乾燥菌体約1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のポリエステルを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が約30mlになるまで濃縮後、約90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したポリエステルをろ別後、50℃で3時間真空乾燥した。乾燥ポリエステルの重量を測定し、菌体内のポリエステル含量を算出した。
また、得られた乾燥ポリエステル約20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することでポリエステル分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニットの組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所社製GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。温度条件は、初発温度100〜200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温した。
比基質供給速度の制御が共重合ポリエステルの組成比及び生産性に与える影響を表2に示した。
Figure 2004033670
この結果から、比基質供給速度を低く制御するほど生産性は少し低下するが、共重合ポリエステル中の3HH含有率が向上する事がわかった。また培養中の発泡は比基質供給速度の設定値が低いほど良好に抑制される様子が観察された。
パーム核油オレインのかわりに大豆油を用いた以外は、実施例1と同様の培地・条件で培養を行い、表3に示す結果を得た。
Figure 2004033670
表3に示されているように、大豆油でもパーム核油オレインと同様に比基質供給速度を低く制御する事によって、ポリエステル中の3HH含有率が向上する事がわかった。しかしながら、同じ比基質供給速度条件下での3HH含有率を大豆油と実施例1のパーム核油オレインで比較すると、大豆油の方が明らかに低く、基質として使用する油脂の違いによって、同じように比基質供給速度を同じ値に制御しても得られる3HH含有率に差があることがわかった。
発泡については、実施例1と同様に比基質供給速度の設定値が最も低い0.08(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に制御した時に良好に抑制された。
基質としてパーム核油オレインのかわりに、コーン油、綿実油、パームWオレイン油、パーム核油、ヤシ油、落花生油を用い、比基質供給速度をそれぞれの油脂について、0.06(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1及び0.12(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に制御した以外は、実施例1と同様の培地・条件で培養を行い、表4に示す結果を得た。表4には、比基質供給速度がポリエステルの生産性及び3HH含有率に与える影響をそれぞれの油脂についてまとめた(培養60時間目の結果のみ比較した)。
Figure 2004033670
表4に示されているように、いずれの油脂においても比基質供給速度を低く制御する事によって、生産性は少し低下するが共重合ポリエステル中の3HH含有率が向上する事がわかった。また培養60時間目で到達する3HH組成については、基質として使用する油脂の違いによって、比基質供給速度を同じ値に制御しても明らかな差が認められ、ラウリン系の油脂であるヤシ油、パーム核油では、約7〜14mol%の比較的高い3HH含有率を有するP(3HB−co−3HH)が得られ、コーン油、綿実油、パームWオレイン油、落花生油では、約3〜6mol%の比較的低い3HH含有率を有するP(3HB−co−3HH)が得られることがわかった。表4の結果は、油脂の種類あるいは比基質供給速度の設定値を選択し、両者を適切に組み合わせることにより、高い生産性を確保しながら、所望の3HH含有率を有する共重合ポリエステルを得ることが可能となることを示している。
基質としてパーム核油オレインと大豆油の混合油3種類、つまり、混合油A(パーム核油オレイン/大豆油=75/25(v/v))、混合油B(パーム核油オレイン/大豆油=50/50(v/v))、混合油C(パーム核油オレイン/大豆油=25/75(v/v))を用いた以外は、実施例1と同様の培地・条件で培養を行い、表5〜7に示す結果を得た。表5〜7には比基質供給速度がポリエステルの生産性及び3HH含有率に与える影響をそれぞれの混合油脂についてまとめた。
Figure 2004033670
Figure 2004033670
Figure 2004033670
表5〜7に示されているように、いずれの混合油脂においても比基質供給速度を低く制御する事によって、生産性は少し低下するがポリエステル中の3HH含有率が向上する事がわかった。また、3HH含有率については、混合油中のパーム核油オレインの割合が多いほど高くなることがわかった。これは、表5〜7、及び、パーム核油オレイン、大豆油がそれぞれ100%の場合(実施例1の表2、実施例2の表3)を合わせた結果からも言えることである。表5〜7に示された結果は、実施例3で示された油脂の種類と比基質供給速度制御値を組み合わせることに加え、複数の油脂を混合する、さらにはその混合割合を調整することにより、高い生産性を確保しながら、所望の3HH含有率を有するポリエステルを得ることが可能となることを示している。
パーム核油オレインを炭素源とし、菌体増殖期である培養36時間目までは比基質供給速度を0.09(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に、その後のポリエステル蓄積期である培養36時間目以降は0.08(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に制御した以外は、実施例1と同様にして培養を行った。
Figure 2004033670
表8に示された結果を、実施例1の表2に示された結果と比較するとわかるように、ポリエステル蓄積期に比基質供給速度を少し下げて培養することにより、培養全期間を通じて0.09(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に制御した場合に比べて、生産性を低下させることなく、培養全期間を通じて0.08(g;油脂)×(g;正味乾燥菌体重量)−1×(h;時間)−1に制御した場合と同等以上の高3HH含有率を得ることができた。
本発明の方法において、炭素源として用いる油脂の比基質供給速度の制御値を選択することによって、さらには、油脂の比基質供給速度の制御値と油脂の種類を適切に組み合わせることによって、生分解性ポリマーである共重合ポリエステルの物性を大きく変化させる同ポリエステルの組成を任意に制御できるようになり、かつ高い生産性を安定して得ることが可能となる。したがって、応用範囲の広い共重合ポリエステルを、低コストで工業的に生産、提供できるようになる。加えて、比基質供給速度を制御することにより、油脂の過剰供給に起因する発泡を良好に抑制でき、培養の安定化が図れる。

Claims (8)

  1. 微生物による共重合ポリエステルの生産において、炭素源として使用する油脂の比基質供給速度を、培養の全期間を通じて一定値に制御することを特徴とする培養方法。
  2. 微生物による共重合ポリエステルの生産において、炭素源として使用する油脂の比基質供給速度を、培養の菌体増殖期とポリエステル蓄積期とで変化させ、それぞれ期間中は一定値に制御することを特徴とする培養方法。
  3. 油脂の種類及び/又は油脂の比基質供給速度の制御値を選択することによって、生産される共重合ポリエステルの組成をコントロールすることを特徴とする請求の範囲第1又は2項記載の培養方法。
  4. 炭素源として使用する油脂が、大豆油、コーン油、綿実油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、落花生油、及び、これらの油脂を分別して得られる分別油脂の中から選ばれる少なくとも1種の油脂を含む油脂である請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の培養方法。
  5. 炭素源として使用する油脂が、その構成脂肪酸としてラウリン酸を含む油脂であり、かつリン制限下で培養することを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の培養方法。
  6. 微生物が、ラルストニア(Ralstonia)属、シュードモナス( seudomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、及び、エシェリキア(Escheric hia)属からなる群から選択される属に属する微生物である請求の範囲第1〜5項のいずれかに記載の培養方法。
  7. 微生物が、ポリエステル重合酵素遺伝子を組み込まれた形質転換微生物である請求の範囲第1〜6項のいずれかに記載の培養方法。
  8. 共重合ポリエステルが、3−ヒドロキシヘキサン酸を含む共重合ポリエステルである請求の範囲第1〜7項のいずれかに記載の培養方法。
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