JPWO2003056009A1 - 翻訳効率制御活性を有するヌクレオチド配列及びその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法、及び該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの調製方法、並びに該ポリヌクレオチドの利用等に関する。
背景技術
細胞内で行われているタンパク質の合成反応は、まず遺伝情報をもつDNAからその情報がmRNAに転写され、リボソーム上でそのmRNAの情報が翻訳されてタンパク質が合成されるという工程で進行している。この細胞内におけるタンパク質合成を生体外で行う方法として、例えば細胞内に備わるタンパク質翻訳装置であるリボソーム等を含む成分を生物体から抽出し、この抽出液に転写または翻訳のための鋳型(以下、包括的に「鋳型」という)、基質となる核酸およびアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、及びその他の有効因子を加えて試験管内で行う方法(以下、これら一連の操作を「無細胞タンパク質合成系」と称することがある)の開発が盛んに行われている(特開平6−98790号公報、特開平6−225783号公報、特開平7−194号公報、特開平9−291号公報、特開平7−147992号公報等)。
無細胞タンパク質合成系は、ペプチド合成速度と翻訳反応の正確性においては生細胞に匹敵する性能を保有しており、かつ複雑な化学反応工程や煩雑な細胞培養工程を必要としない利点を有する。また、最近ではより翻訳効率を高くするために、従来の無細胞タンパク質合成系に用いる細胞、あるいは組織の抽出液中に混入している一群の核酸分解酵素、翻訳阻害タンパク質因子、タンパク質分解酵素等を不活化したり(特開2000−236896号公報)、混入を防ぐ(特開2000−236896号公報)等の開発も行われている。
一方、翻訳効率そのものを向上させるヌクレオチド配列のタンパク質合成効率向上への利用も知られている。そのような翻訳促進配列として、真核生物においては、5’キャップ構造(Shatkin,Cell,9,645−(1976))、コザック配列(Kozak,Nucleic Acid.Res.,12,857−(1984))等があり、また原核生物においてはシャインダルガーノ配列等が知られている。更にはRNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列にも翻訳促進活性があることが見出されており(特許第2814433号公報)、これらの配列を用いてタンパク質合成を効率よく行う方法が開発されている(特開平10−146197号公報)。
しかし、これらの翻訳促進配列は、転写を行うRNAポリメラーゼとの特異性がある等タンパク質合成に利用するのに必ずしも適したものとは言い難かった。また、人工的にランダマイズされた非天然のヌクレオチド配列が翻訳効率制御活性を有する例は知られていなかった。
したがって、本発明の目的は、無細胞タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有する新規のヌクレオチド配列、および該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの取得方法を提供することであり、該ポリヌクレオチドを含む核酸分子を鋳型として用いた、より効率的なタンパク質合成方法等を提供することである。
発明の開示
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、22および57merのランダムな配列を有するポリヌクレオチドを5’非翻訳領域に含む、ルシフェラーゼタンパク質を合成するための鋳型を用いて、コムギ胚芽抽出液による無細胞タンパク質合成を行った後、該反応液からショ糖密度勾配遠心法によりポリリボソーム画分を回収し、該画分中の鋳型RNAに含まれる上記ランダム配列のヌクレオチド配列解析を行い、該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む鋳型を用いてタンパク質合成を行ったところ、翻訳効率が上昇することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明によれば、
1.タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを採取することを特徴とする方法、
2.工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする上記1記載の方法、
3.工程(c)で得られたヌクレオチド配列に変異を導入した配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする上記1記載の方法、
4.ポリリボソーム画分の回収方法が、密度勾配遠心法を利用することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の方法、
5.タンパク質合成系が、コムギ胚芽抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系である上記1〜4のいずれかに記載の方法、
6.1種以上の任意のヌクレオチド配列が、スタートコドンを有さないランダム配列であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の方法、
7.ランダム配列の長さが、3〜200merの範囲内であることを特徴とする上記6記載の方法、
8.翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の方法、
9.翻訳増強活性がRNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする上記8記載の方法、
10.上記1〜9のいずれかに記載の方法により得られる翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチド、
11.配列番号11〜135のいずれかで表されるヌクレオチド配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド、
12.3〜200merの長さの人工的なランダムヌクレオチド配列からなる翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチド、
13.翻訳効率を制御する活性が、RNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする上記12記載のポリヌクレオチド、
14.上記9〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む鋳型、
15.上記14記載の鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法、
16.上記9〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
17.タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を解析することを特徴とする方法、および
18.工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする上記17記載の方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、上記のとおり(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を解析することを特徴とする、タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法;上記工程(c)において、該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを採取することを特徴とする、翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチドの調製方法;および該ポリヌクレオチドの利用に関するものである。以下、本発明について更に詳細に説明する。
(1)任意のヌクレオチド配列を含む鋳型の作製
本発明の方法に用いられるヌクレオチド配列は、翻訳効率を制御する活性があり得る配列であればいずれのものでも良く、例えば、既知遺伝子の5’非翻訳領域に含まれる配列なども挙げられるが、好ましくは3〜200mer、より好ましくは10〜200merの長さの、人工的に合成されたランダム配列であってスタートコドンを有さない配列が用いられる。
該配列を有するポリヌクレオチド群(以下、これを「候補ポリヌクレオチド」と称することがある)の作製方法としては、例えばランダム配列の場合には、通常のオリゴヌクレオチド合成法において、用いるカラムを、4種類の異なる塩基を有する核酸のミクスチャーを含むものにして化学合成する方法等が挙げられる。ここで、スタートコドンを含まないランダム配列にするためには、上記4種類の塩基のうち、A、T、Gのいずれか1種類以上を含まない核酸の混合物か、いずれか1種類をイノシン等に換えた核酸の混合物によって合成する方法が好ましく用いられる。また、ランダム配列を用いる場合には、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を解析したり、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)により増幅するためにその5’端に共通配列を付加することが好ましい。共通配列としては、スタートコドンを有さず、且つPCRのプライマーがアニールし得る配列を有するものならば特に制限はない。その鎖長としては、3〜50merの長さのものが好ましい。
候補ポリヌクレオチドは、これを適当なプロモーター配列と、スタートコドンを有しポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(本明細書中ではこれを「コーディングポリヌクレオチド」と称することがある)との間に挟まれるように結合させて鋳型(転写鋳型)を作製する。コーディングポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、タンパク質合成系において合成され得るものであれば如何なるものであってもよいが、該ポリペプチドの合成量が候補ポリヌクレオチドによる翻訳効率の強弱の指標となるため、それ自体もしくはそれが関与する反応により蛍光や化学発光等の観察しやすい信号を発するものが好ましく、更には該信号量とそのタンパク質量が相関するものが好ましい。このようなポリペプチドとしてはルシフェラーゼ等が挙げられる。
コーディングポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドのコーディング領域だけでなく、その転写ターミネーション領域等を含む3’非翻訳領域を含むことが好ましい。3’非翻訳領域としては、ストップコドンより下流の約1.0〜約3.0キロベース程度が好ましく用いられる。これらの3’非翻訳領域は必ずしも該ポリペプチドをコードする遺伝子本来のそれである必要はない。また、プロモーターとしてはその後転写に用いるRNAポリメラーゼに特異的なものを用いることができる。具体的には、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
プロモーター、及びコーディングポリヌクレオチドと候補ポリヌクレオチドの結合方法としては、それ自体既知の常法を用いることができる。具体的には、例えば、プロモーターと候補ポリヌクレオチドの結合には、候補ポリヌクレオチドを化学合成する際に5’側プロモーター配列を連続して合成する方法が用いられる。また、コーディングポリヌクレオチドとの結合方法としては、コーディングポリヌクレオチドを鋳型とし、プロモーター配列を結合して合成された候補ポリヌクレオチドをセンスプライマー、また3’非翻訳領域の3’末端配列からなるポリヌクレオチドをアンチセンスプライマーとしてPCRを行うことにより、それぞれを結合させる方法等が用いられる。
更に、転写、翻訳効率を制御する活性のある既知ヌクレオチド配列を挿入することもできる。このような配列、及び挿入位置としては、真核生物においては、5’キャップ構造(Shatkin,Cell,9,645−(1976))を翻訳鋳型の5’末端に、また、コザック配列(Kozak,Nucleic Acid.Res.,12,857−(1984))を、本発明の候補ポリヌクレオチドとコーディングポリヌクレオチドとの間に挿入すること等が、また原核生物においてはシャインダルガーノ配列を本発明の候補ポリヌクレオチドとコーディングポリヌクレオチドとの間に挿入すること等が挙げられる。
(2)鋳型を用いたタンパク質合成反応
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む上記鋳型(転写鋳型)は、必要であればこれを別途転写反応に付して翻訳鋳型(RNA)に変換した後、タンパク質合成反応に供してもよいし、タンパク質合成系が転写反応を同時に行わせ得る場合は、そのまま反応系に供することもできる。用いられるタンパク質合成系としては、翻訳鋳型を翻訳してタンパク質を生成し得る能力のあるものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、生細胞や無細胞タンパク質合成系が挙げられる。無細胞タンパク質合成系としては、大腸菌、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等の既知のものが用いられる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液は、Pratt,J.M.et al.,Transcription and Tranlation,Hames,179−209,B.D.& Higgins,S.J.,eds),IRL Press,Oxford(1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。
市販の無細胞タンパク質合成系、または細胞抽出液としては、大腸菌由来のものは、E.coli S30 extract system(Promega社製)とRTS 500 Rapid Tranlation System(Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate Sytem(Promega社製)等、更にコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製)等が挙げられる。このうち、植物種子の胚芽抽出液の系を用いることが好ましく、植物種子としては、コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウ等のものが好ましい。本発明の無細胞合成系においては、ポリリボソーム形成活性の高いタンパク質合成系が好ましいため、コムギ胚芽抽出液を用いたものが好適である。
コムギ胚芽抽出液の作製法としては、例えばJohnston,F.B.et al.,Nature,179,160−161(1957)、あるいはErickson,A.H.et al.,(1996)Meth.In Enzymol.,96,38−50等に記載の方法を用いることができる。更に、該抽出液中に含まれる翻訳阻害因子、例えばトリチン、チオニン、核酸分解酵素等を含む胚乳を取り除く等の処理(特開2000−236896公報等)や、翻訳阻害因子の活性化を抑制する処理(特開平7−203984号公報)を行うことも好ましい。このようにして得られた細胞抽出液は、従来と同様の方法によりタンパク質合成系に用いることができる。
本発明のタンパク質合成系に用いられる合成反応液の組成として、上記細胞抽出液、候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、3’,5’−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等が含まれる。また鋳型としてDNAを用いて転写・翻訳反応を一括して行う場合には、該反応液は、更にRNA合成の基質、及びRNAポリメラーゼ等を含むことができる。これらは目的タンパク質や、用いるタンパク質合成系の種類によって適宜選択して調製される。基質となるアミノ酸は、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸である。またエネルギー源としては、ATP、またはGTPが挙げられる。各種イオンは、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられる。緩衝液としては、Hepes−KOH、Tris−酢酸等が用いられる。またATP再生系としては、ホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ、またはクレアチンリン酸(クレアチンホスフェート)とクレアチンキナーゼの組み合わせが挙げられる。核酸分解酵素阻害剤としては、リボヌクレアーゼインヒビターや、ヌクレアーゼインヒビター等が挙げられる。このうち、リボヌクレアーゼインヒビターの具体例としては、ヒト胎盤由来のRNase inhibitor(TOYOBO社製等)等が用いられる。tRNAは、Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1(1960)等に記載の方法により取得することができるし、市販のものを用いることもできる。還元剤としては、ジチオスレイトール等が挙げられる。抗菌剤としては、アジ化ナトリウム、アンピシリン等が挙げられる。更に、RNAポリメラーゼとしては鋳型に含まれるプロモーターに適したものが用いられる、具体的には、例えば、SP6 RNAポリメラーゼやT7 RNAポリメラーゼ等を用いることができる。これらの添加量は適宜選択されて合成反応液が調製される。
このようにして得られたタンパク質合成液は、それぞれ選択されたそれ自体既知のシステム、または装置に投入され、タンパク質合成が行われる。タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt,J.M.et al.,Transcription and Tranlation,Hames,179−209,B.D.& Higgins,S.J.,eds),IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(Spirin,A.S.et al.,Science,242,1162−1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(特願2000−259186明細書)等が挙げられる。更には、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000−333673公報:以下これを「不連続ゲル濾過法」と称することがある)や、合成反応槽が分子篩可能な担体によって調製され、上記の合成材料等が該担体を移動相として展開され、展開中に合成反応が実行され、結果として合成タンパク質を回収し得る方法(特開2000−316595公報)等を用いることができる。本発明の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法において用いるタンパク質合成反応は、ポリリボソームを形成することを目的とするため、バッチ法でも充分であると考えられる。
バッチ法によりタンパク質合成を行う場合には、例えば鋳型を除いた上記合成反応液に鋳型を添加してインキュベートすること等により行うことができる。コムギ胚芽抽出液を用いた場合、インキュベートは10〜40℃、好ましくは18〜30℃、更に好ましくは20〜26℃で行う。反応時間は、ポリリボソーム形成能が高い鋳型によるポリリボソーム形成のみが起こるに充分な時間だけ行えば、翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列を選抜することができる。具体的には、翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列を選抜するに好ましい反応時間としては、5分〜2時間の範囲が挙げられ、このうち30分程度が最も好ましい反応時間として挙げられる。反応時間はタンパク質合成阻害酵素の添加により反応を停止させることにより制御することができるが、反応を停止させなくても本発明の方法を行うことはできる。タンパク質合成阻害酵素としては、翻訳反応開始の阻害剤以外であればいずれの阻害剤でもよい。具体的には、例えばシクロヘキシミド、リボトキシン等が挙げられる。リボトキシンとして、具体的には、α−サルシン(Endo,Y.,et al.,J.Biol.Chem.,258,2662−2667(1983))、リボソーム不活化タンパク質(Endo,Y.,et al.,J.Biol.Chem.,262,8128−8130(1987))等が挙げられる。これら阻害剤の添加量等は用いるタンパク質合成系において適宜選択されるが、コムギ胚芽抽出液を用いたタンパク質合成系において、シクロヘキシミドを添加する場合には、最終濃度で0.5〜10μM程度が好ましい。
透析法によりタンパク質合成を行う場合には、鋳型を添加した合成反応液を透析内液とし、透析外液と物質移動が可能な透析膜によって隔離される装置を用いて、タンパク質合成を行う。具体的には、例えば、鋳型を反応液に添加し、適当時間プレインキュベートした後、適当な透析容器に入れ反応内液とする。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製:透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製:12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。透析外液としては、上記合成反応液から鋳型を除いたものが用いられる。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。
重層法を用いてタンパク質合成を行う場合には、鋳型を添加した合成反応液を適当な容器に入れ、該溶液上に、上記透析法に記載した透析外液を界面を乱さないように重層することによりタンパク質合成を行う。具体的には、例えば、上記合成反応液に鋳型を添加して、適当な容器に入れ反応相とする。容器としては、例えばマイクロタイタープレート等が挙げられる。この反応相の上層に上記透析法に記載した透析外液(供給相)を界面を乱さないように重層して反応を行う。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。また、両相の界面は必ずしも重層によって水平面状に形成させる必要はなく、両相を含む混合液を遠心分離することによって、水平面を形成することも可能である。両相の円形界面の直径が7mmの場合、反応相と供給相の容量比は1:4〜1:8が適当であるが、1:5が好適である。両相からなる界面面積は大きいほど拡散による物質交換率が高く、タンパク質合成効率が上昇する。従って、両相の容量比は、両相の界面面積によって変化する。合成反応は静置条件下で、反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。また、大腸菌抽出液を用いると30〜37℃で行うことができる。
不連続ゲル濾過法を用いてタンパク質合成を行う場合には、鋳型を添加した合成反応液により合成反応を行い、合成反応が停止した時点で、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を供給し、合成物や分解物を排出することによりタンパク質合成を行う。具体的には、例えば、上記合成反応液に鋳型を添加して、適当な容器に入れ反応を行う。容器としては、例えばマイクロプレート等が挙げられる。この反応下では、例えば容量の48%容のコムギ胚芽抽出液を含む反応液の場合には反応1時間で合成反応は完全に停止する。このことは、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定やショ糖密度勾配遠心法によるポリリボソーム解析(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,97,559−564(2000))により確認することができる。合成反応の停止した上記反応溶液を、予め上記透析法に記載の透析外液と同様の組成の供給液により平衡化したゲル濾過カラムを通す。この濾過溶液を再度適当な反応温度に保温することにより、合成反応が再開し、タンパク質合成は数時間に渡って進行する。以下、この反応とゲル濾過操作を繰り返す。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。
(3)ポリリボソーム画分の取得
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む鋳型を用いたタンパク質合成反応液は、反応後分画され、ポリリボソーム画分が分取される。分画の方法としては、遠心分離法、クロマトグラフィー法、フィルター濾過法等が挙げられるが、遠心分離法が好ましく用いられる。遠心分離法としては、密度勾配遠心法、平衡密度勾配遠心法、及び通常の分画遠心法等が挙げられるが、密度勾配遠心法が最も好ましく用いられる。
密度勾配遠心法は、予め作製した密度勾配の上に試料溶液を重層して遠心する方法であって、それ自体既知の通常用いられている方法で行うことができる。密度勾配を作製する機器としては、安定な密度勾配を作製することができるものであれば市販のものでも、公知の方法に従って任意の装置を組み合わせたものでもよい。また、濃度の異なる溶液を重層することによっても作製することができる。密度勾配を形成する溶媒としては、ショ糖、グリセロール、重水(D2O)、無機塩類溶液等が用いられるが、このうちショ糖溶液が好ましく用いられる。
ポリリボソームの分取法を、ショ糖密度勾配遠心法によるものを例に詳細に説明する。ショ糖密度勾配遠心法によるタンパク質合成反応液の分離はProc.Natl.Acad.Sci.USA.,97,559−564(2000)に記載の方法等を用いることができる。具体的には、ショ糖の濃度勾配は、上記タンパク質合成反応液からポリリボソームを分離できる濃度の範囲であれば特に制限はなく、一般的にはその下限が5〜30%の範囲で、その上限が30%から飽和溶解度までの範囲における濃度勾配が用いられる。このうち下限が10%で上限が60%の間の濃度勾配が最も好ましく用いられる。またショ糖を溶解する緩衝液としては、ポリリボソームと翻訳鋳型の複合体を安定的に保つことができるものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、例えば、Tris−HCl、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及びシクロヘキシミド等を含むものが挙げられる。
適当な遠心管等に上記のようなショ糖溶液による密度勾配を作製し、この上に反応終了後のタンパク質合成液を、必要に応じて適当な緩衝液にて希釈し、重層する。適当な緩衝液とは、ショ糖の溶解に用いたものと同様のもの等が好ましく用いられる。また希釈の程度は、共沈しない程度であれば特に制限はないが、好ましくは1〜100倍程度に希釈される。希釈したタンパク質合成反応液は、ショ糖溶液に対して1/100〜100倍程度の量を重層することができ、好ましくは50倍程度を重層する。これをポリリボソームを分離できる程度に遠心する。遠心の条件として具体的には、例えば、4℃で80000〜400000×gで30分〜3時間程度が挙げられる。遠心終了後、適当量ずつ分画し、各分画の核酸量を測定する等してポリリボソームが含まれる画分を同定する。具体的には、例えば、ショ糖溶液5ml、タンパク質合成反応液100μlによる密度勾配遠心を行った場合、100〜200μlずつを1画分とし、各画分についてOD260を測定する。この測定値において、例えば、真核生物由来のタンパク質合成系を用いた場合には80Sリボソームを示すピークが存在するが、それより大きな分子量側に存在する、測定値がピークを示す画分を中心とする画分等をポリリボソーム画分として取得する。このようなポリリボソーム画分としては、例えば、後述する実施例2のショ糖濃度25〜45%画分等が挙げられる。
(4)翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜及び該塩基配列からなるポリヌクレオチドの取得
かくして取得されるポリリボソーム画分から、ポリリボソームに結合しているRNA(翻訳鋳型)を取得し、該RNAを逆転写してcDNAを取得し、更に該cDNAに含まれる候補ポリヌクレオチド部分の塩基配列を解析することによれば翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列を選抜することができる。また、上記cDNAは、翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含むものであり、PCR等により該配列部分を増幅すること等によれば翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを取得することができる。
ポリリボソーム画分から、ポリリボソームに結合しているRNAを取得する方法としては、それ自体既知の方法を用いることができるが、具体的には、Acid guanidium thiocyanate−phenol−chloroform(AGPC)法(Chomczynski,P.,et al.,Anal.Biochem.,162,156−159(1987))が好ましく用いられる。ここで取得されるRNAを含む溶液中には、鋳型としてタンパク質合成系に入れられたDNAが含まれている可能性があるので、DNaseI等のDNA分解酵素処理することが好ましい。
取得されたRNA溶液は、これをフェノール/クロロフォルム抽出やエタノール、沈殿等の常法により精製したのち、逆転写反応に供することができる。逆転写反応は通常用いられる既知の方法を用いることができるが、cDNAの生成効率等からAMVリバーストランスクリプターゼを用いるのが好ましい。また、RNA LA PCR Kit(AMV)ver.1.1(TAKARA社製)等の市販のキットを用いることもできる。
逆転写反応によって作製したcDNAは、それ自体翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチドを含むものであるが、これをクローン化したり増幅したりすることもできる。クローン化する場合、上記で作製されたcDNAを適当なベクターに挿入してクローン化してもよいし、上記(1)で候補ポリヌクレオチドを含む鋳型として作製する際に共通配列を付加しておいた場合、この共通配列をセンスプライマー、コーディングポリヌクレオチドの5’端のヌクレオチド配列に相補的な配列をアンチセンスプライマーとして用いたPCRによって増幅した後に、適当なベクターに挿入してクローン化することもできる。このようにしてクローン化されたポリヌクレオチドは、これを上記(1)の候補ポリヌクレオチドとして同様に鋳型を作製し、該鋳型を用いたタンパク質合成を行うことによってその翻訳効率の制御活性を確認することができる。タンパク質合成量の定量方法としては、具体的には、例えば、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定や、SDS−ポリアクリルアミド電気泳働による分離とクマシーブリリアントブルー(CBB)による染色、オートラジオグラフィー法(Endo,Y.et al.,J.Biotech.,25,221−230(1992);Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,97,559−564(2000))等を用いることができる。本発明の鋳型にルシフェラーゼのような発光触媒タンパク質をコードするものを用いた場合には、該タンパク質が触媒する反応により生ずる発光の強度を測定する方法が好ましく用いられる。また、該cDNAのヌクレオチド配列を通常用いられる方法により解析することにより、翻訳効率の制御活性を有するヌクレオチド配列を特定することができる。
(5)翻訳効率を制御する活性が更に上昇したヌクレオチド配列の選抜及び該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの取得方法
上記(4)に記載の方法により得られたcDNAを上記(1)の候補ポリヌクレオチドとして同様に鋳型を作製し、上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことにより、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、そのヌクレオチド配列を同定することができる。また、上記(4)で取得されるcDNAにそれ自体既知の通常用いられる方法により変異を導入し、該変異体を用いて上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことによっても、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、そのヌクレオチド配列を同定することができる。ヌクレオチド配列に変異を入れる方法として、具体的には、エラープローンPCR法、あるいはポイントミュータジェネシス法等が挙げられる。
かくして得られる翻訳効率の制御活性を有するポリヌクレオチドのうち、翻訳増強活性を有するものとして、配列番号11〜135に示す配列からなるもの等が挙げられる。これらのポリヌクレオチドは、人工的にランダマイズされたヌクレオチド配列からなるものであり、天然に存在する既知のヌクレオチド配列を含むものではない。また、本発明のポリヌクレオチドは、3〜200merの長さの人工的なランダムヌクレオチド配列からなり、且つ翻訳効率の制御活性を有する限り、その選抜、及び取得方法は上記の方法に制限されるものではない。
(6)翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドを含む鋳型によるタンパク質合成
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、プロモーター配列と目的のポリペプチドをコードするコーディングポリヌクレオチドとの間に挟まれるように結合させて翻訳に適した鋳型を作製することができる(Sawasaki,T.et al.,PNAS,99(23),14652−7(2002))。コーディングポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドのコーディング領域だけでなく、その転写ターミネーション領域等を含む3’非翻訳領域を含むことが好ましい。3’非翻訳領域としては、ストップコドンより下流の約0.1〜3.0キロベース程度が好ましく用いられる。また、プロモーターとしては、その後転写に用いるRNAポリメラーゼに特異的なものを用いることができる。具体的には、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
プロモーター、及びコーディングポリヌクレオチドと本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドの結合方法としては、上記(1)に記載の方法、あるいはオーバーラップPCR法等を用いることができる。かくして得られる鋳型は上記(2)に記載の方法と同様にしてタンパク質合成系に供され、目的のポリペプチドを合成することができる。かくして得られたポリペプチドは、それ自体既知の方法により確認することができる。具体的には、例えば、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳働による分離とクマシーブリリアントブルー(CBB)による染色、オートラジオグラフィー法(Endo,Y.et al.,J.Biotech.,25,221−230(1992);Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,97,559−564(2000))等を用いることができる。
また、かくして得られる反応液は、目的タンパク質を高濃度に含有しているので、該反応液を、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過等のそれ自体既知の分離、精製法により、目的ポリペプチドを取得することができる。
(7)翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドを含むベクター
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、適当なベクターに挿入することによって、タンパク質合成のための鋳型を作製するベクターを作製することができる。用いられるベクターとしては、適当なクローニングベクターや、T7プロモーター、あるいはSP6プロモーターや、転写ターミネーション領域を含むタンパク質合成用ベクター等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列の候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)の塩基組成の検討
(1)3種類の塩基組成の候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)をもったmRNAの作製
ルシフェラーゼ遺伝子DNA(pSP−luc+:Promega社製、カタログ番号:E1781)が挿入されたプラスミドを鋳型として、22merのB(Aを除いたT、C、G)、V(Tを除いたA、C、G)、またはH(Gを除いたA、T、C)の混合塩基組成のランダム領域と、その3’側にルシフェラーゼのコーディング領域の5’端の配列を有し、また混合塩基組成領域の5’側に12ヌクレオチドからなる共通配列、更にその5’側にSP6プロモーターが連結した配列からなるセンスプライマー(それぞれ配列番号1、2、3)、及びルシフェラーゼ遺伝子DNAのストップコドンから1652ベース3’下流の配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号4)を用いてPCRを行った。得られた約3400bpのDNA断片をエタノール沈殿により精製し、これを鋳型として、SP6 RNA Polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
(2)コムギ胚芽抽出物含有液の調製
北海道産チホクコムギ種子(未消毒)を1分間に100gの割合でミル(Fritsch社製:Rotor Speed Mill pulverisette14型)に添加し、回転数8,000rpmで種子を温和に粉砕した。篩いで発芽能を有する胚芽を含む画分(メッシュサイズ0.7〜1.00mm)を回収した後、四塩化炭素とシクロヘキサンの混合液(容量比=四塩化炭素:シクロヘキサン=2.4:1)を用いた浮選によって、発芽能を有する胚芽を含む浮上画分を回収し、室温乾燥によって有機溶媒を除去した後、室温送風によって混在する種皮等の不純物を除去して粗胚芽画分を得た。この粗胚芽画分から目視によってコムギ胚芽を判別し、タケ串を用いて選別した。
得られたコムギ胚芽画分を4℃の蒸留水に懸濁し、超音波洗浄機を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄した。次いで、ノニデット(Nonidet:ナカライ・テクトニクス社製)P40の0.5容量%溶液に懸濁し、超音波洗浄機を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄してコムギ胚芽を得た。
コムギ胚芽抽出物含有液の調製は常法(Erickson,A.H.et al.,(1996)Meth.In Enzymol.,96,38−50)に準じた。以下の操作は4℃で行った。まず液体窒素で凍結したコムギ胚芽を乳鉢中で微粉砕した。得られた粉体1g当たり1mlのPattersonらの方法を一部改変した抽出溶媒(それぞれ最終濃度として、80mM HEPES−KOH(pH7.6)、200mM 酢酸カリウム、2mM 酢酸マグネシウム、4mM 塩化カルシウム、各0.6mM L型アミノ酸20種類、8mM ジチオスレオトール)を加えて、泡が発生しないように注意しながら攪拌した。30,000×g、15分間の遠心によって得られる上清を胚芽抽出液として回収し、予め溶液(それぞれ最終濃度として40mM HEPES−KOH(pH7.6)、100mM 酢酸カリウム、5mM 酢酸マグネシウム、各0.3mMのL型アミノ酸20種類、4mM ジチオスレオトール)で平衡化したセファデックスG−25カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製)でゲル濾過を行った。このようにして得られたコムギ胚芽抽出物含有液の濃度は、260nmにおける光学密度(O.D.)(A260)が170〜250(A260/A280=1.5)になるように調製した。
(3)コムギ胚芽抽出液による無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
上記(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM 酢酸カリウム、2.7mM 酢酸マグネシウム、0.4mM スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mM ジチオスレオトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mM クレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl RNase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1−(1960))、0.46μg/l クレアチンキナーゼ(Roche社製))25μlを作製した。この反応液に上記(1)で作製したランダム配列を含むmRNAを2あるいは8μg加え、26℃で4時間インキュベートした。
反応開始直後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後の反応液各5μlをろ紙にスポットし、固体支持法により、液体シンチレーションカウンター(LS6000IC:ベックマンコールター社製)を用いて14C−leuの取り込みを測定した。この結果を図1に示す。それぞれのmRNAを用いた鋳型活性を比較すると、中でもGを除いたH塩基組成領域をもったmRNAが高い鋳型活性を示した。このことから、以下の実験では、候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)としてH塩基組成のものを用いた。
実施例2 翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列の選抜
(1)候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)を含むRNAの作製
ルシフェラーゼ遺伝子DNA(pSP−luc+:Promega社製、カタログ番号:E1781)が挿入されたプラスミドを鋳型として、H塩基組成のランダマイズ部位57ntsと、その3’側にコザック配列を付与するためのA、更にその3’側にルシフェラーゼのコーディング領域の5’端ヌクレオチド配列を有し、またランダマイズ部位の5’側に共通配列12nts、更にその5’側にSP6プロモーターが連結した配列からなるセンスプライマー(配列番号5)、またはランダマイズ部位22ntsと、その3’側にルシフェラーゼのコーディング領域の5’端ヌクレオチド配列を有し、またランダマイズ部位の5’側に共通配列12nts、更にその5’側にSP6プロモーターが連結した配列からなるセンスプライマー(配列番号3)と、ルシフェラーゼ遺伝子DNAのストップコドンから1652ベース3’下流の配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号4)とを用いてPCRを行った。得られた約3400bpのDNA断片をエタノール沈殿により精製し、これを鋳型として、SP6 RNA Polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
(2)コムギ胚芽抽出液による無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM 酢酸カリウム、2.7mM 酢酸マグネシウム、0.4mM スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mM ジチオスレオトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mM クレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl RNase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1−(1960))、0.46μg/l クレアチンキナーゼ(Roche社製))25μlを作製した。この反応液に上記(1)で作製したランダム配列を含むmRNAを8μg加え、26℃で30分間インキュベートした。30分後、シクロヘキシミド(和光純薬社製)を最終濃度で1.5μMになるように加え、タンパク質合成を中止した。
(3)ショ糖密度勾配の作成
10%ショ糖溶液(最終濃度で、250mM Tris−HCl(pH7.6)、50mM 塩化カリウム、5mM 塩化マグネシウム、10%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μM シクロヘキシミド(和光純薬社製)、60%ショ糖溶液(最終濃度で、25mM Tris−HCl(pH7.6)、50mM 塩化カリウム、5mM 塩化マグネシウム、60%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μM シクロヘキシミド(和光純薬社製)を、60%ショ糖溶液を下層に、10%ショ糖溶液を上層にして各2.5mLずつ遠心管に入れた。その後、グラジエーター(東和科学社製:BIOCOMP−GRADENT MASTER)を用いて下記の設定で密度勾配を作った。(1回目、SPEED:25RPM、ANGLE:55deg.、TIME:1mim:50sec.、2回目、SPEED:25RPM、ANGLE:83.5deg.、TIME:1mim:25sec.)作製した密度勾配溶液は4℃で3時間静置した。
(4)ショ糖密度勾配遠心分離法によるポリリボソーム画分の分離とRNAの抽出
上記(2)のタンパク質合成中止後の反応液に希釈溶液(最終濃度で、25mM Tris−HCl(pH7.6)、50mM 塩化カリウム、5mM 塩化マグネシウム(ナカライ・テクトニクス社製)75μlを加え、これを上記(3)で作製したショ糖密度勾配溶液に載せ、40,000rpm、4℃で1時間遠心(HITACHI社製:遠心機CP65β、ローターP55ST2)した。その後100〜120μlずつ画分を取り、各画分の260nmにおける光学密度(O.D.)を計測した。この結果を図2に示す。タンパク質合成が円滑に進んでいると考えられる、ポリリボソームが見られる13〜23画分(ショ糖濃度32.5〜45%)を、AGPC法(Chomczynski,P.,et al.,Anal.Biochem.,162,156−159(1987))を用いてRNA抽出した。この抽出液全量に対しDNase I(TAKARA社製)25Uを加え、37℃で15分間インキュベートして残存DNAを分解し、その後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
(5)cDNAの作成と増幅
RNA LA PCR Kit(AMV)ver1.1(TAKARA社製)を用いて逆転写反応液(それぞれ最終濃度で、5mM 塩化マグネシウム、1×RNA PCR buffer、1mM dNTP mixture、1.0μM アンチセンスプライマー(配列番号4)、1U/μl RNase Inhibitor、0.25U/μl Reverse Transcriptase)を作製し、鋳型として上記(4)のRNA抽出液全量を加えて逆転写反応を行い、cDNAを作製した。このcDNAを増幅するため逆転写産物1μlを鋳型として、共通配列とその5’側にSP6プロモーターの3’端配列を有するオリゴヌクレオチドをセンスプライマー(配列番号6)、ルシフェラーゼ遺伝子DNAのスタートコドンのAから約60ベース下流の配列を含むオリゴヌクレオチドをアンチセンスプライマー(配列番号7)として用いてPCRを行い、約150bpのDNA断片を得た。これにExonucleaseI(USB社製)を5U加え37℃で30分間インキュベート後、80℃で30分インキュベートを行いExonucleaseIを失活させた。その後全量をGFXTM PCR DNA and Gel Band Purification Kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてアガロースゲルから回収した。
(6)次サイクルに用いる翻訳鋳型mRNAの作製
ルシフェラーゼ遺伝子DNAが挿入されたプラスミドを鋳型として、ルシフェラーゼ遺伝子DNAのスタートコドンのAから約60ベース下流の配列を含む配列番号7に記載のアンチセンスプライマーと相補的な配列を有するセンスプライマー(配列番号8)、及び配列番号4に示した配列より更に2ベース3’下流の配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号9)を用いたPCRを行い、ルシフェラーゼ遺伝子DNAを部分的に含む約3200bpのDNA断片を得た。このPCR産物1μlと上記(5)で回収した約150bpのDNA断片の50分の1量の両DNA断片を鋳型にセンスプライマー(配列番号10)、及びアンチセンスプライマー(配列番号4)を用いて再度PCRを行い約3400bpのDNA断片を得た。この4分の3量を鋳型にSP6 RNA Polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として実施例2(2)〜(6)を1サイクルとし、2巡目以降、(2)〜(6)を繰り返した。
実施例3 コムギ胚芽無細胞蛋白質合成系(バッチ法)における実施例2において得られた各サイクル後のmRNAの鋳型活性の検討
(1)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製したコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM 酢酸カリウム、2.7mM 酢酸マグネシウム、0.4mM スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mM ジチオスレオトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mM クレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl RNase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1−(1960))、0.46μg/l クレアチンキナーゼ(Roche社製)、2nCi/μl 14C−Leu(モラベック社製))25μlを作製した。この反応液に翻訳鋳型mRNAを2あるいは8μg加え、26℃で4時間インキュベートした。
翻訳鋳型となるmRNAは、上記実施例2(6)で作成されたDNA断片を鋳型として、SP6 RNA polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して用いた。また、コントロールの翻訳効率増強配列としてタバコモザイクウィルス(TMV)のオメガ(Ω)配列を5’非翻訳領域に含み、3’非翻訳領域がそれぞれ0nts、約1600ntsの2種類のDNA断片も同様に転写、精製し、コントロールとして用いた。
反応開始直後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後の反応液各5μlをろ紙にスポットし、固体支持法により、液体シンチレーションカウンター(LS6000IC:ベックマンコールター社製)を用いて14C−leuの取り込みを測定した。この結果を図3に示す。ランダム部位が22ntsのmRNAを用いた時は4サイクル後(図3A)、57ntsの時は3サイクル後(図3B)に、それぞれΩ配列を導入したmRNAと同等の鋳型活性を示した。
実施例4 コムギ胚芽無細胞蛋白質合成系(バッチ法および透析法)における新規配列の効果の検討
(1)TAクローニング及びシークエンス
実施例3をもとに、実施例2(6)で得られたランダム部位が22ntsのmRNAを用いた時は4サイクル後、57ntsの時は3サイクル後のDNA断片を、pGEM−T Easy Kit(プロメガ社製)を用いて、反応液(それぞれ最終濃度で、1×Rapid Ligation Buffer、5ng/μl pGEM−T Easy Vector)に加えて、14℃で4時間インキュベートして、DNA断片をpGEM−T Easy Vectorに組み込んだ。その後、全量を用いて大腸菌JM109(TAKARA社製)にトランスフォーメーションを行い、形成されたコロニーからプラスミド抽出し、該プラスミド中の挿入配列についてシークエンスを行った。その結果、57ntランダマイズでは27種類(配列番号11〜37)、22ntランダマイズでは96種類(配列番号40〜135)の新規の配列を確認した。また、57ntランダマイズで2サイクル後のDNA断片を同様にクローン化し、そのうちの一部について挿入配列のシークエンスを行った結果、配列番号38および39に示される新規配列を確認した。
(2)新規配列を含むDNA断片の作成
ルシフェラーゼ遺伝子DNA(pSP−luc+:プロメガ社製、カタログ番号:E1781)が挿入されたプラスミドを鋳型として、(1)で得られたヌクレオチド配列(それぞれランダム部位が57ntsの場合はNo.57−6:配列番号11、No.57−40:配列番号15、No.57−91:配列番号20、ランダム部位が22ntsの場合は、No.22−2:配列番号41、No.22−5:配列番号44、No.22−10:配列番号49、No.22−12:配列番号51、No.22−18:配列番号57、No.22−23:配列番号62)とその5’側に共通配列と、その3’側にルシフェラーゼのスタートコドンを含む配列(No.57−6,No.57−40,No.57−91の場合は更にスタートコドンの5’側にコザックのA)とが連結されるようにデザインしたセンスプライマー(No.57−6:配列番号136、No.57−40:配列番号137、No.57−91:配列番号138、No.22−2:配列番号139、No.22−5:配列番号140、No.22−10:配列番号141、No.22−12:配列番号142、No.22−18:配列番号143、No.22−23:配列番号144)と、3’非翻訳領域が約1600ntsになるような配列番号4に記載したアンチセンスプライマーとを用いたPCRを行った。得られた約3400bp(3’非翻訳領域が約1600nts)のDNA断片1μlを鋳型として、共通配列の5’側にSP6プロモーター配列を連結した配列を有するセンスプライマー(配列番号145)と配列番号4に記載したアンチセンスプライマーとを用いたPCRを行い、再度約3400bpのDNA断片を得た。これを転写鋳型として以下の実験に用いた。
(3)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製したコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM 酢酸カリウム、2.7mM 酢酸マグネシウム、0.4mM スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mM ジチオスレオトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mM クレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl RNase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1−(1960))、0.46μg/l クレアチンキナーゼ(Roche社製)、2nCi/μl 14C−leu(モラベック社製))25μlを作製した。この反応液に翻訳鋳型mRNAを2あるいは8μg加え、26℃で4時間インキュベートした。
翻訳鋳型となるmRNAは、上記(2)で合成したDNAを鋳型として、SP6 RNA polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して用いた。また、コントロールの翻訳効率増強配列としてタバコモザイクウィルス(TMV)のオメガ(Ω)配列を5’非翻訳領域に含み、3’非翻訳領域がそれぞれ0nts、約1600ntsの2種類のDNA断片も同様に転写、精製し、コントロールとして用いた。
反応開始直後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後の反応液各5μlをろ紙にスポットし、固体支持法により、液体シンチレーションカウンター(LS6000IC:ベックマンコールター社製)を用いて14C−leuの取り込みを測定した。この結果を図4に示す。3’非翻訳領域を含むmRNAでNo.57−6(図4B)、No.22−12(図4A)配列を含むRNAを用いた合成系においては、Ω配列を含むRNAの場合と同量の目的タンパク質を合成することができた。このことは、得られた他の配列においても、同等もしくはそれ以上の翻訳鋳型活性を示すものと考えられる。
(4)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系(透析法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製したコムギ胚芽抽出物含有液11.6μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM 酢酸カリウム、2.7mM 酢酸マグネシウム、0.4mM スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mM ジチオスレオトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mM クレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl RNase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter,R.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,43,1−(1960))、0.46μg/l クレアチンキナーゼ(Roche社製))50μlを作製した。この反応液に翻訳鋳型mRNAを16μg/50μl加え、26℃で48時間インキュベートした。
翻訳鋳型となるmRNAは、GFP遺伝子DNA(Chiu,W.L.,et al.,Curr.Biol.6,325−330(1996))が挿入されたpEU−GFPベクター(Sawasaki,T.et al.,PNAS,99(23),14652−7(2002))を基に、Ω配列部分をNo.57−6配列に置き換えた環状プラスミドDNAを鋳型として、SP6 RNA polymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して用いた。また、コントロールの翻訳効率増強配列としてタバコモザイクウィルス(TMV)のオメガ(Ω)配列を5’非翻訳領域に含み、3’非翻訳領域が約1600ntsのDNA断片を転写、精製し、コントロールとして用いた。
上記各合成系の反応液から24、48時間ごとに0.5μlを採取し、12.5%SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)で分離し、クマシーブリリアントブルー(CBB)による染色により分析した。この結果を図5に示す。3’非翻訳領域を含むmRNAでNo.57−6配列を含むRNAを用いた透析系においても、バッチ法と同様にΩ配列を含むRNAの場合と同等の翻訳鋳型活性を示した。このことは、得られた他の配列においても、同等もしくはそれ以上の翻訳鋳型活性を示すものと考えられる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、天然に存在しない人工配列であって、かつ翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列、及び該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが提供される。該ポリヌクレオチドを用いることによりタンパク質合成系において極めて高効率にタンパク質合成を行うことができる。
本出願は日本で出願された特願2001−396941を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、H、VまたはB塩基組成の22merランダム配列を含む翻訳鋳型の鋳型活性を示す。縦軸は14C−Leuの取込み(dpm/5μl)、横軸はインキュベーション時間(時間)を示す。
図2は、10〜60%ショ糖密度勾配遠心により分画されたタンパク質合成反応液の各画分の260nmにおける吸光度を示す。鋭いピークが80Sリボソーム含有画分であり、それよりも高濃度のなだらかなピークを含む画分がポリリボソーム含有画分を示す。
図3は、H塩基組成の22mer(A)および57mer(B)のランダム配列を含む翻訳鋳型の各サイクル後の鋳型活性を示す。縦軸は14C−Leuの取込み(dpm/5μl)、横軸はインキュベーション時間(時間)を示す。
図4は、4サイクル後に選抜された種々のH塩基組成22mer配列(A)および3サイクル後に選抜された種々のH塩基組成57mer配列(B)を含む翻訳鋳型の鋳型活性を示す。縦軸は14C−Leuの取込み(dpm/5μl)、横軸はインキュベーション時間(時間)を示す。
図5は、透析系でタンパク質合成反応を行った場合の、H塩基組成の57mer配列(No.57−6)を含む翻訳鋳型の鋳型活性を示す。一定時間(24および48時間)反応後にタンパク質合成反応液を採取し、SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した後、CBBで染色した。矢印が目的のタンパク質(GFP)のバンドを示す。Mは分子量マーカー、ΩはΩ配列を含む翻訳鋳型を用いたタンパク質合成反応液を示す。
【請求項1】タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを採取することを特徴とする方法。
【請求項2】工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】工程(c)で得られたヌクレオチド配列に変異を導入した配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】ポリリボソーム画分の回収方法が、密度勾配遠心法を利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】タンパク質合成系が、無細胞タンパク質合成系である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】1種以上の任意のヌクレオチド配列が、スタートコドンを有さないランダム配列であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】ランダム配列の長さが、3〜200merの範囲内であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】翻訳増強活性がRNAウィルスの5'−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】配列番号136で表されるヌクレオチド配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド。
【請求項11】配列番号136で表されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の相同性を有し並びにΩ配列と同等又は同等以上の翻訳増強活性を示すヌクレオチド配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド。
【請求項12】請求項10〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む鋳型。
【請求項13】請求項12記載の鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法。
【請求項14】請求項10〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項15】タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を解析することを特徴とする方法。
【請求項16】工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項15記載の方法。
Claims (18)
- タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを採取することを特徴とする方法。
- 工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 工程(c)で得られたヌクレオチド配列に変異を導入した配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の方法。
- ポリリボソーム画分の回収方法が、密度勾配遠心法を利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- タンパク質合成系が、コムギ胚芽抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 1種以上の任意のヌクレオチド配列が、スタートコドンを有さないランダム配列であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- ランダム配列の長さが、3〜200merの範囲内であることを特徴とする請求項6記載の方法。
- 翻訳増強活性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの調製方法であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 翻訳増強活性がRNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする請求項8記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られる翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチド。
- 配列番号11〜135のいずれかで表されるヌクレオチド配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド。
- 3〜200merの長さの人工的なランダムヌクレオチド配列からなる翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチド。
- 翻訳効率を制御する活性が、RNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする請求項12記載のポリヌクレオチド。
- 請求項9〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む鋳型。
- 請求項14記載の鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法。
- 請求項9〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有するヌクレオチド配列の選抜方法であって、(a)1種以上の任意のヌクレオチド配列を含む鋳型をタンパク質合成反応系に供し、(b)反応後、該反応液中からポリリボソーム画分を回収し、(c)該ポリリボソーム画分に含まれる鋳型中の該ヌクレオチド配列を解析することを特徴とする方法。
- 工程(c)で得られたヌクレオチド配列を含む鋳型を用いて、前記(a)〜(c)の工程を繰り返すことを特徴とする請求項17記載の方法。
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