JP2003325174A - 無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質またはペプチドの製造方法、およびこれを用いて製造したタンパク質またはペプチド - Google Patents
無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質またはペプチドの製造方法、およびこれを用いて製造したタンパク質またはペプチドInfo
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Abstract
液を用いた無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質
またはペプチドの製造方法を提供する。 【解決手段】 目的ペプチドまたは目的タンパク質のコ
ード配列と相補的な配列を有する環状ssDNAを鋳型
として、RNAポリメラーゼ反応を行うことによって、
1つのmRNAに前記環状ssDNAの相補的配列を複
数転写した1つ以上のmRNAを合成し、このmRNA
を鋳型として、無細胞抽出液を使用した無細胞タンパク
質合成系により目的のペプチドまたはタンパク質を製造
する。
Description
合成系におけるタンパク質またはペプチドの製造方法、
およびそれを用いて製造したタンパク質またはペプチド
に関する。
質を大量に合成する方法として、形質転換体を用いた方
法が一般的になってきている。このような形質転換体を
用いた合成方法としては、例えば、目的タンパク質のア
ミノ酸配列をコードするDNAをプラスミドに連結し、
この組換え体を大腸菌に導入して大量培養する方法があ
げられる。しかしながら、このような方法は、例えば、
時間や手間がかかり、発現産物に毒性がある場合
に、大腸菌の生育低下に伴なってタンパク質の収率が低
下する、合成されたタンパク質の不溶化が起こり易い
等の欠点も問題となっており、全てのタンパク質合成に
適用することは困難であった。
の問題を克服する新たなタンパク質合成方法として、近
年、試験管内でタンパク質を合成する、いわゆる無細胞
タンパク質合成系(生体外タンパク質合成系とも呼ばれ
る)が開発されている。この方法は、目的タンパク質を
コードする鋳型DNA、RNAポリメラーゼ、ATP
(アデノシン3リン酸)等を加えて、生体のタンパク質
合成系つまりセントラルドグマを試験管内で再現しよう
とするものであり、前述のような細胞系における問題を
解消し、例えば、生細胞では生産できないタンパク質を
合成できる等の利点がある。
法について、より一層高い収率および優れた再現性でタ
ンパク質を合成できることが望まれている。
は、さらにタンパク質またはペプチドの合成効率に優れ
る無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質またはペ
プチドの製造方法の提供である。
に、本発明のタンパク質またはペプチドの製造方法は、
無細胞抽出液を含む無細胞タンパク質合成系において、
DNAから1以上のmRNAを転写し、前記mRNAか
ら、翻訳して目的タンパク質若しくは目的ペプチドを合
成するタンパク質またはペプチドの製造方法であって、
前記DNAは、前記目的タンパク質若しくは目的ペプチ
ドのコード配列と相補的配列を有し、RNAポリメラー
ゼ反応により、1つのmRNAに前記DNAの相補的配
列を複数転写することを特徴とする。
は、生細胞を用いたタンパク質合成に比べてタンパク質
の合成収率が低いという問題があったため、これらの問
題を回避すべく、近年では、mRNAからタンパク質合
成を行う翻訳工程を効率良く行なうための改良がなされ
ていた。しかしながら、本発明者らは、従来とは全く異
なり、前記翻訳工程ではなくDNAからmRNAの転写
工程に着目した。つまり、翻訳工程の効率を向上するの
ではなく、mRNAの転写効率を向上させることによっ
てRNAの発現量を増加させ、これによってタンパク質
の発現量を増加するべく鋭意研究を行なったのである。
そして、前述のように前記DNAを鋳型として転写した
mRNAは、一つのmRNAに、前記DNAに対する相
補的配列を複数有するため、このようなmRNAを無細
胞タンパク質合成系に用いれば、効率よく目的タンパク
質やペプチドを発現できることを見出したのである。つ
まり、例えば、通常のプラスミド等の転写によって得ら
れるmRNAは、鋳型DNAを一回転写すると一旦転写
が終了するため、得られる複数のRNAは、それぞれ、
DNAに対する相補的配列を1つだけ有するものとなる
が、これに対して、本発明における前記mRNAは、図
1に示すように、例えば、DNAを鋳型(同図において
(−)鎖)として、転写が連続して行われて合成される
ため、前記DNAに対する相補的配列(+)を複数有す
るmRNA(同図においてポリ(+)鎖)となる。この
ように、本発明のmRNAが前記DNAに対する相補的
配列を複数有することに起因して、必然的にタンパク質
の合成量も増加するのである。したがって、本発明のm
RNAを無細胞タンパク質合成系に用いれば、短時間で
タンパク質合成の効率を向上することも可能になる。ま
た、本発明の無細胞タンパク質合成系における製造方法
は、生命体が用いている遺伝暗号(コドン−アンチコド
ン)を使用するため、短鎖のオリゴペプチドから、生体
内で重要な遺伝子調節を行っているタンパク質等、様々
なタンパク質の合成に適用可能である。さらに、前述の
ようなタンパク質の翻訳工程の効率向上に着目した従来
の方法と組み合わせることによって、より一層タンパク
質合成効率の向上を図る事も可能となる。前述の図1に
示すように、DNAの相補的配列が連続したRNAを転
写する方法を、ローリング・シンクロナイゼーション法
という。
つ以上のmRNAが転写されてもよく、各々のmRNA
が前記DNAの相補的配列を複数転写していればよい。
は、環状一本鎖DNA(ssDNA)であることが好ま
しい。環状ssDNAであれば、前述のようにRNAポ
リメラーゼ反応によって、1つのmRNAに前記DNA
の相補的配列を複数転写することが容易だからである。
うに前記DNAの相補配列が複数転写されるが、得られ
るmRNAは、前記DNAに対して相補的な配列を少な
くとも2つ以上有していればよい。また、前記mRNA
における前記相補的配列の数の上限は、特に制限され
ず、例えば、mRNA合成における反応時間やDNAの
配列等に応じて変化すると考えられる。
塩基数は、30〜1000ntの範囲であることが好ま
しい。
胞タンパク質合成系として大腸菌等の細菌由来の系を使
用する場合、前記細菌由来のリボゾームがmRNAの開
始を認識してタンパク質合成を確実に行うために、前記
DNAは、SD配列に相補的な配列を有することが好ま
しい。
は、ポリ(A)、ポリ(C)およびポリ(T)からなる
群から選択された少なくとも一つの配列を有することが
好ましく、この中でも好ましくはポリ(T)配列であ
る。DNAとして環状ssDNAを使用する場合、例え
ば、このような配列を有するssDNAを用いれば、環
化を容易に行って前記環状ssDNAを調製できるから
である。また、これらの配列の塩基数は、例えば、5〜
50ntの範囲であることが好ましい。
は、プロモーター配列を有していてもよく、前記プロモ
ーターとしては、例えば、T7プロモーター、tacプロ
モーター、lac UV5プロモーター、taqプロモーター等が
ある。
は予め別途調製してもよいが、例えば、前記mRNAの
転写と、目的タンパク質合成または目的ペプチド合成と
を、同じ反応系で行うことが好ましい。このようにして
mRNAを合成すれば、そのままタンパク質等の合成を
行なうことができるため、迅速かつ簡便に目的タンパク
質等の製造を行うことができる。
は、前記本発明のタンパク質またはペプチドの製造方法
により製造したタンパク質またはペプチドである。前述
のような方法によれば、優れた効率でタンパク質を合成
できるため、得られたペプチドやタンパク質を各種用途
に供することができる。
質のコード配列と相補的配列を有する環状ssDNAを
調製し、これを鋳型として無細胞タンパク質合成系にお
いて、mRNA合成(転写)およびタンパク質合成(翻
訳)させることによって行うことができる。以下に本発
明の製造方法の一例を示す。
なる直鎖状ssDNAを準備し、これを環化することに
よって調製できる。この環状ssDNAは、mRNA合
成の鋳型となるため、所望のmRNAと相補的配列とな
るように設計する。
響がなければ特に制限されず、例えば、30〜1000
ntの範囲が適当である。
ば、少なくとも発現させる目的タンパク質のコード領域
の塩基配列(開始コドンおよび終結コドンを含む)に相
補的な配列を有していればよい。前記コード領域に相補
的な配列の長さは、目的タンパク質のアミノ酸残基数に
より異なり、適宜決定できる。
ば、従来公知のクローニング方法等によって自然界より
単離してもよいし、既に公知となっているアミノ酸配列
や塩基配列の情報を基に化学的に合成してもよい。前記
配列情報に関しては、各種文献だけでなく、例えば、米
国国立衛生研究所(NIH)により管理されている「ジ
ェンバンク」等の各種データーベースを利用することも
できる。
前記コード領域に相補的な配列の他に、ssDNAの環
状化を容易にする配列を含むことが好ましい。このよう
な配列としては、例えば、ポリ(A)配列、ポリ(C)
配列およびポリ(T)配列のように同じ塩基から構成さ
れたポリマー配列等があげられる。なお、これらの配列
の存在によって、ssDNAが環状化し易くなることの
メカニズムは不明である。
記同じ塩基から構成されたポリマーであり、特に好まし
くはポリ(T)配列である。例えば、ポリ(T)配列の
ように同じ塩基から構成されていれば、ssDNAを容
易に環状化できるだけでなく、環状ssDNAに相補的
なポリヌクレオチド配列の連続転写に影響を与えること
もない。つまり、前記環状ssDNAの転写により合成
された、前記ポリ(T)配列に相補的なmRNA中のポ
リ(A)配列は、mRNAの二次構造に対する影響が非
常に少なく、例えば、ステムループ構造を形成し難いた
め、ステムループ構造による転写終結の問題等が起こら
ない。そのため、前記環状ssDNAの転写が一回ごと
に終結せず、連続的に行われ、前記環状ssDNA配列
に相補的なポリヌクレオチド配列を複数有する長鎖のm
RNAを形成できるのである。この長鎖mRNAは、転
写の回数(n)だけ、前記ポリヌクレオチド配列(X)
が連なった構造[(X)n]となる。
(T)等の配列の長さは、特に制限されないが、例え
ば、5〜50ntの範囲が適当である。
例えば、プロモーター、エンハンサー等の転写効率に関
与する配列や、Shine-Dalgano(SD)配列に相補的な配
列等を有してもよい。これらの配列は、例えば、目的の
タンパク質の種類や、後述する無細胞タンパク質合成系
の種類等に応じて適宜決定できる。
ロモーター、tacプロモーター、lacUV5プロモーター、t
aqプロモーター等が好ましく、これらの中でも特にT7
プロモーターが好ましい。
て、例えば、T7ポリメラーゼや、E.coli RNAポリ
メラーゼを使用する場合には、プロモーターがなくても
転写を開始できることから、プロモーター配列を含まな
くともよく、特にこのような環状ssDNAの場合は、
プロモーター配列を有していない方が、転写効率に優れ
好ましい。
腸菌等の細菌の無細胞抽出液を用いて行う場合、直鎖状
ssDNAが、例えば、タンパク質のコード領域に相補
的な配列の3’側下流に、前記SD配列に相補的な配列
を有することが好ましい。これは、大腸菌等の細菌にお
いて翻訳が始まる際、リボソームが、mRNAの開始コ
ドン(AUG)の5’側上流にあるSD配列と塩基対相
互作用することによって、前記開始コドン(AUG)を
認識する必要があるためである。このSD配列に相補的
な配列は、特に制限されず、従来公知のSD配列をもと
に設定できる。
ように、その3’末端と5’末端とをライゲーションさ
せて環状化を行うが、環状ssDNAのどの配列部分を
前記直鎖状ssDNAの両末端に設定するかは特に制限
されない。具体例としては、例えば、図2に示すよう
に、SD配列の相補配列の一部を直鎖状ssDNAの
3’末端とし、残りの部分を5’末端として、後述する
ライゲーションによって完全にSD配列に相補的な配列
となるように設定してもよい。
従来公知の化学合成法等によって合成し、その5’末端
をリン酸化して調製することができる。また、例えば、
末端をビオチン化したプライマーと、リン酸化したプラ
イマーとを用いてPCRを行い、ビオチン−アビジン相
互作用を用いて二本鎖を一本鎖にすることによって、直
鎖状ssDNAを調製することもできる。
例えば、前記直鎖状ssDNAの両末端をDNAリガー
ゼで結合することによって行うことができる。
が、例えば、T4 DNAリガーゼ、E.coli DNAリガーゼ、Pf
u DNAリガーゼ等があげられ、これらの中でもT4 DNAリ
ガーゼが好ましい。
応は、例えば、split DNAの存在下で行うことが好まし
い。本発明において、前記split DNAとは、前記直鎖状
ssDNAの連結領域の数十塩基と二重鎖を形成できる
相補的な配列からなるDNAをいう。
一例を図3に基づいて説明する。同図(a)に示すよう
に、直鎖状ssDNAを、その両端の塩基配列に相補的
な配列を併せ持つsplit DNAの存在下で反応させる。す
ると、同図(b)に示すように、前記直鎖状ssDNA
の両端と前記split DNAとが塩基対を形成し、この塩基
対によって直鎖状ssDNAの環化状態が保持される。
つまり、前記split DNAが、直鎖状ssDNAの環化の
アダプターとしての役割を果たす。そして、同図(c)
に示すように、前記split DNAによって環化が保持され
た状態で、DNAリガーゼにより前記直鎖状ssDNAの
両末端がライゲーションされる。
いが、例えば、10〜40ntの範囲が適当である。
るDNAリガーゼの種類や直鎖状ssDNAの濃度等に
応じて適宜決定できるが、例えば、0.1〜10μM 直鎖状s
sDNA、0.3〜30μM split DNA、20mM NaCl、1〜15mM MgCl2、
10mMジチオトレイトール(DTT)、10μM ATP、0.33U/
μL DNA リガーゼおよび2.5mM Tris-HCl(pH7.5)を含
む反応溶液において、通常、温度25℃で1〜12時間
で反応させればよい。また、前記反応溶液は、市販の製
品を使用してもよい。なお、split DNAの濃度は、直鎖
状ssDNA濃度よりも高濃度であることが好ましい。
DNAを作成した場合、前記図3(c)に示すように部
分的に二本鎖を含むこととなるが、例えば、これを変性
アクリルアミドゲル電気泳動に供して精製することによ
って、前記split DNAを除去した環状ssDNAを得る
ことができる。
パク質合成 前記環状ssDNAを鋳型として、無細胞抽出液を含む
反応溶液を用いた無細胞タンパク質合成系において目的
タンパク質の合成を行う。このように無細胞タンパク質
合成系において、鋳型としてDNAを使用する場合に
は、同じ反応系においてmRNA合成(転写)とタンパ
ク質合成(翻訳)が行われる。なお、前記環状ssDN
AからmRNAを予め合成しておき、このmRNAを鋳
型として、無細胞タンパク質合成系に供することもでき
るが、これについては後述する。
ないが、例えば、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球
等の抽出液が使用でき、これらの抽出液は、例えば、材
料に応じ従来公知の方法によって調製できる。具体的
に、大腸菌の無細胞抽出液は、例えば、Ellmanらの方法
(Methods Enzymol.202:301-336(1991))の方法によ
って調製できる。
鋳型となる環状ssDNAの他に、例えば、RNAポリ
メラーゼ、タンパク質を構成する各種アミノ酸、各種緩
衝剤、ATP、GTP、CTPおよびUTP等のエネルギー源、クレ
アチンリン酸、ホスホエノールピルビン酸、クレアチン
キナーゼおよびピルビン酸キナーゼ等のATP再生系、
ジチオスレイトール(DTT)、スペルミンおよびスペルミ
ジン等の安定化剤、RNase阻害剤等を添加すること
が好ましい。また、これらの添加量は、使用する鋳型の
環状ssDNAの量等に応じて適宜決定できる。
されず、例えば、鋳型ssDNAにおけるプロモーター
の種類に応じて適宜決定してもよい。具体的には、例え
ば、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラー
ゼ、SP6RNAポリメラーゼ、E.coli RNAポリメ
ラーゼ等が使用できる。
は、市販の無細胞タンパク質合成キットを使用すること
もできる。具体的には、例えば、商品名E.coli S30 Ext
ractsystem(フ゜ロメカ゛社製)、E.coli T7 S30 Extract(フ゜ロ
メカ゛社製)、PROTEIN script-Pro(Ambion社製)等が使用
できる。これらのキットは、それらの使用方法に準じた
条件で使用できる。
れず、使用する無細胞抽出液や目的のタンパク質の種類
等に応じて適宜決定できる。
NAを鋳型とするmRNA合成と、前記mRNAを鋳型
とするタンパク質合成とが、並行して同じ無細胞タンパ
ク質合成系において進行する。
ば、前述のように、前記環状ssDNAに相補的なポリ
ヌクレオチドが連続して転写され、前記ポリヌクレオチ
ドを複数含む長鎖のmRNAを得ることができる。この
ように、1分子の環状ssDNAから前記ポリヌクレオ
チド配列を複数含むmRNAが合成されるため、鋳型D
NAを一回転写する度にRNAポリメラーゼが解離して
転写が終結する従来の方法に比べて、極めて短時間で効
率よく、複数の前記ポリヌクレオチド配列を合成でき
る。そして、このように目的タンパク質をコードするポ
リヌクレオチド配列を多く含むmRNAが合成されるこ
とによって、それだけタンパク質合成の鋳型が増加する
ことになるため、タンパク質の合成効率も向上するので
ある。
質は、例えば、アフィニティーカラムクロマトグラフィ
ー等の従来公知の方法によって精製すればよい。
程(転写工程)およびペプチド合成工程(翻訳工程)を
同じ無細胞タンパク質合成系において同時に行うのでは
なく、予め調製したmRNAを鋳型として、無細胞タン
パク質合成系において目的タンパク質を合成してもよ
い。
sDNAを鋳型として、前述のようなRNAポリメラー
ゼによる転写反応によって行うことができる。
に、通常、各種NTP(ATP、GTP、CTP、UTP)、RNa
seインヒビター、各種緩衝剤等を必要とする。また、
反応条件は、使用するRNAポリメラーゼの種類等に応
じて適宜決定できるが、例えば、pH7.0〜8.5の
範囲、温度37℃、時間1〜12時間の範囲が好まし
い。
ば、そのまま次の工程に供してもよいし、各種カラムで
精製してから使用してもよい。
て、前述の無細胞タンパク質合成を行う。なお、使用す
る無細胞抽出物や条件等は同様である。
補的な配列を有する環状ssDNAを調製し、無細胞タ
ンパク質合成系において(His)6の合成を行った。
NAとして、配列番号1に示す配列(5'-CTGTTTCCT(T)
20CTA(ATG)6CATAG-3')(55nt)を設計し、これをDN
A自動合成機(商品名DNAシンセサイザーModel391:
アブライドバイオシステムズ社製)を用いたホスホロア
ミダイト法によって固相合成し、その5’末端をリン酸
化用ホスホロアミダイト試薬(商品名化学リン酸化試
薬:Glen Reseach社製)によってリン酸化した。なお、
配列番号1において、5’末端の5'-CTGTTTCCTおよび
3’末端のAG-3'が、SD配列の相補配列であり、CTA(A
TG)6CATが、終始コドンおよび開始コドンを含むコード
配列の相補配列である。
ligation buffer (75mM MgCl2、100mM NaCl、125mM Tr
is-HC1(pH77.5))に、1μMの前記環状化させるssDNA
および3μMのsplint DNA(配列番号2:5'-AGGAAACAG
CTATGCATC-3')を添加して、反応溶液を調製した。な
お、反応溶液におけるMgCl2、NaClおよびTris-HC1の終
濃度は、15mM MgCl2、20mM NaCl、25mM Tris-HC1であ
る。そして、この反応溶液を90℃で10分間インキュ
ベートした後、2時間かけて前記反応溶液の温度を室温
まで戻した。つぎに、前記反応溶液に、最終濃度が10m
M DTTおよび100μM ATPとなるように、1M DTTおよび100
mM ATPを添加し、さらに、最終濃度がO.33units/μLと
なるようにT4 DNAリガーゼ(400U/μL:New England Bi
olabs社製)を添加して、25℃で12時間、ライゲーシ
ョン反応を行った。このsplit DNAおよびDNAリガー
ゼを用いた環状ssDNAの生成反応を図4に示す。
を、透析チューブ(MWCO 1000:商品名Spectra-Por、Spe
ctrum社製)を用いて透析し、透析後の溶液を凍結乾燥し
た。この凍結乾燥品を7M尿素水溶液に懸濁し、15% 変
性ポリアクリルアミドゲルにアプライし、環状ssDN
A、直鎖状ssDNA、splint DNA とを電気泳動によ
り分離した。目的の環状ssDNA画分のゲルを切り出
し、これを細かく砕き、さらに0.2N NaCl 5〜
10mLを添加して、25℃で12時間シェイクし、環
状ssDNAを抽出した。その後、フィルターを用いて
前記ゲル断片を除去し、得られた溶液を再度前記透析チ
ューブを用いて12時間透析した後、透析溶液を凍結乾
燥した。この凍結乾燥品を7M尿素水溶液に懸濁し、7
M尿素を含む15%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳
動を行った。その結果、図5の電気泳動図に示すよう
に、直鎖状ssDNA(レーン1)が環化されたことに
よって、環状ssDNA(レーン2)が生成されている
ことが確認できた。
い、(His)6ペプチドを発現させた。無細胞タンパ
ク質合成システム系としては、以下に示す組成の市販
品:商品名E.coli S30 Extract system(Promega)を使用
し、その使用方法に準じて反応(37℃、2時間)を行
った。
た場合に、これに相補的なポリヌクレオチド配列を複数
有する長鎖のmRNAが形成されるか否かを別途確認し
た。これは、まず、前記環状ssDNAについて、E.co
li RNAポリメラーゼを用いて転写反応(37℃、3
時間)を行い、得られた転写産物を、2%未変性アガロ
ースゲル電気泳動に供した。前記反応液の組成は、環状
ssDNA 1μM、50U RNAポリメラーゼ、50
0μM NTPs、12.5U/mL RNase阻害剤(プ
ロメガ社製)とした。電気泳動の結果、図6に示すよう
に、転写産物のRNAは、アガロースゲルのウェル付近
に止まったことから、約1000nt以上の長鎖mRNAが得
られたことが確認できた(レーン2の矢印)。なお、同
図においてレーン1は、分子量マーカー(726、427、31
1、249bp)である。
Aの代りに、(His)6をコードする塩基配列を含むd
sDNAを鋳型とした以外は、前記環状ssDNAと同様にして
ペプチド発現を行った。この比較例のdsDNAの配列
は、配列番号3のセンス鎖を持つ、以下の配列となるよ
うに設計し、自動合成機により化学合成した。なお、ア
ンチセンス鎖における 3'-dTTACTCGACAACTGTTAATTAGTAG
GCCGAGCATATTACACACCTTの配列は、E.coli taq promoter
配列である。
る反応生成物からニッケルキレートカラム(商品名HiTra
p Chelating: Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精
製した。まず、前記カラムを1mM Ni2+を含むPB
S(Phosphate-bufferd saline:pH7.4)により平衡化し
た。そして、前記反応溶液25μLを前記PBSで計1
mLにボリュームアップして、平衡化した前記カラムに
アプライし、さらに10mLの前記PBSを流した後、
200mM イミダゾール溶液で溶出を行った。溶出液は1m
Lのフラクションごとに回収した。各フラクションごと
に透析チューブ(MWCO500:商品名Spectra-Pro:Sp
ectrum社製)を用いて透析を行い、この透析液を必要に
応じて凍結乾燥した。
るか否かを、商品名MALDI-TOF mass spectrometer(商
品名Voyager:PerSeptive社製)を用いたマススペクト
ル(MS)によって確認した。MSに使用するペプチド
用マトリックスは、α-cyano-4-hydroxyclannamic acid
s(αCHCA:MW189.17)10mgに、アセトニトリル50
0μL、水497μLおよび0.1%TFA3μLを添
加して調製した。合成ペプチドのサンプルは、約10μ
mol/Lの濃度となるように調製した。そして、調製し
たサンプルと前記マトリックスとを1:4(体積比)の
割合で混合して、測定に供した。なお、コントロールと
しては、化学合成品である標品(His)6を使用し
た。
ドのマススペクトルであり、同図(A)が実施例の結
果、同図(B)がコントロールの結果をそれぞれ示す。
て、合成ペプチドの発現量を確認した。OPA法は、試
料に水を添加して10μLとし、これに下記OPA試薬
100μLを混合して、室温で15分放置後、さらに
0.5M NaCl1mLを混合して、その蛍光を測定
した。測定条件は、励起波長340nm、蛍光波長44
0〜455nmとした。
ール1.5mLに溶解し、1.0Mホウ酸カリウム緩衝
液(pH10.4)100mLに加え、さらに、30重
量%Brij35を0.6mL添加した。そして、使用
30分前までに、前記混合液1mLあたり3μLの2−
メルカプトエタノールを添加して、OPA試薬を調製し
た。
ペプチドの発現量を蛍光強度で表わしたグラフである。
7(A)のマススペクトルに示すように、前記図7
(B)のコントロール(His)6のピーク(m/z 882.7
6)と同様のピーク(m/z 882.98)を示している。この
ことから、実施例において環状ssDNAを使用すること
によって、(His)6を合成できることが確認され
た。また、図7(A)においては、前記(His)6の
ピーク以外に、二つのピークが見られるが、これらはそ
れぞれ(His)5(m/z 768.88)および(His)6M
et(m/z 1052.24)を示していると考えられる。
合成により得られた合成ペプチド(His)6およびコ
ントロールの化学合成ペプチド(His)6の化学式を
以下に示す。
ド(His)6の発現量として、蛍光強度を測定した結
果、前記図8に示すように、dsDNAを用いた比較例に比
べて、環状ssDNAを用いた実施例1によれば、非常に高
い蛍光強度が得られた。具体的には、Fraction1におい
て比較例の約40倍、Fraction2において比較例1の
約40倍の蛍光強度を示しており、前記蛍光強度は、ペ
プチドの発現量と相関関係にあることからも、極めて優
れた発現量でペプチドが合成されたといえる。このこと
から、実施例1における環状ssDNAによれば、ペプチド
の発現量を増加でき、効率よくペプチド合成が行えるこ
といえる。
ば、前記DNAを鋳型として転写したmRNAが、前記
DNAに対して相補的な配列を複数有するmRNAであ
るため、効率よく目的タンパク質やペプチドを発現する
ことができる。このような方法によれば、迅速かつ簡便
に所望のタンパク質やペプチドを合成することができ
る。
らmRNAの転写工程を示す概略図である。
前駆体となる直鎖状ssDNAの末端配列の一例を示す
概略図である。
を環化して環状ssDNAを調製する工程の一例を示す
概略図である。
を環化して環状ssDNAを調製する工程を示す概略図
である。
確認した電気泳動図である。
されたmRNAの電気泳動図である。
ペクトルであって、同図(A)は、実施例のマススペク
トル、同図(B)はコントロールのマススペクトルを示
す。
光強度で示したグラフである。
Claims (11)
- 【請求項1】 無細胞抽出液を含む無細胞タンパク質合
成系において、DNAから1以上のmRNAを転写し、
前記mRNAから、翻訳して目的タンパク質若しくは目
的ペプチドを合成するタンパク質またはペプチドの製造
方法であって、前記DNAは、前記目的タンパク質若し
くは目的ペプチドのコード配列と相補的配列を有し、R
NAポリメラーゼ反応により、1つのmRNAに前記D
NAの相補的配列を複数転写することを特徴とする製造
方法。 - 【請求項2】 前記DNAが、環状一本鎖DNA(環状
ssDNA)である請求項1記載の製造方法。 - 【請求項3】 前記DNAの塩基数が、30〜1000
ntの範囲である請求項2記載の製造方法。 - 【請求項4】 前記DNAが、SD配列に相補的な配列
を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方
法。 - 【請求項5】 前記DNAが、ポリ(A)、ポリ(C)
およびポリ(T)からなる群から選択された少なくとも
一つの配列を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載
の製造方法。 - 【請求項6】 ポリ(A)、ポリ(C)およびポリ
(T)からなる群から選択された少なくとも一つの配列
の塩基数が5〜50ntの範囲である請求項5記載の製
造方法。 - 【請求項7】 前記DNAが、プロモーター配列を有し
ている請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。 - 【請求項8】 プロモーターが、T7プロモーター、ta
cプロモーター、lacUV5プロモーターおよびtaqプロモー
ターからなる群から選択された少なくとも一つのプロモ
ータである請求項7記載の製造方法。 - 【請求項9】 無細胞抽出液が、大腸菌、小麦胚芽およ
びウサギ網状赤血球からなる群から選択された少なくと
も一つの抽出液である請求項1〜8のいずれか一項に記
載の製造方法。 - 【請求項10】 mRNAの転写と、目的タンパク質合
成または目的ペプチド合成とを、同じ反応系で行う請求
項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。 - 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか一項に記載
のタンパク質またはペプチドの製造方法により製造した
タンパク質またはペプチド。
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---|---|---|---|
JP2002133209A JP4198387B2 (ja) | 2002-05-08 | 2002-05-08 | 無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質またはペプチドの製造方法、およびこれを用いて製造したタンパク質またはペプチド |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2003325174A true JP2003325174A (ja) | 2003-11-18 |
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JP (1) | JP4198387B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7939299B2 (en) | 2006-08-31 | 2011-05-10 | Toyo Seikan Kaisha, Ltd. | Nucleic acid amplification method |
-
2002
- 2002-05-08 JP JP2002133209A patent/JP4198387B2/ja not_active Expired - Fee Related
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