JPWO2003047871A1 - 塗装物、印刷物、及びそれらに使用する塗料、インキ、更には、積層物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物を提供することを課題とし、該課題は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、塗料が付着してなる塗装物であって、前記塗料には、金属顔料が1重量%以下、平均粒子径20〜180nmの透明な金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗装物によって達成される。
Description
技術分野
本発明は、塗料、インキが付着した塗装物や印刷物、更には積層物、詳しくは、視角によって色が変化するというダウンフロップ性を呈する塗装物、印刷物、及びこれらの塗装物、印刷物に使用する塗料、インキ、更には積層物に関する。
背景技術
従来、ダウンフロップ性を呈する塗料として、例えば、日本国特公平8−26283号公報、日本国特開平4−214779号公報所載のものが知られている。
即ち、これらの公報には、所定の樹脂に、金属顔料(金属単体からなる顔料)と所定の粒径の金属酸化物顔料とが配合されてなる塗料が開示されており、該塗料の塗布された塗装物が、ダウンフロップ性を呈する旨も記載されている。
ところで、ダウンフロップ性を得るためには、前提として光沢、特に金属光沢が必要であるため、上記従来の塗料は、光沢を付与するために多くの金属顔料が配合され、同時に、金属酸化物顔料が配合されることによって、ダウンフロップ性を呈するものとなっている。
しかしながら、上記従来の塗料が塗布された塗装物では、白濁した乳白色を呈しており、そのため確かにダウンフロップ性を呈するもののその効果に限界があることから、近年においては、更に優れたダウンフロップ性を呈する塗装物が要望されている。
この種の優れたダウンフロップ性は、印刷物や積層物においても同様に要望されている。
そこで、上記要望等に鑑み、本発明の課題は、優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物、印刷物、及びこれらに使用する塗料、インキ、更には積層物を提供することにある。
発明の開示
本発明者は、上記従来の要望等に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ダウンフロップ性は、下層側で反射した光が上層側の金属酸化物顔料の層を透過するような場合に発現されること、更には、金属顔料と金属酸化物顔料とが混在する場合において、金属顔料は、光を反射することからダウンフロップ性を呈する前提となる光沢を呈する一方で光の透過を阻害し易くダウンフロップ性低下の原因となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、塗料が付着してなる塗装物であって、前記塗料は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗装物を提供する。
斯かる構成からなる塗装物は、塗料中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、塗料層の乳白色の濁りが抑制され、塗装物に照射された光は、塗料層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度塗料層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、塗料に着色染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においては、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色をも呈しうる。
中でも、前記金属酸化物顔料の平均粒子径が1〜19nmである塗装物は、優れたダウンフロップ性を呈しつつ、全体的に金色味を帯びて見えるという現象が殆ど起こらない。
また、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、インキが付着してなる印刷物であって、前記インキには、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする印刷物を提供する。
斯かる構成からなる印刷物は、インキ中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、インキ層の乳白色の濁りが抑制され、印刷物に照射された光は、インキ層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度インキ層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、インキに染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においても、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色を呈しうる。
また、本発明は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗料又はインキを提供する。
斯かる構成からなる塗料又はインキは、光沢物に付着させることにより、優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物等を作成しうる。
また、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、合成樹脂又はガラスから製造された成形体を積層してなる積層物であって、前記成形体には、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.01〜10重量%配合されていることを特徴とする積層物を提供する。
斯かる構成からなる積層物は、成形体中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、成形体の乳白色の濁りが抑制され、積層物に照射された光は、成形体の層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度成形体の層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、成形体中に染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においては、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色を呈しうる。
本発明に於いて、ダウンフロップ性とは、光沢に付随する性質で、視角により色が変化する性質を意味する。
また、金属酸化物顔料等の配合割合は、塗料、インキ又は成形体の全固形分中における割合(重量%)を意味する。
本発明に於いて、塗装物とは、表面に塗装が施されてなるものを意味し、印刷物とは、表面に印刷が施されてなるものを意味する。
また、塗料とは、表面の塗装に用いる組成物を意味し、インキとは、印刷に用いる組成物を意味する。
本発明に於いて、光沢物とは、光沢を有する表面を備えたものを意味する。
ここで、光沢を有するとは、通常、JIS Z 8741(85度鏡面光沢度、好ましくは60度鏡面光沢度)に基づく鏡面光沢度が測定可能な範囲であることを意味する。従って、測定可能である限り、表面が平滑でない艶消し面であっても光沢を有する表面に含まれる。
また、この光沢度(60度鏡面光沢度)は、10%以上が好ましい。
この光沢度は、表面を平滑にする等、従来公知の方法で向上させることができる。
本発明に於いて、光沢を有する表面は、金属又は非金属の何れからなるものであっても良いが、金属からなるものが好ましい。
ここで、金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、クロム合金(ステンレス)等及びこれらを含有する合金が好ましい。特に、ダウンフロップ性に優れると言う観点から、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを含有する合金が好ましい。
また、非金属としては、木材、樹脂、ガラス、タイル、石、絹糸等を挙げることができる。
前記光沢物は、例えば、被塗装物又は被印刷物に、金属、パール、木材、樹脂等の光沢を有する表面層等を形成することにより、又は表面を平滑にすることにより得ることができる。
前記被塗装物又は被印刷物としては、金属、ガラス、セラミックス、アスベスト、木材、紙、石さらにはプラスチック材料などいずれのものから構成されていても良い。
尚、被塗装物又は被印刷物自体が、光沢を有する表面を備えている場合には、そのまま光沢物として採用できる。
例えば、光沢を有するアルミニウム板、アルミニウム箔、金箔、銀箔、銅箔、クロム合金板、パール、プラスチック等であれば、そのまま光沢物として採用できる。
前記被塗装物、被印刷物又は成形体に光沢を呈する金属の表面層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、金属蒸着、金属メッキ、金属貼合わせ、金属練込み、スパッタリング又は金属塗装等の方法を挙げることができる。
金属塗装を採用する場合、使用する金属表面層形成用の塗料として、例えば、全固形分中、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂10〜95重量%、アルミニウム、黄銅、ステンレス、銀等の金属顔料(金属フレーク顔料)1重量%〜40重量%配合されたものを用いることができる。
更に、金属塗装として、これらの塗料に着色顔料等の着色剤が配合されたものを用いて着色メタリック塗装を採用しても良い。また、金属顔料として、表面に着色被膜の形成された着色金属顔料が配合された塗料を用いて着色メタリック塗装を採用しても良い。
この着色被膜は、金属顔料表面に、異種金属又は異種、同種の金属酸化物や金属窒化物を蒸着やスパッタリング等により付与したり、或いは着色顔料と樹脂バインダとで形成された着色剤を金属顔料表面に付与したりすること等により形成されうる。
本発明に於いて、塗料、インキとして、好ましくは、全固形分中、熱可塑性又は熱硬化性樹脂が5〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%配合されてなるもの、特に透明のものが好ましく使用される。
塗料、インキに用いる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂及びシリコン樹脂等、塗料やインキの分野で通常使用される樹脂を挙げることができる。
本発明に於いて、金属酸化物顔料としては、透明な金属酸化物顔料が好ましく、具体的には、二酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、ミクロ硫化バリウム、無定形シリカ等を挙げることができ、これらは単独で用いても、また混合物として用いてもよい。これらの中でも、二酸化チタンが好ましい。
また、金属酸化物顔料は、有機処理剤または無機処理剤で表面処理したものを用いても良い。有機処理剤として、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。無機処理剤として、アルミナ、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。
金属酸化物顔料としては、平均粒子径が1〜180nm、好ましくは20nm〜180nm、更に好ましくは30nm〜170nmのものが用いられる。該平均粒子径が20nm〜180nmの金属酸化物顔料を使用した場合は、特に優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物や印刷物を得ることができる。また、該平均粒子径が1〜19nmの金属酸化物顔料を使用した場合は、平均粒子径が20nm以上の金属酸化物顔料を使用した場合に比べるとダウンフロップ性は若干劣りはするものの、平均粒子径が20nm以上の金属酸化物顔料を使用した場合に起こる光沢物の色が何色であれ、全体的に僅かに金色味を帯びて見えるという現象が殆ど起こらない。
金属酸化物顔料の平均粒子径が1nmより小さい場合や180nmを越える場合では、ダウンフロップ性が劣るものとなる。
ここで、平均粒子径は、画像解析装置(ルーゼックIIIU、ニレコ社製)により粒度分布曲線を得、その50Vol%値から求める。
また粒子径の変動係数は、60%以下が好ましく、更に好ましくは45%以下である。ここで変動係数は100×(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)(%)により定義される。
尚、所定平均粒子径の金属酸化物顔料は、コロイド法(化学処方)、硫酸法、塩素法等により調製される。
また、塗料、インキにおける金属酸化物顔料の配合量は、塗剤又はインキの全固形分中0.1〜70重量%であることを要し、上限として好ましくは60重量%、より好ましくは55重量%である。また、下限としては好ましくは0.5重量%、より好ましくは15重量%である。
斯かる範囲であれば、より優れたダウンフロップ性を呈しうる。
一方、0.1重量%未満であれば、付着量を増やしても十分なダウンフロップ性を呈し得ず、70重量%を越えるような場合には、塗料等としての塗れ性が極端に低下する。
尚、金属酸化物顔料の配合量が少ない場合には、付着量を増やし塗料、インキの層厚を厚くすれば、充分なダウンフロップ性を呈するものとなる。
塗装物、印刷物に於ける塗料、インキの層厚としては、金属酸化物顔料が15重量%未満の場合には、3〜15μmが好ましく、15重量%以上の場合には、1〜30μmが好ましい。
この塗料、インキには、通常、金属顔料は配合されていないことが好ましいが、ダウンフロップ性を阻害しない範囲(0.6重量%以下、好ましくは、0〜0.3重量%)で金属顔料が配合されていても良い。0.6重量%以下であれば、光の透過性を殆ど低下させず、ダウンフロップ性が阻害される虞も低減する。
また、金属酸化物顔料に対する割合としては、金属酸化物顔料1重量部に対して0〜1/5重量部が好ましい。斯かる範囲であれば、比較的層厚(塗料層、インキ層の厚さ)を厚くした場合であってもダウンフロップ性の阻害される虞が殆どない。
ここで、金属顔料とは、酸化されていない金属単体からなる顔料を意味し、該金属顔料としては、金属フレーク、金属被覆粒子等を、具体的には、アルミニウムフレーク顔料を挙げることができる。
また、本発明に於いて、塗料、インキには、更に、着色顔料又は着色染料が配合されていてもよい。
斯かる構成によれば、ダウンフロップ性を呈する際に、視角によって、ベースとなる色(光沢物の色)から、配合された着色顔料又は着色染料の色に大きく変化し易いものとなる。
従って、例えば、カラーコピーによる偽造が困難な塗装物又は印刷物となる。
更に、本発明に於いて、塗料やインキには、その他、当業者に良く知られている、溶剤、各種添加剤が配合されていてもよい。
本発明に於いて、光沢物に塗料を付着させる方法としては、スプレー塗装、静電塗装、ローラーコート、電着塗装、粉体塗装等の通常の方法を採用することができる。また、予め塗料をフィルム状等の成形体とし、該成形体を光沢物に積層しても良い。また、成形体の裏側に液状の光沢物を塗布・硬化させることにより、該光沢物に塗料を付着させても良い。
本発明において、光沢物にインキを付着させる方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法を採用できるが、オフセット印刷、インクジェット印刷が好適である。
本発明のインキによれば、配合された金属酸化物顔料の平均粒径が1〜180nmと非常に小さいため、オフセット印刷やインクジェット印刷が可能となるところ、これらの印刷方法によれば、印刷模様が非常に繊細なものとなりうる。
尚、本発明に於いては、光沢物に直接、塗料又はインキが付着している構成のみならず、光沢物に、透明な層を介して塗料又はインキが付着している構成を採用しても良い。例えば、透明な樹脂フィルムの表面側に所定の金属酸化物顔料の配合された塗料又はインキを付着させておき、該樹脂フィルムの裏面側を光沢物に重ねる(ラミネートする)ことにより構成されるものであっても良い。
光沢物と塗料等の層との間に介装される前記樹脂フィルムとしては、着色顔料又は着色染料等が配合された有色透明な樹脂フィルムが好ましい。
斯かる構成からなる塗装物又は印刷物は、光沢物から金属光沢を呈すると共に、有色透明な層(樹脂フィルムの層)によって、メタリックカラーを呈するものとなり、しかも、前記金属酸化顔料が配合された塗料等の層によって、偏光する色彩が更に多色化した装飾性の極めて優れたものとなる。
更に、本発明に於いては、付着した塗料又はインキの表面側にクリヤー層が備えられてなるものであっても良い。
斯かる構成を採用することにより、耐食性、耐候性、耐衝撃性に優れたものとなる。
従って、自動車の外装等にも適用しうる。
前記クリヤー層は、例えば、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等の樹脂を吹き付けたり、はけ塗りしたり、更には、透明な樹脂フィルムを貼着すること等により形成しうる。
尚、本発明の塗装物等及び塗装物等の作成方法は、例えば、自動車、缶、装飾品、コンテナ、看板、包装材、ラベル、カタログ、容器、家電製品、通信機器、筆記具、絵の具、マニキュア等及びこれらの作成方法に適用されうる。
本発明の積層物は、前記平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料とガラス原料或いは合成樹脂とを混練し、得られた混練物を押出し成形、プレス成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、あるいはインフレーション成形することによって、フィルム、シート、プレート等の好ましくは透明の成形体を得、該成形体を、光沢物である金属等に積層することによって、あるいは前記成形体に光沢物を印刷、塗布、転写、ラミネート、接着、蒸着等することによって得ることができる。金属酸化物顔料の成形体中の配合量は0.01〜10重量%である。前記合成樹脂として、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリカーボネート、ブタジエン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
以下、本発明を実施例、比較例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
透明な金属酸化物顔料として、コロイド化学法で調製した平均粒子径30nmの二酸化チタン粉末を0.9重量部(塗料の全固形分の3.1重量%に相当)と、アクリルポリオール(水酸基30mgKOH/g,樹脂分50重量%、商品名「ヒタロイド」、日立化成工業社製)を30重量部と、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液(試薬を調製)30重量部とを混合し、ミルで分散させ、ミルベースを製造した。
このミルベース中に、青色顔料10重量部と、酢酸ブチル溶剤(試薬)10重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートビュウレト結合物(NCO23.5重量%、商品名「デュラネート24A−100」旭化成工業社製)3.0重量部とを配合して、アクリルウレタン溶液を調製し、該アクリルウレタン溶液を、実施例1の塗料とした。
次いで、光沢を有するアルミ箔の表面に、この塗料をバーコーターで塗布し、乾燥塗膜厚15μmの実施例1の塗装物を得た。
実施例2〜4
二酸化チタン粉末として、コロイド化学法で調製した平均粒子径がそれぞれ50,100,150nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例2〜4の塗装物を得た。
実施例5
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径50nmの二酸化チタン粉末を0.5重量部(全固形分の0.6重量%に相当)と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「アクリディック」、大日本インキ化学工業社製)30重量部と、トルエン/酢酸ブチルの1/1混合溶液30重量部とを混合し、ミルベースを製造した。
この中に、メラミン樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「スーパーベッカミン」、大日本化学工業製)30重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%)100重量部と、トルエン/酢酸ブチル1/1混合溶液30重量部とを配合し、実施例5の塗料とした。
そして、アルミペースト(商品名「ノンリーフィングアルペースト,6320NS」、東洋アルミニウム社製)20重量部をアクリル樹脂100重量部に配合して鉄板の上に130℃、30分間焼付けした試験板(光沢物)上に、上記塗料を塗膜厚15μmになるように塗布・焼付け(焼付け塗装)し実施例5の塗装物を得た。
実施例6
二酸化チタン粉末の配合量を20重量部(全固形分の20.0重量%に相当)とした以外は、実施例5と同様にして、実施例6の塗装物を得た。
実施例7
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径35nmの二酸化チタン粉末を25重量部(インキの全固形分の25重量%に相当)と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、アクリル系プレポリマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルジアクリレートの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤(安定剤等添加剤)5重量部、青色顔料(商品名「ダイピロキサイドブルー#9410」、大日精化工業製)5重量部とを配合したものを混練し、実施例7のインキとした。
次いで、パールインキ印刷面(光沢物)に、実施例7のインキを印刷し、実施例7の印刷物を得た。
実施例8
二酸化チタン粉末の配合量を140重量部(全固形分の65.1重量%に相当)とした以外は、実施例7と同様にして、実施例8の塗装物を得た。
比較例1
二酸化チタン粉末として、平均粒子が200nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の塗装物を得た。
比較例2
二酸化チタン粉末の配合量を3.0重量部(全固形分の3.5重量%に相当)とした以外は、実施例5と同様にミルベースを製造し、この中にメラミン樹脂、アクリル樹脂、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液とを実施例5と同様に配合し、更に、アルミペースト30重量部(全固形分の3.5重量%に相当)を配合して比較例2の塗料を得た。この塗料を実施例5と同様に焼付け塗装して、比較例2の塗装物を得た。
比較例3
二酸化チタン粉末の配合量を190.0重量部(全固形分の71.7重量%に相当)とした以外は、実施例7と同様にして、比較例3の塗装物を得た。
得られた各実施例、比較例の塗装物を対象として、下記試験例1のダウンフロップ性の評価を行い、評価結果を下記表1に示した。
試験例1 〈ダウンフロップ性の評価〉
目視評価により、各塗装物の塗装面を正面から見た場合と、斜め角度(垂線から約45度)から見た場合に、色が大きく異なるものをダウンフロップ性が大きい(表中○で表示)と、色があまり異ならないものをダウンフロップ性が少ない(表中×で表示)と評価した。
表1から明らかなように、各実施例のものは、薄い金色から青色に色が大きく変化しダウンフロップ性の大きいことが確認された。一方、各比較例のものは、色の変化が認められず、ダウンフロップ性の小さいことが確認された。
この理由は、明らかではないが、例えば、金属光沢を有する表面層等に、金属酸化物顔料の配合された塗料等をコーティングすると、塗料等の面を正面から見た場合には、下地たる光沢物表面から反射される光の影響が大きく、薄い金色が顕著となり、塗装面を斜め角度から見た場合には、塗料層等の金属酸化物顔料から反射される光の影響がより大きく、青色等に見えるようになると推測される。
実施例9
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径35nmの二酸化チタン粉末を31重量部(インキの全固形分の27.7重量%に相当)と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、感光性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルグリコールジアクリレートの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤5重量部、青色顔料(商品名「ダイピロキサイドブルー#9410」、大日精化工業製)11重量部とを配合したものを混練し、実施例9のインキとした。
次いで、アルミ蒸着フィルム(商品名「ACトレファン」、東洋アルミニウム製)に、実施例9のインキをオフセット印刷し、実施例9の印刷物を得た。
実施例10
アルミフレークを0.6重量部(全固形分の0.5重量%)配合した以外は、実施例9と同様にして実施例10の印刷物を得た。
比較例4
平均粒子径35nmの二酸化チタンの配合量を、31重量部(全固形分中27.1重量%)、アルミフレークを2.3重量部(全固形分中2.0重量%)配合した以外は、実施例9と同様にして比較例4の印刷物を得た。
実施例9、10、比較例4の印刷物を対象として、試験例2に記載の各観測角におけるa*値、b*値を測定した。結果を表2に示す。
試験例2
得られた印刷物を、変色側色計(商品名「MA60」、X−Rite社製)にて、各観測角におけるa*(赤方向)、b*(黄方向)値を測定した。
尚、本試験において、観測角とは、図1に示すように、反射角45度となるように光(入射光)を照射し、反射角45度となる観測位置から観測する場合を0度とし、そこから周方向入射側に観測位置が変位した際に於ける移動角度Xを意味する。
表2から明らかなように、金属顔料を含まない実施例9は、△a値(a*の最大変化幅)8.83、△b値(b*の最大変化幅)34.55、実施例10は、△a値3.41、、△b値34,77であるのに対して、比較例4は△a値2.47、△b値23.97であり、両実施例の印刷物は、比較例に比してダウンフロップ性に優れていることが認められる。
実施例11
透明な金属酸化物顔料として、コロイド化学法で調製した平均粒子径10nmの二酸化チタン粉末を0.9重量部と、アクリルポリオール(水酸基30mgKOH/g、樹脂分50重量%、商品名「ヒタロイド」、日立化成工業社製)を30重量部と、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液30重量部とを混合し、ミルで分散させ、ミルベースを製造した。
このミルベース中に、青色顔料10重量部と、酢酸ブチル10重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートビュウレト結合物(NCO23.5重量%、商品名「デュラネート24A−100」旭化成工業社製)3.0重量部とを配合して、アクリルウレタン溶液を調製し、該アクリルウレタン溶液を、実施例11の塗料とした。
次いで、光沢を有するアルミ箔の表面に、この塗料をバーコーターで塗布し、乾燥塗膜厚20μmの実施例11の塗装物を得た。
実施例12
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径15nmの二酸化チタン粉末を0.5重量部と、緑色顔料(商品名「ダイピロキサイドグリーン」、大日精化工業製)0.2重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「アクリディック」、大日本インキ化学工業社製)30重量部と、トルエン/酢酸ブチルの1/1混合溶液30重量部とを混合し、ミルベースを製造した。
この中に、メラミン樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「ユーバン」、三井化学社製)30重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%)100重量部と、トルエン/酢酸ブチル1/1混合溶液30重量部とを配合し、実施例12の塗料とした。
そして、アルミペースト(商品名「ノンリーフィングアルペースト,6320NS」、東洋アルミニウム社製)20重量部をアクリル樹脂100重量部に配合して鉄板の上に130℃、30分間焼付けした試験板(光沢物)上に、上記塗料を塗膜厚25μmになるように塗布・焼付け(焼付け塗装)し実施例12の塗装物を得た。
実施例13
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径5nmの二酸化チタン粉末を25重量部と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、アクリル系プレポリマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルジアクリレートとの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤(安定剤などの添加剤)5重量部、紫色顔料(商品名「ホスタパームバイオレットBL」、クラリアントジャパン社製)1重量部とを配合したものを混練し、実施例13のインキとした。
次いで、パールインキ印刷面(光沢物)に、実施例13のインキを印刷し、実施例13の印刷物を得た。
得られた各実施例1、2、11〜13の塗装物、印刷物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性の評価を、又下記試験例3に示す如く色の見え具合の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
試験例3
各塗装物の色を目視により観察した。表3中の「X=0」に記載の色は、図1に示されるXが0度となる観測位置から観測した時に観測された色であり、「X=120」に記載の色は、図1に示されるXが120度となる観測位置から観測した時に観測された色である。
表3から、実施例1、2、11〜13のものは、全て、ダウンフロップ性が大きいことが確認された。また、平均粒子径が10nmの金属酸化物顔料を使用した実施例11の塗装物は薄い銀色から青色に、平均粒子径が15nmの金属酸化物顔料を使用した実施例12の塗装物は薄い銀色から緑色に、平均粒子径が5nmの金属酸化物顔料を使用した実施例13のインキは薄い銀色から紫色に、それぞれ色が大きく変化し、平均粒子径が19nm以下の金属酸化物顔料を使用した場合、銀色から色が変化するのが判った。一方、平均粒子径が30nmの金属酸化物顔料を使用した実施例1の塗装物及び平均粒子径が50nmの金属酸化物顔料を使用した実施例2の塗装物は、それぞれ、薄い金色から青色に色が大きく変化した。
実施例14
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径18nmの二酸化チタン粉末を40重量部と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)20重量部、感光性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルグリコールジアクリレートとの混合物)26重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)5重量部と、補助剤5重量部、青色顔料(商品名「クロモファインブルー#5000P」、大日精化工業製)1.5重量部及び赤色顔料(商品名「ホスタパームレッドEG TRANS」、クラリアント製)2.5重量部とを配合したものを混練し、実施例14のインキとした。
次いで、アルミ蒸着フィルム(商品名「ACトレファン」、東洋アルミニウム製)に、実施例14のインキをオフセット印刷し、実施例14の印刷物を得た。
実施例15
平均粒子径10nmの二酸化チタン粉末30重量部、紫外線硬化樹脂30重量部を配合した以外は、実施例14と同様にして実施例15の印刷物を得た。
実施例14、15で得られた印刷物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を、試験例3に準じて色の見え具合を評価した。結果を表4に示す。
表4から明らかなように、各実施例のものは、薄い銀色から紫色に色が大きく変化し、かつダウンフロップ性も大きいことが確認された。
また、実施例14、15で得られた印刷物を対象として、試験例2に準じて各観測角におけるa*値、b*値を測定した。結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例14は、△a値21.79、△b値53.83、実施例15は、△a値15.72、△b値37.07とダウンフロップ性に優れていることが認められる。
実施例16
ポリスチレン樹脂(出光石油化学製)100重量部に、平均粒子径が45nmの二酸化チタン0.025重量部及びカーボンブラック(プリンテックス25、デグサ・ヒュルス製)0.025重量部とを均一に混合し、該混合物をペレット化した。得られたペレットを射出成形機(日本製鋼所製)に供給し、シリンダー温度235℃で射出成形し、厚さ2mmの平板を得た。得られた平板の片面にアルミ蒸着を施し、積層物を得た。
得られた積層物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を評価した。ダウンフロップ性の評価は○であった。
実施例17
1500℃に溶解した透明ガラス(ソーダ石灰ガラス)カレット100重量部に、平均粒子径が50nmの二酸化チタン0.020重量部を均一に混合し、ロールアウト法で、厚さ2mmのガラス板を得た。得られたガラス板の片面にアルミ蒸着紙を接着した。
得られたガラス板を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を評価した。ダウンフロップ性の評価は○であった。
以上のように、本発明の塗装物、印刷物、積層物は、優れたダウンフロップ性を呈しうるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
図1は試験例2及び試験例3に於ける観測角を示す概略図である。
本発明は、塗料、インキが付着した塗装物や印刷物、更には積層物、詳しくは、視角によって色が変化するというダウンフロップ性を呈する塗装物、印刷物、及びこれらの塗装物、印刷物に使用する塗料、インキ、更には積層物に関する。
背景技術
従来、ダウンフロップ性を呈する塗料として、例えば、日本国特公平8−26283号公報、日本国特開平4−214779号公報所載のものが知られている。
即ち、これらの公報には、所定の樹脂に、金属顔料(金属単体からなる顔料)と所定の粒径の金属酸化物顔料とが配合されてなる塗料が開示されており、該塗料の塗布された塗装物が、ダウンフロップ性を呈する旨も記載されている。
ところで、ダウンフロップ性を得るためには、前提として光沢、特に金属光沢が必要であるため、上記従来の塗料は、光沢を付与するために多くの金属顔料が配合され、同時に、金属酸化物顔料が配合されることによって、ダウンフロップ性を呈するものとなっている。
しかしながら、上記従来の塗料が塗布された塗装物では、白濁した乳白色を呈しており、そのため確かにダウンフロップ性を呈するもののその効果に限界があることから、近年においては、更に優れたダウンフロップ性を呈する塗装物が要望されている。
この種の優れたダウンフロップ性は、印刷物や積層物においても同様に要望されている。
そこで、上記要望等に鑑み、本発明の課題は、優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物、印刷物、及びこれらに使用する塗料、インキ、更には積層物を提供することにある。
発明の開示
本発明者は、上記従来の要望等に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ダウンフロップ性は、下層側で反射した光が上層側の金属酸化物顔料の層を透過するような場合に発現されること、更には、金属顔料と金属酸化物顔料とが混在する場合において、金属顔料は、光を反射することからダウンフロップ性を呈する前提となる光沢を呈する一方で光の透過を阻害し易くダウンフロップ性低下の原因となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、塗料が付着してなる塗装物であって、前記塗料は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗装物を提供する。
斯かる構成からなる塗装物は、塗料中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、塗料層の乳白色の濁りが抑制され、塗装物に照射された光は、塗料層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度塗料層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、塗料に着色染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においては、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色をも呈しうる。
中でも、前記金属酸化物顔料の平均粒子径が1〜19nmである塗装物は、優れたダウンフロップ性を呈しつつ、全体的に金色味を帯びて見えるという現象が殆ど起こらない。
また、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、インキが付着してなる印刷物であって、前記インキには、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする印刷物を提供する。
斯かる構成からなる印刷物は、インキ中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、インキ層の乳白色の濁りが抑制され、印刷物に照射された光は、インキ層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度インキ層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、インキに染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においても、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色を呈しうる。
また、本発明は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗料又はインキを提供する。
斯かる構成からなる塗料又はインキは、光沢物に付着させることにより、優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物等を作成しうる。
また、本発明は、光沢を有する表面を備えた光沢物に、合成樹脂又はガラスから製造された成形体を積層してなる積層物であって、前記成形体には、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.01〜10重量%配合されていることを特徴とする積層物を提供する。
斯かる構成からなる積層物は、成形体中の金属顔料の配合量が0.6重量%以下であるので、成形体の乳白色の濁りが抑制され、積層物に照射された光は、成形体の層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度成形体の層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性を呈しうる。また、成形体中に染料、着色顔料等の着色剤が添加されている場合においては、金属顔料が多い場合に比べて乳白色の濁りが殆どなく、その結果、着色剤による発色が阻害されず、鮮やかな色を呈しうる。
本発明に於いて、ダウンフロップ性とは、光沢に付随する性質で、視角により色が変化する性質を意味する。
また、金属酸化物顔料等の配合割合は、塗料、インキ又は成形体の全固形分中における割合(重量%)を意味する。
本発明に於いて、塗装物とは、表面に塗装が施されてなるものを意味し、印刷物とは、表面に印刷が施されてなるものを意味する。
また、塗料とは、表面の塗装に用いる組成物を意味し、インキとは、印刷に用いる組成物を意味する。
本発明に於いて、光沢物とは、光沢を有する表面を備えたものを意味する。
ここで、光沢を有するとは、通常、JIS Z 8741(85度鏡面光沢度、好ましくは60度鏡面光沢度)に基づく鏡面光沢度が測定可能な範囲であることを意味する。従って、測定可能である限り、表面が平滑でない艶消し面であっても光沢を有する表面に含まれる。
また、この光沢度(60度鏡面光沢度)は、10%以上が好ましい。
この光沢度は、表面を平滑にする等、従来公知の方法で向上させることができる。
本発明に於いて、光沢を有する表面は、金属又は非金属の何れからなるものであっても良いが、金属からなるものが好ましい。
ここで、金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、クロム合金(ステンレス)等及びこれらを含有する合金が好ましい。特に、ダウンフロップ性に優れると言う観点から、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを含有する合金が好ましい。
また、非金属としては、木材、樹脂、ガラス、タイル、石、絹糸等を挙げることができる。
前記光沢物は、例えば、被塗装物又は被印刷物に、金属、パール、木材、樹脂等の光沢を有する表面層等を形成することにより、又は表面を平滑にすることにより得ることができる。
前記被塗装物又は被印刷物としては、金属、ガラス、セラミックス、アスベスト、木材、紙、石さらにはプラスチック材料などいずれのものから構成されていても良い。
尚、被塗装物又は被印刷物自体が、光沢を有する表面を備えている場合には、そのまま光沢物として採用できる。
例えば、光沢を有するアルミニウム板、アルミニウム箔、金箔、銀箔、銅箔、クロム合金板、パール、プラスチック等であれば、そのまま光沢物として採用できる。
前記被塗装物、被印刷物又は成形体に光沢を呈する金属の表面層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、金属蒸着、金属メッキ、金属貼合わせ、金属練込み、スパッタリング又は金属塗装等の方法を挙げることができる。
金属塗装を採用する場合、使用する金属表面層形成用の塗料として、例えば、全固形分中、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂10〜95重量%、アルミニウム、黄銅、ステンレス、銀等の金属顔料(金属フレーク顔料)1重量%〜40重量%配合されたものを用いることができる。
更に、金属塗装として、これらの塗料に着色顔料等の着色剤が配合されたものを用いて着色メタリック塗装を採用しても良い。また、金属顔料として、表面に着色被膜の形成された着色金属顔料が配合された塗料を用いて着色メタリック塗装を採用しても良い。
この着色被膜は、金属顔料表面に、異種金属又は異種、同種の金属酸化物や金属窒化物を蒸着やスパッタリング等により付与したり、或いは着色顔料と樹脂バインダとで形成された着色剤を金属顔料表面に付与したりすること等により形成されうる。
本発明に於いて、塗料、インキとして、好ましくは、全固形分中、熱可塑性又は熱硬化性樹脂が5〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%配合されてなるもの、特に透明のものが好ましく使用される。
塗料、インキに用いる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂及びシリコン樹脂等、塗料やインキの分野で通常使用される樹脂を挙げることができる。
本発明に於いて、金属酸化物顔料としては、透明な金属酸化物顔料が好ましく、具体的には、二酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、ミクロ硫化バリウム、無定形シリカ等を挙げることができ、これらは単独で用いても、また混合物として用いてもよい。これらの中でも、二酸化チタンが好ましい。
また、金属酸化物顔料は、有機処理剤または無機処理剤で表面処理したものを用いても良い。有機処理剤として、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。無機処理剤として、アルミナ、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。
金属酸化物顔料としては、平均粒子径が1〜180nm、好ましくは20nm〜180nm、更に好ましくは30nm〜170nmのものが用いられる。該平均粒子径が20nm〜180nmの金属酸化物顔料を使用した場合は、特に優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物や印刷物を得ることができる。また、該平均粒子径が1〜19nmの金属酸化物顔料を使用した場合は、平均粒子径が20nm以上の金属酸化物顔料を使用した場合に比べるとダウンフロップ性は若干劣りはするものの、平均粒子径が20nm以上の金属酸化物顔料を使用した場合に起こる光沢物の色が何色であれ、全体的に僅かに金色味を帯びて見えるという現象が殆ど起こらない。
金属酸化物顔料の平均粒子径が1nmより小さい場合や180nmを越える場合では、ダウンフロップ性が劣るものとなる。
ここで、平均粒子径は、画像解析装置(ルーゼックIIIU、ニレコ社製)により粒度分布曲線を得、その50Vol%値から求める。
また粒子径の変動係数は、60%以下が好ましく、更に好ましくは45%以下である。ここで変動係数は100×(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)(%)により定義される。
尚、所定平均粒子径の金属酸化物顔料は、コロイド法(化学処方)、硫酸法、塩素法等により調製される。
また、塗料、インキにおける金属酸化物顔料の配合量は、塗剤又はインキの全固形分中0.1〜70重量%であることを要し、上限として好ましくは60重量%、より好ましくは55重量%である。また、下限としては好ましくは0.5重量%、より好ましくは15重量%である。
斯かる範囲であれば、より優れたダウンフロップ性を呈しうる。
一方、0.1重量%未満であれば、付着量を増やしても十分なダウンフロップ性を呈し得ず、70重量%を越えるような場合には、塗料等としての塗れ性が極端に低下する。
尚、金属酸化物顔料の配合量が少ない場合には、付着量を増やし塗料、インキの層厚を厚くすれば、充分なダウンフロップ性を呈するものとなる。
塗装物、印刷物に於ける塗料、インキの層厚としては、金属酸化物顔料が15重量%未満の場合には、3〜15μmが好ましく、15重量%以上の場合には、1〜30μmが好ましい。
この塗料、インキには、通常、金属顔料は配合されていないことが好ましいが、ダウンフロップ性を阻害しない範囲(0.6重量%以下、好ましくは、0〜0.3重量%)で金属顔料が配合されていても良い。0.6重量%以下であれば、光の透過性を殆ど低下させず、ダウンフロップ性が阻害される虞も低減する。
また、金属酸化物顔料に対する割合としては、金属酸化物顔料1重量部に対して0〜1/5重量部が好ましい。斯かる範囲であれば、比較的層厚(塗料層、インキ層の厚さ)を厚くした場合であってもダウンフロップ性の阻害される虞が殆どない。
ここで、金属顔料とは、酸化されていない金属単体からなる顔料を意味し、該金属顔料としては、金属フレーク、金属被覆粒子等を、具体的には、アルミニウムフレーク顔料を挙げることができる。
また、本発明に於いて、塗料、インキには、更に、着色顔料又は着色染料が配合されていてもよい。
斯かる構成によれば、ダウンフロップ性を呈する際に、視角によって、ベースとなる色(光沢物の色)から、配合された着色顔料又は着色染料の色に大きく変化し易いものとなる。
従って、例えば、カラーコピーによる偽造が困難な塗装物又は印刷物となる。
更に、本発明に於いて、塗料やインキには、その他、当業者に良く知られている、溶剤、各種添加剤が配合されていてもよい。
本発明に於いて、光沢物に塗料を付着させる方法としては、スプレー塗装、静電塗装、ローラーコート、電着塗装、粉体塗装等の通常の方法を採用することができる。また、予め塗料をフィルム状等の成形体とし、該成形体を光沢物に積層しても良い。また、成形体の裏側に液状の光沢物を塗布・硬化させることにより、該光沢物に塗料を付着させても良い。
本発明において、光沢物にインキを付着させる方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法を採用できるが、オフセット印刷、インクジェット印刷が好適である。
本発明のインキによれば、配合された金属酸化物顔料の平均粒径が1〜180nmと非常に小さいため、オフセット印刷やインクジェット印刷が可能となるところ、これらの印刷方法によれば、印刷模様が非常に繊細なものとなりうる。
尚、本発明に於いては、光沢物に直接、塗料又はインキが付着している構成のみならず、光沢物に、透明な層を介して塗料又はインキが付着している構成を採用しても良い。例えば、透明な樹脂フィルムの表面側に所定の金属酸化物顔料の配合された塗料又はインキを付着させておき、該樹脂フィルムの裏面側を光沢物に重ねる(ラミネートする)ことにより構成されるものであっても良い。
光沢物と塗料等の層との間に介装される前記樹脂フィルムとしては、着色顔料又は着色染料等が配合された有色透明な樹脂フィルムが好ましい。
斯かる構成からなる塗装物又は印刷物は、光沢物から金属光沢を呈すると共に、有色透明な層(樹脂フィルムの層)によって、メタリックカラーを呈するものとなり、しかも、前記金属酸化顔料が配合された塗料等の層によって、偏光する色彩が更に多色化した装飾性の極めて優れたものとなる。
更に、本発明に於いては、付着した塗料又はインキの表面側にクリヤー層が備えられてなるものであっても良い。
斯かる構成を採用することにより、耐食性、耐候性、耐衝撃性に優れたものとなる。
従って、自動車の外装等にも適用しうる。
前記クリヤー層は、例えば、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等の樹脂を吹き付けたり、はけ塗りしたり、更には、透明な樹脂フィルムを貼着すること等により形成しうる。
尚、本発明の塗装物等及び塗装物等の作成方法は、例えば、自動車、缶、装飾品、コンテナ、看板、包装材、ラベル、カタログ、容器、家電製品、通信機器、筆記具、絵の具、マニキュア等及びこれらの作成方法に適用されうる。
本発明の積層物は、前記平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料とガラス原料或いは合成樹脂とを混練し、得られた混練物を押出し成形、プレス成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、あるいはインフレーション成形することによって、フィルム、シート、プレート等の好ましくは透明の成形体を得、該成形体を、光沢物である金属等に積層することによって、あるいは前記成形体に光沢物を印刷、塗布、転写、ラミネート、接着、蒸着等することによって得ることができる。金属酸化物顔料の成形体中の配合量は0.01〜10重量%である。前記合成樹脂として、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリカーボネート、ブタジエン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
以下、本発明を実施例、比較例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
透明な金属酸化物顔料として、コロイド化学法で調製した平均粒子径30nmの二酸化チタン粉末を0.9重量部(塗料の全固形分の3.1重量%に相当)と、アクリルポリオール(水酸基30mgKOH/g,樹脂分50重量%、商品名「ヒタロイド」、日立化成工業社製)を30重量部と、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液(試薬を調製)30重量部とを混合し、ミルで分散させ、ミルベースを製造した。
このミルベース中に、青色顔料10重量部と、酢酸ブチル溶剤(試薬)10重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートビュウレト結合物(NCO23.5重量%、商品名「デュラネート24A−100」旭化成工業社製)3.0重量部とを配合して、アクリルウレタン溶液を調製し、該アクリルウレタン溶液を、実施例1の塗料とした。
次いで、光沢を有するアルミ箔の表面に、この塗料をバーコーターで塗布し、乾燥塗膜厚15μmの実施例1の塗装物を得た。
実施例2〜4
二酸化チタン粉末として、コロイド化学法で調製した平均粒子径がそれぞれ50,100,150nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例2〜4の塗装物を得た。
実施例5
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径50nmの二酸化チタン粉末を0.5重量部(全固形分の0.6重量%に相当)と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「アクリディック」、大日本インキ化学工業社製)30重量部と、トルエン/酢酸ブチルの1/1混合溶液30重量部とを混合し、ミルベースを製造した。
この中に、メラミン樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「スーパーベッカミン」、大日本化学工業製)30重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%)100重量部と、トルエン/酢酸ブチル1/1混合溶液30重量部とを配合し、実施例5の塗料とした。
そして、アルミペースト(商品名「ノンリーフィングアルペースト,6320NS」、東洋アルミニウム社製)20重量部をアクリル樹脂100重量部に配合して鉄板の上に130℃、30分間焼付けした試験板(光沢物)上に、上記塗料を塗膜厚15μmになるように塗布・焼付け(焼付け塗装)し実施例5の塗装物を得た。
実施例6
二酸化チタン粉末の配合量を20重量部(全固形分の20.0重量%に相当)とした以外は、実施例5と同様にして、実施例6の塗装物を得た。
実施例7
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径35nmの二酸化チタン粉末を25重量部(インキの全固形分の25重量%に相当)と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、アクリル系プレポリマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルジアクリレートの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤(安定剤等添加剤)5重量部、青色顔料(商品名「ダイピロキサイドブルー#9410」、大日精化工業製)5重量部とを配合したものを混練し、実施例7のインキとした。
次いで、パールインキ印刷面(光沢物)に、実施例7のインキを印刷し、実施例7の印刷物を得た。
実施例8
二酸化チタン粉末の配合量を140重量部(全固形分の65.1重量%に相当)とした以外は、実施例7と同様にして、実施例8の塗装物を得た。
比較例1
二酸化チタン粉末として、平均粒子が200nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の塗装物を得た。
比較例2
二酸化チタン粉末の配合量を3.0重量部(全固形分の3.5重量%に相当)とした以外は、実施例5と同様にミルベースを製造し、この中にメラミン樹脂、アクリル樹脂、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液とを実施例5と同様に配合し、更に、アルミペースト30重量部(全固形分の3.5重量%に相当)を配合して比較例2の塗料を得た。この塗料を実施例5と同様に焼付け塗装して、比較例2の塗装物を得た。
比較例3
二酸化チタン粉末の配合量を190.0重量部(全固形分の71.7重量%に相当)とした以外は、実施例7と同様にして、比較例3の塗装物を得た。
得られた各実施例、比較例の塗装物を対象として、下記試験例1のダウンフロップ性の評価を行い、評価結果を下記表1に示した。
試験例1 〈ダウンフロップ性の評価〉
目視評価により、各塗装物の塗装面を正面から見た場合と、斜め角度(垂線から約45度)から見た場合に、色が大きく異なるものをダウンフロップ性が大きい(表中○で表示)と、色があまり異ならないものをダウンフロップ性が少ない(表中×で表示)と評価した。
表1から明らかなように、各実施例のものは、薄い金色から青色に色が大きく変化しダウンフロップ性の大きいことが確認された。一方、各比較例のものは、色の変化が認められず、ダウンフロップ性の小さいことが確認された。
この理由は、明らかではないが、例えば、金属光沢を有する表面層等に、金属酸化物顔料の配合された塗料等をコーティングすると、塗料等の面を正面から見た場合には、下地たる光沢物表面から反射される光の影響が大きく、薄い金色が顕著となり、塗装面を斜め角度から見た場合には、塗料層等の金属酸化物顔料から反射される光の影響がより大きく、青色等に見えるようになると推測される。
実施例9
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径35nmの二酸化チタン粉末を31重量部(インキの全固形分の27.7重量%に相当)と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、感光性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルグリコールジアクリレートの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤5重量部、青色顔料(商品名「ダイピロキサイドブルー#9410」、大日精化工業製)11重量部とを配合したものを混練し、実施例9のインキとした。
次いで、アルミ蒸着フィルム(商品名「ACトレファン」、東洋アルミニウム製)に、実施例9のインキをオフセット印刷し、実施例9の印刷物を得た。
実施例10
アルミフレークを0.6重量部(全固形分の0.5重量%)配合した以外は、実施例9と同様にして実施例10の印刷物を得た。
比較例4
平均粒子径35nmの二酸化チタンの配合量を、31重量部(全固形分中27.1重量%)、アルミフレークを2.3重量部(全固形分中2.0重量%)配合した以外は、実施例9と同様にして比較例4の印刷物を得た。
実施例9、10、比較例4の印刷物を対象として、試験例2に記載の各観測角におけるa*値、b*値を測定した。結果を表2に示す。
試験例2
得られた印刷物を、変色側色計(商品名「MA60」、X−Rite社製)にて、各観測角におけるa*(赤方向)、b*(黄方向)値を測定した。
尚、本試験において、観測角とは、図1に示すように、反射角45度となるように光(入射光)を照射し、反射角45度となる観測位置から観測する場合を0度とし、そこから周方向入射側に観測位置が変位した際に於ける移動角度Xを意味する。
表2から明らかなように、金属顔料を含まない実施例9は、△a値(a*の最大変化幅)8.83、△b値(b*の最大変化幅)34.55、実施例10は、△a値3.41、、△b値34,77であるのに対して、比較例4は△a値2.47、△b値23.97であり、両実施例の印刷物は、比較例に比してダウンフロップ性に優れていることが認められる。
実施例11
透明な金属酸化物顔料として、コロイド化学法で調製した平均粒子径10nmの二酸化チタン粉末を0.9重量部と、アクリルポリオール(水酸基30mgKOH/g、樹脂分50重量%、商品名「ヒタロイド」、日立化成工業社製)を30重量部と、トルエン/酢酸ブチル(1/1)混合溶液30重量部とを混合し、ミルで分散させ、ミルベースを製造した。
このミルベース中に、青色顔料10重量部と、酢酸ブチル10重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートビュウレト結合物(NCO23.5重量%、商品名「デュラネート24A−100」旭化成工業社製)3.0重量部とを配合して、アクリルウレタン溶液を調製し、該アクリルウレタン溶液を、実施例11の塗料とした。
次いで、光沢を有するアルミ箔の表面に、この塗料をバーコーターで塗布し、乾燥塗膜厚20μmの実施例11の塗装物を得た。
実施例12
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径15nmの二酸化チタン粉末を0.5重量部と、緑色顔料(商品名「ダイピロキサイドグリーン」、大日精化工業製)0.2重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「アクリディック」、大日本インキ化学工業社製)30重量部と、トルエン/酢酸ブチルの1/1混合溶液30重量部とを混合し、ミルベースを製造した。
この中に、メラミン樹脂(樹脂成分50重量%、商品名「ユーバン」、三井化学社製)30重量部と、アクリル樹脂(樹脂成分50重量%)100重量部と、トルエン/酢酸ブチル1/1混合溶液30重量部とを配合し、実施例12の塗料とした。
そして、アルミペースト(商品名「ノンリーフィングアルペースト,6320NS」、東洋アルミニウム社製)20重量部をアクリル樹脂100重量部に配合して鉄板の上に130℃、30分間焼付けした試験板(光沢物)上に、上記塗料を塗膜厚25μmになるように塗布・焼付け(焼付け塗装)し実施例12の塗装物を得た。
実施例13
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径5nmの二酸化チタン粉末を25重量部と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、アクリル系プレポリマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルジアクリレートとの混合物)30重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)10重量部と、補助剤(安定剤などの添加剤)5重量部、紫色顔料(商品名「ホスタパームバイオレットBL」、クラリアントジャパン社製)1重量部とを配合したものを混練し、実施例13のインキとした。
次いで、パールインキ印刷面(光沢物)に、実施例13のインキを印刷し、実施例13の印刷物を得た。
得られた各実施例1、2、11〜13の塗装物、印刷物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性の評価を、又下記試験例3に示す如く色の見え具合の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
試験例3
各塗装物の色を目視により観察した。表3中の「X=0」に記載の色は、図1に示されるXが0度となる観測位置から観測した時に観測された色であり、「X=120」に記載の色は、図1に示されるXが120度となる観測位置から観測した時に観測された色である。
表3から、実施例1、2、11〜13のものは、全て、ダウンフロップ性が大きいことが確認された。また、平均粒子径が10nmの金属酸化物顔料を使用した実施例11の塗装物は薄い銀色から青色に、平均粒子径が15nmの金属酸化物顔料を使用した実施例12の塗装物は薄い銀色から緑色に、平均粒子径が5nmの金属酸化物顔料を使用した実施例13のインキは薄い銀色から紫色に、それぞれ色が大きく変化し、平均粒子径が19nm以下の金属酸化物顔料を使用した場合、銀色から色が変化するのが判った。一方、平均粒子径が30nmの金属酸化物顔料を使用した実施例1の塗装物及び平均粒子径が50nmの金属酸化物顔料を使用した実施例2の塗装物は、それぞれ、薄い金色から青色に色が大きく変化した。
実施例14
透明な金属酸化物顔料として、平均粒子径18nmの二酸化チタン粉末を40重量部と、紫外線硬化樹脂(樹脂成分100重量%、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)20重量部、感光性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルグリコールジアクリレートとの混合物)26重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュアー」、チバスペシャリチィー製)5重量部と、補助剤5重量部、青色顔料(商品名「クロモファインブルー#5000P」、大日精化工業製)1.5重量部及び赤色顔料(商品名「ホスタパームレッドEG TRANS」、クラリアント製)2.5重量部とを配合したものを混練し、実施例14のインキとした。
次いで、アルミ蒸着フィルム(商品名「ACトレファン」、東洋アルミニウム製)に、実施例14のインキをオフセット印刷し、実施例14の印刷物を得た。
実施例15
平均粒子径10nmの二酸化チタン粉末30重量部、紫外線硬化樹脂30重量部を配合した以外は、実施例14と同様にして実施例15の印刷物を得た。
実施例14、15で得られた印刷物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を、試験例3に準じて色の見え具合を評価した。結果を表4に示す。
表4から明らかなように、各実施例のものは、薄い銀色から紫色に色が大きく変化し、かつダウンフロップ性も大きいことが確認された。
また、実施例14、15で得られた印刷物を対象として、試験例2に準じて各観測角におけるa*値、b*値を測定した。結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例14は、△a値21.79、△b値53.83、実施例15は、△a値15.72、△b値37.07とダウンフロップ性に優れていることが認められる。
実施例16
ポリスチレン樹脂(出光石油化学製)100重量部に、平均粒子径が45nmの二酸化チタン0.025重量部及びカーボンブラック(プリンテックス25、デグサ・ヒュルス製)0.025重量部とを均一に混合し、該混合物をペレット化した。得られたペレットを射出成形機(日本製鋼所製)に供給し、シリンダー温度235℃で射出成形し、厚さ2mmの平板を得た。得られた平板の片面にアルミ蒸着を施し、積層物を得た。
得られた積層物を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を評価した。ダウンフロップ性の評価は○であった。
実施例17
1500℃に溶解した透明ガラス(ソーダ石灰ガラス)カレット100重量部に、平均粒子径が50nmの二酸化チタン0.020重量部を均一に混合し、ロールアウト法で、厚さ2mmのガラス板を得た。得られたガラス板の片面にアルミ蒸着紙を接着した。
得られたガラス板を対象として、試験例1に準じてダウンフロップ性を評価した。ダウンフロップ性の評価は○であった。
以上のように、本発明の塗装物、印刷物、積層物は、優れたダウンフロップ性を呈しうるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
図1は試験例2及び試験例3に於ける観測角を示す概略図である。
Claims (12)
- 光沢を有する表面を備えた光沢物に、塗料が付着してなる塗装物であって、前記塗料は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗装物。
- 前記金属酸化物顔料の平均粒子径が1〜19nmである請求項1記載の塗装物。
- 前記光沢物に付着した塗料の表面側にクリヤー層が備えられている請求項1又は2記載の塗装物。
- 光沢を有する表面を備えた光沢物に、インキが付着してなる印刷物であって、前記インキは、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする印刷物。
- 前記金属酸化物顔料の平均粒子径が1〜19nmである請求項4記載の印刷物。
- 前記光沢物に付着したインキの表面側に、クリヤー層が備えられている請求項4又は5記載の印刷物。
- 前記インキは、オフセット印刷又はインクジェット印刷により前記光沢物に付着してなる請求項4〜6のいずれかに記載の印刷物。
- 金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.1〜70重量%配合されていることを特徴とする塗料又はインキ。
- 光沢を有する表面を備えた光沢物に、合成樹脂又はガラスから製造された成形体を積層してなる積層物であって、前記成形体は、金属顔料が0.6重量%以下、平均粒子径1〜180nmの金属酸化物顔料が0.01〜10重量%配合されていることを特徴とする積層物。
- 光沢を有する印刷面、塗装面又は素材面の上に平均粒子径20nm〜180nmの透明な金属酸化物顔料を含有するインキを用いて印刷、コーティング又は塗装することを特徴とする印刷物又は塗布膜の作製法。
- 前記光沢を有する印刷面、塗装面又は素材面が、金属蒸着面又は金属光沢を有する面である請求項10記載の印刷物又は塗布膜の作製法。
- 印刷方法がオフセット印刷又はインクジェット印刷である請求項11又は11記載の印刷物又は塗布膜の作製法。
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