JPWO2003046009A1 - 抗IL13レセプターα1中和抗体 - Google Patents
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Abstract
IL13による細胞応答を阻害する活性を有する、特にIL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつIL4による細胞応答は阻害しない新規な抗IL13レセプターα1抗体、その可変領域の特徴的アミノ酸配列およびそれらを用いた試料中のIL13レセプターα1の検出方法を提供する。
Description
技術分野
本発明は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する新規な抗IL13レセプターα1抗体に関する。
背景技術
IL13はTh2タイプのサイトカインであり、多くの部分においてIL4と重複する生理活性を有していることが知られている。IL4と重複する生理活性としては、活性化B細胞におけるIgEおよびIgG4産生誘導活性、B細胞におけるCD23およびMHC発現誘導活性(Punnonen J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90:3730−3734(1993)、Defrance T.ら、J.Exp.Med.,Vol.179:135−143(1994))、単球に対する抗炎症作用(Minty A.ら、Nature,Vol.362:248−250(1993))が知られている。しかし、IL−4で認められるようなnativeT細胞のTh2への分化誘導作用はIL−13には認められない。このことはT細胞はIL4レセプターは発現しているがIL13レセプターは発現していないためと考えられている(Zurawski G.ら、Immunol.Today,Vol.15:19−26(1994))。IL13レセプターは、IL13レセプターα1およびIl4レセプターαという2つのポリペプチドからなるヘテロダイマーである。IL4レセプターαはIL13レセプターα1がIL13に実質的に結合する活性を発揮するのに必須である(Aman M.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:29265(1996))。IL4レセプターはIL4レセプターαおよびγ鎖という2つのポリペプチドからなるヘテロダイマーである。このように、IL13レセプターとIL4レセプターはIL4レセプターαというポリペプチドを共通して構成要素として含むため、IL4はどちらの受容体にも結合し、細胞応答を惹起することができる。一方、IL13はIL13レセプターには結合するがIL4レセプターには結合しない。
IL13は標的細胞上に発現されているIL13レセプターに結合することにより活性を発揮する。これまでに、IL13レセプターα1とIL13レセプターα2の2つのIL13結合ユニットが同定されている。HiltonらがIL13と低い親和性で結合する(Kd=2−10nM)マウスIL13レセプターα1を同定した(Hilton D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.93:497(1996))。やはり低い親和性でIL13と結合するヒトIL13レセプターα1も同定された(Aman M.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:29265(1996))。CaputらはIL13と高い親和性で結合する(Kd=0.25nM)ヒトIL13レセプターα2を同定した(Caput D.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:16921(1996))。
IL13レセプターを介したシグナル伝達については、Jak(Janustyrosine kinase)ファミリーのTyk2およびSTAT6がIL13により活性化されることが示されている(Izuhara K.ら、Arch.Immunol.Ther.Exp.,Vol.48:502−512(2000))。IL4レセプターαはJak1とアソシエートし、STAT6を活性化する。IL13レセプターα1はタイプIサイトカイン受容体ファミリーの一員であり、細胞外ドメインにWSXWSモチーフを有し、細胞内ドメインに保存されたBox1、Box3モチーフを有する。Box1とBox3はそれぞれJakとSTATのリクルートに関与している(Stahl N.ら、Science,Vol.267:1349−1353(1995))。最近の研究によりIL13レセプターα1の細胞内ドメインはTyk2およびSTAT3とアソシエートしており、IL4およびIL13の結合はSTAT3のリン酸化を引き起こすことが示された(Orchansky P.ら、J.Biol.Chem.,Vol.274:20818−20825(1999))。一方、IL13レセプターα2は短い細胞内ドメインを有するためシグナル伝達に寄与することはできず、デコイ受容体として働くと考えられているが詳細な機能は解明されていない。
IL13と病態の関連については、IL13が様々なタイプのアレルギー性疾患に関与しているという証拠が蓄積されてきている。気管支喘息(Huang SK.ら、J.Immunol.,Vol.155:2688−2694(1995)、Kotsimbos TC.ら、Proc.Assoc.Am.Physicians,Vol.108:368−373(1996))、アトピー性皮膚炎(Hamid Q.ら、J.Allergy Clin.Immunol.,Vol.98:225−231(1996)、Van der Ploeg I.ら、Clin.Exp.Immunol.,Vol.109:526−532(1997))、allergic rhinitis(Pawankar RU.ら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,Vol.152:2059−2067(1995)、Ghaffar O.ら、Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,Vol.17:17−24(1997))、allergic conjunctivitis(Fujishima H.ら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,Vol.38:1350−1357(1997))の患者の病変部位や末梢血でIL13の発現がアップレギュレートされていることが報告されている。
IL13は、T細胞以外にマスト細胞、好塩基球などから産生されるサイトカインであるが、マウスの気道過敏性モデルやアレルギー性喘息モデルから気管収縮の強力な制御因子であることが明らかになっている。IL13の喘息病態における役割は、IgEや好酸球を介した生理作用とは独立に気道過敏性亢進や気道上皮細胞からの粘液分泌をも引き起こすと考えられている(Wills−Karp M,ら、Science,Vol.282:2258−2261(1998)、Grunig G,ら、Science,Vol.282:2261−2263(1998))。IL4受容体欠損マウスへのIL13欠損マウス由来のOVA感作ヘルパーT細胞の移入による喘息発症モデルの試験から、IL13はIL4受容体αからのシグナルとは別に未知のシグナルにより気道過敏性、好酸球浸潤、肺におけるエオタキシン濃度を上昇させていることが明らかにされた(Mattes J.ら、J.Immunol.,Vol.167:1683−1692(2001))。IL13を気道上皮に特異的に発現させたトランスジェニックマウスの解析により、単核球、好酸球浸潤増加、杯細胞過形成、気道粘液分泌亢進、気道粘膜下の線維化などが生じ、気道過敏性亢進といった喘息病態が観察された(J.Clinical Investigation vol.103 779−788(1999))。気道上皮細胞、および気道平滑筋にはIL13レセプターα1、およびIL4レセプターαが強発現しているが、IL4レセプターγ鎖はほとんど発現していないことから、IL13レセプターが気道組織で発現しており、これら発現細胞がIL13の標的になっていること、および、IL4レセプターは気道組織では発現がほとんど認められないことが考えられる(臨床病理 vol.49 360−364(2001))。このことから、喘息の病態局所においてはIL13がIL4よりも主要な役割を担っていることが示唆される。
IL13レセプターα1に対する抗体としては、WO97/15663号公報においてウサギ抗血清が作成されている。モノクローナル抗体としては、Poudrier J.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.30:3157−3164(2000))、Graber P.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.28:4286−4298(1998))、Akaiwa M.ら(Cytokine,Vol.13:75−84(2001))の報告があるが、中和活性のある抗IL13レセプターα1抗体は得られていない。IL4レセプターに対する抗体はIL13およびIL4に対するTF1細胞及び単球の反応を阻害することが示されている(ZurawskiS.ら、J.Biol.Chem.,Vol.270:13869−13878(1995))。この抗体の阻害作用のIL13作用とIL4作用に対する非特異性は、IL13レセプターとIL4レセプターがIL4レセプターαを構成要素として共有しているためと考えられている。
発明の開示
上述のように、IL13は炎症性疾患の病態局所において発現の増大が観察されているため、IL13とIL13レセプターの結合を阻害し、IL13の作用を中和する抗体が得られれば、炎症性疾患の効果的な治療剤となることが期待される。IL4とIL13は重複する生理活性を有するが、IL13は病態局所において多く存在し、炎症反応に関与する一方、IL4は抗体産生のクラススイッチや免疫細胞のTh2分化のような恒常的な役割を担っているものと予想される。IL13とIL4を非選択的に阻害した場合、IL13の作用を抑制することにより局所炎症反応を抑制するという本来の目的に加えて、IL4の作用の阻害に伴い予期せぬ副作用を引き起こす可能性がある。IL13の作用を選択的に阻害することができれば、局所炎症反応を副作用なく効率的に抑制できるものと考えられる。しかしながら、中和活性を有する抗IL13レセプターα1抗体は現在まで取得されていない。更に、IL13レセプターに対するIL13とIL4の作用のうち、IL13による作用を阻害し、IL4による作用は阻害しないという選択的な中和活性を有する抗体についても取得されていなかった。
本発明は、上記の従来技術における問題点を解決するために以下の本件発明を提供する。
1.IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1抗体。
2.IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつIL4による細胞応答は阻害しないことを特徴とする抗IL13レセプターα1抗体。
3.少なくとも10nMの解離定数でIL13レセプターα1と結合する上記1または上記2に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
4.IL13による細胞応答がTF−1細胞の細胞増殖であり、IL13による細胞応答を阻害する活性が下記(a−1)〜(a−3)からなる群より選択される少なくとも1つの活性である、上記1〜3のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a−1)IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度が、10μg/mL以下である;
(a−2)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答に対するIC50が、10μg/mL以下である;
(a−3)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答を抗体濃度10μg/mLで50%以上阻害する。
5.モノクローナル抗体である上記1〜4のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
6.以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの重鎖可変領域を有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(c)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域。
7.軽鎖可変領域として、配列番号4、9および15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号5、10および16からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域、および配列番号11および17からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有する軽鎖可変領域を有することを特徴とする上記6に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
8.ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体。
9.ヒト化抗体である上記1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
10.ヒト化抗体が、ヒト型キメラ抗体である上記9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
11.ヒト型キメラ抗体が、上記1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域とヒト抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域とからなるヒト型キメラ抗体である、上記10に記載の抗体。
12.重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有する、上記10に記載の抗体。
13.ヒト化抗体が、ヒト型相補性決定領域移植抗体である上記9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
14.ヒト型相補性決定領域移植抗体が、上記1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域とヒト抗体の重鎖定常領域、軽鎖定常領域およびフレームワーク領域とからなるヒト型相補性決定領域移植抗体である、上記13に記載の抗体。
15.重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域と同じアミノ酸配列を有する、上記14に記載の抗体。
16.ヒト抗体ファージライブラリーまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られるヒト抗体である上記1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
17.IL13による細胞応答を阻害する活性を有し上記1〜8のいずれかに記載の抗体の一部を含有する抗IL13レセプターα1抗体断片。
18.上記1〜7のいずれかに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
19.ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1。
20.上記1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法。
21.上記1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、IL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用を阻害する方法。
発明を実施するための最良の形態
抗IL13レセプターα1抗体とは、IL13レセプターα1を特異的に認識する抗体である。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害することを特徴とする。すなわち、本発明の抗体はIL13レセプターα1中和抗体である。IL13による細胞応答とは、IL13レセプター発現細胞にIL13を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のことである。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13レセプター発現細胞に対するIL13の作用を阻害および/または中和する活性を有する。ここでいうIL13レセプター発現細胞は、生体中の細胞、生体由来の細胞または培養細胞株のうち天然にIL13レセプターを発現しているものでもよいし、遺伝子工学的にIL13レセプターを発現させた細胞であってもよい。IL13レセプター発現細胞の具体例としては、B細胞、活性化B細胞、単球、TF−1細胞、カルシノーマ細胞株、グリオーマ細胞株、気道上皮細胞および気管支平滑筋細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、IL13とIL13レセプターはいずれの動物種由来のものであっても良いが、同種由来の組み合わせで用いることが好ましい。特に好ましくはヒト由来である。IL13が細胞膜上のIL13レセプター(IL13レセプターα1とIL4レセプターαからなるヘテロダイマー)に結合すると、IL13レセプターの活性化が起こる。IL13レセプターの活性化により、STAT6やSTAT3のリン酸化がおこり、シグナル伝達の結果として遺伝子発現の質的量的変化、発現蛋白の質的量的変化、細胞形態の変化、細胞の増殖等の細胞の生理学的変化が生ずる。本明細書中において、「IL13による細胞応答」とは、このようなIL13レセプター発現細胞にIL13を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のうち、当業者が通常用い得る実験的手段において検出可能な変化であればいずれのものでも良い。実験的手段としては、in vitroアッセイ系が好ましい。in vitroアッセイ系の例を以下に示す。
例えば、ヒト赤芽球系TF−1細胞(ATCC No.CRL−2003、Kitamura Tら、Int.Immunol.Vol.3:571−577(1991))にIL13を作用させた場合は、IL13用量依存的な細胞増殖という細胞応答がおこる。細胞増殖はMTTアッセイ(生細胞がMTTを分解することを利用した色変化による生細胞数の測定法)により吸光度の増加として検出できるほか、放射性同位体標識チミジン取り込みによっても検出できる。また、ヒト単球にCD40リガンドもしくはCD40アゴニスト抗体共存下でIL13を作用させた場合は、IgEの産生量増加という細胞応答がおこる(Defrance T.ら、J.Exp.Med.,Vol.179:135−143(1994))。IgEの産生量増加は、抗IgE抗体を用いた酵素免疫測定法等により測定できる。また、ヒト単球にLPS共存下でIL13を作用させた場合には、CD23発現量増加という細胞応答が起こる(Zurawski S.ら、J.Biol.Chem.,Vol.270:13869−13878(1995))。また、TF−1細胞やヒト単球のような天然にIL13レセプターを発現している細胞にIL13を作用させた場合は、STAT6のリン酸化がおこる。STAT6のリン酸化は、細胞破砕液を抗STAT6抗体により免疫沈降した後PAGEを行い、抗リン酸化チロシン抗体を用いたウエスタンブロット法により検出できる(A.Tomkinsonら、The Journal of Immunology,Vol.166:5792−5800(2001))。本発明の抗体は、上述のようなIL13による細胞応答のうち、少なくとも1つについて阻害する活性を有すればよい。
IL13による細胞応答を阻害するとは、IL13による細胞応答が、本発明の抗体添加群では、対照群例えば本発明の抗体無添加群と比べて低値であることをいう。たとえば、下記の式で計算される細胞応答阻害率が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上であることをいう。
細胞応答阻害率(%)=(対照群の細胞応答値−抗体添加群の細胞応答値)の絶対値/対照群の細胞応答値*100
ここで、細胞応答値は測定する細胞応答の種類によって適宜定められる。たとえば、細胞応答が細胞増殖である場合には、MTTアッセイによる吸光度を用いることができる。細胞応答がIgE産生である場合には、たとえば産生IgE量を用いることができる。細胞応答がCD23発現である場合には、たとえばフローサイトメトリーによる蛍光強度を用いることができる。
より具体的には、本発明の抗体の中和活性は、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、以下の表現で表すことができる。
抗体濃度が10μg/mLで、IL13濃度1ng/mL存在下における細胞増殖を10%以上阻害する活性を有することが好ましい。より好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上阻害する活性を有する抗体である。
別の表現においては、IL13による細胞応答を阻害するとは、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、ある一定濃度のIL13の条件下、本発明の抗体の細胞応答阻害用量作用曲線を得たとき、IC50=15μg/mL以下、好ましくは10μg/mL以下、より好ましくは7μg/mL、更に好ましくは3μg/mL以下、特に好ましくは1μg/mLであることをいう。典型的なIgG抗体の分子量を150kDaとしたとき、15μg/mL=1×10−7Mに相当し、1×10−7Mにおいて50%以上の阻害活性を有すれば中和活性として十分と考えられる。
より具体的には、本発明の抗体は、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、IL13濃度1ng/mL存在下における細胞増殖に対するIC50値が15μg/mL以下である活性を有することが好ましい。より好ましくは10μg/mL以下、特に好ましくは7μg/mL以下の活性を有する抗体である。
別の表現においては、IL13による細胞応答を阻害する活性とは、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度として表すこともできる。この方法による表現は、細胞応答がIL13の用量依存的である場合、広い用量範囲の特性を数値化できるので効果的である。また、場合によっては実験条件によって左右されるIC50や阻害率のような値と違い、実験条件に左右されずアンタゴニスト活性を表現する上で信頼性が高い数値である。IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度の値は、測定する細胞応答によって異なるが、例えばTF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系では、本発明の抗体は、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度が10μg/mL以下、好ましくは7μg/mL以下、より好ましくは3μg/mL以下、更に好ましくは1.5μg/mL以下である。
上述のTF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系は、具体的には実施例4に示す方法の他、Lakkis FG.ら(Biochem Biophys Res Commun.Vol.235:529−532(1997)の方法,Kitamura T.ら(J.Cell Physiol.vol.140:323(1989))らの方法などを適宜用いることができる。
本発明の抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有することを特徴とするが、そのメカニズムはIL13とIL13レセプターα1の結合を阻害することによるものと説明できる。IL13とIL13レセプターα1の結合を阻害する抗体が、必ず中和活性を有するとは限らない(Graber P.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.28:4286−4298(1998))。抗体と抗原の結合の性質は、結合の強さおよび抗体が抗原のどの部位に結合するかにより決まるものと考えられる。IL13とIL13レセプターα1の結合を阻害する抗体であっても、適切な結合の強さと適切な抗原結合部位(エピトープ)を有さなければ、中和活性を持つことはない。よって、本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有すると共に、(a)IL13レセプターα1と本発明の抗体の結合の強さおよび/または(b)本発明の抗体がIL13レセプターα1のどこに結合するかを定めることにより定義することもできる。例えば、(a)としては、少なくとも10nM以下、好ましくは5.0nM以下、より好ましくは3.0nM以下、更に好ましくは1.5nM以下の解離定数(Kd)でIL13レセプターα1と結合することである。解離定数は表面プラズモン共鳴により測定することができる。(b)としては、ハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1またはハイブリドーマF997−10−1が産生する抗体によって認識されるエピトープを認識することである。エピトープは抗体の相補性決定領域により特異的に認識されるので、エピトープに代えて抗体の相補性決定領域により本発明の抗IL13レセプターα1抗体を定義することも可能である。表面プラズモン共鳴による解離定数は例えば実施例2に示す方法により測定することができる。IL13レセプターα1上のハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1またはハイブリドーマF997−10−1が産生する抗体によって認識されるエピトープは、IL13レセプターα1の断片ペプチドを適宜作成し、その断片に対して抗体が反応性を有するかをELISA法などを用いて決定することができる。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつ以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの重鎖可変領域を有することを特徴とする;(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域、(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域、(c)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域。さらに、上記重鎖可変領域を有することに加えて、軽鎖可変領域として、配列番号4、9および15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号5、10および16からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域、および配列番号11および17からなる群より選択されるいずれかひとつのアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有する軽鎖可変領域を有することを特徴とする。または、上記重鎖可変領域を有することに加えて、軽鎖可変領域として、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの軽鎖可変領域を有することを特徴とする;(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域および配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域、(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域、(c)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号17に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域。より好ましくは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつ重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域と同じアミノ酸配列を有することを特徴とする。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、好ましくは、IL13による細胞応答を阻害することに加え、IL4による細胞応答は阻害しないことを特徴とする。IL4による細胞応答とは、IL13レセプター発現細胞にIL4を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のことである。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13レセプター発現細胞に対するIL13の作用を阻害および/または中和する活性を有し、かつIL13レセプター発現細胞に対するIL4の作用は阻害および/または中和しない。IL4による細胞応答は阻害しないとは、IL4による細胞応答が、対照群例えば本発明の抗体無添加群と抗体添加群を比べて実質的に同等であることをいう。具体的には、ある一定濃度のIL4の条件下、本発明の抗体の細胞応答阻害用量作用曲線を得たとき、IC50>15μg/mL、より好ましくはIC50>10μg/mLであることを言う。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する限り、いかなる動物種のIL13レセプターα1を認識するものであっても良い。ヒトIL13レセプターα1を特異的に認識するものが好ましいが、マウスヒトIL13レセプターα1に交差反応性を有しても良い。マウスIL13レセプターα1に交差反応性を有する場合、病態モデルマウスに投与することにより抗体の薬理活性を試験することが可能であり、有用である。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体には、IL13レセプターα2と交差反応性を有するものも有しないものも含まれる。しかし好ましくは、IL13レセプターα2との交差反応性を有しないものである。
交差反応性は、実施例2に示されるような、交差反応性を試験したい抗原を固相化したELISA法や、BIACORE装置を用いた方法により適宜試験することができる。例えば実施例2に示すBIACORE装置を用いた方法では、RU値が50未満の場合は交差反応性を有しないと判断することができる。
本発明の抗体はポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。抗体の有する機能を明確にするため、若しくは明確に発揮させるためには、モノクローナル抗体が好ましい。本発明の抗体はその分子種は特に限定されない。抗体、すなわち免疫グロブリンの構造は重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)とからなり、重鎖のクラス(γ、α、μ、δ、ε)により5つのイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)に分けられる。このうちIgGとIgAは重鎖の違い(例えばヒトの場合、γ1、γ2、γ3、γ4、α1、α2)によりサブクラス(例えばヒトの場合IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかのタイプに分類される。本発明の抗体はいずれのクラス、サブクラスまたはイソタイプに分類される抗体であってもよい。
重鎖および軽鎖のN末端側には可変領域が存在し、それぞれ重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)と呼ばれる。可変領域内には相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)が存在し、この部分が抗原認識の特異性を担っている。可変領域のCDR以外の部分は、CDRの構造を保持する役割を有し、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖のC末端側には定常領域が存在し、それぞれ重鎖定常領域(CH)、軽鎖定常領域(CL)と呼ばれる。
重鎖可変領域中には、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。重鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて重鎖相補性決定領域と呼ぶ。軽鎖可変領域中にも同様に、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。軽鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて軽鎖相補性決定領域と呼ぶ。
IL13に対する細胞応答を阻害する活性を有し、中和抗体の一部を含有する本発明の抗IL13レセプターα1中和抗体断片またはペプチドとしては、上記で説明した本発明の抗IL13レセプターα1中和抗体のFab(fragment of antigen binding)、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(single chain Fv:scFv)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv:dsFv)、CDRを含むペプチドなどがあげられる。Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分のアミノ酸とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のF(ab’)2は、本発明の抗IL13レセプターα1抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のFab’は、IL13レセプターα1に特異的に反応するF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
scFvは、一本のVHと一本のVLとを適当なペプチドリンカーを用いて連結したポリペプチドのことである。本発明のscFvに含まれるVHおよびVLは、本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。本発明のscFvは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[Protein Engineering,7,697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvに含まれるVHおよびVLは本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。
本発明のdsFvは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、H鎖またはL鎖CDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明のCDRを含むペプチドは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得した後、CDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
本発明の抗体には、本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらの抗体断片に放射性同位元素、蛋白質または低分子の化合物などを結合させた抗体も含まれる。本発明の抗IL13レセプターα1抗体または抗体断片のH鎖或いはL鎖のN末端側或いはC末端側、抗体または抗体断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体断片中の糖鎖に放射性同位元素、蛋白質あるいは低分子の化合物などを化学的手法[抗体工学入門(金光修著1994年(株)地人書館)]により結合させることにより製造することができる。
本発明の抗体は公知技術を用いることにより作製できる。
抗原は、IL13レセプターα1蛋白質またはその断片ペプチドを用いる。抗原とする蛋白質の由来動物は、抗体の使用目的に応じて適宜選択し得るが、好ましくはヒトIL13レセプターα1蛋白質またはその断片ペプチドである。また抗原はIL13レセプターα1としての活性を有していても有していなくてもよく、天然物由来のもの、遺伝子工学的に作成したもの、化学的に合成したもの、他の蛋白質やペプチドとの融合蛋白質等、いずれでも良い。ここでいうIL13レセプターα1としての活性とはIL13との結合能を意味する。IL13との結合能は、実施例3に示される方法のほか、抗原を固相化し、IL13を添加後、抗IL13抗体により抗原に結合したIL13を検出するELISA系など公知の方法を用いて検出することが可能である。最も好ましい抗原は、ヒトIL13レセプターα1の細胞外領域と免疫グロブリンのFcフラグメントとの融合蛋白質である。具体的には実施例1に示されるプラスミドpM1701は、平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1 中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され(受託番号FERM p−18632)、平成14年11月20日付にてブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8238)、を用いて産生することができる可溶型IL13レセプターα1−Fcが好ましい抗原である。当該抗原は、IL13に対する結合活性を有しない。しかし、当該抗原を用いることにより初めて中和活性を有する抗体を取得することが可能となった。このことは、当該抗原が、中和活性に関係するエピトープを効果的に提示する抗原であることを意味する。
免疫する哺乳動物は、特に限定されないが、モノクローナル抗体を作製する場合は、細胞融合に使用するミエローマ細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、マウス、ラットまたはハムスター等が好ましい。ミエローマ細胞は、公知の種々の細胞が使用可能である。これにはP3、P3U1、SP2/O、NS−1、YB2/0及びY3−Ag1,2,3等の骨髄腫細胞が含まれる。
免疫は公知の方法により行なうことができる。例えば、抗原を腹腔内、皮下、静脈内またはフットパッド内に投与して行なう。この抗原の投与はアジュバントを併用してもよく、また複数回投与することが好ましい。免疫細胞は抗原の最終投与の数日後、例えば3日後、に摘出した脾細胞またはリンパ節由来の細胞が好ましい。
免疫細胞とミエローマ細胞との融合は、Milstein等の方法(Methods in Enzymol.,73巻3頁)等の公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、融合剤としてポリエチレングリコール(PEG)を使用する方法または電気融合法等が挙げられる。免疫細胞とミエローマ細胞との混合比は、それらが融合できる比率であれば限定されないが、免疫細胞に対し、ミエローマ細胞を1/10量ないし等量を使用することが好ましい。細胞融合をPEG(平均分子量1,000〜4,000)を使用して行なう方法ではPEG濃度は特に限定されないが50%で行なうことが好ましい。また、融合効率促進剤としてジメチルスルフォキシド(DMSO)等の補助剤を添加してもよい。融合は37℃に加温したPEG溶液を混合した細胞に添加することにより開始し、1〜5分間反応後、培地を添加することにより終了する。
この融合により形成されたハイブリドーマをヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを含む培地(HAT培地)等の選択培地で1日〜7日間培養し、未融合細胞と分離する。得られたハイブリドーマをその産生する抗体により更に選択する。選択したハイブリドーマを公知の限界希釈法に従って単一クローン化し、単一クローン性抗体産生ハイブリドーマとして樹立する。
ハイブリドーマの産生する抗体の活性を検出する方法は公知の方法を使用することができる。ここで抗体の活性は、第一段階として、IL13レセプターα1抗原への結合能を、第二段階として、IL13による細胞応答を阻害する活性を検出する。第二段階の活性の検出方法は前述のとおりである。第一段階の活性の検出方法としては、例えばELISA法、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ法が挙げられる。
樹立したハイブリドーマを公知の方法で培養し、その培養上清よりモノクロナール抗体を得ることができる。また、ハイブリーマをこれと適合性を有する哺乳動物に投与して増殖し、その腹水より得ることができる。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法またはアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体の抗原結合性を確認する方法、または本発明の抗IL13レセプターα1抗体を用いて生物試料中のIL13レセプターα1を検出する方法としては、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA)、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、上記に記した酵素免疫測定法、サンドイッチELISA法[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987年)、続生化学実験講座5免疫生化学研究法(東京化学同人、1986年)]などを用いることができる。
本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体などがあげられる。ハイブリドーマとは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウス、ラット等に由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞を意味する。
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体などがあげられる。ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体のCHおよびCLとからなる抗体を意味する。ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に遺伝子工学的に挿入して作製した抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体は、公知の方法(それぞれNature,312:643,1984、Nature,321:522,1986以来、多くの方法が開発されている)を用いて作製できる。簡単に説明すると、まず、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、塩基配列およびアミノ酸配列を決定する。次に、ヒト型キメラ抗体の場合は、取得したVHおよびVLをコードするcDNAをヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。ヒト型CDR移植抗体の場合は、先に決定したヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDR配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配列と置き換えたV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。
ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体の作製に用いるヒト抗体の定常領域としては、例えば、ヒト抗体重鎖定常領域としてはCγ1やCγ4、ヒト抗体軽鎖定常領域としてはCκ等の任意のヒト抗体の定常領域を用いることができる。ヒト型CDR移植抗体の作製に用いるヒト抗体のV領域のフレームワーク領域のアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のV領域のFRのアミノ酸配列であればいかなるものでも用いることができる。例えば、ProteinDataBankに登録されているヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のV領域のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(SequencesofProteinsofImmunologicalInterest,USDept.HealthandHumanServices,1991)があげられるが、充分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を創製するためには、CDRのドナーとなるのヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列と高い相同性、好ましくは65%以上の相同性を有することが望ましい。
ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体の作成に用いるヒト抗体の定常領域やフレームワーク領域は、既存の方法に従って用意することが可能である(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:10029(1989)、WO90/07861およびWO92/11018、Co等Proc,Natl.Acad.Sci.USA,88,2869(1991)、CoおよびQueenNature、351巻、501頁、1991年、ならびに、Coら、J.Immunol.148:1149(1992))。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、ヒト抗体ファージライブラリーまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、一本鎖抗体等の抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、石田らが開発した方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.97:722−727(2000))を用いて作製できる。すなわち、まず、Trans−chromosome(Tc)マウスは石田らの方法に従い、ヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)をミクロセル融合法によりマウスES細胞に導入し、Joynerらの方法(ジーン ターゲティング、実験法シリーズ、メディカル・サイエンス・インターナショナル)にしたがい、それぞれの染色体断片を有するキメラマウスを作製する。次に、作製した2種類のキメラマウスを交配することによりヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)の両者を有するキメラマウスを作製する。マウス由来の内因性のマウス抗体の産生を失わせる為、Capecchiらの方法(Mol.Cell.Biol.12:2919−2923、1992)に従い内因性のIg重鎖とκ鎖をノックアウトしたダブルKOマウスを作製し、ヒト染色体断片を導入したキメラマウスと交配させ、ヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)を含み、内因性のIg重鎖とκ鎖をノックアウトしたトランスクロモソームマウスを作製する。作製したTcマウスは血中にヒト由来の抗体を産生し、マウスIg重鎖およびマウスIg軽鎖κは検出されない。得られたTcマウスは数代経っても染色体は維持され、その子孫を以下の抗IL13レセプターα1ヒトモノクローナル抗体の作製に使用できる。
Tcマウスに精製したIL13レセプターα1抗原50μgを、タイターマックスゴールド(Titer Max Gold,CytRx社)と混合後、皮下に投与し、3週間後同様に追加投与を行う。抗体価の上昇は、抗原を固相化したプレートに希釈した抗血清を反応させ、続いて抗ヒトIgG抗体を用いて結合した血清中のヒト抗体を検出する。細胞融合は、抗体価の上昇したマウスの腹腔に抗原を50μg投与し、3日後に行う。具体的には、採取した脾細胞をマウスミエローマ細胞(SP2/O−Ag14)と混合後、PEG4000(Merck)により融合し、G418(1mg/mL)を含むHAT培地によりハイブリドーマを選択する。出現したハイブリドーマを抗ヒトIgGκ抗体、抗IgG抗体、抗IgG2抗体、抗IgG3抗体または抗IgG4抗体を2次抗体としてスクリーニングし、IL13レセプターα1と結合するヒト抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
本発明のハイブリドーマは、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1抗体を産生するハイブリドーマである。本発明のハイブリドーマは、上述の方法により作製することができる。本発明のハイブリドーマの好ましい例は、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1である。
本発明の抗体または抗体断片を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法は、被験試料と本発明の抗体または抗体断片を接触させる工程、本発明の抗体または抗体断片に結合した被検試料中のIL13レセプターα1を検出する工程を含み得る。被検試料中のIL13レセプターα1を定量する工程を更に含んでも良い。
本発明の抗体を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法としては、実施例5および6に示されるサンドイッチELISA系の他、インヒビションELISA系、蛍光抗体法、免疫組織化学染色法、放射性物質標識免疫抗体法、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法などがあげられるが、これらに限定されるものではない。対象となる被検試料は限定されないが生物試料が用いられ、動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片が挙げられるが、体液であることが好ましい。より好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、胸水より選ばれる試料である。
インヒビションELISA系では、まず、抗原を固相化したプレートを準備し、第一抗体として抗IL13レセプターα1モノクローナル抗体を反応させる。同時にIL13レセプターα1濃度を測定したい培養上清や血清などの被検体を適当に希釈して加え競合反応させる。濃度既知のIL13レセプターα1蛋白質を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプルの濃度を算出する。その量を健常者と被験者とで比較し、発現量が上昇しているかどうかを調べることにより、被験者がアレルギー性疾患に罹病しているか否かを診断することができる。
蛍光抗体法は、文献[Monoclonal Antibodies:Principles and practice,Third edition(Academic Press,1996),単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987)]等に記載された方法を用いて行うことができる。具体的には、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリンなどの蛍光物質でラベルした抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、蛍光色素をフローサイトメーターで測定する方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)は、文献[Monoclonal Antibodies:Principles and practice,Third edition(Academic Press,1996),単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック,1987)]等に記載された方法を用いて行うことができる。免疫酵素抗体法(ELISA)は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識などを施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する方法である。
放射性物質標識免疫抗体法(RIA)は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法は、細胞または組織などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)などの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、顕微鏡を用いて観察する方法である。
ウェスタンブロッティング法は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988]で分画した後、該ゲルをPVDF膜あるいはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した抗マウスIgG抗体あるいは結合断片を反応させた後、確認する。
免疫沈降法とは、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などを本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片と反応させた後、プロテインG−セファロース等のイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させるものである。
サンドイッチELISA法とは、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片で、抗原認識部位の異なる2種類のモノクローナル抗体のうち、あらかじめ一方のモノクローナル抗体または抗体断片はプレートに吸着させ、もう一方のモノクローナル抗体または抗体断片はFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素で標識しておく。抗体吸着プレートに、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などを反応後、標識したモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、標識物質に応じた反応を行う方法である。
本発明の抗体または抗体断片を用いて、IL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用を阻害する方法は、IL13レセプター発現細胞と本発明の抗体または抗体断片を接触させる工程、IL13とIL13レセプター発現細胞を接触させる工程、本発明の抗体または抗体断片によるIL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用の阻害を検出する工程の少なくとも一つを含み得る。本発明の抗体または抗体断片によるIL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用の阻害を検出する工程は、前述のin vitroアッセイ系の他、in vivoアッセイ系を用いることも可能である。ここでいうin vivoアッセイ系とは、生体に本発明の抗体または抗体断片を投与し、当該抗体または抗体断片が生体の機能やステータスに与える影響を検出する評価系を意味する。たとえば、病態モデル動物に本発明の抗体または抗体断片を投与し、病態の重篤度の指標に与える影響を評価する系が例として挙げられる。
本発明は、本発明の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、被検試料中のIL13レセプターα1を検出または測定するための試薬またはキットを提供する。当該試薬またはキットは、上述した検出方法の構成等に準拠することができる。
実施例
以下に、実施例をもって本発明を一層具体的に説明するが、これらは一例として示すものであり、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。また、以下の記載において用いる略号は、当該分野における慣用略号に基づくものである。
(実施例1) 抗ヒト可溶型IL13レセプターα1抗体の作製
[投与抗原の調製]
可溶型IL13レセプターα1−Fc及びIL13レセプターα1−Hisの発現
抗体作製用の投与抗原及びスクリーニング用抗原として用いるため、ヒトIL13レセプターα1(以下IL13Rα1と略することがある)の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントとの融合タンパク質(IL13Rα1−Fc)およびIL13Rα1の細胞外ドメインのC末端にヘキサヒスチジンタグを付加したタンパク質(IL13Rα1−His)を作製した。なお、DNA操作は特に断りのない限り、モレキュラークローニング第二版(Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Maniatis T.,et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))にしたがって行った。
IL13Rα1−Fc発現プラスミドは、以下の手順により遺伝子工学的に作製した。まず、DNAデータバンクEmblに登録されているヒトIL13Rα1遺伝子の配列Y10659の情報をもとに、センスプライマー1(5’末端側に制限酵素EcoRI認識配列を含む)およびアンチセンスプライマー1(5’末端側に制限酵素HindIII認識配列を含む)を合成し、ヒト脾臓cDNAライブラリ(クロンテック社)を鋳型としてPCRを行い、IL13Rα1細胞外ドメイン−−343アミノ酸)をコードするcDNAを含むPCR産物を得た。このPCR産物を制限酵素EcoRIおよびHindIIIで消化して得られるDNA断片(EcoRI−HindIII断片)をpUC119(宝酒造株式会社)にサブクローニングした。一方、ヒトIgG1FcドメインcDNAが含まれるプラスミドpM1304(WO97/42319号公報に記載)を鋳型としPCRを行い、あらためてIL13Rα1細胞外ドメインにインフレームで連結可能となるヒトIgG1FcドメインcDNAを得た。このPCRのためのセンスプライマー2は、ヒトIgG1FcドメインN末端側をコードするcDNA配列を含み、さらにその5’末端側に制限酵素HindIII認識配列を配置して設計し、またアンチセンスプライマー2はヒトIgG1FcドメインC末端側に制限酵素KpnI認識配列を配置して設計したものを使用した。このPCR産物を制限酵素HindIIIおよびKpnIで消化して得られるDNA断片(HindIII−KpnI)をpUC119にサブクローニングした。ついで、あらためてそれぞれのプラスミドより当該EcoRI−HindIII断片および当該HindIII−KpnI断片を切り出してライゲーションし、哺乳動物細胞発現ベクターpEFNのEcoRI−KpnIインサートと入れ替えて導入し、EFプロモーター下流にIL13Rα1−Fc遺伝子を連結した発現ベクタープラスミドpM1701を作製した。本発明者は、プラスミドpM1701を平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(受託番号FERM P−18632)。また、平成14年11月18日付にてブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管した(受託番号FERM BP−8238)。
また、前述のセンスプライマー1、およびC末端にヘキサヒスチジンを付加したIL13Rα1細胞外ドメインをコードするcDNAのアンチセンス配列を含むプライマー(5’末端側に制限酵素KpnI認識配列を含む)を用いてIL13Rα1−Fc発現プラスミドを鋳型としてPCRを行い、IL13Rα1細胞外ドメインC末端にヒスチジンタグが付加したタンパク質cDNAを含む産物を得た。このPCRの制限酵素EcoRI−KpnIの消化断片をIL13Rα1−Fc発現プラスミドのEcoRI−KpnIインサートと置き換えることによりIL13Rα1−His発現プラスミドとした。
得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlと上記各プラスミドDNA12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。IL13Rα1−Hisはニッケルカラム(Hitrap−chelate、アマシャムファルマシア)を用いて培養上清より精製し、IL13Rα1−FcはProteinAカラム(Prosep−A、ミリポア)を用いて精製した。蛋白濃度はBSAを標準品としてバイオラド社のプロテインアッセイ法により濃度を算出した。
[抗IL13Rα1抗体の調製]
Wistarラット(SLCより購入)メス8週令のフットパッドに100μgの精製可溶型IL13Rα1−Fcとフロインド完全アジュバント(Difco)とを1対1で混合したものを投与し、3週間後腸骨リンパ節を摘出し、無菌的にリンパ球を採取した。
得られたリンパ球をマウスミエローマ細胞SP2/O−Ag14(ATCC CRL1581)と5対1で混合しポリエチレングリコール1500(Sigma)を用いて細胞融合を行った。融合後、細胞をヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む10%胎児血清/RPMI1640に懸濁し、96穴プレート(Nunc)に播種した。5%CO2、37℃の条件下で培養し、増殖してくるハイブリドーマが確認できた段階でアミノプテリンを除いた培地に交換した。
細胞融合から1週間後に培養上清をサンプリングし、精製可溶型IL13Rα1−Hisを固相化したプレートでIL13Rα1に結合する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。すなわち、精製可溶型IL13Rα1−Hisを1μg/mLでプレート(Maxisorp,Nunc)に固相化し、0.1%BSAを含むPBSでブロッキングした。次に培養上清を添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween−20を含む0.9%生理食塩水で洗浄した。
各ウエルにペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を添加し、37℃で1時間反応させ、洗浄後0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン発色液を添加し、10分間反応後0.5M硫酸で反応を停止した。
プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で吸光度を450nmの波長で測定し、吸光度が0.2以上のウエルを抗IL13Rα1抗体産生ハイブリドーマとして選択した。
選択したハイブリドーマは限界希釈法(単クローン抗体実験操作法入門、安東民衛・千葉丈/著、講談社)によりクローニングし、10日後に同様にスクリーニングを行い、抗IL13Rα1抗体産生ハイブリドーマ13ローンを得た。
次にハイブリドーマを10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640で培養した後、細胞を回収しHybridoma−SFM(invitrogen)で抗体産生を行い、モノクローナル抗体を含む培養上清を得た。培養上清からろ紙で細胞を除いた後、プロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、13種類の精製ヒトIL13Rα1抗体を得た。得られた精製抗体の中より反応性の高いもののサブタイプをZYMED社のラットタイピングキットを用いて決定したところF997−20−1抗体はIgG1・κ、F997−13−1抗体はIgG1・κ、F997−10−1抗体はIgG2b・κ、F994−7−2抗体はIgG2a・κ、F997−18−3抗体はIgG2b・κ、F997−17−1抗体はIgG2a・κ,F997−8−1抗体はIgG2a・κであった。
なおF997−13−1抗体、F997−20−1抗体をそれぞれ産生するハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1は、それぞれ、平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され(それぞれ受託番号FERM P−18633及び受託番号FERM P−18634)、平成14年11月20日付にてブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管された(それぞれ受託番号FERM BP−8241及び受託番号FERM BP−8242)。F997−10−1抗体を産生するハイブリドーマF997−10−1は、平成14年11月13日付で同センターに国際寄託された(受託番号FERM BP−8237)。
(実施例2) BIACOREによる抗IL13Rα1抗体の特異性、親和性の測定
[特異性の検討]
実施例1で作製したヒトIL13Rα1−Fc及びヒトIL13R−His、ネガティブコントロールとしてヒトガンマグロブリン(Cappel社)を1μg/mlで96穴プレートに固定化し、洗浄後0.1%BSA/リン酸緩衝液(pH6.4)でブロッキングを行った。次に各抗体を1μg/mlを0.1%BSA/リン酸緩衝液(pH6.4)で希釈したものを固定抗原なし(PBSと略す場合がある)、ヒトガンマグロブリン(IgGと略す場合がある)、ヒトIL13Rα1−Fc(Fcと略す場合がある)、ヒトIL13Rα1−His(Hisと略す場合がある)の4箇所に添加し37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む0.9%NaClで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgs抗体(DAKO)を添加し同様に反応した。プレートを洗浄し、0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン発色液を添加後、10分間反応させ0.5M硫酸で反応を停止した。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で吸光度を450nmの波長で測定した。結果を図1に示す。図1に示すように13種類の抗体は全て、PBS,IgGに対する場合に比べて、ヒトIL13Rα1−Fc、ヒトIL13Rα1−Hisに対して特異的であり、ヒトIL13Rα1と特異的に結合した。
次にBIACORE2000(ビアコア社)を用いてヒトIL13Rα2に対する特異性を検討した。すなわち、流速20μl/minでNTAチップ(ビアコア社)を350mMのEDTA溶液5μlで処理後500μMのニッケル溶液を5μl添加した。その後、50μg/mlのRecombinant Human IL13Rα2/Fc Chimera(R&D社)を5μl添加し結合させた。さらに続けて50μg/mlに希釈した各抗体を5μl添加しその結合を解析した。同様にRecombinant Mouse IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)を用いてマウスIL13Rα1との交差反応性を検討したところ、検討した抗体のうちF997−20−1抗体はヒトIL13Rα2に対して交差反応性を示した。また、マウスIL13Rα1との交差反応性はF997−20−1抗体、F997−13−1抗体、F997−10−1抗体で確認された。ここでRUはBIACORE装置で使用されるレスポンスを表す単位であり、1000RUは約1.2ngの物質が結合したことを示す。
[親和性の検討]
作製した抗IL13Rα1抗体の結合定数をBIACOREを用いて測定した。すなわち、CM5チップ(ビアコア社)をビアコア社のマニュアルに従い7分間活性化し実施例1で作製したヒトIL13Rα1−Fcを100μg/mlで固定化した。流速20μl/minでHBS−EP緩衝液(ビアコア社)を流し同一緩衝液で2、10、50μg/mlに希釈した抗体4種類の結合定数を求めた。結合した抗体は0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で解離しチップを再使用した。得られたデータはビアコア社解析ソフトBIAevaluationを用いて解析し、解離定数(Kd)を算出した。その結果、検討したF997−10−1抗体、F994−7−2抗体、F997−13−1抗体、F997−20−1抗体の4種類の解離定数は表2に示す通りであり、ヒトIL13Rα1に対して十分強い親和性を有していた。
(実施例3) 抗IL13Rα1抗体によるIL13結合阻害
作製した抗体がIL13のIL13レセプターα1への結合を阻害するかを明らかにするため、BIACOREを用いて結合の解析を行った。すなわち、流速20μl/minでNTAチップ(ビアコア社)を350mMのEDTA溶液5μlで処理後500μMのニッケル溶液を5μl添加した。その後、50μg/mlのRecombinant Human IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)を5μl添加し結合させた。続けて50μg/mlの抗IL13Rα1抗体を5μl添加し結合させ、さらに10μg/mlに希釈したヒトIL13(R&D社)を5μl添加しその結合を解析した。また、Recombinant Mouse IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)、マウスIL13(R&D社)を用いて実施例2でマウスIL13Rα1と結合が見られた抗体を用いて同様にその結合を解析した。その結果、表3に示すようにヒトIL13の結合阻害活性を検討した7種類の抗体では4種類の抗体がヒトIL13とヒトIL13レセプターα1の結合を阻害した。一方、マウスIL13のマウスIL13レセプターα1への結合阻害活性を検討した6種類の抗体ではF997−13−1、F997−10−1、F997−20−1抗体がマウスIL13とマウスIL13レセプターα1の結合を阻害した。表3の%は、コントロール抗体添加時にIL13とIL13レセプターα1が結合したときの値を0%とし、完全に結合が阻害された場合を100%とした測定値を示す。なお、コントロール抗体は、ラットIgGを添加した場合の測定値である。
(実施例4) インビトロアッセイによる中和活性の測定
TF−1細胞は通常10%FBS、RPMI1640、GM−CSF(10ng/ml)で培養し、105から106/mlの範囲で細胞密度を維持した。この細胞を1日GM−CSFを除いた培地で培養し実験に用いた。
10%FBS RPMI1640で実施例1により得られた抗IL−13レセプターα1抗体を終濃度(0.3−10μg/ml)の2倍に調製し、96well plateに100μl/wellずつ分注した後、TF−1細胞を1×105/100μl、2×104/100μl播種した。GM−CSF,IL−4に対する中和活性を測定する場合は抗体の終濃度を10μg/mlとした。37℃CO2インキュベーターで3時間培養し、1×105/100μlずつ播種したplateには20倍濃度に調製したIL−13(2〜2000ng/ml)またはIL−4(2〜2000ng/ml)を10μl/well添加した。2×104/100μlずつ播種したplateには20倍濃度に調製したGM−CSF(0.2〜200ng/ml)を10μl/well添加した。培養48時間後、MTT(3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide;同仁化学)(5mg/mL in PBS)を25μl/well添加し、3時間インキュベートした後、培養上清を除去し溶解液100μl/wellにてフォルマザンを溶解させ、OD570nmを測定した。溶解液は50g SDS(sodium dodecyl sulfate)を400mlの純水で溶解させ、0.1N HClでpH4.7に調製後、400mlのDMF(dimethylformamide)と混合して調製した。各群3例で実施した。
各抗体の中和活性を、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度として表4にあらわす。IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度は、各抗体濃度におけるIL13のED50を算出し、X軸に−log(Ab);Ab=g/mlで表す抗体濃度、Y軸にlog〔(A)/(Ao)−1〕;A=抗体存在下のED50,Ao=抗体非存在下のED50をプロットし、その回帰直線がy=0となるときのxの値=pA2より、10−pA2(g/mL)として求められる。
F997−13−1、F997−20−1およびF994−7−2については、IL13添加群の具体的な実験結果を図2に、IL4またはGM−CSF添加群の具体的な実験結果を図3および図4に示す。図中、コントロールとは抗体無添加群を表す。
F997−13−1、F997−20−1およびF994−7−2について、IL13による細胞応答に対する阻害活性およびIL4、GM−CSFによる細胞応答に対する阻害活性についてまとめた結果を表5に示す。
図3、図4および表5に示すように、IL4、GM−CSFを増殖刺激として同様の実験をおこなった場合、これらの抗体は10μg/ml添加しても増殖抑制はほとんど認められなかった。すなわち、これらの抗体はIL13による細胞応答は阻害するが、IL4による細胞応答は阻害しないことが示された。
(実施例5) 可溶型IL13レセプターの測定系の作製
[サンドイッチELISA系の作製]
(1)組み合わせが可能な抗体の検索
作製した抗IL13Rα1抗体のうちサンドイッチELISAを作製可能な組み合わせを検索するため、実施例1で作製した各精製抗体をリン酸緩衝液(PBS)で10μg/mLに希釈しイムノプレート(Maxisorb、NUNC)の各ウエルに50μL添加後45℃30分間処理し抗体を固相化した。イオン交換水で洗浄後、0.1%BSAを含むPBSを各ウエルに100μL添加することによりブロッキングを行った。ブロッキング液を廃棄し、次に0.1%BSA/PBSで精製可溶型IL13Rα1−Hisを1、10、100ng/mLに希釈したものを25μL添加した。ブランクには0.1%BSA/PBSを使用した。続いて中根らの過ヨウ素酸法(J.Histochem.Cytochem.22,1084,1974)による調製した各ペルオキシダーゼ標識抗IL13Rα1抗体を10%ウサギ血清、1%ラット血清、0.1%Tween20、0.9%NaClを含むリン酸緩衝液(pH6.4)により3μg/mLに希釈したものを各ウエルに25μL添加した。37℃で2時間反応後、0.05%Tween20を含む0.9%NaClでプレートを5回洗浄し0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定した。その結果、図5に示すようにサンドイッチEIA系が作製可能な抗体の組み合わせとしてF997−13−1抗体固相/F997−17−1標識抗体、F994−7−2抗体固相/F997−20−1標識抗体、F997−18−3抗体固相/F997−8−1標識抗体の3種類の組み合わせが得られた。
(2)サンドイッチELISA系の確立
得られた組み合わせのうちF994−7−2抗体固相/F997−20−1標識抗体を用いて以下のようにサンドイッチELISA系を作製した。精製F997−7−2抗体をPBS(pH6.4)で10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)の各ウエルに50μL添加した。45℃で30分間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)を各ウエルに100μL添加することによりブロッキングを行った。精製ヒトIL13Rα1−Hisをウサギ血清で1.25、2.5、5、10、20、40ng/mlに希釈し標準品を調製した。ブランクはウサギ血清を使用した。プレートのブロッキング剤を廃棄し調製した標準品及びブランクのウサギ血清を25μl分注した。続けて10%ウサギ血清、1%ラット血清、0.1%Tween20、0.9%NaClを含むリン酸緩衝液(pH6.4)により4μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識F997−20−1抗体を25μl分注し、37℃で2時間反応させた。次に、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。図6に作成した標準曲線を示した。標準曲線が示すように高感度で簡便な測定系が実現された。
(実施例6) 血中可溶型IL13レセプターα1の測定
正常人32例(男性24例、女性8例)、アレルギー患者8例について実施例5に記載の測定系を用いて血清測定を行った。また、抗ヒトIgE抗体(F271−15抗体及びペルオキシダーゼ標識F271−15抗体、持田製薬(株))を用いたサンドイッチELISA系により血清中のIgE濃度を測定した。測定結果を図7に示した。また、正常人及びアレルギー患者を血清中のIgE濃度400U/mLをカットオフ値として分類した各群の平均値+/−SDを表6に示した。IgE濃度400U/mL以下(図7では、400以下のように略記する)の正常人の可溶型IL13レセプターα1濃度は12.8+/−3.2ng/mlであり、IgE濃度400U/mL以上の正常人の可溶型IL13レセプターα1濃度11.9+/−2.9ng/mlとの間に差は認められなかった。アレルギー患者ではIgE濃度400U/mL以下の人の可溶型IL13レセプターα1濃度は13.0+/−1.6ng/mlであり、正常人の濃度との間に差は認められなかった。アレルギー患者ではIgE濃度400U/mL以上の人の可溶型IL13レセプターα1濃度16.4+/−4.6ng/mlが他の群と比較して高値傾向を示し、血清中のIgE濃度が上昇しているアレルギー患者では可溶型のIL13レセプターα1濃度も上昇していることが推定された。以上の結果は作製した測定を用いて、血清中の可溶型IL13レセプターα1濃度を測定することがアレルギー患者の病態の把握さらには治療法の選択に有用であることを示すものである。
(実施例7) 抗IL13レセプターα1抗体によるSTAT6のリン酸化抑制
実施例1で作製した2種類の抗体(F997−10−1、F997−13−1)がマウス脾臓単核細胞のIL13レセプターと結合し、IL13刺激下でのSTAT6のリン酸化を抑制するか検討した。まず、Balb/cマウス(オス、8週齢、SLC)より脾臓を摘出し、1000rpmで10分間遠心分離後、単核球細胞から赤血球を除くためTris−NH4溶液(右田俊介他編集、免疫実験操作法、南江堂、p560)に再浮遊し、赤血球を溶血させた。再度1000rpmで10分間遠心分離後、RPMI1640(SIGMA)培地で2回洗浄し、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で再浮遊させ細胞濃度を計測した。細胞濃度を1×106cells/mlに調整し、24穴プレートに各1mlを分注した。続けて、抗IL13R抗体2種類を各々最終濃度0、10、30、100μg/mlになるように添加した。また、ネガティブコントロールとしてラットIgGを最終濃度10μg/mlになるように添加した。室温で30分間静置後、マウス脾臓単核細胞を含む溶液を回収し、5000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。氷上にて沈殿に50μlのフォスファターゼ阻害剤を含むSDS緩衝液(5mMNaVO3、10mMNaF/Tris−SDS−βメルカプトエタノール)を添加し細胞を溶解した。次に50Hzの超音波で15秒間処理し、続けて99℃で5分間熱変性した。更に、15000rpmで5分間遠心分離し、その上清20μlをSDS−PAGE/Western blottingに使用した。上清を還元用電気泳動バッファー(OWL)と等量混合し、e−PAGEL(5〜20%、ATTO)にアプライし、室温にて40mA/ゲルで50分間泳動した。泳動後、ミリポアのマニュアルに従い4℃でPVDF膜(ミリポア)に150mA/ゲルで蛋白を転写し、5%スキムミルク/0.1%Tween20/50mM Tris−HCl/0.9%NaCl(pH7.4)液(以下、TBSと記載する)で室温にて60分間ブロッキングを行った。メンブレンに抗リン酸化STAT6抗体(第一化学、9361S)を抗体希釈液(5%BSA/0.1%Tween20/50mM TBS)で667倍に希釈したものを添加し、4℃で一晩反応させた(一次反応)。翌日、メンブレンを0.1%Tween20/50mM TBSで3回洗浄し、洗浄したメンブレンにペルオキシダーゼ標識抗ウサギイムノグロブリン抗体(DAKO、P0448)を抗体希釈液(5%BSA/0.1%Tween20/50mM TBS)で2000倍に希釈したものを添加し、室温で30分間反応させた(二次反応)。メンブレンを0.1%Tween/50mM TBSで3回洗浄し、ECLキット(アマシャムバイオサイエンス)で発光させ、HyperFilm(アマシャムバイオサイエンス)に露光し現像した。その結果、表7に示すようにF997−10−1抗体、F997−13−1抗体を30、100μg/ml添加時にネガティブコントロール抗体添加に比較して、リン酸化STAT6の強度が低下していることより、F997−10−1抗体、F997−13−1抗体がIL13レセプターと結合し、IL13刺激によるSTAT6のリン酸化を抑制することが示された。
(実施例8) 抗IL13レセプターα1抗体可変領域のCDR配列の決定
実施例1で作製した抗IL13レセプターα1抗体3種類の相補性決定領域(以下、CDRと記載する)を決定した。すなわち、F997−10−1抗体産生ハイブリドーマ、F997−13−1抗体産生ハイブリドーマ、F997−20−1抗体産生ハイブリドーマを実施例1にしたがって培養した。細胞濃度が2×105cells/mlになった段階で培養液各50mlを回収し、ダルベッコ リン酸緩衝液(pH7.4、Sigma)(以下、PBS−と記載する)で洗浄し、回収した細胞よりTRIzol(Invitrogen)を用いてmRNAを抽出した。次に、Superscript First−strand synthesis System(Invitrogen)のマニュアルに従って、mRNAからオリゴdT(Invitrogen)とアンチセンスプライマー(H鎖用:HAS−1(配列番号18)、L鎖用:KAS−1(配列番号19))を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型としてH鎖はHeavy Primer/Heavy Primer2(アマシャムバイオサイエンス)を、L鎖はLight Primer Mix(アマシャムバイオサイエンス)を用いてPCRを行った。PCRはplatinum Taq polymerase(Invitrogen)を用いて、94℃−30秒、55℃−30秒、72℃−1分、30サイクルの条件で行い、PTC−200 Peletier Thermal Cycler(MJ Research)を使用した。増幅されたDNAのバンドを2%アガロースを用いて確認後、PCR産物をスピンカラム(Sigma)を用いて精製した。精製されたPCR産物とpT7BlueTベクター(Novagen)を混和し、Ligation kit verII(TAKARA)を用いて16℃、30分でライゲーション反応を行った。その反応液を用いてコンピテントセルE.coli(JM109、TAKARA)にトランスフォーメーションを行い、X−Gal、IPTGを含むLBプレートに播種し、1晩培養した。出現した白コロニーをピックアップし、Ex Taq polymerase(TAKARA)、U−19mer primer(配列番号21)、T7 promoter primer(配列番号20、Novagen)を用いて、コロニーダイレクトPCRでインサートがベクターに挿入されていることを確認した。次に、インサートが確認されたコロニーをLB培地で一晩培養し、QIAGENplasmid mini kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。精製したプラスミドはU−19mer primer、T7 promoter primerを用いてDYEnamic ET terminator cycle sequencing kit(アマシャムバイオサイエンス)により反応後、シークエンサーABI PRISM3100(アプライドバイオシステムズ)を用いて解析を行った。
F997−10−1抗体、F997−13−1抗体およびF997−20−1抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子配列を配列番号22(F997−10−1重鎖)、配列番号23(F997−10−1軽鎖)、配列番号24(F997−13−1重鎖)、配列番号25(F997−13−1軽鎖)、配列番号26(F997−20−1重鎖)、配列番号27(F997−20−1軽鎖)に示した。また、翻訳したアミノ酸配列を図8および配列番号28(F997−10−1重鎖)、配列番号29(F997−10−1軽鎖)、配列番号30(F997−13−1重鎖)、配列番号31(F997−13−1軽鎖)、配列番号32(F997−20−1重鎖)、配列番号33(F997−20−1軽鎖)に示した。決定したCDR配列を表8に示した。F997−10−1軽鎖可変領域の第3のCDRは塩基配列が未確定である。
(実施例9) ヒト型キメラ抗体の作製
抗原結合活性を有するV領域がF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体由来、すなわちラット抗体由来であり、C領域をヒト由来の抗体(キメラ抗体)を作製することにより、ヒトへの抗原性が少ない抗体を得ることが出来る。V領域のドナーとしては、上記抗体に限定されるものではなく、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する本発明の抗IL13レセプターα1抗体であれば、いずれを用いても良い。キメラ抗体は1984年のMorrisonら(Proc,Natl.Acad.Sci.USA,81:6851,1984)の報告以来多くのものが開発されている。
(1)抗体遺伝子のクローニング
ハイブリドーマF997−10−1、ハイブリドーマF997−13−1、またはハイブリドーマF997−20−1を培養し、細胞を調製する。得られた細胞をPBS−(Sigma)で洗浄後、total RNAをIsogene(日本ジーン)を用いて単離精製する。次にOligo−dTプライマーとSuperScript IIsystem(Invitrogen)を用いてcDNAを合成する。重鎖及び軽鎖のアミノ末端のアミノ酸配列に基づきセンスプライマーを合成する。また、重鎖アンチセンスプライマーはフレームワーク4の配列に基づき、軽鎖アンチセンスプライマーはVκ配列に基づき作製する。PCR後、DNA断片をTAクローニングベクター(Invitrogen)に組み込み、シークエンスを解析する。
(2)ラット−ヒト重鎖及び軽鎖発現ベクターの構築
まず、ヒトイムノグロブリンG1のCH1領域のN末端側をコードする塩基配列をセンスプライマーとして合成し、アンチセンスプライマーはヒトイムノグロブリンG1の3’非翻訳領域の配列を含む領域を合成する。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを用いて、HumanSpleen5’−StretchcDNALibrary(クローンテック社製)よりPCR反応によりヒトイムノグロブリンCH領域を増幅する。また、重鎖センスプライマーは上記(1)の重鎖領域をコードする塩基配列とヒトイムノグロブリンG1のCH1領域のN末端側をコードするアミノ酸配列にEcoRIサイトをコードする配列を含むように作製する。アンチセンスプライマーはヒトイムノグロブリンG1のCH3領域のC末端側に位置するアミノ酸配列をコードする塩基配列とBamHIサイトを含むように作製する。これらキメラのプライマーを組み合わせて、ラットVH領域にオリエンテーションが一致するようにヒトイムノグロブリンCH領域を組み込む。得られたPCR産物を制限酵素で消化し、DNA断片を発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に組み込み、ラット−ヒト重鎖発現プラスミドを作製する。同様にヒトのCL領域とラット由来の軽鎖領域を有するキメラ抗体遺伝子を含む発現プラスミドを構築する。
(3)キメラ抗体の作製
形質転換体を作製するため、それぞれの発現プラスミドを制限酵素で切断し、直線化する。次に、ジーンパルサー(BIORAD)等を用いて遺伝子をSP2/O−ag14(ATCC CRL1581)に導入し、培養後上清に産生されるラット−ヒトキメラ抗体の有無により目的の抗体を産生する細胞を選択する。具体的には直線化したDNA断片約20μgを1×107細胞に360V、25μFDのキャパシタンスでエレクトポレーションを行う。次に細胞を96穴プレートに植え込み、2日間培養後、プラスミド断片が組み込まれた細胞を選択するため、10%FCS、1×HT(Invitrogen)、0.2mg/mlG−418を含むD−MEM(Sigma)を添加し、更に2週間培養する。細胞がコンフルエントになった段階で無血清培地(Hybridoma−SFM、Invitrogen)で培養し、培養上清をプロテインAカラム(Prosep−A、ミリポア)で精製し、精製キメラ抗体を得る。
得られたキメラ抗体は実施例2の方法によりIL13レセプターα1結合活性を確認し、実施例4の方法によりIL13による細胞応答を阻害する中和活性を確認する。
(実施例10) ヒト型CDR移植抗体の作製(1)
(1)抗体可変領域のコンピューターモデリング
ヒト化抗体で高い親和性を保持するために、クイーンらの一般的な方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029,1989)に準じてフレームワーク残基の選択を行う。ヒト配列はKabatら(Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.,U.S.Department of Health and Human Services,1991)のカッパ軽鎖及び重鎖配列データベースに基づきラットF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体に高いフレームワーク相同性を有する配列を選択する。さらに、コンピューター解析により最も適したフレームワーク中のアミノ酸の改変を行う。具体的にはコンピュータープログラムENCAD(レビット、J.Mol.Boil.168,595(1983)を用いてF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体可変領域の分子モデルの構築を行う。抗体データベースより得られたヒトEu抗体分子モデル(Stephensら、Immunology 85(4),668−674(1995)にF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体のCDR配列をFR中に移植する。コンピューターモデル上でCDRとFRが本来のヒト抗体モデルとは異なり、有意な接触を示すFR領域で、アミノ酸置換を行うことによりCDRとFRとの接触が改善されると予想される位置についてラット抗体由来のアミノ酸への置換を行う。また、ヒト抗体のデータベース中でその位置においてまれにしか現れないFR中のアミノ酸残基はそれらの位置におけるヒトコンセンサンスアミノ酸に置換する。アミノ酸置換の良否は実際の活性により確認することになるため、アミノ酸置換の異なるタイプの抗体を数種類作製する。
(2)ヒト化抗体の構築
(1)で選択された配列を基に、シグナルペプチド、スプライス供与シグナル及び制限サイト(例えばXbaI)を含むアミノ酸配列をコードする遺伝子を構築する。構築した遺伝子は合成ヌクレオチド(80塩基長程度)のものを数種類オーバーラップするように調製する。すなわち、オリゴを対にしてアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、2本鎖断片を得る。この断片を変性し1本鎖にした後、同様にアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、全長の遺伝子をコードする2本鎖断片を得る。得られる断片をTaqポリメラーゼによるPCRで増幅し、精製後に制限酵素(例えばXbaI)で切断し精製する。精製した断片をヒトγ1遺伝子のCH1エクソンからCH3エクソンまでを含む定常領域遺伝子をXbaI−BamHI断片を有するプラスミドpVg1(Co等、J.Immunol.148:1149(1992)のXbaIサイトに挿入する。同様な操作によりγ4の定常領域遺伝子を含むプラスミドにも挿入可能である。また、置換するアミノ酸の数が少ない場合は部位特異的突然変異導入により作製し、発現プラスミドに導入することも可能である。軽鎖可変領域配列は上記と同様に構築可能である。この場合pVkベクターにはヒトCκ領域を含むものを使用する。
抗体を産生する形質転換体を作製するため、重鎖及び軽鎖プラスミドを制限酵素(pVkプラスミドの場合はBamHI及びFspI)で切断し直線化後、マウスミエローマ細胞SP2/O−Ag14(ATCC CRL1581)中へジーンパルサー(BIORAD)を用いて導入する。具体的には直線化したDNA断片約20μgを1×107細胞に360V、25μFDのキャパシタンスでエレクトポレーションを行う。次に細胞を96穴プレートに植え込み、2日間培養後、プラスミド断片が組み込まれた細胞を選択するため、10%FCS、1×HT(Invitrogen)、0.25mg/mlXanthine、1μg/mlMycophenolic acidを含むD−MEM(Sigma)を添加し、更に2週間培養する。培養後上清にでる抗体により目的とするヒト化F997−10−1抗体、ヒト化F997−13−1抗体、またはヒト化F997−20−1抗体産生株を選択する。すなわち、固相化したIL13レセプターα1と結合する抗体をペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG1またはIgG4抗体で検出する。選択した株はコンフルエントになるまで10%FCSを含む培地で培養し、無血清培地(Hybridoma SFM、Invitrogen)に交換する。培養上清を回収し、プロテインA(Prosep−A、ミリポア)に結合させ、0.1M グリシン塩酸(pH3.0)で溶出する。精製抗体をPBS−(Sigma)で透析し、280nmの吸光度より抗体濃度を算出する(ヒト抗体1mg/mLは1.3の吸光度を示す)。
(3)ヒト化抗体の評価
ヒト化抗体が元のラット抗体と同様な活性を有していることを確認するため、実施例2の方法によりIL13レセプターα1結合活性を確認し、実施例4の方法によりIL13による細胞応答を阻害する中和活性を確認する。
(実施例11) ヒト型CDR移植抗体の作製(2)
ヒト化抗体において移植するCDR配列が活性を有する適切なドメイン構造を維持させるために元のFR領域の配列も合わせて移植する。CDRドメイン構造の維持にどのアミノ酸が関与しているかは、FR中のアミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性、分子サイズ等)から解析し、またコンピューターを用いたモデリングにより行う。すなわち、シリコーングラフィック上で起動するソフトウエアーQUANTA/CHARMmあるいはModeler(モレキュラー・シュミレーションズ)を用いてモデリングを行う。Brookhaven Protein Data Bank(PDB)に登録されているヒト抗体配列よりF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体のVH及びVL領域と相同性の高い抗体の三次元構造を検索し、それに基づきF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体の三次元構造を推定する。推定三次元構造上で重鎖及び軽鎖のCDRに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第1群)を選出し、更にそれらに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選出する。同様に、CDRに静電的相互作用やファンデルワルツ力等のエネルギー結合により結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第1群)と更にそれらに結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選択する。このようにして選択したFR領域中のアミノ酸群をCDRアミノ酸と併せてヒト抗体配列上に移植するが、Kabat等の分類(Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.,U.S.Department of Health and Human Services,1991)やNCBI(National Center for Biotechnology Information)等より得られるヒト抗体配列の可変領域アミノ酸には存在しないような配列が生じる場合は、そのアミノ酸は移植しない。このようにして得られた情報に基づきヒト抗体配列VH及びVLに移植する配列を決定し、ヒト化抗体作製に用いる遺伝子を構築する。
構築した遺伝子はアマシャムのキット(Oligonucleotide−directed in vitro mutagenesis system version 2)とPCR法を組み合わせる方法、また数種類の長鎖合成ヌクレオチドを組み合わせて増幅する方法、キメラ抗体のVHあるいはVL遺伝子を鋳型に数種類のプライマーを用いて増幅後、さらにそれら増幅遺伝子断片を鋳型として全長遺伝子断片を得る方法により作製する。得られた増幅遺伝子断片を実施例10記載のプラスミドpVg1あるいはVκを含むプラスミドpVkの制限酵素サイトに導入することにより発現プラスミドを調製する。作製したプラスミドは実施例10記載の方法により細胞に導入し、形質転換体を得、同様に精製抗体を作製する。また、同様に抗体の評価を行う。
産業上の利用可能性
IL13は炎症性疾患の病態局所において発現の増大が観察されているため、IL13とIL13レセプターの結合を阻害し、IL13の作用を中和する本発明の抗体は、炎症性疾患の効果的な治療剤となる。IL4とIL13は重複する生理活性を有するが、IL13は病態局所において多く存在し、炎症反応に関与する一方、IL4は抗体産生のクラススイッチや免疫細胞のTh2分化のような恒常的な役割を担っているものと予想される。IL13による細胞応答を選択的に阻害し、IL4による細胞応答は阻害しない本発明の抗体は、IL13の作用を抑制することにより局所炎症反応を抑制するという本来の目的に加えて、IL4の作用の阻害に伴う予期せぬ副作用を抑制することができる。IL13の作用を選択的に阻害する本発明の抗体は、局所炎症反応を副作用なく効率的に抑制できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、抗IL13R(レセプター)α1モノクローナル抗体13種類の特異性を、ヒトIL13Rα1−Fc(図中Fcと記載)、ヒトIL13Rα1−His(図中Hisと記載)、ヒトIgGとの反応性により、ELISA法で測定した結果を示したグラフである。
図2は、IL13刺激TF−1細胞増殖反応に対する抗IL13レセプターα1抗体の中和活性を示す図である。
図3は、抗IL13レセプターα1中和抗体のIL4による細胞応答に対する阻害活性を示す図である。
図4は、抗IL13レセプターα1中和抗体のGM−CSFによる細胞応答に対する阻害活性を示す図である。
図5は、IL13Rα1モノクローナル抗体6種類を用いたサンドイッチELISA系の抗体の組み合わせにより作成した標準曲線を示したグラフである。
図6は、モノクローナル抗体F994−7−2とF997−20−1抗体を用いたサンドイッチELISA系の標準曲線を示したグラフである。
図7は、モノクローナル抗体F994−7−2とF997−20−1抗体を用いたサンドイッチELISA系を用いて正常人、アレルギー患者を測定した血清測定の結果を示したグラフである。
図8は、F997−10−1抗体、F997−13−1抗体およびF997−20−1抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子配列を翻訳したアミノ酸配列を示す図である。図中箱で囲んだ配列はCDR領域を示す。図中Xは塩基配列が未確定のため翻訳できなかったアミノ酸配列を意味する。
本発明は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する新規な抗IL13レセプターα1抗体に関する。
背景技術
IL13はTh2タイプのサイトカインであり、多くの部分においてIL4と重複する生理活性を有していることが知られている。IL4と重複する生理活性としては、活性化B細胞におけるIgEおよびIgG4産生誘導活性、B細胞におけるCD23およびMHC発現誘導活性(Punnonen J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90:3730−3734(1993)、Defrance T.ら、J.Exp.Med.,Vol.179:135−143(1994))、単球に対する抗炎症作用(Minty A.ら、Nature,Vol.362:248−250(1993))が知られている。しかし、IL−4で認められるようなnativeT細胞のTh2への分化誘導作用はIL−13には認められない。このことはT細胞はIL4レセプターは発現しているがIL13レセプターは発現していないためと考えられている(Zurawski G.ら、Immunol.Today,Vol.15:19−26(1994))。IL13レセプターは、IL13レセプターα1およびIl4レセプターαという2つのポリペプチドからなるヘテロダイマーである。IL4レセプターαはIL13レセプターα1がIL13に実質的に結合する活性を発揮するのに必須である(Aman M.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:29265(1996))。IL4レセプターはIL4レセプターαおよびγ鎖という2つのポリペプチドからなるヘテロダイマーである。このように、IL13レセプターとIL4レセプターはIL4レセプターαというポリペプチドを共通して構成要素として含むため、IL4はどちらの受容体にも結合し、細胞応答を惹起することができる。一方、IL13はIL13レセプターには結合するがIL4レセプターには結合しない。
IL13は標的細胞上に発現されているIL13レセプターに結合することにより活性を発揮する。これまでに、IL13レセプターα1とIL13レセプターα2の2つのIL13結合ユニットが同定されている。HiltonらがIL13と低い親和性で結合する(Kd=2−10nM)マウスIL13レセプターα1を同定した(Hilton D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.93:497(1996))。やはり低い親和性でIL13と結合するヒトIL13レセプターα1も同定された(Aman M.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:29265(1996))。CaputらはIL13と高い親和性で結合する(Kd=0.25nM)ヒトIL13レセプターα2を同定した(Caput D.ら、J.Biol.Chem.,Vol.271:16921(1996))。
IL13レセプターを介したシグナル伝達については、Jak(Janustyrosine kinase)ファミリーのTyk2およびSTAT6がIL13により活性化されることが示されている(Izuhara K.ら、Arch.Immunol.Ther.Exp.,Vol.48:502−512(2000))。IL4レセプターαはJak1とアソシエートし、STAT6を活性化する。IL13レセプターα1はタイプIサイトカイン受容体ファミリーの一員であり、細胞外ドメインにWSXWSモチーフを有し、細胞内ドメインに保存されたBox1、Box3モチーフを有する。Box1とBox3はそれぞれJakとSTATのリクルートに関与している(Stahl N.ら、Science,Vol.267:1349−1353(1995))。最近の研究によりIL13レセプターα1の細胞内ドメインはTyk2およびSTAT3とアソシエートしており、IL4およびIL13の結合はSTAT3のリン酸化を引き起こすことが示された(Orchansky P.ら、J.Biol.Chem.,Vol.274:20818−20825(1999))。一方、IL13レセプターα2は短い細胞内ドメインを有するためシグナル伝達に寄与することはできず、デコイ受容体として働くと考えられているが詳細な機能は解明されていない。
IL13と病態の関連については、IL13が様々なタイプのアレルギー性疾患に関与しているという証拠が蓄積されてきている。気管支喘息(Huang SK.ら、J.Immunol.,Vol.155:2688−2694(1995)、Kotsimbos TC.ら、Proc.Assoc.Am.Physicians,Vol.108:368−373(1996))、アトピー性皮膚炎(Hamid Q.ら、J.Allergy Clin.Immunol.,Vol.98:225−231(1996)、Van der Ploeg I.ら、Clin.Exp.Immunol.,Vol.109:526−532(1997))、allergic rhinitis(Pawankar RU.ら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,Vol.152:2059−2067(1995)、Ghaffar O.ら、Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,Vol.17:17−24(1997))、allergic conjunctivitis(Fujishima H.ら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,Vol.38:1350−1357(1997))の患者の病変部位や末梢血でIL13の発現がアップレギュレートされていることが報告されている。
IL13は、T細胞以外にマスト細胞、好塩基球などから産生されるサイトカインであるが、マウスの気道過敏性モデルやアレルギー性喘息モデルから気管収縮の強力な制御因子であることが明らかになっている。IL13の喘息病態における役割は、IgEや好酸球を介した生理作用とは独立に気道過敏性亢進や気道上皮細胞からの粘液分泌をも引き起こすと考えられている(Wills−Karp M,ら、Science,Vol.282:2258−2261(1998)、Grunig G,ら、Science,Vol.282:2261−2263(1998))。IL4受容体欠損マウスへのIL13欠損マウス由来のOVA感作ヘルパーT細胞の移入による喘息発症モデルの試験から、IL13はIL4受容体αからのシグナルとは別に未知のシグナルにより気道過敏性、好酸球浸潤、肺におけるエオタキシン濃度を上昇させていることが明らかにされた(Mattes J.ら、J.Immunol.,Vol.167:1683−1692(2001))。IL13を気道上皮に特異的に発現させたトランスジェニックマウスの解析により、単核球、好酸球浸潤増加、杯細胞過形成、気道粘液分泌亢進、気道粘膜下の線維化などが生じ、気道過敏性亢進といった喘息病態が観察された(J.Clinical Investigation vol.103 779−788(1999))。気道上皮細胞、および気道平滑筋にはIL13レセプターα1、およびIL4レセプターαが強発現しているが、IL4レセプターγ鎖はほとんど発現していないことから、IL13レセプターが気道組織で発現しており、これら発現細胞がIL13の標的になっていること、および、IL4レセプターは気道組織では発現がほとんど認められないことが考えられる(臨床病理 vol.49 360−364(2001))。このことから、喘息の病態局所においてはIL13がIL4よりも主要な役割を担っていることが示唆される。
IL13レセプターα1に対する抗体としては、WO97/15663号公報においてウサギ抗血清が作成されている。モノクローナル抗体としては、Poudrier J.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.30:3157−3164(2000))、Graber P.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.28:4286−4298(1998))、Akaiwa M.ら(Cytokine,Vol.13:75−84(2001))の報告があるが、中和活性のある抗IL13レセプターα1抗体は得られていない。IL4レセプターに対する抗体はIL13およびIL4に対するTF1細胞及び単球の反応を阻害することが示されている(ZurawskiS.ら、J.Biol.Chem.,Vol.270:13869−13878(1995))。この抗体の阻害作用のIL13作用とIL4作用に対する非特異性は、IL13レセプターとIL4レセプターがIL4レセプターαを構成要素として共有しているためと考えられている。
発明の開示
上述のように、IL13は炎症性疾患の病態局所において発現の増大が観察されているため、IL13とIL13レセプターの結合を阻害し、IL13の作用を中和する抗体が得られれば、炎症性疾患の効果的な治療剤となることが期待される。IL4とIL13は重複する生理活性を有するが、IL13は病態局所において多く存在し、炎症反応に関与する一方、IL4は抗体産生のクラススイッチや免疫細胞のTh2分化のような恒常的な役割を担っているものと予想される。IL13とIL4を非選択的に阻害した場合、IL13の作用を抑制することにより局所炎症反応を抑制するという本来の目的に加えて、IL4の作用の阻害に伴い予期せぬ副作用を引き起こす可能性がある。IL13の作用を選択的に阻害することができれば、局所炎症反応を副作用なく効率的に抑制できるものと考えられる。しかしながら、中和活性を有する抗IL13レセプターα1抗体は現在まで取得されていない。更に、IL13レセプターに対するIL13とIL4の作用のうち、IL13による作用を阻害し、IL4による作用は阻害しないという選択的な中和活性を有する抗体についても取得されていなかった。
本発明は、上記の従来技術における問題点を解決するために以下の本件発明を提供する。
1.IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1抗体。
2.IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつIL4による細胞応答は阻害しないことを特徴とする抗IL13レセプターα1抗体。
3.少なくとも10nMの解離定数でIL13レセプターα1と結合する上記1または上記2に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
4.IL13による細胞応答がTF−1細胞の細胞増殖であり、IL13による細胞応答を阻害する活性が下記(a−1)〜(a−3)からなる群より選択される少なくとも1つの活性である、上記1〜3のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a−1)IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度が、10μg/mL以下である;
(a−2)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答に対するIC50が、10μg/mL以下である;
(a−3)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答を抗体濃度10μg/mLで50%以上阻害する。
5.モノクローナル抗体である上記1〜4のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
6.以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの重鎖可変領域を有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(c)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域。
7.軽鎖可変領域として、配列番号4、9および15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号5、10および16からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域、および配列番号11および17からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有する軽鎖可変領域を有することを特徴とする上記6に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
8.ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体。
9.ヒト化抗体である上記1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
10.ヒト化抗体が、ヒト型キメラ抗体である上記9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
11.ヒト型キメラ抗体が、上記1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域とヒト抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域とからなるヒト型キメラ抗体である、上記10に記載の抗体。
12.重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有する、上記10に記載の抗体。
13.ヒト化抗体が、ヒト型相補性決定領域移植抗体である上記9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
14.ヒト型相補性決定領域移植抗体が、上記1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域とヒト抗体の重鎖定常領域、軽鎖定常領域およびフレームワーク領域とからなるヒト型相補性決定領域移植抗体である、上記13に記載の抗体。
15.重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域と同じアミノ酸配列を有する、上記14に記載の抗体。
16.ヒト抗体ファージライブラリーまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られるヒト抗体である上記1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
17.IL13による細胞応答を阻害する活性を有し上記1〜8のいずれかに記載の抗体の一部を含有する抗IL13レセプターα1抗体断片。
18.上記1〜7のいずれかに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
19.ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1。
20.上記1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法。
21.上記1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、IL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用を阻害する方法。
発明を実施するための最良の形態
抗IL13レセプターα1抗体とは、IL13レセプターα1を特異的に認識する抗体である。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害することを特徴とする。すなわち、本発明の抗体はIL13レセプターα1中和抗体である。IL13による細胞応答とは、IL13レセプター発現細胞にIL13を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のことである。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13レセプター発現細胞に対するIL13の作用を阻害および/または中和する活性を有する。ここでいうIL13レセプター発現細胞は、生体中の細胞、生体由来の細胞または培養細胞株のうち天然にIL13レセプターを発現しているものでもよいし、遺伝子工学的にIL13レセプターを発現させた細胞であってもよい。IL13レセプター発現細胞の具体例としては、B細胞、活性化B細胞、単球、TF−1細胞、カルシノーマ細胞株、グリオーマ細胞株、気道上皮細胞および気管支平滑筋細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、IL13とIL13レセプターはいずれの動物種由来のものであっても良いが、同種由来の組み合わせで用いることが好ましい。特に好ましくはヒト由来である。IL13が細胞膜上のIL13レセプター(IL13レセプターα1とIL4レセプターαからなるヘテロダイマー)に結合すると、IL13レセプターの活性化が起こる。IL13レセプターの活性化により、STAT6やSTAT3のリン酸化がおこり、シグナル伝達の結果として遺伝子発現の質的量的変化、発現蛋白の質的量的変化、細胞形態の変化、細胞の増殖等の細胞の生理学的変化が生ずる。本明細書中において、「IL13による細胞応答」とは、このようなIL13レセプター発現細胞にIL13を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のうち、当業者が通常用い得る実験的手段において検出可能な変化であればいずれのものでも良い。実験的手段としては、in vitroアッセイ系が好ましい。in vitroアッセイ系の例を以下に示す。
例えば、ヒト赤芽球系TF−1細胞(ATCC No.CRL−2003、Kitamura Tら、Int.Immunol.Vol.3:571−577(1991))にIL13を作用させた場合は、IL13用量依存的な細胞増殖という細胞応答がおこる。細胞増殖はMTTアッセイ(生細胞がMTTを分解することを利用した色変化による生細胞数の測定法)により吸光度の増加として検出できるほか、放射性同位体標識チミジン取り込みによっても検出できる。また、ヒト単球にCD40リガンドもしくはCD40アゴニスト抗体共存下でIL13を作用させた場合は、IgEの産生量増加という細胞応答がおこる(Defrance T.ら、J.Exp.Med.,Vol.179:135−143(1994))。IgEの産生量増加は、抗IgE抗体を用いた酵素免疫測定法等により測定できる。また、ヒト単球にLPS共存下でIL13を作用させた場合には、CD23発現量増加という細胞応答が起こる(Zurawski S.ら、J.Biol.Chem.,Vol.270:13869−13878(1995))。また、TF−1細胞やヒト単球のような天然にIL13レセプターを発現している細胞にIL13を作用させた場合は、STAT6のリン酸化がおこる。STAT6のリン酸化は、細胞破砕液を抗STAT6抗体により免疫沈降した後PAGEを行い、抗リン酸化チロシン抗体を用いたウエスタンブロット法により検出できる(A.Tomkinsonら、The Journal of Immunology,Vol.166:5792−5800(2001))。本発明の抗体は、上述のようなIL13による細胞応答のうち、少なくとも1つについて阻害する活性を有すればよい。
IL13による細胞応答を阻害するとは、IL13による細胞応答が、本発明の抗体添加群では、対照群例えば本発明の抗体無添加群と比べて低値であることをいう。たとえば、下記の式で計算される細胞応答阻害率が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上であることをいう。
細胞応答阻害率(%)=(対照群の細胞応答値−抗体添加群の細胞応答値)の絶対値/対照群の細胞応答値*100
ここで、細胞応答値は測定する細胞応答の種類によって適宜定められる。たとえば、細胞応答が細胞増殖である場合には、MTTアッセイによる吸光度を用いることができる。細胞応答がIgE産生である場合には、たとえば産生IgE量を用いることができる。細胞応答がCD23発現である場合には、たとえばフローサイトメトリーによる蛍光強度を用いることができる。
より具体的には、本発明の抗体の中和活性は、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、以下の表現で表すことができる。
抗体濃度が10μg/mLで、IL13濃度1ng/mL存在下における細胞増殖を10%以上阻害する活性を有することが好ましい。より好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上阻害する活性を有する抗体である。
別の表現においては、IL13による細胞応答を阻害するとは、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、ある一定濃度のIL13の条件下、本発明の抗体の細胞応答阻害用量作用曲線を得たとき、IC50=15μg/mL以下、好ましくは10μg/mL以下、より好ましくは7μg/mL、更に好ましくは3μg/mL以下、特に好ましくは1μg/mLであることをいう。典型的なIgG抗体の分子量を150kDaとしたとき、15μg/mL=1×10−7Mに相当し、1×10−7Mにおいて50%以上の阻害活性を有すれば中和活性として十分と考えられる。
より具体的には、本発明の抗体は、TF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系において、IL13濃度1ng/mL存在下における細胞増殖に対するIC50値が15μg/mL以下である活性を有することが好ましい。より好ましくは10μg/mL以下、特に好ましくは7μg/mL以下の活性を有する抗体である。
別の表現においては、IL13による細胞応答を阻害する活性とは、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度として表すこともできる。この方法による表現は、細胞応答がIL13の用量依存的である場合、広い用量範囲の特性を数値化できるので効果的である。また、場合によっては実験条件によって左右されるIC50や阻害率のような値と違い、実験条件に左右されずアンタゴニスト活性を表現する上で信頼性が高い数値である。IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度の値は、測定する細胞応答によって異なるが、例えばTF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系では、本発明の抗体は、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度が10μg/mL以下、好ましくは7μg/mL以下、より好ましくは3μg/mL以下、更に好ましくは1.5μg/mL以下である。
上述のTF−1細胞のIL13依存的細胞増殖の阻害アッセイ系は、具体的には実施例4に示す方法の他、Lakkis FG.ら(Biochem Biophys Res Commun.Vol.235:529−532(1997)の方法,Kitamura T.ら(J.Cell Physiol.vol.140:323(1989))らの方法などを適宜用いることができる。
本発明の抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有することを特徴とするが、そのメカニズムはIL13とIL13レセプターα1の結合を阻害することによるものと説明できる。IL13とIL13レセプターα1の結合を阻害する抗体が、必ず中和活性を有するとは限らない(Graber P.ら(Eur.J.Immunol.,Vol.28:4286−4298(1998))。抗体と抗原の結合の性質は、結合の強さおよび抗体が抗原のどの部位に結合するかにより決まるものと考えられる。IL13とIL13レセプターα1の結合を阻害する抗体であっても、適切な結合の強さと適切な抗原結合部位(エピトープ)を有さなければ、中和活性を持つことはない。よって、本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有すると共に、(a)IL13レセプターα1と本発明の抗体の結合の強さおよび/または(b)本発明の抗体がIL13レセプターα1のどこに結合するかを定めることにより定義することもできる。例えば、(a)としては、少なくとも10nM以下、好ましくは5.0nM以下、より好ましくは3.0nM以下、更に好ましくは1.5nM以下の解離定数(Kd)でIL13レセプターα1と結合することである。解離定数は表面プラズモン共鳴により測定することができる。(b)としては、ハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1またはハイブリドーマF997−10−1が産生する抗体によって認識されるエピトープを認識することである。エピトープは抗体の相補性決定領域により特異的に認識されるので、エピトープに代えて抗体の相補性決定領域により本発明の抗IL13レセプターα1抗体を定義することも可能である。表面プラズモン共鳴による解離定数は例えば実施例2に示す方法により測定することができる。IL13レセプターα1上のハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1またはハイブリドーマF997−10−1が産生する抗体によって認識されるエピトープは、IL13レセプターα1の断片ペプチドを適宜作成し、その断片に対して抗体が反応性を有するかをELISA法などを用いて決定することができる。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつ以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの重鎖可変領域を有することを特徴とする;(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域、(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域、(c)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域。さらに、上記重鎖可変領域を有することに加えて、軽鎖可変領域として、配列番号4、9および15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号5、10および16からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域、および配列番号11および17からなる群より選択されるいずれかひとつのアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有する軽鎖可変領域を有することを特徴とする。または、上記重鎖可変領域を有することに加えて、軽鎖可変領域として、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの軽鎖可変領域を有することを特徴とする;(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域および配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域、(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域、(c)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号17に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする軽鎖可変領域。より好ましくは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつ重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域と同じアミノ酸配列を有することを特徴とする。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、好ましくは、IL13による細胞応答を阻害することに加え、IL4による細胞応答は阻害しないことを特徴とする。IL4による細胞応答とは、IL13レセプター発現細胞にIL4を作用させた際に生じる細胞の生理学的変化のことである。本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13レセプター発現細胞に対するIL13の作用を阻害および/または中和する活性を有し、かつIL13レセプター発現細胞に対するIL4の作用は阻害および/または中和しない。IL4による細胞応答は阻害しないとは、IL4による細胞応答が、対照群例えば本発明の抗体無添加群と抗体添加群を比べて実質的に同等であることをいう。具体的には、ある一定濃度のIL4の条件下、本発明の抗体の細胞応答阻害用量作用曲線を得たとき、IC50>15μg/mL、より好ましくはIC50>10μg/mLであることを言う。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体は、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する限り、いかなる動物種のIL13レセプターα1を認識するものであっても良い。ヒトIL13レセプターα1を特異的に認識するものが好ましいが、マウスヒトIL13レセプターα1に交差反応性を有しても良い。マウスIL13レセプターα1に交差反応性を有する場合、病態モデルマウスに投与することにより抗体の薬理活性を試験することが可能であり、有用である。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体には、IL13レセプターα2と交差反応性を有するものも有しないものも含まれる。しかし好ましくは、IL13レセプターα2との交差反応性を有しないものである。
交差反応性は、実施例2に示されるような、交差反応性を試験したい抗原を固相化したELISA法や、BIACORE装置を用いた方法により適宜試験することができる。例えば実施例2に示すBIACORE装置を用いた方法では、RU値が50未満の場合は交差反応性を有しないと判断することができる。
本発明の抗体はポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。抗体の有する機能を明確にするため、若しくは明確に発揮させるためには、モノクローナル抗体が好ましい。本発明の抗体はその分子種は特に限定されない。抗体、すなわち免疫グロブリンの構造は重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)とからなり、重鎖のクラス(γ、α、μ、δ、ε)により5つのイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)に分けられる。このうちIgGとIgAは重鎖の違い(例えばヒトの場合、γ1、γ2、γ3、γ4、α1、α2)によりサブクラス(例えばヒトの場合IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかのタイプに分類される。本発明の抗体はいずれのクラス、サブクラスまたはイソタイプに分類される抗体であってもよい。
重鎖および軽鎖のN末端側には可変領域が存在し、それぞれ重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)と呼ばれる。可変領域内には相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)が存在し、この部分が抗原認識の特異性を担っている。可変領域のCDR以外の部分は、CDRの構造を保持する役割を有し、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖のC末端側には定常領域が存在し、それぞれ重鎖定常領域(CH)、軽鎖定常領域(CL)と呼ばれる。
重鎖可変領域中には、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。重鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて重鎖相補性決定領域と呼ぶ。軽鎖可変領域中にも同様に、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。軽鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて軽鎖相補性決定領域と呼ぶ。
IL13に対する細胞応答を阻害する活性を有し、中和抗体の一部を含有する本発明の抗IL13レセプターα1中和抗体断片またはペプチドとしては、上記で説明した本発明の抗IL13レセプターα1中和抗体のFab(fragment of antigen binding)、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(single chain Fv:scFv)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv:dsFv)、CDRを含むペプチドなどがあげられる。Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分のアミノ酸とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のF(ab’)2は、本発明の抗IL13レセプターα1抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のFab’は、IL13レセプターα1に特異的に反応するF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
scFvは、一本のVHと一本のVLとを適当なペプチドリンカーを用いて連結したポリペプチドのことである。本発明のscFvに含まれるVHおよびVLは、本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。本発明のscFvは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[Protein Engineering,7,697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvに含まれるVHおよびVLは本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。
本発明のdsFvは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、H鎖またはL鎖CDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明のCDRを含むペプチドは、本発明の抗IL13レセプターα1抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得した後、CDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
本発明の抗体には、本発明のハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらの抗体断片に放射性同位元素、蛋白質または低分子の化合物などを結合させた抗体も含まれる。本発明の抗IL13レセプターα1抗体または抗体断片のH鎖或いはL鎖のN末端側或いはC末端側、抗体または抗体断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体断片中の糖鎖に放射性同位元素、蛋白質あるいは低分子の化合物などを化学的手法[抗体工学入門(金光修著1994年(株)地人書館)]により結合させることにより製造することができる。
本発明の抗体は公知技術を用いることにより作製できる。
抗原は、IL13レセプターα1蛋白質またはその断片ペプチドを用いる。抗原とする蛋白質の由来動物は、抗体の使用目的に応じて適宜選択し得るが、好ましくはヒトIL13レセプターα1蛋白質またはその断片ペプチドである。また抗原はIL13レセプターα1としての活性を有していても有していなくてもよく、天然物由来のもの、遺伝子工学的に作成したもの、化学的に合成したもの、他の蛋白質やペプチドとの融合蛋白質等、いずれでも良い。ここでいうIL13レセプターα1としての活性とはIL13との結合能を意味する。IL13との結合能は、実施例3に示される方法のほか、抗原を固相化し、IL13を添加後、抗IL13抗体により抗原に結合したIL13を検出するELISA系など公知の方法を用いて検出することが可能である。最も好ましい抗原は、ヒトIL13レセプターα1の細胞外領域と免疫グロブリンのFcフラグメントとの融合蛋白質である。具体的には実施例1に示されるプラスミドpM1701は、平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1 中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され(受託番号FERM p−18632)、平成14年11月20日付にてブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8238)、を用いて産生することができる可溶型IL13レセプターα1−Fcが好ましい抗原である。当該抗原は、IL13に対する結合活性を有しない。しかし、当該抗原を用いることにより初めて中和活性を有する抗体を取得することが可能となった。このことは、当該抗原が、中和活性に関係するエピトープを効果的に提示する抗原であることを意味する。
免疫する哺乳動物は、特に限定されないが、モノクローナル抗体を作製する場合は、細胞融合に使用するミエローマ細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、マウス、ラットまたはハムスター等が好ましい。ミエローマ細胞は、公知の種々の細胞が使用可能である。これにはP3、P3U1、SP2/O、NS−1、YB2/0及びY3−Ag1,2,3等の骨髄腫細胞が含まれる。
免疫は公知の方法により行なうことができる。例えば、抗原を腹腔内、皮下、静脈内またはフットパッド内に投与して行なう。この抗原の投与はアジュバントを併用してもよく、また複数回投与することが好ましい。免疫細胞は抗原の最終投与の数日後、例えば3日後、に摘出した脾細胞またはリンパ節由来の細胞が好ましい。
免疫細胞とミエローマ細胞との融合は、Milstein等の方法(Methods in Enzymol.,73巻3頁)等の公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、融合剤としてポリエチレングリコール(PEG)を使用する方法または電気融合法等が挙げられる。免疫細胞とミエローマ細胞との混合比は、それらが融合できる比率であれば限定されないが、免疫細胞に対し、ミエローマ細胞を1/10量ないし等量を使用することが好ましい。細胞融合をPEG(平均分子量1,000〜4,000)を使用して行なう方法ではPEG濃度は特に限定されないが50%で行なうことが好ましい。また、融合効率促進剤としてジメチルスルフォキシド(DMSO)等の補助剤を添加してもよい。融合は37℃に加温したPEG溶液を混合した細胞に添加することにより開始し、1〜5分間反応後、培地を添加することにより終了する。
この融合により形成されたハイブリドーマをヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを含む培地(HAT培地)等の選択培地で1日〜7日間培養し、未融合細胞と分離する。得られたハイブリドーマをその産生する抗体により更に選択する。選択したハイブリドーマを公知の限界希釈法に従って単一クローン化し、単一クローン性抗体産生ハイブリドーマとして樹立する。
ハイブリドーマの産生する抗体の活性を検出する方法は公知の方法を使用することができる。ここで抗体の活性は、第一段階として、IL13レセプターα1抗原への結合能を、第二段階として、IL13による細胞応答を阻害する活性を検出する。第二段階の活性の検出方法は前述のとおりである。第一段階の活性の検出方法としては、例えばELISA法、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ法が挙げられる。
樹立したハイブリドーマを公知の方法で培養し、その培養上清よりモノクロナール抗体を得ることができる。また、ハイブリーマをこれと適合性を有する哺乳動物に投与して増殖し、その腹水より得ることができる。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法またはアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
本発明の抗IL13レセプターα1抗体の抗原結合性を確認する方法、または本発明の抗IL13レセプターα1抗体を用いて生物試料中のIL13レセプターα1を検出する方法としては、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA)、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、上記に記した酵素免疫測定法、サンドイッチELISA法[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987年)、続生化学実験講座5免疫生化学研究法(東京化学同人、1986年)]などを用いることができる。
本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体などがあげられる。ハイブリドーマとは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウス、ラット等に由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞を意味する。
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体などがあげられる。ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体のCHおよびCLとからなる抗体を意味する。ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に遺伝子工学的に挿入して作製した抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体は、公知の方法(それぞれNature,312:643,1984、Nature,321:522,1986以来、多くの方法が開発されている)を用いて作製できる。簡単に説明すると、まず、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、塩基配列およびアミノ酸配列を決定する。次に、ヒト型キメラ抗体の場合は、取得したVHおよびVLをコードするcDNAをヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。ヒト型CDR移植抗体の場合は、先に決定したヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDR配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配列と置き換えたV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。
ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体の作製に用いるヒト抗体の定常領域としては、例えば、ヒト抗体重鎖定常領域としてはCγ1やCγ4、ヒト抗体軽鎖定常領域としてはCκ等の任意のヒト抗体の定常領域を用いることができる。ヒト型CDR移植抗体の作製に用いるヒト抗体のV領域のフレームワーク領域のアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のV領域のFRのアミノ酸配列であればいかなるものでも用いることができる。例えば、ProteinDataBankに登録されているヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のV領域のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(SequencesofProteinsofImmunologicalInterest,USDept.HealthandHumanServices,1991)があげられるが、充分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を創製するためには、CDRのドナーとなるのヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列と高い相同性、好ましくは65%以上の相同性を有することが望ましい。
ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体の作成に用いるヒト抗体の定常領域やフレームワーク領域は、既存の方法に従って用意することが可能である(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:10029(1989)、WO90/07861およびWO92/11018、Co等Proc,Natl.Acad.Sci.USA,88,2869(1991)、CoおよびQueenNature、351巻、501頁、1991年、ならびに、Coら、J.Immunol.148:1149(1992))。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、ヒト抗体ファージライブラリーまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、一本鎖抗体等の抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、石田らが開発した方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.97:722−727(2000))を用いて作製できる。すなわち、まず、Trans−chromosome(Tc)マウスは石田らの方法に従い、ヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)をミクロセル融合法によりマウスES細胞に導入し、Joynerらの方法(ジーン ターゲティング、実験法シリーズ、メディカル・サイエンス・インターナショナル)にしたがい、それぞれの染色体断片を有するキメラマウスを作製する。次に、作製した2種類のキメラマウスを交配することによりヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)の両者を有するキメラマウスを作製する。マウス由来の内因性のマウス抗体の産生を失わせる為、Capecchiらの方法(Mol.Cell.Biol.12:2919−2923、1992)に従い内因性のIg重鎖とκ鎖をノックアウトしたダブルKOマウスを作製し、ヒト染色体断片を導入したキメラマウスと交配させ、ヒト2番染色体断片(Ig軽鎖κ)と14番染色体断片(Ig重鎖)を含み、内因性のIg重鎖とκ鎖をノックアウトしたトランスクロモソームマウスを作製する。作製したTcマウスは血中にヒト由来の抗体を産生し、マウスIg重鎖およびマウスIg軽鎖κは検出されない。得られたTcマウスは数代経っても染色体は維持され、その子孫を以下の抗IL13レセプターα1ヒトモノクローナル抗体の作製に使用できる。
Tcマウスに精製したIL13レセプターα1抗原50μgを、タイターマックスゴールド(Titer Max Gold,CytRx社)と混合後、皮下に投与し、3週間後同様に追加投与を行う。抗体価の上昇は、抗原を固相化したプレートに希釈した抗血清を反応させ、続いて抗ヒトIgG抗体を用いて結合した血清中のヒト抗体を検出する。細胞融合は、抗体価の上昇したマウスの腹腔に抗原を50μg投与し、3日後に行う。具体的には、採取した脾細胞をマウスミエローマ細胞(SP2/O−Ag14)と混合後、PEG4000(Merck)により融合し、G418(1mg/mL)を含むHAT培地によりハイブリドーマを選択する。出現したハイブリドーマを抗ヒトIgGκ抗体、抗IgG抗体、抗IgG2抗体、抗IgG3抗体または抗IgG4抗体を2次抗体としてスクリーニングし、IL13レセプターα1と結合するヒト抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
本発明のハイブリドーマは、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1抗体を産生するハイブリドーマである。本発明のハイブリドーマは、上述の方法により作製することができる。本発明のハイブリドーマの好ましい例は、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1である。
本発明の抗体または抗体断片を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法は、被験試料と本発明の抗体または抗体断片を接触させる工程、本発明の抗体または抗体断片に結合した被検試料中のIL13レセプターα1を検出する工程を含み得る。被検試料中のIL13レセプターα1を定量する工程を更に含んでも良い。
本発明の抗体を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法としては、実施例5および6に示されるサンドイッチELISA系の他、インヒビションELISA系、蛍光抗体法、免疫組織化学染色法、放射性物質標識免疫抗体法、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法などがあげられるが、これらに限定されるものではない。対象となる被検試料は限定されないが生物試料が用いられ、動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片が挙げられるが、体液であることが好ましい。より好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、胸水より選ばれる試料である。
インヒビションELISA系では、まず、抗原を固相化したプレートを準備し、第一抗体として抗IL13レセプターα1モノクローナル抗体を反応させる。同時にIL13レセプターα1濃度を測定したい培養上清や血清などの被検体を適当に希釈して加え競合反応させる。濃度既知のIL13レセプターα1蛋白質を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプルの濃度を算出する。その量を健常者と被験者とで比較し、発現量が上昇しているかどうかを調べることにより、被験者がアレルギー性疾患に罹病しているか否かを診断することができる。
蛍光抗体法は、文献[Monoclonal Antibodies:Principles and practice,Third edition(Academic Press,1996),単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987)]等に記載された方法を用いて行うことができる。具体的には、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリンなどの蛍光物質でラベルした抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、蛍光色素をフローサイトメーターで測定する方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)は、文献[Monoclonal Antibodies:Principles and practice,Third edition(Academic Press,1996),単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック,1987)]等に記載された方法を用いて行うことができる。免疫酵素抗体法(ELISA)は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識などを施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する方法である。
放射性物質標識免疫抗体法(RIA)は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法は、細胞または組織などに、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)などの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、顕微鏡を用いて観察する方法である。
ウェスタンブロッティング法は、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988]で分画した後、該ゲルをPVDF膜あるいはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した抗マウスIgG抗体あるいは結合断片を反応させた後、確認する。
免疫沈降法とは、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などを本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片と反応させた後、プロテインG−セファロース等のイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させるものである。
サンドイッチELISA法とは、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片で、抗原認識部位の異なる2種類のモノクローナル抗体のうち、あらかじめ一方のモノクローナル抗体または抗体断片はプレートに吸着させ、もう一方のモノクローナル抗体または抗体断片はFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素で標識しておく。抗体吸着プレートに、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清などを反応後、標識したモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、標識物質に応じた反応を行う方法である。
本発明の抗体または抗体断片を用いて、IL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用を阻害する方法は、IL13レセプター発現細胞と本発明の抗体または抗体断片を接触させる工程、IL13とIL13レセプター発現細胞を接触させる工程、本発明の抗体または抗体断片によるIL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用の阻害を検出する工程の少なくとも一つを含み得る。本発明の抗体または抗体断片によるIL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用の阻害を検出する工程は、前述のin vitroアッセイ系の他、in vivoアッセイ系を用いることも可能である。ここでいうin vivoアッセイ系とは、生体に本発明の抗体または抗体断片を投与し、当該抗体または抗体断片が生体の機能やステータスに与える影響を検出する評価系を意味する。たとえば、病態モデル動物に本発明の抗体または抗体断片を投与し、病態の重篤度の指標に与える影響を評価する系が例として挙げられる。
本発明は、本発明の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、被検試料中のIL13レセプターα1を検出または測定するための試薬またはキットを提供する。当該試薬またはキットは、上述した検出方法の構成等に準拠することができる。
実施例
以下に、実施例をもって本発明を一層具体的に説明するが、これらは一例として示すものであり、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。また、以下の記載において用いる略号は、当該分野における慣用略号に基づくものである。
(実施例1) 抗ヒト可溶型IL13レセプターα1抗体の作製
[投与抗原の調製]
可溶型IL13レセプターα1−Fc及びIL13レセプターα1−Hisの発現
抗体作製用の投与抗原及びスクリーニング用抗原として用いるため、ヒトIL13レセプターα1(以下IL13Rα1と略することがある)の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントとの融合タンパク質(IL13Rα1−Fc)およびIL13Rα1の細胞外ドメインのC末端にヘキサヒスチジンタグを付加したタンパク質(IL13Rα1−His)を作製した。なお、DNA操作は特に断りのない限り、モレキュラークローニング第二版(Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Maniatis T.,et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))にしたがって行った。
IL13Rα1−Fc発現プラスミドは、以下の手順により遺伝子工学的に作製した。まず、DNAデータバンクEmblに登録されているヒトIL13Rα1遺伝子の配列Y10659の情報をもとに、センスプライマー1(5’末端側に制限酵素EcoRI認識配列を含む)およびアンチセンスプライマー1(5’末端側に制限酵素HindIII認識配列を含む)を合成し、ヒト脾臓cDNAライブラリ(クロンテック社)を鋳型としてPCRを行い、IL13Rα1細胞外ドメイン−−343アミノ酸)をコードするcDNAを含むPCR産物を得た。このPCR産物を制限酵素EcoRIおよびHindIIIで消化して得られるDNA断片(EcoRI−HindIII断片)をpUC119(宝酒造株式会社)にサブクローニングした。一方、ヒトIgG1FcドメインcDNAが含まれるプラスミドpM1304(WO97/42319号公報に記載)を鋳型としPCRを行い、あらためてIL13Rα1細胞外ドメインにインフレームで連結可能となるヒトIgG1FcドメインcDNAを得た。このPCRのためのセンスプライマー2は、ヒトIgG1FcドメインN末端側をコードするcDNA配列を含み、さらにその5’末端側に制限酵素HindIII認識配列を配置して設計し、またアンチセンスプライマー2はヒトIgG1FcドメインC末端側に制限酵素KpnI認識配列を配置して設計したものを使用した。このPCR産物を制限酵素HindIIIおよびKpnIで消化して得られるDNA断片(HindIII−KpnI)をpUC119にサブクローニングした。ついで、あらためてそれぞれのプラスミドより当該EcoRI−HindIII断片および当該HindIII−KpnI断片を切り出してライゲーションし、哺乳動物細胞発現ベクターpEFNのEcoRI−KpnIインサートと入れ替えて導入し、EFプロモーター下流にIL13Rα1−Fc遺伝子を連結した発現ベクタープラスミドpM1701を作製した。本発明者は、プラスミドpM1701を平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(受託番号FERM P−18632)。また、平成14年11月18日付にてブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管した(受託番号FERM BP−8238)。
また、前述のセンスプライマー1、およびC末端にヘキサヒスチジンを付加したIL13Rα1細胞外ドメインをコードするcDNAのアンチセンス配列を含むプライマー(5’末端側に制限酵素KpnI認識配列を含む)を用いてIL13Rα1−Fc発現プラスミドを鋳型としてPCRを行い、IL13Rα1細胞外ドメインC末端にヒスチジンタグが付加したタンパク質cDNAを含む産物を得た。このPCRの制限酵素EcoRI−KpnIの消化断片をIL13Rα1−Fc発現プラスミドのEcoRI−KpnIインサートと置き換えることによりIL13Rα1−His発現プラスミドとした。
得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlと上記各プラスミドDNA12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。IL13Rα1−Hisはニッケルカラム(Hitrap−chelate、アマシャムファルマシア)を用いて培養上清より精製し、IL13Rα1−FcはProteinAカラム(Prosep−A、ミリポア)を用いて精製した。蛋白濃度はBSAを標準品としてバイオラド社のプロテインアッセイ法により濃度を算出した。
[抗IL13Rα1抗体の調製]
Wistarラット(SLCより購入)メス8週令のフットパッドに100μgの精製可溶型IL13Rα1−Fcとフロインド完全アジュバント(Difco)とを1対1で混合したものを投与し、3週間後腸骨リンパ節を摘出し、無菌的にリンパ球を採取した。
得られたリンパ球をマウスミエローマ細胞SP2/O−Ag14(ATCC CRL1581)と5対1で混合しポリエチレングリコール1500(Sigma)を用いて細胞融合を行った。融合後、細胞をヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む10%胎児血清/RPMI1640に懸濁し、96穴プレート(Nunc)に播種した。5%CO2、37℃の条件下で培養し、増殖してくるハイブリドーマが確認できた段階でアミノプテリンを除いた培地に交換した。
細胞融合から1週間後に培養上清をサンプリングし、精製可溶型IL13Rα1−Hisを固相化したプレートでIL13Rα1に結合する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。すなわち、精製可溶型IL13Rα1−Hisを1μg/mLでプレート(Maxisorp,Nunc)に固相化し、0.1%BSAを含むPBSでブロッキングした。次に培養上清を添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween−20を含む0.9%生理食塩水で洗浄した。
各ウエルにペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を添加し、37℃で1時間反応させ、洗浄後0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン発色液を添加し、10分間反応後0.5M硫酸で反応を停止した。
プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で吸光度を450nmの波長で測定し、吸光度が0.2以上のウエルを抗IL13Rα1抗体産生ハイブリドーマとして選択した。
選択したハイブリドーマは限界希釈法(単クローン抗体実験操作法入門、安東民衛・千葉丈/著、講談社)によりクローニングし、10日後に同様にスクリーニングを行い、抗IL13Rα1抗体産生ハイブリドーマ13ローンを得た。
次にハイブリドーマを10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640で培養した後、細胞を回収しHybridoma−SFM(invitrogen)で抗体産生を行い、モノクローナル抗体を含む培養上清を得た。培養上清からろ紙で細胞を除いた後、プロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、13種類の精製ヒトIL13Rα1抗体を得た。得られた精製抗体の中より反応性の高いもののサブタイプをZYMED社のラットタイピングキットを用いて決定したところF997−20−1抗体はIgG1・κ、F997−13−1抗体はIgG1・κ、F997−10−1抗体はIgG2b・κ、F994−7−2抗体はIgG2a・κ、F997−18−3抗体はIgG2b・κ、F997−17−1抗体はIgG2a・κ,F997−8−1抗体はIgG2a・κであった。
なおF997−13−1抗体、F997−20−1抗体をそれぞれ産生するハイブリドーマF997−13−1、ハイブリドーマF997−20−1は、それぞれ、平成13年11月26日付で日本国茨城県つくば市東一丁目1番1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され(それぞれ受託番号FERM P−18633及び受託番号FERM P−18634)、平成14年11月20日付にてブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管された(それぞれ受託番号FERM BP−8241及び受託番号FERM BP−8242)。F997−10−1抗体を産生するハイブリドーマF997−10−1は、平成14年11月13日付で同センターに国際寄託された(受託番号FERM BP−8237)。
(実施例2) BIACOREによる抗IL13Rα1抗体の特異性、親和性の測定
[特異性の検討]
実施例1で作製したヒトIL13Rα1−Fc及びヒトIL13R−His、ネガティブコントロールとしてヒトガンマグロブリン(Cappel社)を1μg/mlで96穴プレートに固定化し、洗浄後0.1%BSA/リン酸緩衝液(pH6.4)でブロッキングを行った。次に各抗体を1μg/mlを0.1%BSA/リン酸緩衝液(pH6.4)で希釈したものを固定抗原なし(PBSと略す場合がある)、ヒトガンマグロブリン(IgGと略す場合がある)、ヒトIL13Rα1−Fc(Fcと略す場合がある)、ヒトIL13Rα1−His(Hisと略す場合がある)の4箇所に添加し37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む0.9%NaClで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgs抗体(DAKO)を添加し同様に反応した。プレートを洗浄し、0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン発色液を添加後、10分間反応させ0.5M硫酸で反応を停止した。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で吸光度を450nmの波長で測定した。結果を図1に示す。図1に示すように13種類の抗体は全て、PBS,IgGに対する場合に比べて、ヒトIL13Rα1−Fc、ヒトIL13Rα1−Hisに対して特異的であり、ヒトIL13Rα1と特異的に結合した。
次にBIACORE2000(ビアコア社)を用いてヒトIL13Rα2に対する特異性を検討した。すなわち、流速20μl/minでNTAチップ(ビアコア社)を350mMのEDTA溶液5μlで処理後500μMのニッケル溶液を5μl添加した。その後、50μg/mlのRecombinant Human IL13Rα2/Fc Chimera(R&D社)を5μl添加し結合させた。さらに続けて50μg/mlに希釈した各抗体を5μl添加しその結合を解析した。同様にRecombinant Mouse IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)を用いてマウスIL13Rα1との交差反応性を検討したところ、検討した抗体のうちF997−20−1抗体はヒトIL13Rα2に対して交差反応性を示した。また、マウスIL13Rα1との交差反応性はF997−20−1抗体、F997−13−1抗体、F997−10−1抗体で確認された。ここでRUはBIACORE装置で使用されるレスポンスを表す単位であり、1000RUは約1.2ngの物質が結合したことを示す。
[親和性の検討]
作製した抗IL13Rα1抗体の結合定数をBIACOREを用いて測定した。すなわち、CM5チップ(ビアコア社)をビアコア社のマニュアルに従い7分間活性化し実施例1で作製したヒトIL13Rα1−Fcを100μg/mlで固定化した。流速20μl/minでHBS−EP緩衝液(ビアコア社)を流し同一緩衝液で2、10、50μg/mlに希釈した抗体4種類の結合定数を求めた。結合した抗体は0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で解離しチップを再使用した。得られたデータはビアコア社解析ソフトBIAevaluationを用いて解析し、解離定数(Kd)を算出した。その結果、検討したF997−10−1抗体、F994−7−2抗体、F997−13−1抗体、F997−20−1抗体の4種類の解離定数は表2に示す通りであり、ヒトIL13Rα1に対して十分強い親和性を有していた。
(実施例3) 抗IL13Rα1抗体によるIL13結合阻害
作製した抗体がIL13のIL13レセプターα1への結合を阻害するかを明らかにするため、BIACOREを用いて結合の解析を行った。すなわち、流速20μl/minでNTAチップ(ビアコア社)を350mMのEDTA溶液5μlで処理後500μMのニッケル溶液を5μl添加した。その後、50μg/mlのRecombinant Human IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)を5μl添加し結合させた。続けて50μg/mlの抗IL13Rα1抗体を5μl添加し結合させ、さらに10μg/mlに希釈したヒトIL13(R&D社)を5μl添加しその結合を解析した。また、Recombinant Mouse IL−13Rα1/Fc Chimera(R&D社)、マウスIL13(R&D社)を用いて実施例2でマウスIL13Rα1と結合が見られた抗体を用いて同様にその結合を解析した。その結果、表3に示すようにヒトIL13の結合阻害活性を検討した7種類の抗体では4種類の抗体がヒトIL13とヒトIL13レセプターα1の結合を阻害した。一方、マウスIL13のマウスIL13レセプターα1への結合阻害活性を検討した6種類の抗体ではF997−13−1、F997−10−1、F997−20−1抗体がマウスIL13とマウスIL13レセプターα1の結合を阻害した。表3の%は、コントロール抗体添加時にIL13とIL13レセプターα1が結合したときの値を0%とし、完全に結合が阻害された場合を100%とした測定値を示す。なお、コントロール抗体は、ラットIgGを添加した場合の測定値である。
(実施例4) インビトロアッセイによる中和活性の測定
TF−1細胞は通常10%FBS、RPMI1640、GM−CSF(10ng/ml)で培養し、105から106/mlの範囲で細胞密度を維持した。この細胞を1日GM−CSFを除いた培地で培養し実験に用いた。
10%FBS RPMI1640で実施例1により得られた抗IL−13レセプターα1抗体を終濃度(0.3−10μg/ml)の2倍に調製し、96well plateに100μl/wellずつ分注した後、TF−1細胞を1×105/100μl、2×104/100μl播種した。GM−CSF,IL−4に対する中和活性を測定する場合は抗体の終濃度を10μg/mlとした。37℃CO2インキュベーターで3時間培養し、1×105/100μlずつ播種したplateには20倍濃度に調製したIL−13(2〜2000ng/ml)またはIL−4(2〜2000ng/ml)を10μl/well添加した。2×104/100μlずつ播種したplateには20倍濃度に調製したGM−CSF(0.2〜200ng/ml)を10μl/well添加した。培養48時間後、MTT(3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide;同仁化学)(5mg/mL in PBS)を25μl/well添加し、3時間インキュベートした後、培養上清を除去し溶解液100μl/wellにてフォルマザンを溶解させ、OD570nmを測定した。溶解液は50g SDS(sodium dodecyl sulfate)を400mlの純水で溶解させ、0.1N HClでpH4.7に調製後、400mlのDMF(dimethylformamide)と混合して調製した。各群3例で実施した。
各抗体の中和活性を、IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度として表4にあらわす。IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度は、各抗体濃度におけるIL13のED50を算出し、X軸に−log(Ab);Ab=g/mlで表す抗体濃度、Y軸にlog〔(A)/(Ao)−1〕;A=抗体存在下のED50,Ao=抗体非存在下のED50をプロットし、その回帰直線がy=0となるときのxの値=pA2より、10−pA2(g/mL)として求められる。
F997−13−1、F997−20−1およびF994−7−2については、IL13添加群の具体的な実験結果を図2に、IL4またはGM−CSF添加群の具体的な実験結果を図3および図4に示す。図中、コントロールとは抗体無添加群を表す。
F997−13−1、F997−20−1およびF994−7−2について、IL13による細胞応答に対する阻害活性およびIL4、GM−CSFによる細胞応答に対する阻害活性についてまとめた結果を表5に示す。
図3、図4および表5に示すように、IL4、GM−CSFを増殖刺激として同様の実験をおこなった場合、これらの抗体は10μg/ml添加しても増殖抑制はほとんど認められなかった。すなわち、これらの抗体はIL13による細胞応答は阻害するが、IL4による細胞応答は阻害しないことが示された。
(実施例5) 可溶型IL13レセプターの測定系の作製
[サンドイッチELISA系の作製]
(1)組み合わせが可能な抗体の検索
作製した抗IL13Rα1抗体のうちサンドイッチELISAを作製可能な組み合わせを検索するため、実施例1で作製した各精製抗体をリン酸緩衝液(PBS)で10μg/mLに希釈しイムノプレート(Maxisorb、NUNC)の各ウエルに50μL添加後45℃30分間処理し抗体を固相化した。イオン交換水で洗浄後、0.1%BSAを含むPBSを各ウエルに100μL添加することによりブロッキングを行った。ブロッキング液を廃棄し、次に0.1%BSA/PBSで精製可溶型IL13Rα1−Hisを1、10、100ng/mLに希釈したものを25μL添加した。ブランクには0.1%BSA/PBSを使用した。続いて中根らの過ヨウ素酸法(J.Histochem.Cytochem.22,1084,1974)による調製した各ペルオキシダーゼ標識抗IL13Rα1抗体を10%ウサギ血清、1%ラット血清、0.1%Tween20、0.9%NaClを含むリン酸緩衝液(pH6.4)により3μg/mLに希釈したものを各ウエルに25μL添加した。37℃で2時間反応後、0.05%Tween20を含む0.9%NaClでプレートを5回洗浄し0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定した。その結果、図5に示すようにサンドイッチEIA系が作製可能な抗体の組み合わせとしてF997−13−1抗体固相/F997−17−1標識抗体、F994−7−2抗体固相/F997−20−1標識抗体、F997−18−3抗体固相/F997−8−1標識抗体の3種類の組み合わせが得られた。
(2)サンドイッチELISA系の確立
得られた組み合わせのうちF994−7−2抗体固相/F997−20−1標識抗体を用いて以下のようにサンドイッチELISA系を作製した。精製F997−7−2抗体をPBS(pH6.4)で10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)の各ウエルに50μL添加した。45℃で30分間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)を各ウエルに100μL添加することによりブロッキングを行った。精製ヒトIL13Rα1−Hisをウサギ血清で1.25、2.5、5、10、20、40ng/mlに希釈し標準品を調製した。ブランクはウサギ血清を使用した。プレートのブロッキング剤を廃棄し調製した標準品及びブランクのウサギ血清を25μl分注した。続けて10%ウサギ血清、1%ラット血清、0.1%Tween20、0.9%NaClを含むリン酸緩衝液(pH6.4)により4μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識F997−20−1抗体を25μl分注し、37℃で2時間反応させた。次に、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、0.02%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。図6に作成した標準曲線を示した。標準曲線が示すように高感度で簡便な測定系が実現された。
(実施例6) 血中可溶型IL13レセプターα1の測定
正常人32例(男性24例、女性8例)、アレルギー患者8例について実施例5に記載の測定系を用いて血清測定を行った。また、抗ヒトIgE抗体(F271−15抗体及びペルオキシダーゼ標識F271−15抗体、持田製薬(株))を用いたサンドイッチELISA系により血清中のIgE濃度を測定した。測定結果を図7に示した。また、正常人及びアレルギー患者を血清中のIgE濃度400U/mLをカットオフ値として分類した各群の平均値+/−SDを表6に示した。IgE濃度400U/mL以下(図7では、400以下のように略記する)の正常人の可溶型IL13レセプターα1濃度は12.8+/−3.2ng/mlであり、IgE濃度400U/mL以上の正常人の可溶型IL13レセプターα1濃度11.9+/−2.9ng/mlとの間に差は認められなかった。アレルギー患者ではIgE濃度400U/mL以下の人の可溶型IL13レセプターα1濃度は13.0+/−1.6ng/mlであり、正常人の濃度との間に差は認められなかった。アレルギー患者ではIgE濃度400U/mL以上の人の可溶型IL13レセプターα1濃度16.4+/−4.6ng/mlが他の群と比較して高値傾向を示し、血清中のIgE濃度が上昇しているアレルギー患者では可溶型のIL13レセプターα1濃度も上昇していることが推定された。以上の結果は作製した測定を用いて、血清中の可溶型IL13レセプターα1濃度を測定することがアレルギー患者の病態の把握さらには治療法の選択に有用であることを示すものである。
(実施例7) 抗IL13レセプターα1抗体によるSTAT6のリン酸化抑制
実施例1で作製した2種類の抗体(F997−10−1、F997−13−1)がマウス脾臓単核細胞のIL13レセプターと結合し、IL13刺激下でのSTAT6のリン酸化を抑制するか検討した。まず、Balb/cマウス(オス、8週齢、SLC)より脾臓を摘出し、1000rpmで10分間遠心分離後、単核球細胞から赤血球を除くためTris−NH4溶液(右田俊介他編集、免疫実験操作法、南江堂、p560)に再浮遊し、赤血球を溶血させた。再度1000rpmで10分間遠心分離後、RPMI1640(SIGMA)培地で2回洗浄し、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で再浮遊させ細胞濃度を計測した。細胞濃度を1×106cells/mlに調整し、24穴プレートに各1mlを分注した。続けて、抗IL13R抗体2種類を各々最終濃度0、10、30、100μg/mlになるように添加した。また、ネガティブコントロールとしてラットIgGを最終濃度10μg/mlになるように添加した。室温で30分間静置後、マウス脾臓単核細胞を含む溶液を回収し、5000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。氷上にて沈殿に50μlのフォスファターゼ阻害剤を含むSDS緩衝液(5mMNaVO3、10mMNaF/Tris−SDS−βメルカプトエタノール)を添加し細胞を溶解した。次に50Hzの超音波で15秒間処理し、続けて99℃で5分間熱変性した。更に、15000rpmで5分間遠心分離し、その上清20μlをSDS−PAGE/Western blottingに使用した。上清を還元用電気泳動バッファー(OWL)と等量混合し、e−PAGEL(5〜20%、ATTO)にアプライし、室温にて40mA/ゲルで50分間泳動した。泳動後、ミリポアのマニュアルに従い4℃でPVDF膜(ミリポア)に150mA/ゲルで蛋白を転写し、5%スキムミルク/0.1%Tween20/50mM Tris−HCl/0.9%NaCl(pH7.4)液(以下、TBSと記載する)で室温にて60分間ブロッキングを行った。メンブレンに抗リン酸化STAT6抗体(第一化学、9361S)を抗体希釈液(5%BSA/0.1%Tween20/50mM TBS)で667倍に希釈したものを添加し、4℃で一晩反応させた(一次反応)。翌日、メンブレンを0.1%Tween20/50mM TBSで3回洗浄し、洗浄したメンブレンにペルオキシダーゼ標識抗ウサギイムノグロブリン抗体(DAKO、P0448)を抗体希釈液(5%BSA/0.1%Tween20/50mM TBS)で2000倍に希釈したものを添加し、室温で30分間反応させた(二次反応)。メンブレンを0.1%Tween/50mM TBSで3回洗浄し、ECLキット(アマシャムバイオサイエンス)で発光させ、HyperFilm(アマシャムバイオサイエンス)に露光し現像した。その結果、表7に示すようにF997−10−1抗体、F997−13−1抗体を30、100μg/ml添加時にネガティブコントロール抗体添加に比較して、リン酸化STAT6の強度が低下していることより、F997−10−1抗体、F997−13−1抗体がIL13レセプターと結合し、IL13刺激によるSTAT6のリン酸化を抑制することが示された。
(実施例8) 抗IL13レセプターα1抗体可変領域のCDR配列の決定
実施例1で作製した抗IL13レセプターα1抗体3種類の相補性決定領域(以下、CDRと記載する)を決定した。すなわち、F997−10−1抗体産生ハイブリドーマ、F997−13−1抗体産生ハイブリドーマ、F997−20−1抗体産生ハイブリドーマを実施例1にしたがって培養した。細胞濃度が2×105cells/mlになった段階で培養液各50mlを回収し、ダルベッコ リン酸緩衝液(pH7.4、Sigma)(以下、PBS−と記載する)で洗浄し、回収した細胞よりTRIzol(Invitrogen)を用いてmRNAを抽出した。次に、Superscript First−strand synthesis System(Invitrogen)のマニュアルに従って、mRNAからオリゴdT(Invitrogen)とアンチセンスプライマー(H鎖用:HAS−1(配列番号18)、L鎖用:KAS−1(配列番号19))を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型としてH鎖はHeavy Primer/Heavy Primer2(アマシャムバイオサイエンス)を、L鎖はLight Primer Mix(アマシャムバイオサイエンス)を用いてPCRを行った。PCRはplatinum Taq polymerase(Invitrogen)を用いて、94℃−30秒、55℃−30秒、72℃−1分、30サイクルの条件で行い、PTC−200 Peletier Thermal Cycler(MJ Research)を使用した。増幅されたDNAのバンドを2%アガロースを用いて確認後、PCR産物をスピンカラム(Sigma)を用いて精製した。精製されたPCR産物とpT7BlueTベクター(Novagen)を混和し、Ligation kit verII(TAKARA)を用いて16℃、30分でライゲーション反応を行った。その反応液を用いてコンピテントセルE.coli(JM109、TAKARA)にトランスフォーメーションを行い、X−Gal、IPTGを含むLBプレートに播種し、1晩培養した。出現した白コロニーをピックアップし、Ex Taq polymerase(TAKARA)、U−19mer primer(配列番号21)、T7 promoter primer(配列番号20、Novagen)を用いて、コロニーダイレクトPCRでインサートがベクターに挿入されていることを確認した。次に、インサートが確認されたコロニーをLB培地で一晩培養し、QIAGENplasmid mini kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。精製したプラスミドはU−19mer primer、T7 promoter primerを用いてDYEnamic ET terminator cycle sequencing kit(アマシャムバイオサイエンス)により反応後、シークエンサーABI PRISM3100(アプライドバイオシステムズ)を用いて解析を行った。
F997−10−1抗体、F997−13−1抗体およびF997−20−1抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子配列を配列番号22(F997−10−1重鎖)、配列番号23(F997−10−1軽鎖)、配列番号24(F997−13−1重鎖)、配列番号25(F997−13−1軽鎖)、配列番号26(F997−20−1重鎖)、配列番号27(F997−20−1軽鎖)に示した。また、翻訳したアミノ酸配列を図8および配列番号28(F997−10−1重鎖)、配列番号29(F997−10−1軽鎖)、配列番号30(F997−13−1重鎖)、配列番号31(F997−13−1軽鎖)、配列番号32(F997−20−1重鎖)、配列番号33(F997−20−1軽鎖)に示した。決定したCDR配列を表8に示した。F997−10−1軽鎖可変領域の第3のCDRは塩基配列が未確定である。
(実施例9) ヒト型キメラ抗体の作製
抗原結合活性を有するV領域がF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体由来、すなわちラット抗体由来であり、C領域をヒト由来の抗体(キメラ抗体)を作製することにより、ヒトへの抗原性が少ない抗体を得ることが出来る。V領域のドナーとしては、上記抗体に限定されるものではなく、IL13による細胞応答を阻害する活性を有する本発明の抗IL13レセプターα1抗体であれば、いずれを用いても良い。キメラ抗体は1984年のMorrisonら(Proc,Natl.Acad.Sci.USA,81:6851,1984)の報告以来多くのものが開発されている。
(1)抗体遺伝子のクローニング
ハイブリドーマF997−10−1、ハイブリドーマF997−13−1、またはハイブリドーマF997−20−1を培養し、細胞を調製する。得られた細胞をPBS−(Sigma)で洗浄後、total RNAをIsogene(日本ジーン)を用いて単離精製する。次にOligo−dTプライマーとSuperScript IIsystem(Invitrogen)を用いてcDNAを合成する。重鎖及び軽鎖のアミノ末端のアミノ酸配列に基づきセンスプライマーを合成する。また、重鎖アンチセンスプライマーはフレームワーク4の配列に基づき、軽鎖アンチセンスプライマーはVκ配列に基づき作製する。PCR後、DNA断片をTAクローニングベクター(Invitrogen)に組み込み、シークエンスを解析する。
(2)ラット−ヒト重鎖及び軽鎖発現ベクターの構築
まず、ヒトイムノグロブリンG1のCH1領域のN末端側をコードする塩基配列をセンスプライマーとして合成し、アンチセンスプライマーはヒトイムノグロブリンG1の3’非翻訳領域の配列を含む領域を合成する。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを用いて、HumanSpleen5’−StretchcDNALibrary(クローンテック社製)よりPCR反応によりヒトイムノグロブリンCH領域を増幅する。また、重鎖センスプライマーは上記(1)の重鎖領域をコードする塩基配列とヒトイムノグロブリンG1のCH1領域のN末端側をコードするアミノ酸配列にEcoRIサイトをコードする配列を含むように作製する。アンチセンスプライマーはヒトイムノグロブリンG1のCH3領域のC末端側に位置するアミノ酸配列をコードする塩基配列とBamHIサイトを含むように作製する。これらキメラのプライマーを組み合わせて、ラットVH領域にオリエンテーションが一致するようにヒトイムノグロブリンCH領域を組み込む。得られたPCR産物を制限酵素で消化し、DNA断片を発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に組み込み、ラット−ヒト重鎖発現プラスミドを作製する。同様にヒトのCL領域とラット由来の軽鎖領域を有するキメラ抗体遺伝子を含む発現プラスミドを構築する。
(3)キメラ抗体の作製
形質転換体を作製するため、それぞれの発現プラスミドを制限酵素で切断し、直線化する。次に、ジーンパルサー(BIORAD)等を用いて遺伝子をSP2/O−ag14(ATCC CRL1581)に導入し、培養後上清に産生されるラット−ヒトキメラ抗体の有無により目的の抗体を産生する細胞を選択する。具体的には直線化したDNA断片約20μgを1×107細胞に360V、25μFDのキャパシタンスでエレクトポレーションを行う。次に細胞を96穴プレートに植え込み、2日間培養後、プラスミド断片が組み込まれた細胞を選択するため、10%FCS、1×HT(Invitrogen)、0.2mg/mlG−418を含むD−MEM(Sigma)を添加し、更に2週間培養する。細胞がコンフルエントになった段階で無血清培地(Hybridoma−SFM、Invitrogen)で培養し、培養上清をプロテインAカラム(Prosep−A、ミリポア)で精製し、精製キメラ抗体を得る。
得られたキメラ抗体は実施例2の方法によりIL13レセプターα1結合活性を確認し、実施例4の方法によりIL13による細胞応答を阻害する中和活性を確認する。
(実施例10) ヒト型CDR移植抗体の作製(1)
(1)抗体可変領域のコンピューターモデリング
ヒト化抗体で高い親和性を保持するために、クイーンらの一般的な方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029,1989)に準じてフレームワーク残基の選択を行う。ヒト配列はKabatら(Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.,U.S.Department of Health and Human Services,1991)のカッパ軽鎖及び重鎖配列データベースに基づきラットF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体に高いフレームワーク相同性を有する配列を選択する。さらに、コンピューター解析により最も適したフレームワーク中のアミノ酸の改変を行う。具体的にはコンピュータープログラムENCAD(レビット、J.Mol.Boil.168,595(1983)を用いてF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体可変領域の分子モデルの構築を行う。抗体データベースより得られたヒトEu抗体分子モデル(Stephensら、Immunology 85(4),668−674(1995)にF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体のCDR配列をFR中に移植する。コンピューターモデル上でCDRとFRが本来のヒト抗体モデルとは異なり、有意な接触を示すFR領域で、アミノ酸置換を行うことによりCDRとFRとの接触が改善されると予想される位置についてラット抗体由来のアミノ酸への置換を行う。また、ヒト抗体のデータベース中でその位置においてまれにしか現れないFR中のアミノ酸残基はそれらの位置におけるヒトコンセンサンスアミノ酸に置換する。アミノ酸置換の良否は実際の活性により確認することになるため、アミノ酸置換の異なるタイプの抗体を数種類作製する。
(2)ヒト化抗体の構築
(1)で選択された配列を基に、シグナルペプチド、スプライス供与シグナル及び制限サイト(例えばXbaI)を含むアミノ酸配列をコードする遺伝子を構築する。構築した遺伝子は合成ヌクレオチド(80塩基長程度)のものを数種類オーバーラップするように調製する。すなわち、オリゴを対にしてアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、2本鎖断片を得る。この断片を変性し1本鎖にした後、同様にアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、全長の遺伝子をコードする2本鎖断片を得る。得られる断片をTaqポリメラーゼによるPCRで増幅し、精製後に制限酵素(例えばXbaI)で切断し精製する。精製した断片をヒトγ1遺伝子のCH1エクソンからCH3エクソンまでを含む定常領域遺伝子をXbaI−BamHI断片を有するプラスミドpVg1(Co等、J.Immunol.148:1149(1992)のXbaIサイトに挿入する。同様な操作によりγ4の定常領域遺伝子を含むプラスミドにも挿入可能である。また、置換するアミノ酸の数が少ない場合は部位特異的突然変異導入により作製し、発現プラスミドに導入することも可能である。軽鎖可変領域配列は上記と同様に構築可能である。この場合pVkベクターにはヒトCκ領域を含むものを使用する。
抗体を産生する形質転換体を作製するため、重鎖及び軽鎖プラスミドを制限酵素(pVkプラスミドの場合はBamHI及びFspI)で切断し直線化後、マウスミエローマ細胞SP2/O−Ag14(ATCC CRL1581)中へジーンパルサー(BIORAD)を用いて導入する。具体的には直線化したDNA断片約20μgを1×107細胞に360V、25μFDのキャパシタンスでエレクトポレーションを行う。次に細胞を96穴プレートに植え込み、2日間培養後、プラスミド断片が組み込まれた細胞を選択するため、10%FCS、1×HT(Invitrogen)、0.25mg/mlXanthine、1μg/mlMycophenolic acidを含むD−MEM(Sigma)を添加し、更に2週間培養する。培養後上清にでる抗体により目的とするヒト化F997−10−1抗体、ヒト化F997−13−1抗体、またはヒト化F997−20−1抗体産生株を選択する。すなわち、固相化したIL13レセプターα1と結合する抗体をペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG1またはIgG4抗体で検出する。選択した株はコンフルエントになるまで10%FCSを含む培地で培養し、無血清培地(Hybridoma SFM、Invitrogen)に交換する。培養上清を回収し、プロテインA(Prosep−A、ミリポア)に結合させ、0.1M グリシン塩酸(pH3.0)で溶出する。精製抗体をPBS−(Sigma)で透析し、280nmの吸光度より抗体濃度を算出する(ヒト抗体1mg/mLは1.3の吸光度を示す)。
(3)ヒト化抗体の評価
ヒト化抗体が元のラット抗体と同様な活性を有していることを確認するため、実施例2の方法によりIL13レセプターα1結合活性を確認し、実施例4の方法によりIL13による細胞応答を阻害する中和活性を確認する。
(実施例11) ヒト型CDR移植抗体の作製(2)
ヒト化抗体において移植するCDR配列が活性を有する適切なドメイン構造を維持させるために元のFR領域の配列も合わせて移植する。CDRドメイン構造の維持にどのアミノ酸が関与しているかは、FR中のアミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性、分子サイズ等)から解析し、またコンピューターを用いたモデリングにより行う。すなわち、シリコーングラフィック上で起動するソフトウエアーQUANTA/CHARMmあるいはModeler(モレキュラー・シュミレーションズ)を用いてモデリングを行う。Brookhaven Protein Data Bank(PDB)に登録されているヒト抗体配列よりF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体のVH及びVL領域と相同性の高い抗体の三次元構造を検索し、それに基づきF997−10−1抗体、F997−13−1抗体、またはF997−20−1抗体の三次元構造を推定する。推定三次元構造上で重鎖及び軽鎖のCDRに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第1群)を選出し、更にそれらに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選出する。同様に、CDRに静電的相互作用やファンデルワルツ力等のエネルギー結合により結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第1群)と更にそれらに結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選択する。このようにして選択したFR領域中のアミノ酸群をCDRアミノ酸と併せてヒト抗体配列上に移植するが、Kabat等の分類(Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.,U.S.Department of Health and Human Services,1991)やNCBI(National Center for Biotechnology Information)等より得られるヒト抗体配列の可変領域アミノ酸には存在しないような配列が生じる場合は、そのアミノ酸は移植しない。このようにして得られた情報に基づきヒト抗体配列VH及びVLに移植する配列を決定し、ヒト化抗体作製に用いる遺伝子を構築する。
構築した遺伝子はアマシャムのキット(Oligonucleotide−directed in vitro mutagenesis system version 2)とPCR法を組み合わせる方法、また数種類の長鎖合成ヌクレオチドを組み合わせて増幅する方法、キメラ抗体のVHあるいはVL遺伝子を鋳型に数種類のプライマーを用いて増幅後、さらにそれら増幅遺伝子断片を鋳型として全長遺伝子断片を得る方法により作製する。得られた増幅遺伝子断片を実施例10記載のプラスミドpVg1あるいはVκを含むプラスミドpVkの制限酵素サイトに導入することにより発現プラスミドを調製する。作製したプラスミドは実施例10記載の方法により細胞に導入し、形質転換体を得、同様に精製抗体を作製する。また、同様に抗体の評価を行う。
産業上の利用可能性
IL13は炎症性疾患の病態局所において発現の増大が観察されているため、IL13とIL13レセプターの結合を阻害し、IL13の作用を中和する本発明の抗体は、炎症性疾患の効果的な治療剤となる。IL4とIL13は重複する生理活性を有するが、IL13は病態局所において多く存在し、炎症反応に関与する一方、IL4は抗体産生のクラススイッチや免疫細胞のTh2分化のような恒常的な役割を担っているものと予想される。IL13による細胞応答を選択的に阻害し、IL4による細胞応答は阻害しない本発明の抗体は、IL13の作用を抑制することにより局所炎症反応を抑制するという本来の目的に加えて、IL4の作用の阻害に伴う予期せぬ副作用を抑制することができる。IL13の作用を選択的に阻害する本発明の抗体は、局所炎症反応を副作用なく効率的に抑制できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、抗IL13R(レセプター)α1モノクローナル抗体13種類の特異性を、ヒトIL13Rα1−Fc(図中Fcと記載)、ヒトIL13Rα1−His(図中Hisと記載)、ヒトIgGとの反応性により、ELISA法で測定した結果を示したグラフである。
図2は、IL13刺激TF−1細胞増殖反応に対する抗IL13レセプターα1抗体の中和活性を示す図である。
図3は、抗IL13レセプターα1中和抗体のIL4による細胞応答に対する阻害活性を示す図である。
図4は、抗IL13レセプターα1中和抗体のGM−CSFによる細胞応答に対する阻害活性を示す図である。
図5は、IL13Rα1モノクローナル抗体6種類を用いたサンドイッチELISA系の抗体の組み合わせにより作成した標準曲線を示したグラフである。
図6は、モノクローナル抗体F994−7−2とF997−20−1抗体を用いたサンドイッチELISA系の標準曲線を示したグラフである。
図7は、モノクローナル抗体F994−7−2とF997−20−1抗体を用いたサンドイッチELISA系を用いて正常人、アレルギー患者を測定した血清測定の結果を示したグラフである。
図8は、F997−10−1抗体、F997−13−1抗体およびF997−20−1抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子配列を翻訳したアミノ酸配列を示す図である。図中箱で囲んだ配列はCDR領域を示す。図中Xは塩基配列が未確定のため翻訳できなかったアミノ酸配列を意味する。
Claims (21)
- IL13による細胞応答を阻害する活性を有する抗IL13レセプターα1抗体。
- IL13による細胞応答を阻害する活性を有し、かつIL4による細胞応答は阻害しないことを特徴とする抗IL13レセプターα1抗体。
- 少なくとも10nMの解離定数でIL13レセプターα1と結合する請求項1または請求項2に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- IL13による細胞応答がTF−1細胞の細胞増殖であり、IL13による細胞応答を阻害する活性が下記(a−1)〜(a−3)からなる群より選択される少なくとも1つの活性である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a−1)IL13による細胞応答におけるIL13の用量作用曲線を、2倍高濃度側へシフトさせるのに必要な抗体濃度が、10μg/mL以下である;
(a−2)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答に対するIC50が、10μg/mL以下である;
(a−3)IL13濃度1ng/mL存在下における細胞応答を抗体濃度10μg/mLで50%以上阻害する。 - モノクローナル抗体である請求項1〜4のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- 以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれか1つの重鎖可変領域を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体;
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域;
(c)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域および配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有することを特徴とする重鎖可変領域。 - 軽鎖可変領域として、配列番号4、9および15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第1の相補性決定領域、配列番号5、10および16からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第2の相補性決定領域、および配列番号11および17からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる第3の相補性決定領域を有する軽鎖可変領域を有することを特徴とする請求項6に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体。
- ヒト化抗体である請求項1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- ヒト化抗体が、ヒト型キメラ抗体である請求項9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- ヒト型キメラ抗体が、請求項1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域とヒト抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域とからなるヒト型キメラ抗体である、請求項10に記載の抗体。
- 重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の抗体。
- ヒト化抗体が、ヒト型相補性決定領域移植抗体である請求項9に記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- ヒト型相補性決定領域移植抗体が、請求項1〜7のいずれかに記載の抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域とヒト抗体の重鎖定常領域、軽鎖定常領域およびフレームワーク領域とからなるヒト型相補性決定領域移植抗体である、請求項13に記載の抗体。
- 重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1により産生される抗体の重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域と同じアミノ酸配列を有する、請求項14に記載の抗体。
- ヒト抗体ファージライブラリーまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られるヒト抗体である請求項1〜7のいずれかに記載の抗IL13レセプターα1抗体。
- IL13による細胞応答を阻害する活性を有し請求項1〜8のいずれかに記載の抗体の一部を含有する抗IL13レセプターα1抗体断片。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
- ハイブリドーマF997−20−1、ハイブリドーマF997−13−1またはハイブリドーマF997−10−1。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、被検試料中のIL13レセプターα1を検出する方法。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いて、IL13のIL13レセプター発現細胞に対する作用を阻害する方法。
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