JPWO2003031620A1 - 新規クラスiiサイトカイン受容体 - Google Patents
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Abstract
新規なクラスIIサイトカイン受容体の遺伝子及び蛋白質と、該蛋白質に対する活性調節剤の効率的な評価方法を提供する。配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA及び該DNAにコードされるクラスIIサイトカイン受容体、該DNA配列に対するアンチセンス核酸、該蛋白質の活性調節物質の評価方法。
Description
技術分野
本発明は、新規なクラスIIサイトカイン受容体、該蛋白質をコードするDNA及びその断片、該DNAを含む発現ベクター、該発現ベクターで形質転換された形質転換細胞、該蛋白質若しくはその部分ペプチドに反応性を有する抗体、当該抗体を用いたSJ2368の測定方法、該蛋白質の活性または発現を調節する物質のスクリーニング方法に関する。
背景技術
細胞は他の細胞とコミュニケーションすることによって、細胞の機能や増殖、分化を制御している。サイトカインは細胞間情報伝達を担う一群の糖蛋白質の総称である。サイトカインは細胞膜上に存在するサイトカイン受容体に特異的に結合することにより細胞内のシグナル伝達経路を活性化する。シグナルは核に伝わり遺伝子発現の調節を行い、細胞の増殖、分化、死、機能発現を制御する。
サイトカイン受容体はその構造的特徴から幾つかのファミリーに分類される。クラスIサイトカイン受容体ファミリーにはIL−2、3、4、5、6、7、9、11や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン(GH)など多くのサイトカインの受容体が属する。このファミリーに属する受容体の細胞外ドメインには約200アミノ酸残基からなる特有の配列が認められ、サイトカイン受容体相同性ユニットと呼ばれている。クラスIIサイトカイン受容体ファミリーにはインターフェロン(IFN)α/β受容体、IFNγ受容体、IL−10受容体、IL−20受容体などが属する。このファミリーに属する受容体は細胞外ドメインに3つのトリプトファン、2組のS−S結合よりなるクラスIIサイトカイン受容体モチーフを有する。
クラスIIサイトカイン受容体ファミリーにより認識されるサイトカインとしては、IL−10、19、20、IL−TIF(T細胞由来誘導因子;IL−22)、AK155(IL−26)、MDA−7(メラノーマ分化関連因子−7;IL−24)などのIL−10ファミリーが挙げられる。これらのIL−10ファミリーのうち、IL−TIFはHepG2肝細胞に急性相炎症蛋白質を誘導する活性を有し(Laureら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.97、10144−10149(2000))、IL−20はトランスジェニックマウスの解析から乾癬への関与が示されている(Blumbergら、Cell,Vol.104,9−19(2001))。また、MDA−7は腫瘍細胞に遺伝子導入することにより腫瘍増殖を抑制する(Suら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.95、14400−14405(1998))。このように、新規IL−10ファミリーの病態への関連は急速に明らかになりつつある。
以上のIL−10ファミリーの中でIL−10、IL−20、IL−TIFについては受容体が同定されている一方、IL−19、MDA−7、AK155については受容体蛋白が同定されておらず、IL−10ファミリーを認識する新たなクラスIIサイトカイン受容体の単離同定が望まれている。
発明の開示
本発明は、新規なクラスIIサイトカイン受容体とその遺伝子を同定することにより、炎症性疾患や悪性腫瘍の予防並びに治療に有用な医薬及び方法を提供するものである。
本発明は、新規な遺伝子(sj2368とする)、当該遺伝子にコードされる新規なクラスIIサイトカイン受容体(SJ2368)に関する。また、当該遺伝子を用いて形質転換した宿主細胞、SJ2368の発現を調節するアンチセンス核酸、SJ2368またはその部分ペプチドに対する抗体、当該抗体を用いたSJ2368の測定方法、SJ2368の発現または活性を調節する物質のスクリーニング方法を提供する。
(核酸)
本発明は、SJ2368(後に詳しく述べる)をコードする遺伝子sj2368を提供する。遺伝子sj2368とは具体的には、以下の(A)〜(D)のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNAのことである;(A)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体;(B)配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質;(C)配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体;(D)配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質。配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAの具体例は、配列番号1または配列番号3に示すcDNAである。しかしこれらに限定されるものではなく、配列番号1や配列番号3に示すcDNAのほか該cDNAの由来するゲノムDNAも含まれる。配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質は配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体のスプライシングバリアントである。よって配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNAの配列は、配列番号1または配列番号3に示すcDNAの塩基配列より派生可能である。配列番号20に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号24に示す。配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAの具体例は、配列番号15または配列番号16に示すcDNAである。しかしこれらに限定されるものではなく、配列番号15や配列番号16に示すcDNAのほか該cDNAの由来するゲノムDNAも含まれる。配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質は配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体のスプライシングバリアントである。よって、配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNAの配列は、配列番号15または配列番号16に示すcDNAの塩基配列より派生可能である。配列番号18に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号25に示す。派生可能とは、基となるDNA配列の少なくとも一部分の欠失により得られることをいう。該遺伝子はヒト脾臓やマウス肝臓から単離同定することができるが、本明細書に開示された配列を基に、一般的なハイブリダイゼーション等の遺伝子工学的手法を用いたクローニングやホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製されるDNAであってもよい。その形態としてはcDNA、ゲノムDNAの他、化学合成DNAなどが含まれるが、特に制限はない。本発明のDNAは1本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。また、当該DNAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
また、sj2368の塩基配列が提供されれば、これより導かれるRNAの配列や、相補的なDNAおよびRNAの配列などは一義的に決定されるので、本発明は、本発明のDNAに対応するRNAあるいは本発明のDNAと相補的な配列を有するDNAおよびRNAもまた提供するものと理解すべきである。本明細書中において、「DNA」は「ポリヌクレオチド」と同義である。
さらに、本発明のDNAには、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAをも含むものである。
配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされる蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体であれば、塩基配列のバリエーションが許容される。例えば、いわゆるコドン縮重による同一アミノ酸残基をコードする複数のコドンの存在や、種々の人為的処理例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異・欠失・連結等により、部分的にDNA配列が変化したものであっても、これらDNA変異体が配列番号1または配列番号15に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAであれば、配列番号1または配列番号15に示したDNA配列との相違に関わらず、本発明の範囲内のものである。
配列番号24または配列番号25に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされる蛋白質が可溶型SJ2368蛋白質であれば、塩基配列のバリエーションが許容される。
上記のDNA変異の程度は、配列番号1または配列番号15に記載のDNA配列、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントのDNA配列と70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の同一性を有するものであれば許容範囲内である。DNA配列の同一性の判断には、BLAST(J.Mol.Evol.,36;290−300(1993)、J.Mol.Biol.,215;403−10(1990))を用いることができる。また、ハイブリダイズする程度としては、ストリンジェントな条件下、例えばDIG DNA Labeling kit(ロシュ・ダイアグノスティックス社製 Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、例えば32℃、好ましくは37℃、より好ましくは42℃のDIG Easy Hyb溶液(ロシュ・ダイアグノスティックス社製Cat No.1603558)中でハイブリダイズさせ、例えば50℃、好ましくは65℃の0.5×SSC溶液(0.1%(w/v)SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションで、配列番号1または配列番号15に記載の核酸、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントの核酸にハイブリダイズする程度であればよい。
配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNA、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントのDNAあるいはその部分断片は、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等本発明の蛋白質が関与する疾患の特異的プローブとして有用であると考えられる。
本発明のDNAは、SJ2368を大量に生産するために使用することができる。該DNAはまた、酵素等で標識して、組織における本発明の蛋白質の発現状況を検査するために使用することができる。すなわち、該DNAをプローブとして使用し、細胞における本発明の蛋白質の発現量を、mRNA発現量を指標として確認することにより、本発明の蛋白質の製造に適した細胞やその培養条件を決定することができるほか、本発明の蛋白質が関連する疾患、特に敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等の診断を行うことも可能である。
また、本発明のDNAの一部をプライマーとして使用したPCR−RFLP(Restriction fragment length polymorphism)法、PCR−SSCP(Single strand conformation polymorphism)法、シークエンシング等の方法により、核酸配列上の異常あるいは多型を検査・診断することができる。
また、本発明のDNAを生体内の細胞に導入し、本発明の蛋白質の発現または活性が損なわれていることによる疾患の遺伝子治療にも使用する事ができる。
本発明のDNAは、形質転換細胞の調製、さらには該形質転換細胞を用いた組換え蛋白質SJ2368の生産方法、あるいはSJ2368の発現を特異的に抑制する化合物の探索に大いに有用である。
本発明における形質転換細胞は当業者に公知の技術を適用して調製することが可能であり、例えば、市販されあるいは当業者が一般に入手容易な様々なベクターを利用して、適当な宿主細胞へ本発明のDNAを組み入れることが可能である。その際、遺伝子sj2368をプロモーターやエンハンサーに代表される発現制御遺伝子の影響下におくことで、遺伝子sj2368の宿主細胞内での発現を任意にコントロールすることが可能である。この手法は、形質転換された宿主細胞を用いたSJ2368の生産において好適に用いられる他、遺伝子sj2368の発現制御機構の研究あるいは該遺伝子の発現を調節し得る物質の探索などにも応用することが可能となる。
例えば、任意の被験物質と遺伝子sj2368を含むベクターで形質転換された細胞とを適当な条件下で接触させることで、被験物質の遺伝子sj2368の発現を促進あるいは抑制する作用を有する物質を探索し、あるいは評価を行うことができる。
また、本発明であるDNAと公知の方法とを組み合わせて、マウスまたはその他の適当な動物を基にトランスジェニック動物を作製することが出来る。さらに、本発明の遺伝子sj2368を利用すれば、ヒト以外の動物からsj2368に相当する遺伝子を破壊したいわゆるノックアウト動物を作製することも可能である。このモデル動物の物理学的、生物学的、病理学的及び遺伝子的特徴を分析することにより、本発明に係る遺伝子及び蛋白質の機能を解明することが可能となる。さらに、そのようにして内在性遺伝子が破壊された該動物に本発明のヒトsj2368を導入することにより、ヒトsj2368のみを有するモデル動物を作製することも可能となる。
かかるトランスジェニック動物、特に本発明である遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368を大量に発現しているあるいは逆にこれらを欠いた動物を観察すれば、遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368の機能を特定することが可能となる。さらに、このモデル動物は、該導入されたヒトSJ2368をターゲットとした薬剤の開発、評価に有用である。遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368に特異的に作用しあるいは機能を補完する物質等を、生体レベルで調べることが可能となり、この様にして得た物質は、SJ2368が特異的に機能する生体制御に働く薬物となることが期待される。
(蛋白質SJ2368)
本発明はsj2368にコードされる蛋白質SJ2368を提供する。SJ2368とは、具体的には配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体である。また、SJ2368の別な具体例としては、配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体である。
SJ2368は細胞外ドメインに3つのトリプトファン、2組のS−S結合よりなるクラスIIサイトカイン受容体モチーフを有し、IL−20受容体α鎖、マウスIFNα/β受容体、IL−10受容体と類似性を示すことから、IL−10ファミリーを認識する新規な受容体と推定される。また、細胞内には3つのチロシン残基を有し、リガンド結合によってこれらの部位のいずれかがリン酸化されてJAK−STAT系を活性化し、リン酸化STATが核内移行してシグナルが伝わるものと想定される。また、本発明のクラスIIサイトカイン受容体は、肝臓などの重要な臓器に発現していること、細胞レベルでは末梢白血球、冠状動脈血管内皮細胞、B細胞、T細胞に発現していることから、敗血症などにおける臓器障害や免疫担当細胞のエフェクター機能調節に関与する蛋白質であると理解される。SJ2368のクラスIIサイトカイン受容体としての活性は、例えば実施例6に示す方法で確認することが出来る。
この様に、SJ2368はクラスIIサイトカイン受容体ファミリーに認められる特徴を高度に保持している一方、そのアミノ酸配列全長での相同性は、最も相同性の高いIL−20受容体との間でも21.6%(GENETYX−WIN(Ver4.0.5)Maximum Matching(Software Development Co.,Ltd.)による数値)にとどまる。このことから、SJ2368は、炎症反応の発現あるいは進行において、他のクラスIIサイトカイン受容体分子にはない特徴的な役割を果たしていることが強く推認される。従って、SJ2368を標的とした医薬化合物は、従来にはない特徴を備えた医薬となり得るものと期待される。
なお、クラスIIサイトカイン受容体としての活性を有する蛋白質である限り、配列番号2または配列番号14に示す蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、欠失、および/もしくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質も本発明の範囲内である。
また本発明は、可溶型SJ2368蛋白質を提供する。可溶型SJ2368蛋白質とは、少なくともSJ2368蛋白質の細胞外ドメインの一部を含んでなり、膜貫通型ではない蛋白質のことである。可溶型SJ2368蛋白質の代表例は配列番号20に示すアミノ酸配列からなる蛋白質および配列番号18に示すアミノ酸配列からなる蛋白質である。配列番号20に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はヒトSJ2368のスプライシングバリアントであるヒト可溶型SJ2368蛋白質である。配列番号18に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はマウスSJ2368のスプライシングバリアントであるマウス可溶型SJ2368蛋白質である。他の可溶型SJ2368蛋白質の例としては、細胞表面上に発現したSJ2368蛋白質の細胞外ドメインが切断されることにより生成されるタイプが挙げられる。別の可溶型SJ2368蛋白質の例としては、SJ2368蛋白質の細胞外ドメインの少なくとも一部からなるポリペプチドと、他のポリペプチドからなる融合蛋白質が挙げられる。SJ2368蛋白質の細胞外ドメインの少なくとも一部とは、配列番号2における43番、68番、111番のトリプトファン(W)、74番と82番、195番と217番のシステイン残基のペアといったクラスIIサイトカイン受容体モチーフを含んでいればよく、配列番号2の43〜217アミノ酸残基からなる領域または配列番号14の43〜216アミノ酸残基からなる領域が細胞外ドメインの少なくとも一部の好ましい例である。
また、可溶型SJ2368蛋白質の活性を保持している限り、配列番号20または配列番号18に示す蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、欠失、および/もしくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質も本発明の範囲内である。
蛋白質の構成要素となるアミノ酸残基側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるが、実質的に蛋白質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が知られている。例えば、アミノ酸残基の置換については、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)、等が挙げられる。また、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、Gly、Cysは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有すると考えられる。非荷電極性アミノ酸としては、Ser、Thr、チロシン(Tyr)、Asn、Glnが挙げられる。酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。塩基性アミノ酸としてはLys、Arg、ヒスチジン(His)が挙げられる。また、上述の意味の保存性を損なう場合でも、なおその蛋白質の本質的な機能、本発明においてはクラスIIサイトカイン受容体または可溶型SJ2368蛋白質としての機能を失わない変異も当業者に多く知られている。さらに、異なる生物種間に保存される同種の蛋白質が、幾つかのアミノ酸が集中あるいは分散して欠失あるいは挿入されていてもなお本質的な機能を保持している例も多く認められている。
従って、配列番号2または配列番号14に示したアミノ酸配列上の幾つかのアミノ酸残基の置換、挿入、欠失等による変異蛋白質であっても、その変異蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体としての活性を有する限り、これらは本発明の範囲内にあるものと言うことができる。ここにいうクラスIIサイトカイン受容体の活性とは、(a)リガンドと結合する活性、(b)細胞内シグナル伝達を惹起する活性、の少くとも一つを有することであり、例えば実施例6に示す方法により確認することができる。ここでいう細胞内シグナル伝達とは、具体的にはJAK−STAT系の活性化である。JAK−STAT系の活性化は、STATによる遺伝子発現の活性化あるいはSTATの標的配列への結合により確認できる。STATの標的配列とは、STATが活性化した際に結合するDNA配列のことであり、Fc受容体Iのγ−response region(GRR)が例として挙げられる。幾つかのアミノ酸残基が異なっていても、配列番号2または配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるSJ2368と実質的に同質の機能を有するものは、本発明の範囲内であるといえる。従って、リガンドへの結合能または細胞内シグナル伝達を惹起する活性が性質的に同質であればよく、該活性の強弱の変動、または糖鎖結合の相違などによる該蛋白質の分子量の量的変化などは許容されると解されるべきである。また、SJ2368蛋白質は、以下の(a)および(b)の性質を有し、免疫細胞(特にT細胞)において免疫機能を調節する活性を有するものと考えられる;(a)CD3陽性末梢血単核球、CD4陽性末梢血単核球およびCD8陽性末梢血単核球においてはPMAとイオノマイシンの共刺激により発現が誘導される;(b)CD16陽性末梢血単核球、CD19陽性末梢血単核球およびCD33陽性末梢血単核球の細胞表面上に発現しておらず、これら細胞においてはPMAとイオノマイシンの共刺激によっても発現は誘導されない。
また、配列番号20または配列番号18に示したアミノ酸配列上の幾つかのアミノ酸残基の置換、挿入、欠失等による変異蛋白質であっても、その変異蛋白質が可溶型SJ2368蛋白質としての活性を有する限り、これらは本発明の範囲内にあるものと言うことができる。ここにいう可溶型SJ2368蛋白質の活性とは、以下の(a)〜(c)に記載の少なくとも一つの活性を有することである;(a)T細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生を増強する活性;(b)T細胞のIL−4産生を抑制する活性;(c)混合リンパ球反応においてリンパ球の増殖を抑制する活性。
「増強する活性」あるいは「抑制する活性」とは各測定系において可溶型SJ2368蛋白質存在下と非存在下において測定値に差があることを言う。測定値については用いる系の種類によって適宜定められる。たとえば、下記の式で計算される抑制率あるいは増強率が15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上であることをいう。
抑制率あるいは増強率=(可溶型SJ2368蛋白質無添加群の測定値−可溶型SJ2368蛋白質添加群の測定値)の絶対値/無添加群の測定値×100
T細胞に可溶型SJ2368蛋白質を作用させた場合T細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生が増強されIL−4産生が抑制されるという現象は、SJ2368がTh1分化を誘導した結果であると考えることができる。T細胞のIFN−γ産生を増強する活性、T細胞のIL−4産生を抑制する活性、混合リンパ球反応においてリンパ球の増殖を抑制する活性は、例えば実施例10に示す方法で確認することができる。
可溶型SJ2368は、正常人血清中に8〜18ng/mL(平均値は11.4ng/mL)の濃度で存在すること、肝不全、痴呆、骨粗しょう症、心不全、肺腫瘍および狭心症患者において高値を示す傾向があり、可溶型SJ2368がこれらの疾患と関係していることが明らかになった。
このようなアミノ酸の改変は、遺伝子多型等によって生ずる変異の様に自然界において認められる他、当業者に公知の方法、例えばNTGなどの変異誘発剤を用いた突然変異誘発法や種々の組換え遺伝子手法を用いた部位特異的変異法を利用して、人為的に行うことができる。アミノ酸の変異部位および個数は、変異蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体である限り特に制限はないが、変異個数は通常数十アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、さらに好ましくは1または数個以下である。
また本発明では、SJ2368を上述のような全てのドメイン構造を有する分子全体として理解できるほか、SJ2368が有する機能の少なくとも一つを保持した機能的なドメイン、特にリガンドとの結合能を担うドメインを保持した部分ペプチドとして理解することもできる。膜貫通型蛋白質の中には、リガンド結合部位を含む部分ペプチドが、特徴的な立体構造を保持したまま他のドメインから切り離されるなどして、遊離の(あるいは可溶化とも言われる)部分ペプチドとして存在し得るものがあることが、以前より報告されている。この様な部分ペプチドは、依然として特異的なリガンドとの結合能を保持していることから、これを用いて該蛋白質への結合能を有する化合物の探索が可能となる。このような可溶型SJ2368蛋白質は上述のように実際に存在することが知られており、SJ2368の細胞外ドメインの少なくとも一部を含んでなる部分ペプチドは、上述の可溶型SJ2368と同等の活性を有する限り、実質的には本発明と同等の物質であると理解すべきである。また、SJ2368の部分ペプチドの他の好ましい態様としては、SJ2368の細胞内ドメインを含むペプチドが挙げられる。SJ2368の細胞内ドメインはSJ2368の機能のひとつであるシグナル伝達機能を担っている。よって、シグナル伝達機能を保持している限り、SJ2368の細胞内ドメインを含むペプチドも本発明の範囲内のものである。このような部分ペプチドは、SJ2368のほかのドメイン(例えば膜貫通領域)の全部または一部が連結していても良いし、他の蛋白質やペプチドとの融合蛋白質となっていても良い。ヒトSJ2368の細胞外ドメインは配列番号2に示すアミノ酸配列のN端から225番目までのアミノ酸配列からなる。マウスSJ2368の細胞外ドメインは配列番号14に示すアミノ酸配列のN端から224番目までのアミノ酸配列からなる。この部分にリガンドが結合すると考えられる。またヒトSJ2368の細胞内ドメインは配列番号2に示すアミノ酸配列の253番目からC端までのアミノ酸配列からなる。マウスSJ2368の細胞内ドメインは配列番号14に示すアミノ酸配列の253番目からC端までのアミノ酸配列からなる。この部分で細胞内にシグナルを伝達すると考えられる。ドメインをどこまでのアミノ酸残基で区切るかは、使用するドメインの予想方法(例えばシグナル配列予測プログラムや膜貫通領域の予測プログラムの差異)によって多少前後することがあるが、そのような差異は許容されるべきものである。なお、ドメインとしての活性を保持する限りにおいてアミノ酸配列の改変が許容される。
すなわち、本発明は以下の部分ペプチドを提供する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の21〜225番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(b)(a)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞外ドメイン;
(c)配列番号14に記載のアミノ酸配列の21〜224番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(d)(c)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞外ドメイン;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列の253〜520番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(f)(e)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞内ドメイン;
(g)配列番号14に記載のアミノ酸配列の253〜535番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(h)(g)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞内ドメイン。
これらの部分ペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号1または15に示されるDNAから派生可能である。
SJ2368の細胞外ドメインや該ドメインを含んでなる融合蛋白質、SJ2368の細胞内ドメインを含んでなる融合蛋白質および可溶型SJ2368を含んでなる融合蛋白質も本発明の範囲内のものである。融合蛋白質がSJ2368または可溶型SJ2368の活性の少なくとも一つの活性を有する限りにおいて、連結される他のポリペプチドには特に制限はない。連結されるポリペプチドの例としては、クラスIIサイトカイン受容体ファミリーの細胞外ドメインまたは細胞内ドメイン、イムノグロブリンのFc断片(Fcと記載する場合もある)などが挙げられる。Fc断片はIgGの場合、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域からなる。Fc断片の部分(例えばヒンジ領域、CH2領域、CH3領域もしくはCH4領域の各領域の単独または任意の組合せ)も使用可能である。この場合のイムノグロブリンは、由来する種は何れでもよいが、ヒト由来のものが好ましい。また、クラス及びサブクラスに関しても必ずしも限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgEおよびIgD等の何れもが使用可能であるが、例えば、IgGが好ましい例である。このような融合蛋白質の好ましい一例は、配列番号17に示されるマウスSJ2368細胞外ドメイン−Fcや配列番号19に示されるヒトSJ2368細胞外ドメイン−Fcである。連結されるポリペプチドの他の例としては、IL10受容体のα鎖が挙げられ、IL10受容体のα鎖の細胞外ドメインとSJ2368の細胞内ドメインからなる融合蛋白質の例は配列番号22および配列番号23に示されている。
これらの融合蛋白質をコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。
またシグナル配列を有する蛋白質ではシグナル配列が切断されたものが成熟蛋白として機能している場合もある。よって本発明の蛋白質からシグナル配列が除かれた成熟ペプチドも、実質的には本発明と同等の物質であると理解すべきである。ヒトSJ2368の場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列の8番目から20番目のアミノ酸残基付近にシグナル配列の存在が予測されている。上記に述べた蛋白質は、いわゆる当業者における通常の認識の範囲にある塩の形態であっても差し支えないことは言うまでもない。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドは、該蛋白質の活性を調節する物質の探索に使用することが出来る。探索を通じて得られる化合物等は、本発明の蛋白質が関連する疾患、例えば敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等に対する有効な治療薬または予防薬となることが期待される。
(抗体)
本発明はさらにSJ2368に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、SJ2368全体あるいはその部分ペプチドを抗原として特異的に認識する抗体であり、モノクローナル抗体及び/またはポリクローナル抗体が含まれる。また、免疫グロブリンの構造、物理化学的性質や免疫学的性質として分類される5つのクラス(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、あるいはH鎖のタイプによるサブクラスのいずれに属するものであってもよい。さらに、免疫グロブリンを例えばペプシンで分解したときのF(ab’)2、パパインで分解したときのFabなどのフラグメントであっても、またキメラ抗体やヒト化抗体であってもよい。またSJ2368全体あるいはその部分ペプチドを抗原として特異的に認識するのみでなく、SJ2368の活性を調節する機能を有する抗体も本発明に含まれる。SJ2368の活性を調節する機能を有する抗体とは、SJ2368とリガンドの結合を阻害する中和抗体、SJ2368に結合してホモあるいはヘテロオリゴマー化を阻害する中和抗体やSJ2368に結合し細胞内シグナル伝達を惹起する活性を有するアゴニスト抗体のことである。これらの抗体は、SJ2368の研究的あるいは臨床的な検出等に有用である。
(アンチセンス核酸)
本発明は、生体内において核酸レベルでのSJ2368生合成を抑制することのできる、いわゆるアンチセンス核酸を提供する。かかるアンチセンス核酸は、SJ2368をコードするmRNAを作り出すのに必要なゲノム領域からpre−mRNAへの転写段階、pre−mRNAから成熟mRNAへのプロセッシング段階、核膜通過段階、蛋白への翻訳段階のいずれかで、遺伝子情報を担うDNAもしくはRNAに結合し、遺伝情報の伝達の正常な流れに影響を与えて蛋白質の発現を調節するものを意味し、遺伝子sj2368の核酸配列の全体あるいはいずれかの部分に相補する配列からなるものであってもよい。好ましくは、配列番号1または配列番号3に記載の核酸配列の全部または一部に相当あるいは相補する配列から成る核酸(DNA、RNAを含む)である。別の好ましい例は、配列番号15または配列番号16に記載の核酸配列の全部または一部に相補する配列から成る核酸(DNA、RNAを含む)である。また、ゲノム領域から転写されるmRNAがイントロン構造あるいは5’末端や3’末端に非翻訳領域を含む形であるときは、かかる非翻訳部分の配列に相当あるいは相補するアンチセンス核酸も本発明のアンチセンス核酸と同等の機能を有するものとなろう。
本発明のアンチセンス核酸は、DNAやRNAの他、その立体構造や機能がDNAあるいはRNAと類似する各種誘導体のすべてを含むものである。例えば、3’末端もしくは5’末端に他の物質が結合した核酸、オリゴヌクレオチドの塩基、糖、リン酸の少なくともいずれか1つにおいて置換や修飾が生じた核酸、天然には存在しないような塩基、糖あるいはリン酸を有する核酸、糖−リン酸骨格以外の骨格(バックボーン)を有する核酸等が挙げられる。これらの核酸は、ヌクレアーゼ耐性、組織選択性、細胞透過性、結合力の少なくとも1つが高められた誘導体として好適である。すなわち、SJ2368の活性発現を抑制し得る機能を有する限り、核酸の形態に制限はない。
また本発明では、一般的には、ステム・ループを形成しているmRNAのループ部分にハイブリダイズするような塩基配列、すなわちステム・ループを形成している領域の塩基配列に相補的な塩基配列をもつアンチセンス核酸が好適である。あるいは、翻訳開始コドン付近、リボソーム結合部位、キャッピング部位、スプライス部位に結合するようなアンチセンス核酸、すなわちこれらの部位の配列に相補的な配列を有するアンチセンス核酸も、一般に高い発現抑制効果が期待できる点で好ましい。
この様なアンチセンス核酸を細胞内に取り込ませ、効率的に作用させるためには、本発明のアンチセンス核酸の鎖長は15塩基以上30塩基以下、好ましくは15塩基以上25塩基以下、より好ましくは18塩基以上22塩基以下の塩基数からなる塩基配列からなるものが好適である。
本発明のアンチセンス核酸の発現抑制効果は、公知の手法、例えば本発明の遺伝子の発現制御領域、5’非翻訳領域、翻訳開始部位近傍領域または翻訳領域の一部等を含むDNAとルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した発現プラスミドを作製し、in vitro transcription反応(プロメガ社:Ribo max system等)とin vitro translation反応(プロメガ社:Rabbit Reticulocyte Lysate System等)を併用する系のような本発明の遺伝子が転写または翻訳される環境下で候補物質を系に添加し、該レポーター遺伝子の発現量を測定することにより評価することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、生体内におけるsj2368の発現を抑制することができるので、SJ2368が関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
発明を実施するための最良の形態
(核酸)
本発明のDNAをDNAライブラリーから得る例としては、適当なゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法等でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。ハイブリダイゼーション法によるスクリーニングは、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列もしくはその一部を有するDNAを32P等でラベルしてプローブとし、任意のcDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに対して、公知の方法で(例えば、Maniatis T.等,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring harbor Laboratory,New York,1982年)行うことができる。イムノスクリーニング法で用いる抗体は、後述する本発明の抗体を使用することができる。本発明の新規DNAはまた、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。PCRは、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列をもとに、センスプライマー、アンチセンスプライマーを作製し、任意のDNAライブラリーに対し、公知の方法(例えばMichael A.I.等,PCR Protocols,a Guide to Methods and Applications,Academic Press、1990年参照)等を行って、本発明のDNAを得る事もできる。上記各種方法で使用するDNAライブラリーは、本発明のDNAを有するDNAライブラリーを選択して使用する。当該DNAライブラリーは、本発明のDNAを有するライブラリーであれば、いかなるものも使用可能であり、市販のDNAライブラリーを使用したり、本発明のDNAを有する細胞からDNAライブラリーを作製するのに適した細胞を選び公知の方法(J.Sambrook 等、Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989年参照)に従って、DNAライブラリーを作製し、利用することができる。
また、本明細書に開示された配列を基にホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製することも可能である。
本発明のDNAを含む組換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。かかる組換えベクターは、本発明のDNAの全部または一部に加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサーの配列、プロモーターの配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。本発明の組換えベクターの好ましい一例は、発現ベクターである。
遺伝子組換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明のDNAに付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させあるいは消失させることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、本発明のDNAを基に任意かつ容易に加工することができる。
また本発明のDNAを保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス等の種々のウイルスを用いることも可能であり、特に制限はない。
本発明の遺伝子の発現は、該遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。かかる発現系を用いれば、本発明の遺伝子の転写を促進あるいは抑制する物質の探索がより有利に行える。あるいは、本発明の遺伝子の上流に別の適当な発現プロモーターを該遺伝子固有のプロモーター配列に接続あるいは置き換えて使用することもできる。この場合に使用するプロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター、延長因子1α(Elongation Factor 1α)プロモーター等を例示できるが、当然ながらこれらには限定されない。
DNAをベクターに導入する方法は公知である(J.Sambrook等、Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)。すなわち、DNAとベクターをそれぞれ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片を、DNAリガーゼを用いてライゲーションさせればよい。
(蛋白質)
本発明の蛋白質は、該蛋白質を発現している細胞や組織から調製することができ、またペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー433A型、アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社製)を使用した化学合成法でも、また原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製することができる。しかしながら、その純度の面から遺伝子工学的な手法による生産ならびに組換え型蛋白質が好ましい。
前項の組換えベクターを用いて形質転換させる宿主細胞には特に制限はなく、E.coli、B.subtilisあるいはS.cerevisiaeに代表される遺伝子工学手法において利用可能な下等細胞、昆虫細胞、COS7細胞、CHO細胞、HeLa細胞に代表される動物細胞など多くの細胞が、本発明に対しても利用可能である。
本発明の形質転換細胞は、適当な宿主細胞を本発明の組換えベクターにより形質転換させることで得ることができる。前項の組換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロボレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社、参照)があるが、いずれの方法を用いても構わない。
当該蛋白質を遺伝子工学的に生産するには、上述の形質転換細胞を培養して培養混合物を回収し、当該蛋白質を精製する。形質転換細胞の培養は、一般的な方法で行うことができる。形質転換細胞の培養については各種の成書(例、「微生物実験法」社団法人日本生化学会編、株式会社東京化学同人、1992年)があるので、それらを参考にして行うことができる。
培養混合物から本発明の蛋白質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
また、本発明の蛋白質を他の蛋白質(例、免疫グロブリンのFc断片)やタグ(例、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインA、ヘキサヒスチジンタグ、FLAGタグその他)との融合蛋白質として発現させることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ(例、トロンビン、エンテロカイネースその他)を用いて切り出すことが可能であり、ときとして蛋白質の調製をより有利に行うことが可能となる。また、免疫グロブリンのFc断片を用いた場合などは、二量体形成能を賦与するなど、本発明の蛋白質の活性または機能を向上または修飾することが可能である。本発明の蛋白質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせて行えばよく、特に融合蛋白質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精製法を採用することが好ましい。
また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(J.Sambrook,et al.:Molecular Cloning 2nd ed.(1989年))で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
この様に本発明の蛋白質は、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質の形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本願発明の蛋白質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合など、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。また、用いる宿主によっては糖鎮の付加の有無あるいはその程度にも違いが認められる。かかる場合にあっても、SJ2368としてのリガンドへの結合能または細胞内シグナル伝達を惹起する活性を有する限りにおいて、なお、本発明であると理解されたい。
本発明の蛋白質は、抗体を作製するための抗原として使用し、あるいは該蛋白質に結合する物質や該蛋白の活性を調節する物質のスクリーニングに使用することができ、有用である。
本発明のSJ2368は、上述のような形質転換細胞、特に動物細胞を培養することにより、その細胞表面に目的分子を高発現させることが可能である。一方、SJ2368の細胞外領域タンパクフラグメントなどの適当な断片を可溶性タンパクとして製造する場合には、当該細胞外領域あるいは各ドメインをコードするDNAを用いて上述のように形質転換細胞を調製し、該形質転換細胞を培養し、培養上清中に分泌させることにより製造することができる。
一方、SJ2368が形質転換細胞のペリプラズムまたは細胞質内に存在する場合は、適当な緩衝液に懸濁した細胞に対して、例えば超音波処理、凍結融解処理、あるいはリゾチーム処理などを行って細胞壁および/または細胞膜を破壊した後、遠心分離やろ過などの方法で本発明の蛋白質を含有する膜画分を得、さらに該膜画分を適当な界面活性剤を用いて可溶化して粗溶液を調製する。そして、当該粗溶液から定法により目的蛋白質を単離、精製することができる。
(sj2368遺伝子組換え非ヒト動物)
本発明は、sj2368遺伝子組換え非ヒト動物を提供する。sj2368遺伝子組換え非ヒト動物には、トランスジェニック非ヒト動物およびノックアウト非ヒト動物が含まれる。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の蛋白質をコードする遺伝子を該動物の染色体上に人為的に組み込むことにより、本発明の蛋白質の発現の程度、発現時期、発現部位等が制御されることを特徴とする。非ヒト動物としては、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ウマ、ニワトリなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。非ヒト動物の中でも非ヒト哺乳動物が好ましい。
本発明のsj2368を用いれば、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。このトランスジェニック非ヒト哺乳動物も本願の発明に属する。該トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、トランスジェニック動物の製造において通常使用されるような定法(例、発生工学実験マニュアル、講談社サイエンティフィク発行、勝木元也編、野村達次監修、1987年)に従って作製することができる。すなわち、本発明の遺伝子または組換えベクターを非ヒト動物の全能性細胞に導入し、この細胞を個体へと発生させ、体細胞のゲノム中に導入遺伝子が組み込まれた個体を選別する。
具体的には、例えば、トランスジェニックマウスの場合には、正常C57BL/6マウスから取得した前核期受精卵にsj2368遺伝子が発現可能なように構築されたDNAを直接注入する。より具体的には、適切なプロモーターの下流にsj2368遺伝子を接続して導入したコンストラクトを作製し、その後必要であれば原核生物由来の配列を可能な限り除去した直鎖状DNAを得て、これを前核期受精卵前核に微細なガラス針を用いて直接注入する。
該受精卵を仮親となる別の偽妊娠マウスの子宮に移植する。偽妊娠マウスは一般的にICR雌マウスを、精管を切断または結紮した雄マウスと交配して作製する。移植胚由来の仔の組織よりゲノムDNAを抽出し、PCR法またはサザンブロッティング法にてsj2368遺伝子の導入の有無を確認しトランスジェニックマウスを得る。
また、sj2368(またはsj2368のマウス相同遺伝子)の塩基配列に基づいて、いわゆる「ノックアウトマウス」を作製することができる。本発明における「ノックアウトマウス」とは、本発明のマウス由来のタンパクをコードする内在性遺伝子がノックアウト(不活性化)されたマウスであり、例えば相同組換えを応用したポジティブネガティブセレクション法(米国特許第5,464,764号公報、同5,487,992号公報、同5,627,059号公報、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,8932−8935,1989、Nature,Vol.342,435−438,1989など)を用いて作製することができ、このようなノックアウトマウスも本発明の一態様である。
または、最近中大動物においても核移植によるクローン動物の作出が可能となった。これに伴い本技術を用いたTGおよびKO動物の作出も実際に行われるようになった。すなわち体細胞、あるいは生殖系列の細胞に対しsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)の塩基配列に基づいて、ES細胞に対して行うのと同様に相同組換えを行い、得られた細胞から核を得て、その核を用いてクローン動物を得ることができる。該動物はsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)が失われたノックアウト動物である。または、上述の方法と同様、任意の動物の任意の細胞にsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)遺伝子を導入し、その核を用いてクローン動物を得る事によりTG動物を作製する事も可能である。このようなノックアウト非ヒト動物およびトランスジェニック非ヒト動物はその種に関わらず本発明の一態様である。
(抗体)
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれも公知方法を参考にして得ることができる(例えば、免疫実験操作法、日本免疫学会編、日本免疫学会発行、参照)。
以下に簡単に説明する。
当該新規抗体を得るには、まず動物に、免疫抗原として本発明の蛋白質を必要に応じてフロイントの完全アジュバント(FCA)や不完全アジュバント(FIA)等の適切なアジュバントとともに接種し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血を行い、抗血清を得る。抗原として用いる本発明の蛋白質は、それが抗体の作製に使用しうる精製度のものであればいかなる方法で得られたものであってもよい。本発明の蛋白質の部分ポリペプチドも免疫抗原として好適に使用しうる。免疫抗原として使用するポリペプチドが、低分子のポリペプチド、すなわち約10〜20アミノ酸からなるポリペプチドである場合には、それをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のキャリアと結合させて抗原として使用すればよい。免疫する動物はいかなるものであっても良いが、好ましくは通常当業者で免疫学的な実験に使用されるラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウシ等から、目的の抗体を産生しうる動物種を選択して使用することが好ましい。
ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得る事が出来る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行えば良い。
モノクローナル抗体を得るには以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、ポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等を用いる公知方法によって、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。その後、本発明の蛋白質に結合する抗体を産生しているクローンを選択して培養し、その選択されたクローンの培養上清を精製することによって得れば良い。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて用いれば良い。
また、遺伝子工学的な方法を用いても当該新規抗体が得られる。例えば、本発明蛋白質またはその部分ポリペプチドで免疫した動物の脾細胞、リンパ球あるいは、本発明蛋白質またはその部分ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを採取し、これをもとにcDNAライブラリーを作製する。抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養混合物から目的とする抗体を公知方法を組み合わせて精製することができる。抗体を治療に使用する場合には、免疫原性の点からヒト化抗体が好ましい。ヒト化抗体は、免疫系をヒトのものと入れ替えたマウス(例 Nat.Genet.15;146−156(1997))を免疫することにより調製することが出来る。また、モノクローナル抗体の超可変領域を用いて遺伝子工学的に調製することもできる(Method in Enzymology 203;99−121(1991))。
(アンチセンス核酸)
アンチセンス核酸は、公知方法で製造することができる(例えば、Stanley T.CrookeおよびBernald Lebleu編、in Antisense Research and Applications,CRC出版、フロリダ、1993年)。天然のDNAやRNAであれば、化学合成機を使用して合成し、あるいはsj2368を鋳型としてPCR法により本発明のアンチセンス核酸を得ることができる。また、メチルフォスフォネート型やフォスフォロチオエート型等、誘導体の中には化学合成機(たとえばアプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社製、Expedite Model 8909)を使用して合成できるものもある。この場合には、化学合成機に添付されたマニュアルに従って操作を行い、得られた合成産物を、逆相クロマトグラフィー等を用いたHPLC法により精製することによっても、アンチセンス核酸を得ることができる。
本発明のDNAやアンチセンス核酸を診断用のプローブとして使用する場合には、それらを公知の方法に従い、ラジオアイソトープ、酵素、蛍光物質、あるいは発光物質等で標識する。次に、検体からDNAもしくはmRNAを公知方法で調製し、これを被検物質として、前記標識プローブを加えて反応させた後、洗浄して未反応の前記標識プローブを除去する。被検物質中に、遺伝子sj2368もしくはRNAが含まれていれば、当該アンチセンス核酸はそれらと結合する。結合形成の有無は、標識した酵素、蛍光物質、発光物質、あるいは放射性同位元素等による発光、蛍光、放射能等を指標として知ることができる。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターを医薬用途に使用する場合には、医薬品として使用するのに適した純度のものを、薬理学的に許容されうる使用方法で使用することが好ましい。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターは、それらを直接適当な溶媒に溶解もしくは懸濁して使用してもよいし、リポソーム中に封入したり、適当なベクターに組み込んだ形にして使用してもよい。また、必要に応じて、薬理学的に許容され得る補助成分を添加し、注射剤、錠剤、カプセル剤、点眼剤、クリーム剤、座剤、噴霧剤、パップ剤等適当な剤型にして使用してもよい。薬理学的に許容され得る補助成分とは、溶媒、基剤、安定化剤、防腐剤、溶解剤、賦形剤、緩衝剤等のことである。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターは、上述のような剤型とした場合、患者の年齢や、性別、疾患の種類、程度に応じて、その投与方法、その投与量を設定して使用することができる。すなわち、病態を改善するのに適した量を、経口投与、あるいは、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与すればよい。
(スクリーニング方法)
本発明は、本発明の蛋白質、該蛋白質を発現している形質転換細胞、本発明のDNA、該DNAを含む組換えベクター、該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞またはsj2368遺伝子組換え非ヒト動物を用いることを特徴とし、本発明の蛋白質の機能または発現を調節する物質をスクリーニング方法に関する。より具体的には、(1)候補物質を用意し、本発明の蛋白質または該蛋白質を発現している形質転換細胞に該候補物質を接触させ、該候補物質が本発明の蛋白質の活性を調節する作用を有するかどうかを判定することからなる方法、(2)候補物質を用意し、本発明のDNAを含む組換えベクターまたは該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞に該候補物質を接触させ、該候補物質がsj2368遺伝子の発現を調節する作用を有するかどうかを判定することからなる方法などが挙げられる。(1)の例としては、実施例6に示す系において、候補物質存在下/非存在下における本発明の蛋白質の活性を測定し、非存在下に比べて存在下において本発明の蛋白質の活性を増加または減少させる候補物質を選択する方法が挙げられる。(2)の例としては、sj2368遺伝子の発現制御領域、5’非翻訳領域、翻訳開始部位近傍領域または翻訳領域の一部等を含むDNAとルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した発現プラスミドを作製し、本発明の遺伝子が転写または翻訳される環境下で該レポーター遺伝子の発現量を候補物質の存在下/非存在下で測定し、候補物質の転写促進活性または転写抑制活性を確認する方法が挙げられる。本発明のスクリーニング方法は、本発明の蛋白質、該蛋白質を発現している形質転換細胞、本発明のDNA、該DNAを含む組換えベクター、該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞またはsj2368遺伝子組換え非ヒト動物と候補物質を接触させる工程;候補物質添加群と候補物質無添加群とにおける本発明の蛋白質の活性または本発明のDNAの発現レベルに差があるかどうかを検出する工程;差が認められた候補物質を本発明の蛋白質の活性調節物質または本発明のDNAの発現調節物質として選択する工程を含み得る。本発明の蛋白質の活性を調節する作用を示す物質とは、SJ2368蛋白質および/または可溶型SJ2368蛋白質の活性を増強あるいは阻害する作用を有する物質(アゴニストまたはアンタゴニスト)のいずれでも良いが、好ましくはアンタゴニストである。本発明のDNAの発現調節作用を示す物質とは、遺伝子sj2368の発現を促進あるいは抑制する作用を有する物質のいずれでもよいが、好ましくは抑制する作用を有する物質である。候補物質が本発明の蛋白質の活性調節作用または本発明のDNAの発現調節作用を示すかどうかは、蛋白質の活性を確認できる系またはDNAの発現を確認できる系に候補物質を添加した場合と無添加の場合の蛋白質の活性またはDNAの発現レベルに差があるかどうかを調べればよい。DNAの発現レベルとは、sj2368遺伝子のmRNAの発現強度、蛋白質の発現強度のいずれにより検出しても良い。また、sj2368遺伝子またはSJ2368蛋白質自体の発現レベルではなく、代替としてレポーター遺伝子の発現レベルを検出しても良い。レポーターアッセイ系は、転写調節領域の下流に配置したレポーター遺伝子の発現量を指標として、該転写調節領域に作用する物質をスクリーニングするアッセイ系をいう。転写調節領域としては、プロモーター、エンハンサー、通常プロモーター領域に見られるCAATボックス、TATAボックス等を例示することができる。またレポーター遺伝子としては、CAT(chloramphenicol acetyl transferas)遺伝子、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)遺伝子等を利用することができる。本発明の遺伝子の発現制御領域や5’非翻訳領域は公知の方法で取得することが可能である(新細胞工学実験プロトコール(秀潤社)、1993年)。阻害(または抑制)する作用を有する、あるいは増強(または促進)する作用を有するとは、蛋白質の活性またはDNAの発現レベルの測定値が、候補物質添加群と、候補物質無添加群との間に差があることをいう。たとえば、下記の式で計算される阻害(または抑制)率あるいは増強(または促進)率が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上であることをいう。
阻害(または抑制)率あるいは増強(または促進)率=(候補物質無添加群の測定値−候補物質添加群の測定値)の絶対値/無添加群の測定値×100
ここで、阻害または増強のどちらの活性であるかについて、および測定値については蛋白質の活性を確認できる系またはDNAの発現を確認できる系の種類によって適宜定められる。たとえば、蛋白質の活性を確認できる系が実施例6に示すルシフェラーゼアッセイ系の場合には、測定値としてはルシフェラーゼ活性を用いることができ、候補物質添加群の測定値<候補物質無添加群の測定値となる場合、候補物質にはSJ2368蛋白質活性阻害作用があるといえる。また蛋白質の活性を確認できる系が実施例10に示すT細胞のIFN−γ産生の測定系の場合には、測定値としてはIFN−γ産生量を用いることができ、候補物質添加群の測定値<候補物質無添加群の測定値となる場合、候補物質には可溶型SJ2368蛋白質活性阻害作用があるといえる。測定系にバックグラウンドやノイズの値が含まれる場合には、そのようなものを差し引いた値を測定値とすることは言うまでもない。
上述のスクリーニング方法あるいはトランスジェニック動物を用いた探索を通じて得られる化合物等は、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等に対する有効な治療薬または予防薬となることが期待される。候補物質としては蛋白質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、合成化合物、天然由来化合物、醗酵生成物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられるがこれに限定されず、新規物質でも公知物質でもよい。
<本発明の抗体を用いる測定法、試薬、キット>
本発明は、(1)本発明の抗体を用いることを特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質の測定方法、(2)本発明の抗体を含有すること特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質を測定するための試薬またはキット、(3)ヒト体液中の可溶型SJ2368蛋白質量の増加または減少を測定し、SJ2368の機能異常、それらを伴う疾患または該疾患に付随する病態の予知、検出または診断に用いる(1)に記載の可溶型SJ2368蛋白質の測定方法、(4)前記疾患が肝不全、痴呆、骨粗しょう症、心不全、肺腫瘍および狭心症より選ばれる少なくとも1つの疾患である(3)に記載の測定方法を提供する。
本発明の測定方法は、本発明の抗体を用いるステップを含むが、該ステップは、対象試料中の被験物質である可溶型SJ2368蛋白質と本発明の抗体との抗原抗体反応により、対象試料中の被験物質をトラップする工程であることが好ましい。本発明の測定方法における被験物質の検出原理は特に限定されないが、凝集法、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法等が例示される。この内、サンドイッチ法及び競合法が好ましく、特にサンドイッチ法が好ましい。凝集法では、抗体を粒子、例えばラテックス粒子や赤血球(例えば羊赤血球)の表面に結合させて、可溶型SJ2368蛋白質が存在すると粒子の凝集が生じるようにし、この粒子の凝集の程度を指標として可溶型SJ2368蛋白質を測定する。
なお、この凝集法では、ラテックスや赤血球以外にも、ゼラチンやマイクロビーズ、カーボン粒子等、一般に用いられている粒子を使用することができる。また、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法では、標識された抗体や抗原を使用し、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ケミルミネッセンスイムノアッセイ(化学発光免疫測定法)、フルオロイムノアッセイ(蛍光免疫測定法)、時間分解蛍光免疫測定法(TR−FIA)、イムノクロマトグラフィーアッセイ(ICA)等の原理で測定を行なうことができる。
以下に、本発明の測定方法の好適例の1つである、EIAの原理に基づく、サンドイッチ法、固相直接法、競合法を説明する。EIAによるサンドイッチ法では、まず、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等の酵素で標識した、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体または二次抗体を準備する。特にポリペルオキシダーゼ標識した抗体は好ましい例である。また、使用する固相には、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体を吸着させておく。サンプル(試料)もしくはスタンダードを添加後、上述の酵素標識抗体を添加し、抗原抗体反応を行なわしめる。過剰の酵素標識抗体を洗浄操作で除去した後、使用する酵素に応じた発色基質、例えばオルトフェニレンジアミンとH2O2、p−ニトロフェニルリン酸、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド等を加えて酵素と反応させる。基質の発色は、酵素量、ひいてはサンプル中の可溶型SJ2368蛋白質に依存するので、発色最終産物の量を測定することにより可溶型SJ2368蛋白質を定量することができる。
固相直接法では、サンプル(試料)を直接固相に吸着させ、固相の可溶型SJ2368蛋白質非吸着面を、その測定系には影響しないタンパク質、例えば BSA(ウシ血清アルブミン)などでブロッキング処理し、次いで可溶型SJ2368蛋白質を認識する酵素標識抗体を添加し、反応させる。以降は、サンドイッチ法と同様の操作を行ない、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質の有無を判定するか定量を行う。
競合法では、使用する抗体が認識する一定量の可溶型SJ2368蛋白質を直接固相に吸着させ、次いでブロッキング処理した後、ここに、可溶型SJ2368蛋白質を認識する酵素標識抗体とサンプル(試料)とを添加する。一定時間反応させた後、洗浄して固相に非結合の物質を除去し、発色基質を加えて酵素と反応させる。反応後、サンプル添加による、酵素標識抗体の固相可溶型SJ2368蛋白質への結合阻害度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を定量する。
なお、はじめに抗体を固相に吸着させ、酵素標識した可溶型SJ2368蛋白質をサンプルと同時に添加し、サンプル添加による標識物の固相化抗体への結合阻害度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を定量してもよい。
上記以外の方法として、抗原抗体反応を液相中で行ない、後に、抗体を用いた凝集沈降法もしくは物理化学的な手法によって、標識抗体と結合した可溶型SJ2368蛋白質と結合しなかった可溶型SJ2368蛋白質を分離し定量する方法もある。また、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体を標識するのではなく、その抗体を認識する二次抗体を得、それを標識し、抗原抗体反応を行なわせて、可溶型SJ2368蛋白質を測定することも可能である。
サンドイッチ法、固相直接法、競合法のいずれにおいても、標識酵素−発色基質の組合せを、標識酵素−生物発光基質または化学発光基質、標識酵素−蛍光基質等の組合せに変えることが可能である。この場合の、酵素−発光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−AMPPD、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−ルミノール、ルシフェラーゼ−ルシフェリン等があり、酵素−蛍光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−ウンベリフェリルフォスフェート、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−p−ハイドロキシフェニルプロピオン酸等がある。
さらに、上記3種の測定方法において、酵素に代わって、放射性物質や化学発光物質あるいは蛍光物質で直接あるいは間接的に標識された抗体や抗原を用い、放射能や発光、蛍光の強度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を測定することも可能である。
放射性物質としては、125Iや131I等が一般に使用されており、化学発光物質の代表的な物には、アクリジニウムエステル等がある。また、蛍光強度を測定する場合には、より高感度な方法として、抗体あるいは抗原にキレート剤を直接あるいは間接的に結合させ、励起光照射後にそのキレート剤に結合する希土類金属から発せられる蛍光の強度を時間分解的に測定することにより、試料中の可溶型SJ2368蛋白質を測定する方法(時間分解蛍光免疫測定法)も有用である。なお、代表的な希土類金属の例として、ユーロピウムがあげられる。
本発明の測定方法は、以上説明したように、試料中の可溶型SJ2368蛋白質を検出または測定することを目的としている。この場合、被験試料は動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片があげられるが、体液であることが好ましい。より好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、腹水、胸水より選ばれる試料である。
本発明の測定方法を用いて健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中の可溶型SJ2368蛋白質を測定することができる。また、初めて体液中の可溶型SJ2368蛋白質濃度が明らかとなり、特定の疾患において可溶型SJ2368蛋白質濃度が変動することも明らかとなった。健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中の可溶型SJ2368蛋白質の濃度を比較する際には、当業者が通常用い得る統計学的手法を用いて両者の測定値に差があるか否かを判断すればよい。
なお、本発明の測定試薬及びキットは、上記した測定方法の構成等に準拠することができる。
実施例
以下の実施例により本発明を更に詳述するが、本発明はこれら実施例に限定して理解されるべきものではない。
実施例1 ヒト遺伝子sj2368のクローニング
(1)ヒト脾臓由来cDNAのクローニング
ヒト脾臓由来cDNAライブラリーの構築は、Oharaらの方法(DNA Research、4、pp.53−59(1997))に従った。即ち、具体的にはNotI部位を有するオリゴヌクレオチド(GACTAGTTCTAGATCGCGAGCGGCCGCCC(T)15:配列番号4)(ギブコBRL社)をプライマーとして、ヒト脾臓mRNA(クローンテック社)を鋳型にSuperscriptII逆転写酵素キット(ギブコBRL社)で2本鎖cDNAを合成した。SalI部位を有するアダプター(ギブコBRL社)をcDNAとライゲーションした。その後、NotI消化し、1%濃度の低融点アガロース電気泳動により、3kb以上のDNA断片を精製した。
精製cDNA断片を、SalI−NotI制限酵素処理したpBluescript II SK+プラスミドとライゲーションした。大腸菌 ElectroMax DH10B株(ギブコBRL社)にエレクトロポーレーション法によりこの組換えプラスミドを導入した。次いで、こうして構築したcDNAライブラリーから、約10,000個の組換え体を選択し、これらのクローンの両末端DNA配列を決定した。この中から、新規遺伝子を含む約150個のクローンのcDNAに関して全塩基配列の決定を行った。
配列決定には、株式会社島津製作所製のDNAシーケンサー(RISA)とPEアプライドバイオシステム社製反応キットを使用した。大部分の配列は、ショットガンクローンをダイターミネーター法を用いて決定した。
(2)cDNAクローン塩基配列及びその推定蛋白質情報の解析
(1)に記載の方法で取得したプラスミドsj02368には、配列番号2で表される520個のアミノ酸からなる新規な蛋白質をコードする、配列番号1で表される1560塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレームを含む、全長4519塩基対の塩基配列(配列番号3)からなるcDNAが含まれていた。配列番号1で表される1560塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレームを含むプラスミドsj02368は、国際微生物寄託機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(宛名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2001年9月18日に寄託され、2002年9月17日にブダペスト条約に基づく寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8182)。
(3)cDNAクローン及びその推定蛋白質の相同性解析とモチーフ解析
相同性の検索にはBLAST(J.Mol.Evol.、Vol.36;290−300(1993)、J.Mol.Biol.、Vol.215;403−10(1990))を用いて、局部的な配列の一致を検索した。
配列番号2で表される蛋白質配列を、相同性検索を行うblastpプログラムを用いてGenbank蛋白質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に対しBLAST相同性検索を行った。その結果、312残基にわたりマウスinterferon(alphaand beta)receptor(GenBank Accession: NP_034638)との相同性が37%および同一性が23%、190残基にわたりヒトinterleukin 20 receptor,alpha(Gen Bank Accession: NP_055247)との相同性が39%および同一性が28%みられた。
また、重み行列を用いた膜貫通予測プログラムtmap(Persson B,Argos P.、J Mol Biol.、Vol.237;182−192(1994))により膜貫通ヘリックスの予測をおこなったところ、226番目から252番目のアミノ酸残基の27残基において膜貫通領域が予測され、重み行列を用いたシグナルペプチド切断部位予測プログラムsigcleave(von Heijne G.、Nucleic Acid Research.、Vol.14;4683 − 4690(1986))によりシグナルペプチの予測をおこなったところ、8番目から20番目のアミノ酸残基の13残基においてシグナルペプチドが予測された。
モチーフ解析により、SJ2368の細胞外領域に、43番、68番、111番のトリプトファン(W)、74番と82番、195番と217番のシステイン残基のペアといったクラスIIサイトカイン受容体モチーフが認められた。これらの特徴は、IL−20受容体、IL−10受容体、インターフェロンalpha/beta受容体にも認められる。また、細胞内領域にはJAK−STAT系活性化への関与が予測される3つのチロシン残基が認められた。以上に述べたSJ2368の構造の特徴を第1図に示す。
実施例2 ATAC−PCRを用いた発現プロファイルの解析
Adaptor−tagged competitive PCR(ATAC−PCR)は外部機関へ委託し、Nucleic Acids Research 25;4694−4696の方法に従って行った。また解析に用いたヒトRNAは以下の通りである。ヒト冠状動脈血管内皮細胞(HCAEC;TAKARA社)及びヒト冠状動脈血管平滑筋細胞(CASMC;TAKARA社)から定法によりtotal RNAを抽出し、さらにmRNAを調製した。また、ヒト末梢血由来白血球を50μg/mlのPHA存在下あるいは非存在下で5時間培養した後にtotal RNAを定法により抽出し、mRNAを調製した。さらにヒトの肺、膵臓、心臓、副腎、精巣、胎児肝臓、胎児腎臓、脳のmRNAおよび腎臓、肝臓、小腸、胸腺、脾臓のtotal RNAをCLONTECH社より購入し、total RNAで購入したものはmRNAを調製した。大腸のmRNAはSTRATAGENE社より購入した。次に、これら各mRNA0.12μgよりオリゴdTプライマーを用いて1本鎖cDNAの合成を定法に従って行った。逆転写酵素としてはSuperScriptIIRNase H− Reverse Transcriptase(Invitrogen社)を用いた。また、PCRに用いたsj2368特異的なプライマーの配列は5’−AAG CTA TGT CAG AAA TTA AAC TC−3’(配列番号5)である。解析した結果、sj2368は末梢白血球、胎児肝臓、脳で強く発現し、HCAEC、胎児腎臓、肝臓、CASMCで弱く発現していた。
実施例3 ヒトSJ2368の発現
実施例1で得られたプラスミド、sj02368より翻訳領域を含むcDNA配列を調製し、哺乳動物細胞発現プラスミドに定法に従って挿入し、ヒトSJ2368発現プラスミドを構築する。その後、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlを上記プラスミドDNA12.5μgと添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加することによりヒトSJ2368を発現することができる。すなわち、実施例1で得られたsj02368を制限酵素で消化し、翻訳領域を含むcDNA断片を調製した。このDNA断片を別途調製した哺乳動物細胞発現ベクターとライゲーションし、コンピテントセルJM109(タカラバイオ株式会社)を形質転換した。得られたコロニーよりプラスミドを調製した後に、cDNA配列の確認を行い、SJ2368発現プラスミドを得た。
実施例4 可溶型ヒトSJ2368の発現
抗体作製用の投与抗原として用いるため、ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒスチジンタグあるいはヒトIgG Fcフラグメントとのキメラ(融合)蛋白質を生産した。ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒスチジンタグのキメラ蛋白質であるヒトSJ2368−Hisの発現プラスミドは以下の方法にて構築した。即ち、センスプライマー1(5’−CCG CTC GAG CAG GAA GGC CAT GGC GGG GCC CGA G−3’:配列番号6)とアンチセンスプライマー1(5’−CGC GGA TCC GGC TTC TGG GAC CTC CAG CAA GAA−3’:配列番号7)を合成し、実施例1で取得したプラスミドsj02368を鋳型にPyrobest DNA Polymerase(TAKARA)により98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを30回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をXhoI及びBamHIにて消化し、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した。またpcDNA3.1/Myc−His(−)AをXhoI及びBamHIにて消化し、前述のDNA断片をライゲーションした。コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いヒトSJ2368−His発現プラスミドを調製した。ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントのキメラ蛋白質であるヒトSJ2368−Fcの発現プラスミドは以下の方法で構築した。センスプライマー2(5’−CCG GAA TTC AGG AAG GCC ATG GCG GGG CCC GAG C−3’:配列番号8)を合成し、アンチセンスプライマー1を用い、sj02368を鋳型にPyrobest DNA Polymerase(TAKARA)により98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを30回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をEcoRI及びBamHIにて消化し、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した。
また再公表WO97/42319に記載のPM1304をEcoRIおよびKpnIにて消化した後に、約7.1kbの断片を回収した。次にpM1304をBamHIとKpnIにてダブルダイジェスチョンして、0.7kbのDNA断片を回収した。これら2種のDNA断片と、前述のDNA断片をライゲーションした。コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いヒトSJ2368−Fc発現プラスミドを調製した。この構築で得られるヒトSJ2368−Fc蛋白質のアミノ酸配列は配列番号19に示すとおりである。得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlと上記各プラスミドDNA12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。培養上清中に含まれるヒトSJ2368−His及びヒトSJ2368−FcをSDS−PAGE実施後、抗ヒスチジンタグ抗体(Penta・His Antibody;QIAGENおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体;DAKO)あるいは抗Fc抗体(パーオキシダーゼ標識抗ヒトIgA,IgG,IgM,Kappa,Lambda抗体;DAKO)を用いてウエスタンブロッティングにて検出を行った(第3図)。ヒトSJ2368−His及びヒトSJ2368−Fcが培養上清中に発現されていることが確認された。
さらにヒトSJ2368−Hisはニッケルカラムを用いて培養上清より精製し、ヒトSJ2368−FcはProteinAカラムを用いて精製した。
実施例5 抗SJ2368抗体の作製
(1)SJ2368の部分ペプチドの調製
SJ2368に対する抗体を作製するため、SJ2368の細胞外ドメインのN末端及びC末端の配列あるいはChou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析を行い、親水性が高く構造的にはαヘリックスを含むなどタンパク表面に露出しているであろう配列を選び出し、合成を行う。ペプチドの合成はModel 433Aペプチドシンセサイザー(アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社)を用いて、キャリア蛋白と結合できるようにするため、C端にシステインを付加し合成する。定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPDELL−PAK、資生堂)を用いて精製を行う。
(2)SJ2368のペプチド免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mlに溶解し、10mg/mlのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合を行う。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(アマシャム ファルマシアバイオテク)で脱塩する。蛋白濃度は使用したKLH量を液量で割ったものを用い、算出する。
(3)SJ2368抗体の作製
(3−1)ポリクローナル抗体の作製
SJ2368に対するウサギポリクローナル抗体を作製するため、調製した各ペプチド抗原をそれぞれ各40μgずつ混合し、0.5mlとする。その後、等量のフロインド完全アジュバント(DIFCO)と混合し、ウサギの背部皮下に投与を行う。2週間後、同量をフロインド不完全アジュバント(DIFCO)と混合したものを投与し、2週間後耳静脈より採血し抗血清を調製する。同様に実施例4で産生および精製したSJ2368−Fcを30μg/bodyで投与し、抗血清を作製する。
(3−2)ペプチド抗体の作製
調製した各ペプチドキャリア抗原20μgを100μlの生理食塩水に溶解し、フロインド完全アジュバントと等量混合を行う。BALB/cマウス5週齢メスの腹腔に投与し、2週間後ペプチドキャリア抗原20μgを100μlの生理食塩水に溶解し、フロインド不完全アジュバントと等量混合し同様に腹腔に投与する。1週間後眼底より採血を行い、抗体価の上昇をウエスタンブロッティングにより確認する。すなわち組換えSJ2368蛋白質を4−20%SDS−ポリアクリルアミドゲル(TEFCO)にて電気泳動し、ミリポア社の方法にしたがってPVDF膜に転写する。転写後5%スキンミルク、0.05%Tween20を含む0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下T−PBSと記載)にてブロッキングを行う。採血した抗血清を0.5%BSAを含むT−PBSで500倍に希釈し、転写したPVDF膜と4℃で一夜反応させる。メンブレンをT−PBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO)を0.5%BSAを含むT−PBSで500倍に希釈し、メンブレンと室温で1時間反応させる。その後、メンブレンをT−PBSで3回洗浄後、ECL(アマシャム ファルマシアバイオテク)で検出する。以上の操作で抗体価の上昇を確認し、抗原の最終投与3日後、脾細胞よりリンパ球を分離し、Sp2/O−Ag14(ATCC No. CRL1581)と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社)にしたがって細胞融合を行う。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後に目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行う。
0.01M炭緩衝液(pH9.5)を用い、実施例4で生産及び精製するSJ2368−Hisを1μg/mlに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μl/ウエル添加する。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.5%BSAを含む0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下PBSと記載)を各ウエルに100μl添加し、ブロッキングを行う。次に培養上清を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄する。ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体を10%ウサギ血清を含むPBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μl添加した。37℃で1時間反応後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し0.01%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加する。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止する。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定する。この結果をもとに、SJ2368と反応する細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行う。10日後、同様にスクリーニングを行い、SJ2368と反応する抗体を産生するクローンを取得することができる。選択したハイブリドーマは10%FCS/RPMI1640培地(Invitrogen)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)で培養し抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製する。
(3−3)抗SJ2368モノクローナル抗体の作製
BALB/cマウス(メス、6週令)の腹腔に精製したSJ2368−Fc蛋白質20μgをフロインド完全アジュバントと等量混合して投与する。初回投与2週間後に抗原20μgを生理食塩水に溶解し、フロインド不完全アジュバントと等量混合後腹腔に投与する。さらに1週間後、抗体価の上昇を上記(3−2)記載の方法により確認し、最終投与を行う。マウスの腹腔に抗原100μgを投与し、3日後、脾臓を摘出する。脾臓よりリンパ球を分離し、P3×63−Ag.8.U・1と10:1で混合し、ポリエチレングリコールを用いて細胞融合を行う。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行う。(3−2)に記載の方法により抗SJ2368抗体産生ウエルのスクリーニングを行い、SJ2368−Hisと反応したウエルを限界希釈法によりクローニングし、再度スクリーニングを行って抗SJ2368モノクローナル抗体を取得することができる。
ハイブリドーマを10%FCS/RPMI1640培地(Invitrogen)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)で培養し、抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製する。
実施例6 SJ2368の活性測定
SJ2368の生物活性は以下に示す活性測定系によって観察できる。これらの方法は、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起するIL−10ファミリーその他の物質の探索・同定に有用であるのみならず、SJ2368の生物活性を阻害する物質、例えば中和抗体などの、医薬品候補物質の発見にも有用である。
(1)ルシフェラーゼアッセイ
IL−10ファミリーに属するサイトカインとSJ2368の結合に基づく活性測定は、例えばLaureらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.97、10144−10149(2000))のように、適当な細胞を用いた活性化STAT類に反応するリポータージーンアッセイで検討できる。用いる細胞は、SJ2368を発現している培養細胞、HepG2やHEK293が良い。あるいはsj2368遺伝子を適当な方法で遺伝子導入した細胞であっても良い。サイミジンキナーゼ(TK)プロモーターでコントロールされたホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に、5コピーのGRR配列を含む遺伝子コンストラクトを作製し(pGRR5リポーター)、内部標準として、TKプロモーターでコントロールされたウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を含むpRL−TKベクター(Promega社)を用いる。この15μgのpGRR5リポーターと1μgのpRL−TKを、106個のHepG2細胞に、74Ω、1200μFにて遺伝子導入する。この細胞を24ウェルプレートの各ウェルに42000細胞ずつ播種し、1時間後に目的のIL−10ファミリーないしIL−10ファミリーを含む培養上清を添加する。2時間後、Promega社のDual−Luciferase Reporter Assay System kitを用いて、ルシフェラーゼ活性の上昇を観察する。対照の試験として、ヒトIL−6300U/ml添加時の活性上昇と抗IL−6中和抗体や抗gp130中和抗体によるIL−6活性の上昇阻害を同時に実施することが望ましい。なお、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起するための精製サイトカインの代わりとして、サイトカイン遺伝子を導入した細胞の培養上清、腫瘍細胞の培養上清、エンドトキシンで活性化した末梢血白血球の培養上清などを用いる場合は、陰性対照としてサイトカイン遺伝子導入に用いたベクターのみを導入した細胞の培養上清(mock)や非刺激時の培養上清には活性が無いことを確認することが望ましい。SJ2368を介した特異的な作用であることの確認は、SJ2368−Fcによる中和実験や、HepG2細胞にSJ2368の細胞内チロシン残基をアラニンに変換したドミナントネガティブ体を導入する中和実験によって実施することが出来る。
(2)ゲルシフトアッセイ
SJ2368がいずれのSTAT類を活性化するかは、ゲルシフトアッセイにて検討できる(Demoulinら、Mol.Cell.Biol.Vol.16,P4710−4716、1996)。即ち、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起した細胞の核抽出物を調製し、Fc受容体Iのγ−response region(GRR)に対応する32P標識オリゴDNA(5’−ATGTATTTCCCAGAAA−3’:配列番号10と5’−CCTTTTCTGGGAAATAC−3’:配列番号9とからなる二本鎖DNA)との結合を観察する。電気泳動上のスーパーシフトを抗STAT1抗体、抗STAT3抗体などを0.75〜1μg/レーン添加により観察し、オリゴDNAと結合するSTAT類を同定することが出来る。
(3)(1)および(2)の試験に用い得るIL−10ファミリーの調製法
既に遺伝子が同定されているIL−10ファミリーは、上記1に述べたようにサイトカインそのもの、またはFLAGタグ、Fcフラグメント、ヘキサヒスチジンタグなどの融合蛋白質として、適当な細胞に遺伝子導入して発現、精製する事が出来る。この他に、IL−19は末梢血単球をエンドトキシンないし顆粒球・単球コロニー刺激因子で4〜24時間刺激した培養上清中に得られる(Gallagherら、Genes Immun.Vol.7、P442−450、(2000))。また、IL−TIFは末梢血T細胞を抗CD3抗体とコンカナバリンAで6〜24時間刺激した培養上清、或いはIL−9で6〜24時間刺激で刺激した培養上清中に得られる(Xieら、J.Biol.Chem.Vol.275、No.40、P31335−31339、(2000))。
実施例7 マウスsj2368遺伝子のクローニング
(1)5’側配列のin silicoクローニング
相同性検索プログラムsim4を用いて、ヒトsj2368遺伝子のcDNA配列(配列番号3)のヒトゲノム(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/genbank/genomes/H−sapiens/hs_phase * .fna.gz、但し*は0、1、2または3)に対するマッピングを行った。その結果、第4図に示すように、ヒトsj2368遺伝子は7つのエクソンによって構成されていた。このゲノム構造はIL10Rファミリーの遺伝子と同様の構造であった(一例としてIL10Rα鎖のゲノム構造を第5図に示す)。次に、マウスホモログ遺伝子を得るために、ヒトsj2368遺伝子のcDNA配列(配列番号3)をマウスゲノム配列(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/pub/TraceDB/mus_musculus/)に対してBLAST検索を行った。その結果、局所に高い相同性を持つ配列が多数確認されたが、得られた配列について詳細に解析した結果、リピート配列が確認され、擬陽性の可能性が考えられた。このリピート配列はsj2368の3’非翻訳領域である3800−4100bp付近に当たるため、この領域をマスクして、再度マウスゲノム配列を検索した。その結果、G10P642115RE8.T0とG10P625411RB5.T0の2つのホールショットガンシーケンス(WGS)が検出された。これらの配列はそれぞれエクソン4、エクソン5の領域に相当していたが、他のエクソン領域の配列を得るために、これらのマウスエクソン配列を問い合わせ配列としてマウスESTデータベース(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/db/est_mouse.Z)を検索した。その結果、1番目のエクソンから5番目のエクソンまでをカバーするBI104593が検出された(ヒトsj2368ゲノム配列とマウスゲノムおよびEST配列の位置関係を第6図にまとめる)。
(2)5’側配列のRT−PCRクローニング
実施例7(1)の結果をもとに、PCRプライマーを設計してマウスsj2368の5’側cDNAをRT−PCRクローニングした。即ち、センスプライマーmS1(5’−GGC CCC AGG ATC GAA ATG TG−3’)及びアンチセンスプライマーmA1(5’−CTG GAG CCT CTA GGA AGA TG−3’)を設計し、BALB/cマウスの肝臓由来のtotal RNAを鋳型にRT−PCRを行った。さらにアンチセンスプライマーmA2(5’−CAG CTG GGC TCA GAG AAC TG−3’)を設計し、上記RT−PCR産物を鋳型に、mS1とmA2をプライマーとして再度PCRを行った。得られた約0.7kbの断片をアガロース電気泳動によって回収した後、DNA断片の5’末端をリン酸化し、pBluescriptIISK(+)のEcoRVに挿入し、マウスsj2368の5’側cDNA配列を持つプラスミド(No.3−1/pBluescriptIISK+)を得た。得られたプラスミドには配列番号11に示す661bpのマウスcDNAが含まれていた。
(3)3’側配列in silicoクローニング
マウスsj2368遺伝子の3’側をクローニングするために、ヒトsj2368のエクソン6から翻訳停止コドン付近までの約3.8kbの配列を用い、再度マウスゲノム配列及びマウスEST配列をBLAST検索した。その結果、マウスゲノム(Mse40095−347f04.q1c、jtx06h08.b1、G10P665193FF5.T0)、マウスEST(BI657668及びBB716537)で高い相同性が確認され、マウスsj2368遺伝子の3’端側がクローニングされた(ヒトsj2368ゲノム配列と検出されたマウスゲノムおよびEST配列の位置関係を第7図にまとめる)。
(4)3’側配列のRT−PCRクローニング
実施例7(3)の結果をもとに、PCRプライマーを設計してマウスsj2368の3’側cDNAをRT−PCRクローニングした。即ち、終止コドン配列を含むアンチセンスプライマーmA4(5’−CCG GCC AGC TCA CCT GAC CA−3’)を設計し、実施例7(1)記載のセンスプライマーmS1を用いて、BALB/cマウスの肝臓由来のtotal RNAを鋳型にRT−PCRを行った。さらにセンスプライマーmS3(5’−CAG TTC TCT GAG CCC AGC TG−3’)、センスプライマーmS5(5’−ATG CCG TCG CTG GAA CTG AA−3’)及びアンチセンスプライマーmA5(5’−TCA CCT GAC CAA GTA ATC TC−3’)を設計し、上記RT−PCR産物を鋳型に、mS3/mA5あるいはmS5/mA5のプライマーセットでPCRを行った。得られた約約1.0kbあるいは約1.2kbの断片をアガロース電気泳動によって回収し、DNA断片の5’末端をリン酸化した後に、pBluescriptIISK(+)のEcoRVに挿入し、クローン化した(それぞれS3#2/pBluescriptIISK+あるいはS5#1/pBluescriptIISK+)。得られたクローンは配列番号12あるいは13に示す981bpあるいは1161bpのマウスcDNAを含んでいた。また、S3#2/pBluescriptIISK+とS5#1/pBluescriptIISK+の塩基配列を比較した結果、S5#1/pBluescriptIISK+ではS3#2/pBluescriptIISK+の配列番号12における41番目から91番目までの51塩基が欠失していた。以上の結果及び実施例7(2)の結果よりマウスsj2368のcDNA配列は、配列番号14で示される535アミノ酸をコードする配列番号15で示される1605bpのオープンリーディングフレームを含む、配列番号16で示される全長1622bpよりなることがわかった。ヒトSJ2368とマウスSJ2368の間の相同性はGENETYX−WIN:Maximum Matchingによって調べた結果、約59%の同一性であった(配列比較は第8図参照)。
(5)マウスsj2368のゲノム構造
実施例7(4)でクローニングしたマウスsj2368のゲノム構造を調べた。即ち、マウスsj2368のcDNA配列(配列番号16)を用い、sim4によってマウスゲノム配列(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ensembl.org/pub/assembly/mouse/)に対してマッピングを行った。その結果、マウスsj2368遺伝子は7つのエクソンより構成されていていることが明らかになった。また、ヒトsj2368のゲノム構造に比べると、イントロンの長さがやや異なるが、エクソンの大きさや数及びその構造においてヒトとマウス間で非常に良く似ていた(第9図)。また、エクソンの繋ぎ目を第8図に示すが、実施例7(4)で得られた51bp欠失体は、イントロン5の3’末端が51bp下流にずれて認識されているために生じるalternative splicingであることが確認できた。また、この欠失領域は膜貫通ドメインをコードしている領域であるため、splicing variant蛋白質は細胞外に分泌される可能性が考えられた。このsplicing variant蛋白質(マウスSJ2368del)のアミノ酸配列を配列番号18に示す。
(6)マウスSJ2368発現プラスミドの構築
マウスSJ2368del発現プラスミドは以下の方法で構築した。即ち、No.3−1/pBluescriptIISK+をEcoRI消化し、約0.5kbのDNA断片を回収した。また、S5#1/pBluescriptIISK+をEcoRI消化し、約4.1kbのDNA断片を回収した後に、5’末端を脱リン酸化処理し、先の約0.5kb断片を挿入した。得られたプラスミドをEcoRIとSphIあるいはSphIとKpnIでそれぞれdouble digestionして、約0.5kbあるいは約1.2kbのDNA断片を回収し、哺乳細胞発現ベクターのEcoRI/KpnIサイトに3−way ligationによって挿入した。
また、マウスSJ2368全長発現プラスミドは以下の方法で構築した。まず、センスプライマーmS6(5’−GTT CAA AGG ACG AGT ACA GG−3’)、センスプライマーmS7(5’−CTC TGA GCC CAG CTG CAT CTT CCT AGA GGC−3’)、アンチセンスプライマーmA8(5’−GCC TCT AGG AAG ATG CAG CTG GGC TCA GAG−3’)及びアンチセンスプライマーmA10(5’−TGT CAC CGT CGT CAT CGT AG−3’)を設計した。次にNo.3−1/pBluescriptIISK+を鋳型に、mS1/mA8のプライマーセットでPCRを行い、約0.7kbの増幅断片を回収した。一方、S3#2/pBluescriptIISK+を鋳型にmS7/mA5のプライマーセットで同様にPCRを行い、約1.0kbの増幅断片を回収した。さらに、これら2種の増幅断片のmixtureを鋳型として、mS6/mA10プライマーセットでPCRを行い、約0.7kbの増幅断片を得た。この断片をSphIとScaIでダブルダイジェスチョンし、約0.5kbのDNA断片を回収した。また、pCGmsj2368(del)をSphIとPstIあるいはScaIとPstでそれぞれダブルダイジェスチョンし、約4.7kbあるいは約1.2kbのDNA断片を回収した。次にこれら2種のDNA断片と、PCR増幅断片を酵素消化して得られた約0.5kbの断片を3−way ligationして、msj2368全長発現プラスミドpCGmsj2368を得た。このプラスミドは国際微生物寄託機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(宛名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年7月9日に寄託され、2002年9月25日にブダペスト条約に基づく寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8195)。
実施例8 可溶型マウスSJ2368の発現
マウスSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントとのキメラ(融合)蛋白質を生産した。マウスSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントのキメラ蛋白質であるマウスSJ2368−Fc(アミノ酸配列を配列番号17に示す)の発現プラスミドは以下の方法で構築した。アンチセンスプライマーmA9B(5’−CGC GGA TCC GTC CCC TGG AGC CTC TAG GAA−3’)を合成し、センスプライマーmS1を用い、S5#1/pBluescriptIISK+を鋳型にPyrobest DNA Polymeraseにより98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを25回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をBamHIにて消化し、5’末端をリン酸化した後に、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した(DNA断片A)。また、再公表WO97/42319に記載のpM1304をEcoRIで消化した後に、DNA Blunting Kitを用いて末端平滑化した。さらに、KpnIにて消化した後に、約7.0kbの断片を回収した(DNA断片B)。次にpM1304をBamHIとKpnIにてダブルダイジェスチョンして、約0.7kbのDNA断片を回収した(DNA断片C)。これら3種(DNA断片A、B及びC)を3−way ligationし、コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いマウスSJ2368−Fc発現プラスミドを調製した。得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6 50μlと上記マウスSJ2368−Fc発現プラスミド12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。培養上清中に含まれるMSJ2368−FcをSDS−PAGE実施後、抗ヒトFc抗体(パーオキシダーゼ標識抗ヒトIgA,IgG,IgM,Kappa,Lambda抗体;DAKO)を用いてウエスタンブロッティングにて検出を行った(第10図)。培養上清中にマウスSJ2368−Fcが発現されていることが確認された。
つづいてマウスSJ2368−Fcの大量調製を行った。セルファクトリー10(Nunc)にセミコンフルエントにCOS細胞を増殖させ、FuGENE6を用いて上述のマウスSJ2368−Fc発現プラスミドを導入した。3日間培養を続けた後に培養上清を回収し、上清中に発現されるマウスSJ2368−FcをHiTrap rProtein A FF columns(アマシャム バイオサイエンス株式会社)を用いて精製した。
実施例9 ヒトsj2368スプライシングバリアントの検索
実施例7−(4)に記載した通り、マウスsj2368においては、膜貫通ドメインをコードする51bpを欠失したスプライシングバリアントがクローニングされた。ヒトsj2368についてスプライシングバリアントが存在するか確認した。即ち、実施例2でsj2368の発現が確認された、肝臓、脳、PBL、胎児肝及び胎児腎由来のcDNA(Human MTC Panel I及びII、Human Fetal MTC Panel;クローンテックカンパニー)を鋳型にPCRを行った。まず、アンチセンスプライマー2(5’−CGG GGT ACC TTG CAA AGG CAG CAG CAG−3’)を設計し、実施例4に記載のセンスプライマー1を用いてplatinum taq DNA polymerase(Invitrogen社)によりPCR反応を行った。反応条件は94℃で2分加温して反応を開始した後に、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを35回繰り返した。さらにセンスプライマー3(5’−CCT GCT GCA GGC CGC TCC AG−3’)及びアンチセンスプライマー3(5’−GCA TCG CTG TCC TCA ATT TC−3’)を設計し、上記PCR反応液を鋳型に同条件でPCRを行った。得られた約1.4kbのフラグメントをpBluescriptIISK(+)に組み込み、その配列を確認した。その結果、sj2368と同一の配列を示すクローンの他に、▲1▼exon2が欠失したクローン、▲2▼exon6が欠失したクローン、▲3▼exon2と6の両方が欠失したクローンの3種のスプライシングバリアントが確認された。これらのスプライシングバリアントではアミノ酸翻訳においてフレームシフトが生じており、▲1▼及び▲3▼のバリアントでは配列番号21で表されるポリペプチドがコードされていた。しかしながら、このポリペプチドはSJ2368のN端側の配列を約20残基しか持たず、しかもこの領域はシグナル配列に相当するため、機能ある蛋白質としては発現していないと考えられた。一方、▲2▼のバリアントでは配列番号20で表されるポリペプチドがコードされており、SJ2368の細胞外ドメインは維持されている。また、膜貫通ドメインが欠失しているため、可溶型の蛋白質として発現し、SJ2368とリガンド分子の結合に対し、競合している可能性が考えられた。スプライシングバリアント▲2▼を制限酵素SphIとXhoIでdouble digestionし、exon6欠失部を含む約340bpのDNA断片を調製した。また、実施例3で構築したSJ2368発現プラスミドを制限酵素SphIとXhoIで同様にdouble digestionし、先のDNA断片をライゲーションした。即ち、exon6配列を含む約470bpの断片とバリアント由来の約340bpのDNA断片とを入れ換えることで、ヒトSJ2368バリアント発現プラスミドの構築を行った。ライゲーション反応液はコンピテントセルJM109にトランスフォーメーションした後、定法に従ってプラスミドを調製した。
実施例10 可溶型SJ2368の生理活性
(1)混合リンパ球反応(MLR)に対する影響
可溶型SJ2368の生理活性を調べる目的で、マウスSJ2368−Fcを用いてMLRに対する影響を調べた。BALB/Cマウス及びC57BL/6マウス(7−9週齢オス)より脾臓を摘出し、脾細胞をそれぞれ調製した。各脾細胞を等量混合し、96well−plateへ0.6×106cells/wellで播種し、マウスSJ2368−Fcの存在下あるいは非存在下で37℃、5%CO2、4日間培養した。コントロールとして、他のI型膜貫通蛋白分子の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメインとのキメラ蛋白(CONT−Fc)あるいはヒトIgG1蛋白存在下で同様に培養した。BrdU(Cell Proliferation ELISA,BrdU(colorimetric);ロシュ・ダイアグノスティックス社)を添加し、さらに4時間培養した後に、添付書に従いBrdUの取り込み量(すなわち細胞増殖の割合)を測定した。その結果、第11図に示す通り、SJ2368−Fc存在下では濃度依存的に抑制効果が確認された。一方、CONT−FcやヒトIgG1では抑制効果が全く見られず、マウスSJ2368−FcはマウスMLRに対し特異的に増殖抑制を示した。
(2)Th1/Th2分化に対する影響
マウスSJ2368−Fcのin vitro Th1/Th2分化系における効果を調べた。
(2−1)細胞刺激用抗体プレートの作製
抗マウスCD3抗体(145−2C11;ファーミンジェン)をPBSで5μg/mlに希釈した抗体溶液0.2mlを48wellプレートの各wellに添加し、4℃で一晩インキュベーションし、抗体をプレート上に固相化した。プレートは使用直前にPBSで2回、培地(10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2−ME、100units/mlペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI1640)で1回洗浄後、0.35ml/wellの培地を加え平衡化した。
(2−2)ナイーブT細胞の調製および刺激
ナイーブT細胞はC57BL/6マウスから磁気標識細胞分離法により取得した。すなわち、C57BL/6マウス12匹より脾臓を摘出し、脾細胞をPRMI1640 30mlへ懸濁した。遠心後、0.085%塩化アンモニウムを含む0.15M Tris−HCl(pH7.65)溶血バッファーに再浮遊し37℃で5分間処理した。細胞を20mlのPRMI1640で一回、さらに30ml MACSバッファー(0.5%FBS、2.5mM EDTAを含むハンクス平衡塩(GIBCO−BRL))で洗浄した後、5%マウス血清を含むMACSバッファーに1×108細胞/mlとなるように懸濁した。さらに0.5μgの抗マウスCD4−FITC(ファーミンジエン)を加え6℃、60分間インキュベーションした。次に、細胞をMACSバッファー30mlで2回洗浄後、MACSバッファーで1×108細胞/mlに再懸濁した。1×108細胞あたり40μlの抗FITCマイクロビーズ(第一化学薬品)を加え6℃、60分間インキュベーションした。細胞を再度MACSバッファー30mlで洗浄し、1.5mlのMACSバッファーに浮遊した。このように調製した細胞をautoMACS(第一化学薬品)へアプライし、プログラムPOSSELSによりCD4陽性細胞を得た。300μl/15mlのリリース試薬を添加し6℃、20分間処理した。この細胞懸濁をautoMACSへアプライし、抗FITCマイクロビーズと細胞を分離した。さらにCD62L陽性CD4T細胞を得るために、調製したCD4陽性T細胞を1×107細胞あたり50μlのMACSバッファーに浮遊し、1×107細胞あたり30μlのstop solution(第一化学薬品)および1×107細胞あたり20μlのCD62Lマイクロビーズ(抗マウスCD62Lマイクロビーズ(MEL−14)第一化学薬品)を加え6℃、30分間インキュベートした。反応終了後、30mlのMACSバッファーで細胞を2回洗浄し、1.5mlの細胞懸濁液をautoMACSへアプライし、プログラムPESSELSにCD4CD62L陽性T細胞を得た。細胞は10%FBSを含むT細胞培養液(10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2−メルカプトエタノール、100units/ml ペニシリンストレプトマイシンを含むRPMI1640)で洗浄後、5×105細胞/mlとなるように10%FBS、T細胞培養液に懸濁した。取得したナイーブT細胞を上記(2−1)で作製した抗体プレートに、1wellあたり0.5mlずつ植え込んだ。さらに終濃度3μg/mLあるいは30μg/mLとなるようにSJ2368−Fc溶液を1wellあたり100μL添加し5%CO2環境下、37℃で培養した。コントロールとして、SJ2368−Fcを添加する代わりに生理食塩液100μLまたは終濃度30μg/mLとなるようにヒトIgG蛋白質溶液100μLを添加した。培養開始72時間後、上清1mlを回収しELISAによりサイトカイン濃度を測定した。
(2−3)ELISAによるサイトカイン濃度の測定
培養開始3日後の培養上清中のサイトカイン濃度を測定した。測定は、OptEIA Mouse IL−4 Set(ファ
(DIACLONE)を用いて測定した。
Th1/Th2分化系におけるマウスFJ2368−FcのIFN−γおよびIL−4産生誘導活性を、生理食塩液添加群を1としたときの誘導倍率で示した(表1)。
表1に示したように、マウスSJ2368−FcによるIFN−γ産生の有意な亢進が認められた。なお、IL−4産生でもマウスSJ2368−Fcによる抑制傾向が認められた。これはマウスSJ2368−FcがマウスナイーブT細胞に作用し、Th1分化を誘導した結果と考えられる。このことはT細胞に可溶型SJ2368蛋白質の受容体が存在する可能性を示唆している。Th1分化を誘導する細胞内シグナル伝達因子として、T−betやTxkが知られているが、可溶型SJ2368蛋白質はT細胞に存在する受容体と結合し上記のシグナル伝達因子を活性化しているのかもしれない。一方、ナイーブT細胞にSJ2368蛋白質(膜貫通型)が存在している場合、可溶型SJ2368蛋白質がT細胞上に存在するSJ2368蛋白質(膜貫通型)の機能を競合的に阻害した結果としてTh1分化誘導が起こったとも考えられる。この場合、SJ2368蛋白質は本来的にはTh2分化を誘導する活性を有しているものと推察される。
実施例11 抗ヒト及びマウスSJ2368抗体の作製
(1)ヒト及びマウスSJ2368の部分ペプチドの調製
マウス及びヒトSJ2368両者とクロスする抗体を作製するため、マウス及びヒトのアミノ酸配列を比較検討した。マウスSJ2368(配列番号14)のN末のアミノ酸のうち21番目から32番目の配列(RPRLAPPRNVTL)はヒトSJ2368との間で1アミノ酸しか異ならず、またN末端に位置することからヒト/マウスSJ2368抗体作製に使用する免疫用ペプチドとして選択した。また、マウスSJ2368の122番目から136番目の配列(VELAPPTLVLTQMEK)はヒトSJ2368との間に2アミノ酸の違いが認められるが、Chou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析したところ、一部ターン構造を有するコンビネション構造を取ることが予想されたため、蛋白質表面に露出されているものと推定し、マウスSJ2368抗体作製に使用する免疫用ペプチドとして選択した。このペプチドにはキャリア蛋白と結合する反応基がないため、C端にシステインを追加した配列とした。ペプチドの合成はABI433Aペプチド合成機(アプライド)を用いて行い、定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPCELL−PAK、資生堂)を用いて精製した。
(2)SJ2368のペプチド免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mLに溶解し、10mg/mLのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合した。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(ファルマシア)で脱塩した。
(3)ポリクローナル抗体の作製
ヒト及びマウスSJ2368に対するポリクローナル抗体を作製するため、調製したペプチド抗原100μgを等量のフロインド完全アジュバント(FCA、DIFCO)と混合し、ウサギ(NZW、メス、2〜2.4kg、北山ラベス)又はラット(Wistar、メス、8週令、SLC)の背部皮下に投与した。2週間後、同量をフロインド不完全アジュバント(FIA、DIFCO)と混合したものを同様に投与し、1週間後ウサギは耳静脈よりラットは心臓より採血し抗血清を調製した。次に得られた抗血清に50%飽和となるように飽和硫酸アンモウニウム溶液を添加し、塩析を行った。得られた沈殿物を遠心後、PBSで溶解し、透析した。次にウサギ抗体はプロテインAカラム(Prosep−A、ミリポア)でラット抗体はプロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、IgG分画を得た。蛋白質濃度は280nmの吸光度より算出した。
実施例12 ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)特異抗体の作製
(1)ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のペプチドの調製
ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のアミノ酸配列のうち全長SJ2368の配列とは一致しない224番目より244番目までのペプチド配列をChou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析を行ったところ、232番目から244番目の配列(CGNLSAQQTRVRE)は親水性が高く、ターン構造を含む構造であり、蛋白質表面に露出されているものと推定し、免疫用ペプチドとして選択した。ペプチドの合成はABI433Aペプチド合成機(アプライド)を用いて行い、定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPCELL−PAK、資生堂)を用いて精製した。
(2)可溶型SJ2368の免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mLに溶解し、10mg/mLのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合した。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(ファルマシア)で脱塩した。
(3)ポリクローナル抗体の作製
ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)に対するポリクローナル抗体を作製するため、調製したペプチド抗原100μgを等量のFCA(DIFCO)と混合し、Wistarラット(8週令、メス、北山ラベス)の背部皮下に投与した。2週間後、同量をFIA(DIFCO)と混合したものを投与し、1週間後心臓より採血し抗血清を得た。次に得られた抗血清に50%飽和となるように飽和硫酸アンモウニウム溶液を添加し、塩析を行った。得られた沈殿物を遠心後PBSで溶解し、透析後プロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、IgG画分を得た。蛋白質濃度は280nmの吸光度より算出した。得られた抗体がヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)と特異的に結合することをウエスタンブロッティングにより確認した。すなわち、ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)を5−20%SDS−ポリアクリルアミドゲル(ATTO)にて泳動し、ミリポア社の方法にしたがってPVDF膜に転写した。転写後5%スキンミルク、0.05%Tween20を含むPBSにてブロッキングした。精製抗体を0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBSで5μg/mLに希釈し転写したPVDF膜と室温で1時間反応させた。次にメンブレンを0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBSで1000倍に希釈しメンブレンと室温で1時間反応させた。メンブレンを同様に3回洗浄後、ECL(アマシャム)で検出した。その結果、約27kDa付近にヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のバンドが検出された。コントロールで用いた全長SJ2368は検出されなかった。
実施例13 抗SJ2368モノクローナル抗体の作製
(1)ラットモノクローナル抗体の作製
Wistarラット(メス、8週令、北山ラベス)のフットパッドに実施例4で調製した精製ヒトSJ2368−Fc融合蛋白質20μgをFCAと等量混合して投与した。初回投与2週間後に抗原20μgをFIAと等量混合後同様に投与した。最終投与3日後、ラットより腸骨リンパ節を摘出し細胞融合を行った。すなわち、リンパ節よりセルストレイナー(ファルコン)を用いてリンパ球を分離し、ミエローマ細胞(Sp2/O−Ag14)と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」83ページ、1991年(講談社)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行った。すなわち、0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下PBSと記載)で精製ヒトSJ2368−His蛋白質を2.5μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μL/ウエル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.5%BSAを含むPBSを各ウエルに100μL添加しブロッキングを行った。次に培養上清を各ウエルに添加し37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を10%ウサギ血清を含むPBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止した。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定した。その結果、精製SJ2368−His蛋白質と反応した細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行った。10日後、同様にスクリーニングを行い、精製SJ2368−His蛋白質と反応する抗体を産生するクローン5クローンを得た。得られた抗体のうち、特に反応性の高いF1120−21−3抗体のサブタイプをラットタイピングキット(ZYMED)を用いて決定したところサブタイプはIgG2b・κであった。
(2)マウスモノクローナル抗体の作製
CpGアジュバント(ImmunEasy Mouse Adjuvant、QIAGEN)50μLと精製ヒトSJ2368−Fc融合蛋白質20μgを混合し100μLとした投与抗原をddYマウス(メス、8週令、SLC)の両足のフットパッド内にマイクロシリンジによりそれぞれ50μL投与した。9日後、投与抗原20μgを100μLの生理食塩水で希釈したものをフットパッド内に各50μLずつ投与した。3日後、腸骨リンパ節よりリンパ球を分離し、ミエローマP3U1と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを(1)記載の方法と同様に行った。精製SJ2368−His蛋白質と反応した細胞を限界希釈法によりクローニングし、10日後、同様にスクリーニングした。その結果、精製SJ2368−His蛋白質と反応する抗体を産生するクローン10クローンを得た。選択したハイブリドーマを10%FCS/RPMI−1640培地(GIBCO)で培養後、Hybridoma−SFM培地(GIBCO)で培養し抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製した。得られた抗体のうち、反応性の高いF1157−6−2、F1157−10−2抗体のサブタイプをIsoStrip Mouse Monoclonal antibody Isotyping Kit(Roche)を用いて決定したところサブタイプはそれぞれIgG1/κ、IgG2a/κであった。
実施例14 ラット及びマウスモノクローナル抗体の特異性
実施例4に示す方法で、SJ2368発現プラスミド、ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)プラスミドあるいはベクタープラスミドをCOS細胞に導入し、2日間培養した後に、細胞をSDS−PAGE用サンプルバッファーで溶解した。これらの細胞溶解液を5−20%濃度勾配SDS−ポリアクリルアミドゲル(ATTO)で電気泳動した後に、PVDF膜(ミリポア)に蛋白を電気的にtransferした。実施例13で作製した抗体を、10%ブロックエースを含む0.1%Tween20を含むPBS(以下、T−PBSと記載)を用いて5μg/mlに希釈し蛋白を転写したPVDF膜と室温で1時間反応させた。次に、T−PBSで3回洗浄した後に、HRP標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO)あるいはHRP標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)と室温で1時間反応させた。T−PBSで3回洗浄した後に、ECLキット(アマシャム・バイオサイエンス)を用いて検出した。その結果、第12図に示すようにSJ2368発現プラスミド及びヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)プラスミドを導入したCOS細胞の溶解液(lysate)で特異的な約57kDa及び27kDaのバンドが検出された。
実施例15 SJ2368測定系の作製
(1)標識抗体の調製
サンドイッチELISA系を作製するため、実施例13で得られたF1120−21−3抗体をペルオキシダーゼで標識した。すなわち、中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従い、1mgのペルオキシダーゼ(東洋紡)を蒸留水に溶解し、蒸留水で溶解した100mMの過ヨウ素酸を添加し25℃で20分間反応した。反応終了後1.5%エチレングリコールを添加し25℃で10分間反応後1mM酢酸緩衝液(pH4.4)に対して透析した。次に、精製したF1120−21−3抗体を10mM炭酸緩衝液(pH9.5)で透析し、抗体1mgに対して1M炭酸緩衝液(pH9.5)を添加して活性化した1mgのペルオキシダーゼを混合し25℃で2時間反応した。4mg/mLの水素化ホウ素ナトリウムを添加しさらに2時間4℃で反応した。反応液をPBSに透析しペルオキシダーゼ標識抗体を得た。液量を測定し使用した抗体量より抗体濃度を算出した。
(2)サンドイッチELISA系の構築
F1157−10−2抗体固相/ペルオキシダーゼ標識F1120−21−3を用いてELISA系を作製した。まず、F1157−10−2抗体固相化プレートを調製した。すなわち、抗体を50mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)で10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)の各ウエルに50μL添加し、45℃にて30分間反応させた。次にイオン交換水で5回洗浄し、20%ブロックエース(雪印乳業)を含むPBS(pH6.4)を各ウエルに100μL添加しブロッキングした。標準品は精製ヒトSJ2368−His蛋白質を0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)で3.1、6.3、12.5、25、50、100、200ng/mlに希釈し調製した。ブランクは0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)を使用した。測定は、まずプレートのブロッキング剤を廃棄し、調製した標準品及びブランクを25μl分注し、続けて1%BSA、1%ラット血清、1%マウス血清を含むD−PBS(pH7.4、SIGMA)により2μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識F1120−21−3抗体を25μl添加し、25℃で一晩反応した。プレートを0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄し、TMB溶液(BioFX)を各ウエルに添加した。室温で20分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。第13図に作成した標準曲線を示した。
実施例16 各種細胞株培養上清中可溶型SJ2368蛋白質の測定
各種細胞株(173種類)の培養上清中SJ2368蛋白質濃度を実施例15に記載の測定系を用いて測定した。その結果、第14図に示すように培養上清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度は多くの細胞では5〜15ng/ml前後であったが、巨核球系細胞(Megakaryoblast)ではほとんど産生されない結果であった。また、一部の黒色腫、ヒトリンパ腫、ヒト膀胱癌、sarcoma、Bリンパ球において濃度が上昇している例が認められた。以上の結果は可溶型SJ2368蛋白質が各種細胞で恒常的に産生され、何らかの制御に関与している可能性を示唆している。
実施例17 各種患者血清中可溶型SJ2368蛋白質の測定
健常人40例(男性20例、女性20例)及び各種疾患患者(35疾患、各3例、自己免疫性肝炎のみ1例、計103例)を実施例15に記載の測定系を用いて測定した。その結果、健常人の血清中可溶型SJ2368蛋白質濃度は8〜18ng/mLに分布し、平均値は11.4ng/mLであった。健常男性で若干高い結果であった。各種疾患患者血清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度は第15図に示すように肺腫瘍、狭心症、心不全、肝不全、骨粗しょう症、痴呆の患者で上昇する例が認められた。特に、痴呆および肝不全患者においては3例中2例が高値を示した。以上の結果は、可溶型SJ2368蛋白質が血中に恒常的に産生され、何らかの要因により上昇し、生体の恒常性の維持や上記疾患に関与している可能性を示している。なお、使用したELISA系の2種類の抗体は実施例14に示すようにヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)とも結合するため、本系ではSJ2368蛋白質の細胞外領域が切断されて生成する可溶型SJ2368蛋白質と、スプライシングバリアントである可溶型SJ2368蛋白質の両者を測定しているものと考えられる。
実施例18 SJ2368のヒト末梢血単核球における発現
(1)SJ2368抗体の蛍光染色
実施例13で作製したF1120−21−3抗体をFlow cytometryで用いるために蛍光色素染色を行った。即ち、Oregon Green 488 Protein Labeling Kit(Molecular Probes社)を用い、添付のプロトコールに従って、Oregon Green 488 dye標識を行った(以下Oregon Green 488標識F1120−21−3をOG標識F1120−21−3と称する。)。さらにこのOG標識F1120−21−3抗体の反応性を確認するために、以下の方法でFlowcytometry解析を行った。実施例4に示す方法で、SJ2368発現プラスミドあるいはベクタープラスミドをCOS細胞に導入した後、0.1%EDTAを含むPBS−にて細胞を剥離した。剥離したCOS形質転換体を10μg/mlのOG標識F1120−21−3と氷上で30分間インキュベーションした後に、0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で3回洗浄した後に、FACSCalibur(日本ベクトンディッキンソン)で解析を行った。その結果、SJ2368発現プラスミドを導入した形質転換体で特異的な染色が確認でき、SJ2368の細胞膜上への発現が確認された(第16図)。
(2)ヒト末梢血単核球(PBMC)におけるSJ2368の発現
ヒトPBMCを用い、SJ2368を発現する単核球画分を調べた。AllCells,LLC社(代理店;株式会社ベリタス)より購入したヒトPBMCを5%非動化FBS含有RPMI1640培地(Sigma)に懸濁し、0.8〜1.0×106cells/wellで24well−plateに植え込んだ。その際に、培地のみもしくは5ng/mlのPborbol 12−myristate 13−acetate(以下、PMAと表記、Sigma)と0.5μg/mlのIonomycin(Sigma)を添加した。5%CO2、37℃で18時間培養後、PBMCを回収し、10μg/mlのラットIgG2aコントロール抗体と氷上で40分間インキュベーションした。次に、PBMCを0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で三度洗浄した後に、(1)で作製したOG標識F1120−21−3抗体(10μg/ml)及び市販のPhycoerythrin(PE)標識細胞表面マーカー(日本ベクトンディッキンソン)と氷上で40分間インキュベーションし、二重染色を行った。その後、0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で三度洗浄し、FACSCaliburで発現の様子を確認した。その結果、SJ2368はCD3ポジティブ細胞の一部で発現が確認され、PMA+Ionomycin添加によりその割合が上昇していた。CD4ポジティブ細胞でも同様に発現が確認され、PMA+Ionomycinで誘導された。CD8ポジティブ細胞では未刺激な条件では発現がほとんど確認されなかったが、PMA+Ionomycinで刺激することで誘導発現が確認された。CD19、CD16及びCD33ポジティブ細胞では未刺激及びPMA+Ionomycinによる刺激でも発現が確認されなかった。以上の結果を表2にまとめる。SJ2368及び各CD抗原ポジティブな細胞の割合を全PBMCに対する百分率(%)で表示した。
実施例19 ゲルシフトアッセイ
(1)ヒトIL10Rα鎖及びβ鎖のクローニング
SJ2368の細胞内シグナル伝達機構を解明する目的で、Kotenkoらの方法(The EMBO Journal vol.16 pp.5894−5903)を参考にゲルシフトアッセイを検討した。まず、ヒトIL10Rα鎖及びヒトIL10Rβ鎖のクローニングを行うために、センスプライマーRS1(5’−CCG GAA TTC AGG CCG GCT CCG CTC CGG−3’)、センスプライマーRS2(5’−CCG GAA TCT GCG GCG CGC CCA GGA TGC−3’)、センスプライマーRS3(5’−CCG GTC GAG TGC TTG GAG GAA GCC GCG−3’)、センスプライマーRS4(5’−CCG GTC GAG CGT CCG TCC ATG GCG TGG−3’)、アンチセンスプライマーRA1(5’−CGG GGT ACC TCC TGG TCC AGG CAG AGG−3’)、アンチセンスプライマーRA2(5’−CGG GGT ACC TCT CAG CCC GAG TCA CTC−3’)、アンチセンスプライマーRA3(5’−CCC AAG CTT CTA GAT GTG GGG CTG GCT−3’)、アンチセンスプライマーRA4(5’−CCC AAG CTT GCT GCC CTG ATC CCT CAC−3’)を設計した。鋳型としてヒトPBL由来cDNA(Human MTC Panel II;クロンテック社)を用い、Pyrobest DNA polymerase(タカラ バイオサイエンス社)によるPCRを98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分30秒のサイクルを30回繰り返した。IL10Rα鎖についてはセンスプライマーRS1とアンチセンスプライマーRA1のセットで、IL10Rβ鎖についてはセンスプライマーRS3とアンチセンスプライマーRA3のセットで行った。その後、各PCR反応液を鋳型にし、Pyrobest DNA polymeraseを用いてIL10Rα鎖についてはセンスプライマーRS2とアンチセンスプライマーRA2のセットで、IL10Rβ鎖についてはセンスプライマーRS4とアンチセンスプライマーRA4のセットで、98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分30秒のサイクルを30回繰り返すPCR反応を再度行った。得られた約1.8kb及び1.1kb断片をホニュウ動物細胞発現プラスミドに挿入し、IL10Rα鎖及びIL10Rβ鎖発現プラスミドを構築した。
(2)キメラレセプター発現プラスミドの構築
IL10Rα鎖とSJ2368のキメラレセプター(以下CR10と表記)の構築を行った。リコンビナントPCR法により、ヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメインとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを融合したcDNA断片を作製した。この際に、Kotenkoらの論文に記載されているIL10Rα鎖とIFN−γRとのキメラレセプター構築と同様のコンストラクトである、ヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメイン+膜貫通ドメインの数アミノ酸からなるペプチドとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの融合蛋白質であるCR10(以下CR10Aと表記;アミノ酸配列を配列番号22に記載)とヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメインからなるペプチドとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの融合蛋白質であるCR10(以下CR10Bと表記;アミノ酸配列を配列番号23に記載)の2種のキメラレセプターを構築した。まず、センスプライマーCRS1(5’−AGG CAG TAT TTC ACC GTG ACC AAC TGG GCT TTC CTG GTG CTG CCA−3’)、センスプライマーCRS2(5’−GAG TGC ATC TCC CTC ACC AGG AAC TGG GCT TTC CTG GTG CTG−3’)、アンチセンスプライマーCRA1(5’−TGG CAG CAC CAG GAA AGC CCA GTT GGT CAC GGT GAA ATA CTG CCT−3’)及びアンチセンスプライマーCRA2(5’−CAG CAC CAG GAA AGC CCA GTT CCT GGT GAG GGA GAT GCA CTC−3’)を設計した。実施例3で作製したSJ2368発現プラスミドと(1)で作製したIL10Rα鎖発現プラスミドを鋳型に、CR10AについてはセンスプライマーCRS1とアンチセンスプライマーCRA1を用い、CR10BについてはセンスプライマーCRS2とアンチセンスプライマーCRA2を用いて、リコンビナントPCRによりキメラレセプターcDNA断片を増幅した。次にここで得られたDNA増幅断片とIL10Rα鎖発現プラスミドとを制限酵素サイトで繋ぎ変えCR10発現プラスミドをそれぞれ作製した。さらに、IL10Rβ鎖発現プラスミドより、発現プロモーター/IL10Rβ鎖cDNA/polyA付加シグナルのユニットを切り出し、先に作製したCR10発現プラスミドのIL10Rα鎖用polyA付加シグナルの下流にタンデムに挿入した。以上の手順にて、CR10A及びIL10Rβ鎖発現プラスミド(pCR10A+Rb)とCR10B及びIL10Rβ鎖発現プラスミド(pCR10B+Rb)を構築した。
(3)CR10A及びCR10Bの発現
次に、CR10A及びCR10Bの発現を確認するため、SJ2368発現プラスミド、IL10Rα鎖発現プラスミド、pCR10A+Rb、pCR10B+RbあるいはベクタープラスミドをHEK293細胞あるいはCOS細胞に、FuGENE6を用いて導入した。さらに2日間培養を続けた後に、0.1%EDTAを含むPBS−で細胞を剥離し、PE標識抗CD210抗体(抗IL10Rα鎖抗体;藤沢薬品工業)と氷上で30分間インキュベーションした。FACSCaliburを用いて染色の様子を調べた結果、pCR10A+RbあるいはpCR10B+Rbを導入した細胞で、IL10R発現プラスミド発現プラスミドを導入した細胞と同等の特異的な染色が確認され、SJ2368発現プラスミドあるいはベクタープラスミドを導入した細胞では染色が確認されなかった(第17図にHEK293細胞を用いたFlowcytometryの結果を示す。)以上のことから、pCR10A+RbあるいはpCR10B+Rbをtransfectionすることで、CR10AあるいはCR10Bが細胞膜上に発現されることが確認された。
(4)ゲルシフトアッセイ
上記(3)に記載した方法で、IL10Rα鎖とSJ2368とのキメラレセプター及びIL10Rβ鎖を発現する細胞を作製することが可能となり、以下、Kotenkoらの論文に記載されている方法で、IL10で発現細胞を刺激し、Nuclear Extractを調製することができる。また、同じ論文に記載されている方法で、human IRF−1遺伝子のGAS element(5’−GAT CGA TTT CCC CGA AATCAT G−3’)をプローブとして調製し、ゲルシフトアッセイを行うことにより、IL10の刺激によるSTATの活性化について確認することが可能となる。すなわち、SJ2368の本来のリガンドは明らかとなっていないが、IL10Rα鎖とのキメラレセプターを用いることで、細胞内へのシグナル伝達を引き起こすことが可能となり、SJ2368のレセプター機能を明らかにすることができる。
実施例20 DNAアレイを用いた解析
上記実施例19に記載した方法で、CR10発現細胞を準備する。次にIL10を添加あるいは未添加することで、SJ2368細胞内シグナル伝達をON/OFFする。これらの細胞よりRNAを調製し、市販のDNAアレイ(あるいはDNAチップ)を用いることで、SJ2368シグナル伝達によって誘導あるいは抑制する遺伝子が確認でき、SJ2368のシグナル伝達に関与する分子群を同定することができる。
産業上の利用可能性
本発明のSJ2368は、炎症性疾患の発症あるいは進行に対してその原因となり得る蛋白質であり、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等の予防あるいは治療のための医薬品の開発において、極めて有用である。
また、遺伝子sj2368は、アンチセンス医薬品として、また遺伝子治療において利用することができ、蛋白質SJ2368は、それ自体あるいはその可溶性断片(細胞外領域や各ドメイン)を作製することにより可溶性蛋白医薬品として有用である。さらに、SJ2368またはその部分ペプチドに反応性を有する抗体及びその抗体の一部、また、SJ2368の細胞内シグナル伝達系を修飾する低分子化合物は、生体内でのSJ2368機能を制御する医薬品として有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、SJ2368の一次構造上の特徴を示す模式図である。
第2図は、sj2368遺伝子のヒト各種臓器および細胞での発現プロファイルを表す図である。
第3図は、ヒトSJ2368−HisおよびヒトSJ2368−Fcのウェスタンブロッティングの図である。
第4図は、ヒトsj2368のゲノム構造を示す模式図である。太線がエクソンを示し、その上のアラビア数字はエクソンが配列番号3の何番目から何番目までの塩基を含むかを示す。また、ローマ数字はエクソンの番号を示す。エクソン間の数値はイントロンの長さを示す。
第5図は、ヒトIL10Rα鎖遺伝子のゲノム構造を示す模式図である。線、数値等は第4図と同様の表現である。
第6図は、マウスsj2368のin silicoクローニング(5’側)の結果をまとめた図である。
第7図は、マウスsj2368のin silicoクローニング(3’側)の結果をまとめた図である。
第8図は、ヒトSJ2368とマウスSJ2368のアミノ酸アライメントを表す図である。上段がヒトSJ2368、下段がマウスSJ2368のアミノ酸配列を示す。箱で囲んだドメインは膜貫通ドメインを、「−」はギャップ配列を、縦線はエクソンの区切りをそれぞれ示す。マウス配列で下線を施した部分はalternative splicingによるdeletion部分である。
第9図は、ヒトsj2368およびマウスsj2368のゲノム構造を模式的に示した図である。線、数値等は第4図と同様の表現である。
第10図は、マウスSJ2368−Fcのウエスタンブロッティングの結果を示す図である。Mはサイズマーカーを、1はマウスSJ2368−Fcを発現させたトランスフェクタントの上清を、2はベクタープラスミドのトランスフェクタント上清をそれぞれ泳動したレーンである。
第11図は、マウスMLRに対するマウスSJ2368−Fcの効果を示した図である。
相対比=(蛋白存在下での培養におけるBrdU取り込み)/(蛋白非存在下での培養におけるBrdU取り込み)×100
白いバーが1μg/ml、灰色のバーが3μg/ml、黒いバーが10μg/mlの蛋白をそれぞれ添加した時の値を示す。CONT−Fcは他のI型膜貫通蛋白分子の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメインとのキメラ蛋白である。
第12図は、マウス及びラットモノクローナル抗体F1157−10−2、F1120−21−3抗体の特異性をウエスタンブロティング法により検出した結果を示す。全長はSJ2368発現細胞、可溶型は可溶型SJ2368(スプライスバリアント)発現細胞、ベクターはベクタープラスミド導入細胞由来のサンプルである。
第13図は、サンドイッチELISA系で測定したSJ2368−Hisの標準曲線を示す。
第14図は、ELISA系で測定した各種細胞株培養上清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度を示す。
第15図は、ELISA系で測定した各種疾患患者及び健常人血清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度を示す。
第16図は、COS形質転換細胞をOG標識F1120−21−3によって染色し、Flow cytometry解析を行った結果を示す図である。実線がSJ2368発現プラスミドを導入した形質転換細胞を染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入した形質転換細胞を染色した結果である。
第17図は、IL10Rα鎖とSJ2368とのキメラレセプターの発現をFlowcytometryで解析した結果である。
A:実線がIL10Rα鎖発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
B:実線がCR10A発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
C:実線がCR10B発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
D:実線がSJ2368発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
本発明は、新規なクラスIIサイトカイン受容体、該蛋白質をコードするDNA及びその断片、該DNAを含む発現ベクター、該発現ベクターで形質転換された形質転換細胞、該蛋白質若しくはその部分ペプチドに反応性を有する抗体、当該抗体を用いたSJ2368の測定方法、該蛋白質の活性または発現を調節する物質のスクリーニング方法に関する。
背景技術
細胞は他の細胞とコミュニケーションすることによって、細胞の機能や増殖、分化を制御している。サイトカインは細胞間情報伝達を担う一群の糖蛋白質の総称である。サイトカインは細胞膜上に存在するサイトカイン受容体に特異的に結合することにより細胞内のシグナル伝達経路を活性化する。シグナルは核に伝わり遺伝子発現の調節を行い、細胞の増殖、分化、死、機能発現を制御する。
サイトカイン受容体はその構造的特徴から幾つかのファミリーに分類される。クラスIサイトカイン受容体ファミリーにはIL−2、3、4、5、6、7、9、11や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン(GH)など多くのサイトカインの受容体が属する。このファミリーに属する受容体の細胞外ドメインには約200アミノ酸残基からなる特有の配列が認められ、サイトカイン受容体相同性ユニットと呼ばれている。クラスIIサイトカイン受容体ファミリーにはインターフェロン(IFN)α/β受容体、IFNγ受容体、IL−10受容体、IL−20受容体などが属する。このファミリーに属する受容体は細胞外ドメインに3つのトリプトファン、2組のS−S結合よりなるクラスIIサイトカイン受容体モチーフを有する。
クラスIIサイトカイン受容体ファミリーにより認識されるサイトカインとしては、IL−10、19、20、IL−TIF(T細胞由来誘導因子;IL−22)、AK155(IL−26)、MDA−7(メラノーマ分化関連因子−7;IL−24)などのIL−10ファミリーが挙げられる。これらのIL−10ファミリーのうち、IL−TIFはHepG2肝細胞に急性相炎症蛋白質を誘導する活性を有し(Laureら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.97、10144−10149(2000))、IL−20はトランスジェニックマウスの解析から乾癬への関与が示されている(Blumbergら、Cell,Vol.104,9−19(2001))。また、MDA−7は腫瘍細胞に遺伝子導入することにより腫瘍増殖を抑制する(Suら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.95、14400−14405(1998))。このように、新規IL−10ファミリーの病態への関連は急速に明らかになりつつある。
以上のIL−10ファミリーの中でIL−10、IL−20、IL−TIFについては受容体が同定されている一方、IL−19、MDA−7、AK155については受容体蛋白が同定されておらず、IL−10ファミリーを認識する新たなクラスIIサイトカイン受容体の単離同定が望まれている。
発明の開示
本発明は、新規なクラスIIサイトカイン受容体とその遺伝子を同定することにより、炎症性疾患や悪性腫瘍の予防並びに治療に有用な医薬及び方法を提供するものである。
本発明は、新規な遺伝子(sj2368とする)、当該遺伝子にコードされる新規なクラスIIサイトカイン受容体(SJ2368)に関する。また、当該遺伝子を用いて形質転換した宿主細胞、SJ2368の発現を調節するアンチセンス核酸、SJ2368またはその部分ペプチドに対する抗体、当該抗体を用いたSJ2368の測定方法、SJ2368の発現または活性を調節する物質のスクリーニング方法を提供する。
(核酸)
本発明は、SJ2368(後に詳しく述べる)をコードする遺伝子sj2368を提供する。遺伝子sj2368とは具体的には、以下の(A)〜(D)のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNAのことである;(A)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体;(B)配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質;(C)配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体;(D)配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質。配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAの具体例は、配列番号1または配列番号3に示すcDNAである。しかしこれらに限定されるものではなく、配列番号1や配列番号3に示すcDNAのほか該cDNAの由来するゲノムDNAも含まれる。配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質は配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体のスプライシングバリアントである。よって配列番号20に示すアミノ酸配列からなるヒト可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNAの配列は、配列番号1または配列番号3に示すcDNAの塩基配列より派生可能である。配列番号20に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号24に示す。配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAの具体例は、配列番号15または配列番号16に示すcDNAである。しかしこれらに限定されるものではなく、配列番号15や配列番号16に示すcDNAのほか該cDNAの由来するゲノムDNAも含まれる。配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質は配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体のスプライシングバリアントである。よって、配列番号18に示すアミノ酸配列からなるマウス可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNAの配列は、配列番号15または配列番号16に示すcDNAの塩基配列より派生可能である。配列番号18に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号25に示す。派生可能とは、基となるDNA配列の少なくとも一部分の欠失により得られることをいう。該遺伝子はヒト脾臓やマウス肝臓から単離同定することができるが、本明細書に開示された配列を基に、一般的なハイブリダイゼーション等の遺伝子工学的手法を用いたクローニングやホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製されるDNAであってもよい。その形態としてはcDNA、ゲノムDNAの他、化学合成DNAなどが含まれるが、特に制限はない。本発明のDNAは1本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。また、当該DNAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
また、sj2368の塩基配列が提供されれば、これより導かれるRNAの配列や、相補的なDNAおよびRNAの配列などは一義的に決定されるので、本発明は、本発明のDNAに対応するRNAあるいは本発明のDNAと相補的な配列を有するDNAおよびRNAもまた提供するものと理解すべきである。本明細書中において、「DNA」は「ポリヌクレオチド」と同義である。
さらに、本発明のDNAには、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAをも含むものである。
配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされる蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体であれば、塩基配列のバリエーションが許容される。例えば、いわゆるコドン縮重による同一アミノ酸残基をコードする複数のコドンの存在や、種々の人為的処理例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異・欠失・連結等により、部分的にDNA配列が変化したものであっても、これらDNA変異体が配列番号1または配列番号15に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNAであれば、配列番号1または配列番号15に示したDNA配列との相違に関わらず、本発明の範囲内のものである。
配列番号24または配列番号25に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされる蛋白質が可溶型SJ2368蛋白質であれば、塩基配列のバリエーションが許容される。
上記のDNA変異の程度は、配列番号1または配列番号15に記載のDNA配列、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントのDNA配列と70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の同一性を有するものであれば許容範囲内である。DNA配列の同一性の判断には、BLAST(J.Mol.Evol.,36;290−300(1993)、J.Mol.Biol.,215;403−10(1990))を用いることができる。また、ハイブリダイズする程度としては、ストリンジェントな条件下、例えばDIG DNA Labeling kit(ロシュ・ダイアグノスティックス社製 Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、例えば32℃、好ましくは37℃、より好ましくは42℃のDIG Easy Hyb溶液(ロシュ・ダイアグノスティックス社製Cat No.1603558)中でハイブリダイズさせ、例えば50℃、好ましくは65℃の0.5×SSC溶液(0.1%(w/v)SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションで、配列番号1または配列番号15に記載の核酸、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントの核酸にハイブリダイズする程度であればよい。
配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列からなるDNA、もしくは当該配列から派生可能なスプライシングバリアントのDNAあるいはその部分断片は、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等本発明の蛋白質が関与する疾患の特異的プローブとして有用であると考えられる。
本発明のDNAは、SJ2368を大量に生産するために使用することができる。該DNAはまた、酵素等で標識して、組織における本発明の蛋白質の発現状況を検査するために使用することができる。すなわち、該DNAをプローブとして使用し、細胞における本発明の蛋白質の発現量を、mRNA発現量を指標として確認することにより、本発明の蛋白質の製造に適した細胞やその培養条件を決定することができるほか、本発明の蛋白質が関連する疾患、特に敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等の診断を行うことも可能である。
また、本発明のDNAの一部をプライマーとして使用したPCR−RFLP(Restriction fragment length polymorphism)法、PCR−SSCP(Single strand conformation polymorphism)法、シークエンシング等の方法により、核酸配列上の異常あるいは多型を検査・診断することができる。
また、本発明のDNAを生体内の細胞に導入し、本発明の蛋白質の発現または活性が損なわれていることによる疾患の遺伝子治療にも使用する事ができる。
本発明のDNAは、形質転換細胞の調製、さらには該形質転換細胞を用いた組換え蛋白質SJ2368の生産方法、あるいはSJ2368の発現を特異的に抑制する化合物の探索に大いに有用である。
本発明における形質転換細胞は当業者に公知の技術を適用して調製することが可能であり、例えば、市販されあるいは当業者が一般に入手容易な様々なベクターを利用して、適当な宿主細胞へ本発明のDNAを組み入れることが可能である。その際、遺伝子sj2368をプロモーターやエンハンサーに代表される発現制御遺伝子の影響下におくことで、遺伝子sj2368の宿主細胞内での発現を任意にコントロールすることが可能である。この手法は、形質転換された宿主細胞を用いたSJ2368の生産において好適に用いられる他、遺伝子sj2368の発現制御機構の研究あるいは該遺伝子の発現を調節し得る物質の探索などにも応用することが可能となる。
例えば、任意の被験物質と遺伝子sj2368を含むベクターで形質転換された細胞とを適当な条件下で接触させることで、被験物質の遺伝子sj2368の発現を促進あるいは抑制する作用を有する物質を探索し、あるいは評価を行うことができる。
また、本発明であるDNAと公知の方法とを組み合わせて、マウスまたはその他の適当な動物を基にトランスジェニック動物を作製することが出来る。さらに、本発明の遺伝子sj2368を利用すれば、ヒト以外の動物からsj2368に相当する遺伝子を破壊したいわゆるノックアウト動物を作製することも可能である。このモデル動物の物理学的、生物学的、病理学的及び遺伝子的特徴を分析することにより、本発明に係る遺伝子及び蛋白質の機能を解明することが可能となる。さらに、そのようにして内在性遺伝子が破壊された該動物に本発明のヒトsj2368を導入することにより、ヒトsj2368のみを有するモデル動物を作製することも可能となる。
かかるトランスジェニック動物、特に本発明である遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368を大量に発現しているあるいは逆にこれらを欠いた動物を観察すれば、遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368の機能を特定することが可能となる。さらに、このモデル動物は、該導入されたヒトSJ2368をターゲットとした薬剤の開発、評価に有用である。遺伝子sj2368あるいは蛋白質SJ2368に特異的に作用しあるいは機能を補完する物質等を、生体レベルで調べることが可能となり、この様にして得た物質は、SJ2368が特異的に機能する生体制御に働く薬物となることが期待される。
(蛋白質SJ2368)
本発明はsj2368にコードされる蛋白質SJ2368を提供する。SJ2368とは、具体的には配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトクラスIIサイトカイン受容体である。また、SJ2368の別な具体例としては、配列番号14に示すアミノ酸配列からなるマウスクラスIIサイトカイン受容体である。
SJ2368は細胞外ドメインに3つのトリプトファン、2組のS−S結合よりなるクラスIIサイトカイン受容体モチーフを有し、IL−20受容体α鎖、マウスIFNα/β受容体、IL−10受容体と類似性を示すことから、IL−10ファミリーを認識する新規な受容体と推定される。また、細胞内には3つのチロシン残基を有し、リガンド結合によってこれらの部位のいずれかがリン酸化されてJAK−STAT系を活性化し、リン酸化STATが核内移行してシグナルが伝わるものと想定される。また、本発明のクラスIIサイトカイン受容体は、肝臓などの重要な臓器に発現していること、細胞レベルでは末梢白血球、冠状動脈血管内皮細胞、B細胞、T細胞に発現していることから、敗血症などにおける臓器障害や免疫担当細胞のエフェクター機能調節に関与する蛋白質であると理解される。SJ2368のクラスIIサイトカイン受容体としての活性は、例えば実施例6に示す方法で確認することが出来る。
この様に、SJ2368はクラスIIサイトカイン受容体ファミリーに認められる特徴を高度に保持している一方、そのアミノ酸配列全長での相同性は、最も相同性の高いIL−20受容体との間でも21.6%(GENETYX−WIN(Ver4.0.5)Maximum Matching(Software Development Co.,Ltd.)による数値)にとどまる。このことから、SJ2368は、炎症反応の発現あるいは進行において、他のクラスIIサイトカイン受容体分子にはない特徴的な役割を果たしていることが強く推認される。従って、SJ2368を標的とした医薬化合物は、従来にはない特徴を備えた医薬となり得るものと期待される。
なお、クラスIIサイトカイン受容体としての活性を有する蛋白質である限り、配列番号2または配列番号14に示す蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、欠失、および/もしくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質も本発明の範囲内である。
また本発明は、可溶型SJ2368蛋白質を提供する。可溶型SJ2368蛋白質とは、少なくともSJ2368蛋白質の細胞外ドメインの一部を含んでなり、膜貫通型ではない蛋白質のことである。可溶型SJ2368蛋白質の代表例は配列番号20に示すアミノ酸配列からなる蛋白質および配列番号18に示すアミノ酸配列からなる蛋白質である。配列番号20に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はヒトSJ2368のスプライシングバリアントであるヒト可溶型SJ2368蛋白質である。配列番号18に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はマウスSJ2368のスプライシングバリアントであるマウス可溶型SJ2368蛋白質である。他の可溶型SJ2368蛋白質の例としては、細胞表面上に発現したSJ2368蛋白質の細胞外ドメインが切断されることにより生成されるタイプが挙げられる。別の可溶型SJ2368蛋白質の例としては、SJ2368蛋白質の細胞外ドメインの少なくとも一部からなるポリペプチドと、他のポリペプチドからなる融合蛋白質が挙げられる。SJ2368蛋白質の細胞外ドメインの少なくとも一部とは、配列番号2における43番、68番、111番のトリプトファン(W)、74番と82番、195番と217番のシステイン残基のペアといったクラスIIサイトカイン受容体モチーフを含んでいればよく、配列番号2の43〜217アミノ酸残基からなる領域または配列番号14の43〜216アミノ酸残基からなる領域が細胞外ドメインの少なくとも一部の好ましい例である。
また、可溶型SJ2368蛋白質の活性を保持している限り、配列番号20または配列番号18に示す蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、欠失、および/もしくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質も本発明の範囲内である。
蛋白質の構成要素となるアミノ酸残基側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるが、実質的に蛋白質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が知られている。例えば、アミノ酸残基の置換については、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)、等が挙げられる。また、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、Gly、Cysは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有すると考えられる。非荷電極性アミノ酸としては、Ser、Thr、チロシン(Tyr)、Asn、Glnが挙げられる。酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。塩基性アミノ酸としてはLys、Arg、ヒスチジン(His)が挙げられる。また、上述の意味の保存性を損なう場合でも、なおその蛋白質の本質的な機能、本発明においてはクラスIIサイトカイン受容体または可溶型SJ2368蛋白質としての機能を失わない変異も当業者に多く知られている。さらに、異なる生物種間に保存される同種の蛋白質が、幾つかのアミノ酸が集中あるいは分散して欠失あるいは挿入されていてもなお本質的な機能を保持している例も多く認められている。
従って、配列番号2または配列番号14に示したアミノ酸配列上の幾つかのアミノ酸残基の置換、挿入、欠失等による変異蛋白質であっても、その変異蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体としての活性を有する限り、これらは本発明の範囲内にあるものと言うことができる。ここにいうクラスIIサイトカイン受容体の活性とは、(a)リガンドと結合する活性、(b)細胞内シグナル伝達を惹起する活性、の少くとも一つを有することであり、例えば実施例6に示す方法により確認することができる。ここでいう細胞内シグナル伝達とは、具体的にはJAK−STAT系の活性化である。JAK−STAT系の活性化は、STATによる遺伝子発現の活性化あるいはSTATの標的配列への結合により確認できる。STATの標的配列とは、STATが活性化した際に結合するDNA配列のことであり、Fc受容体Iのγ−response region(GRR)が例として挙げられる。幾つかのアミノ酸残基が異なっていても、配列番号2または配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるSJ2368と実質的に同質の機能を有するものは、本発明の範囲内であるといえる。従って、リガンドへの結合能または細胞内シグナル伝達を惹起する活性が性質的に同質であればよく、該活性の強弱の変動、または糖鎖結合の相違などによる該蛋白質の分子量の量的変化などは許容されると解されるべきである。また、SJ2368蛋白質は、以下の(a)および(b)の性質を有し、免疫細胞(特にT細胞)において免疫機能を調節する活性を有するものと考えられる;(a)CD3陽性末梢血単核球、CD4陽性末梢血単核球およびCD8陽性末梢血単核球においてはPMAとイオノマイシンの共刺激により発現が誘導される;(b)CD16陽性末梢血単核球、CD19陽性末梢血単核球およびCD33陽性末梢血単核球の細胞表面上に発現しておらず、これら細胞においてはPMAとイオノマイシンの共刺激によっても発現は誘導されない。
また、配列番号20または配列番号18に示したアミノ酸配列上の幾つかのアミノ酸残基の置換、挿入、欠失等による変異蛋白質であっても、その変異蛋白質が可溶型SJ2368蛋白質としての活性を有する限り、これらは本発明の範囲内にあるものと言うことができる。ここにいう可溶型SJ2368蛋白質の活性とは、以下の(a)〜(c)に記載の少なくとも一つの活性を有することである;(a)T細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生を増強する活性;(b)T細胞のIL−4産生を抑制する活性;(c)混合リンパ球反応においてリンパ球の増殖を抑制する活性。
「増強する活性」あるいは「抑制する活性」とは各測定系において可溶型SJ2368蛋白質存在下と非存在下において測定値に差があることを言う。測定値については用いる系の種類によって適宜定められる。たとえば、下記の式で計算される抑制率あるいは増強率が15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上であることをいう。
抑制率あるいは増強率=(可溶型SJ2368蛋白質無添加群の測定値−可溶型SJ2368蛋白質添加群の測定値)の絶対値/無添加群の測定値×100
T細胞に可溶型SJ2368蛋白質を作用させた場合T細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生が増強されIL−4産生が抑制されるという現象は、SJ2368がTh1分化を誘導した結果であると考えることができる。T細胞のIFN−γ産生を増強する活性、T細胞のIL−4産生を抑制する活性、混合リンパ球反応においてリンパ球の増殖を抑制する活性は、例えば実施例10に示す方法で確認することができる。
可溶型SJ2368は、正常人血清中に8〜18ng/mL(平均値は11.4ng/mL)の濃度で存在すること、肝不全、痴呆、骨粗しょう症、心不全、肺腫瘍および狭心症患者において高値を示す傾向があり、可溶型SJ2368がこれらの疾患と関係していることが明らかになった。
このようなアミノ酸の改変は、遺伝子多型等によって生ずる変異の様に自然界において認められる他、当業者に公知の方法、例えばNTGなどの変異誘発剤を用いた突然変異誘発法や種々の組換え遺伝子手法を用いた部位特異的変異法を利用して、人為的に行うことができる。アミノ酸の変異部位および個数は、変異蛋白質がクラスIIサイトカイン受容体である限り特に制限はないが、変異個数は通常数十アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、さらに好ましくは1または数個以下である。
また本発明では、SJ2368を上述のような全てのドメイン構造を有する分子全体として理解できるほか、SJ2368が有する機能の少なくとも一つを保持した機能的なドメイン、特にリガンドとの結合能を担うドメインを保持した部分ペプチドとして理解することもできる。膜貫通型蛋白質の中には、リガンド結合部位を含む部分ペプチドが、特徴的な立体構造を保持したまま他のドメインから切り離されるなどして、遊離の(あるいは可溶化とも言われる)部分ペプチドとして存在し得るものがあることが、以前より報告されている。この様な部分ペプチドは、依然として特異的なリガンドとの結合能を保持していることから、これを用いて該蛋白質への結合能を有する化合物の探索が可能となる。このような可溶型SJ2368蛋白質は上述のように実際に存在することが知られており、SJ2368の細胞外ドメインの少なくとも一部を含んでなる部分ペプチドは、上述の可溶型SJ2368と同等の活性を有する限り、実質的には本発明と同等の物質であると理解すべきである。また、SJ2368の部分ペプチドの他の好ましい態様としては、SJ2368の細胞内ドメインを含むペプチドが挙げられる。SJ2368の細胞内ドメインはSJ2368の機能のひとつであるシグナル伝達機能を担っている。よって、シグナル伝達機能を保持している限り、SJ2368の細胞内ドメインを含むペプチドも本発明の範囲内のものである。このような部分ペプチドは、SJ2368のほかのドメイン(例えば膜貫通領域)の全部または一部が連結していても良いし、他の蛋白質やペプチドとの融合蛋白質となっていても良い。ヒトSJ2368の細胞外ドメインは配列番号2に示すアミノ酸配列のN端から225番目までのアミノ酸配列からなる。マウスSJ2368の細胞外ドメインは配列番号14に示すアミノ酸配列のN端から224番目までのアミノ酸配列からなる。この部分にリガンドが結合すると考えられる。またヒトSJ2368の細胞内ドメインは配列番号2に示すアミノ酸配列の253番目からC端までのアミノ酸配列からなる。マウスSJ2368の細胞内ドメインは配列番号14に示すアミノ酸配列の253番目からC端までのアミノ酸配列からなる。この部分で細胞内にシグナルを伝達すると考えられる。ドメインをどこまでのアミノ酸残基で区切るかは、使用するドメインの予想方法(例えばシグナル配列予測プログラムや膜貫通領域の予測プログラムの差異)によって多少前後することがあるが、そのような差異は許容されるべきものである。なお、ドメインとしての活性を保持する限りにおいてアミノ酸配列の改変が許容される。
すなわち、本発明は以下の部分ペプチドを提供する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の21〜225番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(b)(a)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞外ドメイン;
(c)配列番号14に記載のアミノ酸配列の21〜224番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(d)(c)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞外ドメイン;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列の253〜520番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(f)(e)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞内ドメイン;
(g)配列番号14に記載のアミノ酸配列の253〜535番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(h)(g)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞内ドメイン。
これらの部分ペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号1または15に示されるDNAから派生可能である。
SJ2368の細胞外ドメインや該ドメインを含んでなる融合蛋白質、SJ2368の細胞内ドメインを含んでなる融合蛋白質および可溶型SJ2368を含んでなる融合蛋白質も本発明の範囲内のものである。融合蛋白質がSJ2368または可溶型SJ2368の活性の少なくとも一つの活性を有する限りにおいて、連結される他のポリペプチドには特に制限はない。連結されるポリペプチドの例としては、クラスIIサイトカイン受容体ファミリーの細胞外ドメインまたは細胞内ドメイン、イムノグロブリンのFc断片(Fcと記載する場合もある)などが挙げられる。Fc断片はIgGの場合、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域からなる。Fc断片の部分(例えばヒンジ領域、CH2領域、CH3領域もしくはCH4領域の各領域の単独または任意の組合せ)も使用可能である。この場合のイムノグロブリンは、由来する種は何れでもよいが、ヒト由来のものが好ましい。また、クラス及びサブクラスに関しても必ずしも限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgEおよびIgD等の何れもが使用可能であるが、例えば、IgGが好ましい例である。このような融合蛋白質の好ましい一例は、配列番号17に示されるマウスSJ2368細胞外ドメイン−Fcや配列番号19に示されるヒトSJ2368細胞外ドメイン−Fcである。連結されるポリペプチドの他の例としては、IL10受容体のα鎖が挙げられ、IL10受容体のα鎖の細胞外ドメインとSJ2368の細胞内ドメインからなる融合蛋白質の例は配列番号22および配列番号23に示されている。
これらの融合蛋白質をコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。
またシグナル配列を有する蛋白質ではシグナル配列が切断されたものが成熟蛋白として機能している場合もある。よって本発明の蛋白質からシグナル配列が除かれた成熟ペプチドも、実質的には本発明と同等の物質であると理解すべきである。ヒトSJ2368の場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列の8番目から20番目のアミノ酸残基付近にシグナル配列の存在が予測されている。上記に述べた蛋白質は、いわゆる当業者における通常の認識の範囲にある塩の形態であっても差し支えないことは言うまでもない。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドは、該蛋白質の活性を調節する物質の探索に使用することが出来る。探索を通じて得られる化合物等は、本発明の蛋白質が関連する疾患、例えば敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等に対する有効な治療薬または予防薬となることが期待される。
(抗体)
本発明はさらにSJ2368に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、SJ2368全体あるいはその部分ペプチドを抗原として特異的に認識する抗体であり、モノクローナル抗体及び/またはポリクローナル抗体が含まれる。また、免疫グロブリンの構造、物理化学的性質や免疫学的性質として分類される5つのクラス(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、あるいはH鎖のタイプによるサブクラスのいずれに属するものであってもよい。さらに、免疫グロブリンを例えばペプシンで分解したときのF(ab’)2、パパインで分解したときのFabなどのフラグメントであっても、またキメラ抗体やヒト化抗体であってもよい。またSJ2368全体あるいはその部分ペプチドを抗原として特異的に認識するのみでなく、SJ2368の活性を調節する機能を有する抗体も本発明に含まれる。SJ2368の活性を調節する機能を有する抗体とは、SJ2368とリガンドの結合を阻害する中和抗体、SJ2368に結合してホモあるいはヘテロオリゴマー化を阻害する中和抗体やSJ2368に結合し細胞内シグナル伝達を惹起する活性を有するアゴニスト抗体のことである。これらの抗体は、SJ2368の研究的あるいは臨床的な検出等に有用である。
(アンチセンス核酸)
本発明は、生体内において核酸レベルでのSJ2368生合成を抑制することのできる、いわゆるアンチセンス核酸を提供する。かかるアンチセンス核酸は、SJ2368をコードするmRNAを作り出すのに必要なゲノム領域からpre−mRNAへの転写段階、pre−mRNAから成熟mRNAへのプロセッシング段階、核膜通過段階、蛋白への翻訳段階のいずれかで、遺伝子情報を担うDNAもしくはRNAに結合し、遺伝情報の伝達の正常な流れに影響を与えて蛋白質の発現を調節するものを意味し、遺伝子sj2368の核酸配列の全体あるいはいずれかの部分に相補する配列からなるものであってもよい。好ましくは、配列番号1または配列番号3に記載の核酸配列の全部または一部に相当あるいは相補する配列から成る核酸(DNA、RNAを含む)である。別の好ましい例は、配列番号15または配列番号16に記載の核酸配列の全部または一部に相補する配列から成る核酸(DNA、RNAを含む)である。また、ゲノム領域から転写されるmRNAがイントロン構造あるいは5’末端や3’末端に非翻訳領域を含む形であるときは、かかる非翻訳部分の配列に相当あるいは相補するアンチセンス核酸も本発明のアンチセンス核酸と同等の機能を有するものとなろう。
本発明のアンチセンス核酸は、DNAやRNAの他、その立体構造や機能がDNAあるいはRNAと類似する各種誘導体のすべてを含むものである。例えば、3’末端もしくは5’末端に他の物質が結合した核酸、オリゴヌクレオチドの塩基、糖、リン酸の少なくともいずれか1つにおいて置換や修飾が生じた核酸、天然には存在しないような塩基、糖あるいはリン酸を有する核酸、糖−リン酸骨格以外の骨格(バックボーン)を有する核酸等が挙げられる。これらの核酸は、ヌクレアーゼ耐性、組織選択性、細胞透過性、結合力の少なくとも1つが高められた誘導体として好適である。すなわち、SJ2368の活性発現を抑制し得る機能を有する限り、核酸の形態に制限はない。
また本発明では、一般的には、ステム・ループを形成しているmRNAのループ部分にハイブリダイズするような塩基配列、すなわちステム・ループを形成している領域の塩基配列に相補的な塩基配列をもつアンチセンス核酸が好適である。あるいは、翻訳開始コドン付近、リボソーム結合部位、キャッピング部位、スプライス部位に結合するようなアンチセンス核酸、すなわちこれらの部位の配列に相補的な配列を有するアンチセンス核酸も、一般に高い発現抑制効果が期待できる点で好ましい。
この様なアンチセンス核酸を細胞内に取り込ませ、効率的に作用させるためには、本発明のアンチセンス核酸の鎖長は15塩基以上30塩基以下、好ましくは15塩基以上25塩基以下、より好ましくは18塩基以上22塩基以下の塩基数からなる塩基配列からなるものが好適である。
本発明のアンチセンス核酸の発現抑制効果は、公知の手法、例えば本発明の遺伝子の発現制御領域、5’非翻訳領域、翻訳開始部位近傍領域または翻訳領域の一部等を含むDNAとルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した発現プラスミドを作製し、in vitro transcription反応(プロメガ社:Ribo max system等)とin vitro translation反応(プロメガ社:Rabbit Reticulocyte Lysate System等)を併用する系のような本発明の遺伝子が転写または翻訳される環境下で候補物質を系に添加し、該レポーター遺伝子の発現量を測定することにより評価することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、生体内におけるsj2368の発現を抑制することができるので、SJ2368が関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
発明を実施するための最良の形態
(核酸)
本発明のDNAをDNAライブラリーから得る例としては、適当なゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法等でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。ハイブリダイゼーション法によるスクリーニングは、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列もしくはその一部を有するDNAを32P等でラベルしてプローブとし、任意のcDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに対して、公知の方法で(例えば、Maniatis T.等,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring harbor Laboratory,New York,1982年)行うことができる。イムノスクリーニング法で用いる抗体は、後述する本発明の抗体を使用することができる。本発明の新規DNAはまた、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。PCRは、配列番号1または配列番号15に記載の塩基配列をもとに、センスプライマー、アンチセンスプライマーを作製し、任意のDNAライブラリーに対し、公知の方法(例えばMichael A.I.等,PCR Protocols,a Guide to Methods and Applications,Academic Press、1990年参照)等を行って、本発明のDNAを得る事もできる。上記各種方法で使用するDNAライブラリーは、本発明のDNAを有するDNAライブラリーを選択して使用する。当該DNAライブラリーは、本発明のDNAを有するライブラリーであれば、いかなるものも使用可能であり、市販のDNAライブラリーを使用したり、本発明のDNAを有する細胞からDNAライブラリーを作製するのに適した細胞を選び公知の方法(J.Sambrook 等、Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989年参照)に従って、DNAライブラリーを作製し、利用することができる。
また、本明細書に開示された配列を基にホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製することも可能である。
本発明のDNAを含む組換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。かかる組換えベクターは、本発明のDNAの全部または一部に加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサーの配列、プロモーターの配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。本発明の組換えベクターの好ましい一例は、発現ベクターである。
遺伝子組換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明のDNAに付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させあるいは消失させることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、本発明のDNAを基に任意かつ容易に加工することができる。
また本発明のDNAを保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス等の種々のウイルスを用いることも可能であり、特に制限はない。
本発明の遺伝子の発現は、該遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。かかる発現系を用いれば、本発明の遺伝子の転写を促進あるいは抑制する物質の探索がより有利に行える。あるいは、本発明の遺伝子の上流に別の適当な発現プロモーターを該遺伝子固有のプロモーター配列に接続あるいは置き換えて使用することもできる。この場合に使用するプロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター、延長因子1α(Elongation Factor 1α)プロモーター等を例示できるが、当然ながらこれらには限定されない。
DNAをベクターに導入する方法は公知である(J.Sambrook等、Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)。すなわち、DNAとベクターをそれぞれ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片を、DNAリガーゼを用いてライゲーションさせればよい。
(蛋白質)
本発明の蛋白質は、該蛋白質を発現している細胞や組織から調製することができ、またペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー433A型、アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社製)を使用した化学合成法でも、また原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製することができる。しかしながら、その純度の面から遺伝子工学的な手法による生産ならびに組換え型蛋白質が好ましい。
前項の組換えベクターを用いて形質転換させる宿主細胞には特に制限はなく、E.coli、B.subtilisあるいはS.cerevisiaeに代表される遺伝子工学手法において利用可能な下等細胞、昆虫細胞、COS7細胞、CHO細胞、HeLa細胞に代表される動物細胞など多くの細胞が、本発明に対しても利用可能である。
本発明の形質転換細胞は、適当な宿主細胞を本発明の組換えベクターにより形質転換させることで得ることができる。前項の組換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロボレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社、参照)があるが、いずれの方法を用いても構わない。
当該蛋白質を遺伝子工学的に生産するには、上述の形質転換細胞を培養して培養混合物を回収し、当該蛋白質を精製する。形質転換細胞の培養は、一般的な方法で行うことができる。形質転換細胞の培養については各種の成書(例、「微生物実験法」社団法人日本生化学会編、株式会社東京化学同人、1992年)があるので、それらを参考にして行うことができる。
培養混合物から本発明の蛋白質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
また、本発明の蛋白質を他の蛋白質(例、免疫グロブリンのFc断片)やタグ(例、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインA、ヘキサヒスチジンタグ、FLAGタグその他)との融合蛋白質として発現させることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ(例、トロンビン、エンテロカイネースその他)を用いて切り出すことが可能であり、ときとして蛋白質の調製をより有利に行うことが可能となる。また、免疫グロブリンのFc断片を用いた場合などは、二量体形成能を賦与するなど、本発明の蛋白質の活性または機能を向上または修飾することが可能である。本発明の蛋白質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせて行えばよく、特に融合蛋白質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精製法を採用することが好ましい。
また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(J.Sambrook,et al.:Molecular Cloning 2nd ed.(1989年))で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
この様に本発明の蛋白質は、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質の形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本願発明の蛋白質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合など、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。また、用いる宿主によっては糖鎮の付加の有無あるいはその程度にも違いが認められる。かかる場合にあっても、SJ2368としてのリガンドへの結合能または細胞内シグナル伝達を惹起する活性を有する限りにおいて、なお、本発明であると理解されたい。
本発明の蛋白質は、抗体を作製するための抗原として使用し、あるいは該蛋白質に結合する物質や該蛋白の活性を調節する物質のスクリーニングに使用することができ、有用である。
本発明のSJ2368は、上述のような形質転換細胞、特に動物細胞を培養することにより、その細胞表面に目的分子を高発現させることが可能である。一方、SJ2368の細胞外領域タンパクフラグメントなどの適当な断片を可溶性タンパクとして製造する場合には、当該細胞外領域あるいは各ドメインをコードするDNAを用いて上述のように形質転換細胞を調製し、該形質転換細胞を培養し、培養上清中に分泌させることにより製造することができる。
一方、SJ2368が形質転換細胞のペリプラズムまたは細胞質内に存在する場合は、適当な緩衝液に懸濁した細胞に対して、例えば超音波処理、凍結融解処理、あるいはリゾチーム処理などを行って細胞壁および/または細胞膜を破壊した後、遠心分離やろ過などの方法で本発明の蛋白質を含有する膜画分を得、さらに該膜画分を適当な界面活性剤を用いて可溶化して粗溶液を調製する。そして、当該粗溶液から定法により目的蛋白質を単離、精製することができる。
(sj2368遺伝子組換え非ヒト動物)
本発明は、sj2368遺伝子組換え非ヒト動物を提供する。sj2368遺伝子組換え非ヒト動物には、トランスジェニック非ヒト動物およびノックアウト非ヒト動物が含まれる。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の蛋白質をコードする遺伝子を該動物の染色体上に人為的に組み込むことにより、本発明の蛋白質の発現の程度、発現時期、発現部位等が制御されることを特徴とする。非ヒト動物としては、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ウマ、ニワトリなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。非ヒト動物の中でも非ヒト哺乳動物が好ましい。
本発明のsj2368を用いれば、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。このトランスジェニック非ヒト哺乳動物も本願の発明に属する。該トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、トランスジェニック動物の製造において通常使用されるような定法(例、発生工学実験マニュアル、講談社サイエンティフィク発行、勝木元也編、野村達次監修、1987年)に従って作製することができる。すなわち、本発明の遺伝子または組換えベクターを非ヒト動物の全能性細胞に導入し、この細胞を個体へと発生させ、体細胞のゲノム中に導入遺伝子が組み込まれた個体を選別する。
具体的には、例えば、トランスジェニックマウスの場合には、正常C57BL/6マウスから取得した前核期受精卵にsj2368遺伝子が発現可能なように構築されたDNAを直接注入する。より具体的には、適切なプロモーターの下流にsj2368遺伝子を接続して導入したコンストラクトを作製し、その後必要であれば原核生物由来の配列を可能な限り除去した直鎖状DNAを得て、これを前核期受精卵前核に微細なガラス針を用いて直接注入する。
該受精卵を仮親となる別の偽妊娠マウスの子宮に移植する。偽妊娠マウスは一般的にICR雌マウスを、精管を切断または結紮した雄マウスと交配して作製する。移植胚由来の仔の組織よりゲノムDNAを抽出し、PCR法またはサザンブロッティング法にてsj2368遺伝子の導入の有無を確認しトランスジェニックマウスを得る。
また、sj2368(またはsj2368のマウス相同遺伝子)の塩基配列に基づいて、いわゆる「ノックアウトマウス」を作製することができる。本発明における「ノックアウトマウス」とは、本発明のマウス由来のタンパクをコードする内在性遺伝子がノックアウト(不活性化)されたマウスであり、例えば相同組換えを応用したポジティブネガティブセレクション法(米国特許第5,464,764号公報、同5,487,992号公報、同5,627,059号公報、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,8932−8935,1989、Nature,Vol.342,435−438,1989など)を用いて作製することができ、このようなノックアウトマウスも本発明の一態様である。
または、最近中大動物においても核移植によるクローン動物の作出が可能となった。これに伴い本技術を用いたTGおよびKO動物の作出も実際に行われるようになった。すなわち体細胞、あるいは生殖系列の細胞に対しsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)の塩基配列に基づいて、ES細胞に対して行うのと同様に相同組換えを行い、得られた細胞から核を得て、その核を用いてクローン動物を得ることができる。該動物はsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)が失われたノックアウト動物である。または、上述の方法と同様、任意の動物の任意の細胞にsj2368(または各動物におけるsj2368の相同遺伝子)遺伝子を導入し、その核を用いてクローン動物を得る事によりTG動物を作製する事も可能である。このようなノックアウト非ヒト動物およびトランスジェニック非ヒト動物はその種に関わらず本発明の一態様である。
(抗体)
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれも公知方法を参考にして得ることができる(例えば、免疫実験操作法、日本免疫学会編、日本免疫学会発行、参照)。
以下に簡単に説明する。
当該新規抗体を得るには、まず動物に、免疫抗原として本発明の蛋白質を必要に応じてフロイントの完全アジュバント(FCA)や不完全アジュバント(FIA)等の適切なアジュバントとともに接種し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血を行い、抗血清を得る。抗原として用いる本発明の蛋白質は、それが抗体の作製に使用しうる精製度のものであればいかなる方法で得られたものであってもよい。本発明の蛋白質の部分ポリペプチドも免疫抗原として好適に使用しうる。免疫抗原として使用するポリペプチドが、低分子のポリペプチド、すなわち約10〜20アミノ酸からなるポリペプチドである場合には、それをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のキャリアと結合させて抗原として使用すればよい。免疫する動物はいかなるものであっても良いが、好ましくは通常当業者で免疫学的な実験に使用されるラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウシ等から、目的の抗体を産生しうる動物種を選択して使用することが好ましい。
ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得る事が出来る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行えば良い。
モノクローナル抗体を得るには以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、ポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等を用いる公知方法によって、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。その後、本発明の蛋白質に結合する抗体を産生しているクローンを選択して培養し、その選択されたクローンの培養上清を精製することによって得れば良い。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて用いれば良い。
また、遺伝子工学的な方法を用いても当該新規抗体が得られる。例えば、本発明蛋白質またはその部分ポリペプチドで免疫した動物の脾細胞、リンパ球あるいは、本発明蛋白質またはその部分ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを採取し、これをもとにcDNAライブラリーを作製する。抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養混合物から目的とする抗体を公知方法を組み合わせて精製することができる。抗体を治療に使用する場合には、免疫原性の点からヒト化抗体が好ましい。ヒト化抗体は、免疫系をヒトのものと入れ替えたマウス(例 Nat.Genet.15;146−156(1997))を免疫することにより調製することが出来る。また、モノクローナル抗体の超可変領域を用いて遺伝子工学的に調製することもできる(Method in Enzymology 203;99−121(1991))。
(アンチセンス核酸)
アンチセンス核酸は、公知方法で製造することができる(例えば、Stanley T.CrookeおよびBernald Lebleu編、in Antisense Research and Applications,CRC出版、フロリダ、1993年)。天然のDNAやRNAであれば、化学合成機を使用して合成し、あるいはsj2368を鋳型としてPCR法により本発明のアンチセンス核酸を得ることができる。また、メチルフォスフォネート型やフォスフォロチオエート型等、誘導体の中には化学合成機(たとえばアプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社製、Expedite Model 8909)を使用して合成できるものもある。この場合には、化学合成機に添付されたマニュアルに従って操作を行い、得られた合成産物を、逆相クロマトグラフィー等を用いたHPLC法により精製することによっても、アンチセンス核酸を得ることができる。
本発明のDNAやアンチセンス核酸を診断用のプローブとして使用する場合には、それらを公知の方法に従い、ラジオアイソトープ、酵素、蛍光物質、あるいは発光物質等で標識する。次に、検体からDNAもしくはmRNAを公知方法で調製し、これを被検物質として、前記標識プローブを加えて反応させた後、洗浄して未反応の前記標識プローブを除去する。被検物質中に、遺伝子sj2368もしくはRNAが含まれていれば、当該アンチセンス核酸はそれらと結合する。結合形成の有無は、標識した酵素、蛍光物質、発光物質、あるいは放射性同位元素等による発光、蛍光、放射能等を指標として知ることができる。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターを医薬用途に使用する場合には、医薬品として使用するのに適した純度のものを、薬理学的に許容されうる使用方法で使用することが好ましい。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターは、それらを直接適当な溶媒に溶解もしくは懸濁して使用してもよいし、リポソーム中に封入したり、適当なベクターに組み込んだ形にして使用してもよい。また、必要に応じて、薬理学的に許容され得る補助成分を添加し、注射剤、錠剤、カプセル剤、点眼剤、クリーム剤、座剤、噴霧剤、パップ剤等適当な剤型にして使用してもよい。薬理学的に許容され得る補助成分とは、溶媒、基剤、安定化剤、防腐剤、溶解剤、賦形剤、緩衝剤等のことである。
本発明のDNA、アンチセンス核酸または組換えベクターは、上述のような剤型とした場合、患者の年齢や、性別、疾患の種類、程度に応じて、その投与方法、その投与量を設定して使用することができる。すなわち、病態を改善するのに適した量を、経口投与、あるいは、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与すればよい。
(スクリーニング方法)
本発明は、本発明の蛋白質、該蛋白質を発現している形質転換細胞、本発明のDNA、該DNAを含む組換えベクター、該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞またはsj2368遺伝子組換え非ヒト動物を用いることを特徴とし、本発明の蛋白質の機能または発現を調節する物質をスクリーニング方法に関する。より具体的には、(1)候補物質を用意し、本発明の蛋白質または該蛋白質を発現している形質転換細胞に該候補物質を接触させ、該候補物質が本発明の蛋白質の活性を調節する作用を有するかどうかを判定することからなる方法、(2)候補物質を用意し、本発明のDNAを含む組換えベクターまたは該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞に該候補物質を接触させ、該候補物質がsj2368遺伝子の発現を調節する作用を有するかどうかを判定することからなる方法などが挙げられる。(1)の例としては、実施例6に示す系において、候補物質存在下/非存在下における本発明の蛋白質の活性を測定し、非存在下に比べて存在下において本発明の蛋白質の活性を増加または減少させる候補物質を選択する方法が挙げられる。(2)の例としては、sj2368遺伝子の発現制御領域、5’非翻訳領域、翻訳開始部位近傍領域または翻訳領域の一部等を含むDNAとルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した発現プラスミドを作製し、本発明の遺伝子が転写または翻訳される環境下で該レポーター遺伝子の発現量を候補物質の存在下/非存在下で測定し、候補物質の転写促進活性または転写抑制活性を確認する方法が挙げられる。本発明のスクリーニング方法は、本発明の蛋白質、該蛋白質を発現している形質転換細胞、本発明のDNA、該DNAを含む組換えベクター、該組換えベクターで形質転換された形質転換細胞またはsj2368遺伝子組換え非ヒト動物と候補物質を接触させる工程;候補物質添加群と候補物質無添加群とにおける本発明の蛋白質の活性または本発明のDNAの発現レベルに差があるかどうかを検出する工程;差が認められた候補物質を本発明の蛋白質の活性調節物質または本発明のDNAの発現調節物質として選択する工程を含み得る。本発明の蛋白質の活性を調節する作用を示す物質とは、SJ2368蛋白質および/または可溶型SJ2368蛋白質の活性を増強あるいは阻害する作用を有する物質(アゴニストまたはアンタゴニスト)のいずれでも良いが、好ましくはアンタゴニストである。本発明のDNAの発現調節作用を示す物質とは、遺伝子sj2368の発現を促進あるいは抑制する作用を有する物質のいずれでもよいが、好ましくは抑制する作用を有する物質である。候補物質が本発明の蛋白質の活性調節作用または本発明のDNAの発現調節作用を示すかどうかは、蛋白質の活性を確認できる系またはDNAの発現を確認できる系に候補物質を添加した場合と無添加の場合の蛋白質の活性またはDNAの発現レベルに差があるかどうかを調べればよい。DNAの発現レベルとは、sj2368遺伝子のmRNAの発現強度、蛋白質の発現強度のいずれにより検出しても良い。また、sj2368遺伝子またはSJ2368蛋白質自体の発現レベルではなく、代替としてレポーター遺伝子の発現レベルを検出しても良い。レポーターアッセイ系は、転写調節領域の下流に配置したレポーター遺伝子の発現量を指標として、該転写調節領域に作用する物質をスクリーニングするアッセイ系をいう。転写調節領域としては、プロモーター、エンハンサー、通常プロモーター領域に見られるCAATボックス、TATAボックス等を例示することができる。またレポーター遺伝子としては、CAT(chloramphenicol acetyl transferas)遺伝子、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)遺伝子等を利用することができる。本発明の遺伝子の発現制御領域や5’非翻訳領域は公知の方法で取得することが可能である(新細胞工学実験プロトコール(秀潤社)、1993年)。阻害(または抑制)する作用を有する、あるいは増強(または促進)する作用を有するとは、蛋白質の活性またはDNAの発現レベルの測定値が、候補物質添加群と、候補物質無添加群との間に差があることをいう。たとえば、下記の式で計算される阻害(または抑制)率あるいは増強(または促進)率が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上であることをいう。
阻害(または抑制)率あるいは増強(または促進)率=(候補物質無添加群の測定値−候補物質添加群の測定値)の絶対値/無添加群の測定値×100
ここで、阻害または増強のどちらの活性であるかについて、および測定値については蛋白質の活性を確認できる系またはDNAの発現を確認できる系の種類によって適宜定められる。たとえば、蛋白質の活性を確認できる系が実施例6に示すルシフェラーゼアッセイ系の場合には、測定値としてはルシフェラーゼ活性を用いることができ、候補物質添加群の測定値<候補物質無添加群の測定値となる場合、候補物質にはSJ2368蛋白質活性阻害作用があるといえる。また蛋白質の活性を確認できる系が実施例10に示すT細胞のIFN−γ産生の測定系の場合には、測定値としてはIFN−γ産生量を用いることができ、候補物質添加群の測定値<候補物質無添加群の測定値となる場合、候補物質には可溶型SJ2368蛋白質活性阻害作用があるといえる。測定系にバックグラウンドやノイズの値が含まれる場合には、そのようなものを差し引いた値を測定値とすることは言うまでもない。
上述のスクリーニング方法あるいはトランスジェニック動物を用いた探索を通じて得られる化合物等は、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等に対する有効な治療薬または予防薬となることが期待される。候補物質としては蛋白質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、合成化合物、天然由来化合物、醗酵生成物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられるがこれに限定されず、新規物質でも公知物質でもよい。
<本発明の抗体を用いる測定法、試薬、キット>
本発明は、(1)本発明の抗体を用いることを特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質の測定方法、(2)本発明の抗体を含有すること特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質を測定するための試薬またはキット、(3)ヒト体液中の可溶型SJ2368蛋白質量の増加または減少を測定し、SJ2368の機能異常、それらを伴う疾患または該疾患に付随する病態の予知、検出または診断に用いる(1)に記載の可溶型SJ2368蛋白質の測定方法、(4)前記疾患が肝不全、痴呆、骨粗しょう症、心不全、肺腫瘍および狭心症より選ばれる少なくとも1つの疾患である(3)に記載の測定方法を提供する。
本発明の測定方法は、本発明の抗体を用いるステップを含むが、該ステップは、対象試料中の被験物質である可溶型SJ2368蛋白質と本発明の抗体との抗原抗体反応により、対象試料中の被験物質をトラップする工程であることが好ましい。本発明の測定方法における被験物質の検出原理は特に限定されないが、凝集法、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法等が例示される。この内、サンドイッチ法及び競合法が好ましく、特にサンドイッチ法が好ましい。凝集法では、抗体を粒子、例えばラテックス粒子や赤血球(例えば羊赤血球)の表面に結合させて、可溶型SJ2368蛋白質が存在すると粒子の凝集が生じるようにし、この粒子の凝集の程度を指標として可溶型SJ2368蛋白質を測定する。
なお、この凝集法では、ラテックスや赤血球以外にも、ゼラチンやマイクロビーズ、カーボン粒子等、一般に用いられている粒子を使用することができる。また、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法では、標識された抗体や抗原を使用し、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ケミルミネッセンスイムノアッセイ(化学発光免疫測定法)、フルオロイムノアッセイ(蛍光免疫測定法)、時間分解蛍光免疫測定法(TR−FIA)、イムノクロマトグラフィーアッセイ(ICA)等の原理で測定を行なうことができる。
以下に、本発明の測定方法の好適例の1つである、EIAの原理に基づく、サンドイッチ法、固相直接法、競合法を説明する。EIAによるサンドイッチ法では、まず、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等の酵素で標識した、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体または二次抗体を準備する。特にポリペルオキシダーゼ標識した抗体は好ましい例である。また、使用する固相には、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体を吸着させておく。サンプル(試料)もしくはスタンダードを添加後、上述の酵素標識抗体を添加し、抗原抗体反応を行なわしめる。過剰の酵素標識抗体を洗浄操作で除去した後、使用する酵素に応じた発色基質、例えばオルトフェニレンジアミンとH2O2、p−ニトロフェニルリン酸、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド等を加えて酵素と反応させる。基質の発色は、酵素量、ひいてはサンプル中の可溶型SJ2368蛋白質に依存するので、発色最終産物の量を測定することにより可溶型SJ2368蛋白質を定量することができる。
固相直接法では、サンプル(試料)を直接固相に吸着させ、固相の可溶型SJ2368蛋白質非吸着面を、その測定系には影響しないタンパク質、例えば BSA(ウシ血清アルブミン)などでブロッキング処理し、次いで可溶型SJ2368蛋白質を認識する酵素標識抗体を添加し、反応させる。以降は、サンドイッチ法と同様の操作を行ない、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質の有無を判定するか定量を行う。
競合法では、使用する抗体が認識する一定量の可溶型SJ2368蛋白質を直接固相に吸着させ、次いでブロッキング処理した後、ここに、可溶型SJ2368蛋白質を認識する酵素標識抗体とサンプル(試料)とを添加する。一定時間反応させた後、洗浄して固相に非結合の物質を除去し、発色基質を加えて酵素と反応させる。反応後、サンプル添加による、酵素標識抗体の固相可溶型SJ2368蛋白質への結合阻害度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を定量する。
なお、はじめに抗体を固相に吸着させ、酵素標識した可溶型SJ2368蛋白質をサンプルと同時に添加し、サンプル添加による標識物の固相化抗体への結合阻害度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を定量してもよい。
上記以外の方法として、抗原抗体反応を液相中で行ない、後に、抗体を用いた凝集沈降法もしくは物理化学的な手法によって、標識抗体と結合した可溶型SJ2368蛋白質と結合しなかった可溶型SJ2368蛋白質を分離し定量する方法もある。また、可溶型SJ2368蛋白質を認識する抗体を標識するのではなく、その抗体を認識する二次抗体を得、それを標識し、抗原抗体反応を行なわせて、可溶型SJ2368蛋白質を測定することも可能である。
サンドイッチ法、固相直接法、競合法のいずれにおいても、標識酵素−発色基質の組合せを、標識酵素−生物発光基質または化学発光基質、標識酵素−蛍光基質等の組合せに変えることが可能である。この場合の、酵素−発光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−AMPPD、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−ルミノール、ルシフェラーゼ−ルシフェリン等があり、酵素−蛍光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−ウンベリフェリルフォスフェート、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−p−ハイドロキシフェニルプロピオン酸等がある。
さらに、上記3種の測定方法において、酵素に代わって、放射性物質や化学発光物質あるいは蛍光物質で直接あるいは間接的に標識された抗体や抗原を用い、放射能や発光、蛍光の強度を測定することにより、サンプル中の可溶型SJ2368蛋白質を測定することも可能である。
放射性物質としては、125Iや131I等が一般に使用されており、化学発光物質の代表的な物には、アクリジニウムエステル等がある。また、蛍光強度を測定する場合には、より高感度な方法として、抗体あるいは抗原にキレート剤を直接あるいは間接的に結合させ、励起光照射後にそのキレート剤に結合する希土類金属から発せられる蛍光の強度を時間分解的に測定することにより、試料中の可溶型SJ2368蛋白質を測定する方法(時間分解蛍光免疫測定法)も有用である。なお、代表的な希土類金属の例として、ユーロピウムがあげられる。
本発明の測定方法は、以上説明したように、試料中の可溶型SJ2368蛋白質を検出または測定することを目的としている。この場合、被験試料は動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片があげられるが、体液であることが好ましい。より好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、腹水、胸水より選ばれる試料である。
本発明の測定方法を用いて健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中の可溶型SJ2368蛋白質を測定することができる。また、初めて体液中の可溶型SJ2368蛋白質濃度が明らかとなり、特定の疾患において可溶型SJ2368蛋白質濃度が変動することも明らかとなった。健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中の可溶型SJ2368蛋白質の濃度を比較する際には、当業者が通常用い得る統計学的手法を用いて両者の測定値に差があるか否かを判断すればよい。
なお、本発明の測定試薬及びキットは、上記した測定方法の構成等に準拠することができる。
実施例
以下の実施例により本発明を更に詳述するが、本発明はこれら実施例に限定して理解されるべきものではない。
実施例1 ヒト遺伝子sj2368のクローニング
(1)ヒト脾臓由来cDNAのクローニング
ヒト脾臓由来cDNAライブラリーの構築は、Oharaらの方法(DNA Research、4、pp.53−59(1997))に従った。即ち、具体的にはNotI部位を有するオリゴヌクレオチド(GACTAGTTCTAGATCGCGAGCGGCCGCCC(T)15:配列番号4)(ギブコBRL社)をプライマーとして、ヒト脾臓mRNA(クローンテック社)を鋳型にSuperscriptII逆転写酵素キット(ギブコBRL社)で2本鎖cDNAを合成した。SalI部位を有するアダプター(ギブコBRL社)をcDNAとライゲーションした。その後、NotI消化し、1%濃度の低融点アガロース電気泳動により、3kb以上のDNA断片を精製した。
精製cDNA断片を、SalI−NotI制限酵素処理したpBluescript II SK+プラスミドとライゲーションした。大腸菌 ElectroMax DH10B株(ギブコBRL社)にエレクトロポーレーション法によりこの組換えプラスミドを導入した。次いで、こうして構築したcDNAライブラリーから、約10,000個の組換え体を選択し、これらのクローンの両末端DNA配列を決定した。この中から、新規遺伝子を含む約150個のクローンのcDNAに関して全塩基配列の決定を行った。
配列決定には、株式会社島津製作所製のDNAシーケンサー(RISA)とPEアプライドバイオシステム社製反応キットを使用した。大部分の配列は、ショットガンクローンをダイターミネーター法を用いて決定した。
(2)cDNAクローン塩基配列及びその推定蛋白質情報の解析
(1)に記載の方法で取得したプラスミドsj02368には、配列番号2で表される520個のアミノ酸からなる新規な蛋白質をコードする、配列番号1で表される1560塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレームを含む、全長4519塩基対の塩基配列(配列番号3)からなるcDNAが含まれていた。配列番号1で表される1560塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレームを含むプラスミドsj02368は、国際微生物寄託機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(宛名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2001年9月18日に寄託され、2002年9月17日にブダペスト条約に基づく寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8182)。
(3)cDNAクローン及びその推定蛋白質の相同性解析とモチーフ解析
相同性の検索にはBLAST(J.Mol.Evol.、Vol.36;290−300(1993)、J.Mol.Biol.、Vol.215;403−10(1990))を用いて、局部的な配列の一致を検索した。
配列番号2で表される蛋白質配列を、相同性検索を行うblastpプログラムを用いてGenbank蛋白質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に対しBLAST相同性検索を行った。その結果、312残基にわたりマウスinterferon(alphaand beta)receptor(GenBank Accession: NP_034638)との相同性が37%および同一性が23%、190残基にわたりヒトinterleukin 20 receptor,alpha(Gen Bank Accession: NP_055247)との相同性が39%および同一性が28%みられた。
また、重み行列を用いた膜貫通予測プログラムtmap(Persson B,Argos P.、J Mol Biol.、Vol.237;182−192(1994))により膜貫通ヘリックスの予測をおこなったところ、226番目から252番目のアミノ酸残基の27残基において膜貫通領域が予測され、重み行列を用いたシグナルペプチド切断部位予測プログラムsigcleave(von Heijne G.、Nucleic Acid Research.、Vol.14;4683 − 4690(1986))によりシグナルペプチの予測をおこなったところ、8番目から20番目のアミノ酸残基の13残基においてシグナルペプチドが予測された。
モチーフ解析により、SJ2368の細胞外領域に、43番、68番、111番のトリプトファン(W)、74番と82番、195番と217番のシステイン残基のペアといったクラスIIサイトカイン受容体モチーフが認められた。これらの特徴は、IL−20受容体、IL−10受容体、インターフェロンalpha/beta受容体にも認められる。また、細胞内領域にはJAK−STAT系活性化への関与が予測される3つのチロシン残基が認められた。以上に述べたSJ2368の構造の特徴を第1図に示す。
実施例2 ATAC−PCRを用いた発現プロファイルの解析
Adaptor−tagged competitive PCR(ATAC−PCR)は外部機関へ委託し、Nucleic Acids Research 25;4694−4696の方法に従って行った。また解析に用いたヒトRNAは以下の通りである。ヒト冠状動脈血管内皮細胞(HCAEC;TAKARA社)及びヒト冠状動脈血管平滑筋細胞(CASMC;TAKARA社)から定法によりtotal RNAを抽出し、さらにmRNAを調製した。また、ヒト末梢血由来白血球を50μg/mlのPHA存在下あるいは非存在下で5時間培養した後にtotal RNAを定法により抽出し、mRNAを調製した。さらにヒトの肺、膵臓、心臓、副腎、精巣、胎児肝臓、胎児腎臓、脳のmRNAおよび腎臓、肝臓、小腸、胸腺、脾臓のtotal RNAをCLONTECH社より購入し、total RNAで購入したものはmRNAを調製した。大腸のmRNAはSTRATAGENE社より購入した。次に、これら各mRNA0.12μgよりオリゴdTプライマーを用いて1本鎖cDNAの合成を定法に従って行った。逆転写酵素としてはSuperScriptIIRNase H− Reverse Transcriptase(Invitrogen社)を用いた。また、PCRに用いたsj2368特異的なプライマーの配列は5’−AAG CTA TGT CAG AAA TTA AAC TC−3’(配列番号5)である。解析した結果、sj2368は末梢白血球、胎児肝臓、脳で強く発現し、HCAEC、胎児腎臓、肝臓、CASMCで弱く発現していた。
実施例3 ヒトSJ2368の発現
実施例1で得られたプラスミド、sj02368より翻訳領域を含むcDNA配列を調製し、哺乳動物細胞発現プラスミドに定法に従って挿入し、ヒトSJ2368発現プラスミドを構築する。その後、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlを上記プラスミドDNA12.5μgと添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加することによりヒトSJ2368を発現することができる。すなわち、実施例1で得られたsj02368を制限酵素で消化し、翻訳領域を含むcDNA断片を調製した。このDNA断片を別途調製した哺乳動物細胞発現ベクターとライゲーションし、コンピテントセルJM109(タカラバイオ株式会社)を形質転換した。得られたコロニーよりプラスミドを調製した後に、cDNA配列の確認を行い、SJ2368発現プラスミドを得た。
実施例4 可溶型ヒトSJ2368の発現
抗体作製用の投与抗原として用いるため、ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒスチジンタグあるいはヒトIgG Fcフラグメントとのキメラ(融合)蛋白質を生産した。ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒスチジンタグのキメラ蛋白質であるヒトSJ2368−Hisの発現プラスミドは以下の方法にて構築した。即ち、センスプライマー1(5’−CCG CTC GAG CAG GAA GGC CAT GGC GGG GCC CGA G−3’:配列番号6)とアンチセンスプライマー1(5’−CGC GGA TCC GGC TTC TGG GAC CTC CAG CAA GAA−3’:配列番号7)を合成し、実施例1で取得したプラスミドsj02368を鋳型にPyrobest DNA Polymerase(TAKARA)により98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを30回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をXhoI及びBamHIにて消化し、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した。またpcDNA3.1/Myc−His(−)AをXhoI及びBamHIにて消化し、前述のDNA断片をライゲーションした。コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いヒトSJ2368−His発現プラスミドを調製した。ヒトSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントのキメラ蛋白質であるヒトSJ2368−Fcの発現プラスミドは以下の方法で構築した。センスプライマー2(5’−CCG GAA TTC AGG AAG GCC ATG GCG GGG CCC GAG C−3’:配列番号8)を合成し、アンチセンスプライマー1を用い、sj02368を鋳型にPyrobest DNA Polymerase(TAKARA)により98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを30回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をEcoRI及びBamHIにて消化し、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した。
また再公表WO97/42319に記載のPM1304をEcoRIおよびKpnIにて消化した後に、約7.1kbの断片を回収した。次にpM1304をBamHIとKpnIにてダブルダイジェスチョンして、0.7kbのDNA断片を回収した。これら2種のDNA断片と、前述のDNA断片をライゲーションした。コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いヒトSJ2368−Fc発現プラスミドを調製した。この構築で得られるヒトSJ2368−Fc蛋白質のアミノ酸配列は配列番号19に示すとおりである。得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μlと上記各プラスミドDNA12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。培養上清中に含まれるヒトSJ2368−His及びヒトSJ2368−FcをSDS−PAGE実施後、抗ヒスチジンタグ抗体(Penta・His Antibody;QIAGENおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体;DAKO)あるいは抗Fc抗体(パーオキシダーゼ標識抗ヒトIgA,IgG,IgM,Kappa,Lambda抗体;DAKO)を用いてウエスタンブロッティングにて検出を行った(第3図)。ヒトSJ2368−His及びヒトSJ2368−Fcが培養上清中に発現されていることが確認された。
さらにヒトSJ2368−Hisはニッケルカラムを用いて培養上清より精製し、ヒトSJ2368−FcはProteinAカラムを用いて精製した。
実施例5 抗SJ2368抗体の作製
(1)SJ2368の部分ペプチドの調製
SJ2368に対する抗体を作製するため、SJ2368の細胞外ドメインのN末端及びC末端の配列あるいはChou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析を行い、親水性が高く構造的にはαヘリックスを含むなどタンパク表面に露出しているであろう配列を選び出し、合成を行う。ペプチドの合成はModel 433Aペプチドシンセサイザー(アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社)を用いて、キャリア蛋白と結合できるようにするため、C端にシステインを付加し合成する。定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPDELL−PAK、資生堂)を用いて精製を行う。
(2)SJ2368のペプチド免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mlに溶解し、10mg/mlのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合を行う。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(アマシャム ファルマシアバイオテク)で脱塩する。蛋白濃度は使用したKLH量を液量で割ったものを用い、算出する。
(3)SJ2368抗体の作製
(3−1)ポリクローナル抗体の作製
SJ2368に対するウサギポリクローナル抗体を作製するため、調製した各ペプチド抗原をそれぞれ各40μgずつ混合し、0.5mlとする。その後、等量のフロインド完全アジュバント(DIFCO)と混合し、ウサギの背部皮下に投与を行う。2週間後、同量をフロインド不完全アジュバント(DIFCO)と混合したものを投与し、2週間後耳静脈より採血し抗血清を調製する。同様に実施例4で産生および精製したSJ2368−Fcを30μg/bodyで投与し、抗血清を作製する。
(3−2)ペプチド抗体の作製
調製した各ペプチドキャリア抗原20μgを100μlの生理食塩水に溶解し、フロインド完全アジュバントと等量混合を行う。BALB/cマウス5週齢メスの腹腔に投与し、2週間後ペプチドキャリア抗原20μgを100μlの生理食塩水に溶解し、フロインド不完全アジュバントと等量混合し同様に腹腔に投与する。1週間後眼底より採血を行い、抗体価の上昇をウエスタンブロッティングにより確認する。すなわち組換えSJ2368蛋白質を4−20%SDS−ポリアクリルアミドゲル(TEFCO)にて電気泳動し、ミリポア社の方法にしたがってPVDF膜に転写する。転写後5%スキンミルク、0.05%Tween20を含む0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下T−PBSと記載)にてブロッキングを行う。採血した抗血清を0.5%BSAを含むT−PBSで500倍に希釈し、転写したPVDF膜と4℃で一夜反応させる。メンブレンをT−PBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO)を0.5%BSAを含むT−PBSで500倍に希釈し、メンブレンと室温で1時間反応させる。その後、メンブレンをT−PBSで3回洗浄後、ECL(アマシャム ファルマシアバイオテク)で検出する。以上の操作で抗体価の上昇を確認し、抗原の最終投与3日後、脾細胞よりリンパ球を分離し、Sp2/O−Ag14(ATCC No. CRL1581)と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社)にしたがって細胞融合を行う。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後に目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行う。
0.01M炭緩衝液(pH9.5)を用い、実施例4で生産及び精製するSJ2368−Hisを1μg/mlに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μl/ウエル添加する。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.5%BSAを含む0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下PBSと記載)を各ウエルに100μl添加し、ブロッキングを行う。次に培養上清を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄する。ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体を10%ウサギ血清を含むPBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μl添加した。37℃で1時間反応後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し0.01%過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン溶液を各ウエルに添加する。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止する。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定する。この結果をもとに、SJ2368と反応する細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行う。10日後、同様にスクリーニングを行い、SJ2368と反応する抗体を産生するクローンを取得することができる。選択したハイブリドーマは10%FCS/RPMI1640培地(Invitrogen)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)で培養し抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製する。
(3−3)抗SJ2368モノクローナル抗体の作製
BALB/cマウス(メス、6週令)の腹腔に精製したSJ2368−Fc蛋白質20μgをフロインド完全アジュバントと等量混合して投与する。初回投与2週間後に抗原20μgを生理食塩水に溶解し、フロインド不完全アジュバントと等量混合後腹腔に投与する。さらに1週間後、抗体価の上昇を上記(3−2)記載の方法により確認し、最終投与を行う。マウスの腹腔に抗原100μgを投与し、3日後、脾臓を摘出する。脾臓よりリンパ球を分離し、P3×63−Ag.8.U・1と10:1で混合し、ポリエチレングリコールを用いて細胞融合を行う。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行う。(3−2)に記載の方法により抗SJ2368抗体産生ウエルのスクリーニングを行い、SJ2368−Hisと反応したウエルを限界希釈法によりクローニングし、再度スクリーニングを行って抗SJ2368モノクローナル抗体を取得することができる。
ハイブリドーマを10%FCS/RPMI1640培地(Invitrogen)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)で培養し、抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製する。
実施例6 SJ2368の活性測定
SJ2368の生物活性は以下に示す活性測定系によって観察できる。これらの方法は、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起するIL−10ファミリーその他の物質の探索・同定に有用であるのみならず、SJ2368の生物活性を阻害する物質、例えば中和抗体などの、医薬品候補物質の発見にも有用である。
(1)ルシフェラーゼアッセイ
IL−10ファミリーに属するサイトカインとSJ2368の結合に基づく活性測定は、例えばLaureらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.97、10144−10149(2000))のように、適当な細胞を用いた活性化STAT類に反応するリポータージーンアッセイで検討できる。用いる細胞は、SJ2368を発現している培養細胞、HepG2やHEK293が良い。あるいはsj2368遺伝子を適当な方法で遺伝子導入した細胞であっても良い。サイミジンキナーゼ(TK)プロモーターでコントロールされたホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に、5コピーのGRR配列を含む遺伝子コンストラクトを作製し(pGRR5リポーター)、内部標準として、TKプロモーターでコントロールされたウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を含むpRL−TKベクター(Promega社)を用いる。この15μgのpGRR5リポーターと1μgのpRL−TKを、106個のHepG2細胞に、74Ω、1200μFにて遺伝子導入する。この細胞を24ウェルプレートの各ウェルに42000細胞ずつ播種し、1時間後に目的のIL−10ファミリーないしIL−10ファミリーを含む培養上清を添加する。2時間後、Promega社のDual−Luciferase Reporter Assay System kitを用いて、ルシフェラーゼ活性の上昇を観察する。対照の試験として、ヒトIL−6300U/ml添加時の活性上昇と抗IL−6中和抗体や抗gp130中和抗体によるIL−6活性の上昇阻害を同時に実施することが望ましい。なお、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起するための精製サイトカインの代わりとして、サイトカイン遺伝子を導入した細胞の培養上清、腫瘍細胞の培養上清、エンドトキシンで活性化した末梢血白血球の培養上清などを用いる場合は、陰性対照としてサイトカイン遺伝子導入に用いたベクターのみを導入した細胞の培養上清(mock)や非刺激時の培養上清には活性が無いことを確認することが望ましい。SJ2368を介した特異的な作用であることの確認は、SJ2368−Fcによる中和実験や、HepG2細胞にSJ2368の細胞内チロシン残基をアラニンに変換したドミナントネガティブ体を導入する中和実験によって実施することが出来る。
(2)ゲルシフトアッセイ
SJ2368がいずれのSTAT類を活性化するかは、ゲルシフトアッセイにて検討できる(Demoulinら、Mol.Cell.Biol.Vol.16,P4710−4716、1996)。即ち、SJ2368を介して細胞内にシグナル伝達を惹起した細胞の核抽出物を調製し、Fc受容体Iのγ−response region(GRR)に対応する32P標識オリゴDNA(5’−ATGTATTTCCCAGAAA−3’:配列番号10と5’−CCTTTTCTGGGAAATAC−3’:配列番号9とからなる二本鎖DNA)との結合を観察する。電気泳動上のスーパーシフトを抗STAT1抗体、抗STAT3抗体などを0.75〜1μg/レーン添加により観察し、オリゴDNAと結合するSTAT類を同定することが出来る。
(3)(1)および(2)の試験に用い得るIL−10ファミリーの調製法
既に遺伝子が同定されているIL−10ファミリーは、上記1に述べたようにサイトカインそのもの、またはFLAGタグ、Fcフラグメント、ヘキサヒスチジンタグなどの融合蛋白質として、適当な細胞に遺伝子導入して発現、精製する事が出来る。この他に、IL−19は末梢血単球をエンドトキシンないし顆粒球・単球コロニー刺激因子で4〜24時間刺激した培養上清中に得られる(Gallagherら、Genes Immun.Vol.7、P442−450、(2000))。また、IL−TIFは末梢血T細胞を抗CD3抗体とコンカナバリンAで6〜24時間刺激した培養上清、或いはIL−9で6〜24時間刺激で刺激した培養上清中に得られる(Xieら、J.Biol.Chem.Vol.275、No.40、P31335−31339、(2000))。
実施例7 マウスsj2368遺伝子のクローニング
(1)5’側配列のin silicoクローニング
相同性検索プログラムsim4を用いて、ヒトsj2368遺伝子のcDNA配列(配列番号3)のヒトゲノム(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/genbank/genomes/H−sapiens/hs_phase * .fna.gz、但し*は0、1、2または3)に対するマッピングを行った。その結果、第4図に示すように、ヒトsj2368遺伝子は7つのエクソンによって構成されていた。このゲノム構造はIL10Rファミリーの遺伝子と同様の構造であった(一例としてIL10Rα鎖のゲノム構造を第5図に示す)。次に、マウスホモログ遺伝子を得るために、ヒトsj2368遺伝子のcDNA配列(配列番号3)をマウスゲノム配列(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/pub/TraceDB/mus_musculus/)に対してBLAST検索を行った。その結果、局所に高い相同性を持つ配列が多数確認されたが、得られた配列について詳細に解析した結果、リピート配列が確認され、擬陽性の可能性が考えられた。このリピート配列はsj2368の3’非翻訳領域である3800−4100bp付近に当たるため、この領域をマスクして、再度マウスゲノム配列を検索した。その結果、G10P642115RE8.T0とG10P625411RB5.T0の2つのホールショットガンシーケンス(WGS)が検出された。これらの配列はそれぞれエクソン4、エクソン5の領域に相当していたが、他のエクソン領域の配列を得るために、これらのマウスエクソン配列を問い合わせ配列としてマウスESTデータベース(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/db/est_mouse.Z)を検索した。その結果、1番目のエクソンから5番目のエクソンまでをカバーするBI104593が検出された(ヒトsj2368ゲノム配列とマウスゲノムおよびEST配列の位置関係を第6図にまとめる)。
(2)5’側配列のRT−PCRクローニング
実施例7(1)の結果をもとに、PCRプライマーを設計してマウスsj2368の5’側cDNAをRT−PCRクローニングした。即ち、センスプライマーmS1(5’−GGC CCC AGG ATC GAA ATG TG−3’)及びアンチセンスプライマーmA1(5’−CTG GAG CCT CTA GGA AGA TG−3’)を設計し、BALB/cマウスの肝臓由来のtotal RNAを鋳型にRT−PCRを行った。さらにアンチセンスプライマーmA2(5’−CAG CTG GGC TCA GAG AAC TG−3’)を設計し、上記RT−PCR産物を鋳型に、mS1とmA2をプライマーとして再度PCRを行った。得られた約0.7kbの断片をアガロース電気泳動によって回収した後、DNA断片の5’末端をリン酸化し、pBluescriptIISK(+)のEcoRVに挿入し、マウスsj2368の5’側cDNA配列を持つプラスミド(No.3−1/pBluescriptIISK+)を得た。得られたプラスミドには配列番号11に示す661bpのマウスcDNAが含まれていた。
(3)3’側配列in silicoクローニング
マウスsj2368遺伝子の3’側をクローニングするために、ヒトsj2368のエクソン6から翻訳停止コドン付近までの約3.8kbの配列を用い、再度マウスゲノム配列及びマウスEST配列をBLAST検索した。その結果、マウスゲノム(Mse40095−347f04.q1c、jtx06h08.b1、G10P665193FF5.T0)、マウスEST(BI657668及びBB716537)で高い相同性が確認され、マウスsj2368遺伝子の3’端側がクローニングされた(ヒトsj2368ゲノム配列と検出されたマウスゲノムおよびEST配列の位置関係を第7図にまとめる)。
(4)3’側配列のRT−PCRクローニング
実施例7(3)の結果をもとに、PCRプライマーを設計してマウスsj2368の3’側cDNAをRT−PCRクローニングした。即ち、終止コドン配列を含むアンチセンスプライマーmA4(5’−CCG GCC AGC TCA CCT GAC CA−3’)を設計し、実施例7(1)記載のセンスプライマーmS1を用いて、BALB/cマウスの肝臓由来のtotal RNAを鋳型にRT−PCRを行った。さらにセンスプライマーmS3(5’−CAG TTC TCT GAG CCC AGC TG−3’)、センスプライマーmS5(5’−ATG CCG TCG CTG GAA CTG AA−3’)及びアンチセンスプライマーmA5(5’−TCA CCT GAC CAA GTA ATC TC−3’)を設計し、上記RT−PCR産物を鋳型に、mS3/mA5あるいはmS5/mA5のプライマーセットでPCRを行った。得られた約約1.0kbあるいは約1.2kbの断片をアガロース電気泳動によって回収し、DNA断片の5’末端をリン酸化した後に、pBluescriptIISK(+)のEcoRVに挿入し、クローン化した(それぞれS3#2/pBluescriptIISK+あるいはS5#1/pBluescriptIISK+)。得られたクローンは配列番号12あるいは13に示す981bpあるいは1161bpのマウスcDNAを含んでいた。また、S3#2/pBluescriptIISK+とS5#1/pBluescriptIISK+の塩基配列を比較した結果、S5#1/pBluescriptIISK+ではS3#2/pBluescriptIISK+の配列番号12における41番目から91番目までの51塩基が欠失していた。以上の結果及び実施例7(2)の結果よりマウスsj2368のcDNA配列は、配列番号14で示される535アミノ酸をコードする配列番号15で示される1605bpのオープンリーディングフレームを含む、配列番号16で示される全長1622bpよりなることがわかった。ヒトSJ2368とマウスSJ2368の間の相同性はGENETYX−WIN:Maximum Matchingによって調べた結果、約59%の同一性であった(配列比較は第8図参照)。
(5)マウスsj2368のゲノム構造
実施例7(4)でクローニングしたマウスsj2368のゲノム構造を調べた。即ち、マウスsj2368のcDNA配列(配列番号16)を用い、sim4によってマウスゲノム配列(データソースは以下を利用:ftp://ftp.ensembl.org/pub/assembly/mouse/)に対してマッピングを行った。その結果、マウスsj2368遺伝子は7つのエクソンより構成されていていることが明らかになった。また、ヒトsj2368のゲノム構造に比べると、イントロンの長さがやや異なるが、エクソンの大きさや数及びその構造においてヒトとマウス間で非常に良く似ていた(第9図)。また、エクソンの繋ぎ目を第8図に示すが、実施例7(4)で得られた51bp欠失体は、イントロン5の3’末端が51bp下流にずれて認識されているために生じるalternative splicingであることが確認できた。また、この欠失領域は膜貫通ドメインをコードしている領域であるため、splicing variant蛋白質は細胞外に分泌される可能性が考えられた。このsplicing variant蛋白質(マウスSJ2368del)のアミノ酸配列を配列番号18に示す。
(6)マウスSJ2368発現プラスミドの構築
マウスSJ2368del発現プラスミドは以下の方法で構築した。即ち、No.3−1/pBluescriptIISK+をEcoRI消化し、約0.5kbのDNA断片を回収した。また、S5#1/pBluescriptIISK+をEcoRI消化し、約4.1kbのDNA断片を回収した後に、5’末端を脱リン酸化処理し、先の約0.5kb断片を挿入した。得られたプラスミドをEcoRIとSphIあるいはSphIとKpnIでそれぞれdouble digestionして、約0.5kbあるいは約1.2kbのDNA断片を回収し、哺乳細胞発現ベクターのEcoRI/KpnIサイトに3−way ligationによって挿入した。
また、マウスSJ2368全長発現プラスミドは以下の方法で構築した。まず、センスプライマーmS6(5’−GTT CAA AGG ACG AGT ACA GG−3’)、センスプライマーmS7(5’−CTC TGA GCC CAG CTG CAT CTT CCT AGA GGC−3’)、アンチセンスプライマーmA8(5’−GCC TCT AGG AAG ATG CAG CTG GGC TCA GAG−3’)及びアンチセンスプライマーmA10(5’−TGT CAC CGT CGT CAT CGT AG−3’)を設計した。次にNo.3−1/pBluescriptIISK+を鋳型に、mS1/mA8のプライマーセットでPCRを行い、約0.7kbの増幅断片を回収した。一方、S3#2/pBluescriptIISK+を鋳型にmS7/mA5のプライマーセットで同様にPCRを行い、約1.0kbの増幅断片を回収した。さらに、これら2種の増幅断片のmixtureを鋳型として、mS6/mA10プライマーセットでPCRを行い、約0.7kbの増幅断片を得た。この断片をSphIとScaIでダブルダイジェスチョンし、約0.5kbのDNA断片を回収した。また、pCGmsj2368(del)をSphIとPstIあるいはScaIとPstでそれぞれダブルダイジェスチョンし、約4.7kbあるいは約1.2kbのDNA断片を回収した。次にこれら2種のDNA断片と、PCR増幅断片を酵素消化して得られた約0.5kbの断片を3−way ligationして、msj2368全長発現プラスミドpCGmsj2368を得た。このプラスミドは国際微生物寄託機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(宛名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年7月9日に寄託され、2002年9月25日にブダペスト条約に基づく寄託へ移管された(受託番号FERM BP−8195)。
実施例8 可溶型マウスSJ2368の発現
マウスSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントとのキメラ(融合)蛋白質を生産した。マウスSJ2368の細胞外ドメインとヒトIgG Fcフラグメントのキメラ蛋白質であるマウスSJ2368−Fc(アミノ酸配列を配列番号17に示す)の発現プラスミドは以下の方法で構築した。アンチセンスプライマーmA9B(5’−CGC GGA TCC GTC CCC TGG AGC CTC TAG GAA−3’)を合成し、センスプライマーmS1を用い、S5#1/pBluescriptIISK+を鋳型にPyrobest DNA Polymeraseにより98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを25回繰り返し、PCR反応を行った。得られた約0.7kbのPCR産物をBamHIにて消化し、5’末端をリン酸化した後に、アガロースゲル電気泳動にてDNA断片を回収した(DNA断片A)。また、再公表WO97/42319に記載のpM1304をEcoRIで消化した後に、DNA Blunting Kitを用いて末端平滑化した。さらに、KpnIにて消化した後に、約7.0kbの断片を回収した(DNA断片B)。次にpM1304をBamHIとKpnIにてダブルダイジェスチョンして、約0.7kbのDNA断片を回収した(DNA断片C)。これら3種(DNA断片A、B及びC)を3−way ligationし、コンピテントセルJM109を形質転換して定法に従いマウスSJ2368−Fc発現プラスミドを調製した。得られた発現プラスミドは、以下の方法でCOS細胞に導入した。即ち、FuGENE6 50μlと上記マウスSJ2368−Fc発現プラスミド12.5μgとを添付プロトコールに従い混合し、150cm2フラスコにセミコンフルエントに増殖したCOS細胞に添加した。5%CO2存在下、37℃で3日間培養した後に培養上清を回収した。培養上清中に含まれるMSJ2368−FcをSDS−PAGE実施後、抗ヒトFc抗体(パーオキシダーゼ標識抗ヒトIgA,IgG,IgM,Kappa,Lambda抗体;DAKO)を用いてウエスタンブロッティングにて検出を行った(第10図)。培養上清中にマウスSJ2368−Fcが発現されていることが確認された。
つづいてマウスSJ2368−Fcの大量調製を行った。セルファクトリー10(Nunc)にセミコンフルエントにCOS細胞を増殖させ、FuGENE6を用いて上述のマウスSJ2368−Fc発現プラスミドを導入した。3日間培養を続けた後に培養上清を回収し、上清中に発現されるマウスSJ2368−FcをHiTrap rProtein A FF columns(アマシャム バイオサイエンス株式会社)を用いて精製した。
実施例9 ヒトsj2368スプライシングバリアントの検索
実施例7−(4)に記載した通り、マウスsj2368においては、膜貫通ドメインをコードする51bpを欠失したスプライシングバリアントがクローニングされた。ヒトsj2368についてスプライシングバリアントが存在するか確認した。即ち、実施例2でsj2368の発現が確認された、肝臓、脳、PBL、胎児肝及び胎児腎由来のcDNA(Human MTC Panel I及びII、Human Fetal MTC Panel;クローンテックカンパニー)を鋳型にPCRを行った。まず、アンチセンスプライマー2(5’−CGG GGT ACC TTG CAA AGG CAG CAG CAG−3’)を設計し、実施例4に記載のセンスプライマー1を用いてplatinum taq DNA polymerase(Invitrogen社)によりPCR反応を行った。反応条件は94℃で2分加温して反応を開始した後に、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分のサイクルを35回繰り返した。さらにセンスプライマー3(5’−CCT GCT GCA GGC CGC TCC AG−3’)及びアンチセンスプライマー3(5’−GCA TCG CTG TCC TCA ATT TC−3’)を設計し、上記PCR反応液を鋳型に同条件でPCRを行った。得られた約1.4kbのフラグメントをpBluescriptIISK(+)に組み込み、その配列を確認した。その結果、sj2368と同一の配列を示すクローンの他に、▲1▼exon2が欠失したクローン、▲2▼exon6が欠失したクローン、▲3▼exon2と6の両方が欠失したクローンの3種のスプライシングバリアントが確認された。これらのスプライシングバリアントではアミノ酸翻訳においてフレームシフトが生じており、▲1▼及び▲3▼のバリアントでは配列番号21で表されるポリペプチドがコードされていた。しかしながら、このポリペプチドはSJ2368のN端側の配列を約20残基しか持たず、しかもこの領域はシグナル配列に相当するため、機能ある蛋白質としては発現していないと考えられた。一方、▲2▼のバリアントでは配列番号20で表されるポリペプチドがコードされており、SJ2368の細胞外ドメインは維持されている。また、膜貫通ドメインが欠失しているため、可溶型の蛋白質として発現し、SJ2368とリガンド分子の結合に対し、競合している可能性が考えられた。スプライシングバリアント▲2▼を制限酵素SphIとXhoIでdouble digestionし、exon6欠失部を含む約340bpのDNA断片を調製した。また、実施例3で構築したSJ2368発現プラスミドを制限酵素SphIとXhoIで同様にdouble digestionし、先のDNA断片をライゲーションした。即ち、exon6配列を含む約470bpの断片とバリアント由来の約340bpのDNA断片とを入れ換えることで、ヒトSJ2368バリアント発現プラスミドの構築を行った。ライゲーション反応液はコンピテントセルJM109にトランスフォーメーションした後、定法に従ってプラスミドを調製した。
実施例10 可溶型SJ2368の生理活性
(1)混合リンパ球反応(MLR)に対する影響
可溶型SJ2368の生理活性を調べる目的で、マウスSJ2368−Fcを用いてMLRに対する影響を調べた。BALB/Cマウス及びC57BL/6マウス(7−9週齢オス)より脾臓を摘出し、脾細胞をそれぞれ調製した。各脾細胞を等量混合し、96well−plateへ0.6×106cells/wellで播種し、マウスSJ2368−Fcの存在下あるいは非存在下で37℃、5%CO2、4日間培養した。コントロールとして、他のI型膜貫通蛋白分子の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメインとのキメラ蛋白(CONT−Fc)あるいはヒトIgG1蛋白存在下で同様に培養した。BrdU(Cell Proliferation ELISA,BrdU(colorimetric);ロシュ・ダイアグノスティックス社)を添加し、さらに4時間培養した後に、添付書に従いBrdUの取り込み量(すなわち細胞増殖の割合)を測定した。その結果、第11図に示す通り、SJ2368−Fc存在下では濃度依存的に抑制効果が確認された。一方、CONT−FcやヒトIgG1では抑制効果が全く見られず、マウスSJ2368−FcはマウスMLRに対し特異的に増殖抑制を示した。
(2)Th1/Th2分化に対する影響
マウスSJ2368−Fcのin vitro Th1/Th2分化系における効果を調べた。
(2−1)細胞刺激用抗体プレートの作製
抗マウスCD3抗体(145−2C11;ファーミンジェン)をPBSで5μg/mlに希釈した抗体溶液0.2mlを48wellプレートの各wellに添加し、4℃で一晩インキュベーションし、抗体をプレート上に固相化した。プレートは使用直前にPBSで2回、培地(10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2−ME、100units/mlペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI1640)で1回洗浄後、0.35ml/wellの培地を加え平衡化した。
(2−2)ナイーブT細胞の調製および刺激
ナイーブT細胞はC57BL/6マウスから磁気標識細胞分離法により取得した。すなわち、C57BL/6マウス12匹より脾臓を摘出し、脾細胞をPRMI1640 30mlへ懸濁した。遠心後、0.085%塩化アンモニウムを含む0.15M Tris−HCl(pH7.65)溶血バッファーに再浮遊し37℃で5分間処理した。細胞を20mlのPRMI1640で一回、さらに30ml MACSバッファー(0.5%FBS、2.5mM EDTAを含むハンクス平衡塩(GIBCO−BRL))で洗浄した後、5%マウス血清を含むMACSバッファーに1×108細胞/mlとなるように懸濁した。さらに0.5μgの抗マウスCD4−FITC(ファーミンジエン)を加え6℃、60分間インキュベーションした。次に、細胞をMACSバッファー30mlで2回洗浄後、MACSバッファーで1×108細胞/mlに再懸濁した。1×108細胞あたり40μlの抗FITCマイクロビーズ(第一化学薬品)を加え6℃、60分間インキュベーションした。細胞を再度MACSバッファー30mlで洗浄し、1.5mlのMACSバッファーに浮遊した。このように調製した細胞をautoMACS(第一化学薬品)へアプライし、プログラムPOSSELSによりCD4陽性細胞を得た。300μl/15mlのリリース試薬を添加し6℃、20分間処理した。この細胞懸濁をautoMACSへアプライし、抗FITCマイクロビーズと細胞を分離した。さらにCD62L陽性CD4T細胞を得るために、調製したCD4陽性T細胞を1×107細胞あたり50μlのMACSバッファーに浮遊し、1×107細胞あたり30μlのstop solution(第一化学薬品)および1×107細胞あたり20μlのCD62Lマイクロビーズ(抗マウスCD62Lマイクロビーズ(MEL−14)第一化学薬品)を加え6℃、30分間インキュベートした。反応終了後、30mlのMACSバッファーで細胞を2回洗浄し、1.5mlの細胞懸濁液をautoMACSへアプライし、プログラムPESSELSにCD4CD62L陽性T細胞を得た。細胞は10%FBSを含むT細胞培養液(10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2−メルカプトエタノール、100units/ml ペニシリンストレプトマイシンを含むRPMI1640)で洗浄後、5×105細胞/mlとなるように10%FBS、T細胞培養液に懸濁した。取得したナイーブT細胞を上記(2−1)で作製した抗体プレートに、1wellあたり0.5mlずつ植え込んだ。さらに終濃度3μg/mLあるいは30μg/mLとなるようにSJ2368−Fc溶液を1wellあたり100μL添加し5%CO2環境下、37℃で培養した。コントロールとして、SJ2368−Fcを添加する代わりに生理食塩液100μLまたは終濃度30μg/mLとなるようにヒトIgG蛋白質溶液100μLを添加した。培養開始72時間後、上清1mlを回収しELISAによりサイトカイン濃度を測定した。
(2−3)ELISAによるサイトカイン濃度の測定
培養開始3日後の培養上清中のサイトカイン濃度を測定した。測定は、OptEIA Mouse IL−4 Set(ファ
(DIACLONE)を用いて測定した。
Th1/Th2分化系におけるマウスFJ2368−FcのIFN−γおよびIL−4産生誘導活性を、生理食塩液添加群を1としたときの誘導倍率で示した(表1)。
表1に示したように、マウスSJ2368−FcによるIFN−γ産生の有意な亢進が認められた。なお、IL−4産生でもマウスSJ2368−Fcによる抑制傾向が認められた。これはマウスSJ2368−FcがマウスナイーブT細胞に作用し、Th1分化を誘導した結果と考えられる。このことはT細胞に可溶型SJ2368蛋白質の受容体が存在する可能性を示唆している。Th1分化を誘導する細胞内シグナル伝達因子として、T−betやTxkが知られているが、可溶型SJ2368蛋白質はT細胞に存在する受容体と結合し上記のシグナル伝達因子を活性化しているのかもしれない。一方、ナイーブT細胞にSJ2368蛋白質(膜貫通型)が存在している場合、可溶型SJ2368蛋白質がT細胞上に存在するSJ2368蛋白質(膜貫通型)の機能を競合的に阻害した結果としてTh1分化誘導が起こったとも考えられる。この場合、SJ2368蛋白質は本来的にはTh2分化を誘導する活性を有しているものと推察される。
実施例11 抗ヒト及びマウスSJ2368抗体の作製
(1)ヒト及びマウスSJ2368の部分ペプチドの調製
マウス及びヒトSJ2368両者とクロスする抗体を作製するため、マウス及びヒトのアミノ酸配列を比較検討した。マウスSJ2368(配列番号14)のN末のアミノ酸のうち21番目から32番目の配列(RPRLAPPRNVTL)はヒトSJ2368との間で1アミノ酸しか異ならず、またN末端に位置することからヒト/マウスSJ2368抗体作製に使用する免疫用ペプチドとして選択した。また、マウスSJ2368の122番目から136番目の配列(VELAPPTLVLTQMEK)はヒトSJ2368との間に2アミノ酸の違いが認められるが、Chou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析したところ、一部ターン構造を有するコンビネション構造を取ることが予想されたため、蛋白質表面に露出されているものと推定し、マウスSJ2368抗体作製に使用する免疫用ペプチドとして選択した。このペプチドにはキャリア蛋白と結合する反応基がないため、C端にシステインを追加した配列とした。ペプチドの合成はABI433Aペプチド合成機(アプライド)を用いて行い、定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPCELL−PAK、資生堂)を用いて精製した。
(2)SJ2368のペプチド免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mLに溶解し、10mg/mLのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合した。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(ファルマシア)で脱塩した。
(3)ポリクローナル抗体の作製
ヒト及びマウスSJ2368に対するポリクローナル抗体を作製するため、調製したペプチド抗原100μgを等量のフロインド完全アジュバント(FCA、DIFCO)と混合し、ウサギ(NZW、メス、2〜2.4kg、北山ラベス)又はラット(Wistar、メス、8週令、SLC)の背部皮下に投与した。2週間後、同量をフロインド不完全アジュバント(FIA、DIFCO)と混合したものを同様に投与し、1週間後ウサギは耳静脈よりラットは心臓より採血し抗血清を調製した。次に得られた抗血清に50%飽和となるように飽和硫酸アンモウニウム溶液を添加し、塩析を行った。得られた沈殿物を遠心後、PBSで溶解し、透析した。次にウサギ抗体はプロテインAカラム(Prosep−A、ミリポア)でラット抗体はプロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、IgG分画を得た。蛋白質濃度は280nmの吸光度より算出した。
実施例12 ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)特異抗体の作製
(1)ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のペプチドの調製
ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のアミノ酸配列のうち全長SJ2368の配列とは一致しない224番目より244番目までのペプチド配列をChou−Fasman及びRobsonの2次構造予測プログラムを用いて解析を行ったところ、232番目から244番目の配列(CGNLSAQQTRVRE)は親水性が高く、ターン構造を含む構造であり、蛋白質表面に露出されているものと推定し、免疫用ペプチドとして選択した。ペプチドの合成はABI433Aペプチド合成機(アプライド)を用いて行い、定法により樹脂よりペプチドの切り出し脱保護を行い、C18逆相HPLC(CAPCELL−PAK、資生堂)を用いて精製した。
(2)可溶型SJ2368の免疫抗原の調製
合成したペプチドを蒸留水で10mg/mLに溶解し、10mg/mLのマレイミド化キーホールリンペットヘモシアニン(PIERCE)と等量混合した。室温で2時間反応後、NAP−10カラム(ファルマシア)で脱塩した。
(3)ポリクローナル抗体の作製
ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)に対するポリクローナル抗体を作製するため、調製したペプチド抗原100μgを等量のFCA(DIFCO)と混合し、Wistarラット(8週令、メス、北山ラベス)の背部皮下に投与した。2週間後、同量をFIA(DIFCO)と混合したものを投与し、1週間後心臓より採血し抗血清を得た。次に得られた抗血清に50%飽和となるように飽和硫酸アンモウニウム溶液を添加し、塩析を行った。得られた沈殿物を遠心後PBSで溶解し、透析後プロテインGカラム(Prosep−G、ミリポア)で精製し、IgG画分を得た。蛋白質濃度は280nmの吸光度より算出した。得られた抗体がヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)と特異的に結合することをウエスタンブロッティングにより確認した。すなわち、ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)を5−20%SDS−ポリアクリルアミドゲル(ATTO)にて泳動し、ミリポア社の方法にしたがってPVDF膜に転写した。転写後5%スキンミルク、0.05%Tween20を含むPBSにてブロッキングした。精製抗体を0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBSで5μg/mLに希釈し転写したPVDF膜と室温で1時間反応させた。次にメンブレンを0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBSで1000倍に希釈しメンブレンと室温で1時間反応させた。メンブレンを同様に3回洗浄後、ECL(アマシャム)で検出した。その結果、約27kDa付近にヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)のバンドが検出された。コントロールで用いた全長SJ2368は検出されなかった。
実施例13 抗SJ2368モノクローナル抗体の作製
(1)ラットモノクローナル抗体の作製
Wistarラット(メス、8週令、北山ラベス)のフットパッドに実施例4で調製した精製ヒトSJ2368−Fc融合蛋白質20μgをFCAと等量混合して投与した。初回投与2週間後に抗原20μgをFIAと等量混合後同様に投与した。最終投与3日後、ラットより腸骨リンパ節を摘出し細胞融合を行った。すなわち、リンパ節よりセルストレイナー(ファルコン)を用いてリンパ球を分離し、ミエローマ細胞(Sp2/O−Ag14)と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」83ページ、1991年(講談社)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを行った。すなわち、0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)(以下PBSと記載)で精製ヒトSJ2368−His蛋白質を2.5μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μL/ウエル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、0.5%BSAを含むPBSを各ウエルに100μL添加しブロッキングを行った。次に培養上清を各ウエルに添加し37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)を10%ウサギ血清を含むPBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止した。プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定した。その結果、精製SJ2368−His蛋白質と反応した細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行った。10日後、同様にスクリーニングを行い、精製SJ2368−His蛋白質と反応する抗体を産生するクローン5クローンを得た。得られた抗体のうち、特に反応性の高いF1120−21−3抗体のサブタイプをラットタイピングキット(ZYMED)を用いて決定したところサブタイプはIgG2b・κであった。
(2)マウスモノクローナル抗体の作製
CpGアジュバント(ImmunEasy Mouse Adjuvant、QIAGEN)50μLと精製ヒトSJ2368−Fc融合蛋白質20μgを混合し100μLとした投与抗原をddYマウス(メス、8週令、SLC)の両足のフットパッド内にマイクロシリンジによりそれぞれ50μL投与した。9日後、投与抗原20μgを100μLの生理食塩水で希釈したものをフットパッド内に各50μLずつ投与した。3日後、腸骨リンパ節よりリンパ球を分離し、ミエローマP3U1と混合後、ポリエチレングリコールを用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを(1)記載の方法と同様に行った。精製SJ2368−His蛋白質と反応した細胞を限界希釈法によりクローニングし、10日後、同様にスクリーニングした。その結果、精製SJ2368−His蛋白質と反応する抗体を産生するクローン10クローンを得た。選択したハイブリドーマを10%FCS/RPMI−1640培地(GIBCO)で培養後、Hybridoma−SFM培地(GIBCO)で培養し抗体を産生させ、Prosep−Aカラム(ミリポア)を用いて抗体を精製した。得られた抗体のうち、反応性の高いF1157−6−2、F1157−10−2抗体のサブタイプをIsoStrip Mouse Monoclonal antibody Isotyping Kit(Roche)を用いて決定したところサブタイプはそれぞれIgG1/κ、IgG2a/κであった。
実施例14 ラット及びマウスモノクローナル抗体の特異性
実施例4に示す方法で、SJ2368発現プラスミド、ヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)プラスミドあるいはベクタープラスミドをCOS細胞に導入し、2日間培養した後に、細胞をSDS−PAGE用サンプルバッファーで溶解した。これらの細胞溶解液を5−20%濃度勾配SDS−ポリアクリルアミドゲル(ATTO)で電気泳動した後に、PVDF膜(ミリポア)に蛋白を電気的にtransferした。実施例13で作製した抗体を、10%ブロックエースを含む0.1%Tween20を含むPBS(以下、T−PBSと記載)を用いて5μg/mlに希釈し蛋白を転写したPVDF膜と室温で1時間反応させた。次に、T−PBSで3回洗浄した後に、HRP標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO)あるいはHRP標識抗ラットイムノグロブリン抗体(DAKO)と室温で1時間反応させた。T−PBSで3回洗浄した後に、ECLキット(アマシャム・バイオサイエンス)を用いて検出した。その結果、第12図に示すようにSJ2368発現プラスミド及びヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)プラスミドを導入したCOS細胞の溶解液(lysate)で特異的な約57kDa及び27kDaのバンドが検出された。
実施例15 SJ2368測定系の作製
(1)標識抗体の調製
サンドイッチELISA系を作製するため、実施例13で得られたF1120−21−3抗体をペルオキシダーゼで標識した。すなわち、中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従い、1mgのペルオキシダーゼ(東洋紡)を蒸留水に溶解し、蒸留水で溶解した100mMの過ヨウ素酸を添加し25℃で20分間反応した。反応終了後1.5%エチレングリコールを添加し25℃で10分間反応後1mM酢酸緩衝液(pH4.4)に対して透析した。次に、精製したF1120−21−3抗体を10mM炭酸緩衝液(pH9.5)で透析し、抗体1mgに対して1M炭酸緩衝液(pH9.5)を添加して活性化した1mgのペルオキシダーゼを混合し25℃で2時間反応した。4mg/mLの水素化ホウ素ナトリウムを添加しさらに2時間4℃で反応した。反応液をPBSに透析しペルオキシダーゼ標識抗体を得た。液量を測定し使用した抗体量より抗体濃度を算出した。
(2)サンドイッチELISA系の構築
F1157−10−2抗体固相/ペルオキシダーゼ標識F1120−21−3を用いてELISA系を作製した。まず、F1157−10−2抗体固相化プレートを調製した。すなわち、抗体を50mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)で10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)の各ウエルに50μL添加し、45℃にて30分間反応させた。次にイオン交換水で5回洗浄し、20%ブロックエース(雪印乳業)を含むPBS(pH6.4)を各ウエルに100μL添加しブロッキングした。標準品は精製ヒトSJ2368−His蛋白質を0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)で3.1、6.3、12.5、25、50、100、200ng/mlに希釈し調製した。ブランクは0.1%BSAを含むPBS(pH6.4)を使用した。測定は、まずプレートのブロッキング剤を廃棄し、調製した標準品及びブランクを25μl分注し、続けて1%BSA、1%ラット血清、1%マウス血清を含むD−PBS(pH7.4、SIGMA)により2μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識F1120−21−3抗体を25μl添加し、25℃で一晩反応した。プレートを0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄し、TMB溶液(BioFX)を各ウエルに添加した。室温で20分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(NJ−2100、日本インターメッド)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。第13図に作成した標準曲線を示した。
実施例16 各種細胞株培養上清中可溶型SJ2368蛋白質の測定
各種細胞株(173種類)の培養上清中SJ2368蛋白質濃度を実施例15に記載の測定系を用いて測定した。その結果、第14図に示すように培養上清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度は多くの細胞では5〜15ng/ml前後であったが、巨核球系細胞(Megakaryoblast)ではほとんど産生されない結果であった。また、一部の黒色腫、ヒトリンパ腫、ヒト膀胱癌、sarcoma、Bリンパ球において濃度が上昇している例が認められた。以上の結果は可溶型SJ2368蛋白質が各種細胞で恒常的に産生され、何らかの制御に関与している可能性を示唆している。
実施例17 各種患者血清中可溶型SJ2368蛋白質の測定
健常人40例(男性20例、女性20例)及び各種疾患患者(35疾患、各3例、自己免疫性肝炎のみ1例、計103例)を実施例15に記載の測定系を用いて測定した。その結果、健常人の血清中可溶型SJ2368蛋白質濃度は8〜18ng/mLに分布し、平均値は11.4ng/mLであった。健常男性で若干高い結果であった。各種疾患患者血清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度は第15図に示すように肺腫瘍、狭心症、心不全、肝不全、骨粗しょう症、痴呆の患者で上昇する例が認められた。特に、痴呆および肝不全患者においては3例中2例が高値を示した。以上の結果は、可溶型SJ2368蛋白質が血中に恒常的に産生され、何らかの要因により上昇し、生体の恒常性の維持や上記疾患に関与している可能性を示している。なお、使用したELISA系の2種類の抗体は実施例14に示すようにヒト可溶型SJ2368蛋白質(スプライシングバリアント)とも結合するため、本系ではSJ2368蛋白質の細胞外領域が切断されて生成する可溶型SJ2368蛋白質と、スプライシングバリアントである可溶型SJ2368蛋白質の両者を測定しているものと考えられる。
実施例18 SJ2368のヒト末梢血単核球における発現
(1)SJ2368抗体の蛍光染色
実施例13で作製したF1120−21−3抗体をFlow cytometryで用いるために蛍光色素染色を行った。即ち、Oregon Green 488 Protein Labeling Kit(Molecular Probes社)を用い、添付のプロトコールに従って、Oregon Green 488 dye標識を行った(以下Oregon Green 488標識F1120−21−3をOG標識F1120−21−3と称する。)。さらにこのOG標識F1120−21−3抗体の反応性を確認するために、以下の方法でFlowcytometry解析を行った。実施例4に示す方法で、SJ2368発現プラスミドあるいはベクタープラスミドをCOS細胞に導入した後、0.1%EDTAを含むPBS−にて細胞を剥離した。剥離したCOS形質転換体を10μg/mlのOG標識F1120−21−3と氷上で30分間インキュベーションした後に、0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で3回洗浄した後に、FACSCalibur(日本ベクトンディッキンソン)で解析を行った。その結果、SJ2368発現プラスミドを導入した形質転換体で特異的な染色が確認でき、SJ2368の細胞膜上への発現が確認された(第16図)。
(2)ヒト末梢血単核球(PBMC)におけるSJ2368の発現
ヒトPBMCを用い、SJ2368を発現する単核球画分を調べた。AllCells,LLC社(代理店;株式会社ベリタス)より購入したヒトPBMCを5%非動化FBS含有RPMI1640培地(Sigma)に懸濁し、0.8〜1.0×106cells/wellで24well−plateに植え込んだ。その際に、培地のみもしくは5ng/mlのPborbol 12−myristate 13−acetate(以下、PMAと表記、Sigma)と0.5μg/mlのIonomycin(Sigma)を添加した。5%CO2、37℃で18時間培養後、PBMCを回収し、10μg/mlのラットIgG2aコントロール抗体と氷上で40分間インキュベーションした。次に、PBMCを0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で三度洗浄した後に、(1)で作製したOG標識F1120−21−3抗体(10μg/ml)及び市販のPhycoerythrin(PE)標識細胞表面マーカー(日本ベクトンディッキンソン)と氷上で40分間インキュベーションし、二重染色を行った。その後、0.25%非動化FBSおよび0.1%EDTAを含むPBS−で三度洗浄し、FACSCaliburで発現の様子を確認した。その結果、SJ2368はCD3ポジティブ細胞の一部で発現が確認され、PMA+Ionomycin添加によりその割合が上昇していた。CD4ポジティブ細胞でも同様に発現が確認され、PMA+Ionomycinで誘導された。CD8ポジティブ細胞では未刺激な条件では発現がほとんど確認されなかったが、PMA+Ionomycinで刺激することで誘導発現が確認された。CD19、CD16及びCD33ポジティブ細胞では未刺激及びPMA+Ionomycinによる刺激でも発現が確認されなかった。以上の結果を表2にまとめる。SJ2368及び各CD抗原ポジティブな細胞の割合を全PBMCに対する百分率(%)で表示した。
実施例19 ゲルシフトアッセイ
(1)ヒトIL10Rα鎖及びβ鎖のクローニング
SJ2368の細胞内シグナル伝達機構を解明する目的で、Kotenkoらの方法(The EMBO Journal vol.16 pp.5894−5903)を参考にゲルシフトアッセイを検討した。まず、ヒトIL10Rα鎖及びヒトIL10Rβ鎖のクローニングを行うために、センスプライマーRS1(5’−CCG GAA TTC AGG CCG GCT CCG CTC CGG−3’)、センスプライマーRS2(5’−CCG GAA TCT GCG GCG CGC CCA GGA TGC−3’)、センスプライマーRS3(5’−CCG GTC GAG TGC TTG GAG GAA GCC GCG−3’)、センスプライマーRS4(5’−CCG GTC GAG CGT CCG TCC ATG GCG TGG−3’)、アンチセンスプライマーRA1(5’−CGG GGT ACC TCC TGG TCC AGG CAG AGG−3’)、アンチセンスプライマーRA2(5’−CGG GGT ACC TCT CAG CCC GAG TCA CTC−3’)、アンチセンスプライマーRA3(5’−CCC AAG CTT CTA GAT GTG GGG CTG GCT−3’)、アンチセンスプライマーRA4(5’−CCC AAG CTT GCT GCC CTG ATC CCT CAC−3’)を設計した。鋳型としてヒトPBL由来cDNA(Human MTC Panel II;クロンテック社)を用い、Pyrobest DNA polymerase(タカラ バイオサイエンス社)によるPCRを98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分30秒のサイクルを30回繰り返した。IL10Rα鎖についてはセンスプライマーRS1とアンチセンスプライマーRA1のセットで、IL10Rβ鎖についてはセンスプライマーRS3とアンチセンスプライマーRA3のセットで行った。その後、各PCR反応液を鋳型にし、Pyrobest DNA polymeraseを用いてIL10Rα鎖についてはセンスプライマーRS2とアンチセンスプライマーRA2のセットで、IL10Rβ鎖についてはセンスプライマーRS4とアンチセンスプライマーRA4のセットで、98℃で10秒、55℃で30秒、72℃で1分30秒のサイクルを30回繰り返すPCR反応を再度行った。得られた約1.8kb及び1.1kb断片をホニュウ動物細胞発現プラスミドに挿入し、IL10Rα鎖及びIL10Rβ鎖発現プラスミドを構築した。
(2)キメラレセプター発現プラスミドの構築
IL10Rα鎖とSJ2368のキメラレセプター(以下CR10と表記)の構築を行った。リコンビナントPCR法により、ヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメインとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを融合したcDNA断片を作製した。この際に、Kotenkoらの論文に記載されているIL10Rα鎖とIFN−γRとのキメラレセプター構築と同様のコンストラクトである、ヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメイン+膜貫通ドメインの数アミノ酸からなるペプチドとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの融合蛋白質であるCR10(以下CR10Aと表記;アミノ酸配列を配列番号22に記載)とヒトIL10Rα鎖の細胞外ドメインからなるペプチドとヒトSJ2368の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの融合蛋白質であるCR10(以下CR10Bと表記;アミノ酸配列を配列番号23に記載)の2種のキメラレセプターを構築した。まず、センスプライマーCRS1(5’−AGG CAG TAT TTC ACC GTG ACC AAC TGG GCT TTC CTG GTG CTG CCA−3’)、センスプライマーCRS2(5’−GAG TGC ATC TCC CTC ACC AGG AAC TGG GCT TTC CTG GTG CTG−3’)、アンチセンスプライマーCRA1(5’−TGG CAG CAC CAG GAA AGC CCA GTT GGT CAC GGT GAA ATA CTG CCT−3’)及びアンチセンスプライマーCRA2(5’−CAG CAC CAG GAA AGC CCA GTT CCT GGT GAG GGA GAT GCA CTC−3’)を設計した。実施例3で作製したSJ2368発現プラスミドと(1)で作製したIL10Rα鎖発現プラスミドを鋳型に、CR10AについてはセンスプライマーCRS1とアンチセンスプライマーCRA1を用い、CR10BについてはセンスプライマーCRS2とアンチセンスプライマーCRA2を用いて、リコンビナントPCRによりキメラレセプターcDNA断片を増幅した。次にここで得られたDNA増幅断片とIL10Rα鎖発現プラスミドとを制限酵素サイトで繋ぎ変えCR10発現プラスミドをそれぞれ作製した。さらに、IL10Rβ鎖発現プラスミドより、発現プロモーター/IL10Rβ鎖cDNA/polyA付加シグナルのユニットを切り出し、先に作製したCR10発現プラスミドのIL10Rα鎖用polyA付加シグナルの下流にタンデムに挿入した。以上の手順にて、CR10A及びIL10Rβ鎖発現プラスミド(pCR10A+Rb)とCR10B及びIL10Rβ鎖発現プラスミド(pCR10B+Rb)を構築した。
(3)CR10A及びCR10Bの発現
次に、CR10A及びCR10Bの発現を確認するため、SJ2368発現プラスミド、IL10Rα鎖発現プラスミド、pCR10A+Rb、pCR10B+RbあるいはベクタープラスミドをHEK293細胞あるいはCOS細胞に、FuGENE6を用いて導入した。さらに2日間培養を続けた後に、0.1%EDTAを含むPBS−で細胞を剥離し、PE標識抗CD210抗体(抗IL10Rα鎖抗体;藤沢薬品工業)と氷上で30分間インキュベーションした。FACSCaliburを用いて染色の様子を調べた結果、pCR10A+RbあるいはpCR10B+Rbを導入した細胞で、IL10R発現プラスミド発現プラスミドを導入した細胞と同等の特異的な染色が確認され、SJ2368発現プラスミドあるいはベクタープラスミドを導入した細胞では染色が確認されなかった(第17図にHEK293細胞を用いたFlowcytometryの結果を示す。)以上のことから、pCR10A+RbあるいはpCR10B+Rbをtransfectionすることで、CR10AあるいはCR10Bが細胞膜上に発現されることが確認された。
(4)ゲルシフトアッセイ
上記(3)に記載した方法で、IL10Rα鎖とSJ2368とのキメラレセプター及びIL10Rβ鎖を発現する細胞を作製することが可能となり、以下、Kotenkoらの論文に記載されている方法で、IL10で発現細胞を刺激し、Nuclear Extractを調製することができる。また、同じ論文に記載されている方法で、human IRF−1遺伝子のGAS element(5’−GAT CGA TTT CCC CGA AATCAT G−3’)をプローブとして調製し、ゲルシフトアッセイを行うことにより、IL10の刺激によるSTATの活性化について確認することが可能となる。すなわち、SJ2368の本来のリガンドは明らかとなっていないが、IL10Rα鎖とのキメラレセプターを用いることで、細胞内へのシグナル伝達を引き起こすことが可能となり、SJ2368のレセプター機能を明らかにすることができる。
実施例20 DNAアレイを用いた解析
上記実施例19に記載した方法で、CR10発現細胞を準備する。次にIL10を添加あるいは未添加することで、SJ2368細胞内シグナル伝達をON/OFFする。これらの細胞よりRNAを調製し、市販のDNAアレイ(あるいはDNAチップ)を用いることで、SJ2368シグナル伝達によって誘導あるいは抑制する遺伝子が確認でき、SJ2368のシグナル伝達に関与する分子群を同定することができる。
産業上の利用可能性
本発明のSJ2368は、炎症性疾患の発症あるいは進行に対してその原因となり得る蛋白質であり、敗血症性臓器障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、腫瘍等の予防あるいは治療のための医薬品の開発において、極めて有用である。
また、遺伝子sj2368は、アンチセンス医薬品として、また遺伝子治療において利用することができ、蛋白質SJ2368は、それ自体あるいはその可溶性断片(細胞外領域や各ドメイン)を作製することにより可溶性蛋白医薬品として有用である。さらに、SJ2368またはその部分ペプチドに反応性を有する抗体及びその抗体の一部、また、SJ2368の細胞内シグナル伝達系を修飾する低分子化合物は、生体内でのSJ2368機能を制御する医薬品として有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、SJ2368の一次構造上の特徴を示す模式図である。
第2図は、sj2368遺伝子のヒト各種臓器および細胞での発現プロファイルを表す図である。
第3図は、ヒトSJ2368−HisおよびヒトSJ2368−Fcのウェスタンブロッティングの図である。
第4図は、ヒトsj2368のゲノム構造を示す模式図である。太線がエクソンを示し、その上のアラビア数字はエクソンが配列番号3の何番目から何番目までの塩基を含むかを示す。また、ローマ数字はエクソンの番号を示す。エクソン間の数値はイントロンの長さを示す。
第5図は、ヒトIL10Rα鎖遺伝子のゲノム構造を示す模式図である。線、数値等は第4図と同様の表現である。
第6図は、マウスsj2368のin silicoクローニング(5’側)の結果をまとめた図である。
第7図は、マウスsj2368のin silicoクローニング(3’側)の結果をまとめた図である。
第8図は、ヒトSJ2368とマウスSJ2368のアミノ酸アライメントを表す図である。上段がヒトSJ2368、下段がマウスSJ2368のアミノ酸配列を示す。箱で囲んだドメインは膜貫通ドメインを、「−」はギャップ配列を、縦線はエクソンの区切りをそれぞれ示す。マウス配列で下線を施した部分はalternative splicingによるdeletion部分である。
第9図は、ヒトsj2368およびマウスsj2368のゲノム構造を模式的に示した図である。線、数値等は第4図と同様の表現である。
第10図は、マウスSJ2368−Fcのウエスタンブロッティングの結果を示す図である。Mはサイズマーカーを、1はマウスSJ2368−Fcを発現させたトランスフェクタントの上清を、2はベクタープラスミドのトランスフェクタント上清をそれぞれ泳動したレーンである。
第11図は、マウスMLRに対するマウスSJ2368−Fcの効果を示した図である。
相対比=(蛋白存在下での培養におけるBrdU取り込み)/(蛋白非存在下での培養におけるBrdU取り込み)×100
白いバーが1μg/ml、灰色のバーが3μg/ml、黒いバーが10μg/mlの蛋白をそれぞれ添加した時の値を示す。CONT−Fcは他のI型膜貫通蛋白分子の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメインとのキメラ蛋白である。
第12図は、マウス及びラットモノクローナル抗体F1157−10−2、F1120−21−3抗体の特異性をウエスタンブロティング法により検出した結果を示す。全長はSJ2368発現細胞、可溶型は可溶型SJ2368(スプライスバリアント)発現細胞、ベクターはベクタープラスミド導入細胞由来のサンプルである。
第13図は、サンドイッチELISA系で測定したSJ2368−Hisの標準曲線を示す。
第14図は、ELISA系で測定した各種細胞株培養上清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度を示す。
第15図は、ELISA系で測定した各種疾患患者及び健常人血清中の可溶型SJ2368蛋白質濃度を示す。
第16図は、COS形質転換細胞をOG標識F1120−21−3によって染色し、Flow cytometry解析を行った結果を示す図である。実線がSJ2368発現プラスミドを導入した形質転換細胞を染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入した形質転換細胞を染色した結果である。
第17図は、IL10Rα鎖とSJ2368とのキメラレセプターの発現をFlowcytometryで解析した結果である。
A:実線がIL10Rα鎖発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
B:実線がCR10A発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
C:実線がCR10B発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
D:実線がSJ2368発現プラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果で、点線がベクタープラスミドを導入したHEK293形質転換細胞をPE標識抗IL10R抗体で染色した結果を示す。
Claims (26)
- 以下の(a)または(b)の蛋白質;
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号2のアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるクラスIIサイトカイン受容体。 - 以下の(a)または(b)の蛋白質;
(a)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号14のアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるクラスIIサイトカイン受容体。 - 以下の(a)または(b)の蛋白質;
(a)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号20のアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる可溶型SJ2368蛋白質。 - 以下の(a)または(b)の蛋白質;
(a)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号18のアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる可溶型SJ2368蛋白質。 - 請求項3または請求項4に記載の蛋白質を含んでなる融合蛋白質。
- 以下の(a)〜(h)のいずれかに記載のSJ2368部分ペプチド;
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の21〜225番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(b)(a)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞外ドメイン;
(c)配列番号14に記載のアミノ酸配列の21〜224番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(d)(c)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞外ドメイン;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列の253〜520番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(f)(e)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるヒトSJ2368細胞内ドメイン;
(g)配列番号14に記載のアミノ酸配列の253〜535番目のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;
(h)(g)に記載のポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるマウスSJ2368細胞内ドメイン。 - 請求項6に記載の部分ペプチドを含んでなる融合蛋白質。
- 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のDNA;
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNA;
(c)請求項1に記載の蛋白質をコードするDNA。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のDNA;
(a)配列番号15に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号15のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつクラスIIサイトカイン受容体をコードするDNA;
(c)請求項2に記載の蛋白質をコードするDNA。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のDNA;
(a)配列番号24に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号24のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNA;
(c)請求項3に記載の蛋白質をコードするDNA。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のDNA;
(a)配列番号25に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号25のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ可溶型SJ2368蛋白質をコードするDNA;
(c)請求項4に記載の蛋白質をコードするDNA。 - 請求項6に記載の部分ペプチドをコードするDNA。
- 請求項5または請求項7に記載の融合蛋白質をコードするDNA。
- 請求項8ないし請求項13のいずれかに記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項14に記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換細胞。
- SJ2368蛋白質の発現を抑制するアンチセンス核酸。
- 核酸配列が、請求項8に記載のDNAまたは配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAの全部または一部に相補する配列である、請求項16に記載のアンチセンス核酸。
- 核酸配列が、請求項9に記載のDNAまたは配列番号:16に記載の塩基配列からなるDNAの全部または一部に相補する配列である、請求項16に記載のアンチセンス核酸。
- SJ2368蛋白質に対する抗体。
- 可溶型SJ2368蛋白質に対する抗体。
- SJ2368蛋白質あるいは該蛋白質を発現している形質転換細胞と候補物質とを接触させることを特徴とする、該蛋白質の活性調節作用を示す物質の検索方法。
- 可溶型SJ2368蛋白質と候補物質とを接触させることを特徴とする、該蛋白質の活性調節作用を示す物質の検索方法。
- 請求項14に記載の組換えベクターまたは請求項15に記載の形質転換細胞と候補物質とを接触させることを特徴とする、遺伝子sj2368の発現調節作用を示す物質の検索方法。
- sj2368遺伝子組換え非ヒト動物。
- 請求項19または請求項20に記載の抗体を用いることを特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質の測定方法。
- 請求項19または請求項20に記載の抗体を含有すること特徴とする、被験試料中の可溶型SJ2368蛋白質を測定するための試薬またはキット。
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