JPWO2003014081A1 - 光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を効率的かつ簡便に、工業的に有利に製造する方法を提供する。光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解、アミノ基の脱保護を行って光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、更に、アルカリ性水溶液中での環化、アミノ基の保護を行って光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸を製造する方法である。さらに、本発明は、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を製造する上で有用な下記式(2)の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドも提供する。(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。X、Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。)
Description
技術分野
本発明は医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法、及び、その有用中間体に関する。
背景技術
光学活性アゼチジン−2−カルボン酸誘導体の従来の製造方法としては、次のような方法が知られている。
(1)L−2,4−ジアミノ酪酸に塩酸−亜硝酸を作用させてL−4−アミノ−2−クロロ酪酸とし、ついでこれを水酸化バリウム水溶液中、加熱処理してD−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(バイオケミカル・ジャーナル(Biochemical Journal)64巻、323頁(1956年))。
(2)γ−ブチロラクトンに赤リンの存在下において臭素を作用させた後、塩化水素ガスを飽和させたベンジルアルコールで処理をして、DL−2,4−ジブロモ酪酸ベンジルエステルを得る。これにベンズヒドリルアミンを反応させて、DL−N−ジフェニルメチルアゼチジン−2−カルボン酸ベンジルエステルとした後、メタノール中、パラジウムカーボン存在下、水素で還元してDL−アゼチジン−2−カルボン酸とし、ついで、これを塩化ベンジルオキシカルボニルと反応させ、DL−N−(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸とした後、L−チロシンヒドラジドを用いて光学分割して、L−N−(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸を取得する。最後に、これを再度メタノール中、パラジウムカーボン存在下、水素で還元してL−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Journal of Heterocyclic Chemistry)6巻、435頁、993頁(1969年))。
(3)L−N−(トシル)メチオニンをSアルキル化してL−N−(トシル)メチオニンスルホニウム塩にし、これを水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して、L−N−トシル−α−アミノ−γ−ブチロラクトンに変換し、これをアルコール中、ハロゲン化水素ガスで処理してL−N−トシル−2−アミノ−4−ハロゲノ酪酸アルキルエステルとし、これをジメチルホルムアミド中、水素化ナトリウムで閉環反応させることにより、L−N−(トシル)アゼチジン−2−カルボン酸とし、これを液体アンモニア中、金属ナトリウムでトシル基を脱離させてL−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters)5頁(1973年))。
(4)L−アスパラギン酸ジエステルを環化して4−オキソ−2−アゼチジンカルボン酸誘導体とし、さらに、これを水素化リチウムアルミニウムで還元することでアゼチジン−2−メタノールとし、これをN−tert−ブトキシカルボニル化してN−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−メタノールとし、これを酸化してN−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(WO9847867)。
(5)ラセミ二置換酪酸エステルと光学活性アルキルベンジルアミンとを反応させて、光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸エステルのジアステレオマー対とし、続いてエステル基部分を加水分解して光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸のジアステレオマー対とする方法(特開平10−130231号公報)。
(6)N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルに対して不斉加水分解能を有する酵素を作用させて、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸および光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルの混合物とし、これらを分離する方法(特開平11−46784号公報)。
(7)ラセミN−アシルアゼチジン−2−カルボン酸エステルを酵素的に不斉加水分解して、光学活性N−アシルアゼチジン−2−カルボン酸および光学活性N−アシルアゼチジン−2−カルボン酸エステルの混合物とし、これらを分離する方法(WO9802568号公報)。
(8)光学活性メチオニンから誘導される光学活性N置換α−アミノ−γ−ハロゲノ酪酸エステルを環化させて、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルとし、続いてエステル基部分を加水分解して光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(特開平10−120648号公報)。
(9)光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、エステル化、ハロゲン化、環化、加水分解を行って4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とした後、環化を行い、L−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法。あるいは、光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、エステル化、ハロゲン化、硫酸処理(更に脱塩処理)、加水分解を行って4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とした後、環化を行い、L−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(WO0069817)。
しかしながら、前記の方法は、次のような問題点を有している。
(1)の方法においては、L−2,4−ジアミノ酪酸が高価である上、より有用なL体のアゼチジン−2−カルボン酸を取得するためには、さらに高価なD体の2,4−ジアミノ酪酸が必要とされる。また、第一工程の反応温度、反応時間などが目的化合物の光学純度に影響を及ぼすために、該反応操作をより厳密に行う必要がある。
(2)の方法においては、工程が長いことに加え、ベンズヒドリルアミンが高価であり、また、光学分割して得られる不要な光学活性体は、有利なラセミ化法が見出されない限り、廃棄することになり経済的に有利ではない。
(3)の方法においては、工程が長いことに加え、トシル基を脱離する工程において液体アンモニア中で金属ナトリウムを使用するため低温装置が必要であり、取り扱いに注意を要する。
(4)の方法においては、アゼチジノンの還元剤として、取扱いに注意を要する水素化リチウムアルミニウムを使用しているため工業化する上で問題となる。
(5)の方法においては、一般に反応の立体選択性が悪く生成する光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸エステルのジアステレオマー対中に、所望でない立体異性体が多量含まれてくる。したがって、所望の立体異性体を得るためには多量の不要な該異性体を分離する必要性を生じ、効率的にも経済的にも有利ではなく、また、工業的にも採用し難い方法となっている。
(6)及び(7)の方法においては、これら方法のいずれもが酵素を利用した光学分割法であり、したがって、所望の立体異性体を得ることのできる理論収率は50%を越えることがなく、かつ、多量に残る不要の該異性体を分離する必要性を生じ、効率的にも経済的にも有利とは言い難く、工業的に採用するには問題のある方法である。
(8)の方法においては、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸を合成するのにエステル基を有する原料化合物を環化しているため、該生成物である光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルのエステル基の加水分解工程が必要となっている。
(9)の方法においては、光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸へ誘導するのに工程が長いことに加え、得られるN保護L−アゼチジン−2−カルボン酸の光学純度が高いとは言えず、効率的にも経済的にも有利とは言い難く、工業的に採用するには問題のある方法である。
発明の要約
このように、従来のいずれの製法も、工業的製造方法としては解決すべき課題を有している。本発明は、上記現状に鑑み、効率的かつ経済的であり、工業的に好適に実施することができるアゼチジン−2−カルボン酸の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、かかる課題を解決するため種々研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化することを特徴とする、一般式(2);
(式中、P及び*は前記と同じ。X、Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドの製造方法に関するものである。
また、本発明は、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを加水分解することを特徴とする、一般式(3);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、Xはハロゲン原子を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の製造方法にも関する。
さらに、本発明は、一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解することを特徴とする、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の製造方法にも関する。
さらに、本発明は、一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化することを特徴とする、一般式(4);
(式中、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法にも関する。
また、本発明は、一般式(1)の光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3)の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化して、一般式(4)の光学活性アゼチジン−2−カルボン酸とし、アミノ基保護剤で処理することを特徴とする、一般式(5);
(式中、Aは2級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法にも関する。
また、本発明は、一般式(2)で示される新規化合物、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドにも関する。
発明の詳細な開示
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、水素原子を除く一つの原子に結合したNH2基を1級アミノ基、水素原子を除く二つの原子に結合したNH基を2級アミノ基、水素原子を除く三つの原子に結合したN基を3級アミノ基、水素原子を含む四つの原子に結合したN+基を4級アミノ基と定義する。窒素原子が不飽和結合を有している場合は、各結合毎に原子数をカウントする。例えば、ピリジンは3級アミノ基を含有する化合物である。
一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸は、例えば、L−グルタミン酸を亜硝酸で環状ラクトンとし、引き続いてアンモニアで開環してモノアミドとした後、さらにアンチホルミンでホッフマン分解してL−4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸とし(特開昭和50−4019)、最後にこれを常法に従ってN保護することにより合成することができる。
光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)を、2位の立体を反転させながらハロゲン化し、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを製造する。
本明細書において、「立体を反転させる」とは、(R)体の化合物を(S)体の化合物へ、又は、(S)体の化合物を(R)体の化合物へ変換することを意味するものとする。
一般式(1)及び(2)において、Pは1級アミノ基の保護基を示し、当該反応に対してアミノ基を保護する効果を持つ基が用いられる。例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載の保護基が挙げられる。取り扱いの容易さ、及び安価であるという観点からは、フタルイミド基、アルコキシカルボニル基、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が好ましい。
一般式(2)において、X、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、例えば塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。後の工程での反応性、及び、ラセミ化を防止する観点からは、特に塩素、臭素が好適である。
なお、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドは、医薬品原料として重要な化合物である光学活性アゼチジン−2−カルボン酸誘導体(5)の製造において有用であることが、本発明者らにより見出された新規化合物である。
本工程のハロゲン化反応は、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)をハロゲン化剤で処理することにより行うことができる。ハロゲン化剤としては、例えばフッ化水素酸−フッ化カリウム等のフッ素化剤、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、塩酸、オキシ塩化リン、トリフェニルホスフィン−四塩化炭素等の塩素化剤、臭化チオニル、塩化チオニル−臭化水素酸、三臭化りん、臭化水素酸、トリフェニルホスフィン−四臭化炭素等の臭素化剤、ヨウ化水素酸、トリフェニルホスフィン−ヨウ素、トリメチルクロロシラン−ヨウ化ナトリウム等のヨウ素化剤が挙げられる。取扱いの容易さおよび立体選択性の観点からは、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化チオニル−臭化水素酸が好ましく、特に塩化チオニルが好ましい。
ハロゲン化剤の使用量は、通常、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対して1モル当量以上を用いて実施することができる。経済性の面から一般的には10モル当量以下の使用が好ましく、より好ましくは5モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下で実施することができる。
ハロゲン化を行う際の反応溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限されず、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒及び塩化チオニルが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
なお、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対し1モル当量以上で塩化チオニルを反応溶媒として使用した場合、ハロゲン化剤は使用しなくてもよい。
中でも光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)の溶解性及びハロゲン化剤に対する安定性の観点から、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、塩化チオニル又はそれらの2種以上を混合した溶媒が好ましい。なお、混合溶媒を用いる場合、混合割合に特に制限はない。
ハロゲン化反応を行う際の光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)の濃度は、用いる反応溶媒によって異なるが、反応効率を良くするために、一般的には1重量%以上で実施するのが好ましく、5重量%以上で実施するのがより好ましい。また、上記濃度は、反応効率を良くするために、50重量%以下で実施するのが好ましく、30重量%以下で実施することがより好ましい。
ハロゲン化反応時の反応温度は、用いるハロゲン化剤や反応溶媒の種類により異なるが、通常は用いる反応溶剤の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは温度を低く設定して実施する方がよい。上記温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。また上記温度は、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
ハロゲン化反応時の反応時間は、用いるハロゲン化剤や反応溶媒の種類及び反応温度により異なるが、反応温度を20〜60℃で実施した場合、通常1〜24時間程度である。
ハロゲン化反応においては、アンモニアの塩や、アミン、イミン、アミド、イミド、尿素類若しくはそれらの化合物の塩等、1級アミノ基を含有する化合物、2級アミノ基を含有する化合物、3級アミノ基を含有する化合物又は4級アミノ基を含有する化合物の添加が、収率向上の観点から効果的である。
例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アラニン、グルタミン、γ−アミノブタン酸(GABA)エステル等の脂肪族アミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール等の芳香族アミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香環と結合したアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、カルニチン等のアミンの塩が挙げられる。入手の容易さ、経済性の観点からは、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、又は、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等が好適に使用される。
上記添加剤の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対して、0.01モル%以上で実施することが好ましく、経済性の面から0.1モル%がより好ましい。また、上記使用量は、100モル%以下で実施することが好ましく、経済性の面から20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
このようにしてハロゲン化反応を実施した後、塩化チオニルなどの揮発性のハロゲン化剤を使用していれば、反応溶媒を減圧下留去するだけで、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライド(2)を取得でき、次工程にそのまま使用することができる。
続く工程では、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを加水分解し、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を製造する。
加水分解反応における溶媒としては、水、又は、水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。当該有機溶媒としては、特に制限されず、前記のハロゲン化反応工程で例示した溶媒を用いることができる。操作の簡便さからは、ハロゲン化反応終了後、その反応液へ直接水を添加するのが好適である。一般に、加水分解反応は水を添加するだけで速やかに終了するが、塩酸、水酸化ナトリウム等の酸又は塩基を添加しても良い。
加水分解反応時の反応温度は、反応溶媒の種類により異なるが、通常は用いる反応溶剤の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは、温度は低く設定して実施する方がよい。一般的には0℃以上が好ましい。上記温度は、一般的には100℃以下が好ましく、更に好適には30℃以下である。
加水分解反応完了後は、次工程(1級アミノ基の脱保護)を含水系で実施する場合、加水分解反応終了液をそのまま、あるいは適宜中和を行った後に次工程に使用することができる。また、抽出やクロマトグラフィー等の常用される手法により、生成した光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸(3)を単離することもできる。
次に、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸(3)の1級アミノ基の脱保護を行い、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を取得する。脱保護は、例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載された方法、例えば水加ヒドラジンで反応させた後、硫酸などの酸でアミノ基を脱離させる方法などにより、実施することができる。次工程はアルカリ性水溶液中での環化反応であるので、当該脱保護反応を含水溶液中、あるいは水と混合する有機溶媒中で実施した場合は、そのまま次工程に使用することができる。また、生成した光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を抽出やクロマトグラフィー等の常用される手法により単離することもできる。なお、次工程で使用する前に、得られた水溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液などで中性にしておくことが好ましい。
続く工程では、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸をアルカリ性水溶液中で環化し、一般式(4)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を製造する。
アルカリ性水溶液に用いる塩基は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩基、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩基が挙げられる。中でも水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが好適である。
用いる塩基の使用量は、特に制限されず、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸に対して1モル当量以上で実施することが好ましい。また上記使用量は、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸水溶液に対して30モル当量以下で実施することが好ましく、10モル当量以下でがより好ましい。
環化反応において、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の濃度は、経済性の観点より、1重量%以上で実施することが好ましく、2重量%以上で実施することがより好ましい。また、上記濃度は、収率向上の観点より、50重量%以下で実施することが好ましく、30重量%以下で実施することがより好ましい。
環化反応時の反応温度は、用いる塩基の種類により異なるが、通常は反応溶媒である水の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは、温度は低く設定して実施する方がよい。上記温度は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、上記温度は、100℃以下であることが好ましい。
環化反応時の反応時間は、用いる塩基の種類や当量及び反応温度により異なるが、反応温度を70〜100℃で実施した場合、通常20分〜12時間程度である。
環化反応を完了した後は、反応液をそのまま、あるいは、中和した後、次工程のアミノ基保護反応に使用することができる。また、必要に応じて、反応液をイオン交換クロマトグラフィー等で精製すれば、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)を単離することもできる。
続く工程では、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)をアミノ基保護剤で処理し、一般式(5)で示される光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸を製造する。
一般式(5)において、Aは2級アミノ基の保護基を示し、当該反応に対してアミノ基を保護する効果を持つ基が用いられる。例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載の保護基が挙げられ、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル系保護基、ベンゾイル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基等のアシル系保護基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基等のスルホニル系保護基、アリル基、ベンジル基、ベンスヒドリル基等のアルキル系保護基を挙げることができる。中でも脱離が容易であることと、水溶液中からの有機溶媒による抽出が容易であるという観点からは、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基等が好ましい。
上記アミノ基保護反応において使用されるアミノ基保護剤としては、特に限定されず、例えば、ジ−tert−ブチルジカーボネート(ジボック)等の炭酸ジエステル系保護剤、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸アリル等のクロロ炭酸エステル系保護剤をはじめとするアルコキシカルボニル系保護剤、ベンゾイルクロリド、アセチルクロリド及びトリフルオロアセチルクロリドなどのアシルクロリド系保護剤や、無水酢酸等のアシル系保護剤、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド等のスルホニルクロリド系保護剤や、アリルクロリド、ベンジルクロリド等のアルキル系保護剤を挙げることができる。中でも脱保護が容易であることと、反応生成物の水溶液中からの有機溶媒による抽出が容易であるという観点からは、ジ−tert−ブチルジカーボネート、クロロ炭酸ベンジル、ベンゾイルクロリド等の使用が好ましい。
上記アミノ基保護剤の使用量は、反応効率上、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)に対して1モル当量以上が好ましい。また上記使用量は、経済性の面より、アゼチジン−2−カルボン酸(4)に対して3モル当量以下が好ましく、1.5モル当量以下がより好ましい。
反応溶媒としては、アミノ基保護剤として、例えばクロロ炭酸エステル系保護剤、アシルクロリド系保護剤、ジ−tert−ブチルカーボネートを用いる場合には、例えば、水、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの単独溶媒又はこれらの混合溶媒が用いられる。スルホニルクロリド系保護剤の場合にはトルエン、酢酸エチル若しくはテトラヒドロフラン等の有機溶媒の単独又は混合溶媒が用いられる。
上記アミノ基保護反応は、反応効率の観点より、塩基の共存下で実施されることが好ましい。使用する塩基としては特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等の有機塩基が用いることができる。その使用量は、反応効率上、アミノ基保護剤に対して1モル当量以上が好ましい。また、上記使用量は、アミノ基保護剤に対して10モル当量以下であることが好ましく、3モル当量以下であることが好ましい。
アミノ基保護反応の反応温度は、特に限定されないが、用いる溶媒の凝固点以上沸点以下の範囲で、0℃以上が好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また、反応温度は、100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。上記反応の反応時間は、経済上の面で、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また上記反応時間は、高い収率を得る点で、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。
上記のアミノ基保護反応が完了した後、塩酸、塩化アンモニウム水溶液などを加えて反応を止め、反応液を弱酸性にする。その後、酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエンなどの溶媒で抽出し、必要に応じ、抽出液を飽和食塩水などで洗浄し、必要に応じ、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥した後、これらを濾別し、濃縮した後、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの一般的操作を実施することにより、光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸を分離することができる。また、取得した光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸の光学純度が低い場合には、再晶析等によって光学純度を向上させることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、光学純度の決定はキラルカラム(キラルカラムOD−R(ダイセル))を付けた高速液体クロマトグラフィーによる分析にて行った。
(実施例1)
窒素雰囲気下、(S)−4−フタルイミド−2−ヒドロキシ酪酸50gにジオキサン150mlを加え、攪拌下、塩化チオニル35mlを添加し、40℃で1時間攪拌した。そこへ、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド9gを加え、更に、30℃で16時間攪拌し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ2.34〜2.39(m、1H)、2.59〜2.64(m、1H)、3.90〜3.95(m、2H)、4.61〜4.64(dd、1H)、7.73〜7.77(m、2H)、7.84〜7.89(m、2H)
(実施例2)
実施例1で得られた(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を室温へ放冷後、攪拌下、水10mlを加えた。溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液77mlを加え、pHを2.0とした。得られた溶液を減圧下、有機溶剤を留去し、酢酸エチルで抽出を行い、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸の酢酸エチル溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして分析したところ、光学純度は96.2%eeであった。得られた(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸の酢酸エチル溶液を減圧下、約100gまで濃縮し、トルエン150mlを加え、減圧下、約150gまで濃縮した。得られた溶液に、45℃で、ヘキサン170mlを添加した。この溶液を10℃まで徐々に冷却し、生成した白色結晶を濾取後、真空ポンプで一夜乾燥し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸43g(収率83%、光学純度100%ee)を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ2.26〜2.35(m、1H)、2.45〜2.53(m、1H)、3.85〜3.96(m、2H)、4.35〜4.39(dd、1H)、7.72〜7.74(m、2H)、7.85〜7.87(m、2H)
(実施例3)
(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸5gにメタノール40mlを加え、攪拌下、80%水加ヒドラジン2.3gを添加し、40℃で一夜攪拌した。その後、攪拌下、溶液に水30mlを加え、47%硫酸を13ml添加し、室温で4時間攪拌後、析出固体を濾別した。濾液を減圧下濃縮し、(R)−4−アミノ−2−クロロ酪酸水溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(D2O)δ2.15〜2.45(m、2H)、3.19(t、2H)、4.45(t、1H)
その後、溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを2.0とした後、水を加え、重量を約130gとした。得られた水溶液を攪拌下、約90℃に加熱後、水酸化マグネシウム1.0gを添加し、5時間攪拌して、(S)−アゼチジン−2−カルボン酸の水溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CD3OD)δ2.15(m、1H)、2.58(m、1H)、3.90(m、1H)、4.02(q、1H)、4.60(t、1H)
この溶液を室温に放冷後、攪拌下、炭酸ソーダ2.1g、ジボック4.3gを添加し、一夜攪拌した。この溶液に6N塩酸を加えてpHを2.0とし、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去して(S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸2.1g(収率55%、光学純度89.3%ee)を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ1.48(s、9H)、2.40〜2.60(bs、2H)3.80〜4.00(bs、2H)、4.80(t、1H)
(実施例4)
窒素雰囲気下、(S)−4−フタルイミド−2−ヒドロキシ酪酸1.0gにジオキサン3mlを加え、攪拌下、塩化チオニル2.5gを添加し、40℃で1時間攪拌した。そこへ、ピリジン0.06gを加え、更に、40℃で15時間攪拌し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を得た。この溶液をアイスバスにつけた後、攪拌下、水5mlを加えた。得られた溶液を、室温にて、酢酸エチルで抽出を行い、食塩水洗浄後、芒硝乾燥を行った。得られた酢酸エチル溶液を減圧下濃縮し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸を得た。そこへメタノール9mlを加え、攪拌下、80%水加ヒドラジン0.5gを添加し、40℃で一夜攪拌した。その後、攪拌下、溶液に水6mlを加え、47%硫酸を3ml添加し、室温で3時間攪拌後、析出固体を濾別した。濾液を減圧下濃縮し、(R)−4−アミノ−2−クロロ酪酸水溶液を得た。その後、溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを2.0とした後、水を加え、重量を約30gとした。得られた水溶液を攪拌下、約80℃に加熱後、水酸化マグネシウム0.20gを添加し、10時間攪拌して、(S)−アゼチジン−2−カルボン酸の水溶液を得た。この溶液を室温に放冷後、攪拌下、炭酸ソーダ0.43g、ジボック0.90gを添加し、一夜攪拌した。この溶液に6N塩酸を加えてpHを2.0とし、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去して(S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸0.32g(収率41%、光学純度87.1%ee)を得た。
産業上の利用可能性
本発明は、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を立体を反転させながらハロゲン化した後、加水分解処理を行い、アミノ基を脱保護後、引き続いて環化することにより、医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を、効率的かつ簡便に、工業的に有利に製造することができる。
また、本発明の一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドは、医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を製造する上で有用な化合物である。
本発明は医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法、及び、その有用中間体に関する。
背景技術
光学活性アゼチジン−2−カルボン酸誘導体の従来の製造方法としては、次のような方法が知られている。
(1)L−2,4−ジアミノ酪酸に塩酸−亜硝酸を作用させてL−4−アミノ−2−クロロ酪酸とし、ついでこれを水酸化バリウム水溶液中、加熱処理してD−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(バイオケミカル・ジャーナル(Biochemical Journal)64巻、323頁(1956年))。
(2)γ−ブチロラクトンに赤リンの存在下において臭素を作用させた後、塩化水素ガスを飽和させたベンジルアルコールで処理をして、DL−2,4−ジブロモ酪酸ベンジルエステルを得る。これにベンズヒドリルアミンを反応させて、DL−N−ジフェニルメチルアゼチジン−2−カルボン酸ベンジルエステルとした後、メタノール中、パラジウムカーボン存在下、水素で還元してDL−アゼチジン−2−カルボン酸とし、ついで、これを塩化ベンジルオキシカルボニルと反応させ、DL−N−(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸とした後、L−チロシンヒドラジドを用いて光学分割して、L−N−(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸を取得する。最後に、これを再度メタノール中、パラジウムカーボン存在下、水素で還元してL−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Journal of Heterocyclic Chemistry)6巻、435頁、993頁(1969年))。
(3)L−N−(トシル)メチオニンをSアルキル化してL−N−(トシル)メチオニンスルホニウム塩にし、これを水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して、L−N−トシル−α−アミノ−γ−ブチロラクトンに変換し、これをアルコール中、ハロゲン化水素ガスで処理してL−N−トシル−2−アミノ−4−ハロゲノ酪酸アルキルエステルとし、これをジメチルホルムアミド中、水素化ナトリウムで閉環反応させることにより、L−N−(トシル)アゼチジン−2−カルボン酸とし、これを液体アンモニア中、金属ナトリウムでトシル基を脱離させてL−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters)5頁(1973年))。
(4)L−アスパラギン酸ジエステルを環化して4−オキソ−2−アゼチジンカルボン酸誘導体とし、さらに、これを水素化リチウムアルミニウムで還元することでアゼチジン−2−メタノールとし、これをN−tert−ブトキシカルボニル化してN−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−メタノールとし、これを酸化してN−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(WO9847867)。
(5)ラセミ二置換酪酸エステルと光学活性アルキルベンジルアミンとを反応させて、光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸エステルのジアステレオマー対とし、続いてエステル基部分を加水分解して光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸のジアステレオマー対とする方法(特開平10−130231号公報)。
(6)N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルに対して不斉加水分解能を有する酵素を作用させて、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸および光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルの混合物とし、これらを分離する方法(特開平11−46784号公報)。
(7)ラセミN−アシルアゼチジン−2−カルボン酸エステルを酵素的に不斉加水分解して、光学活性N−アシルアゼチジン−2−カルボン酸および光学活性N−アシルアゼチジン−2−カルボン酸エステルの混合物とし、これらを分離する方法(WO9802568号公報)。
(8)光学活性メチオニンから誘導される光学活性N置換α−アミノ−γ−ハロゲノ酪酸エステルを環化させて、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルとし、続いてエステル基部分を加水分解して光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(特開平10−120648号公報)。
(9)光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、エステル化、ハロゲン化、環化、加水分解を行って4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とした後、環化を行い、L−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法。あるいは、光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、エステル化、ハロゲン化、硫酸処理(更に脱塩処理)、加水分解を行って4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とした後、環化を行い、L−アゼチジン−2−カルボン酸とする方法(WO0069817)。
しかしながら、前記の方法は、次のような問題点を有している。
(1)の方法においては、L−2,4−ジアミノ酪酸が高価である上、より有用なL体のアゼチジン−2−カルボン酸を取得するためには、さらに高価なD体の2,4−ジアミノ酪酸が必要とされる。また、第一工程の反応温度、反応時間などが目的化合物の光学純度に影響を及ぼすために、該反応操作をより厳密に行う必要がある。
(2)の方法においては、工程が長いことに加え、ベンズヒドリルアミンが高価であり、また、光学分割して得られる不要な光学活性体は、有利なラセミ化法が見出されない限り、廃棄することになり経済的に有利ではない。
(3)の方法においては、工程が長いことに加え、トシル基を脱離する工程において液体アンモニア中で金属ナトリウムを使用するため低温装置が必要であり、取り扱いに注意を要する。
(4)の方法においては、アゼチジノンの還元剤として、取扱いに注意を要する水素化リチウムアルミニウムを使用しているため工業化する上で問題となる。
(5)の方法においては、一般に反応の立体選択性が悪く生成する光学活性N−(アルキルベンジル)アゼチジン−2−カルボン酸エステルのジアステレオマー対中に、所望でない立体異性体が多量含まれてくる。したがって、所望の立体異性体を得るためには多量の不要な該異性体を分離する必要性を生じ、効率的にも経済的にも有利ではなく、また、工業的にも採用し難い方法となっている。
(6)及び(7)の方法においては、これら方法のいずれもが酵素を利用した光学分割法であり、したがって、所望の立体異性体を得ることのできる理論収率は50%を越えることがなく、かつ、多量に残る不要の該異性体を分離する必要性を生じ、効率的にも経済的にも有利とは言い難く、工業的に採用するには問題のある方法である。
(8)の方法においては、光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸を合成するのにエステル基を有する原料化合物を環化しているため、該生成物である光学活性N−置換アゼチジン−2−カルボン酸エステルのエステル基の加水分解工程が必要となっている。
(9)の方法においては、光学活性な4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸へ誘導するのに工程が長いことに加え、得られるN保護L−アゼチジン−2−カルボン酸の光学純度が高いとは言えず、効率的にも経済的にも有利とは言い難く、工業的に採用するには問題のある方法である。
発明の要約
このように、従来のいずれの製法も、工業的製造方法としては解決すべき課題を有している。本発明は、上記現状に鑑み、効率的かつ経済的であり、工業的に好適に実施することができるアゼチジン−2−カルボン酸の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、かかる課題を解決するため種々研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化することを特徴とする、一般式(2);
(式中、P及び*は前記と同じ。X、Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドの製造方法に関するものである。
また、本発明は、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを加水分解することを特徴とする、一般式(3);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、Xはハロゲン原子を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の製造方法にも関する。
さらに、本発明は、一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解することを特徴とする、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の製造方法にも関する。
さらに、本発明は、一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化することを特徴とする、一般式(4);
(式中、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法にも関する。
また、本発明は、一般式(1)の光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2)の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3)の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化して、一般式(4)の光学活性アゼチジン−2−カルボン酸とし、アミノ基保護剤で処理することを特徴とする、一般式(5);
(式中、Aは2級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法にも関する。
また、本発明は、一般式(2)で示される新規化合物、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドにも関する。
発明の詳細な開示
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、水素原子を除く一つの原子に結合したNH2基を1級アミノ基、水素原子を除く二つの原子に結合したNH基を2級アミノ基、水素原子を除く三つの原子に結合したN基を3級アミノ基、水素原子を含む四つの原子に結合したN+基を4級アミノ基と定義する。窒素原子が不飽和結合を有している場合は、各結合毎に原子数をカウントする。例えば、ピリジンは3級アミノ基を含有する化合物である。
一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸は、例えば、L−グルタミン酸を亜硝酸で環状ラクトンとし、引き続いてアンモニアで開環してモノアミドとした後、さらにアンチホルミンでホッフマン分解してL−4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸とし(特開昭和50−4019)、最後にこれを常法に従ってN保護することにより合成することができる。
光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)を、2位の立体を反転させながらハロゲン化し、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを製造する。
本明細書において、「立体を反転させる」とは、(R)体の化合物を(S)体の化合物へ、又は、(S)体の化合物を(R)体の化合物へ変換することを意味するものとする。
一般式(1)及び(2)において、Pは1級アミノ基の保護基を示し、当該反応に対してアミノ基を保護する効果を持つ基が用いられる。例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載の保護基が挙げられる。取り扱いの容易さ、及び安価であるという観点からは、フタルイミド基、アルコキシカルボニル基、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が好ましい。
一般式(2)において、X、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、例えば塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。後の工程での反応性、及び、ラセミ化を防止する観点からは、特に塩素、臭素が好適である。
なお、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドは、医薬品原料として重要な化合物である光学活性アゼチジン−2−カルボン酸誘導体(5)の製造において有用であることが、本発明者らにより見出された新規化合物である。
本工程のハロゲン化反応は、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)をハロゲン化剤で処理することにより行うことができる。ハロゲン化剤としては、例えばフッ化水素酸−フッ化カリウム等のフッ素化剤、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、塩酸、オキシ塩化リン、トリフェニルホスフィン−四塩化炭素等の塩素化剤、臭化チオニル、塩化チオニル−臭化水素酸、三臭化りん、臭化水素酸、トリフェニルホスフィン−四臭化炭素等の臭素化剤、ヨウ化水素酸、トリフェニルホスフィン−ヨウ素、トリメチルクロロシラン−ヨウ化ナトリウム等のヨウ素化剤が挙げられる。取扱いの容易さおよび立体選択性の観点からは、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化チオニル−臭化水素酸が好ましく、特に塩化チオニルが好ましい。
ハロゲン化剤の使用量は、通常、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対して1モル当量以上を用いて実施することができる。経済性の面から一般的には10モル当量以下の使用が好ましく、より好ましくは5モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下で実施することができる。
ハロゲン化を行う際の反応溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限されず、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒及び塩化チオニルが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
なお、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対し1モル当量以上で塩化チオニルを反応溶媒として使用した場合、ハロゲン化剤は使用しなくてもよい。
中でも光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)の溶解性及びハロゲン化剤に対する安定性の観点から、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、塩化チオニル又はそれらの2種以上を混合した溶媒が好ましい。なお、混合溶媒を用いる場合、混合割合に特に制限はない。
ハロゲン化反応を行う際の光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)の濃度は、用いる反応溶媒によって異なるが、反応効率を良くするために、一般的には1重量%以上で実施するのが好ましく、5重量%以上で実施するのがより好ましい。また、上記濃度は、反応効率を良くするために、50重量%以下で実施するのが好ましく、30重量%以下で実施することがより好ましい。
ハロゲン化反応時の反応温度は、用いるハロゲン化剤や反応溶媒の種類により異なるが、通常は用いる反応溶剤の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは温度を低く設定して実施する方がよい。上記温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。また上記温度は、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
ハロゲン化反応時の反応時間は、用いるハロゲン化剤や反応溶媒の種類及び反応温度により異なるが、反応温度を20〜60℃で実施した場合、通常1〜24時間程度である。
ハロゲン化反応においては、アンモニアの塩や、アミン、イミン、アミド、イミド、尿素類若しくはそれらの化合物の塩等、1級アミノ基を含有する化合物、2級アミノ基を含有する化合物、3級アミノ基を含有する化合物又は4級アミノ基を含有する化合物の添加が、収率向上の観点から効果的である。
例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アラニン、グルタミン、γ−アミノブタン酸(GABA)エステル等の脂肪族アミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール等の芳香族アミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香環と結合したアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、カルニチン等のアミンの塩が挙げられる。入手の容易さ、経済性の観点からは、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、又は、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等が好適に使用される。
上記添加剤の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸(1)に対して、0.01モル%以上で実施することが好ましく、経済性の面から0.1モル%がより好ましい。また、上記使用量は、100モル%以下で実施することが好ましく、経済性の面から20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
このようにしてハロゲン化反応を実施した後、塩化チオニルなどの揮発性のハロゲン化剤を使用していれば、反応溶媒を減圧下留去するだけで、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライド(2)を取得でき、次工程にそのまま使用することができる。
続く工程では、一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドを加水分解し、一般式(3)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を製造する。
加水分解反応における溶媒としては、水、又は、水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。当該有機溶媒としては、特に制限されず、前記のハロゲン化反応工程で例示した溶媒を用いることができる。操作の簡便さからは、ハロゲン化反応終了後、その反応液へ直接水を添加するのが好適である。一般に、加水分解反応は水を添加するだけで速やかに終了するが、塩酸、水酸化ナトリウム等の酸又は塩基を添加しても良い。
加水分解反応時の反応温度は、反応溶媒の種類により異なるが、通常は用いる反応溶剤の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは、温度は低く設定して実施する方がよい。一般的には0℃以上が好ましい。上記温度は、一般的には100℃以下が好ましく、更に好適には30℃以下である。
加水分解反応完了後は、次工程(1級アミノ基の脱保護)を含水系で実施する場合、加水分解反応終了液をそのまま、あるいは適宜中和を行った後に次工程に使用することができる。また、抽出やクロマトグラフィー等の常用される手法により、生成した光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸(3)を単離することもできる。
次に、光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸(3)の1級アミノ基の脱保護を行い、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を取得する。脱保護は、例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載された方法、例えば水加ヒドラジンで反応させた後、硫酸などの酸でアミノ基を脱離させる方法などにより、実施することができる。次工程はアルカリ性水溶液中での環化反応であるので、当該脱保護反応を含水溶液中、あるいは水と混合する有機溶媒中で実施した場合は、そのまま次工程に使用することができる。また、生成した光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸を抽出やクロマトグラフィー等の常用される手法により単離することもできる。なお、次工程で使用する前に、得られた水溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液などで中性にしておくことが好ましい。
続く工程では、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸をアルカリ性水溶液中で環化し、一般式(4)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を製造する。
アルカリ性水溶液に用いる塩基は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩基、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩基が挙げられる。中でも水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが好適である。
用いる塩基の使用量は、特に制限されず、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸に対して1モル当量以上で実施することが好ましい。また上記使用量は、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸水溶液に対して30モル当量以下で実施することが好ましく、10モル当量以下でがより好ましい。
環化反応において、光学活性4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸の濃度は、経済性の観点より、1重量%以上で実施することが好ましく、2重量%以上で実施することがより好ましい。また、上記濃度は、収率向上の観点より、50重量%以下で実施することが好ましく、30重量%以下で実施することがより好ましい。
環化反応時の反応温度は、用いる塩基の種類により異なるが、通常は反応溶媒である水の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させるためには温度を高めて実施する方がよく、ラセミ化を防ぐ観点からは、温度は低く設定して実施する方がよい。上記温度は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、上記温度は、100℃以下であることが好ましい。
環化反応時の反応時間は、用いる塩基の種類や当量及び反応温度により異なるが、反応温度を70〜100℃で実施した場合、通常20分〜12時間程度である。
環化反応を完了した後は、反応液をそのまま、あるいは、中和した後、次工程のアミノ基保護反応に使用することができる。また、必要に応じて、反応液をイオン交換クロマトグラフィー等で精製すれば、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)を単離することもできる。
続く工程では、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)をアミノ基保護剤で処理し、一般式(5)で示される光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸を製造する。
一般式(5)において、Aは2級アミノ基の保護基を示し、当該反応に対してアミノ基を保護する効果を持つ基が用いられる。例えば、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS second edition」(JOHN WILEY & SONS 1991)に記載の保護基が挙げられ、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル系保護基、ベンゾイル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基等のアシル系保護基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基等のスルホニル系保護基、アリル基、ベンジル基、ベンスヒドリル基等のアルキル系保護基を挙げることができる。中でも脱離が容易であることと、水溶液中からの有機溶媒による抽出が容易であるという観点からは、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基等が好ましい。
上記アミノ基保護反応において使用されるアミノ基保護剤としては、特に限定されず、例えば、ジ−tert−ブチルジカーボネート(ジボック)等の炭酸ジエステル系保護剤、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸アリル等のクロロ炭酸エステル系保護剤をはじめとするアルコキシカルボニル系保護剤、ベンゾイルクロリド、アセチルクロリド及びトリフルオロアセチルクロリドなどのアシルクロリド系保護剤や、無水酢酸等のアシル系保護剤、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド等のスルホニルクロリド系保護剤や、アリルクロリド、ベンジルクロリド等のアルキル系保護剤を挙げることができる。中でも脱保護が容易であることと、反応生成物の水溶液中からの有機溶媒による抽出が容易であるという観点からは、ジ−tert−ブチルジカーボネート、クロロ炭酸ベンジル、ベンゾイルクロリド等の使用が好ましい。
上記アミノ基保護剤の使用量は、反応効率上、光学活性アゼチジン−2−カルボン酸(4)に対して1モル当量以上が好ましい。また上記使用量は、経済性の面より、アゼチジン−2−カルボン酸(4)に対して3モル当量以下が好ましく、1.5モル当量以下がより好ましい。
反応溶媒としては、アミノ基保護剤として、例えばクロロ炭酸エステル系保護剤、アシルクロリド系保護剤、ジ−tert−ブチルカーボネートを用いる場合には、例えば、水、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの単独溶媒又はこれらの混合溶媒が用いられる。スルホニルクロリド系保護剤の場合にはトルエン、酢酸エチル若しくはテトラヒドロフラン等の有機溶媒の単独又は混合溶媒が用いられる。
上記アミノ基保護反応は、反応効率の観点より、塩基の共存下で実施されることが好ましい。使用する塩基としては特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等の有機塩基が用いることができる。その使用量は、反応効率上、アミノ基保護剤に対して1モル当量以上が好ましい。また、上記使用量は、アミノ基保護剤に対して10モル当量以下であることが好ましく、3モル当量以下であることが好ましい。
アミノ基保護反応の反応温度は、特に限定されないが、用いる溶媒の凝固点以上沸点以下の範囲で、0℃以上が好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また、反応温度は、100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。上記反応の反応時間は、経済上の面で、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また上記反応時間は、高い収率を得る点で、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。
上記のアミノ基保護反応が完了した後、塩酸、塩化アンモニウム水溶液などを加えて反応を止め、反応液を弱酸性にする。その後、酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエンなどの溶媒で抽出し、必要に応じ、抽出液を飽和食塩水などで洗浄し、必要に応じ、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥した後、これらを濾別し、濃縮した後、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの一般的操作を実施することにより、光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸を分離することができる。また、取得した光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸の光学純度が低い場合には、再晶析等によって光学純度を向上させることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、光学純度の決定はキラルカラム(キラルカラムOD−R(ダイセル))を付けた高速液体クロマトグラフィーによる分析にて行った。
(実施例1)
窒素雰囲気下、(S)−4−フタルイミド−2−ヒドロキシ酪酸50gにジオキサン150mlを加え、攪拌下、塩化チオニル35mlを添加し、40℃で1時間攪拌した。そこへ、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド9gを加え、更に、30℃で16時間攪拌し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ2.34〜2.39(m、1H)、2.59〜2.64(m、1H)、3.90〜3.95(m、2H)、4.61〜4.64(dd、1H)、7.73〜7.77(m、2H)、7.84〜7.89(m、2H)
(実施例2)
実施例1で得られた(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を室温へ放冷後、攪拌下、水10mlを加えた。溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液77mlを加え、pHを2.0とした。得られた溶液を減圧下、有機溶剤を留去し、酢酸エチルで抽出を行い、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸の酢酸エチル溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして分析したところ、光学純度は96.2%eeであった。得られた(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸の酢酸エチル溶液を減圧下、約100gまで濃縮し、トルエン150mlを加え、減圧下、約150gまで濃縮した。得られた溶液に、45℃で、ヘキサン170mlを添加した。この溶液を10℃まで徐々に冷却し、生成した白色結晶を濾取後、真空ポンプで一夜乾燥し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸43g(収率83%、光学純度100%ee)を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ2.26〜2.35(m、1H)、2.45〜2.53(m、1H)、3.85〜3.96(m、2H)、4.35〜4.39(dd、1H)、7.72〜7.74(m、2H)、7.85〜7.87(m、2H)
(実施例3)
(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸5gにメタノール40mlを加え、攪拌下、80%水加ヒドラジン2.3gを添加し、40℃で一夜攪拌した。その後、攪拌下、溶液に水30mlを加え、47%硫酸を13ml添加し、室温で4時間攪拌後、析出固体を濾別した。濾液を減圧下濃縮し、(R)−4−アミノ−2−クロロ酪酸水溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(D2O)δ2.15〜2.45(m、2H)、3.19(t、2H)、4.45(t、1H)
その後、溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを2.0とした後、水を加え、重量を約130gとした。得られた水溶液を攪拌下、約90℃に加熱後、水酸化マグネシウム1.0gを添加し、5時間攪拌して、(S)−アゼチジン−2−カルボン酸の水溶液を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CD3OD)δ2.15(m、1H)、2.58(m、1H)、3.90(m、1H)、4.02(q、1H)、4.60(t、1H)
この溶液を室温に放冷後、攪拌下、炭酸ソーダ2.1g、ジボック4.3gを添加し、一夜攪拌した。この溶液に6N塩酸を加えてpHを2.0とし、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去して(S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸2.1g(収率55%、光学純度89.3%ee)を得た。この溶液の少量をサンプリングして、NMR分析して構造を確認したところ、以下の分析データが得られた。
1H−NMR(CDCl3)δ1.48(s、9H)、2.40〜2.60(bs、2H)3.80〜4.00(bs、2H)、4.80(t、1H)
(実施例4)
窒素雰囲気下、(S)−4−フタルイミド−2−ヒドロキシ酪酸1.0gにジオキサン3mlを加え、攪拌下、塩化チオニル2.5gを添加し、40℃で1時間攪拌した。そこへ、ピリジン0.06gを加え、更に、40℃で15時間攪拌し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸クロライドのジオキサン溶液を得た。この溶液をアイスバスにつけた後、攪拌下、水5mlを加えた。得られた溶液を、室温にて、酢酸エチルで抽出を行い、食塩水洗浄後、芒硝乾燥を行った。得られた酢酸エチル溶液を減圧下濃縮し、(R)−4−フタルイミド−2−クロロ酪酸を得た。そこへメタノール9mlを加え、攪拌下、80%水加ヒドラジン0.5gを添加し、40℃で一夜攪拌した。その後、攪拌下、溶液に水6mlを加え、47%硫酸を3ml添加し、室温で3時間攪拌後、析出固体を濾別した。濾液を減圧下濃縮し、(R)−4−アミノ−2−クロロ酪酸水溶液を得た。その後、溶液をアイスバスにつけた後、400g/l水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを2.0とした後、水を加え、重量を約30gとした。得られた水溶液を攪拌下、約80℃に加熱後、水酸化マグネシウム0.20gを添加し、10時間攪拌して、(S)−アゼチジン−2−カルボン酸の水溶液を得た。この溶液を室温に放冷後、攪拌下、炭酸ソーダ0.43g、ジボック0.90gを添加し、一夜攪拌した。この溶液に6N塩酸を加えてpHを2.0とし、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去して(S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)アゼチジン−2−カルボン酸0.32g(収率41%、光学純度87.1%ee)を得た。
産業上の利用可能性
本発明は、光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を立体を反転させながらハロゲン化した後、加水分解処理を行い、アミノ基を脱保護後、引き続いて環化することにより、医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を、効率的かつ簡便に、工業的に有利に製造することができる。
また、本発明の一般式(2)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドは、医薬品原料として重要な光学活性アゼチジン−2−カルボン酸を製造する上で有用な化合物である。
Claims (18)
- 一般式(1);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2);
(式中、P及び*は前記と同じ。X、Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3);
(式中、P、X及び*は、前記と同じ。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化することを特徴とする、一般式(4);
(式中、*は前記と同じ。)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法。 - 一般式(1);
(式中、Pは1級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸を、立体を反転させながらハロゲン化して、一般式(2);
(式中、P及び*は前記と同じ。X、Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライドとし、続いて加水分解を行い、一般式(3);
(式中、P、X及び*は、前記と同じ。)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸とし、アミノ基を脱保護した後、アルカリ性水溶液中で環化して、一般式(4);
(式中、*は前記と同じ。)で示される光学活性アゼチジン−2−カルボン酸とし、アミノ基保護剤で処理することを特徴とする、一般式(5);
(式中、Aは2級アミノ基の保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で示される光学活性N保護アゼチジン−2−カルボン酸の製造方法。 - X、Yが、それぞれ独立に、塩素原子または臭素原子である、請求の範囲第1、2、3、4又は5項記載の製造方法。
- 1級アミノ基の保護基Pが、フタルイミド基あるいはアルコキシカルボニル基である請求の範囲第1、2、3、4、5又は6項記載の製造方法。
- アルコキシカルボニル基が、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基又はtert−ブトキシカルボニル基である請求の範囲第7項記載の製造方法。
- 2級アミノ基の保護基Aが、アルコキシカルボニル基である請求の範囲第5または6項記載の製造方法。
- アルコキシカルボニル基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求の範囲第9項記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸のハロゲン化において、ハロゲン化剤として塩化チオニルを用いる請求の範囲第1、3、4、5、6、7、8、9又は10項記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸のハロゲン化に際し、アンモニアの塩、1級アミノ基を含有する化合物、2級アミノ基を含有する化合物、3級アミノ基を含有する化合物又は4級アミノ基を含有する化合物を添加する、請求の範囲第1、3、4、5、6、7、8、9、10又は11項記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸のハロゲン化に際し、アンモニアの塩や、アミン、イミン、アミド、イミド、尿素類、あるいはそれらの化合物の塩を添加する、請求の範囲第1、3、4、5、6、7、8、9、10又は11項記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される光学活性N保護4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸のハロゲン化に際し、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルホルムアミド又はベンジルトリエチルアンモニウムクロライドを添加する、請求の範囲第1、3、4、5、6、7、8、9、10又は11項記載の製造方法。
- X、Yが、それぞれ独立に、塩素原子または臭素原子である、請求の範囲第15項記載の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライド。
- 1級アミノ基の保護基Pが、フタルイミド基あるいはアルコキシカルボニル基である請求の範囲第15又は16項記載の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライド。
- アルコキシカルボニル基が、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基またはtert−ブトキシカルボニル基である請求の範囲第17項記載の光学活性N保護4−アミノ−2−ハロゲノ酪酸ハライド。
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