JPWO2002099086A1 - 工業的生産に有用な微生物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物、該微生物を用いた、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体等の有用物質の好気的な製造法に関する。
Description
技術分野
本発明は、工業的生産に有用な微生物、該微生物を用いた有用物質の製造法に関する。
背景技術
アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体などの有用物質の、微生物を利用した工業的生産は、一般的には好気的な条件下で行われる。その際に使用される微生物は、好気性微生物のみならず通性嫌気性を示す微生物も積極的に利用されている〔Appl.Environ.Microbiol.,45,1445−1452(1983)〕。
目的とする有用物質の生産性を向上させるために、目的とする有用物質の生合成経路を強化、有用物質の分解系を軽減あるいは削除した微生物を取得し、該微生物を工業生産に利用することが試みられ、実績を上げている。具体的な例として、プロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した、グラム陰性細菌Serratia marcescensを用いたプロリン生産〔Appl.Environ.Micorbiol.,49,782−786(1985)〕、大腸菌K−12株のプロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した菌株を用いたヒドロキシプロリン生産〔Biosci.Biotech.Biochem.,64,746−750(2000)〕等をあげることができる。
しかしながら、嫌気的な生育に関わる遺伝子を操作することによる、好気的条件下における目的有用物質の生産性への影響についての報告はこれまでにない。
発明の開示
本発明は、通性嫌気性を示す微生物(以下、通性嫌気性微生物と略す)を用いた好気的な有用物質の生産に有効な、特定の遺伝子を不活性化あるいは欠失させた微生物、該微生物を用いる有用物質の好気的製造方法を提供することを目的とする。
タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体等の有用物質の、微生物を利用した製造は、通常、該微生物の好気的な撹拌培養により行われる。従って、本発明者らは、通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに関わる遺伝子群は、好気的な条件下で該有用物質の製造には必ずしも必要ではないと考え、該微生物の嫌気的な生育のみに係わる様々な遺伝子を不活性化あるいは欠失させ、該有用物質の生産効率を比較検討した。
その結果、通性嫌気性菌に分類される微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させることにより、好気的な条件下での有用物質の生産効率を向上させることができることを見出し本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は下記(1)〜(7)を提供するものである。
(1) 通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物。
(2) 遺伝子が、fdhD、fdhE、fdhF、fdnG、fdnH、fdnI、fdoG、fdoH、fdoI、hyaA、hyaB、hyaC、hyaD、hyaE、hyaF、hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybG、hybO、hycA、hycB、hycC、hycD、hycE、hycF、hycG、hycH、hycI、hydG、hydH、hydN、hyfA、hyfB、hyfC、hyfD、hyfE、hyfF、hyfG、hyfH、hyfI、hyfJ、hyfR、hypA、hypB、hypC、hypD、hypE、hypF、nikA、nikB、nikC、nikD、nikE、nikR、pflA、pflB、pflC、pflD、adhC、adhE、dmsA、dmsB、dmsC、frdA、frdB、frdC、frdD、napA、napB、napC、napD、napF、napG、napH、narG、narH、narI、narJ、narK、narL、narP、narQ、narU、narV、narW、narX、narY、narZ、nirB、nirC、nirD、nrfA、nrfB、nrfC、nrfD、nrfE、nrfF、nrfGおよびfnrからなる遺伝子群およびそれらのホモログ遺伝子群より選ばれる遺伝子である、上記(1)の微生物。
(3) 微生物が、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)およびコリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)からなる群より選ばれる科に属する微生物である、上記(1)または(2)の微生物。
(4) 微生物が、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属およびCorynebacterium属からなる群より選ばれる属に属する微生物である、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の微生物。
(5) 微生物が、Klebsiella aerogenes、Erwinia berbicola、Erwinia amylovora、Serratia marcescens、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Proteus rettgeri、Corynebacterium glutamicumおよびCorynebacterium ammoniagenesからなる群より選ばれる微生物である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の微生物。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の微生物を培地中で培養し、該培養物中に有用物質を生成、蓄積させ、該有用物質を採取することを特徴とする有用物質の好気的な製造法。
(7) 有用物質が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質およびそれらの類縁体からなる群より選ばれる有用物質である、上記(6)の製造法。
以下、本発明を詳細に説明する
I.本発明の微生物の造成
(1)造成のために用いることのできる微生物
本発明の微生物を造成するために用いることのできる微生物としては、産業上利用できる通性嫌気性微生物であればいかなる微生物も用いることができる。
通性嫌気性微生物とは、酸素を最終の電子受容体とする呼吸系以外の呼吸系を持つ微生物をいう。
このような微生物として、エンテロバクテリア科
(Enterobacteriaceae)、コリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)等に属する微生物をあげることができ、例えば、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属、Corynebacterium属等に属する微生物をあげることができる。
具体的には、Klebsiella aerogenes、Erwinia berbicola、Erwinia amylovora、Serratia marcescens、Serratia ficaria、Serratia fonticola Serratia liquefaciens、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Proteus rettgeri、Corynebacterium glutamicum(俗称でBrevibacterium flavum、Brevibacterium lactofermentumと呼ばれるものを含む)、Corynebacterium mycetoides、Corynebacterium variabilis、Corynebacterium ammoniagenes等をあげることができる。
上記微生物は野生型の微生物であっても、産業上有用な改良を施された微生物であってもよい。
即ち、上記微生物の変異株、細胞融合株、形質導入株あるいは遺伝子組換え技術を用いて造成した組換え株のいずれであってもよい。工業的に既に利用されている上記微生物であれば、下記方法により、より有効な本発明の微生物を造成することができる。
(2)本発明の微生物の造成
(a)変異処理による方法
上記(1)記載の微生物を、常法に従って培養する。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得する。該菌体を、適切な緩衝剤、例えば、0.05Mトリス−マレイン酸緩衝液(pH6.0)等で洗浄後、菌体濃度が104〜1010細胞/mlになるように同緩衝液に懸濁する。該懸濁液を用いて常法により変異処理を行う。常法として、例えば、該懸濁液にN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を終濃度が600mg/lになるように加え、室温で20分間保持して変異処理する方法をあげることができる。該変異処理懸濁液を完全培地に塗布し、15〜38℃で、1〜4日間培養する。培養後、生育し形成されたコロニーを、最少寒天培地2枚に塗布し、1枚は好気的条件下で、もう1枚を嫌気培養装置内で嫌気的に培養する。好気的条件下では生育できるが、嫌気的条件下では生育できない株を目的の変異株として選択する。
(b)遺伝子組換えによる方法
微生物の染色体上の目的とする遺伝子を欠失あるいは不活性化させる方法として、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)に記載の方法、G.M.Churchらの方法〔Journal of Bacteriology,179,6228−6237(1997)〕、B.L.Wannerらの方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6640(2000)〕等の公知の方法を用いることができる。トランスポゾンを利用して染色体上の遺伝子を欠失させることもできる〔Gene,27,131−149(1984)〕。
また大腸菌においては、目的とする遺伝子を破壊するための直鎖DNA断片をin vitroで作成した後、エレクトロポレーションで菌体内に導入し、遺伝子置換によって目的遺伝子を破壊する方法も知られている〔Nucleic Acids Research,27,1296−1299(1999)〕。
以下、G.H.Churchらの方法に関して詳述する。
該方法においては、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドを用いる。温度感受性プラスミドとしてはプラスミドの複製に必須のタンパク質が温度感受性になったもの等を利用でき、具体的にはpKO3、pKD20等をあげることができる。自殺遺伝子としては、枯草菌由来のsacB等をあげることができる。目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同な二つのDNA断片を結合したDNAを、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドに導入する。制限温度下で該プラスミドを微生物染色体上へ挿入する。得られた組換え株を自殺遺伝子が作用する条件下で培養し、生育してきた株を、該プラスミドが染色体上から脱落した株として取得する。例えば、自殺遺伝子としてsacBを利用した場合には、自殺遺伝子が作用する培養条件としては、シュークロースを含む培地で培養する条件をあげることができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株を選抜する。染色体の構造解析は常法に従って行うことができ、例えば、該株の染色体を鋳型とし、破壊したい遺伝子領域周辺の配列をプライマーとして用い、PCRにて周辺領域の構造を解析する方法等をあげることができる。
次に、B.L.Wannerらの方法に関して以下に詳述する。
薬剤耐性遺伝子に、目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同なDNAを付加した直鎖DNAをPCR法で作製する。該DNAをλRed組換え系を利用し、微生物染色体上に相同組換えにより組み込む。目的とする遺伝子領域が薬剤耐性遺伝子で置き換わった株を、薬剤耐性株として選抜することができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株であることを確認する。染色体の構造解析は上記方法に準じて行うことができる。
目的とする遺伝子としては、嫌気呼吸に関わる遺伝子であればいずれの遺伝子でも良い。具体的には、fdhD、fdhE、fdhF、fdnG、fdnH、fdnI、fdoG、fdoH、fdoI、hyaA、hyaB、hyaC、hyaD、hyaE、hyaF、hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybG、hybO、hycA、hycB、hycC、hycD、hycE、hycF、hycG、hycH、hycI、hydG、hydH、hydN、hyfA、hyfB、hyfC、hyfD、hyfE、hyfF、hyfG、hyfH、hyfI、hyfJ、hyfR、hypA、hypB、hypC、hypD、hypE、hypF、nikA、nikB、nikC、nikD、nikE、nikR、pflA、pflB、pflC、pflD、adhC、adhE、dmsA、dmsB、dmsC、frdA、frdB、frdC、frdD、napA、napB、napC、napD、napF、napG、napH、narG、narH、narI、narJ、narK、narL、narP、narQ、narU、narV、narW、narX、narY、narZ、nirB、nirC、nirD、nrfA、nrfB、nrfC、nrfD、nrfE、nrfF、nrfG、fnrあるいはこれらのホモログ遺伝子(Escherichia coli and Salmonella,Cellulara and Molecular Biology Volume I and II,Second Edition,ASM Press、あるいはhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/を参照)等をあげることができる。欠失または不活性化させる、嫌気的な生育のみに必要な遺伝子の数は1以上であればよい。
通性嫌気性微生物は、一般的に、腸管内部などの人体内で効率的な生育をすることが可能である。従って、上記の方法で造成される、本発明の嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物は、人体内での生育能の低下もしくは持たない微生物であるため、より安全な産業上有用な微生物として使用することができる。
II.本発明の微生物を用いた有用物質の製造
上記Iで造成した本発明の微生物を用いる有用物質の生産は、通常の微生物の培養法を用いて行うことができる。
該有用物質としては、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質またはそれらの類縁体等をあげることができる。
有用物質の生産に用いる培地としては、炭素源、窒素源、無機塩、その他使用する微生物の必要とする微量の栄養素を程よく含有するものならば、合成培地または天然培地いずれも使用可能である。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、振盪培養または深部通気撹拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
造成に用いた微生物が、誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物である場合には、培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
有用物質が菌体外に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体などの沈殿物を除去し、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、培養液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
有用物質が菌体内に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体を回収した後、機械的あるいは化学的方法等の適切な方法で破砕する。該菌体破砕液から、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、該菌体破砕液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
発明を実施するための最良の形態
実施例
K−12系統大腸菌MG1655株(親株)の、嫌気条件下での呼吸に関与する、染色体上に連続して存在する遺伝子群(hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybGおよびhybO)の両末端に隣接する約2kbpの領域と相同な二つのDNA断片を結合したものを、自殺遺伝子であるsacBを有する温度感受性プラスミドpKO3に導入する。G.M.Churchらの方法〔Journal of Bacteriology,179,6228−6237(1997)〕に準じて、該プラスミドをK−12系統大腸菌MG1655株の染色体上に導入し、組換え株を取得する。該組換え株をシュークロースを含む培地で培養し、生育してきた株を、プラスミド領域が染色体より脱離した組換え株として取得する。PCR法により組換え株染色体の構造を確認することにより、取得された組換え株の中から、プラスミドが脱離するさいに目的の遺伝子群(hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybGおよびhybO)が欠落した菌株(欠損株)を選抜した。〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(yqjA−yhaC)::KmR]であるOCL−36株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕。
完全培地(Difco社製のAntibioticmedium3にジアミノピメリン酸を終濃度50μg/mlで添加したもの)8mlを用い、親株および欠損株をそれぞれ30℃で終夜、液体培養した。得られた培養液をそれぞれ完全培地8mlに1%植菌し、30℃で培養を行い、経時的にサンプリングした。
取得したサンプルを、660nmの吸光度の値が0.03〜0.3程度になるように希釈した後、分光光度計を用いて、濁度を測定した。
また、培養23時間目における菌体由来のタンパク質量を下記方法により測定した。
サンプル200μlを16,000xgにて6分間遠心分離した後、注意深く上清を捨てた。得られた菌体(沈殿画分)に1mlの生理食塩水を加え、該菌体を撹拌洗浄した。洗浄後、16,000xgで5分間遠心分離し、上清を注意深く捨てた。さらに16,000xgで4分間遠心分離し、上清を注意深く捨て、壁面等に付着していた洗浄液を取り除き、洗浄菌体を取得した。該洗浄菌体は−30℃で保存することが可能であったため、まとめてタンパク量を測定する場合には凍結保存した洗浄菌体を用いた。該洗浄菌体または凍結保存菌体を融解させた菌体に、200μlの1%SDS溶液を添加し、該菌体を懸濁した後、100℃で5分間加熱することで菌を溶解した。得られた溶解液を、1%SDSを用いて段階的に希釈した。該希釈液中のタンパク量を、バイオラッド社製のDCプロテインアッセイキット1を用い、キット添付の指示書に従って測定し、培養液1mlあたりの菌体内タンパク量を算出した。
結果を第1表に示した。
親株に比べ、欠損株はより高い濁度を示すことより、好気的な条件下において、親株より生育の向上していることが示された。また該欠損株は、親株に比べ、有為に培地体積あたりの菌体タンパク量も増大していた。
以上の結果から、大腸菌を用いたタンパク質の生産において、嫌気条件下での呼吸に関与する遺伝子群を破壊することにより得られた大腸菌を用いることにより、タンパク質の生産効率を有為に向上させることができることがわかった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、嫌気的条件である人体内での生育能が低下した、または生育能を有しない安全で、有用物質の生産に有用な微生物、該微生物を用いた効率的な有用物質の製造法を提供することができる。
本発明は、工業的生産に有用な微生物、該微生物を用いた有用物質の製造法に関する。
背景技術
アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体などの有用物質の、微生物を利用した工業的生産は、一般的には好気的な条件下で行われる。その際に使用される微生物は、好気性微生物のみならず通性嫌気性を示す微生物も積極的に利用されている〔Appl.Environ.Microbiol.,45,1445−1452(1983)〕。
目的とする有用物質の生産性を向上させるために、目的とする有用物質の生合成経路を強化、有用物質の分解系を軽減あるいは削除した微生物を取得し、該微生物を工業生産に利用することが試みられ、実績を上げている。具体的な例として、プロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した、グラム陰性細菌Serratia marcescensを用いたプロリン生産〔Appl.Environ.Micorbiol.,49,782−786(1985)〕、大腸菌K−12株のプロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した菌株を用いたヒドロキシプロリン生産〔Biosci.Biotech.Biochem.,64,746−750(2000)〕等をあげることができる。
しかしながら、嫌気的な生育に関わる遺伝子を操作することによる、好気的条件下における目的有用物質の生産性への影響についての報告はこれまでにない。
発明の開示
本発明は、通性嫌気性を示す微生物(以下、通性嫌気性微生物と略す)を用いた好気的な有用物質の生産に有効な、特定の遺伝子を不活性化あるいは欠失させた微生物、該微生物を用いる有用物質の好気的製造方法を提供することを目的とする。
タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体等の有用物質の、微生物を利用した製造は、通常、該微生物の好気的な撹拌培養により行われる。従って、本発明者らは、通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに関わる遺伝子群は、好気的な条件下で該有用物質の製造には必ずしも必要ではないと考え、該微生物の嫌気的な生育のみに係わる様々な遺伝子を不活性化あるいは欠失させ、該有用物質の生産効率を比較検討した。
その結果、通性嫌気性菌に分類される微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させることにより、好気的な条件下での有用物質の生産効率を向上させることができることを見出し本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は下記(1)〜(7)を提供するものである。
(1) 通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物。
(2) 遺伝子が、fdhD、fdhE、fdhF、fdnG、fdnH、fdnI、fdoG、fdoH、fdoI、hyaA、hyaB、hyaC、hyaD、hyaE、hyaF、hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybG、hybO、hycA、hycB、hycC、hycD、hycE、hycF、hycG、hycH、hycI、hydG、hydH、hydN、hyfA、hyfB、hyfC、hyfD、hyfE、hyfF、hyfG、hyfH、hyfI、hyfJ、hyfR、hypA、hypB、hypC、hypD、hypE、hypF、nikA、nikB、nikC、nikD、nikE、nikR、pflA、pflB、pflC、pflD、adhC、adhE、dmsA、dmsB、dmsC、frdA、frdB、frdC、frdD、napA、napB、napC、napD、napF、napG、napH、narG、narH、narI、narJ、narK、narL、narP、narQ、narU、narV、narW、narX、narY、narZ、nirB、nirC、nirD、nrfA、nrfB、nrfC、nrfD、nrfE、nrfF、nrfGおよびfnrからなる遺伝子群およびそれらのホモログ遺伝子群より選ばれる遺伝子である、上記(1)の微生物。
(3) 微生物が、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)およびコリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)からなる群より選ばれる科に属する微生物である、上記(1)または(2)の微生物。
(4) 微生物が、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属およびCorynebacterium属からなる群より選ばれる属に属する微生物である、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の微生物。
(5) 微生物が、Klebsiella aerogenes、Erwinia berbicola、Erwinia amylovora、Serratia marcescens、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Proteus rettgeri、Corynebacterium glutamicumおよびCorynebacterium ammoniagenesからなる群より選ばれる微生物である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の微生物。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の微生物を培地中で培養し、該培養物中に有用物質を生成、蓄積させ、該有用物質を採取することを特徴とする有用物質の好気的な製造法。
(7) 有用物質が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質およびそれらの類縁体からなる群より選ばれる有用物質である、上記(6)の製造法。
以下、本発明を詳細に説明する
I.本発明の微生物の造成
(1)造成のために用いることのできる微生物
本発明の微生物を造成するために用いることのできる微生物としては、産業上利用できる通性嫌気性微生物であればいかなる微生物も用いることができる。
通性嫌気性微生物とは、酸素を最終の電子受容体とする呼吸系以外の呼吸系を持つ微生物をいう。
このような微生物として、エンテロバクテリア科
(Enterobacteriaceae)、コリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)等に属する微生物をあげることができ、例えば、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属、Corynebacterium属等に属する微生物をあげることができる。
具体的には、Klebsiella aerogenes、Erwinia berbicola、Erwinia amylovora、Serratia marcescens、Serratia ficaria、Serratia fonticola Serratia liquefaciens、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Proteus rettgeri、Corynebacterium glutamicum(俗称でBrevibacterium flavum、Brevibacterium lactofermentumと呼ばれるものを含む)、Corynebacterium mycetoides、Corynebacterium variabilis、Corynebacterium ammoniagenes等をあげることができる。
上記微生物は野生型の微生物であっても、産業上有用な改良を施された微生物であってもよい。
即ち、上記微生物の変異株、細胞融合株、形質導入株あるいは遺伝子組換え技術を用いて造成した組換え株のいずれであってもよい。工業的に既に利用されている上記微生物であれば、下記方法により、より有効な本発明の微生物を造成することができる。
(2)本発明の微生物の造成
(a)変異処理による方法
上記(1)記載の微生物を、常法に従って培養する。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得する。該菌体を、適切な緩衝剤、例えば、0.05Mトリス−マレイン酸緩衝液(pH6.0)等で洗浄後、菌体濃度が104〜1010細胞/mlになるように同緩衝液に懸濁する。該懸濁液を用いて常法により変異処理を行う。常法として、例えば、該懸濁液にN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を終濃度が600mg/lになるように加え、室温で20分間保持して変異処理する方法をあげることができる。該変異処理懸濁液を完全培地に塗布し、15〜38℃で、1〜4日間培養する。培養後、生育し形成されたコロニーを、最少寒天培地2枚に塗布し、1枚は好気的条件下で、もう1枚を嫌気培養装置内で嫌気的に培養する。好気的条件下では生育できるが、嫌気的条件下では生育できない株を目的の変異株として選択する。
(b)遺伝子組換えによる方法
微生物の染色体上の目的とする遺伝子を欠失あるいは不活性化させる方法として、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)に記載の方法、G.M.Churchらの方法〔Journal of Bacteriology,179,6228−6237(1997)〕、B.L.Wannerらの方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6640(2000)〕等の公知の方法を用いることができる。トランスポゾンを利用して染色体上の遺伝子を欠失させることもできる〔Gene,27,131−149(1984)〕。
また大腸菌においては、目的とする遺伝子を破壊するための直鎖DNA断片をin vitroで作成した後、エレクトロポレーションで菌体内に導入し、遺伝子置換によって目的遺伝子を破壊する方法も知られている〔Nucleic Acids Research,27,1296−1299(1999)〕。
以下、G.H.Churchらの方法に関して詳述する。
該方法においては、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドを用いる。温度感受性プラスミドとしてはプラスミドの複製に必須のタンパク質が温度感受性になったもの等を利用でき、具体的にはpKO3、pKD20等をあげることができる。自殺遺伝子としては、枯草菌由来のsacB等をあげることができる。目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同な二つのDNA断片を結合したDNAを、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドに導入する。制限温度下で該プラスミドを微生物染色体上へ挿入する。得られた組換え株を自殺遺伝子が作用する条件下で培養し、生育してきた株を、該プラスミドが染色体上から脱落した株として取得する。例えば、自殺遺伝子としてsacBを利用した場合には、自殺遺伝子が作用する培養条件としては、シュークロースを含む培地で培養する条件をあげることができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株を選抜する。染色体の構造解析は常法に従って行うことができ、例えば、該株の染色体を鋳型とし、破壊したい遺伝子領域周辺の配列をプライマーとして用い、PCRにて周辺領域の構造を解析する方法等をあげることができる。
次に、B.L.Wannerらの方法に関して以下に詳述する。
薬剤耐性遺伝子に、目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同なDNAを付加した直鎖DNAをPCR法で作製する。該DNAをλRed組換え系を利用し、微生物染色体上に相同組換えにより組み込む。目的とする遺伝子領域が薬剤耐性遺伝子で置き換わった株を、薬剤耐性株として選抜することができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株であることを確認する。染色体の構造解析は上記方法に準じて行うことができる。
目的とする遺伝子としては、嫌気呼吸に関わる遺伝子であればいずれの遺伝子でも良い。具体的には、fdhD、fdhE、fdhF、fdnG、fdnH、fdnI、fdoG、fdoH、fdoI、hyaA、hyaB、hyaC、hyaD、hyaE、hyaF、hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybG、hybO、hycA、hycB、hycC、hycD、hycE、hycF、hycG、hycH、hycI、hydG、hydH、hydN、hyfA、hyfB、hyfC、hyfD、hyfE、hyfF、hyfG、hyfH、hyfI、hyfJ、hyfR、hypA、hypB、hypC、hypD、hypE、hypF、nikA、nikB、nikC、nikD、nikE、nikR、pflA、pflB、pflC、pflD、adhC、adhE、dmsA、dmsB、dmsC、frdA、frdB、frdC、frdD、napA、napB、napC、napD、napF、napG、napH、narG、narH、narI、narJ、narK、narL、narP、narQ、narU、narV、narW、narX、narY、narZ、nirB、nirC、nirD、nrfA、nrfB、nrfC、nrfD、nrfE、nrfF、nrfG、fnrあるいはこれらのホモログ遺伝子(Escherichia coli and Salmonella,Cellulara and Molecular Biology Volume I and II,Second Edition,ASM Press、あるいはhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/を参照)等をあげることができる。欠失または不活性化させる、嫌気的な生育のみに必要な遺伝子の数は1以上であればよい。
通性嫌気性微生物は、一般的に、腸管内部などの人体内で効率的な生育をすることが可能である。従って、上記の方法で造成される、本発明の嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物は、人体内での生育能の低下もしくは持たない微生物であるため、より安全な産業上有用な微生物として使用することができる。
II.本発明の微生物を用いた有用物質の製造
上記Iで造成した本発明の微生物を用いる有用物質の生産は、通常の微生物の培養法を用いて行うことができる。
該有用物質としては、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質またはそれらの類縁体等をあげることができる。
有用物質の生産に用いる培地としては、炭素源、窒素源、無機塩、その他使用する微生物の必要とする微量の栄養素を程よく含有するものならば、合成培地または天然培地いずれも使用可能である。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、振盪培養または深部通気撹拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
造成に用いた微生物が、誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物である場合には、培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
有用物質が菌体外に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体などの沈殿物を除去し、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、培養液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
有用物質が菌体内に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体を回収した後、機械的あるいは化学的方法等の適切な方法で破砕する。該菌体破砕液から、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、該菌体破砕液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
発明を実施するための最良の形態
実施例
K−12系統大腸菌MG1655株(親株)の、嫌気条件下での呼吸に関与する、染色体上に連続して存在する遺伝子群(hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybGおよびhybO)の両末端に隣接する約2kbpの領域と相同な二つのDNA断片を結合したものを、自殺遺伝子であるsacBを有する温度感受性プラスミドpKO3に導入する。G.M.Churchらの方法〔Journal of Bacteriology,179,6228−6237(1997)〕に準じて、該プラスミドをK−12系統大腸菌MG1655株の染色体上に導入し、組換え株を取得する。該組換え株をシュークロースを含む培地で培養し、生育してきた株を、プラスミド領域が染色体より脱離した組換え株として取得する。PCR法により組換え株染色体の構造を確認することにより、取得された組換え株の中から、プラスミドが脱離するさいに目的の遺伝子群(hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybGおよびhybO)が欠落した菌株(欠損株)を選抜した。〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(yqjA−yhaC)::KmR]であるOCL−36株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕。
完全培地(Difco社製のAntibioticmedium3にジアミノピメリン酸を終濃度50μg/mlで添加したもの)8mlを用い、親株および欠損株をそれぞれ30℃で終夜、液体培養した。得られた培養液をそれぞれ完全培地8mlに1%植菌し、30℃で培養を行い、経時的にサンプリングした。
取得したサンプルを、660nmの吸光度の値が0.03〜0.3程度になるように希釈した後、分光光度計を用いて、濁度を測定した。
また、培養23時間目における菌体由来のタンパク質量を下記方法により測定した。
サンプル200μlを16,000xgにて6分間遠心分離した後、注意深く上清を捨てた。得られた菌体(沈殿画分)に1mlの生理食塩水を加え、該菌体を撹拌洗浄した。洗浄後、16,000xgで5分間遠心分離し、上清を注意深く捨てた。さらに16,000xgで4分間遠心分離し、上清を注意深く捨て、壁面等に付着していた洗浄液を取り除き、洗浄菌体を取得した。該洗浄菌体は−30℃で保存することが可能であったため、まとめてタンパク量を測定する場合には凍結保存した洗浄菌体を用いた。該洗浄菌体または凍結保存菌体を融解させた菌体に、200μlの1%SDS溶液を添加し、該菌体を懸濁した後、100℃で5分間加熱することで菌を溶解した。得られた溶解液を、1%SDSを用いて段階的に希釈した。該希釈液中のタンパク量を、バイオラッド社製のDCプロテインアッセイキット1を用い、キット添付の指示書に従って測定し、培養液1mlあたりの菌体内タンパク量を算出した。
結果を第1表に示した。
親株に比べ、欠損株はより高い濁度を示すことより、好気的な条件下において、親株より生育の向上していることが示された。また該欠損株は、親株に比べ、有為に培地体積あたりの菌体タンパク量も増大していた。
以上の結果から、大腸菌を用いたタンパク質の生産において、嫌気条件下での呼吸に関与する遺伝子群を破壊することにより得られた大腸菌を用いることにより、タンパク質の生産効率を有為に向上させることができることがわかった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、嫌気的条件である人体内での生育能が低下した、または生育能を有しない安全で、有用物質の生産に有用な微生物、該微生物を用いた効率的な有用物質の製造法を提供することができる。
Claims (7)
- 通性嫌気性を示す微生物において、嫌気的な生育のみに必要な1以上の遺伝子を欠失または不活性化させた微生物。
- 遺伝子が、fdhD、fdhE、fdhF、fdnG、fdnH、fdnI、fdoG、fdoH、fdoI、hyaA、hyaB、hyaC、hyaD、hyaE、hyaF、hybA、hybB、hybC、hybD、hybE、hybF、hybG、hybO、hycA、hycB、hycC、hycD、hycE、hycF、hycG、hycH、hycI、hydG、hydH、hydN、hyfA、hyfB、hyfC、hyfD、hyfE、hyfF、hyfG、hyfH、hyfI、hyfJ、hyfR、hypA、hypB、hypC、hypD、hypE、hypF、nikA、nikB、nikC、nikD、nikE、nikR、pflA、pflB、pflC、pflD、adhC、adhE、dmsA、dmsB、dmsC、frdA、frdB、frdC、frdD、napA、napB、napC、napD、napF、napG、napH、narG、narH、narI、narJ、narK、narL、narP、narQ、narU、narV、narW、narX、narY、narZ、nirB、nirC、nirD、nrfA、nrfB、nrfC、nrfD、nrfE、nrfF、nrfGおよびfnrからなる遺伝子群およびそれらのホモログ遺伝子群より選ばれる遺伝子である、請求項1記載の微生物。
- 微生物が、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)およびコリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)よりなる群より選ばれる科に属する微生物である、請求項1または2記載の微生物。
- 微生物が、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属およびCorynebacterium属からなる群より選ばれる属に属する微生物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
- 微生物が、Klebsiella aerogenes、Erwinia berbicola、Erwinia amylovora、Serratia marcescens、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Proteus rettgeri、Corynebacterium glutamicum、Corynebacterium mycetoides、Corynebacterium variabilisおよびCorynebacterium ammoniagenesからなる群より選ばれる微生物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物を培地中で培養し、該培養物中に有用物質を生成、蓄積させ、該有用物質を採取することを特徴とする有用物質の好気的な製造法。
- 有用物質が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質およびそれらの類縁体からなる群より選ばれる有用物質である、請求項6記載の製造法。
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