JPWO2002064778A1 - ニューロン生存活性を示すrna - Google Patents
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Abstract
ニューロン、特に脊髄運動ニューロンに対して生存活性等の生理活性を有する抽出分画に含有される本質的成分を同定し、神経変性疾患をはじめとする各種疾患の診断、予防、治療等に有用な生体由来成分を提供する。配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するRNAであって、このRNAは脊髄運動ニューロンに対して非常に高い生存活性を示す。
Description
「技術分野」
本発明は、運動ニューロン疾患の診断、予防又は治療薬として有用なニューロン生存活性等のニューロン生理活性を示す成分として同定されたRNAに関する。
「従来の技術」
胚形成の過程では、初期において過剰に神経細胞が形成されてから、その数が減少する。この過程を自然細胞死と言う。例えば、腰部脊髄においては40%程度の運動ニューロンが死滅することが観察されている。また、この運動ニューロン死は、神経筋シナプス結合の形成時期と一致して進行することも観察されている。胚形成の過程において標的組織である骨格筋が神経支配される前に、当該骨格筋を実験的に除去すると、運動ニューロンが死滅する。そして、胚形成の過程において別の胚から肢芽を取り出して植え込むと、ほんのわずかしか運動ニューロンが死滅しない。従って、運動ニューロン同士は、標的組織由来の限られた量の栄養因子を互いに奪い合い、その結果、当該因子を十分に獲得したものだけが神経筋接合を形成し、一方、当該因子を獲得し損ねた運動ニューロンは死滅するものと仮説が立てられている。運動ニューロンの自然細胞死のメカニズムについては、標的組織に依存して生死が決まるとの考え方が一般的に受け入れられている。
神経成長因子(NGF)は栄養因子の原型(プロトタイプ)であり、発達中の交感神経節後神経細胞とある種の感覚神経細胞の生存を促進することが見出されている。運動ニューロンに関しては、NGFは自然細胞死に何の影響も及ぼさなかったが、新生仔において軸索切断によってもたらされる細胞死をむしろ増大させた。1970年代から、末梢および中枢神経に関与すると思われるNGF以外の因子を単離するための研究が行われてきた。これまでに単離された因子としては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、白血病抑制因子(LIF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)などがインビボまたはインビトロにおいて運動ニューロンの死滅を阻止することが見出されている。これらのいずれも骨格筋から単離されたものではないが、骨格筋の中でも発現(存在)することが認められている。しかしながら、NGF、BDNF、NT−3、LIFあるいはGDNFのどれかをコードしているマウス遺伝子を選択的に破壊しても、運動ニューロンの生存にはほとんど影響がなかった。複数遺伝子が欠損した場合の影響はあまり知られていないが、これらの遺伝子ノックアウトの結果は、これらの各ファクターは真の運動ニューロン生存因子ではないことを示唆しており、骨格筋の中に同定すべき別の分子がまだ残っていると思われる。
ある一群の神経変性疾患は特定の神経栄養因子の異常によって招来するものとの仮説もあり、当該神経栄養因子は神経変性疾患の治療に極めて大きな可能性を秘めている。しかしながら、これらの因子を、運動ニューロン疾患のひとつである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対して臨床試験がされたけれど、現状では無効と判定されている。従って、ALSあるいはその他の運動ニューロン疾患を軽減できそうな全く新規の因子(または複合的な因子群)が治療薬として得られはしないかと待望されている。
本発明らは以前、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、運動ニューロンに生存作用をもたらす成分を、所定のカラムクロマトグラフィー系を使ってニワトリの骨格筋から単離することに成功した(特開2000−287683号公報)。
本発明者らは、この特開2000−287683号公報に開示の研究において、脊髄運動ニューロンに対して生存活性を示す生理活性成分を得たが、研究を始めた当初、今までに知られている栄養因子と同様に、活性成分としては蛋白質またはポリペプチドが単離されるだろうと予想していた。しかし、新しく単離された活性成分は蛋白質でもポリペプチドでもなかった。即ち、本発明らは、ニワトリ胚の骨格筋を使用して、いくつもの精製ステップを順次、試行錯誤しながら行って、その結果、該脊髄運動ニューロンに対して生存活性を示す生理活性成分は、おそらくRNA、RNAの分子構造の一部を構成要素として含む単一成分(例えばRNA誘導体、修飾体、複合体)、前記いずれかを含む複合成分系またはこれらのいずれかを含む混合成分系であろうということを見出した。しかしながら、その成分の実体が、RNA単独なのか、RNAの誘導体なのか、或いは、RNAまたはRNAの誘導体を構成要素として含む複合成分系(例えば、複合体、混合物など)なのかは不明であり、完全に断定することは出来なかった。
「発明の開示」
本発明は上記の実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、ニューロン、特に脊髄運動ニューロンに対して生存活性等の生理活性を示す抽出分画に含有される本質的成分を同定し、その構造を決定し、神経変性疾患をはじめとする各種疾患の診断、治療、予防等に有用な生体由来成分を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明者らは、特開2000−287683号公報に開示の研究より得られた知見を基に更に研究を進めて、当該公報に開示されたこれまでの分離・精製法とは異なり、ニワトリ胚の骨格筋から直接RNAを抽出し、抽出された総RNAの中から脊髄運動ニューロンの生存を維持、促進する活性を有する本質的成分を分離し、これを同定することを試み、成功した。
即ち、本発明においては、後述する配列表において配列番号1として特定される下記の塩基配列を有しニューロン生存活性を示すRNAが提供される。このRNAは本発明者らによりmns−RNAと命名された。
上記の塩基配列からなるmns−RNAは、脊髄運動ニューロンに対してインビトロにおいて生存活性を示すことが確認された。
「発明の実施の為の望ましい形態」
本発明において同定されたRNA、mns−RNA、を得る為には、該RNAがニワトリの胚内において運動ニューロンの自然細胞死に関与し、運動ニューロンの自然細胞死が活発な時期に多量に生成するものと推測されることから、原料のニワトリ胚骨格筋としては運動ニューロンの自然細胞死が起き始める6日齢胚以降のものを用いるのが好ましい。
ニワトリ胚骨格筋のRNAは公知の方法により抽出することができ、例えば、(株)ニッポンジーンが市販している商品名アイソゲン(ISOGEN)又はアイソゲン−LS(ISOGEN−LS)を用いて抽出することができる。
本発明のキーポイントの一つは、上記抽出したRNA(トータルRNA)中には凡そ2〜3万種に及ぶRNAが含まれていると推定されるが、この中に目的とする生理活性を有する特定のRNAが含有されているかどうかをどのようにして確認するか、また、含有の確認された目的とする特定のRNAをどのように単離・同定するかである。
先ず、目的のRNAの確認については、前記の特開2000−287683号公報に開示の研究において確立された方法が用いられ、培養ニューロンを用いるバイオアッセイ系において生存活性を示すこと、その生存活性がRNA分解酵素(RNase)により失活すること、及び、その生存活性がRNA分解酵素活性阻害剤(RNase インヒビター)により増強することで確認することができる。
抽出されたトータルRNAは、その同定の為そのままcDNAライブラリ作製の技法によりクローン化してもよいが、本発明の研究の過程において、目的とするRNAはトータルRNAの1%弱程度の割合でしか含有されていないことが判明した。そこで、クロマトグラフィーにより目的とするRNAを単離する試みがなされた。
具体的には、トータルRNAをDEAEセファロースカラムを用いて、段階的に食塩水の濃度を変えて溶出することが試みられた。即ち、溶出液である食塩の濃度を、0M、0.1M、0.2M、0.3M、0.5M、1.0M、5.0Mと上げていき、得られた画分それぞれについて、上記のバイオアッセイ系で検定したところ、5モル食塩水溶出画分に強い活性が検出され、トータルRNAの0.07%のRNAしか含まれていなかったが、この画分にニューロン生存活性が集中していることが認められた。
活性成分は1モル食塩水溶出画分にも若干認められるが、大部分は5モル食塩水溶出画分に含まれる。一般に、1モル以上の濃度の高い食塩水では、非常に低分子量のRNAが溶出される。況や、5モルという高い濃度の食塩水で本発明のRNAが溶出されたということは、従って、予想外の結果であった。
次いで、上記の5モル食塩水溶出画分を用いて、当該溶出画分に含有されるRNAを鋳型とするcDNAライブラリを作成し、当該cDNAライブラリの各クローンの塩基配列を決定すると共に、当該cDNAライブラリの各クローンを用いてインビトロ転写を行って鋳型のRNAを増幅させ培養ニューロンを用いるバイオアッセイ系により生存活性をスクリーニングすることにより、運動ニューロンに対する生存活性を有する目的のRNAを同定することが出来る。
「実験例」
以下において、具体的な実験例を示して本発明について更に詳細に説明する。
A.トータルRNAによる生存活性の確認
(1)実験材料
白色レグホンの受精卵を一般市場から購入し、加湿したふらん器内に37℃で6日または19日間インキュベートした胚(これは、Hamburger Hamiltonのステージ29またはステージ45にそれぞれ相当する)を使用した。
(2)RNAの精製
50mLのプラスチックチューブ4本に100mLのアイソゲン((株)ニッポンジーン製)を25mLずつ分注し、ニワトリ骨格筋を5gずつ加え、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイゼーションした。ホモジナイゼーション後、室温で5分放置し、各々5mLのクロロホルムを加え、15秒間激しく振り、室温で2、3分放置した。次に12,000rpmで4℃、15分間、遠心分離し、上清を新しいプラスチックチューブ4本に移した。各プラスチックチューブの上清にイソプロパノールを12.5mLずつ加え、室温で5〜10分間放置した。各プラスチックチューブごとに再び12,000rpmで4℃、15分間、遠心分離し、生じた沈殿物を70%エタノールで洗浄した。洗浄した沈殿物を少し乾燥させ、沈殿物をそれぞれ1mLずつの滅菌水に溶かし、トータルRNAとして−80℃で保存し、後述の実験に使用した。
(3)バイオアッセイ系の調製
脊髄ニューロンの初代培養系を上記白色レグホン受精卵の6日齢胚から得て、トータルRNAによるニューロン生存活性を調べた。6日齢胚を用いたのは、運動ニューロンの自然細胞死は、このステージから起き始めるからである。
抗生物質(ペニシリン(10unit/mL、明治)とストレプトマイシン(50μg/mL、明治))および10%加熱失活牛胎児血清(FBS)(三菱化成)を添加したダルベッコのモディファイドイーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium,DMEM,Gibco BRL)を氷冷した中に6日齢胚を入れて、その中で実体顕微鏡で見ながらハサミを使って脊髄を摘出した。それを、トリプシン0.25%含有Ca2+およびMg2+フリー燐酸緩衝生理食塩水10mL中で、攪拌槽(約70サイクル/分)を使って、37℃で15分間インキュベートした。トリプシンの反応は、加熱失活馬血清を2mL添加することにより停止させた。これを1,000rpmで5分間遠心分離した後、上清液を除去し、沈殿物に6mlのDMEM/TIP〔すなわち、トランスフェリン(5μg/mL、Sigma)、インスリン(5μg/mL、Collaborative Res.)、プロゲステロン(0.2μM、Sigma)および上記同様の抗生物質を添加したDMEM〕を加え、プラスチック製チップで吸引と排出を20回繰り返すことにより攪拌して、細胞相互を分離した。得られた脊髄ニューロン懸濁液を、ナイロンメッシュ(#150)に通してろ過し、その後の培養を行うために、DMEM/TIP培地を用いて1×105cells/mLとなるように希釈した。組織培養のためのウエル(培養皿)(15mm径、住友)は、少なくとも4時間かけてポリエチレンイミンでプレコートした。プレコートしたプレートは、滅菌蒸留水で2回ほどすすぎ、抗生物質含有DMEMを加えた。分離した脊髄ニューロンを、1mL/wellの濃度で植え付けた。この濃度は、200cells/mm2に相当した。
(4)生存活性の確認
このようにして培養細胞を撒いたウエルに、トータルRNAと生存活性を示さない程度の微量の骨格筋粗抽出物を加え、バイオアッセイを行った。トータルRNAは、1ウェル当り0.1μg、1.0μg、10μg、または100μgでそれぞれ添加した。
また、トータルRNAをRNase処理またはRNaseインヒビター処理したものについてもバイオアッセイを行った。すなわち、トータルRNAをRNase処理(Boheringer Mannheim、50units/mL、37℃、3時間)またはRNaseインヒビター処理(Promega、4units/3μL、室温、3時間)し、等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をエタノールにて沈殿した。生じた沈殿物を、15,000rpmで4℃、20分間、遠心分離し、当該沈殿を滅菌水に溶かしたものを、上記と同様に培養細胞を撒いたウエルに添加した。
次いで、5%CO2−95%空気の加湿器内で37℃にて2日間インキュベートした後、各ウエルの所定エリア(895μm×1340μm)に生存する神経細胞の数を、位相差顕微鏡(ニコン社)を使って数えた。
このバイオアッセイ系において、トータルRNAはコントロールよりも神経細胞の生存数が大きく、トータルRNAのRNase処理物は神経細胞の生存数が少なく、トータルRNAのRNaseインヒビター処理物は未処理のトータルRNAよりやや生存数が多かった。この結果から、トータルRNAに神経細胞の生存活性が認められた。
B.cDNAライブラリの作成とスクリーニング
(1)クロマトグラフィー
上記のトータルRNAをDEAEセファロースカラムに通してクロマトグラフィーを行った。すなわち、18日目胚ニワトリ骨格筋よりアイソゲンを用いて抽出したトータルRNA5mgを、0.25mLの10mM Tris―HClに溶かし、1mLのDEAEセファロース・ファストフローカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、NaClの濃度を、0M、0.1M、0.2M、0.3M、0.5M、1.0M、5.0Mと段階的に上げていくことによって、トータルRNAを分離した。
得られた画分それぞれについて、上記のバイオアッセイ系で検定したところ、5モルNaCl溶出画分にRNAとしてはトータルRNAの0.07%であるが強い活性が検出され、この画分にニューロン生存活性が集中していた。
(2)cDNAライブラリの作成
上記の5モルNaCl溶出画分を用いて、この画分に含有されるRNAを鋳型とするcDNAライブラリを作成した。先ず、5モルNaCl溶出画分のRNAを滅菌水5μLに溶かし、cDNA合成キット(Takara)を用いてcDNAを合成した。この時、プライマーとしては6merのランダムプライマー(Takara)を用いた。ファーストストランドの合成は、反応温度と反応時間を42℃で10分、47℃で10分、52℃で10分と段階的に行った。cDNA合成後の反応液に、等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をマイクロスピンカラム(Amersham Pharmacia Bioteck)を通した後、エタノールにて沈殿を行った。
沈殿として得られたcDNAを滅菌水4.0μLに溶かし、EcoRIアダプター(100pmol/0.5μL)と混合し、DNA・ライゲーションキット(Takara)のライゲーション溶液Iを4.5μL加えて反応させ、cDNAにアダプターを付けた。この時の反応は、反応温度と反応時間を4℃で20分、12℃で30分、16℃で30分と段階的に行った。
次に、反応液にフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離して、エタノールにて沈殿を行った。沈殿物を40μLの滅菌水に溶かし、EcoRIを2.5μL、およびEcoRIバッファーを4μL加え、37℃で1時間反応させて、EcoRIで切断した。次に、反応液に等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をマイクロスピンカラム(Amersham Pharmacia Bioteck)に通し、エタノール沈殿を行った。反応物の半量とλgt10の0.5μgを混合してエタノール沈殿を行った。沈殿物を3μLの滅菌水に溶かし、1.7μLになるまで乾燥させ、DNA・ライゲーションキット(Takara)のライゲーション溶液Iを1.7μL加え、ライゲーションを行った。
ファージへのインビトロパッケージング(in vitro packaging)は、ギガパックパッケージング・エキストラクト(Gigapack Packaging extract、Stratagene)を用いて行い、大腸菌(C600)へ感染させて、ライブラリーを作成した。このライブラリーに含まれる約90のcDNAクローンの挿入部位をλgt10に含まれる部位のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)により増幅し、ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・レディー反応キット(Dye terminator Cycle sequencing Ready Reaction Kit、Perkin elmer)を用いてシーケンス反応を行い、約90のcDNAクローンの夫々についてABIシーケンサーを用いて塩基配列を決定した。
(3)生存活性のスクリーニング
塩基配列の決定後、cDNAライブラリの各クローンからインビトロ転写法によって元の鋳型に相当するRNAを増幅し、上記のバイオアッセイ系でニューロン生存活性を検定した。すなわち、培養細胞を撒いたウエルに、インビトロ転写法によって合成したRNAと生存活性を示さない程度の微量の骨格筋粗抽出物を加えた。インビトロ転写法によって合成したRNAは1ウェル当り0.03μg、0.1μg、または0.3μgでそれぞれ添加した。
次いで、5%炭酸ガス−95%空気の加湿器内で37℃にて2日間インキュベートした後、各ウエルの所定エリア(895μm×1340μm)に生存する神経細胞の数を、位相差顕微鏡(ニコン社)を使って数えた。
その結果、図1に示すように、1つのクローンに由来するRNAが濃度依存的に強い脊髄運動ニューロン生存活性を示すRNAとして特定された。このRNAは、前記配列番号1の塩基配列を有しており、mns−RNAと命名された。
「産業上の利用性」
以上に述べたように、この配列番号1の塩基配列からなるmns−RNAは、脊髄運動ニューロンに対してインビトロにおいて生存活性を示す。従って、脊髄運動ニューロンに対してインビボにおいても重要な生理活性を有している可能性が大きいと考えられ、脊髄運動ニューロンの変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療、予防、診断への利用が大いに期待される。
また、本発明に係る配列番号1の塩基配列を有するmns−RNAは、脊髄運動ニューロン以外の神経細胞、特に、脊髄運動ニューロン以外の脊髄ニューロン(例えば介在ニューロン)や、脊髄以外の部分の運動ニューロン、及び、その他のニューロンに対しても重要な生理活性を示す可能性がある。従って、神経細胞が何らかの形で関与するALS以外の運動ニューロン疾患、例えば、脊髄性進行性筋萎縮症、ウエルドニヒ‐ホフマン(Werdnig−Hoffmann)病等の診断、治療、予防に利用できる可能性もある。また、運動ニューロン病以外の神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病等の治療、予防に利用できる可能性もある。
従って、本発明に係る配列番号1の塩基配列を有するmns−RNAを必須成分として含有するニューロン生存促進薬、抗運動ニューロン疾患薬などとして利用できる可能性がある。
本発明に係るmns−RNAを運動ニューロン疾患の診断薬として利用するには、例えば、人正常筋肉中での存在の確認を前提として、運動ニューロン病の患者の血液や粘膜を採取してDNAを抽出し、mns−RNAをコードするゲノムDNAの塩基配列を調べ、これを本RNAの配列と比較する。塩基配列中に欠損部位や、塩基の置換があれば、運動ニューロン病に関わるRNAであると推定できる。従って、運動ニューロン病発症の可能性があるか否かを診断ができる。また、治療薬としては、本RNAをコードするDNAを組み込んだ細胞を移植又はカプセルに詰めて組織中に埋め込む等の方法が考えられる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る特定の塩基配列を有するRNAの脊髄運動ニューロン生存活性を示すグラフである。
本発明は、運動ニューロン疾患の診断、予防又は治療薬として有用なニューロン生存活性等のニューロン生理活性を示す成分として同定されたRNAに関する。
「従来の技術」
胚形成の過程では、初期において過剰に神経細胞が形成されてから、その数が減少する。この過程を自然細胞死と言う。例えば、腰部脊髄においては40%程度の運動ニューロンが死滅することが観察されている。また、この運動ニューロン死は、神経筋シナプス結合の形成時期と一致して進行することも観察されている。胚形成の過程において標的組織である骨格筋が神経支配される前に、当該骨格筋を実験的に除去すると、運動ニューロンが死滅する。そして、胚形成の過程において別の胚から肢芽を取り出して植え込むと、ほんのわずかしか運動ニューロンが死滅しない。従って、運動ニューロン同士は、標的組織由来の限られた量の栄養因子を互いに奪い合い、その結果、当該因子を十分に獲得したものだけが神経筋接合を形成し、一方、当該因子を獲得し損ねた運動ニューロンは死滅するものと仮説が立てられている。運動ニューロンの自然細胞死のメカニズムについては、標的組織に依存して生死が決まるとの考え方が一般的に受け入れられている。
神経成長因子(NGF)は栄養因子の原型(プロトタイプ)であり、発達中の交感神経節後神経細胞とある種の感覚神経細胞の生存を促進することが見出されている。運動ニューロンに関しては、NGFは自然細胞死に何の影響も及ぼさなかったが、新生仔において軸索切断によってもたらされる細胞死をむしろ増大させた。1970年代から、末梢および中枢神経に関与すると思われるNGF以外の因子を単離するための研究が行われてきた。これまでに単離された因子としては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、白血病抑制因子(LIF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)などがインビボまたはインビトロにおいて運動ニューロンの死滅を阻止することが見出されている。これらのいずれも骨格筋から単離されたものではないが、骨格筋の中でも発現(存在)することが認められている。しかしながら、NGF、BDNF、NT−3、LIFあるいはGDNFのどれかをコードしているマウス遺伝子を選択的に破壊しても、運動ニューロンの生存にはほとんど影響がなかった。複数遺伝子が欠損した場合の影響はあまり知られていないが、これらの遺伝子ノックアウトの結果は、これらの各ファクターは真の運動ニューロン生存因子ではないことを示唆しており、骨格筋の中に同定すべき別の分子がまだ残っていると思われる。
ある一群の神経変性疾患は特定の神経栄養因子の異常によって招来するものとの仮説もあり、当該神経栄養因子は神経変性疾患の治療に極めて大きな可能性を秘めている。しかしながら、これらの因子を、運動ニューロン疾患のひとつである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対して臨床試験がされたけれど、現状では無効と判定されている。従って、ALSあるいはその他の運動ニューロン疾患を軽減できそうな全く新規の因子(または複合的な因子群)が治療薬として得られはしないかと待望されている。
本発明らは以前、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、運動ニューロンに生存作用をもたらす成分を、所定のカラムクロマトグラフィー系を使ってニワトリの骨格筋から単離することに成功した(特開2000−287683号公報)。
本発明者らは、この特開2000−287683号公報に開示の研究において、脊髄運動ニューロンに対して生存活性を示す生理活性成分を得たが、研究を始めた当初、今までに知られている栄養因子と同様に、活性成分としては蛋白質またはポリペプチドが単離されるだろうと予想していた。しかし、新しく単離された活性成分は蛋白質でもポリペプチドでもなかった。即ち、本発明らは、ニワトリ胚の骨格筋を使用して、いくつもの精製ステップを順次、試行錯誤しながら行って、その結果、該脊髄運動ニューロンに対して生存活性を示す生理活性成分は、おそらくRNA、RNAの分子構造の一部を構成要素として含む単一成分(例えばRNA誘導体、修飾体、複合体)、前記いずれかを含む複合成分系またはこれらのいずれかを含む混合成分系であろうということを見出した。しかしながら、その成分の実体が、RNA単独なのか、RNAの誘導体なのか、或いは、RNAまたはRNAの誘導体を構成要素として含む複合成分系(例えば、複合体、混合物など)なのかは不明であり、完全に断定することは出来なかった。
「発明の開示」
本発明は上記の実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、ニューロン、特に脊髄運動ニューロンに対して生存活性等の生理活性を示す抽出分画に含有される本質的成分を同定し、その構造を決定し、神経変性疾患をはじめとする各種疾患の診断、治療、予防等に有用な生体由来成分を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明者らは、特開2000−287683号公報に開示の研究より得られた知見を基に更に研究を進めて、当該公報に開示されたこれまでの分離・精製法とは異なり、ニワトリ胚の骨格筋から直接RNAを抽出し、抽出された総RNAの中から脊髄運動ニューロンの生存を維持、促進する活性を有する本質的成分を分離し、これを同定することを試み、成功した。
即ち、本発明においては、後述する配列表において配列番号1として特定される下記の塩基配列を有しニューロン生存活性を示すRNAが提供される。このRNAは本発明者らによりmns−RNAと命名された。
上記の塩基配列からなるmns−RNAは、脊髄運動ニューロンに対してインビトロにおいて生存活性を示すことが確認された。
「発明の実施の為の望ましい形態」
本発明において同定されたRNA、mns−RNA、を得る為には、該RNAがニワトリの胚内において運動ニューロンの自然細胞死に関与し、運動ニューロンの自然細胞死が活発な時期に多量に生成するものと推測されることから、原料のニワトリ胚骨格筋としては運動ニューロンの自然細胞死が起き始める6日齢胚以降のものを用いるのが好ましい。
ニワトリ胚骨格筋のRNAは公知の方法により抽出することができ、例えば、(株)ニッポンジーンが市販している商品名アイソゲン(ISOGEN)又はアイソゲン−LS(ISOGEN−LS)を用いて抽出することができる。
本発明のキーポイントの一つは、上記抽出したRNA(トータルRNA)中には凡そ2〜3万種に及ぶRNAが含まれていると推定されるが、この中に目的とする生理活性を有する特定のRNAが含有されているかどうかをどのようにして確認するか、また、含有の確認された目的とする特定のRNAをどのように単離・同定するかである。
先ず、目的のRNAの確認については、前記の特開2000−287683号公報に開示の研究において確立された方法が用いられ、培養ニューロンを用いるバイオアッセイ系において生存活性を示すこと、その生存活性がRNA分解酵素(RNase)により失活すること、及び、その生存活性がRNA分解酵素活性阻害剤(RNase インヒビター)により増強することで確認することができる。
抽出されたトータルRNAは、その同定の為そのままcDNAライブラリ作製の技法によりクローン化してもよいが、本発明の研究の過程において、目的とするRNAはトータルRNAの1%弱程度の割合でしか含有されていないことが判明した。そこで、クロマトグラフィーにより目的とするRNAを単離する試みがなされた。
具体的には、トータルRNAをDEAEセファロースカラムを用いて、段階的に食塩水の濃度を変えて溶出することが試みられた。即ち、溶出液である食塩の濃度を、0M、0.1M、0.2M、0.3M、0.5M、1.0M、5.0Mと上げていき、得られた画分それぞれについて、上記のバイオアッセイ系で検定したところ、5モル食塩水溶出画分に強い活性が検出され、トータルRNAの0.07%のRNAしか含まれていなかったが、この画分にニューロン生存活性が集中していることが認められた。
活性成分は1モル食塩水溶出画分にも若干認められるが、大部分は5モル食塩水溶出画分に含まれる。一般に、1モル以上の濃度の高い食塩水では、非常に低分子量のRNAが溶出される。況や、5モルという高い濃度の食塩水で本発明のRNAが溶出されたということは、従って、予想外の結果であった。
次いで、上記の5モル食塩水溶出画分を用いて、当該溶出画分に含有されるRNAを鋳型とするcDNAライブラリを作成し、当該cDNAライブラリの各クローンの塩基配列を決定すると共に、当該cDNAライブラリの各クローンを用いてインビトロ転写を行って鋳型のRNAを増幅させ培養ニューロンを用いるバイオアッセイ系により生存活性をスクリーニングすることにより、運動ニューロンに対する生存活性を有する目的のRNAを同定することが出来る。
「実験例」
以下において、具体的な実験例を示して本発明について更に詳細に説明する。
A.トータルRNAによる生存活性の確認
(1)実験材料
白色レグホンの受精卵を一般市場から購入し、加湿したふらん器内に37℃で6日または19日間インキュベートした胚(これは、Hamburger Hamiltonのステージ29またはステージ45にそれぞれ相当する)を使用した。
(2)RNAの精製
50mLのプラスチックチューブ4本に100mLのアイソゲン((株)ニッポンジーン製)を25mLずつ分注し、ニワトリ骨格筋を5gずつ加え、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイゼーションした。ホモジナイゼーション後、室温で5分放置し、各々5mLのクロロホルムを加え、15秒間激しく振り、室温で2、3分放置した。次に12,000rpmで4℃、15分間、遠心分離し、上清を新しいプラスチックチューブ4本に移した。各プラスチックチューブの上清にイソプロパノールを12.5mLずつ加え、室温で5〜10分間放置した。各プラスチックチューブごとに再び12,000rpmで4℃、15分間、遠心分離し、生じた沈殿物を70%エタノールで洗浄した。洗浄した沈殿物を少し乾燥させ、沈殿物をそれぞれ1mLずつの滅菌水に溶かし、トータルRNAとして−80℃で保存し、後述の実験に使用した。
(3)バイオアッセイ系の調製
脊髄ニューロンの初代培養系を上記白色レグホン受精卵の6日齢胚から得て、トータルRNAによるニューロン生存活性を調べた。6日齢胚を用いたのは、運動ニューロンの自然細胞死は、このステージから起き始めるからである。
抗生物質(ペニシリン(10unit/mL、明治)とストレプトマイシン(50μg/mL、明治))および10%加熱失活牛胎児血清(FBS)(三菱化成)を添加したダルベッコのモディファイドイーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium,DMEM,Gibco BRL)を氷冷した中に6日齢胚を入れて、その中で実体顕微鏡で見ながらハサミを使って脊髄を摘出した。それを、トリプシン0.25%含有Ca2+およびMg2+フリー燐酸緩衝生理食塩水10mL中で、攪拌槽(約70サイクル/分)を使って、37℃で15分間インキュベートした。トリプシンの反応は、加熱失活馬血清を2mL添加することにより停止させた。これを1,000rpmで5分間遠心分離した後、上清液を除去し、沈殿物に6mlのDMEM/TIP〔すなわち、トランスフェリン(5μg/mL、Sigma)、インスリン(5μg/mL、Collaborative Res.)、プロゲステロン(0.2μM、Sigma)および上記同様の抗生物質を添加したDMEM〕を加え、プラスチック製チップで吸引と排出を20回繰り返すことにより攪拌して、細胞相互を分離した。得られた脊髄ニューロン懸濁液を、ナイロンメッシュ(#150)に通してろ過し、その後の培養を行うために、DMEM/TIP培地を用いて1×105cells/mLとなるように希釈した。組織培養のためのウエル(培養皿)(15mm径、住友)は、少なくとも4時間かけてポリエチレンイミンでプレコートした。プレコートしたプレートは、滅菌蒸留水で2回ほどすすぎ、抗生物質含有DMEMを加えた。分離した脊髄ニューロンを、1mL/wellの濃度で植え付けた。この濃度は、200cells/mm2に相当した。
(4)生存活性の確認
このようにして培養細胞を撒いたウエルに、トータルRNAと生存活性を示さない程度の微量の骨格筋粗抽出物を加え、バイオアッセイを行った。トータルRNAは、1ウェル当り0.1μg、1.0μg、10μg、または100μgでそれぞれ添加した。
また、トータルRNAをRNase処理またはRNaseインヒビター処理したものについてもバイオアッセイを行った。すなわち、トータルRNAをRNase処理(Boheringer Mannheim、50units/mL、37℃、3時間)またはRNaseインヒビター処理(Promega、4units/3μL、室温、3時間)し、等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をエタノールにて沈殿した。生じた沈殿物を、15,000rpmで4℃、20分間、遠心分離し、当該沈殿を滅菌水に溶かしたものを、上記と同様に培養細胞を撒いたウエルに添加した。
次いで、5%CO2−95%空気の加湿器内で37℃にて2日間インキュベートした後、各ウエルの所定エリア(895μm×1340μm)に生存する神経細胞の数を、位相差顕微鏡(ニコン社)を使って数えた。
このバイオアッセイ系において、トータルRNAはコントロールよりも神経細胞の生存数が大きく、トータルRNAのRNase処理物は神経細胞の生存数が少なく、トータルRNAのRNaseインヒビター処理物は未処理のトータルRNAよりやや生存数が多かった。この結果から、トータルRNAに神経細胞の生存活性が認められた。
B.cDNAライブラリの作成とスクリーニング
(1)クロマトグラフィー
上記のトータルRNAをDEAEセファロースカラムに通してクロマトグラフィーを行った。すなわち、18日目胚ニワトリ骨格筋よりアイソゲンを用いて抽出したトータルRNA5mgを、0.25mLの10mM Tris―HClに溶かし、1mLのDEAEセファロース・ファストフローカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、NaClの濃度を、0M、0.1M、0.2M、0.3M、0.5M、1.0M、5.0Mと段階的に上げていくことによって、トータルRNAを分離した。
得られた画分それぞれについて、上記のバイオアッセイ系で検定したところ、5モルNaCl溶出画分にRNAとしてはトータルRNAの0.07%であるが強い活性が検出され、この画分にニューロン生存活性が集中していた。
(2)cDNAライブラリの作成
上記の5モルNaCl溶出画分を用いて、この画分に含有されるRNAを鋳型とするcDNAライブラリを作成した。先ず、5モルNaCl溶出画分のRNAを滅菌水5μLに溶かし、cDNA合成キット(Takara)を用いてcDNAを合成した。この時、プライマーとしては6merのランダムプライマー(Takara)を用いた。ファーストストランドの合成は、反応温度と反応時間を42℃で10分、47℃で10分、52℃で10分と段階的に行った。cDNA合成後の反応液に、等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をマイクロスピンカラム(Amersham Pharmacia Bioteck)を通した後、エタノールにて沈殿を行った。
沈殿として得られたcDNAを滅菌水4.0μLに溶かし、EcoRIアダプター(100pmol/0.5μL)と混合し、DNA・ライゲーションキット(Takara)のライゲーション溶液Iを4.5μL加えて反応させ、cDNAにアダプターを付けた。この時の反応は、反応温度と反応時間を4℃で20分、12℃で30分、16℃で30分と段階的に行った。
次に、反応液にフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離して、エタノールにて沈殿を行った。沈殿物を40μLの滅菌水に溶かし、EcoRIを2.5μL、およびEcoRIバッファーを4μL加え、37℃で1時間反応させて、EcoRIで切断した。次に、反応液に等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加えて振り、15,000rpmで5分間、遠心分離し、上清をマイクロスピンカラム(Amersham Pharmacia Bioteck)に通し、エタノール沈殿を行った。反応物の半量とλgt10の0.5μgを混合してエタノール沈殿を行った。沈殿物を3μLの滅菌水に溶かし、1.7μLになるまで乾燥させ、DNA・ライゲーションキット(Takara)のライゲーション溶液Iを1.7μL加え、ライゲーションを行った。
ファージへのインビトロパッケージング(in vitro packaging)は、ギガパックパッケージング・エキストラクト(Gigapack Packaging extract、Stratagene)を用いて行い、大腸菌(C600)へ感染させて、ライブラリーを作成した。このライブラリーに含まれる約90のcDNAクローンの挿入部位をλgt10に含まれる部位のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)により増幅し、ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・レディー反応キット(Dye terminator Cycle sequencing Ready Reaction Kit、Perkin elmer)を用いてシーケンス反応を行い、約90のcDNAクローンの夫々についてABIシーケンサーを用いて塩基配列を決定した。
(3)生存活性のスクリーニング
塩基配列の決定後、cDNAライブラリの各クローンからインビトロ転写法によって元の鋳型に相当するRNAを増幅し、上記のバイオアッセイ系でニューロン生存活性を検定した。すなわち、培養細胞を撒いたウエルに、インビトロ転写法によって合成したRNAと生存活性を示さない程度の微量の骨格筋粗抽出物を加えた。インビトロ転写法によって合成したRNAは1ウェル当り0.03μg、0.1μg、または0.3μgでそれぞれ添加した。
次いで、5%炭酸ガス−95%空気の加湿器内で37℃にて2日間インキュベートした後、各ウエルの所定エリア(895μm×1340μm)に生存する神経細胞の数を、位相差顕微鏡(ニコン社)を使って数えた。
その結果、図1に示すように、1つのクローンに由来するRNAが濃度依存的に強い脊髄運動ニューロン生存活性を示すRNAとして特定された。このRNAは、前記配列番号1の塩基配列を有しており、mns−RNAと命名された。
「産業上の利用性」
以上に述べたように、この配列番号1の塩基配列からなるmns−RNAは、脊髄運動ニューロンに対してインビトロにおいて生存活性を示す。従って、脊髄運動ニューロンに対してインビボにおいても重要な生理活性を有している可能性が大きいと考えられ、脊髄運動ニューロンの変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療、予防、診断への利用が大いに期待される。
また、本発明に係る配列番号1の塩基配列を有するmns−RNAは、脊髄運動ニューロン以外の神経細胞、特に、脊髄運動ニューロン以外の脊髄ニューロン(例えば介在ニューロン)や、脊髄以外の部分の運動ニューロン、及び、その他のニューロンに対しても重要な生理活性を示す可能性がある。従って、神経細胞が何らかの形で関与するALS以外の運動ニューロン疾患、例えば、脊髄性進行性筋萎縮症、ウエルドニヒ‐ホフマン(Werdnig−Hoffmann)病等の診断、治療、予防に利用できる可能性もある。また、運動ニューロン病以外の神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病等の治療、予防に利用できる可能性もある。
従って、本発明に係る配列番号1の塩基配列を有するmns−RNAを必須成分として含有するニューロン生存促進薬、抗運動ニューロン疾患薬などとして利用できる可能性がある。
本発明に係るmns−RNAを運動ニューロン疾患の診断薬として利用するには、例えば、人正常筋肉中での存在の確認を前提として、運動ニューロン病の患者の血液や粘膜を採取してDNAを抽出し、mns−RNAをコードするゲノムDNAの塩基配列を調べ、これを本RNAの配列と比較する。塩基配列中に欠損部位や、塩基の置換があれば、運動ニューロン病に関わるRNAであると推定できる。従って、運動ニューロン病発症の可能性があるか否かを診断ができる。また、治療薬としては、本RNAをコードするDNAを組み込んだ細胞を移植又はカプセルに詰めて組織中に埋め込む等の方法が考えられる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る特定の塩基配列を有するRNAの脊髄運動ニューロン生存活性を示すグラフである。
Claims (1)
- 配列番号1の塩基配列を有しニューロン生存活性を示すRNA。
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