JPWO2002026978A1 - 新規タンパク質、それをコードする遺伝子、及びそれらの利用法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、G−CSF誘導抗体の認識する抗原をコードする遺伝子として、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子を提供する。
Description
技術分野
本発明は、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体と反応性を有するタンパク質、それをコードする遺伝子、およびそれらの利用法に関する。
背景技術
顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony−stimulating factor:G−CSF)は、分子量は約18000から22000で、ヒトの場合174個(まれに178個)、マウスで178個のアミノ酸で構成されている、血液成分の白血球の一種である好中球の分化増殖を誘導する糖タンパク質である。
G−CSFは、成熟好中球の生存の延長や機能の亢進作用を有するが、エリスロポエチンによる赤芽球、インターロイキン3による芽球コロニーの形成も増強する。また、G−CSFは、白血球、赤血球、血小板等の血球増多(増強、増加)作用を示す。このようなG−CSFを産生する細胞としては、マクロファージ、ストローマ細胞、単球、Tリンパ球、繊維芽細胞、血管内皮細胞などが挙げられる。
G−CSFを薬剤として投与することは、抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症の治療及び再生不良性貧血の治療に効果を示す。しかし、投与時においては、血中安定性が低いために頻回投与を必要とし、しかも投与は静脈投与あるいは皮下投与に限られているために患者、医師の双方に苦痛と負担を強いられてきた。さらに、G−CSFを薬剤として投与すると、副作用として骨痛を起こすことが報告されている。また、G−CSFを産生する細胞としてのマクロファージやストローマ細胞を直接投与することは、細胞であるために種々のタンパク質や様々な物質を含んでいるために思わぬ副作用を起こす可能性があるため、そのような治療は行われていない。
上記の如く、G−CSF自体を投与することによって好中球を分化増殖させる方法では、副作用として骨痛を惹起することばかりでなく、頻回投与が必要であり、患者及び医師にも苦痛と負担を強いられてきたため、他の治療方法の開発が強く要望されているが、未だ確立されていない。
そこで、本発明者らは、G−CSF自体を投与するのではなく、G−CSFを産生させ、好中球を分化増殖させることを意図し、以前に、G−CSF誘導抗体を提供することに成功している(出願番号特願平9−266591(平成9年(1997)9月30日)、公開番号特開平11−106400(平成11年(1999)4月20日))。しかしながら、G−CSF誘導抗体が認識する抗原については今だ解明されていなかった。
発明の概要
本発明は、G−CSFを誘導・分泌する抗体の認識する抗原をコードする遺伝子として、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子を提供する。
発明の開示
本発明が解決しようとする課題の一つは、G−CSF誘導抗体の認識する抗原を特定することである。本発明が解決しようとする別の課題は、G−CSF誘導抗体の認識する抗原をコードする遺伝子をクローニングし、同定することである。
また、本発明は、そのような抗原タンパク質を詳細に解析し、該タンパク質がG−CSF遺伝子発現誘導ならびにG−CSF分泌に関与してることを明確にすることも課題とする。さらに、G−CSF産生を変化させる化合物をスクリーニングするための、該タンパク質を利用した一連の手順を提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、G−CSF誘導能を持つモノクローナル抗体をプローブとして使用し、マクロファージ細胞由来のcDNAライブラリーをイムノスクリーニングした結果、陽性クローンの単離に成功し、さらにその塩基配列を決定することにより本発明を提供するに至った。さらに、本発明者らは、ヒト型の抗原遺伝子の塩基配列を決定した。
すなわち、本発明によれば、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子が提供される。
また、本発明によれば、(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子が提供される。
さらに、本発明によれば(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列;(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;を有する遺伝子が提供される。
また、本発明によれば(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列;(b)配列表の配列番号3において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;を有する遺伝子が提供される。
上記において、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体は、例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である。
本発明の遺伝子は例えば、マウスまたはヒト由来の遺伝子である。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:の何れかを含むDNA断片が提供される。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:の何れかを含み、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする遺伝子が提供される。
さらに本発明によれば、下記の何れかのタンパク質:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:が提供される。
また、本発明によれば、下記の何れかのタンパク質:(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(d)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:が提供される。
上記において、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体は、例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である。
本発明のタンパク質は好ましくは哺乳動物、特に好ましくは、マウスまたはヒト由来のタンパク質である。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:の何れかを含むタンパク質が提供される。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:の何れかを含み、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質が提供される。
さらに本発明によれば、上記した本発明のタンパク質に対する抗体またはそのフラグメントが提供される。抗体は好ましくはモノクローナル抗体であり、特に好ましくはヒト型モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターが提供される。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターを含む形質転換体が提供される。
さらに本発明により、顆粒球コロニー刺激因子を誘導・分泌させることができる新規の受容体またはその一部(本発明のタンパク質)が提供される。
さらに本発明によれば、本発明のタンパク質を利用した有用な物質(例えば、当該タンパク質に対するアゴニスト、アンタゴニスト)のスクリーニング方法およびそのスクリーニング方法により得られた物質、ならびに受容体に結合することのできる有用な物質(例えば、当該受容体に対するアゴニスト、アンタゴニスト)が提供される。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子、DNA断片、タンパク質(タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体、物質(低分子化合物を含む)を含む医薬組成物(特には、感染症、好中球減少症または赤血球、白血球若しくは血小板等の血球減少症の診断、予防または治療のための医薬組成物)、それらを用いた治療方法が提供される。
以下において、本発明の実施態様および実施方法について詳細に説明する。
本発明に先だち、本発明者らは、マクロファージ自体を免疫して抗体を取得し、得られた抗体の中からG−CSFを誘導する抗体の単離に成功している(特願平9−266591;この明細書に記載の内容は全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。本発明の遺伝子は、この抗体をプローブとして用いてマウスマクロファージ由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離されたものであり、本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質は、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有することを特徴とする。
<顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメント>
先ず、本明細書で言う「顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメント」(本明細書中以下において、「本発明で用いる抗体」とも称する)について、その入手方法などについて説明する。
本発明者らは、まず、マウスマクロファージ細胞株を免疫原としてMRL/lprマウス(自己免疫疾患マウス)に投与し、モノクローナル抗体の単離を行った。次いで、得られたモノクローナル抗体を、免疫原細胞であるマウスマクロファージ細胞株に作用させ、該抗体の免疫原細胞に与える影響を検討した結果、得られた抗体の一つが免疫原細胞株であるマウスマクロファージ細胞株から濃度依存的にG−CSFを誘導させる特性を有することを見い出した(この抗体を産生するハイブリドーマは国際寄託番号FERM BP−6103として寄託されている)。
本明細書中で「モノクローナル抗体」とは、マクロファージ細胞株に反応性を有するモノクローナル抗体であり、具体的には、G−CSFを産生させる作用を有するモノクローナル抗体である。
本発明で用いる抗体は、マクロファージ細胞株に実質的に結合するという特性を有する。本発明で用いる抗体には、上記性質を有するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を共に包含する。また、「モノクローナル抗体」には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなるいずれのイムノグロブリンクラスに属するモノクローナル抗体をも包含し、好適には、IgGまたはIgMイムノグロブリンクラスモノクローナル抗体である。
なお、マクロファージ細胞株は、例えば、自然発生の白血病細胞から調製したり、白血病ウイルスによる形質転換から調製することが可能である。
本発明で用いる抗体は常法(例えば、文献「続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、日本生化学会編:東京化学同人発行、等」に記載の方法)に従って取得することができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。すなわち、抗体産生細胞と骨髄腫系細胞から融合ハイブリドーマを形成し、当該ハイブリドーマをクローン化し、マクロファージ細胞株の全部または一部を抗原として、それに対して特異的親和性を示す抗体を生産するクローンを選択することによって製造される。その操作は免疫抗原としてマクロファージ細胞株の全部または一部を使用する以外は、従来既知の手段を用いることができる。
免疫抗原は、例えばマクロファージ細胞株そのものを用いるか、マクロファージ細胞株の膜画分若くは溶解抽出液の全部または一部を、必要に応じて、例えば完全フロインドアジュバンドなどと混和して調製される。免疫の対象として用いられる動物しては、マウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等の哺乳動物、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスが例示される。免疫は、これらの哺乳動物の皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内、または腹腔内に1乃至数回注射することにより行われる。
通常、初回免疫から約1〜2週間毎に1〜4度免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行って、最終免疫より約3〜5日後に免疫感作された動物から抗体産生細胞が採取される。
本発明で用いるモノクローナル抗体には、「国際寄託番号FERM BP−6103」のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(3−4H7抗体)若しくはそのフラグメントまたは該抗体と実質的に同一の性状を有する抗体が含まれる。「3−4H7抗体」は、細胞からのG−CSF産生能を有する。
本発明で用いるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法で調製することが可能である。公知の方法としては、例えば、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製には、ケーラー及びミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,pp.495−497,1975)及びそれに準じる修飾方法が挙げられる。すなわち、モノクローナル抗体は、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくは同種のマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒトの骨髄腫系細胞(ミエローマ)との融合により得られる融合細胞(ハイブリドーマ)を培養することにより調製される。培養は、インビトロ、またはマウス、ラット、モルモット、ハムスター若しくはウサギ等の哺乳動物、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中等でのインビボで行うことができ、抗体はそれぞれ該培養上清、または哺乳動物の腹水から取得することができる。
細胞融合に用いられる骨髄腫系細胞としては、例えばマウス由来ミエローマ「P3/X63−AG8」、「P3/NS1/1−Ag4−1」、「P3/X63−Ag8.U1」、「SP2/0−Ag14」、「PAI」、「FO」または「BW5147」、ラット由来ミエローマ「210RCY3−Ag1.2.3」、ヒト由来ミエローマ「U−266AR1」、「GM1500−6TG−A1−2」、「UC729−6」、「CEM−AGR」、「D1R11」又は「CEM−T15」などを挙げることができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体を産生する融合細胞クローンのスクリーニングは、融合細胞を、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の抗原に対する反応性を、例えば、フローサイトメトリー、RIAやELISA等の酵素抗体法によって測定することにより行うことができる。
基本培地としては、例えば、Ham’F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地などの低カルシウム培地、MCDB104培地、MEM培地、D−MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地などの高カルシウム培地などが挙げられる。該基本培地には、目的に応じて、例えば、血清、ホルモンサイトカインおよび/または各種の無機または有機物質などを含有させることができる。モノクローナル抗体の単離、精製は上述の培養上清または腹水を硫酸アンモニウム沈殿法、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52など)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインA若くはプロテインGカラム等のアフィニティーカラムクロマトグラフィーに付すること、疎水クロマトグラフィーに付することなどにより行うことができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体は、上述の製造方法に限定されることなく、いかなる方法で得られたものであってもよい。また、通常「モノクローナル抗体」は、免疫感作を施す哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる構造の糖鎖を有するが、本発明で用いる「モノクローナル抗体」は該糖鎖の構造差異により限定されるものではなく、あらゆる哺乳動物由来のモノクローナル抗体をも包含するものである。ファージディスプレイでつくられるモノクローナル抗体、さらに、例えばヒトイムノグロブリン遺伝子を組み込むことにより、ヒト型抗体を産生するように遺伝子工学的に作出されたトランスジェニックマウスを用いて得られるヒト型モノクローナル抗体、あるいは、遺伝子組換え技術により、ある哺乳動物由来のモノクローナル抗体の定常領域(Fc領域)をヒトモノクローナル抗体のFc領域と組み換えたキメラモノクローナル抗体、さらには抗原と相補的に直接結合し得る相補性決定部位(CDR:complementarity−determining residue)以外、全領域をヒトモノクローナル抗体の対応領域と組換えたヒト化モノクローナル抗体も本発明で用いる「モノクローナル抗体」に包含される。
また、本発明においては「抗体のフラグメント」を使用してもよく、ここで言う、「抗体のフラグメント」とは、少なくとも一つの可変領域を含有する抗体フラグメントの意であり、特願平9−266591にいう「抗体の一部」と同義である。具体的にはFv、F(ab’)2、Fab’あるいはFabを指す。ここで、「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントをそれぞれFab’という。また、IgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質は、上記詳述したような顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有することを特徴とする。本明細書中で言う「結合性」とは、タンパク質と抗体との間の通常の結合性を意味し、慣用的な免疫学的分析法(例えば、免疫沈降法、ELISA法、イムノブロット法など)を用いて測定できる。
<本発明の遺伝子>
本発明は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子を提供する。本発明はまた、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはそれと相同性を有する塩基配列を有する遺伝子を提供する。
本発明の遺伝子の種類は特に限定されず、天然由来のDNA、組み換えDNA、化学合成DNAの何れでもよく、またゲノミックDNAクローン、cDNAクローンの何れでもよい。
本発明の遺伝子は典型的には、配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するが、これは本発明の一例を示すにすぎない下記の実施例で得られたクローン(MMR19)の塩基配列である。天然の遺伝子の中にはそれを生産する生物種の品種の違いや、生態系の違いに起因する少数の変異やよく似たアイソザイムの存在に起因する少数の変異が存在することは当業者に周知である。従って、本発明の遺伝子は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有する遺伝子のみに限定されるわけではなく、本明細書に記載した特徴を有するタンパク質をコードする全ての遺伝子を包含する。
本明細書で塩基配列について「1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数の塩基が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。
特に、本明細書により本発明のタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするDNA配列が開示されれば、この配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションや、PCRという遺伝子工学の基本的手法を用いて、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を容易に単離することができる。このような場合、そのような遺伝子も本発明の範囲に含まれる。
相同遺伝子のスクリーニングのために使用するハイブリダイゼーションの条件は特に限定されず、目的の相同遺伝子とプローブとの相同性の度合いなどにより当業者ならば適宜選択することができるが、一般的にはストリンジェントな条件が好ましく、例えば、6×SSC[0.9MのNaCl、0.09Mのクエン酸ナトリウム(pH7.0)]、5×デンハルト(Denhardt’s)溶液[1000mL中に1gフィコール、1gポリビニルピロリドン、1gBSA]、0.5%SDS、25℃〜68℃(例えば37℃、42℃または68℃);あるいは0〜50%ホルムアミド、6×SSC、0.5%SDS、25〜68℃(例えば37℃、42℃または68℃)などのハイブリダイゼーション条件を使用することが考えられる。ホルムアミド濃度、デンハルト溶液濃度、塩濃度及び温度などのハイブリダイゼーション条件を適宜設定することによりある一定の相同性以上の相同性を有する塩基配列を含むDNAをクローニングできることは当業者に周知であり、このようにしてクローニングされた相同遺伝子は全て本発明の範囲の中に含まれる。
上記のようなハイブリダイゼーションを使用してクローニングされる相同遺伝子は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する。
<本発明のタンパク質>
本発明は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質を提供する。
本発明の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、それをコードする遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、それを適当な宿主に形質転換して組み換えタンパク質を発現させることによって得ることができる。しかしながら、本発明のタンパク質は、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法などは限定されず、天然産のタンパク質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現させたタンパク質、あるいは化学合成タンパク質の何れでもよい。
本発明のタンパク質は典型的には、配列表の配列番号1に記載の241個のアミノ酸配列を有する。しかし、天然のタンパク質の中にはそれを生産する生物種の品種の違いや、生態型の違いによる遺伝子の変異、あるいはよく似たアイソザイムの存在などに起因して1から複数個のアミノ酸変異を有する変異タンパク質が存在することは周知である。なお、ここで言う「アミノ酸変異」とは、1以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加などを意味する。本発明のタンパク質は、クローニングされた遺伝子の塩基配列からの推測に基づいて、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するが、その配列を有するタンパク質のみに限定されるわけではなく、本明細書中に記載した特性を有する限り全ての相同タンパク質を含むことが意図される。相同性は少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
一般的に、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、疎水性アミノ酸同士の置換、親水性アミノ酸同士の置換、酸性アミノ酸同士の置換または塩基性アミノ酸同士の置換)を導入した場合、得られる変異タンパク質は元のタンパク質と同様の性質を有することが多い。遺伝子組換え技術を使用して、このような所望の変異を有する組換えタンパク質を作製する手法は当業者に周知であり、このような変異タンパク質も本発明の範囲に含まれる。
本明細書でアミノ酸配列について「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数のアミノ酸が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。また本明細書でアミノ酸配列について「相同」というときは、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いている。このとき、ギャップの存在及びアミノ酸の性質が考慮される(Wilbur,Proc,Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730(1983)等)。相同性の計算には、市販のソフトであるBLAST(Altschul:J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Peasron:Methods in Enzymology 183:63−69(1990))、Genetyx−Mac(ソフトウエア開発社製)等を用いることができる。
本明細書の以下の実施例では本発明の一例を示すものとして、マウスマクロファージ由来のcDNAのクローニングが示されている。本明細書中に開示されたタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の配列(マウス由来)またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションまたはPCRなどの遺伝子工学的手法を用いて、他の起源などから同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を単離することは当業者の通常の知識の範囲内のことであり、そのようにして単離された遺伝子によりコードされるタンパク質も本発明の範囲に含まれる。
<ヒト型の遺伝子およびタンパク質>
例えば、本発明の遺伝子およびタンパク質に関してヒト由来のホモログを得るための方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
ヒトマクロファージ系細胞株(THP−1、U937、HL−60)から、グアニジウムチオシアネート/フェノールクロロホルム・シングルステップ抽出法(ラボマニュアル遺伝子工学、第3版、第83〜84頁、1996)によって、全RNAを抽出し、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いて精製して、ポリA+RNAを得る。逆転写酵素(MMLV−RTase)とDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖cDNAを合成する。この二本鎖cDNAを用いて、Gubler−Hoffmannの方法(Gubler,U.及びHoffmann,B.,J.:Gene,25:263−269,1983)によって、λZAPIIファージベクターを用いてcDNAライブラリーを構築する。本明細書に開示したマウスcDNA(MMR19クローン)の塩基配列(配列番号1)の中でヒトと高い相同性を有する領域(例えば、ヒトと91%の相同性が認められた配列番号1中の172番目から241番目の領域)内の配列を増幅できるプライマーを用いてヒトマクロファージ細胞のcDNAライブラリーを鋳型として増幅させたDNA配列をプローブとして、あるいはこの領域(例えば、配列番号1中の172番目から241番目の領域)を直接プローブとして用いて、ヒトマクロファージ細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって目的タンパク質の全長をコードするcDNAを単離する。Primer Walking法によって、cDNAの塩基配列を解析する。目的タンパク質の全長をコードすることが確認されたcDNAをバキュロウイルスに導入し、タンパク質として発現させ、アフィニティカラムによりタンパク質を精製することによりヒト型ホモログタンパク質を得ることができる。
上記したように、本発明は、配列番号1に記載の塩基配列または配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する遺伝子とタンパク質、ならびにこれらと相同性を有する遺伝子とタンパク質に関するものである。本発明により提供される配列番号1に記載の塩基配列および配列番号2に記載のアミノ酸配列と相同性を有する配列が、他の生物中にも存在するか否かを検索した結果、ヒトのEST(expressed sequence tag)の中に本発明の遺伝子と相同性の高いものが存在することが確認された(以下の実施例3を参照)。従って、このような本発明の塩基配列と高い相同性を有するヒト由来のESTをプローブとして用いてヒト由来の遺伝子ライブラリー(cDNAライブラリーなど)をスクリーニングすることによっても、ヒト由来のホモログ遺伝子を単離できることは明らかである。
上記した通り、本発明の配列番号1記載の塩基配列の一部分(即ち、DNA断片)が、ヒトにおいても高い相同性を有して保存されていることがデータベース検索の結果、明らかとなった。このようなDNA断片は、上記したようにヒト由来のホモログ遺伝子をスクリーニングする際のプローブとして有用であり、本発明の一側面を形成する。そのようなDNA断片としては、配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列の何れかを含むDNA断片が挙げられ、さらにこれらの何れかにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;またはこれらの何れかと少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列を含むDNA断片も本発明の範囲内である。
また、本発明の配列番号2記載のアミノ酸配列の一部分が、ヒトにおいても高い相同性を有して保存されていることがデータベース検索の結果、明らかとなった。このような本発明のタンパク質の一部から成るタンパク質断片は、本発明のタンパク質と同様、G−CSF誘導・分泌活性を有する抗体の分析または単離のための試薬として有用であり、また本発明のタンパク質と同様、医薬としても有用である可能性があり、本発明の一側面を形成する。
このようなタンパク質としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列の何れかを含むタンパク質が挙げられ、さらにこれらの何れかにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;またはこれらの何れかと少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列の何れかを含むタンパク質も本発明の範囲内である。
本発明者らは、上述したものと類似の方法により、ヒト型の抗原遺伝子の塩基配列を決定した(以下の実施例5を参照)。従って、本発明は、配列表の配列番号3に記載の塩基配列またはそれと相同性を有する塩基配列を有する遺伝子を提供する。本発明はまた、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質を提供する。ここで言う相同性の意味、即ち、本発明の範囲が、配列番号3に記載の塩基配列を有する遺伝子または配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に限られないことは、本明細書「本発明の遺伝子」または「本発明のタンパク質」の項で説明したとおりである。
<本発明の抗体>
本発明は、上記した本発明のタンパク質に対する抗体(本明細書中以下において、「本発明のモノクローナル抗体」とも称される)を提供する。以下、本発明の抗体の実施態様および入手方法について詳細に説明する。
本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体の場合にはキメラ抗体でもよく、特にはマウス/ヒトキメラ抗体が好ましい。「モノクローナル抗体」には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなるいずれのイムノグロブリンクラスに属するモノクローナル抗体をも包含し、好適には、IgGまたはIgMイムノグロブリンクラスモノクローナル抗体である。
抗原となる本発明のタンパク質は、それをコードする遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、それを適当な宿主に形質転換して組み換えタンパク質を発現させることによって得ることができる。また、免疫抗原として、例えばマクロファージ細胞株そのもの、マクロファージ細胞株の膜画分を用いることができる。
本発明のポリクローナル抗体(抗血清)あるいはモノクローナル抗体などの抗体は常法(例えば、文献「続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、日本生化学会編:東京化学同人発行、等」に記載の方法)に従って取得することができる。
即ち、例えば、抗原を必要に応じてフロイントアジュバンド(Freund’s Aduvand)とともに、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウマあるいはウシ、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギに免疫する。ポリクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た血清から取得することができる。また、モノクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することにより製造することができる。
モノクローナル抗体は、具体的には以下のようにして製造することができる。即ち、本発明のタンパク質あるいは本発明のタンパク質を発現している細胞等を免疫原として用い、必要に応じてフロイントアジュバンド(Freund’s Adjuvant)とともに、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギ、好ましくはマウス、ラットまたはハムスター(これらの動物にはヒト抗体産生トランスジェニックマウスのような他の動物由来の抗体を産生するように作出されたトランスジェニック動物を含む)の皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内または腹腔内に1乃至数回注射するか、あるいは移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1日乃至14日毎に1乃至4回免疫を行って、最終免疫より約1乃至5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
本発明のモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法で調製することが可能である。公知の方法としては、ケーラー及びミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,pp.495−497,1975)及びそれに準じる修飾方法が挙げられる。すなわち、本発明のモノクローナル抗体は、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくは同種のマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒト由来の骨髄腫系細胞(ミエローマ)との融合により得られる融合細胞(ハイブリドーマ)を培養することにより調製される。
細胞融合に用いられる骨髄腫系(ミエローマ)細胞としては、例えばマウス由来ミエローマ「P3/X63−AG8」、「P3/NS1/1−Ag4−1」、「P3/X63−Ag8.U1」、「SP2/0−Ag14」、「X63,653」、「PAI」、「FO」または「BW5147」、ラット由来ミエローマ「210RCY3−Ag1.2.3」、ヒト由来ミエローマ「U−266AR1」、「GM1500−6TG−A1−2」、「UC729−6」、「CEM−AGR」、「D1R11」又は「CEM−T15」などを挙げることができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生する融合細胞クローンのスクリーニングは、融合細胞を、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の抗原に対する反応性を、例えば、フローサイトメトリー、RIAやELISA等によって測定することにより行うことができる。
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロ、またはマウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギなど、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中などでのインビボで行い、得られた培養上清、または哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。インビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法などの種々の条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持および保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
基本培地としては、例えば、Ham’F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地などの低カルシウム培地、MCDB104培地、MEM培地、D−MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地などの高カルシウム培地などが挙げられる。該基本培地には、目的に応じて、例えば、血清、ホルモンサイトカインおよび/または各種の無機または有機物質などを含有させることができる。モノクローナル抗体の単離、精製は上述の培養上清または腹水を硫酸アンモニウム沈殿法、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52など)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインA若くはプロテインGカラム等のアフィニティーカラムクロマトグラフィーに付すること、疎水クロマトグラフィーに付することなどにより行うことができる。
本発明における「キメラ抗体」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、例えば、その可変領域がマウスイムノグロブリン由来の可変領域であって、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であることを特徴とするマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体などのキメラモノクローナル抗体を意味する。ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなどのアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明における組換えキメラモノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグロブリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。本発明におけるキメラモノクローナル抗体は、例えば、以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものではないことは言うまでもない。
例えば、マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体は、実験医学(臨時増刊号)、第1.6巻、第10号、1988年および特公平3−73280号公報等を参照しながら作製することができる。即ち、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから単離した該モノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性名VH遺伝子(H鎖可変領域をコードする再配列されたVDJ遺伝子)の下流にヒトイムノグロブリンをコードするDNAから取得したCH遺伝子(H鎖定常領域をコードする遺伝子)を、また該ハイブリドーマから単離したマウスモノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性なVL遺伝子(L鎖可変領域をコードする再配列されたVJ遺伝子)の下流にヒトイムノグロブリンをコードするDNAから取得したCL遺伝子(L鎖定常領域をコードする遺伝子)を、各々発現可能なように配列して1つ又は別々の発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。
具体的には、まず、マウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから常法によりDNAを抽出後、該DNAを適切な制限酵素(例えばEcoRI、HindIII等)を用いて消化し、電気泳動に付して(例えば0.7%アガロースゲル使用)サザンプロット法を行なう。泳動したゲルを例えばエチジウムブロマイド等で染色し、写真撮影後、マーカーの位置を付し、ゲルを2回水洗し、0.25MのHCl溶液に15分浸す。次いで、0.4NのNaOH溶液に10分間浸し、その間緩やかに振盪する。常法により、フィルターに移し、4時間後フィルターを回収して2×SSCで2回洗浄する。フィルターを十分乾燥した後、ベイキング(75℃、3時間)を行なう。ベイキング終了後に、該フィルターを0.1×SSC/0.1%SDS溶液に入れ、65℃で30分間処理する。次いで、3×SSC/0.1%SDS溶液に浸す。得られたフィルターをプレハイブリダイゼーション液と共にビニール袋に入れる。65℃で3〜4時間処理する。
次に、この中に32P標識したプローブDNA及びハイブリダイゼーション液を入れ、65℃で12時間程反応させる。ハイブリダイゼーション終了後、適切な塩濃度、反応温度及び時間(例えば、2×SSC、0.1%SDS溶液、室温、10分間)のもとで、フィルターを洗う。該フィルターをビニール袋に入れ、2×SSCを少量加え、密封し、オートラジオグラフィーを行なう。上記サザンブロット法により、マウスモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖を各々コードする再配列されたVDJ遺伝子及びVJ遺伝子を同定する。この方法を用いて同定したDNA断片を含む領域を塩化セシウム密度勾配遠心にて分画し、ファージベクター(例えば、charon4A、charon28、λEMBL3、λEMBL4等)に組込み、該ファージベクターで大腸菌(例えば、LE392、NM539等)を形質転換し、ゲムノライブラリーを作製する。そのゲムノライブラリーを適当なプローブ(H鎖J遺伝子、L鎖(κ)J遺伝子等)を用いて、例えばベントンデイビス法(サイエンス(Science)、第196巻、第180〜第182頁(1977))に従って、プラークハイブリダイゼーションを行い、再配列されたVDJ遺伝子或いはVJ遺伝子を各々含むポジティブクローンを得る。得られたクローンの制限酵素地図を作成し、塩基配列を決定し、目的とする再配列されたVH(VDJ)遺伝子或いはVL(VJ)遺伝子を含む遺伝子が得られていることを確認する。
一方、キメラ化に用いるヒトCH遺伝子及びヒトCL遺伝子を別に単離する。例えば、ヒトIgG1とのキメラ抗体を作製する場合には、CH遺伝子であるCγ1遺伝子とCL遺伝子であるCκ遺伝子を単離する。これらの遺伝子はマウス免疫グロブリン遺伝子とヒト免疫グロブリン遺伝子の塩基配列の高い相同性を利用してヒトCγ1遺伝子及びヒトCκ遺伝子に相当するマウスCγ1遺伝子及びマウスCκ遺伝子をプローブとして用い、ヒトゲノムライブラリーから単離することによって得ることができる。
具体的には、例えば、クローンIg146(プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第75巻、第4709〜第4713頁(1978))からの3kbのHindIII−BamHI断片とクローンMEP10(プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第78巻、第474〜第478頁(1981))からの6.8kbのEcoRI断片をプローブとして用い、ヒトのλCharon4AのHaeIII−AluIゲムノライブラリー(セル(Cell)、第15巻、第1157〜1174頁(1978))中からヒトκ遺伝子を含み、エンハンサー領域を保持しているDNA断片を単離する。また、ヒトCγ1遺伝子は、例えば、ヒト胎児肝細胞DNAをHindIIIで切断し、アガロースゲル電気泳動で分画した後、5.9kbのバンドをλ788に挿入し、前記のプローブを用いて単離する。
このようにして得られたマウスVH遺伝子とマウスVL遺伝子、及びヒトCH遺伝子とマウスCL遺伝子を用いて、プロモーター領域及びエンハンサー領域などを考慮しながらマウスVH遺伝子の下流にヒトCH遺伝子を、またマウスVL遺伝子の下流にヒトCH遺伝子を、適切な制限酵素及びDNAリガーゼを用いて、例えば、pSV2gpt或いはpSV2neo等の発現ベクターに常法に従って組込む。この際、マウスVH遺伝子/ヒトCH遺伝子とマウスVL遺伝子/ヒトCL遺伝子のキメラ遺伝子は、一つの発現ベクターに同時に配置されてもよいし、各々別個の発現ベクターに配置することもできる。
このようにして作製したキメラ遺伝子挿入発現ベクターを、例えばP3X63・Ag8・653細胞或いはSP2/0細胞といった、自らは抗体を産生していない骨髄腫細胞にスフェロプラスト融合法、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法或いはエレクトロポレーション法等により導入する。形質転換細胞は、発現ベクターに導入された薬物耐性遺伝子に対応する薬物含有培地中での培養により選別し、目的とするキメラモノクローナル抗体産生細胞を取得する。このようにして選別された抗体産生細胞の培養上清中から目的のキメラモノクローナル抗体を取得する。
本発明における「ヒト型抗体(CDR−grafted抗体)」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には例えば、その超可変領域の相補性決定領域の一部又は全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域の相補性決定領域であり、その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン領域であることを特徴とするヒト型モノクローナル抗体を意味する。
ここで、超可変領域の相補性決定領域とは、抗体の可変領域中の超可変領域に存在し、抗原と相補的に直接結合する部位である3つの領域(CDR:complementarity−determining region;CDR1、CDR2、CDR3)を指し、また可変領域の枠組領域とは、該3つの相補性決定領域の前後に介在する比較的保存された4つの領域(Framework;FR1、FR2、FR3、FR4)を指す。換言すれば、例えばマウスモノクローナル抗体の超可変領域の相補性決定領域の一部又は全部以外の全ての領域が、ヒトイムノグロブリンの対応領域と置き換わったモノクローナル抗体を意味する。ヒトイムノグロブリンの対応領域由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明におけるヒト型モノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグロブリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。また、ヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域についても限定されるものではない。
本発明におけるヒト型モノクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する組換ヒト型モノクローナル抗体は、特表平4−506458号公報及び特開平62−296890号公報等を参照して、遺伝子工学的に作製することができる。ヒト化抗体の作製は、まず目的とするモノクローナル抗体のV領域アミノ酸配列とホモロジーの高いヒトVHおよびVLを選び、コンピュータモデリングによりCDRの高次構造に影響するFR領域のアミノ酸残基を検索して選択し、マウス由来のCDR(ごく一部のFR配列を含む)とヒト由来のFR領域配列からなるVHおよびVL領域の全アミノ酸配列をデザインする。C領域としては希望するヒト抗体のクラス・サブクラスを選ぶ。VHおよびVL遺伝子は、化学合成法やPCR法あるいはsite−directedmutagenesis法などで作製する。このように設計したマウス抗体のH鎖およびL鎖のV領域遺伝子を、プロモーター領域およびエンハンサー領域などを考慮して、それぞれヒトのH鎖およびL鎖のC領域遺伝子につなぎ、発現ベクターにそれぞれ組み込んで、細胞に導入して発現させる。発現ベクターとしてはpSV2gptやpSB2neoなどがよく用いられるが、1本の発現ベクターで発現させてもよい。つづいて免疫グロブリン非産生株であるマウスミエローマSp2/0などへ導入して発現分泌させる。ミエローマ以外の動物細胞や昆虫細胞、あるいは酵母や大腸菌で産生させてもよい。
本発明における「ヒト抗体」とは、イムノグロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域ならびにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。ヒト抗体は、常法に従って、例えば少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物を、抗原或いは免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体或いはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。例えば、ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスは、ネイチャージェネティックス(Nature Genetics)、第7巻、第13〜21頁、1994年;特表平4−504365号公報;国際出願公開WO94/25585号公報;日経サイエンス、6月号、第40〜50頁、1995年;ネイチャー(Nature)、第368巻、第856〜859頁、1994年及び特表平6−500233号公報に記載の方法に従って作製することができる。
本発明において「抗体の一部」または「抗体のフラグメント」とは、少なくとも一つの可変領域を含有する抗体フラグメントの意であり、前述の本発明における抗体、好ましくはモノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはFv、F(ab’)2、Fab’あるいはFabを指す。ここで、「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領城中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントをそれぞれFab’という。また、IgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
<組換えベクターおよび形質転換体>
本発明はさらに、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターを提供する。
組み換えベクターは、簡便には当業界において入手可能な組み換え用ベクター(例えば、プラスミドDNAなど)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとしては、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
所望のタンパク質を生産する目的においては、特に、発現ベククーが有用である。発現ベクターの種類は、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
プラスミドなどのベクターに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,(second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory,1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組み換えベクター(例えば、組み換えプラスミド)は、以下に記載するような方法で宿主細胞に導入することができる。
本発明の組み換えベクターを宿主細胞に導入(形質転換または形質移入)する方法としては、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、「Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,(second edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.74(1989)」に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。あるいはまた、例えば、宿主細胞が細菌(E.coil、Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science,227,129(1985)]、エレクトロポレーション法[Nature,319,791(1986)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156−2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。
形質転換体を作製する際に使用する宿主細胞としては、本発明の組み換えベクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然の細胞、または人工的に樹立された組み換え細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)などの原核細胞、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)などの単細胞性宿主を含む下等真核性細胞、カイコなどの高等真核性細胞などが挙げられる。宿主細胞は、大腸菌、酵母、昆虫細胞などが好ましく、具体的には、大腸菌(M15、JM109、BL21等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)、昆虫細胞(BmN4、カイコ幼虫など)などが例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、アフリカツメガエル由来、ラット由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターおよび複製可能単位から構成される。宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合には、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター、関始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを合んでいることが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E.coilではブラスミドpQE30、pETまたはpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pETまたはpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等があげられる。
エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシン若しくはネオマイシン、ハイグロマイシン、スペクチノマイシンまたはクロラムフェニコール等の抗生物質の耐性遺伝子などが例示される。
発現ベクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。
<受容体、スクリーニング方法>
本発明の遺伝子がコードするタンパク質はG−CSF誘導・分泌刺激の入口として働いていることが考えられる(即ち、本発明は以下の理論により拘束されることはないものの、一つの可能性としては、マクロファージ細胞の表層に存在する本発明のタンパク質に外部からのリガンドが結合して、それにより生じたシグナルが細胞内に伝達されることにより当該マクロファージがG−CSFを放出するようになるというモデルが考えられる)。従って、本発明のタンパク質は、G−CSFの誘導・分泌因子の受容体またはその一部でありうる。ここでいう「受容体の一部」とは、受容体を構成するサブユニットの一つである場合、糖鎖等で修飾されている場合を含む。この受容体は、例えば寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体またはそのフラグメントのような、G−CSFの産生を誘導することができる物質と結合性(親和性ということもある)を有し、また、マクロファージを含むG−CSFを産生することのできる細胞の細胞膜に存在すると考えられる。本発明はこのような受容体を提供する。
また、本発明はさらに、本発明のタンパク質または受容体を用いることを特徴とする、有用な物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、(a)物質を、請求項9から12の何れかに記載のタンパク質または請求項20記載の受容体を有する細胞に接触させる工程;および(b)前記物質の、前記タンパク質または受容体を介した効果を測定する工程を含む。あるいは、問題の物質(単に「物質」、または「試験化合物」ということもある。)と本発明のタンパク質若しくは上記受容体、またはそれらを有する細胞との結合性を測定すること(例えば、本発明の受容体を細胞表面に有する細胞と問題の物質との結合をフローサイトメーターで解析すること)、問題の物質の上記受容体を介した効果(例えば、マクロファージからのG−CSFの産生、適当な形質転換細胞からのマーカーとなる物質の産生)を測定すること、または問題の物質の構造(例えば、問題の物質がタンパク質であるときは、そのアミノ酸配列)と本発明のタンパク質の構造(例えば、アミノ酸配列)とを比較することを含む。
さらに、本発明のタンパク質または受容体の構造情報をもとにコンピュータを用いて化合物をデザインし、そのような手法でデザインされた化合物および/またはその類似体をコンビナトリアルケミストリー等の技術を用いて多種類合成し、そしてそれらのなかから、適当な技術(例えば、HTS(high throughput screening)等)を用いて有用な物質を選択する手法、ならびにそのような物質をリード化合物としてさらに改変体を合成・選択し、より効果の高い物質を得る手法等も、本発明のスクリーニング方法に含まれる。
スクリーニングに利用される本発明のタンパク質または受容体は、好ましくは、(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは94%以上、最も好ましくは98%以上)の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質または;(d)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質、またはそのようなタンパク質を有する受容体である。
より具体的なスクリーニング方法の一例として、次のようなものが考えられる:G−CSFプロモーター遺伝子、その下流のルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)、β−ラクタマーゼまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のマーカータンパク質をコードする遺伝子、およびさらに下流のテトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の薬剤に対する薬剤抵抗性遺伝子を挿入したベクターを構築する。このベクターを、本発明のタンパク質を含む受容体をもつ細胞(例えばマクロファージ細胞株、好ましくはヒト由来マクロファージ細胞株)に導入する。得られた細胞を薬剤を含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を選抜する。さらに、リポポリサッカライド(LPS)などのG−CSF誘導薬によってマーカータンパク質を発現するクローンを選択する。なお、マーカータンパク質の発現が実際のG−CSFmRNAの発現を反映していることを確認しておく。このようにして得られた形質転換細胞株を種々の物質で処理する。そしてマーカータンパク質発現を誘導した物質をスクリーニングする。
本発明のスクリーニング方法においては、本発明のタンパク質のうちG−CSF誘導・分泌活性を有する抗体(例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体)またはそのフラグメントによって認識される部分が特に重要となる場合がある。例えば、このような部分の決定方法は当業者にはよく知られている。例えば、本発明のタンパク質の一つである配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質においては、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体によって認識される部分が本発明者らによって決定されている(実施例9参照)。
<新規物質>
スクリーニングにより得られる有用な物質は、G−CSFの産生を変化させることができる物質である。そのような物質は、(a)受容体と結合性を有し(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導することができる物質(アゴニストまたは作用薬ともいう);(b)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導しない物質(アンタゴニストまたは遮断薬ともいう);および(c)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)、かつ受容体自身がもつG−CSFの産生活性を阻害する物質(インバースアゴニストまたは反作用薬ともいう)を含む。
このような物質は新規である。従って、本発明は、本発明のスクリーニング方法により得られた、(a)受容体と結合性を有し(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導することができる物質;(b)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導しない物質;または(c)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)、かつ受容体自身がもつG−CSFの産生活性を阻害する物質をも提供する。また、本発明はさらに、本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(a)G−CSFの産生を誘導することができる物質(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。);(b)G−CSFの産生を誘導しない物質(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。);または(c)受容体自身がもつG−CSFの産生誘導活性を阻害する物質(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)をも提供する。以下、これらの物質を「本発明の物質」ということもある。なお、本発明の物質についての発明の技術的範囲には、公知の物質自体は含まれない。
本発明の物質の例としては、本発明の抗体、そのフラグメント、または他の低分子化合物であって:G−CSFの産生を誘導する作用を有するもの;G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害する作用を有するもの;または受容体自身がもつG−CSFの産生活性を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害し、かつG−CSFの産生を阻害する作用を有するものがある。
上述の「他の低分子化合物」は、例えばコンビナトリアル合成等の当業者に周知の手段により、種々合成することができるし、入手可能な化学合成ライブラリーを利用することもできる(M.J.プランケットら:新薬開発とコンビナトリアル・ケミストリー:日経サイエンス7,62−69(1997)。コンビナトリアルケミストリー研究会編:コンビナトリアルケミストリー:化学同人(1998))。
上記受容体との結合性(または結合の阻害性)は、問題となる物質が抗体である場合は、例えば、抗体と結合したマクロファージ細胞株をフローサイトメトリーやELISA法などを用いて解析する等の方法により、測定することができる。
顆粒球コロニー刺激因子産生の誘導作用(または阻害作用)は、特開平11−106400に記載された方法により決定されうる。概略を以下に記載する。
ピッカジーン エンハンサー ベクター2(和光純薬工業(株)社製)のXhoIサイトからNcoIサイトにかけて、G−CSFプロモーター遺伝子を挿入し、その下流にG−CSF遺伝子の代りにルシフェラーゼ遺伝子を結合させ、さらにSV40の下流のSalIサイトにpMC1Neo Poly Aから切り出したネオマイシン抵抗性遺伝子を挿入したPicaGCSFneoベクターを構築する。このベクターをRAW264.7細胞にエレクトロポレーション法を用いて導入する。得られた細胞をジェネチシンを含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を選抜する。ジェネチシン抵抗性クローンからさらに、LSP等のG−CSF誘導薬によってルシフェラーゼ活性を示すクローンを選択する。なお、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることを、32PラベルマウスG−CSFのcDNAをプローブとして、ノーザンブロット解析により確認しておく。このようにして得られた形質転換マクロファージ細胞株を、96ウェルマイクロプレートにウェル当り5×104個ずつ播き、37℃で24時間培養し、必要に応じ予め得ておいたアゴニスト、アンタゴニストで処理した後、問題の物質を0、3.75、7.5、15、30および/または60μg/ml程度の濃度で添加する。さらに、37℃で18時間培養した後、ルシフェラーゼ活性を測定する。
また、G−CSF産生の誘導作用(または阻害作用)は、以下の実施例14に記載されているG−CSFバイオアッセイによっても決定されうる。
本発明の物質であるか否かは、種々の判断基準により決定することができる。例えば、(1)G−CSFを産生しうる系、またはG−CSFの産生を反映する測定可能な指標を有する系を構築し、試験化合物を添加する群と適切なコントロール群(例えば、試験化合物の代わりに既知の物質を用いる系、試験化合物およびその代わりの物質のいずれも用いない系)とを作製し、コントロール群で得られた値を基準として判断することができる。このとき、試験化合物と、予め得ておいたアゴニストまたはアンタゴニストを共存させる群を作製してもよい。また、(2)本発明の受容体またはタンパク質と試験化合物との結合力(例えば、適切な手段により測定された受容体若しくはタンパク質と試験化合物との結合定数(Km、会合定数ということもある))を基に判断することができる。この場合も試験化合物の代わりに既知の物質を用いて得られた値を基準とすることができる。あるいは、(3)(1)および(2)を組み合わせて判断することができる。
より具体的には、細胞表面に本発明のタンパク質を有する細胞であって、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映するように形質転換された細胞を試験化合物で刺激した場合に、適当な条件において得られるルシフェラーゼ活性の最大値がコントロール群より高いとき、好ましくはコントロール群の約1.01倍以上であるとき、より好ましくは約2倍以上であるとき、さらに好ましくは約20倍以上であるとき、最も好ましくは約60倍以上であるとき、その試験化合物を、本発明でいう「本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(a)G−CSFの産生を誘導することができる物質」と判断することができる(実施例参照)。また、予め得ておいたアゴニストまたはアンタゴニストと試験化合物を共存させる群を含む系は、本発明でいう「本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(b)G−CSFの産生を誘導しない物質;または(c)G−CSFの産生を誘導することができる物質」であるか否かを判断する際に用いることができる。
本発明の物質は、G−CSF以外のサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、インターフェロンINF、腫瘍壊死因子(TNF)、種々のコロニー刺激因子(CSF)等を誘導してもよい。他のサイトカインに比較して、G−CSFを選択的に誘導する物質は、本発明の物質の好ましい態様の一つである。そのような物質としては、例えば、適切な濃度で用いた場合に、他のサイトカインの誘導はコントロールと比較して約10倍未満であるが、G−CSFサイトカインの誘導はコントロールの約10倍以上、好ましくは約20倍以上、より好ましくは約40倍以上である物質である。他のサイトカインの誘導は、当業者に周知の方法で測定することができる。
<医薬としての本発明の遺伝子等の利用>
本発明の遺伝子は、例えば、血液成分の白血球の一種である好中球が関与する疾患(例えば、好中球減少症など)または赤血球、白血球若しくは血小板等の血球に関する疾患の診断、予防および治療(遺伝子治療など)などに利用することが可能である。また、本発明のタンパク質若しくはその部分ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、リガンド、受容体、または物質(以下、これらをまとめて「本発明のタンパク質等」ということもある)は、血液あるいは骨髄中の好中球の数または、広く赤血球、白血球若しくは血小板等の血球の数を調整する医薬となり得る。すなわち、本発明の遺伝子およびタンパク質等は、抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症または赤血球、白血球若しくは血小板等等の血球減少症の治療及び再生不良性貧血の診断、予防および治療などのために用いることが可能である。
また、本発明者らにより、本発明のタンパク質または受容体がG−CSFの産生の誘導に関与することが見出された。したがって、本発明のタンパク質または受容体との結合性を有する物質は、医薬として、G−CSFの産生を促進する薬剤またはG−CSFに関する生物活性を調節する薬剤として用いることが可能である。特に抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症、または赤血球、白血球若しくは血小板等等の血球減少症や骨髄移植後の好中球減少症の治療及び再生不良性貧血の診断、予防および治療などのために用いることが可能である。
本発明のタンパク質等は通常、全身または局所的に、一般的には非経口の形で投与することができる。非経口投与の内でも特に好ましくは静脈内投与である。
本発明の遺伝子は、生体内あるいは生体外で細胞に遺伝子を導入するいわゆる遺伝子治療の形で全身または局所的に投与することができる。遺伝子導入は、例えばバイオマニュアルUPシリーズ、遺伝子治療の基礎技術、島田隆、斎藤泉、小澤敬也編:羊土社発行、1996年に記載の方法に従って行うことができる。生体外で細胞に導入する場合には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、カチオニックリポソーム、HVJ−リポソームを用いる方法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法などを用いることができる。また、生体内で遺伝子を導入する場合には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、カチオニックリポソーム、HVJ−リポソームを用いる方法を挙げることができる。
投与量は、年齢、性別、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間、投与するもの(タンパク質または遺伝子の種類)などにより異なるが、成人一人当たり、一回につき1μgから100gの範囲、好ましくは10μgから1000mgの範囲で、一日一回から複数回非経口投与することができるだろう。投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤などを包含する。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤としては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤として混合される。水性の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水などが挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類などが挙げられる。
このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばアルギニン、アスパラギン酸など)のような補助剤を含んでいてもよい。
これらはバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を例えば凍結乾燥法などによって製造し、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することもできる。
非経口投与のためのその他の組成物としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤およびペッサリーなどが含まれる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例
実施例1:3−4H7抗体(寄託番号FERM BP−6103のハイブリドーマが産生するもの;特願平9−266591号明細書に記載)の作製および精製
情報伝達抗体(アゴニスト抗体)3−4H7(IgM)の作製および精製は、微生物およびエンドトキシン(リポポリサッカライド、LPS)の夾雑を防ぐためすべて無菌操作により行うとともに、用いた培養液および試薬のエンドトキシン濃度を常に測定(後述)し、許容範囲(0.1EU/ml以下)であることを確認しながら行った。すなわちインテグラCL1000培養フラスコ中、ハイブリドーマを1mlあたり1×108個の密度でASF104無血清培地に懸濁し5日間培養した上清を200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で約3倍量に希釈し、これをやはり200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化したMGPPカラムにロードした。そして200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)でカラムを洗浄し夾雑物を除いた後、300mM リン酸緩衝液(pH6.8)で抗体を溶出、これをリン酸緩衝生理食塩液(PBS,pH7.4)中で透析し抗体溶液を得た。精製した抗体の純度はFPLCおよびSDS−PAGEにより確認し、以下の実験に供した。
実施例2:LPS濃度定量法
実験に用いた各種溶液に含まれるLPS濃度は、リムルス法によりエンドスペシー−トキシカラーシステム(生化学工業)を用いて定量した。すなわち、各種溶液50μlをエンドドキシンフリー96ウエルマイクロプレートにとり、氷冷下ライセート−合成反応基質溶液50μlを加え、直ちに37℃で30分間反応した。この後すぐにそれぞれ50μlの亜硝酸ナトリウム溶液、スルファミン酸アンモニウム溶液、N−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩−N−メチル−2−ピロリドン−水溶液を順に加え、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)を用いて550nmの吸収を測定、コントロールとして650nmの吸収を引いた値を用いてSoftMax1.5プログラムによりLPS濃度を計算した。標準LPSにはUSP標準品を用い、細胞を刺激する際も同じLPSを用いた。
実施例3:マクロファージ系細胞株における3−4H7抗体の抗原遺伝子のクローニング
(1)マクロファージ系培養細胞株RAW264.7からのポリA+RNAの調製
RAW264.7細胞(2×108個)から、グアニジウムチオシアネート/フェノールクロロホルム・シングルステップ抽出法(ラボマニュアル遺伝子工学第3版,83−84,1996)によって、約0.3mgの全RNAを調製した。これをオリゴ(dT)セルロースカラム(Life Technologies社)によりさらに精製し、約5μgのポリA+RNAを得た。
(2)cDNAライブラリーの構築
cDNAの合成は、STRATAGENE社のZAP−cDNA合成キットを用い、リンカープライマー法(Gubler−Hoffmann法:Gene,25:263−269,1983を改変したもの)によりおこなった。すなわち、上記(1)で得たポリA+RNA(5μg)に、オリゴ(dT)18とXhoI認識配列を含むリンカープライマー(2.8μg)および逆転写酵素(MMLV−RTase;70units)を加え、37℃で60分間反応させることにより相補性一本鎖DNA(ss−cDNA)を合成した。その際、後におこなう制限酵素処理からcDNAを保護するため、5−methyl dCTPを取り込ませた。つづいて、RNase H(2unit)を作用させ、DNA−RNAハイブリッド上に、切れ目(ニック)を導入し、生じたRNA鎖断片をプライマーとして、E.coli DNAポリメラーゼI(100unit)を加え16℃で150分間反応させることによりds(double−strand)−cDNA(8μg)を合成した。フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈澱後、このようにして作製したds−cDNAをPfu DNAポリメラーゼ(5unit)を加えた反応液中で72℃,30分間反応させることにより平滑末端化した。さらにフェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈澱をおこない、T4 DNAリガーゼ(4unit)を含むバッファー中で予めアニーリングさせたEcoR Iアダプター(0.35μg)を8℃で一晩反応させることにより付加し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10unit)で37℃,30分間反応させることによりcDNAのEcoRI末端をリン酸化した。そして、リンカープライマー部分をXhoI(120unit)により37℃で90分間反応させて切断し、得られたcDNAをスピンカラムによりサイズ分画し、1%アガロースゲル電気泳動によりcDNAの鎖長が0.5kbp以上の長さであることを確認後、T4DNAリガーゼ(4unit)を含むバッファー中12℃で一晩反応させることにより、λZAP IIベクター(1μg)に挿入した。連結されたλDNAはSTRATAGENE社のGigapack III Gold packaging extractを用いて室温で90分間インキュベートすることによりin vitro packagingをおこない、大腸菌XL1−Blue MRF’に感染させ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド;2.5mM),X−Gal(4mg/ml)存在下、プレート上で37℃,8時間プラークを形成させてタイトレーションをおこなった結果、このcDNAライブラリーは1.2×106のオリジナルクローンを含むことがわかった。このライブラリーを大腸菌XL1−Blue MRF’で3.4×109pfuまで増幅して以下のスクリーニングに用いた。
(3)3−4H7抗体と結合性を有するタンパク質をコードする遺伝子のスクリーニング
上記(2)で構築したcDNAライブラリーはlacプロモーターで制御されているβガラクトシダーゼの構造遺伝子の3’側にcDNAが導入されているので、そのcDNAは、βガラクトシダーゼとの融合タンパク質として発現する。そこでこの融合タンパク質を膜上にブロッティングし、3−4H7抗体をプローブとしてイムノスクリーニングすることによって大腸菌による発現クローニングをおこなった。すなわち、各3.5×104pfuファージをトップアガロースと混合し、直径150mmのプレート上に播種して計20枚のプレートを作製した。これらのプレートを42℃で4時間インキュベートして直径0.5mm程のプラークを形成させ、そこにあらかじめ滅菌したIPTGを浸み込ませたニトロセルロース膜をのせ、37℃で3時間インキュベートして発現を誘導した。その後膜を剥がし、5%のスキムミルクを含むTBS−T(0.1% Tween 20,20mMトリス緩衝生理食塩水,pH7.6)溶液中で1時間ブロッキングをおこなった。その後、膜をTBS−Tで洗浄し、1次抗体として3−4H7抗体(1.6μg/ml−1%BSA−TBS)を1時間反応させ、洗浄後、2次抗体としてアルカリホスファターゼ標識抗マウスIgMウサギ抗体(Zymed,0.6μg/ml)を1時間反応させた。再度よく洗浄後、基質液(5mM MgCl2を含む500μg/ml NBT;ニトロブルーテトラゾリウム,500μg/ml BCIP;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートTBS溶液,pH9.5)中、暗所で30分間インキュベートし発色させた。フィルターをマスタープレートと突き合わせ、陽性クローンをトップアガロースから回収し増幅後、上記と同様の操作で2次、3次、4次スクリーニングをおこなった。その結果、7×105個のファージから1次スクリーニングでは22個、最終的には3個の陽性クローン(MMR10,MMR17およびMMR19)を得た。
(4)得られたポジティブクローンの遺伝子配列の解析
λZAP IIファージベクターは、プラスミドベクターBluescript SK(−)全体がf1ファージのinitiator領域とterminator領域の間に挿入されているので、ヘルパーファージを感染させることにより、組換えBluescriptが自動的に切り出され、クローン化したDNA断片をBluescriptにサブクローニングできる。そこで、上記(3)で得た3個のポジティブファージを大腸菌XL1−Blue MRF’に感染させ、これにヘルパーファージを感染させることにより、pBluescript SK(−)にサブクローニングした。このプラスミドを大腸菌SOLRに形質転換させることにより、約20μgのプラスミドDNAを得た。プラスミドDNAの配列解析はPrimer Walking法によりおこなった。精製したプラスミドDNAについてABI PRISM BigDye Primer Cycle Sequencing Core Kit(PE社)を用いてM13Revプライマーと−21M13プライマーによりシークエンス反応をおこない、ロングレンジャーゲルを用いABI 377型シークエンサーによりDNA配列を決定した。解析の結果、MMR19クローンはタンパク質のオープンリーディングフレームを含む840bpからなる完全長のcDNA塩基配列を有していた。一方、他のクローンではオープンリーディングフレームが確認されなかった。MMR19クローンの塩基配列を配列表の配列番号1に記載する。
(5)cDNAクローンの塩基配列から推定されるタンパク質の一次構造
上記(4)で解析した遺伝子(MMR19)の塩基配列から推定されるタンパク質(以下「MMRP19タンパク質」という)の一次構造(配列表の配列番号1および2に記載)は、241個のアミノ酸残基から構成され、推定される分子量は約26.9kDaであった。
実施例4:データベース検索によるマウス由来MMR19遺伝子と他の相同遺伝子の比較
実施例3で決定した配列番号1に記載の塩基配列およびアミノ酸配列について、BLAST,EMBCおよびPROSITEのプログラムによりデータベース(GenBankおよびDNA DATA BANK of JAPAN(DDBJ);日本DNAデータバンク,文部省・国立遺伝学研究所・生命情報研究センター)を検索し、ヒトにおける相同遺伝子の有無をアミノ酸残基レベルおよびDNAレベルの両方で解析した。得られた結果を以下の表1および表2に示す。この結果、本発明の遺伝子MMR19と相同性の高い遺伝子がヒトの9番染色体上に存在することが示された。
実施例5:MMR19ヒト型ホモローグのクローニング
ヒト正常脳組織由来全RNA(Invitrogen社)をオリゴ(dT)セルロースカラムにかけ、ポリA+RNAを精製した。次に実施例3(2)に示した方法により、ポリA+RNAからcDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、マウス抗原遺伝子MMR19の配列から作製したプライマー(4位から22位のセンスプライマー;5’−CCATGTCTGGCTGTCAAGC−3’;、721位から701位のアンチセンスプライマー;5’−CCATTTTCTCCAACTGGGAGC−3’)を用いてPCR反応をおこなった結果、MMR19ヒト型ホモローグの部分cDNAが得られた。次に、得られたヒト型ホモローグの部分cDNAの配列からレース法(ClontechのMarathon cDNA Amplification Kitを使用)を用いて全長cDNAを得た。すなわち、ヒト正常脳組織由来cDNAライブラリーを平滑末端化し、これにMarathon cDNA Adaptor(AP1プライマー配列を含む)をライゲーションし、AP1とGSP(Gene−Specific Primer)1(189位から167位のアンチセンスプライマー:5’−AATTCCTCCTCCAGTCCCAGTGA−3’)により5’−RACE PCR反応を、GSP2(630位から653位のセンスプライマー:5’−TGGAGTATATGTGTGGGGGGAAAC−3’)とAP1により3’−RACE PCR反応をおこない、それぞれ5’末端および3’末端側の配列を増幅した。これらPCR産物をアガロース電気泳動したところそれぞれ単一バンドが確認されたので、これをサブクローニング後、シークエンシングすることにより5’末端および3’末端側の配列を解読した。得られた5’−RACE断片からセンスプライマー(5’−AAGCCGTGCGGAGATTGGAGG−3’;1位から21位)を、3’−RACE断片からアンチセンスプライマー(5’−GTCAGAAGAGATTCAGGGTGACC−3’;924位から902位)を作製し、先に用いたヒト正常脳組織由来cDNAライブラリーを鋳型としてPCR反応を行い、これをClontechのAdvanTAge PCR Cloning Kitを用いてT/A cloningすることにより1136bpからなるオープンリーディングフレームを含むヒト型ホモローグの全長cDNAの塩基配列を明らかにした。得られた塩基配列を配列表の配列番号3に記載する。Genetyx−Mac(ソフトウェア開発社)を使用しヒト型ホモローグcDNAとマウスMMR19 cDNA(840bp)の相同性を検討した結果、85.0%相同であることが明らかとなった。
得られたMMR19ヒトホモローグの塩基配列から推定されるタンパク質の一次構造は、242個のアミノ酸残基から構成される配列番号3および4に示すものである。推定されたアミノ酸配列は、マウスのそれと93.8%相同であった。
実施例6:MMRP19タンパク質の解析
MMRP19タンパク質の部分アミノ酸配列からなる3種のペプチドに対するウサギポリクローナル抗体APA1、APA2、およびAPA3を以下のとおり調製した。すなわち、9−Fluorenylmethoxycarbonyl(FMOC)法によりApplied Biosystems 433型のペプチド合成機を用い、MMR19から推定したタンパク質の12位から25位まで、58位から71位まで、228位から241位までのアミノ酸配列に対するペプチドを合成し、逆相クロマトグラフィー(島津LC8A型)で精製、最終的にそれぞれ約25mgのペプチドを得た。精製したペプチドをN−(6−maleimidocaproylxy)−succinimide架橋剤を介してヘモシアニン(KLH)キャリアタンパク質に結合させ、それぞれ1mgをFreund’s complete adjuvantと混合し、ウサギ(雌、2〜2.5kg)背部皮下に3回ほど免疫した。ELISA法により血液の抗体価をチェックしてから、それぞれのウサギより約100mlの血液を採取し、血清を調製した。さらにこの血清よりIgGアフィニティカラムを用いることで、それぞれの抗ペプチド抗体(APA1、APA2およびAPA3)を得た。APA1はMMRP19タンパク質のアミノ酸配列(配列表の配列番号2)中における番号12から25まで、APA2は58から71まで、およびAPA3は228から241までの配列を有するポリペプチドに対する抗体である。
これらの抗ペプチド抗体と3−4H7抗体とを用いて、RAW264.7細胞溶解物についてウエスタン解析を行った。その結果図1に示すように、いずれの抗体によって識別されるバンドも分子量30.4kDaであったことから、これらの抗体が同一のタンパク質、すなわちMMRP19タンパク質と結合するものであることが確認された。なお、ここで得られた分子量(30.4kDa)と、アミノ酸配列から計算される分子量(26.9kDa)の差異は、糖鎖修飾に起因するものと考えられる。
次に、MMRP19タンパク質について、Hoop and Woods法(Hoop,T.K.and Woods,K.P.:Mol.Immunol.20,483−489(1983))にしたがって、ハイドロパシー解析を行った。その結果を図2に示したようにMMRP19タンパク質には、2つの疎水性領域が存在する可能性が示された。
さらに、抗ペプチド抗体APA1、APA2、およびAPA3を用いて、RAW264.7細胞をフローサイトメーターEPICS−ALTRA(Beckman Coulter社製)で解析した。その結果図3に示したとおり、RAW264.7細胞は、APA1およびAPA2によって識別されたが、MMRP19タンパク質のC末端領域に対する抗体であるAPA3によっては認識されなかった。
これらの結果から、MMRP19タンパク質は、N末端約98個のアミノ酸残基からなる細胞外ドメイン、これに続く約30個のアミノ酸残基からなる膜貫通(Transmembrane、TM)ドメイン、さらにこれに続く約113個のアミノ酸残基からなる細胞内ドメインからなることが示唆された。
実施例7:G−CSF遺伝子発現誘導へのMMRP19タンパク質の関与
(1)Pica−RAW264.7細胞の作製
レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いたピッカジーンシステム(Picagene System(和光純薬工業(株)社製))を使用した。ピッカジーンエンハンサー ベクター2(和光純薬工業(株)社製)を用いてXhoIサイトからNcoIサイトにかけて、G−CSFプロモーター遺伝子を挿入し、その下流にG−CSF遺伝子の代りにルシフェラーゼ遺伝子を結合させ、さらにSV40の下流のSalIサイトにpMC1Neo Poly Aから切り出したネオマイシン抵抗性遺伝子を挿入したPicaGCSFneoベクターを構築した。
次に、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7に上記ベクターを以下の方法で導入した。対数増殖期のRAW264.7細胞株を収穫し、10%ウシ胎児血清(FBS;Bio−Whittacker社製)及び非必須アミノ酸(NEAA)を含むイーグル培地(EMEM)で一回洗浄し、同培地中に2×107個/mlの濃度で再懸濁した。上記細胞懸濁液250μl(5×106個)を0.4cmキュベットに入れ、塩化セシウム法で精製したPicaGCSFneoプラスミドDNA10μgと混合し、Gene Pulser(Bio Rad)を用いて300V、960μFの高電圧パルスをかけることによりベクターを細胞に導入した。
形質転換して48時間後、得られた細胞をgeneticin(ネオマイシンの一種)1g/lを含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を10〜15日後選抜した。50個のgeneticin耐性クローンのうち43個のクローンにおいて、LPSで刺激した結果、優位なルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。そのなかでも一つのクローンが極めて高いルシフェラーゼ活性を示したことから、これをRAW264.7クローン27−3(「Pica−RAW264.7細胞」ということもある。)と命名した。
なお、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることは以下の実験で確認した。すなわち、LPS(終濃度10μg/ml)で18時間刺激処理したRAW264.7クローン27−3細胞(1.5×107個)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。細胞を溶解し全RNAを抽出後、全RNAを1%ホルムアルデヒド・アガロース・ゲル上で電気泳動させ、ナイロンフィルターに移し、32PラベルマウスG−CSFのcDNAをプローブとしてノーザンブロット解析を行った。コントロールとしては、β−アクチンを用いた。その結果、G−CSF mRNAの誘導とルシフェラーゼ活性が相関することが示されたことから、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることが確認された。
(2)G−CSF遺伝子誘導の検出
96ウェルマイクロプレートに、1ウェルあたり5×104個/100μlとなるようにPica−RAW264.7細胞を播種し、10%FBSを含むEMEM培地中で、37℃、5%CO2存在下で培養した。実施例6に記載の抗ペプチド抗体(APA1、APA2、APA3)と3−4H7抗体とを、種々の濃度でプレートに添加し、37℃、5%CO2存在下で細胞を一晩刺激した。これらのプレートをPBSバッファーで3回洗浄した後、細胞をピッカジーン溶解剤により溶解し、遠心して得られた上清サンプルのルシフェラーゼ活性を、ルミノメーターCT−9000D化学発光測定用マイクロプレートリーダー(ダイアヤトロン)によって測定した。結果を図4に示した。
3−4H7抗体は、77pmol/mlの濃度で約60倍のG−CSF誘導活性を示した。また、細胞外領域を認識する抗ペプチド抗体(APA1、APA2)も、3−4H7抗体と同様にPica−RAW264.7細胞に対して、G−CSF誘導活性を示した(APA1:24倍、APA2:21倍)。これに対し、細胞内領域を認識するAPA3抗体にはG−CSF誘導能は認められなかった。以上の結果より、APA1、APA2はMMRP19タンパク質の細胞外領域に結合し、G−CSF遺伝子発現誘導に関与することが示唆された。
実施例8: マクロファージ系細胞における3−4H7抗体刺激によるG−CSF遺伝子誘導と分泌の関係
RAW264.7あるいはPica−RAW264.7細胞を10%FBSを含むEMEM培地に懸濁し(1.2×105個/ml)、これを96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり90μl(1×104個/ウエル)播種し、まず37℃、5%CO2存在下で一晩プレインキュベーションした。この後、各種濃度の3−4H7抗体、あるいはLPS溶液を各ウエルに10μlずつ添加し、37℃、5%CO2存在下で24時間刺激した。この後培養上清をサンプルチューブにとり遠心し、この上清を以下のNFS−60細胞を用いたG−CSFバイオアッセイ検出系に供した。G−CSFのバイオアッセイによる検出は以下のように行った。すなわち、まずNFS−60細胞をPBSで3回洗浄し、これを細胞密度が3×105細胞/mlとなるように5%FBSおよび100μMのNEAAを含むRPMI1640培地中に懸濁した。このNFS−60細胞懸濁液を96ウエルマイクロプレートに50μlずつ播種し(1.5×104細胞/well)、一晩37℃、5%CO2存在下プレインキュベートした後、50μlのRAW264.7あるいはPica−RAW264.7細胞の培養上清またはG−CSFを含む培地を各ウエルに加え、37℃、5%CO2存在下24時間インキュベートした。この後、各ウエルに10μlのWST溶液(5mM 2−(4−iodophenyl9−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium・Na,0.2mM 1−methoxy−5−methylphenazinium methylsulfide,20mM Hepes,pH7.4)を加え、37℃で4時間反応させ、450nmの吸光度を650nmを参照波長として測定することでNFS−60細胞の増殖を定量化し、G−CSFにより惹起される細胞増殖を指標に作製した検量線より培地中に含まれるG−CSF量を定量した。またPica−RAW264.7細胞については実施例7と同様にルシフェラーゼ活性についても検討した。その結果、図5から図8に示すように、3−4H7抗体はLPSと同様にRAW264.7細胞およびPica−RAW264.7細胞を刺激し、濃度依存的にG−CSFの分泌を促進することが示された。また3−4H7抗体によるG−CSF分泌は、G−CSF遺伝子誘導に比べて低濃度で認められることから、G−CSF生合成および分泌には、わずかなG−CSF遺伝子誘導で十分であることが示唆された。
実施例9:3−4H7抗体が認識する抗原分子MMRP19のエピトープ領域
MMRP19タンパク質の細胞外ドメインに対する部分ペプチド、MMRP19(12−25,P1)、MMRP19(19−36,P2)、MMRP19(32−46,P3)、MMRP19(41−55,P4)、MMRP19(50−62,P5)、MMRP19(57−71,P6)、MMRP19(64−81,P7)、MMRP19(72−87,P8)およびMMRP19(81−98,P9)の合成は9−Fluorenylmethoxycarbonyl法により、Applied Biosystems社の433型自動ペプチド合成機を用いて行った。合成の結果得られたペプチド−樹脂をトリフルオロ酢酸により処理し、これを逆相クロマトグラフィー(島津LC8A型)によって精製、各ペプチドともそれぞれ約25mgを得た。MMRP19細胞外ドメインに対する9種の合成ペプチド(P1−P9)を、それぞれ0.5μgずつ96ウエルマイクロプレートの各ウエルに固定した後、スキムミルクを用いてブロッキングし、PBSにより3回洗浄した。このマイクロプレートに3−4H7抗体溶液50μlを添加し(添加濃度10μg/ml)、37℃で1時間インキュベートした。これを0.05% Tween−20を含むPBSにより3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgMラット抗体溶液を加え37℃で1時間反応させ、さらに0.05%Tween−を含むPBSで5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ発色基質ABTSと過酸化水素を加え37℃で30分間反応、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)により405nmの吸収を測定した。その結果図9に示すように、MMRP19の72位から87位(P8)および81位から98位(P9)のペプチドのみが3−4H7抗体に結合性を示し、残りのペプチドはほとんど結合活性を持たなかった。以上の結果より、MMRP19の3−4H7抗体に対するエピトープはMMRP19の72位から98位の中に存在することが示された。
実施例10:3−4H7抗体によるサイトカインの誘導パターン
96ウェルマイクロプレートに、1ウェルあたり5×104個/100μlのPica−RAW264.7細胞を藩種し、10%FBSを含むEMEM培地中で、37℃、5%CO2存在下培養した。この後、3−4H7抗体(終濃度60μg/ml)あるいはLPS(終濃度100ng/ml)で細胞を一晩刺激した。刺激後、まず上清を回収し、ELISAによる各種サイトカイン濃度測定に供するとともに、ルシフェラーゼ活性を測定することにより、G−CSF遺伝子誘導活性を検討した。コントロールには、抗体、LPSのいずれも含まない培地のみを添加した系を用いた。IL−1α、IL−1β、IL−6、TNF−α、GM−CSFの測定は市販のELISAキット(エンドジェン)を用いて行なった。その結果、表3に示したように3−4H7抗体は、G−CSFに対して比較的高い誘導倍率を示した(約60倍)。これに対し、他のサイトカイン誘導レベルは低いものであった(IL−6は約5.4倍、TNF−αは約5.1倍、IL−1α、IL−1βおよびGM−CSFについては有意な変化が検出できなかった。)。一方、LPSは、G−CSFの他、IL−1α、IL−1β、IL−6、TNF−α、GM−CSFも顕著に誘導した。
実施例11:サル由来細胞株COS7におけるヒト型MMR19cDNAの発現
精製したヒト型MMR19cDNA断片をプラスミドベクター(pCMV−Script)にライゲーションし、得られた組換えベクター(pCMV−Script MMR19)をヒートショック法で大腸菌XL10−Goldにトランスフェクトした。この大腸菌XL10−Goldで生産した組換えベクターを精製し、約20μgを高電圧パルス法によって、MMRP19のタンパク質非発現細胞であるサル由来細胞株COS7(1×107個)にトランスフェクトした。そして組換えベクターを導入した細胞をDulbecco’s modified Eagle’s mediumで2日培養した後、4℃で1時間1次抗体(3−4H7)と反応した。さらに反応した細胞をFITC−標識二次抗体で染色し、フローサイトメーター EPICS−ALTRA(Beckman Coulter社製)で解析した。
その結果、図10に示したように3−4H7が組換えベクターを導入した細胞に結合したことから、ヒト型MMRP19タンパク質は、マウスMMRP19タンパク質と同様、細胞表面に発現することが明らかになった。
実施例12: MMRP19タンパク質のRAW264.7細胞膜上への大量発現
まず精製したMMR19cDNAをDNAリガーゼによって発現ベクターpCMV−Script(Stratagene)の制限酵素Sca Iサイトに組みこみMMR19発現ベクターを作製した。発現ベクターのRAW264.7細胞への導入は高電圧パルス法(electroporation)により行った。すなわち2×107個のRAW264.7細胞を10μgのベクターを溶解した500μlのリン酸カリウム緩衝液中に懸濁しキュベットにいれ、Gene Pulser(Bio−Rad)を用いて500μF、300Vの高電圧パルスをかけることで細胞膜に小孔を短期間生じさせてベクターを細胞に導入した。つづいてパルス後の細胞を250mlのフラスコに播種し、10% FBS−EMEM培地中、37℃で72時間培養した。この後、培養培地中にgeneticinを終濃度1g/lとなるように添加してさらに2週間培養し、形質転換細胞をgeneticin耐性により選択した。さらにこれらの細胞の中から3−4H7抗体に反応性を示す細胞をフローサイトメトリーによって2回選択し、MMRP19タンパク質過剰発現RAW264.7(OE−RAW264.7)細胞を得た。
RAW264.7またはOE−RAW264.7細胞膜に発現しているMMRP19タンパク質のフローサイトメトリーによる解析は以下のようにして行った。すなわち、RAW264.7またはOE−RAW264.7細胞を100μl PBS中に細胞数が1.5×106個になるように調製し、それぞれに3−4H7抗体を加え(終濃度5μg/100μl)、4℃で1時間反応させた。これを5% FBS、0.05% NaN3を含むPBSで3回遠心洗浄した後、FITC蛍光標識した抗マウスIgM抗体を終濃度3μg/100μlとなるように細胞懸濁液に加え、さらに4℃遮光下で1時間反応させた。この後細胞を5% FBS、0.05% NaN3を含むPBSで5回遠心洗浄し、蛍光標識された細胞をフローサイトメトリー(EPICS ALTRA、ベックマンコールター社)によって検出、解析した。その結果図11に示したように、OE−RAW264.7細胞ではRAW264.7細胞に比較して過剰のMMRP19タンパク質を細胞膜に発現していることが示され、MMRP19は細胞膜タンパク質として発現されていることが明らかになった。
実施例13: マクロファージ系細胞での3−4H7抗体刺激によるG−CSF遺伝子誘導におけるMMRP19タンパク質過剰発現効果の検討
RAW264.7あるいはMMRP19タンパク質過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞を6ウエルマイクロプレートの各ウエルに1.5×106個ずつ(5×105個/ml)播種し、37℃、5%CO2存在下で一晩培養した。これに3−4H7抗体(終濃度50μg/ml)あるいはLPS(終濃度100ng/ml)を添加し、37℃、5%CO2存在下、3、6、9あるいは12時間刺激した。つづいてこれら3−4H7抗体あるいはLPSにより刺激したRAW264.7およびOE−RAW264.7細胞からGuanidium Thiocyanate/Phenol Chloroform Extraction法により全RNAを抽出し、逆転写酵素(MMLV−RTase)とDNAポリメラーゼを用いて全RNAよりcDNAを合成した。そして、マウスG−CSF遺伝子配列の中で121から138までに対するセンスプライマー(5’−GCTGTGGCAAAGTGCACT−3’)、537から520までに対するアンチセンスプライマー(5’−ATCTGCTGCCAGATGGTG−3’)を用いてRT−PCR反応を行った。その結果図12に示したように、RAW264.7細胞では3−4H7抗体刺激6時間後はじめて有意なG−CSF mRNA誘導が認められたのに対し、OE−RAW264.7細胞では3時間後すでにG−CSF mRNAが誘導が確認された。またLPSの刺激では、RAW264.7細胞あるいはOE−RAW264.7細胞とも、6時間後はじめてG−CSF mRNAが誘導された。このようにOE−RAW264.7細胞においてはRAW264.7細胞に比較して、同濃度の3−4H7抗体の刺激でより迅速にG−CSF mRNAの誘導が起こることが示された。しかしLPSによる刺激の場合、2つの細胞間でG−CSF mRNAの誘導に有意な差は認められなかった。以上の結果より、3−4H7抗体がMMRP19タンパク質に結合することによってG−CSF遺伝子が誘導されることが示唆された。またRAW264.7細胞あるいはOE−RAW264.7細胞において、3−4H7抗体の刺激によるG−CSF誘導に関わるシグナル伝達経路がLPSの刺激の場合と異なる可能性が示された。
実施例14: マクロファージ系細胞での3−4H7抗体刺激によるG−CSF分泌の酵素免疫学的検出とMMRP19タンパク質過剰発現効果の検討
RAW264.7あるいはMMRP19タンパク質過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞を5cmシャーレに1.5×106個/5mlずつ(3×105個/ml)播種し、37℃、5%CO2存在下で一晩培養した。これに3−4H7抗体(終濃度50μg/ml)を添加し、37℃、5%CO2存在下、9、12、18あるいは24時間刺激し、それぞれの時間に培養上清を100μlずつ採取した。この培養上清を96ウエルイムノプレート(Nunc社、MaxiSorp)に移し4℃で一晩固相化した後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄した。この後各ウエルに100μlずつウサギ血清を添加し室温で30分間インキュベーションすることでウエルをブロッキングし、やはり0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄した。そこに10μg/mlの濃度に調製した抗マウスG−CSFヤギ抗体(R&D社製)100μlを添加した後4℃で一晩インキュベーションし、0.05% Tween20を含むPBS 400μlで5回洗浄した。このプレートの各ウエルにさらにビオチン化した抗ヤギIgウサギ抗体溶液を100μlずつ加えて室温で1時間インキュベーションした後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄、100μlのアビジン−パーオキシダーゼ溶液を加えてさらに室温で30分間インキュベーションした後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで5回洗浄した。その後各ウエルに100μlのパーオキシダーゼ基質ABTS溶液を加えて室温で30分反応、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)により405nmの吸収を測定した。その結果図13に示すように、3−4H7抗体はRAW264.7あるいはMMRP19過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞において時間依存的にG−CSFの分泌を促進すること、またその活性はOE−RAW264.7細胞において有意に高いことが示された。これらの結果(実施例7・8・13も含めて)より、3−4H7抗体はマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、その細胞表面に存在するMMRP19タンパク質に結合、活性化しG−CSFを誘導、分泌させることが示唆された。
実施例15:ヒト細胞におけるMMRP19タンパク質ホモローグの機能解析
ヒト由来培養細胞であるHL−60細胞(理化学研究所)は10%FBSを含むRPMI1640培地中で細胞密度が1.5×105〜1.5×106細胞/mlとなるようにして、37℃、5%CO2存在下培養した。HL−60細胞の好中球様細胞への分化は500μMのdibutyryl cAMP(dbcAMP)で3日間処理することにより行った。またマクロファージ様細胞への分化は100μg/mlのphorbol 12−myristate 13−acetate(PMA)でやはり3日間処理することにより行った。
まず3−4H7抗体の細胞膜表面抗原の存在を未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞についてフローサイトメトリーを用いて検討した。その結果、3−4H7 mAb表面抗原はマクロファージ様分化HL−60細胞にのみ存在するが、未分化および好中球様分化HL−60細胞には存在しないことが示された。またヒト型MMRP19タンパク質の合成を未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞のlysateを調製し、3−4H7抗体を用いてWestern Blot解析した場合、あるいはRT−PCR法によって検出した場合も同様であった。以上の結果より3−4H7抗体抗原であるヒト型MMRP19タンパク質は、ヒト培養細胞であるHL−60細胞をPMAを用いてマクロファージ様に分化したときに発現することが示された。
つづいて3−4H7抗体のHL−60細胞におけるG−CSF誘導・分泌活性を検討した。すなわち未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞を終濃度60μg/mlの3−4H7抗体で18時間、37℃、5%CO2存在下刺激し、その培養上清に分泌されたG−CSFをG−CSFバイオアッセイ法(実施例8)および酵素免疫法(実施例14)によって検出した。またこの時の細胞に含まれるG−CSFをWestern Blotting法により検出するとともにRT−PCR法(実施例13)によりG−CSF mRNAを検出した。その結果、やはりマクロファージ様分化HL−60細胞の培養上清にのみG−CSFが分泌されていることが示された。以上の結果より3−4H7抗体はマクロファージ様に分化したHL−60細胞においても、ヒト型MMRP19タンパク質に結合、活性化し、G−CSFを誘導、分泌することが示唆された。
実施例16:3−4H7抗体(抗MMRP19抗体)によるG−CSF mRNAの発現誘導
<方法>
(1)正常マウスの骨髄細胞および腹腔マクロファージ細胞に対する3−4H7抗体の作用
BALB/cマウス(♂、7週齢)を用い、大腿骨および脛骨の骨髄細胞および腹腔マクロファージ細胞を採取した。21Gの針を付けた1mlのシリンジに冷ハンクス液を適当量含ませたものを用意し、摘出した大腿骨、頚骨に針先を骨腔の一端に刺し込み、骨髄細胞を2mLのチューブ内に回収した。また、1mlのシリンジに冷ハンクス液を適当量含ませたものを用意し、腹腔内を良く洗浄し、細胞懸濁PBS液を回収した。同操作を2回繰り返し、腹腔マクロファージを回収した。採取した骨髄細胞(1.5×106個)および腹腔マクロファージ細胞(5×105個)を採取し、37℃、5%CO2インキュベーターにて18時間静置した。静置した細胞に3−4H7抗体(1、2、5、10、20μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて6時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(10μg/ml)存在下において腹腔マクロファージ細胞内のG−CSF mRNA量が約6.5倍上昇した(図14)。なお、同時にLPS20ng/mlで刺激したところ、腹腔マクロファージ細胞内のG−CSFmRNAは約3.6倍上昇した(図14)。また、3−4H7抗体(10μg/ml)存在下において骨髄細胞内のG−CSFmRNA量が約3.2倍上昇した(図14)。なお、同時にLPS20ng/mlで刺激したところ、骨髄細胞内のG−CSFmRNAは約2.2倍上昇した(図14)。
(2)正常マウスの肝由来クッパー細胞に対する3−4H7抗体の作用
マウスをペントバルビタールにて麻酔後、肝臓を傷つけないように開腹し、腸を右に寄せ門脈と下大静脈を露出させ、門脈よりペリスタポンプを介して肝灌流液にて灌流し、肝臓を脱血した。コラゲナーゼ液にて肝臓内を処理した。肝臓を摘出し、10%FCS/RPMI1640/ペニシリン−ストレプトマイシン培地にて緩やかに肝臓を解した後、メッシュにて濾過し、50ml遠心チューブ内に回収した。550rpm,2min,4℃の条件にて遠心し、上清を回収した。この操作を2回繰り返した。1,500rpm,10min,4℃の条件にて遠心し、上清を除去し、残った細胞塊に、RPMI1640培地を10ml加え、細胞浮遊溶液とした。細胞懸濁液を37℃,5%CO2インキュベーター内にて1時間静置させ、RPMI1640培地にて3回洗浄し、クッパー細胞以外の非付着性の細胞を除去した。調製したクッパー細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)またはリポポリサッカライド(LPS、1μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて1、3、6時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(30μg/ml)刺激1時間後において、肝由来クッパー細胞内のG−CSF mRNA量が約5.2倍上昇した(図15)。なお、同時にLPS1μg/mlで1時間刺激したところ、肝由来クッパー細胞内のG−CSF mRNAは約4.4倍上昇した(図15)。
(3)正常マウス末梢血由来マクロファージ細胞に対する3−4H7抗体の作用 マウスの心臓より採血した血液に10%FCS/RPMI1640/ペニシリン―ストレプトマイシン培地、を等量加え、細胞浮遊液を調製した。15mlの遠心チューブにLymphoprep(Nycomed)を入れ、細胞浮遊液を静かに重層し、2,300rpm、20分、4℃にて遠心した。中間層を静かに回収し、回収した細胞浮遊液に3倍量の培地を加えて良く混和し、2,500rpm、5分、4℃にて遠心した。上清を除き、細胞塊を解してからRPMI1640培地を加え、1,500rpm、5分、4℃の条件にて遠心した。同操作を更に2回繰り返し、細胞をよく洗浄した。トリパンブルー溶液にて生細胞数を計数した。この細胞浮遊液(2x106個)を24穴プレートに播き、37℃,5%CO2インキュベーター内にて1時間静置させた。培地にて3回洗浄し、非付着性の細胞を除去した。M−CSF(30ng/ml)を各wellに添加し、37℃、5%CO2インキュベーターにて4日間培養した。調製したマクロファージ細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)またはLPS(1μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて15分および1時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(10μg/ml)はマクロファージ細胞内のG−CSF mRNA量を約4.6倍上昇させた(図16)。なお、同時にLPS 1μg/mlで1時間刺激したところ、マクロファージ細胞内のG−CSF mRNAは約5.4倍上昇した(図16)。
(4)Total RNAの調製
回収した細胞からRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてtotal RNAを抽出した。以上の操作はすべて室温で行なった。200μlのtotal RNAを10分間、65℃でインキュベートした後、氷冷した。
(5)マウスG―CSF mRNA量の測定
上記で調製したmRNA 10μlとTaq Man EZ RT−PCR CORE REAGENTS(Perkin Elmer)の試薬を96well Reaction Plate(Perkin Elmer)内で混和し、ABI Prism 7700(アプライドバイオシステム)を用いてmouse G―CSF mRNA定量を行った(サイクル数:40)。内部標準としてGAPDHを用いて、それぞれのmRNA量の補正を行った。使用したprimerは以下に記した。
ProbeとしてmG−CSF用にはSYBER GREEN登録商標を用い、mGAPDH用にはVic−CAGAAGACTGTGGATGGCCCCTC−Tamuraを用いた。
結果、3−4H7抗体投与3時間後において腹腔マクロファージ細胞のG−CSFmRNA量は未処置の細胞と比べ約9倍上昇した(図17)。
(6)シクロフォスファミド誘発骨髄抑制マウスに対する3−4H7抗体の作用 BALB/cマウス(♂、9週齢)24匹にシクロフォスファミド(25mg/ml)を10ml/kgにて腹腔内投与した(250mg/kg)。シクロフォスファミド投与3日後より3日間、3−4H7の溶媒のPBS−、3−4H7抗体溶液(0.42mg/ml)及びrhG−CSF(1μg/ml)を10ml/kgで1日1回腹腔内投与した。また、rhG−CSF(1μg/ml)を10ml/kgで1日1回皮下投与した。7日後に各マウスの眼底静脈からヘパリン採血管を使用して採血し(約40μl)、Sysmex F−800(シスメックス)にて血球数を測定した。また、同血液を用いて血液塗沫標本を作製し、メイ・グリュンワルド−ギムザ染色を行った。染色後顕微鏡下、白血球を5分類で200個識別カウントした。有意差検定は1−way ANOVAにて分散分析の成立を確認後、LSD testを行った。
結果、シクロフォスファミド投与7日目の白血球数及び好中球数が有意に増加した(図18)。また、陽性対照として用いたヒトG−CSF(10mg/kg)を同様に3日間腹腔内投与したところ、7日目の白血球数及び好中球数が有意に増加し、その増加量は3−4H7抗体投与による増加量とほぼ同程度であった(図18)。
産業上の利用の可能性
本発明の遺伝子、それがコードするタンパク質(上記遺伝子の断片および上記タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体、および物質(低分子を含む)は新規であり、医薬用途として有用である。
また、本発明の遺伝子、それがコードするタンパク質(上記遺伝子の断片および上記タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体は、顆粒球コロニー刺激因子の誘導・分泌能を有する物質など(例えば、モノクローナル抗体、タンパク質、その他の低分子物質など)をスクリーニングする際の分析試薬としても有用である。また、顆粒球コロニー刺激因子はエリスロポエチンによる赤芽球、インターロイキン3による芽球コロニーの形成の増強作用や白血球、赤血球、血小板等の血球増多(増強、増加)作用を示すことから、顆粒球コロニー刺激因子を誘導させるこれらの上記物質を使用することにより、顆粒球コロニー刺激因子の産生を促進する薬剤または顆粒球コロニー刺激因子に関する生物的活性を調節する薬剤として用いることが可能である。具体的には、顆粒球コロニー刺激因子を薬剤として直接投与することによる副作用を回避しつつ、好中球減少症、再生不良性貧血および/または白血球、赤血球若しくは血小板等の減少症等の治療、診断等をすることが期待できる。
また、本発明の遺伝子の断片は、他の生物由来のホモログ遺伝子をスクリーニングする際のプローブとしても有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1:3−4H7抗体及び抗MMRP19部分ペプチド抗体(APAs)のウエスタンブロット解析。
図2:MMRP19タンパク質のハイドロパシー図。横軸は、アミノ酸残基番号、縦軸は、ハイドロパシー・インデックス(Hydropathy Index)である。アミノ酸配列の中心部分の番号99から128は、MMRP19タンパク質の唯一の膜貫通(TM)ドメインであると考えられる。
図3:MMRP19の3種の部分ペプチドに対する各抗体のRAW264.7に対する反応性。RAW264.7におけるMMRP19タンパク質の細胞膜における配向性をフローサイトメトリーを用いて解析した結果を示した。横軸は、蛍光強度、縦軸は、細胞数である。APA1、APA2及びAPA3は抗ペプチド抗体を表す。
図4:3−4H7及び抗MMRP19部分ペプチド抗体(APAs)のG−CSF遺伝子誘導活性。MMRP19タンパク質のG−CSF遺伝子発現誘導への関与を示した。横軸は加えた抗MMRP19タンパク質抗体の濃度、縦軸は、G−CSF遺伝子発現誘導に対応するルシフェラーゼ活性である。●は3−4H7抗体、■は抗ペプチド抗体APA1、◆はAPA2、▲はAPA3を表す。ルシフェラーゼ活性は、コントロールを1としたときの値(Multiple Control)で表した。
図5:RAW264.7細胞における3−4H7抗体(A)及びLPS(B)によるG−CSF分泌刺激活性。横軸は、抗体濃度(μg/ml)またはLPS濃度(EU/ml)、縦軸は、G−CSF分泌活性(%/最大分泌)である。
図6:Pica−RAW264.7細胞における3−4H7抗体(A)及びLPS(B)によるG−CSF遺伝子誘導または分泌活性。横軸は、抗体濃度(μg/ml)またはLPS濃度(EU/ml)、縦軸は、G−CSF遺伝子誘導またはG−CSF分泌活性(%/最大分泌)である。●はG−CSF遺伝子誘導、○はG−CSF分泌活性を表す。
図7:RAW264.7細胞における3−4H7抗体によるG−CSF分泌量(n=6)。横軸は、3−4H7抗体の濃度(0、1、10μg/ml)を表す。縦軸は、G−CSF分泌量(pg/104個細胞)を表す。
図8:Pica−RAW264.7細胞における3−4H7抗体によるG−CSF分泌量(n=6)。横軸は、3−4H7抗体の濃度(0、1、10μg/ml)を表す。縦軸は、G−CSF分泌量(pg/104個細胞)を表す。
図9:MMRP19部分ペプチドを用いた3−4H7抗体のエピトープマッピング。横軸は、ペプチド断片の種類を表す。縦軸は、405mmにおける吸光度を表す。
図10:3−4H7抗体のCOS7細胞に対する反応性。サル由来細胞株COS7におけるヒト型MMR19遺伝子発現のフローサイトメトリーを示した。横軸は、蛍光強度(Fluorescence Intensity)、縦軸は、細胞数(Cell Numbers)である。Cは形質転換していないコントロールCOS7細胞、HMはヒト型MMRP19タンパク質を発現させたCOS7細胞をそれぞれ3−4H7抗体で染色したものを表す。
図11:MMRP19のRAW264.7細胞上への大量発現。RAW264.7細胞(形質転換していない細胞株)またはMMRP19過剰発現RAW264.7細胞(OE−RAW264.7;形質転換細胞)におけるヒト型MMR19遺伝子発現のフローサイトメトリーを示した。横軸は蛍光強度、縦軸は細胞数である。
図12:MMRP19タンパク質を大量発現させたOE−RAW264.7細胞におけるG−CSF産生誘導。数字は、刺激後の時間を表し、上段はG−CSF、下段はコントロールとしてのG3PDHのPCRにより増幅されたバンドを表す。
図13:MMRP19過剰発現細胞における3−4H7抗体刺激時のG−CSF分泌量の増加。RAW264.7細胞またはOE−RAW264.7細胞における3−4H7抗体刺激時のG−CSF分泌量を、ELISAにより検出した。横軸は時間、縦軸は405mmにおける吸光度(G−CSFの分泌量)を表す。
図14:腹腔マクロファージ細胞および骨髄細胞に対する3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。腹腔マクロファージ細胞(0.5×106個)あるいは骨髄細胞(1.5×106個)を18時間静置し、3−4H7抗体及びLPSを加え6時間培養した。6時間後、RNAをRNeasy kitにて抽出し、マウスG−CSF mRNAを定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図15:肝由来クッパー細胞に対する3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。マウス肝臓よりクッパー細胞を調製し、3−4H7抗体(10、30μg/ml)及びLPS(1μg/ml)を加え、1、3、6時間後にクッパー細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図16:マクロファージ細胞における3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。マウス付着性末梢単核球をマクロファージコロニー刺激因子(30ng/ml)にて4日間培養し、マクロファージ細胞へ分化させた。マクロファージ細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)及びLPS(1μg/ml)を加え、15分、1時間後にマクロファージ細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図17:3−4H7抗体投与による腹腔マクロファージ細胞のマウスG−CSF mRNA誘導作用。3−4H7抗体(4.2mg/kg)を腹腔内投与し、3、6、9時間後に腹腔マクロファージ細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図18:シクロフォスファミド誘発骨髄抑制マウスに対する3−4H7抗体の効果。マウスにシクロフォスファミド(250mg/kg)を腹腔内投与した。シクロフォスファミド投与開始3日後より3日間、溶媒、3−4H7抗体(4.2mg/kg)またはrhG−CSF(10μg/kg)を腹腔内投与した。陽性対照としてrhG−CSF(10μg/kg)を皮下投与した(N=6)。シクロフォスファミド投与開始7日後にマウスの眼窩静脈叢より採血し、末梢白血球数、赤血球数、血小板数をSysmex F−800にて測定した。また、同血液サンプルの塗沫標本をメイギュルンワルド−ギムザ染色し、好中球率を計数した。統計計算は1元配置分散分析後、LSDテストを行った。
本発明は、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体と反応性を有するタンパク質、それをコードする遺伝子、およびそれらの利用法に関する。
背景技術
顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony−stimulating factor:G−CSF)は、分子量は約18000から22000で、ヒトの場合174個(まれに178個)、マウスで178個のアミノ酸で構成されている、血液成分の白血球の一種である好中球の分化増殖を誘導する糖タンパク質である。
G−CSFは、成熟好中球の生存の延長や機能の亢進作用を有するが、エリスロポエチンによる赤芽球、インターロイキン3による芽球コロニーの形成も増強する。また、G−CSFは、白血球、赤血球、血小板等の血球増多(増強、増加)作用を示す。このようなG−CSFを産生する細胞としては、マクロファージ、ストローマ細胞、単球、Tリンパ球、繊維芽細胞、血管内皮細胞などが挙げられる。
G−CSFを薬剤として投与することは、抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症の治療及び再生不良性貧血の治療に効果を示す。しかし、投与時においては、血中安定性が低いために頻回投与を必要とし、しかも投与は静脈投与あるいは皮下投与に限られているために患者、医師の双方に苦痛と負担を強いられてきた。さらに、G−CSFを薬剤として投与すると、副作用として骨痛を起こすことが報告されている。また、G−CSFを産生する細胞としてのマクロファージやストローマ細胞を直接投与することは、細胞であるために種々のタンパク質や様々な物質を含んでいるために思わぬ副作用を起こす可能性があるため、そのような治療は行われていない。
上記の如く、G−CSF自体を投与することによって好中球を分化増殖させる方法では、副作用として骨痛を惹起することばかりでなく、頻回投与が必要であり、患者及び医師にも苦痛と負担を強いられてきたため、他の治療方法の開発が強く要望されているが、未だ確立されていない。
そこで、本発明者らは、G−CSF自体を投与するのではなく、G−CSFを産生させ、好中球を分化増殖させることを意図し、以前に、G−CSF誘導抗体を提供することに成功している(出願番号特願平9−266591(平成9年(1997)9月30日)、公開番号特開平11−106400(平成11年(1999)4月20日))。しかしながら、G−CSF誘導抗体が認識する抗原については今だ解明されていなかった。
発明の概要
本発明は、G−CSFを誘導・分泌する抗体の認識する抗原をコードする遺伝子として、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子を提供する。
発明の開示
本発明が解決しようとする課題の一つは、G−CSF誘導抗体の認識する抗原を特定することである。本発明が解決しようとする別の課題は、G−CSF誘導抗体の認識する抗原をコードする遺伝子をクローニングし、同定することである。
また、本発明は、そのような抗原タンパク質を詳細に解析し、該タンパク質がG−CSF遺伝子発現誘導ならびにG−CSF分泌に関与してることを明確にすることも課題とする。さらに、G−CSF産生を変化させる化合物をスクリーニングするための、該タンパク質を利用した一連の手順を提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、G−CSF誘導能を持つモノクローナル抗体をプローブとして使用し、マクロファージ細胞由来のcDNAライブラリーをイムノスクリーニングした結果、陽性クローンの単離に成功し、さらにその塩基配列を決定することにより本発明を提供するに至った。さらに、本発明者らは、ヒト型の抗原遺伝子の塩基配列を決定した。
すなわち、本発明によれば、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子が提供される。
また、本発明によれば、(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:をコードする遺伝子が提供される。
さらに、本発明によれば(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列;(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;を有する遺伝子が提供される。
また、本発明によれば(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列;(b)配列表の配列番号3において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;を有する遺伝子が提供される。
上記において、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体は、例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である。
本発明の遺伝子は例えば、マウスまたはヒト由来の遺伝子である。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:の何れかを含むDNA断片が提供される。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:の何れかを含み、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする遺伝子が提供される。
さらに本発明によれば、下記の何れかのタンパク質:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:が提供される。
また、本発明によれば、下記の何れかのタンパク質:(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または(d)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:が提供される。
上記において、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体は、例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である。
本発明のタンパク質は好ましくは哺乳動物、特に好ましくは、マウスまたはヒト由来のタンパク質である。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:の何れかを含むタンパク質が提供される。
さらに本発明によれば、(1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:の何れかを含み、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質が提供される。
さらに本発明によれば、上記した本発明のタンパク質に対する抗体またはそのフラグメントが提供される。抗体は好ましくはモノクローナル抗体であり、特に好ましくはヒト型モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターが提供される。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターを含む形質転換体が提供される。
さらに本発明により、顆粒球コロニー刺激因子を誘導・分泌させることができる新規の受容体またはその一部(本発明のタンパク質)が提供される。
さらに本発明によれば、本発明のタンパク質を利用した有用な物質(例えば、当該タンパク質に対するアゴニスト、アンタゴニスト)のスクリーニング方法およびそのスクリーニング方法により得られた物質、ならびに受容体に結合することのできる有用な物質(例えば、当該受容体に対するアゴニスト、アンタゴニスト)が提供される。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子、DNA断片、タンパク質(タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体、物質(低分子化合物を含む)を含む医薬組成物(特には、感染症、好中球減少症または赤血球、白血球若しくは血小板等の血球減少症の診断、予防または治療のための医薬組成物)、それらを用いた治療方法が提供される。
以下において、本発明の実施態様および実施方法について詳細に説明する。
本発明に先だち、本発明者らは、マクロファージ自体を免疫して抗体を取得し、得られた抗体の中からG−CSFを誘導する抗体の単離に成功している(特願平9−266591;この明細書に記載の内容は全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。本発明の遺伝子は、この抗体をプローブとして用いてマウスマクロファージ由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離されたものであり、本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質は、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有することを特徴とする。
<顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメント>
先ず、本明細書で言う「顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメント」(本明細書中以下において、「本発明で用いる抗体」とも称する)について、その入手方法などについて説明する。
本発明者らは、まず、マウスマクロファージ細胞株を免疫原としてMRL/lprマウス(自己免疫疾患マウス)に投与し、モノクローナル抗体の単離を行った。次いで、得られたモノクローナル抗体を、免疫原細胞であるマウスマクロファージ細胞株に作用させ、該抗体の免疫原細胞に与える影響を検討した結果、得られた抗体の一つが免疫原細胞株であるマウスマクロファージ細胞株から濃度依存的にG−CSFを誘導させる特性を有することを見い出した(この抗体を産生するハイブリドーマは国際寄託番号FERM BP−6103として寄託されている)。
本明細書中で「モノクローナル抗体」とは、マクロファージ細胞株に反応性を有するモノクローナル抗体であり、具体的には、G−CSFを産生させる作用を有するモノクローナル抗体である。
本発明で用いる抗体は、マクロファージ細胞株に実質的に結合するという特性を有する。本発明で用いる抗体には、上記性質を有するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を共に包含する。また、「モノクローナル抗体」には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなるいずれのイムノグロブリンクラスに属するモノクローナル抗体をも包含し、好適には、IgGまたはIgMイムノグロブリンクラスモノクローナル抗体である。
なお、マクロファージ細胞株は、例えば、自然発生の白血病細胞から調製したり、白血病ウイルスによる形質転換から調製することが可能である。
本発明で用いる抗体は常法(例えば、文献「続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、日本生化学会編:東京化学同人発行、等」に記載の方法)に従って取得することができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。すなわち、抗体産生細胞と骨髄腫系細胞から融合ハイブリドーマを形成し、当該ハイブリドーマをクローン化し、マクロファージ細胞株の全部または一部を抗原として、それに対して特異的親和性を示す抗体を生産するクローンを選択することによって製造される。その操作は免疫抗原としてマクロファージ細胞株の全部または一部を使用する以外は、従来既知の手段を用いることができる。
免疫抗原は、例えばマクロファージ細胞株そのものを用いるか、マクロファージ細胞株の膜画分若くは溶解抽出液の全部または一部を、必要に応じて、例えば完全フロインドアジュバンドなどと混和して調製される。免疫の対象として用いられる動物しては、マウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等の哺乳動物、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスが例示される。免疫は、これらの哺乳動物の皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内、または腹腔内に1乃至数回注射することにより行われる。
通常、初回免疫から約1〜2週間毎に1〜4度免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行って、最終免疫より約3〜5日後に免疫感作された動物から抗体産生細胞が採取される。
本発明で用いるモノクローナル抗体には、「国際寄託番号FERM BP−6103」のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(3−4H7抗体)若しくはそのフラグメントまたは該抗体と実質的に同一の性状を有する抗体が含まれる。「3−4H7抗体」は、細胞からのG−CSF産生能を有する。
本発明で用いるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法で調製することが可能である。公知の方法としては、例えば、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製には、ケーラー及びミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,pp.495−497,1975)及びそれに準じる修飾方法が挙げられる。すなわち、モノクローナル抗体は、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくは同種のマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒトの骨髄腫系細胞(ミエローマ)との融合により得られる融合細胞(ハイブリドーマ)を培養することにより調製される。培養は、インビトロ、またはマウス、ラット、モルモット、ハムスター若しくはウサギ等の哺乳動物、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中等でのインビボで行うことができ、抗体はそれぞれ該培養上清、または哺乳動物の腹水から取得することができる。
細胞融合に用いられる骨髄腫系細胞としては、例えばマウス由来ミエローマ「P3/X63−AG8」、「P3/NS1/1−Ag4−1」、「P3/X63−Ag8.U1」、「SP2/0−Ag14」、「PAI」、「FO」または「BW5147」、ラット由来ミエローマ「210RCY3−Ag1.2.3」、ヒト由来ミエローマ「U−266AR1」、「GM1500−6TG−A1−2」、「UC729−6」、「CEM−AGR」、「D1R11」又は「CEM−T15」などを挙げることができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体を産生する融合細胞クローンのスクリーニングは、融合細胞を、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の抗原に対する反応性を、例えば、フローサイトメトリー、RIAやELISA等の酵素抗体法によって測定することにより行うことができる。
基本培地としては、例えば、Ham’F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地などの低カルシウム培地、MCDB104培地、MEM培地、D−MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地などの高カルシウム培地などが挙げられる。該基本培地には、目的に応じて、例えば、血清、ホルモンサイトカインおよび/または各種の無機または有機物質などを含有させることができる。モノクローナル抗体の単離、精製は上述の培養上清または腹水を硫酸アンモニウム沈殿法、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52など)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインA若くはプロテインGカラム等のアフィニティーカラムクロマトグラフィーに付すること、疎水クロマトグラフィーに付することなどにより行うことができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体は、上述の製造方法に限定されることなく、いかなる方法で得られたものであってもよい。また、通常「モノクローナル抗体」は、免疫感作を施す哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる構造の糖鎖を有するが、本発明で用いる「モノクローナル抗体」は該糖鎖の構造差異により限定されるものではなく、あらゆる哺乳動物由来のモノクローナル抗体をも包含するものである。ファージディスプレイでつくられるモノクローナル抗体、さらに、例えばヒトイムノグロブリン遺伝子を組み込むことにより、ヒト型抗体を産生するように遺伝子工学的に作出されたトランスジェニックマウスを用いて得られるヒト型モノクローナル抗体、あるいは、遺伝子組換え技術により、ある哺乳動物由来のモノクローナル抗体の定常領域(Fc領域)をヒトモノクローナル抗体のFc領域と組み換えたキメラモノクローナル抗体、さらには抗原と相補的に直接結合し得る相補性決定部位(CDR:complementarity−determining residue)以外、全領域をヒトモノクローナル抗体の対応領域と組換えたヒト化モノクローナル抗体も本発明で用いる「モノクローナル抗体」に包含される。
また、本発明においては「抗体のフラグメント」を使用してもよく、ここで言う、「抗体のフラグメント」とは、少なくとも一つの可変領域を含有する抗体フラグメントの意であり、特願平9−266591にいう「抗体の一部」と同義である。具体的にはFv、F(ab’)2、Fab’あるいはFabを指す。ここで、「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントをそれぞれFab’という。また、IgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質は、上記詳述したような顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有することを特徴とする。本明細書中で言う「結合性」とは、タンパク質と抗体との間の通常の結合性を意味し、慣用的な免疫学的分析法(例えば、免疫沈降法、ELISA法、イムノブロット法など)を用いて測定できる。
<本発明の遺伝子>
本発明は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子を提供する。本発明はまた、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはそれと相同性を有する塩基配列を有する遺伝子を提供する。
本発明の遺伝子の種類は特に限定されず、天然由来のDNA、組み換えDNA、化学合成DNAの何れでもよく、またゲノミックDNAクローン、cDNAクローンの何れでもよい。
本発明の遺伝子は典型的には、配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するが、これは本発明の一例を示すにすぎない下記の実施例で得られたクローン(MMR19)の塩基配列である。天然の遺伝子の中にはそれを生産する生物種の品種の違いや、生態系の違いに起因する少数の変異やよく似たアイソザイムの存在に起因する少数の変異が存在することは当業者に周知である。従って、本発明の遺伝子は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有する遺伝子のみに限定されるわけではなく、本明細書に記載した特徴を有するタンパク質をコードする全ての遺伝子を包含する。
本明細書で塩基配列について「1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数の塩基が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。
特に、本明細書により本発明のタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするDNA配列が開示されれば、この配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションや、PCRという遺伝子工学の基本的手法を用いて、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を容易に単離することができる。このような場合、そのような遺伝子も本発明の範囲に含まれる。
相同遺伝子のスクリーニングのために使用するハイブリダイゼーションの条件は特に限定されず、目的の相同遺伝子とプローブとの相同性の度合いなどにより当業者ならば適宜選択することができるが、一般的にはストリンジェントな条件が好ましく、例えば、6×SSC[0.9MのNaCl、0.09Mのクエン酸ナトリウム(pH7.0)]、5×デンハルト(Denhardt’s)溶液[1000mL中に1gフィコール、1gポリビニルピロリドン、1gBSA]、0.5%SDS、25℃〜68℃(例えば37℃、42℃または68℃);あるいは0〜50%ホルムアミド、6×SSC、0.5%SDS、25〜68℃(例えば37℃、42℃または68℃)などのハイブリダイゼーション条件を使用することが考えられる。ホルムアミド濃度、デンハルト溶液濃度、塩濃度及び温度などのハイブリダイゼーション条件を適宜設定することによりある一定の相同性以上の相同性を有する塩基配列を含むDNAをクローニングできることは当業者に周知であり、このようにしてクローニングされた相同遺伝子は全て本発明の範囲の中に含まれる。
上記のようなハイブリダイゼーションを使用してクローニングされる相同遺伝子は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する。
<本発明のタンパク質>
本発明は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質を提供する。
本発明の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、それをコードする遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、それを適当な宿主に形質転換して組み換えタンパク質を発現させることによって得ることができる。しかしながら、本発明のタンパク質は、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法などは限定されず、天然産のタンパク質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現させたタンパク質、あるいは化学合成タンパク質の何れでもよい。
本発明のタンパク質は典型的には、配列表の配列番号1に記載の241個のアミノ酸配列を有する。しかし、天然のタンパク質の中にはそれを生産する生物種の品種の違いや、生態型の違いによる遺伝子の変異、あるいはよく似たアイソザイムの存在などに起因して1から複数個のアミノ酸変異を有する変異タンパク質が存在することは周知である。なお、ここで言う「アミノ酸変異」とは、1以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加などを意味する。本発明のタンパク質は、クローニングされた遺伝子の塩基配列からの推測に基づいて、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するが、その配列を有するタンパク質のみに限定されるわけではなく、本明細書中に記載した特性を有する限り全ての相同タンパク質を含むことが意図される。相同性は少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
一般的に、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、疎水性アミノ酸同士の置換、親水性アミノ酸同士の置換、酸性アミノ酸同士の置換または塩基性アミノ酸同士の置換)を導入した場合、得られる変異タンパク質は元のタンパク質と同様の性質を有することが多い。遺伝子組換え技術を使用して、このような所望の変異を有する組換えタンパク質を作製する手法は当業者に周知であり、このような変異タンパク質も本発明の範囲に含まれる。
本明細書でアミノ酸配列について「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数のアミノ酸が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。また本明細書でアミノ酸配列について「相同」というときは、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いている。このとき、ギャップの存在及びアミノ酸の性質が考慮される(Wilbur,Proc,Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730(1983)等)。相同性の計算には、市販のソフトであるBLAST(Altschul:J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Peasron:Methods in Enzymology 183:63−69(1990))、Genetyx−Mac(ソフトウエア開発社製)等を用いることができる。
本明細書の以下の実施例では本発明の一例を示すものとして、マウスマクロファージ由来のcDNAのクローニングが示されている。本明細書中に開示されたタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の配列(マウス由来)またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションまたはPCRなどの遺伝子工学的手法を用いて、他の起源などから同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を単離することは当業者の通常の知識の範囲内のことであり、そのようにして単離された遺伝子によりコードされるタンパク質も本発明の範囲に含まれる。
<ヒト型の遺伝子およびタンパク質>
例えば、本発明の遺伝子およびタンパク質に関してヒト由来のホモログを得るための方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
ヒトマクロファージ系細胞株(THP−1、U937、HL−60)から、グアニジウムチオシアネート/フェノールクロロホルム・シングルステップ抽出法(ラボマニュアル遺伝子工学、第3版、第83〜84頁、1996)によって、全RNAを抽出し、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いて精製して、ポリA+RNAを得る。逆転写酵素(MMLV−RTase)とDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖cDNAを合成する。この二本鎖cDNAを用いて、Gubler−Hoffmannの方法(Gubler,U.及びHoffmann,B.,J.:Gene,25:263−269,1983)によって、λZAPIIファージベクターを用いてcDNAライブラリーを構築する。本明細書に開示したマウスcDNA(MMR19クローン)の塩基配列(配列番号1)の中でヒトと高い相同性を有する領域(例えば、ヒトと91%の相同性が認められた配列番号1中の172番目から241番目の領域)内の配列を増幅できるプライマーを用いてヒトマクロファージ細胞のcDNAライブラリーを鋳型として増幅させたDNA配列をプローブとして、あるいはこの領域(例えば、配列番号1中の172番目から241番目の領域)を直接プローブとして用いて、ヒトマクロファージ細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって目的タンパク質の全長をコードするcDNAを単離する。Primer Walking法によって、cDNAの塩基配列を解析する。目的タンパク質の全長をコードすることが確認されたcDNAをバキュロウイルスに導入し、タンパク質として発現させ、アフィニティカラムによりタンパク質を精製することによりヒト型ホモログタンパク質を得ることができる。
上記したように、本発明は、配列番号1に記載の塩基配列または配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する遺伝子とタンパク質、ならびにこれらと相同性を有する遺伝子とタンパク質に関するものである。本発明により提供される配列番号1に記載の塩基配列および配列番号2に記載のアミノ酸配列と相同性を有する配列が、他の生物中にも存在するか否かを検索した結果、ヒトのEST(expressed sequence tag)の中に本発明の遺伝子と相同性の高いものが存在することが確認された(以下の実施例3を参照)。従って、このような本発明の塩基配列と高い相同性を有するヒト由来のESTをプローブとして用いてヒト由来の遺伝子ライブラリー(cDNAライブラリーなど)をスクリーニングすることによっても、ヒト由来のホモログ遺伝子を単離できることは明らかである。
上記した通り、本発明の配列番号1記載の塩基配列の一部分(即ち、DNA断片)が、ヒトにおいても高い相同性を有して保存されていることがデータベース検索の結果、明らかとなった。このようなDNA断片は、上記したようにヒト由来のホモログ遺伝子をスクリーニングする際のプローブとして有用であり、本発明の一側面を形成する。そのようなDNA断片としては、配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列の何れかを含むDNA断片が挙げられ、さらにこれらの何れかにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;またはこれらの何れかと少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列を含むDNA断片も本発明の範囲内である。
また、本発明の配列番号2記載のアミノ酸配列の一部分が、ヒトにおいても高い相同性を有して保存されていることがデータベース検索の結果、明らかとなった。このような本発明のタンパク質の一部から成るタンパク質断片は、本発明のタンパク質と同様、G−CSF誘導・分泌活性を有する抗体の分析または単離のための試薬として有用であり、また本発明のタンパク質と同様、医薬としても有用である可能性があり、本発明の一側面を形成する。
このようなタンパク質としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列の何れかを含むタンパク質が挙げられ、さらにこれらの何れかにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;またはこれらの何れかと少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列の何れかを含むタンパク質も本発明の範囲内である。
本発明者らは、上述したものと類似の方法により、ヒト型の抗原遺伝子の塩基配列を決定した(以下の実施例5を参照)。従って、本発明は、配列表の配列番号3に記載の塩基配列またはそれと相同性を有する塩基配列を有する遺伝子を提供する。本発明はまた、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質を提供する。ここで言う相同性の意味、即ち、本発明の範囲が、配列番号3に記載の塩基配列を有する遺伝子または配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に限られないことは、本明細書「本発明の遺伝子」または「本発明のタンパク質」の項で説明したとおりである。
<本発明の抗体>
本発明は、上記した本発明のタンパク質に対する抗体(本明細書中以下において、「本発明のモノクローナル抗体」とも称される)を提供する。以下、本発明の抗体の実施態様および入手方法について詳細に説明する。
本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体の場合にはキメラ抗体でもよく、特にはマウス/ヒトキメラ抗体が好ましい。「モノクローナル抗体」には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなるいずれのイムノグロブリンクラスに属するモノクローナル抗体をも包含し、好適には、IgGまたはIgMイムノグロブリンクラスモノクローナル抗体である。
抗原となる本発明のタンパク質は、それをコードする遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、それを適当な宿主に形質転換して組み換えタンパク質を発現させることによって得ることができる。また、免疫抗原として、例えばマクロファージ細胞株そのもの、マクロファージ細胞株の膜画分を用いることができる。
本発明のポリクローナル抗体(抗血清)あるいはモノクローナル抗体などの抗体は常法(例えば、文献「続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、日本生化学会編:東京化学同人発行、等」に記載の方法)に従って取得することができる。
即ち、例えば、抗原を必要に応じてフロイントアジュバンド(Freund’s Aduvand)とともに、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウマあるいはウシ、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギに免疫する。ポリクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た血清から取得することができる。また、モノクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することにより製造することができる。
モノクローナル抗体は、具体的には以下のようにして製造することができる。即ち、本発明のタンパク質あるいは本発明のタンパク質を発現している細胞等を免疫原として用い、必要に応じてフロイントアジュバンド(Freund’s Adjuvant)とともに、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギ、好ましくはマウス、ラットまたはハムスター(これらの動物にはヒト抗体産生トランスジェニックマウスのような他の動物由来の抗体を産生するように作出されたトランスジェニック動物を含む)の皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内または腹腔内に1乃至数回注射するか、あるいは移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1日乃至14日毎に1乃至4回免疫を行って、最終免疫より約1乃至5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
本発明のモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法で調製することが可能である。公知の方法としては、ケーラー及びミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,pp.495−497,1975)及びそれに準じる修飾方法が挙げられる。すなわち、本発明のモノクローナル抗体は、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくは同種のマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒト由来の骨髄腫系細胞(ミエローマ)との融合により得られる融合細胞(ハイブリドーマ)を培養することにより調製される。
細胞融合に用いられる骨髄腫系(ミエローマ)細胞としては、例えばマウス由来ミエローマ「P3/X63−AG8」、「P3/NS1/1−Ag4−1」、「P3/X63−Ag8.U1」、「SP2/0−Ag14」、「X63,653」、「PAI」、「FO」または「BW5147」、ラット由来ミエローマ「210RCY3−Ag1.2.3」、ヒト由来ミエローマ「U−266AR1」、「GM1500−6TG−A1−2」、「UC729−6」、「CEM−AGR」、「D1R11」又は「CEM−T15」などを挙げることができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生する融合細胞クローンのスクリーニングは、融合細胞を、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の抗原に対する反応性を、例えば、フローサイトメトリー、RIAやELISA等によって測定することにより行うことができる。
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロ、またはマウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギなど、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中などでのインビボで行い、得られた培養上清、または哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。インビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法などの種々の条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持および保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
基本培地としては、例えば、Ham’F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地などの低カルシウム培地、MCDB104培地、MEM培地、D−MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地などの高カルシウム培地などが挙げられる。該基本培地には、目的に応じて、例えば、血清、ホルモンサイトカインおよび/または各種の無機または有機物質などを含有させることができる。モノクローナル抗体の単離、精製は上述の培養上清または腹水を硫酸アンモニウム沈殿法、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52など)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインA若くはプロテインGカラム等のアフィニティーカラムクロマトグラフィーに付すること、疎水クロマトグラフィーに付することなどにより行うことができる。
本発明における「キメラ抗体」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、例えば、その可変領域がマウスイムノグロブリン由来の可変領域であって、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であることを特徴とするマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体などのキメラモノクローナル抗体を意味する。ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなどのアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明における組換えキメラモノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグロブリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。本発明におけるキメラモノクローナル抗体は、例えば、以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものではないことは言うまでもない。
例えば、マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体は、実験医学(臨時増刊号)、第1.6巻、第10号、1988年および特公平3−73280号公報等を参照しながら作製することができる。即ち、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから単離した該モノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性名VH遺伝子(H鎖可変領域をコードする再配列されたVDJ遺伝子)の下流にヒトイムノグロブリンをコードするDNAから取得したCH遺伝子(H鎖定常領域をコードする遺伝子)を、また該ハイブリドーマから単離したマウスモノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性なVL遺伝子(L鎖可変領域をコードする再配列されたVJ遺伝子)の下流にヒトイムノグロブリンをコードするDNAから取得したCL遺伝子(L鎖定常領域をコードする遺伝子)を、各々発現可能なように配列して1つ又は別々の発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。
具体的には、まず、マウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから常法によりDNAを抽出後、該DNAを適切な制限酵素(例えばEcoRI、HindIII等)を用いて消化し、電気泳動に付して(例えば0.7%アガロースゲル使用)サザンプロット法を行なう。泳動したゲルを例えばエチジウムブロマイド等で染色し、写真撮影後、マーカーの位置を付し、ゲルを2回水洗し、0.25MのHCl溶液に15分浸す。次いで、0.4NのNaOH溶液に10分間浸し、その間緩やかに振盪する。常法により、フィルターに移し、4時間後フィルターを回収して2×SSCで2回洗浄する。フィルターを十分乾燥した後、ベイキング(75℃、3時間)を行なう。ベイキング終了後に、該フィルターを0.1×SSC/0.1%SDS溶液に入れ、65℃で30分間処理する。次いで、3×SSC/0.1%SDS溶液に浸す。得られたフィルターをプレハイブリダイゼーション液と共にビニール袋に入れる。65℃で3〜4時間処理する。
次に、この中に32P標識したプローブDNA及びハイブリダイゼーション液を入れ、65℃で12時間程反応させる。ハイブリダイゼーション終了後、適切な塩濃度、反応温度及び時間(例えば、2×SSC、0.1%SDS溶液、室温、10分間)のもとで、フィルターを洗う。該フィルターをビニール袋に入れ、2×SSCを少量加え、密封し、オートラジオグラフィーを行なう。上記サザンブロット法により、マウスモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖を各々コードする再配列されたVDJ遺伝子及びVJ遺伝子を同定する。この方法を用いて同定したDNA断片を含む領域を塩化セシウム密度勾配遠心にて分画し、ファージベクター(例えば、charon4A、charon28、λEMBL3、λEMBL4等)に組込み、該ファージベクターで大腸菌(例えば、LE392、NM539等)を形質転換し、ゲムノライブラリーを作製する。そのゲムノライブラリーを適当なプローブ(H鎖J遺伝子、L鎖(κ)J遺伝子等)を用いて、例えばベントンデイビス法(サイエンス(Science)、第196巻、第180〜第182頁(1977))に従って、プラークハイブリダイゼーションを行い、再配列されたVDJ遺伝子或いはVJ遺伝子を各々含むポジティブクローンを得る。得られたクローンの制限酵素地図を作成し、塩基配列を決定し、目的とする再配列されたVH(VDJ)遺伝子或いはVL(VJ)遺伝子を含む遺伝子が得られていることを確認する。
一方、キメラ化に用いるヒトCH遺伝子及びヒトCL遺伝子を別に単離する。例えば、ヒトIgG1とのキメラ抗体を作製する場合には、CH遺伝子であるCγ1遺伝子とCL遺伝子であるCκ遺伝子を単離する。これらの遺伝子はマウス免疫グロブリン遺伝子とヒト免疫グロブリン遺伝子の塩基配列の高い相同性を利用してヒトCγ1遺伝子及びヒトCκ遺伝子に相当するマウスCγ1遺伝子及びマウスCκ遺伝子をプローブとして用い、ヒトゲノムライブラリーから単離することによって得ることができる。
具体的には、例えば、クローンIg146(プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第75巻、第4709〜第4713頁(1978))からの3kbのHindIII−BamHI断片とクローンMEP10(プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第78巻、第474〜第478頁(1981))からの6.8kbのEcoRI断片をプローブとして用い、ヒトのλCharon4AのHaeIII−AluIゲムノライブラリー(セル(Cell)、第15巻、第1157〜1174頁(1978))中からヒトκ遺伝子を含み、エンハンサー領域を保持しているDNA断片を単離する。また、ヒトCγ1遺伝子は、例えば、ヒト胎児肝細胞DNAをHindIIIで切断し、アガロースゲル電気泳動で分画した後、5.9kbのバンドをλ788に挿入し、前記のプローブを用いて単離する。
このようにして得られたマウスVH遺伝子とマウスVL遺伝子、及びヒトCH遺伝子とマウスCL遺伝子を用いて、プロモーター領域及びエンハンサー領域などを考慮しながらマウスVH遺伝子の下流にヒトCH遺伝子を、またマウスVL遺伝子の下流にヒトCH遺伝子を、適切な制限酵素及びDNAリガーゼを用いて、例えば、pSV2gpt或いはpSV2neo等の発現ベクターに常法に従って組込む。この際、マウスVH遺伝子/ヒトCH遺伝子とマウスVL遺伝子/ヒトCL遺伝子のキメラ遺伝子は、一つの発現ベクターに同時に配置されてもよいし、各々別個の発現ベクターに配置することもできる。
このようにして作製したキメラ遺伝子挿入発現ベクターを、例えばP3X63・Ag8・653細胞或いはSP2/0細胞といった、自らは抗体を産生していない骨髄腫細胞にスフェロプラスト融合法、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法或いはエレクトロポレーション法等により導入する。形質転換細胞は、発現ベクターに導入された薬物耐性遺伝子に対応する薬物含有培地中での培養により選別し、目的とするキメラモノクローナル抗体産生細胞を取得する。このようにして選別された抗体産生細胞の培養上清中から目的のキメラモノクローナル抗体を取得する。
本発明における「ヒト型抗体(CDR−grafted抗体)」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には例えば、その超可変領域の相補性決定領域の一部又は全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域の相補性決定領域であり、その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン領域であることを特徴とするヒト型モノクローナル抗体を意味する。
ここで、超可変領域の相補性決定領域とは、抗体の可変領域中の超可変領域に存在し、抗原と相補的に直接結合する部位である3つの領域(CDR:complementarity−determining region;CDR1、CDR2、CDR3)を指し、また可変領域の枠組領域とは、該3つの相補性決定領域の前後に介在する比較的保存された4つの領域(Framework;FR1、FR2、FR3、FR4)を指す。換言すれば、例えばマウスモノクローナル抗体の超可変領域の相補性決定領域の一部又は全部以外の全ての領域が、ヒトイムノグロブリンの対応領域と置き換わったモノクローナル抗体を意味する。ヒトイムノグロブリンの対応領域由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明におけるヒト型モノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグロブリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。また、ヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域についても限定されるものではない。
本発明におけるヒト型モノクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する組換ヒト型モノクローナル抗体は、特表平4−506458号公報及び特開平62−296890号公報等を参照して、遺伝子工学的に作製することができる。ヒト化抗体の作製は、まず目的とするモノクローナル抗体のV領域アミノ酸配列とホモロジーの高いヒトVHおよびVLを選び、コンピュータモデリングによりCDRの高次構造に影響するFR領域のアミノ酸残基を検索して選択し、マウス由来のCDR(ごく一部のFR配列を含む)とヒト由来のFR領域配列からなるVHおよびVL領域の全アミノ酸配列をデザインする。C領域としては希望するヒト抗体のクラス・サブクラスを選ぶ。VHおよびVL遺伝子は、化学合成法やPCR法あるいはsite−directedmutagenesis法などで作製する。このように設計したマウス抗体のH鎖およびL鎖のV領域遺伝子を、プロモーター領域およびエンハンサー領域などを考慮して、それぞれヒトのH鎖およびL鎖のC領域遺伝子につなぎ、発現ベクターにそれぞれ組み込んで、細胞に導入して発現させる。発現ベクターとしてはpSV2gptやpSB2neoなどがよく用いられるが、1本の発現ベクターで発現させてもよい。つづいて免疫グロブリン非産生株であるマウスミエローマSp2/0などへ導入して発現分泌させる。ミエローマ以外の動物細胞や昆虫細胞、あるいは酵母や大腸菌で産生させてもよい。
本発明における「ヒト抗体」とは、イムノグロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域ならびにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。ヒト抗体は、常法に従って、例えば少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物を、抗原或いは免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体或いはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。例えば、ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスは、ネイチャージェネティックス(Nature Genetics)、第7巻、第13〜21頁、1994年;特表平4−504365号公報;国際出願公開WO94/25585号公報;日経サイエンス、6月号、第40〜50頁、1995年;ネイチャー(Nature)、第368巻、第856〜859頁、1994年及び特表平6−500233号公報に記載の方法に従って作製することができる。
本発明において「抗体の一部」または「抗体のフラグメント」とは、少なくとも一つの可変領域を含有する抗体フラグメントの意であり、前述の本発明における抗体、好ましくはモノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはFv、F(ab’)2、Fab’あるいはFabを指す。ここで、「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領城中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントをそれぞれFab’という。また、IgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
<組換えベクターおよび形質転換体>
本発明はさらに、本発明の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターを提供する。
組み換えベクターは、簡便には当業界において入手可能な組み換え用ベクター(例えば、プラスミドDNAなど)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとしては、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
所望のタンパク質を生産する目的においては、特に、発現ベククーが有用である。発現ベクターの種類は、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
プラスミドなどのベクターに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,(second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory,1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組み換えベクター(例えば、組み換えプラスミド)は、以下に記載するような方法で宿主細胞に導入することができる。
本発明の組み換えベクターを宿主細胞に導入(形質転換または形質移入)する方法としては、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、「Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,(second edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.74(1989)」に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。あるいはまた、例えば、宿主細胞が細菌(E.coil、Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science,227,129(1985)]、エレクトロポレーション法[Nature,319,791(1986)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156−2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。
形質転換体を作製する際に使用する宿主細胞としては、本発明の組み換えベクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然の細胞、または人工的に樹立された組み換え細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)などの原核細胞、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)などの単細胞性宿主を含む下等真核性細胞、カイコなどの高等真核性細胞などが挙げられる。宿主細胞は、大腸菌、酵母、昆虫細胞などが好ましく、具体的には、大腸菌(M15、JM109、BL21等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)、昆虫細胞(BmN4、カイコ幼虫など)などが例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、アフリカツメガエル由来、ラット由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターおよび複製可能単位から構成される。宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合には、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター、関始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを合んでいることが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E.coilではブラスミドpQE30、pETまたはpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pETまたはpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等があげられる。
エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシン若しくはネオマイシン、ハイグロマイシン、スペクチノマイシンまたはクロラムフェニコール等の抗生物質の耐性遺伝子などが例示される。
発現ベクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。
<受容体、スクリーニング方法>
本発明の遺伝子がコードするタンパク質はG−CSF誘導・分泌刺激の入口として働いていることが考えられる(即ち、本発明は以下の理論により拘束されることはないものの、一つの可能性としては、マクロファージ細胞の表層に存在する本発明のタンパク質に外部からのリガンドが結合して、それにより生じたシグナルが細胞内に伝達されることにより当該マクロファージがG−CSFを放出するようになるというモデルが考えられる)。従って、本発明のタンパク質は、G−CSFの誘導・分泌因子の受容体またはその一部でありうる。ここでいう「受容体の一部」とは、受容体を構成するサブユニットの一つである場合、糖鎖等で修飾されている場合を含む。この受容体は、例えば寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体またはそのフラグメントのような、G−CSFの産生を誘導することができる物質と結合性(親和性ということもある)を有し、また、マクロファージを含むG−CSFを産生することのできる細胞の細胞膜に存在すると考えられる。本発明はこのような受容体を提供する。
また、本発明はさらに、本発明のタンパク質または受容体を用いることを特徴とする、有用な物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、(a)物質を、請求項9から12の何れかに記載のタンパク質または請求項20記載の受容体を有する細胞に接触させる工程;および(b)前記物質の、前記タンパク質または受容体を介した効果を測定する工程を含む。あるいは、問題の物質(単に「物質」、または「試験化合物」ということもある。)と本発明のタンパク質若しくは上記受容体、またはそれらを有する細胞との結合性を測定すること(例えば、本発明の受容体を細胞表面に有する細胞と問題の物質との結合をフローサイトメーターで解析すること)、問題の物質の上記受容体を介した効果(例えば、マクロファージからのG−CSFの産生、適当な形質転換細胞からのマーカーとなる物質の産生)を測定すること、または問題の物質の構造(例えば、問題の物質がタンパク質であるときは、そのアミノ酸配列)と本発明のタンパク質の構造(例えば、アミノ酸配列)とを比較することを含む。
さらに、本発明のタンパク質または受容体の構造情報をもとにコンピュータを用いて化合物をデザインし、そのような手法でデザインされた化合物および/またはその類似体をコンビナトリアルケミストリー等の技術を用いて多種類合成し、そしてそれらのなかから、適当な技術(例えば、HTS(high throughput screening)等)を用いて有用な物質を選択する手法、ならびにそのような物質をリード化合物としてさらに改変体を合成・選択し、より効果の高い物質を得る手法等も、本発明のスクリーニング方法に含まれる。
スクリーニングに利用される本発明のタンパク質または受容体は、好ましくは、(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは94%以上、最も好ましくは98%以上)の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質または;(d)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質、またはそのようなタンパク質を有する受容体である。
より具体的なスクリーニング方法の一例として、次のようなものが考えられる:G−CSFプロモーター遺伝子、その下流のルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)、β−ラクタマーゼまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のマーカータンパク質をコードする遺伝子、およびさらに下流のテトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の薬剤に対する薬剤抵抗性遺伝子を挿入したベクターを構築する。このベクターを、本発明のタンパク質を含む受容体をもつ細胞(例えばマクロファージ細胞株、好ましくはヒト由来マクロファージ細胞株)に導入する。得られた細胞を薬剤を含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を選抜する。さらに、リポポリサッカライド(LPS)などのG−CSF誘導薬によってマーカータンパク質を発現するクローンを選択する。なお、マーカータンパク質の発現が実際のG−CSFmRNAの発現を反映していることを確認しておく。このようにして得られた形質転換細胞株を種々の物質で処理する。そしてマーカータンパク質発現を誘導した物質をスクリーニングする。
本発明のスクリーニング方法においては、本発明のタンパク質のうちG−CSF誘導・分泌活性を有する抗体(例えば、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体)またはそのフラグメントによって認識される部分が特に重要となる場合がある。例えば、このような部分の決定方法は当業者にはよく知られている。例えば、本発明のタンパク質の一つである配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質においては、寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体によって認識される部分が本発明者らによって決定されている(実施例9参照)。
<新規物質>
スクリーニングにより得られる有用な物質は、G−CSFの産生を変化させることができる物質である。そのような物質は、(a)受容体と結合性を有し(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導することができる物質(アゴニストまたは作用薬ともいう);(b)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導しない物質(アンタゴニストまたは遮断薬ともいう);および(c)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)、かつ受容体自身がもつG−CSFの産生活性を阻害する物質(インバースアゴニストまたは反作用薬ともいう)を含む。
このような物質は新規である。従って、本発明は、本発明のスクリーニング方法により得られた、(a)受容体と結合性を有し(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導することができる物質;(b)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。)、かつG−CSFの産生を誘導しない物質;または(c)受容体と結合性を有し(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)、かつ受容体自身がもつG−CSFの産生活性を阻害する物質をも提供する。また、本発明はさらに、本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(a)G−CSFの産生を誘導することができる物質(結合の結果、受容体に変化をもたらし、受容体を介して細胞内に情報を伝達すると予想される。);(b)G−CSFの産生を誘導しない物質(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害すると予想される。);または(c)受容体自身がもつG−CSFの産生誘導活性を阻害する物質(結合の結果、G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害すると予想される。)をも提供する。以下、これらの物質を「本発明の物質」ということもある。なお、本発明の物質についての発明の技術的範囲には、公知の物質自体は含まれない。
本発明の物質の例としては、本発明の抗体、そのフラグメント、または他の低分子化合物であって:G−CSFの産生を誘導する作用を有するもの;G−CSFの産生を誘導することができる物質が受容体と結合することに拮抗し、かつその刺激を阻害する作用を有するもの;または受容体自身がもつG−CSFの産生活性を誘導することができる物質が受容体と結合するのを阻害し、かつG−CSFの産生を阻害する作用を有するものがある。
上述の「他の低分子化合物」は、例えばコンビナトリアル合成等の当業者に周知の手段により、種々合成することができるし、入手可能な化学合成ライブラリーを利用することもできる(M.J.プランケットら:新薬開発とコンビナトリアル・ケミストリー:日経サイエンス7,62−69(1997)。コンビナトリアルケミストリー研究会編:コンビナトリアルケミストリー:化学同人(1998))。
上記受容体との結合性(または結合の阻害性)は、問題となる物質が抗体である場合は、例えば、抗体と結合したマクロファージ細胞株をフローサイトメトリーやELISA法などを用いて解析する等の方法により、測定することができる。
顆粒球コロニー刺激因子産生の誘導作用(または阻害作用)は、特開平11−106400に記載された方法により決定されうる。概略を以下に記載する。
ピッカジーン エンハンサー ベクター2(和光純薬工業(株)社製)のXhoIサイトからNcoIサイトにかけて、G−CSFプロモーター遺伝子を挿入し、その下流にG−CSF遺伝子の代りにルシフェラーゼ遺伝子を結合させ、さらにSV40の下流のSalIサイトにpMC1Neo Poly Aから切り出したネオマイシン抵抗性遺伝子を挿入したPicaGCSFneoベクターを構築する。このベクターをRAW264.7細胞にエレクトロポレーション法を用いて導入する。得られた細胞をジェネチシンを含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を選抜する。ジェネチシン抵抗性クローンからさらに、LSP等のG−CSF誘導薬によってルシフェラーゼ活性を示すクローンを選択する。なお、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることを、32PラベルマウスG−CSFのcDNAをプローブとして、ノーザンブロット解析により確認しておく。このようにして得られた形質転換マクロファージ細胞株を、96ウェルマイクロプレートにウェル当り5×104個ずつ播き、37℃で24時間培養し、必要に応じ予め得ておいたアゴニスト、アンタゴニストで処理した後、問題の物質を0、3.75、7.5、15、30および/または60μg/ml程度の濃度で添加する。さらに、37℃で18時間培養した後、ルシフェラーゼ活性を測定する。
また、G−CSF産生の誘導作用(または阻害作用)は、以下の実施例14に記載されているG−CSFバイオアッセイによっても決定されうる。
本発明の物質であるか否かは、種々の判断基準により決定することができる。例えば、(1)G−CSFを産生しうる系、またはG−CSFの産生を反映する測定可能な指標を有する系を構築し、試験化合物を添加する群と適切なコントロール群(例えば、試験化合物の代わりに既知の物質を用いる系、試験化合物およびその代わりの物質のいずれも用いない系)とを作製し、コントロール群で得られた値を基準として判断することができる。このとき、試験化合物と、予め得ておいたアゴニストまたはアンタゴニストを共存させる群を作製してもよい。また、(2)本発明の受容体またはタンパク質と試験化合物との結合力(例えば、適切な手段により測定された受容体若しくはタンパク質と試験化合物との結合定数(Km、会合定数ということもある))を基に判断することができる。この場合も試験化合物の代わりに既知の物質を用いて得られた値を基準とすることができる。あるいは、(3)(1)および(2)を組み合わせて判断することができる。
より具体的には、細胞表面に本発明のタンパク質を有する細胞であって、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映するように形質転換された細胞を試験化合物で刺激した場合に、適当な条件において得られるルシフェラーゼ活性の最大値がコントロール群より高いとき、好ましくはコントロール群の約1.01倍以上であるとき、より好ましくは約2倍以上であるとき、さらに好ましくは約20倍以上であるとき、最も好ましくは約60倍以上であるとき、その試験化合物を、本発明でいう「本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(a)G−CSFの産生を誘導することができる物質」と判断することができる(実施例参照)。また、予め得ておいたアゴニストまたはアンタゴニストと試験化合物を共存させる群を含む系は、本発明でいう「本発明のタンパク質または受容体と結合性を有し:(b)G−CSFの産生を誘導しない物質;または(c)G−CSFの産生を誘導することができる物質」であるか否かを判断する際に用いることができる。
本発明の物質は、G−CSF以外のサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、インターフェロンINF、腫瘍壊死因子(TNF)、種々のコロニー刺激因子(CSF)等を誘導してもよい。他のサイトカインに比較して、G−CSFを選択的に誘導する物質は、本発明の物質の好ましい態様の一つである。そのような物質としては、例えば、適切な濃度で用いた場合に、他のサイトカインの誘導はコントロールと比較して約10倍未満であるが、G−CSFサイトカインの誘導はコントロールの約10倍以上、好ましくは約20倍以上、より好ましくは約40倍以上である物質である。他のサイトカインの誘導は、当業者に周知の方法で測定することができる。
<医薬としての本発明の遺伝子等の利用>
本発明の遺伝子は、例えば、血液成分の白血球の一種である好中球が関与する疾患(例えば、好中球減少症など)または赤血球、白血球若しくは血小板等の血球に関する疾患の診断、予防および治療(遺伝子治療など)などに利用することが可能である。また、本発明のタンパク質若しくはその部分ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、リガンド、受容体、または物質(以下、これらをまとめて「本発明のタンパク質等」ということもある)は、血液あるいは骨髄中の好中球の数または、広く赤血球、白血球若しくは血小板等の血球の数を調整する医薬となり得る。すなわち、本発明の遺伝子およびタンパク質等は、抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症または赤血球、白血球若しくは血小板等等の血球減少症の治療及び再生不良性貧血の診断、予防および治療などのために用いることが可能である。
また、本発明者らにより、本発明のタンパク質または受容体がG−CSFの産生の誘導に関与することが見出された。したがって、本発明のタンパク質または受容体との結合性を有する物質は、医薬として、G−CSFの産生を促進する薬剤またはG−CSFに関する生物活性を調節する薬剤として用いることが可能である。特に抗ガン剤の副作用としての好中球減少症や骨髄移植後の好中球減少症、または赤血球、白血球若しくは血小板等等の血球減少症や骨髄移植後の好中球減少症の治療及び再生不良性貧血の診断、予防および治療などのために用いることが可能である。
本発明のタンパク質等は通常、全身または局所的に、一般的には非経口の形で投与することができる。非経口投与の内でも特に好ましくは静脈内投与である。
本発明の遺伝子は、生体内あるいは生体外で細胞に遺伝子を導入するいわゆる遺伝子治療の形で全身または局所的に投与することができる。遺伝子導入は、例えばバイオマニュアルUPシリーズ、遺伝子治療の基礎技術、島田隆、斎藤泉、小澤敬也編:羊土社発行、1996年に記載の方法に従って行うことができる。生体外で細胞に導入する場合には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、カチオニックリポソーム、HVJ−リポソームを用いる方法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法などを用いることができる。また、生体内で遺伝子を導入する場合には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、カチオニックリポソーム、HVJ−リポソームを用いる方法を挙げることができる。
投与量は、年齢、性別、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間、投与するもの(タンパク質または遺伝子の種類)などにより異なるが、成人一人当たり、一回につき1μgから100gの範囲、好ましくは10μgから1000mgの範囲で、一日一回から複数回非経口投与することができるだろう。投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤などを包含する。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤としては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤として混合される。水性の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水などが挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類などが挙げられる。
このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばアルギニン、アスパラギン酸など)のような補助剤を含んでいてもよい。
これらはバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を例えば凍結乾燥法などによって製造し、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することもできる。
非経口投与のためのその他の組成物としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤およびペッサリーなどが含まれる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例
実施例1:3−4H7抗体(寄託番号FERM BP−6103のハイブリドーマが産生するもの;特願平9−266591号明細書に記載)の作製および精製
情報伝達抗体(アゴニスト抗体)3−4H7(IgM)の作製および精製は、微生物およびエンドトキシン(リポポリサッカライド、LPS)の夾雑を防ぐためすべて無菌操作により行うとともに、用いた培養液および試薬のエンドトキシン濃度を常に測定(後述)し、許容範囲(0.1EU/ml以下)であることを確認しながら行った。すなわちインテグラCL1000培養フラスコ中、ハイブリドーマを1mlあたり1×108個の密度でASF104無血清培地に懸濁し5日間培養した上清を200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で約3倍量に希釈し、これをやはり200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化したMGPPカラムにロードした。そして200mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)でカラムを洗浄し夾雑物を除いた後、300mM リン酸緩衝液(pH6.8)で抗体を溶出、これをリン酸緩衝生理食塩液(PBS,pH7.4)中で透析し抗体溶液を得た。精製した抗体の純度はFPLCおよびSDS−PAGEにより確認し、以下の実験に供した。
実施例2:LPS濃度定量法
実験に用いた各種溶液に含まれるLPS濃度は、リムルス法によりエンドスペシー−トキシカラーシステム(生化学工業)を用いて定量した。すなわち、各種溶液50μlをエンドドキシンフリー96ウエルマイクロプレートにとり、氷冷下ライセート−合成反応基質溶液50μlを加え、直ちに37℃で30分間反応した。この後すぐにそれぞれ50μlの亜硝酸ナトリウム溶液、スルファミン酸アンモニウム溶液、N−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩−N−メチル−2−ピロリドン−水溶液を順に加え、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)を用いて550nmの吸収を測定、コントロールとして650nmの吸収を引いた値を用いてSoftMax1.5プログラムによりLPS濃度を計算した。標準LPSにはUSP標準品を用い、細胞を刺激する際も同じLPSを用いた。
実施例3:マクロファージ系細胞株における3−4H7抗体の抗原遺伝子のクローニング
(1)マクロファージ系培養細胞株RAW264.7からのポリA+RNAの調製
RAW264.7細胞(2×108個)から、グアニジウムチオシアネート/フェノールクロロホルム・シングルステップ抽出法(ラボマニュアル遺伝子工学第3版,83−84,1996)によって、約0.3mgの全RNAを調製した。これをオリゴ(dT)セルロースカラム(Life Technologies社)によりさらに精製し、約5μgのポリA+RNAを得た。
(2)cDNAライブラリーの構築
cDNAの合成は、STRATAGENE社のZAP−cDNA合成キットを用い、リンカープライマー法(Gubler−Hoffmann法:Gene,25:263−269,1983を改変したもの)によりおこなった。すなわち、上記(1)で得たポリA+RNA(5μg)に、オリゴ(dT)18とXhoI認識配列を含むリンカープライマー(2.8μg)および逆転写酵素(MMLV−RTase;70units)を加え、37℃で60分間反応させることにより相補性一本鎖DNA(ss−cDNA)を合成した。その際、後におこなう制限酵素処理からcDNAを保護するため、5−methyl dCTPを取り込ませた。つづいて、RNase H(2unit)を作用させ、DNA−RNAハイブリッド上に、切れ目(ニック)を導入し、生じたRNA鎖断片をプライマーとして、E.coli DNAポリメラーゼI(100unit)を加え16℃で150分間反応させることによりds(double−strand)−cDNA(8μg)を合成した。フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈澱後、このようにして作製したds−cDNAをPfu DNAポリメラーゼ(5unit)を加えた反応液中で72℃,30分間反応させることにより平滑末端化した。さらにフェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈澱をおこない、T4 DNAリガーゼ(4unit)を含むバッファー中で予めアニーリングさせたEcoR Iアダプター(0.35μg)を8℃で一晩反応させることにより付加し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10unit)で37℃,30分間反応させることによりcDNAのEcoRI末端をリン酸化した。そして、リンカープライマー部分をXhoI(120unit)により37℃で90分間反応させて切断し、得られたcDNAをスピンカラムによりサイズ分画し、1%アガロースゲル電気泳動によりcDNAの鎖長が0.5kbp以上の長さであることを確認後、T4DNAリガーゼ(4unit)を含むバッファー中12℃で一晩反応させることにより、λZAP IIベクター(1μg)に挿入した。連結されたλDNAはSTRATAGENE社のGigapack III Gold packaging extractを用いて室温で90分間インキュベートすることによりin vitro packagingをおこない、大腸菌XL1−Blue MRF’に感染させ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド;2.5mM),X−Gal(4mg/ml)存在下、プレート上で37℃,8時間プラークを形成させてタイトレーションをおこなった結果、このcDNAライブラリーは1.2×106のオリジナルクローンを含むことがわかった。このライブラリーを大腸菌XL1−Blue MRF’で3.4×109pfuまで増幅して以下のスクリーニングに用いた。
(3)3−4H7抗体と結合性を有するタンパク質をコードする遺伝子のスクリーニング
上記(2)で構築したcDNAライブラリーはlacプロモーターで制御されているβガラクトシダーゼの構造遺伝子の3’側にcDNAが導入されているので、そのcDNAは、βガラクトシダーゼとの融合タンパク質として発現する。そこでこの融合タンパク質を膜上にブロッティングし、3−4H7抗体をプローブとしてイムノスクリーニングすることによって大腸菌による発現クローニングをおこなった。すなわち、各3.5×104pfuファージをトップアガロースと混合し、直径150mmのプレート上に播種して計20枚のプレートを作製した。これらのプレートを42℃で4時間インキュベートして直径0.5mm程のプラークを形成させ、そこにあらかじめ滅菌したIPTGを浸み込ませたニトロセルロース膜をのせ、37℃で3時間インキュベートして発現を誘導した。その後膜を剥がし、5%のスキムミルクを含むTBS−T(0.1% Tween 20,20mMトリス緩衝生理食塩水,pH7.6)溶液中で1時間ブロッキングをおこなった。その後、膜をTBS−Tで洗浄し、1次抗体として3−4H7抗体(1.6μg/ml−1%BSA−TBS)を1時間反応させ、洗浄後、2次抗体としてアルカリホスファターゼ標識抗マウスIgMウサギ抗体(Zymed,0.6μg/ml)を1時間反応させた。再度よく洗浄後、基質液(5mM MgCl2を含む500μg/ml NBT;ニトロブルーテトラゾリウム,500μg/ml BCIP;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートTBS溶液,pH9.5)中、暗所で30分間インキュベートし発色させた。フィルターをマスタープレートと突き合わせ、陽性クローンをトップアガロースから回収し増幅後、上記と同様の操作で2次、3次、4次スクリーニングをおこなった。その結果、7×105個のファージから1次スクリーニングでは22個、最終的には3個の陽性クローン(MMR10,MMR17およびMMR19)を得た。
(4)得られたポジティブクローンの遺伝子配列の解析
λZAP IIファージベクターは、プラスミドベクターBluescript SK(−)全体がf1ファージのinitiator領域とterminator領域の間に挿入されているので、ヘルパーファージを感染させることにより、組換えBluescriptが自動的に切り出され、クローン化したDNA断片をBluescriptにサブクローニングできる。そこで、上記(3)で得た3個のポジティブファージを大腸菌XL1−Blue MRF’に感染させ、これにヘルパーファージを感染させることにより、pBluescript SK(−)にサブクローニングした。このプラスミドを大腸菌SOLRに形質転換させることにより、約20μgのプラスミドDNAを得た。プラスミドDNAの配列解析はPrimer Walking法によりおこなった。精製したプラスミドDNAについてABI PRISM BigDye Primer Cycle Sequencing Core Kit(PE社)を用いてM13Revプライマーと−21M13プライマーによりシークエンス反応をおこない、ロングレンジャーゲルを用いABI 377型シークエンサーによりDNA配列を決定した。解析の結果、MMR19クローンはタンパク質のオープンリーディングフレームを含む840bpからなる完全長のcDNA塩基配列を有していた。一方、他のクローンではオープンリーディングフレームが確認されなかった。MMR19クローンの塩基配列を配列表の配列番号1に記載する。
(5)cDNAクローンの塩基配列から推定されるタンパク質の一次構造
上記(4)で解析した遺伝子(MMR19)の塩基配列から推定されるタンパク質(以下「MMRP19タンパク質」という)の一次構造(配列表の配列番号1および2に記載)は、241個のアミノ酸残基から構成され、推定される分子量は約26.9kDaであった。
実施例4:データベース検索によるマウス由来MMR19遺伝子と他の相同遺伝子の比較
実施例3で決定した配列番号1に記載の塩基配列およびアミノ酸配列について、BLAST,EMBCおよびPROSITEのプログラムによりデータベース(GenBankおよびDNA DATA BANK of JAPAN(DDBJ);日本DNAデータバンク,文部省・国立遺伝学研究所・生命情報研究センター)を検索し、ヒトにおける相同遺伝子の有無をアミノ酸残基レベルおよびDNAレベルの両方で解析した。得られた結果を以下の表1および表2に示す。この結果、本発明の遺伝子MMR19と相同性の高い遺伝子がヒトの9番染色体上に存在することが示された。
実施例5:MMR19ヒト型ホモローグのクローニング
ヒト正常脳組織由来全RNA(Invitrogen社)をオリゴ(dT)セルロースカラムにかけ、ポリA+RNAを精製した。次に実施例3(2)に示した方法により、ポリA+RNAからcDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、マウス抗原遺伝子MMR19の配列から作製したプライマー(4位から22位のセンスプライマー;5’−CCATGTCTGGCTGTCAAGC−3’;、721位から701位のアンチセンスプライマー;5’−CCATTTTCTCCAACTGGGAGC−3’)を用いてPCR反応をおこなった結果、MMR19ヒト型ホモローグの部分cDNAが得られた。次に、得られたヒト型ホモローグの部分cDNAの配列からレース法(ClontechのMarathon cDNA Amplification Kitを使用)を用いて全長cDNAを得た。すなわち、ヒト正常脳組織由来cDNAライブラリーを平滑末端化し、これにMarathon cDNA Adaptor(AP1プライマー配列を含む)をライゲーションし、AP1とGSP(Gene−Specific Primer)1(189位から167位のアンチセンスプライマー:5’−AATTCCTCCTCCAGTCCCAGTGA−3’)により5’−RACE PCR反応を、GSP2(630位から653位のセンスプライマー:5’−TGGAGTATATGTGTGGGGGGAAAC−3’)とAP1により3’−RACE PCR反応をおこない、それぞれ5’末端および3’末端側の配列を増幅した。これらPCR産物をアガロース電気泳動したところそれぞれ単一バンドが確認されたので、これをサブクローニング後、シークエンシングすることにより5’末端および3’末端側の配列を解読した。得られた5’−RACE断片からセンスプライマー(5’−AAGCCGTGCGGAGATTGGAGG−3’;1位から21位)を、3’−RACE断片からアンチセンスプライマー(5’−GTCAGAAGAGATTCAGGGTGACC−3’;924位から902位)を作製し、先に用いたヒト正常脳組織由来cDNAライブラリーを鋳型としてPCR反応を行い、これをClontechのAdvanTAge PCR Cloning Kitを用いてT/A cloningすることにより1136bpからなるオープンリーディングフレームを含むヒト型ホモローグの全長cDNAの塩基配列を明らかにした。得られた塩基配列を配列表の配列番号3に記載する。Genetyx−Mac(ソフトウェア開発社)を使用しヒト型ホモローグcDNAとマウスMMR19 cDNA(840bp)の相同性を検討した結果、85.0%相同であることが明らかとなった。
得られたMMR19ヒトホモローグの塩基配列から推定されるタンパク質の一次構造は、242個のアミノ酸残基から構成される配列番号3および4に示すものである。推定されたアミノ酸配列は、マウスのそれと93.8%相同であった。
実施例6:MMRP19タンパク質の解析
MMRP19タンパク質の部分アミノ酸配列からなる3種のペプチドに対するウサギポリクローナル抗体APA1、APA2、およびAPA3を以下のとおり調製した。すなわち、9−Fluorenylmethoxycarbonyl(FMOC)法によりApplied Biosystems 433型のペプチド合成機を用い、MMR19から推定したタンパク質の12位から25位まで、58位から71位まで、228位から241位までのアミノ酸配列に対するペプチドを合成し、逆相クロマトグラフィー(島津LC8A型)で精製、最終的にそれぞれ約25mgのペプチドを得た。精製したペプチドをN−(6−maleimidocaproylxy)−succinimide架橋剤を介してヘモシアニン(KLH)キャリアタンパク質に結合させ、それぞれ1mgをFreund’s complete adjuvantと混合し、ウサギ(雌、2〜2.5kg)背部皮下に3回ほど免疫した。ELISA法により血液の抗体価をチェックしてから、それぞれのウサギより約100mlの血液を採取し、血清を調製した。さらにこの血清よりIgGアフィニティカラムを用いることで、それぞれの抗ペプチド抗体(APA1、APA2およびAPA3)を得た。APA1はMMRP19タンパク質のアミノ酸配列(配列表の配列番号2)中における番号12から25まで、APA2は58から71まで、およびAPA3は228から241までの配列を有するポリペプチドに対する抗体である。
これらの抗ペプチド抗体と3−4H7抗体とを用いて、RAW264.7細胞溶解物についてウエスタン解析を行った。その結果図1に示すように、いずれの抗体によって識別されるバンドも分子量30.4kDaであったことから、これらの抗体が同一のタンパク質、すなわちMMRP19タンパク質と結合するものであることが確認された。なお、ここで得られた分子量(30.4kDa)と、アミノ酸配列から計算される分子量(26.9kDa)の差異は、糖鎖修飾に起因するものと考えられる。
次に、MMRP19タンパク質について、Hoop and Woods法(Hoop,T.K.and Woods,K.P.:Mol.Immunol.20,483−489(1983))にしたがって、ハイドロパシー解析を行った。その結果を図2に示したようにMMRP19タンパク質には、2つの疎水性領域が存在する可能性が示された。
さらに、抗ペプチド抗体APA1、APA2、およびAPA3を用いて、RAW264.7細胞をフローサイトメーターEPICS−ALTRA(Beckman Coulter社製)で解析した。その結果図3に示したとおり、RAW264.7細胞は、APA1およびAPA2によって識別されたが、MMRP19タンパク質のC末端領域に対する抗体であるAPA3によっては認識されなかった。
これらの結果から、MMRP19タンパク質は、N末端約98個のアミノ酸残基からなる細胞外ドメイン、これに続く約30個のアミノ酸残基からなる膜貫通(Transmembrane、TM)ドメイン、さらにこれに続く約113個のアミノ酸残基からなる細胞内ドメインからなることが示唆された。
実施例7:G−CSF遺伝子発現誘導へのMMRP19タンパク質の関与
(1)Pica−RAW264.7細胞の作製
レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いたピッカジーンシステム(Picagene System(和光純薬工業(株)社製))を使用した。ピッカジーンエンハンサー ベクター2(和光純薬工業(株)社製)を用いてXhoIサイトからNcoIサイトにかけて、G−CSFプロモーター遺伝子を挿入し、その下流にG−CSF遺伝子の代りにルシフェラーゼ遺伝子を結合させ、さらにSV40の下流のSalIサイトにpMC1Neo Poly Aから切り出したネオマイシン抵抗性遺伝子を挿入したPicaGCSFneoベクターを構築した。
次に、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7に上記ベクターを以下の方法で導入した。対数増殖期のRAW264.7細胞株を収穫し、10%ウシ胎児血清(FBS;Bio−Whittacker社製)及び非必須アミノ酸(NEAA)を含むイーグル培地(EMEM)で一回洗浄し、同培地中に2×107個/mlの濃度で再懸濁した。上記細胞懸濁液250μl(5×106個)を0.4cmキュベットに入れ、塩化セシウム法で精製したPicaGCSFneoプラスミドDNA10μgと混合し、Gene Pulser(Bio Rad)を用いて300V、960μFの高電圧パルスをかけることによりベクターを細胞に導入した。
形質転換して48時間後、得られた細胞をgeneticin(ネオマイシンの一種)1g/lを含む培地で処理し、コロニーを形成した細胞群を10〜15日後選抜した。50個のgeneticin耐性クローンのうち43個のクローンにおいて、LPSで刺激した結果、優位なルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。そのなかでも一つのクローンが極めて高いルシフェラーゼ活性を示したことから、これをRAW264.7クローン27−3(「Pica−RAW264.7細胞」ということもある。)と命名した。
なお、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることは以下の実験で確認した。すなわち、LPS(終濃度10μg/ml)で18時間刺激処理したRAW264.7クローン27−3細胞(1.5×107個)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。細胞を溶解し全RNAを抽出後、全RNAを1%ホルムアルデヒド・アガロース・ゲル上で電気泳動させ、ナイロンフィルターに移し、32PラベルマウスG−CSFのcDNAをプローブとしてノーザンブロット解析を行った。コントロールとしては、β−アクチンを用いた。その結果、G−CSF mRNAの誘導とルシフェラーゼ活性が相関することが示されたことから、ルシフェラーゼ活性が実際のG−CSF mRNAの発現を反映していることが確認された。
(2)G−CSF遺伝子誘導の検出
96ウェルマイクロプレートに、1ウェルあたり5×104個/100μlとなるようにPica−RAW264.7細胞を播種し、10%FBSを含むEMEM培地中で、37℃、5%CO2存在下で培養した。実施例6に記載の抗ペプチド抗体(APA1、APA2、APA3)と3−4H7抗体とを、種々の濃度でプレートに添加し、37℃、5%CO2存在下で細胞を一晩刺激した。これらのプレートをPBSバッファーで3回洗浄した後、細胞をピッカジーン溶解剤により溶解し、遠心して得られた上清サンプルのルシフェラーゼ活性を、ルミノメーターCT−9000D化学発光測定用マイクロプレートリーダー(ダイアヤトロン)によって測定した。結果を図4に示した。
3−4H7抗体は、77pmol/mlの濃度で約60倍のG−CSF誘導活性を示した。また、細胞外領域を認識する抗ペプチド抗体(APA1、APA2)も、3−4H7抗体と同様にPica−RAW264.7細胞に対して、G−CSF誘導活性を示した(APA1:24倍、APA2:21倍)。これに対し、細胞内領域を認識するAPA3抗体にはG−CSF誘導能は認められなかった。以上の結果より、APA1、APA2はMMRP19タンパク質の細胞外領域に結合し、G−CSF遺伝子発現誘導に関与することが示唆された。
実施例8: マクロファージ系細胞における3−4H7抗体刺激によるG−CSF遺伝子誘導と分泌の関係
RAW264.7あるいはPica−RAW264.7細胞を10%FBSを含むEMEM培地に懸濁し(1.2×105個/ml)、これを96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり90μl(1×104個/ウエル)播種し、まず37℃、5%CO2存在下で一晩プレインキュベーションした。この後、各種濃度の3−4H7抗体、あるいはLPS溶液を各ウエルに10μlずつ添加し、37℃、5%CO2存在下で24時間刺激した。この後培養上清をサンプルチューブにとり遠心し、この上清を以下のNFS−60細胞を用いたG−CSFバイオアッセイ検出系に供した。G−CSFのバイオアッセイによる検出は以下のように行った。すなわち、まずNFS−60細胞をPBSで3回洗浄し、これを細胞密度が3×105細胞/mlとなるように5%FBSおよび100μMのNEAAを含むRPMI1640培地中に懸濁した。このNFS−60細胞懸濁液を96ウエルマイクロプレートに50μlずつ播種し(1.5×104細胞/well)、一晩37℃、5%CO2存在下プレインキュベートした後、50μlのRAW264.7あるいはPica−RAW264.7細胞の培養上清またはG−CSFを含む培地を各ウエルに加え、37℃、5%CO2存在下24時間インキュベートした。この後、各ウエルに10μlのWST溶液(5mM 2−(4−iodophenyl9−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium・Na,0.2mM 1−methoxy−5−methylphenazinium methylsulfide,20mM Hepes,pH7.4)を加え、37℃で4時間反応させ、450nmの吸光度を650nmを参照波長として測定することでNFS−60細胞の増殖を定量化し、G−CSFにより惹起される細胞増殖を指標に作製した検量線より培地中に含まれるG−CSF量を定量した。またPica−RAW264.7細胞については実施例7と同様にルシフェラーゼ活性についても検討した。その結果、図5から図8に示すように、3−4H7抗体はLPSと同様にRAW264.7細胞およびPica−RAW264.7細胞を刺激し、濃度依存的にG−CSFの分泌を促進することが示された。また3−4H7抗体によるG−CSF分泌は、G−CSF遺伝子誘導に比べて低濃度で認められることから、G−CSF生合成および分泌には、わずかなG−CSF遺伝子誘導で十分であることが示唆された。
実施例9:3−4H7抗体が認識する抗原分子MMRP19のエピトープ領域
MMRP19タンパク質の細胞外ドメインに対する部分ペプチド、MMRP19(12−25,P1)、MMRP19(19−36,P2)、MMRP19(32−46,P3)、MMRP19(41−55,P4)、MMRP19(50−62,P5)、MMRP19(57−71,P6)、MMRP19(64−81,P7)、MMRP19(72−87,P8)およびMMRP19(81−98,P9)の合成は9−Fluorenylmethoxycarbonyl法により、Applied Biosystems社の433型自動ペプチド合成機を用いて行った。合成の結果得られたペプチド−樹脂をトリフルオロ酢酸により処理し、これを逆相クロマトグラフィー(島津LC8A型)によって精製、各ペプチドともそれぞれ約25mgを得た。MMRP19細胞外ドメインに対する9種の合成ペプチド(P1−P9)を、それぞれ0.5μgずつ96ウエルマイクロプレートの各ウエルに固定した後、スキムミルクを用いてブロッキングし、PBSにより3回洗浄した。このマイクロプレートに3−4H7抗体溶液50μlを添加し(添加濃度10μg/ml)、37℃で1時間インキュベートした。これを0.05% Tween−20を含むPBSにより3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgMラット抗体溶液を加え37℃で1時間反応させ、さらに0.05%Tween−を含むPBSで5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ発色基質ABTSと過酸化水素を加え37℃で30分間反応、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)により405nmの吸収を測定した。その結果図9に示すように、MMRP19の72位から87位(P8)および81位から98位(P9)のペプチドのみが3−4H7抗体に結合性を示し、残りのペプチドはほとんど結合活性を持たなかった。以上の結果より、MMRP19の3−4H7抗体に対するエピトープはMMRP19の72位から98位の中に存在することが示された。
実施例10:3−4H7抗体によるサイトカインの誘導パターン
96ウェルマイクロプレートに、1ウェルあたり5×104個/100μlのPica−RAW264.7細胞を藩種し、10%FBSを含むEMEM培地中で、37℃、5%CO2存在下培養した。この後、3−4H7抗体(終濃度60μg/ml)あるいはLPS(終濃度100ng/ml)で細胞を一晩刺激した。刺激後、まず上清を回収し、ELISAによる各種サイトカイン濃度測定に供するとともに、ルシフェラーゼ活性を測定することにより、G−CSF遺伝子誘導活性を検討した。コントロールには、抗体、LPSのいずれも含まない培地のみを添加した系を用いた。IL−1α、IL−1β、IL−6、TNF−α、GM−CSFの測定は市販のELISAキット(エンドジェン)を用いて行なった。その結果、表3に示したように3−4H7抗体は、G−CSFに対して比較的高い誘導倍率を示した(約60倍)。これに対し、他のサイトカイン誘導レベルは低いものであった(IL−6は約5.4倍、TNF−αは約5.1倍、IL−1α、IL−1βおよびGM−CSFについては有意な変化が検出できなかった。)。一方、LPSは、G−CSFの他、IL−1α、IL−1β、IL−6、TNF−α、GM−CSFも顕著に誘導した。
実施例11:サル由来細胞株COS7におけるヒト型MMR19cDNAの発現
精製したヒト型MMR19cDNA断片をプラスミドベクター(pCMV−Script)にライゲーションし、得られた組換えベクター(pCMV−Script MMR19)をヒートショック法で大腸菌XL10−Goldにトランスフェクトした。この大腸菌XL10−Goldで生産した組換えベクターを精製し、約20μgを高電圧パルス法によって、MMRP19のタンパク質非発現細胞であるサル由来細胞株COS7(1×107個)にトランスフェクトした。そして組換えベクターを導入した細胞をDulbecco’s modified Eagle’s mediumで2日培養した後、4℃で1時間1次抗体(3−4H7)と反応した。さらに反応した細胞をFITC−標識二次抗体で染色し、フローサイトメーター EPICS−ALTRA(Beckman Coulter社製)で解析した。
その結果、図10に示したように3−4H7が組換えベクターを導入した細胞に結合したことから、ヒト型MMRP19タンパク質は、マウスMMRP19タンパク質と同様、細胞表面に発現することが明らかになった。
実施例12: MMRP19タンパク質のRAW264.7細胞膜上への大量発現
まず精製したMMR19cDNAをDNAリガーゼによって発現ベクターpCMV−Script(Stratagene)の制限酵素Sca Iサイトに組みこみMMR19発現ベクターを作製した。発現ベクターのRAW264.7細胞への導入は高電圧パルス法(electroporation)により行った。すなわち2×107個のRAW264.7細胞を10μgのベクターを溶解した500μlのリン酸カリウム緩衝液中に懸濁しキュベットにいれ、Gene Pulser(Bio−Rad)を用いて500μF、300Vの高電圧パルスをかけることで細胞膜に小孔を短期間生じさせてベクターを細胞に導入した。つづいてパルス後の細胞を250mlのフラスコに播種し、10% FBS−EMEM培地中、37℃で72時間培養した。この後、培養培地中にgeneticinを終濃度1g/lとなるように添加してさらに2週間培養し、形質転換細胞をgeneticin耐性により選択した。さらにこれらの細胞の中から3−4H7抗体に反応性を示す細胞をフローサイトメトリーによって2回選択し、MMRP19タンパク質過剰発現RAW264.7(OE−RAW264.7)細胞を得た。
RAW264.7またはOE−RAW264.7細胞膜に発現しているMMRP19タンパク質のフローサイトメトリーによる解析は以下のようにして行った。すなわち、RAW264.7またはOE−RAW264.7細胞を100μl PBS中に細胞数が1.5×106個になるように調製し、それぞれに3−4H7抗体を加え(終濃度5μg/100μl)、4℃で1時間反応させた。これを5% FBS、0.05% NaN3を含むPBSで3回遠心洗浄した後、FITC蛍光標識した抗マウスIgM抗体を終濃度3μg/100μlとなるように細胞懸濁液に加え、さらに4℃遮光下で1時間反応させた。この後細胞を5% FBS、0.05% NaN3を含むPBSで5回遠心洗浄し、蛍光標識された細胞をフローサイトメトリー(EPICS ALTRA、ベックマンコールター社)によって検出、解析した。その結果図11に示したように、OE−RAW264.7細胞ではRAW264.7細胞に比較して過剰のMMRP19タンパク質を細胞膜に発現していることが示され、MMRP19は細胞膜タンパク質として発現されていることが明らかになった。
実施例13: マクロファージ系細胞での3−4H7抗体刺激によるG−CSF遺伝子誘導におけるMMRP19タンパク質過剰発現効果の検討
RAW264.7あるいはMMRP19タンパク質過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞を6ウエルマイクロプレートの各ウエルに1.5×106個ずつ(5×105個/ml)播種し、37℃、5%CO2存在下で一晩培養した。これに3−4H7抗体(終濃度50μg/ml)あるいはLPS(終濃度100ng/ml)を添加し、37℃、5%CO2存在下、3、6、9あるいは12時間刺激した。つづいてこれら3−4H7抗体あるいはLPSにより刺激したRAW264.7およびOE−RAW264.7細胞からGuanidium Thiocyanate/Phenol Chloroform Extraction法により全RNAを抽出し、逆転写酵素(MMLV−RTase)とDNAポリメラーゼを用いて全RNAよりcDNAを合成した。そして、マウスG−CSF遺伝子配列の中で121から138までに対するセンスプライマー(5’−GCTGTGGCAAAGTGCACT−3’)、537から520までに対するアンチセンスプライマー(5’−ATCTGCTGCCAGATGGTG−3’)を用いてRT−PCR反応を行った。その結果図12に示したように、RAW264.7細胞では3−4H7抗体刺激6時間後はじめて有意なG−CSF mRNA誘導が認められたのに対し、OE−RAW264.7細胞では3時間後すでにG−CSF mRNAが誘導が確認された。またLPSの刺激では、RAW264.7細胞あるいはOE−RAW264.7細胞とも、6時間後はじめてG−CSF mRNAが誘導された。このようにOE−RAW264.7細胞においてはRAW264.7細胞に比較して、同濃度の3−4H7抗体の刺激でより迅速にG−CSF mRNAの誘導が起こることが示された。しかしLPSによる刺激の場合、2つの細胞間でG−CSF mRNAの誘導に有意な差は認められなかった。以上の結果より、3−4H7抗体がMMRP19タンパク質に結合することによってG−CSF遺伝子が誘導されることが示唆された。またRAW264.7細胞あるいはOE−RAW264.7細胞において、3−4H7抗体の刺激によるG−CSF誘導に関わるシグナル伝達経路がLPSの刺激の場合と異なる可能性が示された。
実施例14: マクロファージ系細胞での3−4H7抗体刺激によるG−CSF分泌の酵素免疫学的検出とMMRP19タンパク質過剰発現効果の検討
RAW264.7あるいはMMRP19タンパク質過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞を5cmシャーレに1.5×106個/5mlずつ(3×105個/ml)播種し、37℃、5%CO2存在下で一晩培養した。これに3−4H7抗体(終濃度50μg/ml)を添加し、37℃、5%CO2存在下、9、12、18あるいは24時間刺激し、それぞれの時間に培養上清を100μlずつ採取した。この培養上清を96ウエルイムノプレート(Nunc社、MaxiSorp)に移し4℃で一晩固相化した後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄した。この後各ウエルに100μlずつウサギ血清を添加し室温で30分間インキュベーションすることでウエルをブロッキングし、やはり0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄した。そこに10μg/mlの濃度に調製した抗マウスG−CSFヤギ抗体(R&D社製)100μlを添加した後4℃で一晩インキュベーションし、0.05% Tween20を含むPBS 400μlで5回洗浄した。このプレートの各ウエルにさらにビオチン化した抗ヤギIgウサギ抗体溶液を100μlずつ加えて室温で1時間インキュベーションした後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで3回洗浄、100μlのアビジン−パーオキシダーゼ溶液を加えてさらに室温で30分間インキュベーションした後0.05% Tween20を含むPBS 400μlで5回洗浄した。その後各ウエルに100μlのパーオキシダーゼ基質ABTS溶液を加えて室温で30分反応、マイクロプレートリーダーM−Tmax(モレキュラーデバイス社)により405nmの吸収を測定した。その結果図13に示すように、3−4H7抗体はRAW264.7あるいはMMRP19過剰発現細胞であるOE−RAW264.7細胞において時間依存的にG−CSFの分泌を促進すること、またその活性はOE−RAW264.7細胞において有意に高いことが示された。これらの結果(実施例7・8・13も含めて)より、3−4H7抗体はマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、その細胞表面に存在するMMRP19タンパク質に結合、活性化しG−CSFを誘導、分泌させることが示唆された。
実施例15:ヒト細胞におけるMMRP19タンパク質ホモローグの機能解析
ヒト由来培養細胞であるHL−60細胞(理化学研究所)は10%FBSを含むRPMI1640培地中で細胞密度が1.5×105〜1.5×106細胞/mlとなるようにして、37℃、5%CO2存在下培養した。HL−60細胞の好中球様細胞への分化は500μMのdibutyryl cAMP(dbcAMP)で3日間処理することにより行った。またマクロファージ様細胞への分化は100μg/mlのphorbol 12−myristate 13−acetate(PMA)でやはり3日間処理することにより行った。
まず3−4H7抗体の細胞膜表面抗原の存在を未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞についてフローサイトメトリーを用いて検討した。その結果、3−4H7 mAb表面抗原はマクロファージ様分化HL−60細胞にのみ存在するが、未分化および好中球様分化HL−60細胞には存在しないことが示された。またヒト型MMRP19タンパク質の合成を未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞のlysateを調製し、3−4H7抗体を用いてWestern Blot解析した場合、あるいはRT−PCR法によって検出した場合も同様であった。以上の結果より3−4H7抗体抗原であるヒト型MMRP19タンパク質は、ヒト培養細胞であるHL−60細胞をPMAを用いてマクロファージ様に分化したときに発現することが示された。
つづいて3−4H7抗体のHL−60細胞におけるG−CSF誘導・分泌活性を検討した。すなわち未分化、好中球様分化ならびにマクロファージ様分化HL−60細胞を終濃度60μg/mlの3−4H7抗体で18時間、37℃、5%CO2存在下刺激し、その培養上清に分泌されたG−CSFをG−CSFバイオアッセイ法(実施例8)および酵素免疫法(実施例14)によって検出した。またこの時の細胞に含まれるG−CSFをWestern Blotting法により検出するとともにRT−PCR法(実施例13)によりG−CSF mRNAを検出した。その結果、やはりマクロファージ様分化HL−60細胞の培養上清にのみG−CSFが分泌されていることが示された。以上の結果より3−4H7抗体はマクロファージ様に分化したHL−60細胞においても、ヒト型MMRP19タンパク質に結合、活性化し、G−CSFを誘導、分泌することが示唆された。
実施例16:3−4H7抗体(抗MMRP19抗体)によるG−CSF mRNAの発現誘導
<方法>
(1)正常マウスの骨髄細胞および腹腔マクロファージ細胞に対する3−4H7抗体の作用
BALB/cマウス(♂、7週齢)を用い、大腿骨および脛骨の骨髄細胞および腹腔マクロファージ細胞を採取した。21Gの針を付けた1mlのシリンジに冷ハンクス液を適当量含ませたものを用意し、摘出した大腿骨、頚骨に針先を骨腔の一端に刺し込み、骨髄細胞を2mLのチューブ内に回収した。また、1mlのシリンジに冷ハンクス液を適当量含ませたものを用意し、腹腔内を良く洗浄し、細胞懸濁PBS液を回収した。同操作を2回繰り返し、腹腔マクロファージを回収した。採取した骨髄細胞(1.5×106個)および腹腔マクロファージ細胞(5×105個)を採取し、37℃、5%CO2インキュベーターにて18時間静置した。静置した細胞に3−4H7抗体(1、2、5、10、20μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて6時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(10μg/ml)存在下において腹腔マクロファージ細胞内のG−CSF mRNA量が約6.5倍上昇した(図14)。なお、同時にLPS20ng/mlで刺激したところ、腹腔マクロファージ細胞内のG−CSFmRNAは約3.6倍上昇した(図14)。また、3−4H7抗体(10μg/ml)存在下において骨髄細胞内のG−CSFmRNA量が約3.2倍上昇した(図14)。なお、同時にLPS20ng/mlで刺激したところ、骨髄細胞内のG−CSFmRNAは約2.2倍上昇した(図14)。
(2)正常マウスの肝由来クッパー細胞に対する3−4H7抗体の作用
マウスをペントバルビタールにて麻酔後、肝臓を傷つけないように開腹し、腸を右に寄せ門脈と下大静脈を露出させ、門脈よりペリスタポンプを介して肝灌流液にて灌流し、肝臓を脱血した。コラゲナーゼ液にて肝臓内を処理した。肝臓を摘出し、10%FCS/RPMI1640/ペニシリン−ストレプトマイシン培地にて緩やかに肝臓を解した後、メッシュにて濾過し、50ml遠心チューブ内に回収した。550rpm,2min,4℃の条件にて遠心し、上清を回収した。この操作を2回繰り返した。1,500rpm,10min,4℃の条件にて遠心し、上清を除去し、残った細胞塊に、RPMI1640培地を10ml加え、細胞浮遊溶液とした。細胞懸濁液を37℃,5%CO2インキュベーター内にて1時間静置させ、RPMI1640培地にて3回洗浄し、クッパー細胞以外の非付着性の細胞を除去した。調製したクッパー細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)またはリポポリサッカライド(LPS、1μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて1、3、6時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(30μg/ml)刺激1時間後において、肝由来クッパー細胞内のG−CSF mRNA量が約5.2倍上昇した(図15)。なお、同時にLPS1μg/mlで1時間刺激したところ、肝由来クッパー細胞内のG−CSF mRNAは約4.4倍上昇した(図15)。
(3)正常マウス末梢血由来マクロファージ細胞に対する3−4H7抗体の作用 マウスの心臓より採血した血液に10%FCS/RPMI1640/ペニシリン―ストレプトマイシン培地、を等量加え、細胞浮遊液を調製した。15mlの遠心チューブにLymphoprep(Nycomed)を入れ、細胞浮遊液を静かに重層し、2,300rpm、20分、4℃にて遠心した。中間層を静かに回収し、回収した細胞浮遊液に3倍量の培地を加えて良く混和し、2,500rpm、5分、4℃にて遠心した。上清を除き、細胞塊を解してからRPMI1640培地を加え、1,500rpm、5分、4℃の条件にて遠心した。同操作を更に2回繰り返し、細胞をよく洗浄した。トリパンブルー溶液にて生細胞数を計数した。この細胞浮遊液(2x106個)を24穴プレートに播き、37℃,5%CO2インキュベーター内にて1時間静置させた。培地にて3回洗浄し、非付着性の細胞を除去した。M−CSF(30ng/ml)を各wellに添加し、37℃、5%CO2インキュベーターにて4日間培養した。調製したマクロファージ細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)またはLPS(1μg/ml)を加え、37℃、5%CO2インキュベーターにて15分および1時間培養した。溶媒のみを加えた群をコントロール群とした。
結果、3−4H7抗体(10μg/ml)はマクロファージ細胞内のG−CSF mRNA量を約4.6倍上昇させた(図16)。なお、同時にLPS 1μg/mlで1時間刺激したところ、マクロファージ細胞内のG−CSF mRNAは約5.4倍上昇した(図16)。
(4)Total RNAの調製
回収した細胞からRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてtotal RNAを抽出した。以上の操作はすべて室温で行なった。200μlのtotal RNAを10分間、65℃でインキュベートした後、氷冷した。
(5)マウスG―CSF mRNA量の測定
上記で調製したmRNA 10μlとTaq Man EZ RT−PCR CORE REAGENTS(Perkin Elmer)の試薬を96well Reaction Plate(Perkin Elmer)内で混和し、ABI Prism 7700(アプライドバイオシステム)を用いてmouse G―CSF mRNA定量を行った(サイクル数:40)。内部標準としてGAPDHを用いて、それぞれのmRNA量の補正を行った。使用したprimerは以下に記した。
ProbeとしてmG−CSF用にはSYBER GREEN登録商標を用い、mGAPDH用にはVic−CAGAAGACTGTGGATGGCCCCTC−Tamuraを用いた。
結果、3−4H7抗体投与3時間後において腹腔マクロファージ細胞のG−CSFmRNA量は未処置の細胞と比べ約9倍上昇した(図17)。
(6)シクロフォスファミド誘発骨髄抑制マウスに対する3−4H7抗体の作用 BALB/cマウス(♂、9週齢)24匹にシクロフォスファミド(25mg/ml)を10ml/kgにて腹腔内投与した(250mg/kg)。シクロフォスファミド投与3日後より3日間、3−4H7の溶媒のPBS−、3−4H7抗体溶液(0.42mg/ml)及びrhG−CSF(1μg/ml)を10ml/kgで1日1回腹腔内投与した。また、rhG−CSF(1μg/ml)を10ml/kgで1日1回皮下投与した。7日後に各マウスの眼底静脈からヘパリン採血管を使用して採血し(約40μl)、Sysmex F−800(シスメックス)にて血球数を測定した。また、同血液を用いて血液塗沫標本を作製し、メイ・グリュンワルド−ギムザ染色を行った。染色後顕微鏡下、白血球を5分類で200個識別カウントした。有意差検定は1−way ANOVAにて分散分析の成立を確認後、LSD testを行った。
結果、シクロフォスファミド投与7日目の白血球数及び好中球数が有意に増加した(図18)。また、陽性対照として用いたヒトG−CSF(10mg/kg)を同様に3日間腹腔内投与したところ、7日目の白血球数及び好中球数が有意に増加し、その増加量は3−4H7抗体投与による増加量とほぼ同程度であった(図18)。
産業上の利用の可能性
本発明の遺伝子、それがコードするタンパク質(上記遺伝子の断片および上記タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体、および物質(低分子を含む)は新規であり、医薬用途として有用である。
また、本発明の遺伝子、それがコードするタンパク質(上記遺伝子の断片および上記タンパク質の断片を含む)、抗体(そのフラグメントを含む)、受容体は、顆粒球コロニー刺激因子の誘導・分泌能を有する物質など(例えば、モノクローナル抗体、タンパク質、その他の低分子物質など)をスクリーニングする際の分析試薬としても有用である。また、顆粒球コロニー刺激因子はエリスロポエチンによる赤芽球、インターロイキン3による芽球コロニーの形成の増強作用や白血球、赤血球、血小板等の血球増多(増強、増加)作用を示すことから、顆粒球コロニー刺激因子を誘導させるこれらの上記物質を使用することにより、顆粒球コロニー刺激因子の産生を促進する薬剤または顆粒球コロニー刺激因子に関する生物的活性を調節する薬剤として用いることが可能である。具体的には、顆粒球コロニー刺激因子を薬剤として直接投与することによる副作用を回避しつつ、好中球減少症、再生不良性貧血および/または白血球、赤血球若しくは血小板等の減少症等の治療、診断等をすることが期待できる。
また、本発明の遺伝子の断片は、他の生物由来のホモログ遺伝子をスクリーニングする際のプローブとしても有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1:3−4H7抗体及び抗MMRP19部分ペプチド抗体(APAs)のウエスタンブロット解析。
図2:MMRP19タンパク質のハイドロパシー図。横軸は、アミノ酸残基番号、縦軸は、ハイドロパシー・インデックス(Hydropathy Index)である。アミノ酸配列の中心部分の番号99から128は、MMRP19タンパク質の唯一の膜貫通(TM)ドメインであると考えられる。
図3:MMRP19の3種の部分ペプチドに対する各抗体のRAW264.7に対する反応性。RAW264.7におけるMMRP19タンパク質の細胞膜における配向性をフローサイトメトリーを用いて解析した結果を示した。横軸は、蛍光強度、縦軸は、細胞数である。APA1、APA2及びAPA3は抗ペプチド抗体を表す。
図4:3−4H7及び抗MMRP19部分ペプチド抗体(APAs)のG−CSF遺伝子誘導活性。MMRP19タンパク質のG−CSF遺伝子発現誘導への関与を示した。横軸は加えた抗MMRP19タンパク質抗体の濃度、縦軸は、G−CSF遺伝子発現誘導に対応するルシフェラーゼ活性である。●は3−4H7抗体、■は抗ペプチド抗体APA1、◆はAPA2、▲はAPA3を表す。ルシフェラーゼ活性は、コントロールを1としたときの値(Multiple Control)で表した。
図5:RAW264.7細胞における3−4H7抗体(A)及びLPS(B)によるG−CSF分泌刺激活性。横軸は、抗体濃度(μg/ml)またはLPS濃度(EU/ml)、縦軸は、G−CSF分泌活性(%/最大分泌)である。
図6:Pica−RAW264.7細胞における3−4H7抗体(A)及びLPS(B)によるG−CSF遺伝子誘導または分泌活性。横軸は、抗体濃度(μg/ml)またはLPS濃度(EU/ml)、縦軸は、G−CSF遺伝子誘導またはG−CSF分泌活性(%/最大分泌)である。●はG−CSF遺伝子誘導、○はG−CSF分泌活性を表す。
図7:RAW264.7細胞における3−4H7抗体によるG−CSF分泌量(n=6)。横軸は、3−4H7抗体の濃度(0、1、10μg/ml)を表す。縦軸は、G−CSF分泌量(pg/104個細胞)を表す。
図8:Pica−RAW264.7細胞における3−4H7抗体によるG−CSF分泌量(n=6)。横軸は、3−4H7抗体の濃度(0、1、10μg/ml)を表す。縦軸は、G−CSF分泌量(pg/104個細胞)を表す。
図9:MMRP19部分ペプチドを用いた3−4H7抗体のエピトープマッピング。横軸は、ペプチド断片の種類を表す。縦軸は、405mmにおける吸光度を表す。
図10:3−4H7抗体のCOS7細胞に対する反応性。サル由来細胞株COS7におけるヒト型MMR19遺伝子発現のフローサイトメトリーを示した。横軸は、蛍光強度(Fluorescence Intensity)、縦軸は、細胞数(Cell Numbers)である。Cは形質転換していないコントロールCOS7細胞、HMはヒト型MMRP19タンパク質を発現させたCOS7細胞をそれぞれ3−4H7抗体で染色したものを表す。
図11:MMRP19のRAW264.7細胞上への大量発現。RAW264.7細胞(形質転換していない細胞株)またはMMRP19過剰発現RAW264.7細胞(OE−RAW264.7;形質転換細胞)におけるヒト型MMR19遺伝子発現のフローサイトメトリーを示した。横軸は蛍光強度、縦軸は細胞数である。
図12:MMRP19タンパク質を大量発現させたOE−RAW264.7細胞におけるG−CSF産生誘導。数字は、刺激後の時間を表し、上段はG−CSF、下段はコントロールとしてのG3PDHのPCRにより増幅されたバンドを表す。
図13:MMRP19過剰発現細胞における3−4H7抗体刺激時のG−CSF分泌量の増加。RAW264.7細胞またはOE−RAW264.7細胞における3−4H7抗体刺激時のG−CSF分泌量を、ELISAにより検出した。横軸は時間、縦軸は405mmにおける吸光度(G−CSFの分泌量)を表す。
図14:腹腔マクロファージ細胞および骨髄細胞に対する3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。腹腔マクロファージ細胞(0.5×106個)あるいは骨髄細胞(1.5×106個)を18時間静置し、3−4H7抗体及びLPSを加え6時間培養した。6時間後、RNAをRNeasy kitにて抽出し、マウスG−CSF mRNAを定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図15:肝由来クッパー細胞に対する3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。マウス肝臓よりクッパー細胞を調製し、3−4H7抗体(10、30μg/ml)及びLPS(1μg/ml)を加え、1、3、6時間後にクッパー細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図16:マクロファージ細胞における3−4H7抗体のマウスG−CSF mRNA誘導作用。マウス付着性末梢単核球をマクロファージコロニー刺激因子(30ng/ml)にて4日間培養し、マクロファージ細胞へ分化させた。マクロファージ細胞に3−4H7抗体(10、30μg/ml)及びLPS(1μg/ml)を加え、15分、1時間後にマクロファージ細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図17:3−4H7抗体投与による腹腔マクロファージ細胞のマウスG−CSF mRNA誘導作用。3−4H7抗体(4.2mg/kg)を腹腔内投与し、3、6、9時間後に腹腔マクロファージ細胞を回収し、RNeasyキットにてRNAを抽出した。マウスG−CSF mRNA量を定量的RT−PCR(PRISM 7700)にて測定した。また、内部標準としてGAPDH mRNA量を測定し、RNA量を補正した。
図18:シクロフォスファミド誘発骨髄抑制マウスに対する3−4H7抗体の効果。マウスにシクロフォスファミド(250mg/kg)を腹腔内投与した。シクロフォスファミド投与開始3日後より3日間、溶媒、3−4H7抗体(4.2mg/kg)またはrhG−CSF(10μg/kg)を腹腔内投与した。陽性対照としてrhG−CSF(10μg/kg)を皮下投与した(N=6)。シクロフォスファミド投与開始7日後にマウスの眼窩静脈叢より採血し、末梢白血球数、赤血球数、血小板数をSysmex F−800にて測定した。また、同血液サンプルの塗沫標本をメイギュルンワルド−ギムザ染色し、好中球率を計数した。統計計算は1元配置分散分析後、LSDテストを行った。
Claims (28)
- (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:
をコードする遺伝子。 - (a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列;
(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
を有する遺伝子。 - (a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質:
をコードする遺伝子。 - (a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列;
(b)配列表の配列番号3において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;または
(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
を有する遺伝子。 - 顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体が寄託番号FERMBP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である、請求項1から4の何れかに記載の遺伝子。
- マウスまたはヒト由来の遺伝子である、請求項1から5の何れかに記載の遺伝子。
- (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;
(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは
(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:
の何れかを含むDNA断片。 - (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第519番目から第736番目の塩基配列、第666番目から第689番目の塩基配列、第381番目から第403番目の塩基配列または第709番目から第727番目の塩基配列;
(2)上記(1)に記載した塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列;あるいは
(3)上記(1)に記載した塩基配列の何れかと少なくとも80%の相同性を有する塩基配列:
の何れかを含み、顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質をコードする遺伝子。 - 下記の何れかのタンパク質:
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または
(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質。 - 下記の何れかのタンパク質:
(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質;または
(d)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質。 - 顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体が寄託番号FERMBP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である、請求項9または10記載のタンパク質。
- マウスまたはヒトを含む哺乳動物由来のタンパク質である、請求項9から11の何れかに記載のタンパク質。
- (1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;
(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは
(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:
の何れかを含むタンパク質。 - (1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、第1番目から第91番目のアミノ酸配列、第50番目から第146番目のアミノ酸配列、第1番目から第78番目のアミノ酸配列、第200番目から第241番目のアミノ酸配列、第172番目から第241番目のアミノ酸配列、第103番目から第150番目のアミノ酸配列、第169番目から第241番目のアミノ酸配列;
(2)上記(1)に記載したアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列;あるいは
(3)上記(1)に記載したアミノ酸配列の何れかと少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列:
の何れかを含み、かつ顆粒球コロニー刺激因子誘導・分泌活性を有する抗体またはそのフラグメントと結合性を有するタンパク質。 - 請求項9から14の何れかに記載のタンパク質に対する抗体またはそのフラグメント。
- モノクローナル抗体である、請求項15記載の抗体またはそのフラグメント。
- ヒト型モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である、請求項16記載の抗体またはそのフラグメント。
- 請求項1から8の何れかに記載の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクター。
- 請求項1から8の何れかに記載の遺伝子またはDNA断片を含有する組み換えベクターを含む形質転換体。
- 寄託番号FERM BP−6103を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘導することができる物質の受容体であって、請求項9から12の何れかに記載のタンパク質を有し、かつマクロファージを含む顆粒球コロニー刺激因子を産生することのできる細胞に存在する前記受容体。
- (a)物質を、請求項9から12の何れかに記載のタンパク質または請求項20記載の受容体を有する細胞に接触させる工程;および
(b)前記物質の、前記タンパク質または受容体を介した効果を測定する工程
を含む、物質のスクリーニング方法。 - (a)物質と請求項9から12の何れかに記載のタンパク質若しくは請求項20記載の受容体との結合性を測定すること;
(b)物質の前記タンパク質若しくは受容体を介した効果を測定すること;
(c)物質の構造とタンパク質若しくは受容体の構造とを比較すること;または
(d)前記タンパク質若しくは受容体の構造情報をもとに化合物をデザインし、該化合物および/若しくはその類似体を1種以上合成し、そして該合成された化合物および/若しくはその類似体の中から物質を選択すること;
を含む、物質のスクリーニング方法。 - 以下の何れかの物質を得るための、請求項21または22記載のスクリーニング方法:
(a)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘導することができる物質;
(b)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘導しない物質;または
(c)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ受容体自身がもつ顆粒球コロニー刺激因子の産生活性を阻害する物質。 - 請求項21または22記載のスクリーニング方法により得られた、顆粒球コロニー刺激因子の産生を変化させることができる物質。
- 以下の何れかである、請求項24記載の物質:
(a)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘導することができる物質;
(b)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘導しない物質;または
(c)請求項20記載の受容体と結合性を有し、かつ受容体自身がもつ顆粒球コロニー刺激因子の産生活性を阻害する物質。 - 請求項1から8の何れかに記載の遺伝子若しくはDNA断片、請求項9から14の何れかに記載のタンパク質、請求項15から17の何れかに記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項20に記載の受容体、または請求項22若しくは23記載の物質を含む医薬組成物。
- 請求項9から12の何れかに記載のタンパク質または請求項20記載の受容体との結合性を有する物質を有効成分として含有する、医薬組成物。
- 感染症または好中球減少症を含む顆粒球コロニー刺激因子の関連する疾患または状態の、診断、予防または治療のための、請求項26または27記載の医薬組成物。
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