JPS649015B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 高周波電流を超音波振動に変換しハンドピース
先端のメス部となるホーンに伝達増幅して、生体
組織を破砕する超音波メスは、血管や神経等が集
中している手術部位において、これらを傷つける
ことなく切除すべき細胞を破砕、吸引、除去する
ことができ、またイリゲーシヨン機構も装備され
ているため、組織片を生理食塩水と共に吸引、除
去することができるものである。

本考案は、マイクロサージエリー等、生体内深
部の手術に適した超音波メス用ハンドピースに関
するものである。

〔従来技術〕

超音波による生体組織の切断或いは破砕能を応
用した手術具としては、整形外科、一般外科分野
では骨や関節を切削するもの、眼科領域では白内
障の手術具、また歯科用では歯石除去用の超音波
手術具等が実用化されている。これらの超音波応
用手術具は、一般に組織を広範囲に破砕し得るだ
けの超音波振動の振幅とパワーを発揮するもので
はなく、極めて限定した術野に専用の手術具とし
て用いられているものである。

本発明者らは、先に生体組織の広範囲な分野で
十分な組織破砕能力を発揮できる超音波振動の振
幅とパワーを出し得る、超音波メス用回路、メス
部となるホーン、手術部位周辺の洗浄と破砕した
細胞片の乳化、及び乳化された細胞片を吸引、除
去するシステムからなる超音波方式のメスに関す
る発明をなした。（特開昭58−58034号公報） しかしながら、術部位が比較的体表面に近い場
合や、術野を広くとり得る術式の場合には、支障
無く有効に手術を進めることが可能であるが、手
術対象部位が生体内深部であり且つ術野が著しく
狭い場合にはかなり困難な手術を余儀なくされ、
術時間が長時間に亘ると共に、適切正確なる手術
を行なうには支障があつた。

本発明者らの従来の技術を第１図、第２図に従
い詳述する。

第１図は、従来の超音波メスのハンドピースの
全体図である。このハンドピースは、おおよそ超
音波発振器と接続されるケーブル１、コネクター
２、握り部３、保護管４、超音波メス部であるホ
ーン５、手術部位に生理食塩水等を供給するイリ
ゲーシヨンパイプ６、このイリゲーシヨンパイプ
をホーン５に近接固定させる保持具７、手術部位
の液状物質等を吸引、除去するための吸引パイプ
８とから構成されている。接続管９は握り部３と
保護管４とをネジ等により機械的に接続するパイ
プである。握り部３、接続管９および保護管４
は、術者の取り扱いを容易且つ楽に行なうため
に、アルミニウムやジユラルミン等の軽くて腐蝕
に対して強い金属、或いは合成樹脂等で構成され
る。超音波メス部となるホーン５は、超々ジユラ
ルミン、チタン合金等高周波の、機械的振動の伝
達性が良く且つ破壊に対して強い材質よりなる
が、このホーン５内には、手術部位にて発生する
血液、洗浄用の生理食塩水、ホーン５により破砕
された細胞片等を吸引、除去するための吸引孔１
０が設けてあり、この吸引孔１０は、保護管４の
外側に適宜の方法で接続したパイプジヨイント１
１を介して吸引パイプ８に接続される。吸引パイ
プ８の他の先端に吸引ニツプル１２を溶接等適切
なる方法で接続する。この吸引ニツプル１２に
は、図示していないが真空ポンプ等の吸引装置
に、図示していないがガラスビン等のトラツプを
介して接続する、塩化ビニール、シリコン樹脂等
吸引装置の吸引陰圧に耐え得る材質、形状のフレ
キシブルなチユーブを接続する。イリゲーシヨン
パイプ６は、生理食塩水等の洗浄液を手術部位に
供給するためのものであるが、ホーン５の先端部
近辺に開口端を設ける。イリゲーシヨンパイプ６
は、パイプジヨイント１１に適宜の方法で固定ま
たは接続する。イリゲーシヨンパイプ６の他の先
端には、イリゲーシヨンニツプル１３を溶接等適
切なる方法で接続する。このイリゲーシヨンニツ
プル１３には、図示していないがペリスターポン
プ等のローラー型ポンプにより、図示していない
が生理食塩水等の洗浄水容器の洗浄水を供給する
塩化ビニール、シリコン樹脂等のローラー型ポン
プのしごきに耐え得る材質、形状で且つ医学的に
安全であるフレキシブルなチユーブを接続する。
パイプ止メ具１４は、前記吸引パイプ８、及び前
記イリゲーシヨンパイプ６を前記握り部３に固定
する止メ具である。

更に、従来の超音波メスのハンドピース部の内
部構造、振動特性等について、第２図に従い説明
する。

電歪型振動子または磁歪型振動子からなる振動
子１５の前後（第２図では左右）に、ジユラルミ
ン或いは高張力アルミ合金等の高張力金属材料か
らなる裏打板１６及び前面板１７を設け、裏打板
１６、振動子１５及び前面板１７は互に、図示し
ていないが高張力金属材料からなるボルトにより
きつく接続固定する。前面板１７と超音波メス部
となるホーン５とは高張力金属材料からなるイモ
ネジ１８等、ネジにより接続固定する。この構成
からなるハンドピースの振動特性は、第２図に図
示する下段のグラフとなる。このグラフはハンド
ピース内部の各部の軸方向の振幅パターンであ
り、振動子１５の軸方向の中心部で振幅ゼロ、ま
たホーン５の絞り開始部１９の付近で振幅ゼロ、
振動子１５とホーン５の絞り開始部１９間はイモ
ネジ１８付近をピークとする弧形なる。また裏打
板１６の左端２０と振動子１５間も、裏打板１６
の左端２０が最大振幅となる半弧形となる。ホー
ン５の絞り開始部１９とホーン５の先端部２１の
間は、ホーン５の先端部２１が最大振幅となる半
弧形となる。

超音波メスの性能の１つであるホーン５の先端
部２１の振幅の大きさは、ホーン５の根元部の断
面積とホーン５の先端部２１の断面積の比に大略
反比例するので、治療対象部位や手術の程度等に
よりこの断面積を変えることにより、各種振幅の
ホーン形状をとり得る。振幅がゼロとなる振動子
１５の中心部とホーン５の絞り開始部１９間の長
さは、超音波発振周波数及び前面板１７とホーン
５を伝達する超音波音速とから計算にて求められ
る波長の1/2、即ち半波長の長さに相当する。ま
た、ホーン５の大径部である絞り開始部１９とイ
モネジ１８接合部までの長さは、1/4波長に相当
させた構造となる。

以上詳述した従来の方式による超音波メス用ハ
ンドピースの場合、メス部となるホーン５を前面
板１７に直接接続する構成となる故、十分なるホ
ーン長さを確保できず、手術対象部位が生体内深
部であり且つ術野が著しく狭い術例の場合にはか
なりに困難な手術を余儀なくされ、術時間が長時
間に亘ると共に適切適格なる手術を行なうに支障
があつた。

〔発明の目的〕

本発明は、従来の超音波メス用ハンドピース
が、生体内深部で術野が著しく狭い術例に適さな
かつた方式、構成であつたものを、改良せんとし
て研究した結果、従来の振動子に接続した前面板
とメス部となるホーンの間に適切なるジヨイント
を設けることにより、かかる不具合を解消し、広
範囲な手術症例に適した超音波メス用ハンドピー
スを完成するに至つたものである。

〔発明の構成〕

即ち、本発明は、振動子に接続した前面板とメ
ス部となるホーンの間に、1/2波長の整数倍の長
さのジヨイントを設けたことを特徴とする超音波
メス用ハンドピースである。

以下、図面にもとずき詳細に説明する。

第３図は、本発明による超音波メス用ハンドピ
ースの一実施例を示す全体図、第４図は、第３図
に示した本発明によるハンドピースの内部構造及
び振動特性を示す図である。尚、第３図及び第４
図に示す各番号の部材の内、第１図及び第２図に
より前述した従来のハンドピースの各部材と番号
が同一の箇所は、構造、材質、機能等は従来のハ
ンドピースと同じである。

前面板１７とメス部となるホーン２２の間に、
本発明によるジヨイント２３を設ける。本発明に
よるジヨイント２３と前面板１７との接続は、イ
モネジ１８等のネジによる接合が望ましく、ま
た、本発明によるジヨイント２３とホーン２２と
の接続は、イモネジによるか、ジヨイント２３側
を雌ネジ、ホーン２２側を雄ネジ、或いはジヨイ
ント２３側を雄ネジ、ホーン２２側を雌ネジのい
ずれかとするネジ接合でよい。

超音波が伝達媒体中を通過する音速Ｃ、超音波
の周波数及び超音波の波長λとの関係は、λ＝
Ｃ／で表わされる。本発明によるジヨイント２
３の材質は、ジヨイント２３の機能、即ち高速振
動を伝達するに適し、且つ耐腐蝕性に富む、超々
ジユラルミン或いはTi合金が望ましく、これら
の金属材料中では、定められた周波数で伝達す
る超音波の音速によつて波長λが決定され、ジヨ
イント２３の長さはこの波長λの1/2即ち、半波
長の整数倍にとる。第４図に示す本発明によるハ
ンドピースの振動特性のグラフは、ジヨイント２
３の長さを半波長にした場合の一実施例を示すも
のである。このグラフはハンドピース内部の各部
の軸方向の振動パターンであり、振動子１５の軸
方向の中心部で振幅ゼロ、ジヨイント２３の半波
長長さの中心部２４付近で振幅ゼロ、またホーン
２２の絞り開始部２５の付近で振幅ゼロ、振動子
１５とジヨイント２３の半波長長さの中心部２４
の間は、イモネジ１８付近をピークとする弧形と
なる。また裏打板１６の左端２０と振動子１５の
間も、裏打板１６の左端２０が最大振幅となる半
弧形となる。ジヨイント２３の半波長長さの中心
部２４とホーン２２の絞り開始部２５の間は、ジ
ヨイント２３とホーン２２の接合部２６付近をピ
ークとする弧形となる。ホーン２２の絞り開始部
２５とホーン２２の先端部２７の間は、ホーン２
２の先端部２７が最大振幅となる半弧形となる。
第４図に示すハンドピース内部構造で、本発明に
よるジヨイント２３の直径は、前面板１７及びホ
ーン２２の根元部の直径とほぼ同等にしている
故、振動パターンの腹に相当する裏打板１６の左
端２０、イモネジ１８部、ジヨイント２３とホー
ン２２の接合部２６の各々の振幅は、ほぼ同等で
ある。

超音波メスの性能の１つであるホーン２２の先
端部２７の振幅の大きさは、ホーン２２の根元部
の断面積とホーン２２の先端部２７の断面積の比
に大略反比例するので、治療対象部位や手術の程
度等によりこの断面積を変えることにより、各種
振幅のホーン形状をとり得る。本発明によるジヨ
イント２３は、ストレートであつても、第３図及
び第４図に示す通り屈曲されてもよい。この屈曲
の程度は治療対象部位や術者の好みに応じて変え
ることができ、角度０〜60度、望ましくは０〜20
度とするのがよい。

本発明によるジヨイント２３を、第１図及び第
２図に示すハンドピースに接続した、第３図及び
第４図に示す本発明によるハンドピースのイリゲ
ーシヨンパイプ２８は、ホーン２２の先端部２７
近辺迄延長し開口するのが望ましく、このイリゲ
ーシヨンパイプ２８はハンドピースの軸方向に沿
わせて、パイプ止メ具１４、パイプジヨイント１
１、保持具７にて固定する。手術部位に発生する
血液、洗浄用の生理食塩水、ホーン２２により破
砕された細胞片等を吸引、除去するための、ハン
ドピース内の吸引システムは、ホーン２２内を貫
通させた吸引孔２９及び本発明によるジヨイント
２３の適宜の位置まで削孔したジヨイント内吸引
孔３０にて行なう。このジヨイント内吸引孔３０
と吸引パイプ８との接続は、パイプジヨイント１
１部にて適宜の方法で行なう。

〔発明の効果〕

本発明の超音波メス用ハンドピースによると、
手術対象部位が生体内深部であり、且つ術野が著
しく狭い場合でも、メス部となるホーンを生体内
奥深く挿入でき、且つマイクロサージエリー等の
術式の場合でも術野を妨げることなく手術を進行
できる故、適切適格なる手術を支障なく、短時間
に行なうことができ、超音波メス本来の機能を十
分発揮し得る優れた手術装置を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は、従来の超音波メス用ハン
ドピースを説明するための図で、第１図は全体
図、第２図は内部構造及び振動特性を示す図であ
る。第３図及び第４図は、本発明の一実施例とな
る超音波メス用ハンドピースを説明するための図
で、第３図は全体部、第４図は内部構造及び振動
特性を示す図である。 ３……握り部、４……保護管、５……ホーン
（超音波メス部）、６……イリゲーシヨンパイプ、
８……吸引パイプ、９……接続管、１０……吸引
孔、１５……振動子、１６……裏打板、１７……
前面板、１８……イモネジ、２２……ホーン（超
音波メス部）、２３……ジヨイント、２８……イ
リゲーシヨンパイプ、２９，３０……吸引孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 超音波メス用ハンドピースにおいて、振動子
   に接続した前面板とメス部となるホーンの間に、
   １／２波長の整数倍の長さに相当するジヨイントを
   設けたことを特徴とするハンドピース。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の超音波メス用ハ
   ンドピースにおいて、ジヨイントが角度０乃至60
   度の範囲で屈曲していることを特徴とするハンド
   ピース。 ３ 特許請求の範囲第１項、第２項のいずれかに
   記載の超音波メス用ハンドピースにおいて、吸引
   孔をホーン内の全長及びジヨイント内の適宜の位
   置まで貫通して設けたことを特徴とするハンドピ
   ース。 ４ 特許請求の範囲第１項、第２項、第３項のい
   ずれかに記載の超音波メス用ハンドピースにおい
   て、ホーンの先端部に近接する位置で開口するイ
   リゲーシヨンパイプを、ハンドピースの軸方向に
   沿つて設置したことを特徴とするハンドピース。