JPS642186B2 - - Google Patents

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JPS642186B2
JPS642186B2 JP56126782A JP12678281A JPS642186B2 JP S642186 B2 JPS642186 B2 JP S642186B2 JP 56126782 A JP56126782 A JP 56126782A JP 12678281 A JP12678281 A JP 12678281A JP S642186 B2 JPS642186 B2 JP S642186B2
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plasma
gas
coating layer
compound
treated
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JP56126782A
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Yoshuki Kojima
Naotatsu Asahi
Tsukasa Ogawa
Koji Fujimoto
Masayuki Doi
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Hitachi Ltd
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Publication of JPS642186B2 publication Critical patent/JPS642186B2/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C4/00Coating by spraying the coating material in the molten state, e.g. by flame, plasma or electric discharge
    • C23C4/12Coating by spraying the coating material in the molten state, e.g. by flame, plasma or electric discharge characterised by the method of spraying
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
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  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
本発明は金属溶射方法に係り、特に金属のプラ
ズマ溶射によつて被処理材料の表面に硬質の被覆
を形成する金属溶射方法に関する。 金属化合物の中でもTi化合物としてのTiN、
TiCおよびTi(CN)等はすぐれた耐摩耗性およ
び耐食性が要求される部材の表面処理被覆の形成
に多く用いられており、従来PVD法(物理蒸着
法)およびCVD法(化学蒸着法)等によつて形
成されていた。しかし、これら従来方法により得
られるチタン化合物の被覆層の厚さは僅か数μm
程度であつて、充分に表面処理の目的を達成する
ことができなかつた。またこれらの方法を実施す
る装置は構造が複雑で大規模であると共に高価で
あり、また処理に著しく長い時間を必要とする。 すなわち、これらの従来方法はいずれも加熱に
よつて生成されたTiまたはTiCl4などのハロゲン
化物の蒸発粒子により処理部材の表面に被覆層を
形成する一種の蒸着法であるため、被覆層の厚み
が増加すると層内の歪が増大し、この結果生じる
残留応力によつて被覆層の密着力が低下し、場合
によつては処理部材の表面から剥離して脱落して
しまう。密着力を向上させるために処理部材と被
覆層との間に中間層を形成する方法もあるが、こ
の場合でも被覆層としてのTi化合物層の厚みは
数十μm以下に制約される。Ti化合物自体の耐摩
耗性および耐食性がすぐれているとしてもこの程
度の厚みの表面処理層では処理の目的を充分に達
成することはできない。 また、前記従来方法の中PVD法の代表的な方
法として用いられる反応性蒸着法(ARE法)で
は10-6Torr程度に排気した処理室中でTiを蒸発
させ、N2,CH4等の反応性ガスを導入し、10-4
〜10-2Torrに保持した処理室中で高圧下に陰極
グロー放電を行つてTiと反応性ガスとを反応さ
せ陰極としての被処理材料の表面にTi化合物が
蒸着される。したがつて、この方法では処理室を
高度の真空に排気する必要があると共に、均一な
蒸着被覆を得るために被処理材料を処理室で回転
させる機構が必要となり、また被覆層との密着性
をよくするために被処理材料の表面を800〜1000
℃の高温に加熱せねばならない。このためPVD
法では一般に装置が大型化かつ複雑化して高価な
ものとなる。また処理被膜の形成は数個の原子ま
たはクラスタ程度の微少な粒子の蒸着によつて行
なわれるので被膜の形成速度は極めて遅い。 一方、CVD法では処理はそれほど複雑ではな
いが被覆層の形成速度が0.01〜0.1μm/min程度
で極めて遅く、数μmの層の形成に極めて長い時
間がかかり、かつ大量の処理エネルギを必要とす
る。 蒸着法の他にTiを溶射材料としてプラズマ溶
射により表面処理層を形成することも行なわれて
いるが、この場合にはTiNやTiCを得ることがで
きない。さらにTiN等それ自体を溶射材料とす
る方法も知られているが、この場合はTiNの融
点が高いためプラズマ中でも十分な溶融が行なわ
れず得られた表面処理層が多孔質のものとなつて
耐摩耗性および耐食性が著しく低下する。 本発明の目的はこのような従来技術の欠点を解
消しTi等の金属を溶射材料とする金属溶射によ
つて比較的簡単な処理により被処理物の表面に硬
質の耐摩耗性および耐食性にすぐれた金属化合物
の表面処理層を形成することのできる金属溶射方
法を提供することにある。 本発明の前記目的は、Ti又はWを溶射材料と
して用いてプラズマ溶射し被処理材料の表面に硬
質の被覆を形成する金属溶射方法において、前記
溶射材料に対して反応性を有する酸素以外の気体
を加熱してプラズマ化し、該プラズマ中の酸素分
圧を10-3Torr以下に保持して前記溶射材料を導
入し、該溶射材料とプラズマ化された気体との反
応生成物を前記被処理材料の表面に被覆すること
を特徴とする金属溶射方法により達成される。 以下本発明の方法をさらに詳細に説明する。 まずプラズマを形成する気体としては通常Ar、
HeまたはN2が用いられ、かつ場合によつてプラ
ズマ発熱量を高めるためにH2が混合される。プ
ラズマ中ではこれらのガスの一部は励起状態とな
つているが、Ar、He等は不活性であつて溶射粒
子、たとえばTiとの間に何等の反応をも生じず、
またH2は還元作用のみを呈するのに対し、励起
されたN2は活性であつて、Ti粒子との間に著し
い反応を生ずる。このことはグロー放電中で励起
されたN2の利用によるイオンチツ化によつても
実証されている。 そこで本発明者等は上記のような反応性に富ん
だ励起されたN2あるいはCガスの利用について
検討し、溶射金属としてチツ化物あるいは炭化物
の形成自由エネルギの小さいTiに注目した。Ti
はFeやCu等の他の元素に比べ酸化物およびチツ
化物が非常に安定であると共にプラズマ中で加熱
溶融し熱的に活性になつているTiは励起され活
性になつているO2あるいはN2と容易に反応する
と考えられる。しかし、FeやCu等はチツ化物形
成自由エネルギが大きいので活性はN2と反応す
る程度は少ない。O2が極めて少ない状態ではTi
粒子とN2ガスとの反応は主にTi中へのN2の拡散
によつて支配される。溶射の場合、Ti粒子はプ
ラズマ中で加熱溶融し液相状態になつている。し
たがつて、固相状態のTiを処理するガスチツ化、
あるいはイオンチツ化に比べてその拡散速度は著
しく大きくなる。さらに溶射の場合、N2ガスと
反応するTiは微細粉末が加熱溶融された微小な
液滴が多数存在した状態にあり、バルク材の場合
に比べてN2ガスとの反応にあずかる表面積が著
しく大きくなる。尚プラズマ形成には、プラズマ
ジエツト、プラズマフレーム、アーク放電法等が
用いられる。たとえばプラズマジエツト法では水
冷W製陽極と水冷Cu製陰極ノズルとの間にアー
ク放電を形成し、そのアーク放電領域にAr,
He,N2,H2等のガスを高速で流し上記ガスを励
起してプラズマ化しCu製ノズルからプラズマガ
スを断熱膨張させて噴出させ、約10000℃の高温
の励起したマツハ1〜3の高速ジエツトを形成す
る。そのプラズマ中に粉末を投入し加熱溶融さ
せ、高速で被処理材料の表面に衝突させ被覆面を
形成する。 次にTiチツ化物を形成させるにはプラズマ中
への周囲の雰囲気ガス(主に空気)の混入の問題
があり、特にO2は溶射粒子の酸化反応を生じさ
せる。たとえば一般のプラズマジエツトによる溶
射法でのプラズマ中への周囲の雰囲気ガスの混入
はノズルから噴出したプラズマのノズルからの距
離に関係し、一般的な溶射距離である150mmでは
約20%になると報告されている。したがつて、
Tiのように酸化物の形成自由エネルギの小さい
材料ではO2がある一定以上になるとN2との反応
よりもO2との反応が優先するためにチツ化物の
形成が極めて少なくなつてしまう。本発明ではこ
のような酸素の存在量を後述する実施例5,6か
ら明らかなように酸素分圧にして10-3Torr以下
に制限してノズル付近で投入されたTi粉末がプ
ラズマ中で励起されたN2と効果的に反応してTi
チツ化物を形成するようになされている。 本発明方法においては、溶射材料としてのTi
等の粒子の粒度分布も重要な要因となる。すなわ
ち、Ti粒子が大きすぎる場合はTi中へのN2の拡
散量が少なくなり処理の目的とする特性が充分に
得らない。一方、粒子が小さすぎる場合はチツ化
反応が過度に進行してチツ化物が多くなり被覆層
の靭性が低下するとともに、チツ化物の形成によ
る粉末の溶融温度が上昇してしまい、これにより
被覆層中の気孔率が多くなり耐食性を低下させ
る。したがつて、本発明においては適度の粒度分
布を有するTi粉末を用いることによつて未反応
Tiあるいは安定なチツ化物でないTiをある程度
の量で存在させるようにすることが望ましい。粒
度分布は100μm以下、1μm以上であることが望ま
しい。 本発明方法で溶射材料として用いる金属として
はTiが望ましくその他W等も用いられるが、こ
れ以外の金属、たとえばCu,Fe等はチツ化物形
成自由エネルギが大きいために、前記のようなチ
ツ化物形成プロセスが生じ難く、有効なチツ化物
層は形成されない。尚以上Tiチツ化物の形成に
ついて説明したがTi炭化物の場合、N2ガスに代
りCH4等の炭化水素ガスを用いることによつて同
様の結果が得られる。 N2ガスをプラズマ形成ガスとして用いる効果
としてはさらに次のような点が挙げられる。プラ
ズマ形成ガスとして代表的なものとしてはAr,
He,N2等が挙げられ、これらの中ではプラズマ
ジエツトの速度はHe,Ar,N2の順になつてお
り、プラズマの温度を支配するガスのエンタルピ
ーはN2,Ar,Heの順になつている。それぞれの
ガスにH2を加えた場合にはエンタルピーが増加
する。ところで本発明のように励起されたガスに
よる反応を促進する上で金属チタン粉末がプラズ
マ中に滞留する時間が長くかつプラズマの温度が
高い方が効果的である。このような点からN2
スを用いたプラズマはプラズマジエツトの速度が
遅くかつ高いエンタルピーを有するため、Ti粉
末はプラズマ中に滞留する時間が長く、プラズマ
から熱を多く受けるので高温に加熱溶融すること
になり、Ti粉末と励起されたガスとの反応を促
進する上で有効である。N2ガスのプラズマ中に
H2ガスを加えることはプラズマのエンタルピー
を増加させることになりさらに有効となる。 次にプラズマ中に投入されるTi粉末は粉末供
給装置からキヤリヤガスを用いて運ばれる。した
がつて、キヤリヤガスはTi粉末とともにプラズ
マ中へ入ることになり、本発明の場合キヤリヤガ
スの種類も重要になる。N2ガスをキヤリヤガス
として用いれば、Tiチツ化物を形成する上で有
効になる。また、CH4等の炭化水素ガスは可燃性
であるので発熱量が大きくプラズマ形成ガスとし
て用いることはプラズマ発生装置の電極の消耗等
の点から好ましくない。しかし、キヤリヤガスと
してCH4ガスを用いることはTi炭化物を得る上
で重要な方法である。また、N2ガスプラズマ中
にキヤリヤガスとしてCH4等を用いてTiを溶射
した場合はTiの炭化物とチツ化物との複合体が
得られる。 本発明の金属溶射方法によつて被処理材料の表
面に得られる被覆層の性状および特性を以下従来
方法による場合と比較して図面によつて説明す
る。 第1図は本発明の方法によつて形成されたTi
化合物被覆層断面の金属組織を示す顕微鏡組織写
真であり、図中1は被処理材料、2は溶射層であ
る。第2図はそのX線回折結果を示す。X線回折
結果から明らかなように、本発明方法によるTi
化合物被覆層はTiNとTiで構成されている。一
方、従来の溶射方法でTiあるいはTiHを溶射し
た場合の被覆層の組織のX線回折結果を第3図に
示す。第3図中では、TiあるいはTi酸化物が認
められるだけである。表1は本発明方法による
Ti化合物被覆層ならびに従来の溶射法、PVD法
およびCVD法によるTiN被覆層のそれぞれのビ
ツカース硬度を示す。
【表】 PVD法あるいはCVD法によつて形成されたTi
化合物の硬度がHv2000であるのに比べて本発明
方法によるTi化合物層の硬度は低くなつている。
このように硬度が低い理由は本発明の被覆層は
TiとTi化合物から成つているためと考えられる。
また、PVD法あるいはCVD法によるTiN被覆層
のX線回折結果、TiN回折線が鋭いピークであ
つたのに比べて本発明方法によるTi化合物層の
結果ピークの幅が大きくなつていることから本発
明によるTi化合物が完全な化学量論的Ti化合物
から若干ずれたものになつているものとも推察さ
れる。しかし、本発明によるTi化合物では700
℃、24時間の処理後においてもその硬さおよびX
線回折結果は処理前に比べて何ら変化が認められ
ず、高温時効による変化は生じなかつた。したが
つて、本発明によるTi化合物は室温での時効変
化はもちろん耐摩耗部材として用いた場合の摩擦
による熱によつてもその硬度の低下が生じ難い。
なお、本発明によるTi化合物被覆層の硬度は溶
射条件により800〜1400程度に変化し、たとえば
N2ガスの他にCH4ガスを加えて溶射した場合は
TiCも一部形成されてその硬度をN2ガスのみに
よる場合に比べて大きくすることができる。 本発明によるTi化合物被覆層はTiとTiNある
いはTiCとの比率によつてその硬度が変化してい
る。Ti,TiNあるいはTiCのX線回折後の強度比
と硬さの関係を第4図に示す。(TiN+TiC)/
Tiの割合が0.1以上であれば硬度は耐摩耗性を満
足する値となり、一方、0.9以下であれば被覆層
は靭性を有し耐摩耗性が良好になり厚い被覆層を
形成した際もクラツク等の欠陥が生じない。 このように本発明によるTi化合物は化学量論
的に完全なTiNに比べその硬さが若干減少して
いるが、この点はTi化合物被覆層を形成すると
いう観点からは数百μmという厚い被覆層を形成
しうることを可能にしている一つの要因となつて
いる。またその硬度Hvも800〜1400であり、硬質
被覆層としては十分なもので、後述のように耐摩
耗部材として用いた場合、化学量論的なTi化合
物被覆層に比べ優れた特性を発揮する。 次に本発明によるTi化合物で表面を被覆した
部材の特性について説明する。まず、耐摩耗特性
について検討した。試験方法は大越式摩耗試験で
行つた。試験条件としては相手材をSUJ−2
(Rc60以上)とし、摩耗距離200mで潤滑油にタ
ービン油井120を用い、荷重は12.6Kgおよび18.9
Kgとした。母材としてSCM415鋼材を用い、その
表面に本発明によるTi化合物層を150μm厚さで
被覆した部材、PVD法でTiN化合物層を5μmの
厚さで被覆した部材、イオンチツ化で硬質層を
100μmの厚さで形成した部材のそれぞれを試験片
として比較した。その結果を第5図に示す。 第5図中、1は本発明方法、3はPVD法、5
はイオンチツ化法の結果で荷重は12.6Kg、2は本
発明方法、4はPVD法、6はイオンチツ化法の
結果で荷重は18.9Kgである。荷重が小さい場合、
摩耗速度が小さい領域では本発明によるTi化合
物被覆部材、PVD法によるTiN被覆部材、イオ
ンチツ化による表面硬化部材とも大差が認められ
なかつたが、摩耗速度の大きい領域では差異が生
じ、本発明によるTi化合物被覆部材は他の処理
部材に比べ優れた特性を有していた。一方、荷重
が大きい場合、本発明によるTi化合物被覆部材
は他の処理部材に比べて特に優れた特性を有して
いた。このように、本発明によるTi化合物被覆
部材は他の処理部材に比べ摩耗速度が大きい場合
あるいは高荷重下では耐摩耗性に優れていた。こ
のような理由としては、本発明方法によつて得ら
れた硬質被覆層の厚さが厚く摩耗による被覆層の
消耗で母材が摩耗しないこと、そのTi化合物被
覆層が化学量論的なTiNに比べて靭性に富んだ
ものであることが挙げられる。 次に本発明のTi化合物被覆部材の耐食性につ
いて検討した。試験方法は塩水噴霧試験を用い、
前記の摩耗試験と同様の表面処理を夫々施した試
験片を用いて行なつた。その結果、本発明の方法
によつて得られたTi化合物により被覆された部
材はPVD法によるTiN被覆部材とほぼ同等の耐
食性が得られかつチツ化部材に比べて優れてい
た。さらに摩耗試験後の試験片を用いた場合、本
発明によるTi化合物被覆部材ではその耐食性に
何ら変化はなかつたが、PVD法によりTiN被覆
部材は摩耗によつて被覆層の消耗していた部分の
耐食性は著しく低下していた。したがつて、本発
明のTi化合物被覆部材の耐食性は優れたもので
あり、特に、摩耗部材の耐食性を向上させる上で
有効なものである。 本発明の方法はさらに以下のような長所を有し
ている。まず、PVD法、CVD法では被覆層の母
材からの剥離という問題のため、数十μmという
厚い被覆層を形成するのが困難であつたのに比
べ、本発明の方法では母材からの剥離を生じるこ
となく数百μm、望ましくは100〜200μmの厚さの
Ti化合物被覆層を形成することができる。また
その形成速度もCVD法あるいはPVD法等の従来
の方法に比べ103〜105倍の高速度である。さら
に、従来の方法では処理室の大きさ等の制限によ
り被処理材料の大きさに制約があつたのに比べ、
本発明の方法では被処理材料の大きさに特に制限
はなく、従来の方法では困難であつた被覆層が必
要とされている部分だけの局部的な被覆処理が可
能である。 実施例 1 スチール製グリツドを用いて被処理材料(材質
SCM415)の表面を粗面化し、次いでプラズマト
ーチを用いて溶射を行つた。プラズマトーチは
80KW出力の装置を使用し、プラズマ形成ガスと
して市販純度のN2ガスを用い、N2ガス流量45
/mm、プラズマ出力40KWでプラズマジエツト
を形成した。N2ガスの純度に特別な制限はない
が、含有水分量の少ないものが望ましい。N2
ス流量、プラズマ出力にも特に制限はない。プラ
ズマジエツトの周囲の雰囲気の酸素分圧は
10-4Torr以下とした。酸素分圧はO2センサを用
いて測定した。なお、酸素分圧を制御する方法と
してはプラズマジエツトの周辺をN2ガスでシー
ルする公知の方法を用いた。シールガスとしては
Ar,He等の不活性ガスを用いることも可能であ
る。粗面化した被処理材料表面をまずプラズマジ
エツトで100〜150℃に予熱し被処理材料表面の付
着不純物を除いた。次に粉末供給装置からN2
スを粉末供給用ガスとしてTi粉末をプラズマジ
エツト中に投入した。プラズマ中へのTi粉末の
供給量には特別な制限はない。またTi粉末の投
入位置はプラズマトーチのプラズマジエツト出口
に近いところが望ましい。Ti粉末は市販純度
(99.9%)のものでよく、その粒径が5〜44μmの
粉末を用いた。粉末の粒径は1〜100μmの範囲内
であれば特にその粒径分布に制限はない。溶射の
際の被処理材料とプラズマトーチのノズル口との
距離(溶射距離)は70〜140mm程度が望ましい。
被処理材料とプラズマトーチとの相対速度(トラ
バース速度)は1m/secとしたが、トラバース
速度にも特に制限はない。また、溶射中の被処理
材料表面の温度は特に制限はないが、稠密なTi
化合物被覆層を得るためには高い方が望ましい。
以上のようにTi粉末を上記の条件でプラズマ溶
射し、被処理材料の表面に150μmの被覆層を形成
した。被覆層の厚さは1mm〜5μm、望ましくは
500μm〜10μmの範囲内の任意の厚さを形成でき
る。得られた被覆層のX線回折結果は前記第2図
のようでありその回折線はTiとTiNとのもので
あつてTi酸化物は認められなかつた。また、そ
の断面の組織観察結果は前記第1図に示すように
稠密な溶射被覆層であつた。その硬さは表1中に
示したようにビツカース硬度900であつた。上記
の本発明のTi化合物被覆部材の摩耗試験結果は
第5図のようであり、PVD法、CVD法による
TiN被覆部材、あるいはイオン窒化による硬化
部材に比べ優れた耐摩耗性を有していた。塩水噴
霧試験による耐食性についても本発明のTi化合
物被覆部材は他の処理材料に比べて優れたもので
あつた。 実施例 2 Ti粉末供給用ガスとしてCH4を用いTi粉末の
プラズマ溶射を行つた。他の条件は実施例1と同
様である。得られたTi化合物被覆層はX線回折
結果、TiとTiNの他にTiCの回折線が認められ
た。その被覆層の断面組織は実施例1の場合と同
様の稠密な溶射被覆層で、ビツカース硬度は表1
に示したようにHv1350になつていた。耐摩耗、
耐食性も実施例1の場合と同様に優れたものであ
つた。 実施例 3 プラズマジエツトの周辺の雰囲気の酸素分圧を
制御するために、密閉された処理室内に設置され
たプラズマトーチとその処理室を排気することが
可能な真空ポンプとを備えた装置を用いた。本実
施例では、予め処理を10-2Torr程度の圧力まで
排気し、次いでN2ガスを導入して所定の雰囲気
圧力に達した後にプラズマジエツトを発生させ処
理室内の圧力を所定の値に保持するように排気し
ながら溶射を行つた。本実施例では雰囲気圧力を
150Torrに保持して行つたが圧力値には特別な制
限はない。この場合、予め処理室内の酸素を排気
した後に酸素分圧が小さいN2ガスを導入したの
で処理室内の酸素分圧は小さくなつている。処理
室中の酸素分圧の測定値は固体電解質を用いた
O2センサで測定して10-4Torr以下であつた。他
の溶射条件は実施例1と同様である。なお本実施
例では溶射中の被処理材料の温度を高温に保つ
た。本実施例では被処理材料の加熱手段としてプ
ラズマジエツトの熱を利用したが、加熱手段とし
ての熱源を用いることも可能である。加熱温度も
特に制限はないが、本実施例では700℃とした。
溶射中の被処理材料を加熱し、あるいは減圧空間
中でプラズマジエツトを利用することにより本発
明方法でTi化合物被覆層を形成する上で以下の
ような効果が得られた。Ti粒子が被処理材料の
表面に衝突した場合、被処理材料の温度が低いて
溶射粒子は被処理材料に熱をうばわれて急冷され
るが、被処理材料の温度が高いときには溶射粒子
と被処理材料との間の温度勾配が小さくなり、そ
の結果溶射粒子は急冷されなくなる。したがつ
て、溶射された粒子が被処理材料の表面で高温に
保たれている時間が長くなると、その結果プラズ
マジエツト中でのTi粒子とN2との反応に加えて
被処理材料の表面でのTiとN2との反応およびTi
中へのNの拡散が進行する。また、プラズマジエ
ツトは減圧空間中では周辺の抵抗が小さくなるた
め、プラズマジエツトの長さが長くなり溶射Ti
粒子はプラズマジエツト高温領域に長時間滞留す
ることになる。その結果、Ti粒子とN2との反応
が促進される。さらに被処理材料の表面に溶射さ
れた粒子の凝固速度が遅いので、急冷に伴つて生
じる溶射被覆層中の凝固収縮孔等のような内部欠
陥の少ないTi化合物被覆層が得られる。本実施
例で得られたTi化合物被覆層はビツカース硬度
Hv1250で稠密なTi化合物被覆層であつた。また
その耐摩耗性および耐食性は実施例1の場合と同
等もしくはそれ以上の優れたものであつた。 実施例 4 1.6mmφのTi線材を用いN2あるいはAr,He雰
囲気中でアーク溶射を行つた。アーク溶射には直
流40KWの出力の出せる装置を用い、2本のTi線
間でアークを発生させた。その場合の電流は
150A、電圧は28Vである。前記雰囲気中で吹付
け用ガスとして約5Kg/cm2の圧縮ガスN2を用い、
溶射距離130mmで溶射を行い、被処理材料(材質
SCM21)の表面に0.3〜0.5mmの厚さの溶射被覆層
を形成した。一方、比較のため、従来の大気中溶
射をも行つた。この場合、吹付け用ガスとして圧
縮空気を用い大気中で溶射した。X線回折結果に
よれば、従来法の場合の被覆層はTiとTi酸化物
とからなるものであつたのに対し、本実施例によ
つて形成された被覆層についてはTiとTiNとの
回折線のみが得られ、その硬さはビツカース硬度
Hv1000であつた。本実施例のTi化合物被覆層の
耐摩耗性および耐食性は実施例1の場合と同等も
しくはそれよりも優れたものであつた。 実施例 5 セミトランスフア形のプラズマトーチでプラズ
マアークを発生させた後、トーチのノズル口と被
処理材料との距離を小さくし、トーチと被処理材
料とでプラズマ空間を形成させてその空間中に
Ti粉末を投入し溶射を行つた。プラズマ形成ガ
スの主成分はN2ガスであつた。プラズマノズル
の周辺にシールドガスを流しプラズマ溶射に関与
する周辺部の酸素分圧を10-3Torr以下にした。
シールドガスとしてはN2ガスを主成分とした。
用いたTi粉末は5〜44μmの粒径分布であつたが
1μm〜100μmの範囲内であれば特に制限はない。
ノズル口と被処理材料の距離は10〜20mm程度が望
ましい。被処理材料として外径150mm、長さ300
mm、厚さ5mmの管状の試料を用い、その外周、内
周面にそれぞれ1.2mm厚さの被覆層を形成した。
被覆層はビツカース硬度Hv800であり、実施例1
と同様に耐食性に優れた被覆層であつた。 実施例 6 爆発溶射装置を用い0.2mmφTi線を溶射材料と
して溶射時のプラズマ空間の雰囲気を酸素分圧
10-3Torr以下のN2ガス雰囲気として溶射を行つ
た。得られた溶射被覆層はTi化合物を主成分と
するものであり、そのビツカース硬度はHv1000
であつた。また被覆層の耐食性は実施例1の場合
とほぼ同等の特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法により生成されたTi化合
物被覆部材断面の金属組織を示す顕微鏡写真、第
2図は本発明によるTi化合物被覆層のX線回折
結果を示す図、第3図は従来方法によるTi溶射
層のX線回折結果を示す図、第4図は本発明方法
によるTi化合物被覆層の硬さと(TiN+TiC)/
Tiの比率の関係を示す図、第5図は摩耗速度と
摩耗減量との関係を示す線図である。 1……被処理材料、2……溶射層。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 1 Ti又はWを溶射材料として用いてプラズマ
    溶射し被処理材料の表面に硬質の被覆を形成する
    金属溶射方法において、前記溶射材料に対して反
    応性を有する酸素以外の気体を加熱してプラズマ
    化し、該プラズマ中の酸素分圧を10-3Torr以下
    に保持して前記溶射材料を導入し、該溶射材料と
    プラズマ化された気体との反応生成物を前記被処
    理材料の表面に被覆することを特徴とする金属溶
    射方法。
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