JPS641710Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、耐火電線用絶縁テープに関するもの
であつて、特に耐火電線の耐火層に使用される絶
縁テープの補強層にガラス繊維の糸からなり縦糸
を横糸より太くしかつ横糸を縦糸より粗の間隔に
配した織布または不織布を用いたものに関する。

耐火電線は、規格（消防庁告示）にもあるよう
に30分間に840℃まで昇温し、その間AC600Vの
耐電圧特性および0.4MΩ以上の絶縁抵抗を有さ
なければならないとされている。このような規格
に合格するためには、電線の外側は通常プラスチ
ツク層で被覆されるので、このプラスチツクが高
温で熱分解し、その導電性分解物を生じても電線
の上記電気特性を維持できるように耐火層が設け
られている。この耐火層には主としてマイカが使
用される。

ところが、マイカはりん片状であるのでテープ
状に抄造されるが、マイカのみではこのテープ状
のものを導体に巻回する際その巻回強度を維持で
きないので、抄造されたマイカを裏打材による補
強層で補強した絶縁テープを導体に巻付けること
が行われている。

従来、この裏打材の１つとしてガラス繊維織布
が用いられている。このガラス繊維織布はガラス
繊維をより合せて糸にし、さらにこれを織つたも
のである。このようなガラス繊維織布は、通常同
じ太さの糸を縦横同数にして織つたものである。
ところで、裏打材で補強した絶縁テープを導体に
巻付けるときは、この絶縁テープを引張りながら
例えばその幅の半分を重ねてらせん状に巻付け
る。この際、上記ガラス繊維織布で裏打ちした絶
縁テープを上記のように巻付けると、ガラス繊維
織布はほとんど変形しないので、巻付けられる導
体の微妙な変化や巻付ける絶縁テープの張力の変
化などにより巻付角が変動してもこの変動に容易
に追従できない。その結果巻付けた絶縁テープに
しわが生じることがあり、これにより気密性が損
われて耐火層にボイドが生じ、耐火電線としての
上記電気特性を損うことがあつた。そこで上記絶
縁テープの変形性を容易にするために横糸を縦糸
より粗にしたガラス繊維織布で裏打ちした絶縁テ
ープも知られているが、この絶縁テープを導体に
巻回するとき、絶縁テープの引張り強度が必ずし
も十分なものと言えず、高速巻付けを行なえない
ことがあつた。また、この高速巻付けを行えるよ
に縦糸を太くすると、第４図に示すように、マイ
カ層ａを横糸ｂと縦糸ｃからなる織布で裏打ちし
たとき、横糸ｂと縦糸ｃの太さが同じであると、
マイカ層ａと縦糸ｃの間に空隙ｄが生じ、縦糸ｃ
のマイカ層に対する接着面積が少なくなつて上記
した如く導体にマイカ層を裏打ち材とともに巻き
つけるときに縦糸の剥離が生じる。この剥離は横
糸相互の間隔が狭くなればなるほど、縦糸ｃのマ
イカ層ａに対する接着面積が小さくなるので起こ
り易くなる。そして、このような縦糸の剥離が生
じると、巻付けたマイカ層に上記した如く皺が生
じ、その巻付け層の気密性を損なうため、マイカ
層の外側に被覆されるプラスチツク層が高温に曝
されて分解したとき、その分解物が侵入し、この
中には導電性分解物（例えば炭化物）が含まれる
のでマイカ層の絶縁性を損なうという問題を生じ
る。

したがつて、本考案は、以上のように、従来、
絶縁テープの裏打材が通常のガラス繊維織布であ
る場合には導体に対する巻付けに問題があり、横
糸を粗にしたガラス繊維織布である場合には導体
に巻付けるときの引張り強度および導体に巻付け
たときの気密性に問題があつた点を改善するため
にガラス繊維の糸からなり縦糸を横糸より太くし
かつ横糸を縦糸より粗に配した織布または不織布
を裏打材とする補強層を有する耐火電線用絶縁テ
ープを提供するものである。

そのために、本考案の耐火電線用絶縁テープ
は、少くともマイカを有する耐火絶縁層とこの耐
火絶縁層と一体に設けられ、この耐火絶縁層を補
強する補強層を具備し、この補強層はガラス繊維
の糸からなり横糸を縦糸の3/4以下の太さ又は厚
さにしかつ同じ幅当たり横糸の本数を縦糸の本数
の20〜80％にして横糸を粗に配した織布または不
織布を有することを特徴とするものである。

本考案に用いる耐火絶縁層は、マイカをテープ
状に抄造したものが主として使用される。しかし
これに限らず水酸アルミニウムおよび／または水
酸化マグネシウムを併用しても良い。このように
併用する場合には例えば補強層の一側面にマイカ
層、他側面に水酸化アルミニウムおよび／または
水酸化マグネシウムの層を形成するようにする。
そしてマイカ層を導体側にし、水酸化アルミニウ
ムおよび／または水酸化マグネシウムを外側に位
置させると、耐火電線の耐火層の外側に用いられ
る、例えば塩化ビニル樹脂の熱分解物、例えば塩
化水素ガスを水酸化アルミニウムおよび／または
水酸化マグネシウムで吸収などにより粗止でき
る。このため、マイカの絶縁抵抗、耐電圧性を損
うことがない。

また、本考案に用いる補強層は、上記耐火絶縁
層を補強するものであつて、ガラス繊維の単糸ま
た合撚糸と呼ばれる糸から形成された織布または
不織布からなる。すなわちこれらの織布または不
織布は縦糸を横糸より太くしかつ横糸を縦糸より
粗に配して構成されている。そして織布は縦糸と
横糸を織つたものであり、不織布は縦糸と横糸を
接着剤により接着させたものである。この接着の
仕方は、横糸を縦糸の一方の側のみに配しても良
く、横糸を縦糸に順次交互に別の側に接触するよ
うにして配しても良い。縦糸および横糸の断面形
状は円形、楕円形、偏平角形その他のいずれの形
状でも良い。縦糸の断面の大きさと横糸の断面の
大きさは、縦糸には十分な引張り強度が与えられ
るもの、横糸には縦糸を布状に保持できるような
可能なかぎり小さいものが選択される。このよう
な縦糸と横糸の間隔は、例えば縦糸60本／25mmに
対し、横糸15本／25mmにするが、縦糸を相互に接
つするようにすれば気密性を良くできる。相互を
より密接することができ気密性を向上できる。こ
の際、縦糸の断面形状が偏平であれば、引張り強
度を大きくしてかつ気密性を保持し易い。

横糸は縦糸の太さ（偏平のものは厚さ）の3/4
以下が好ましく、織布の場合には横糸の間隔は同
じ幅（例えば25mm当たり）当たり横糸の本数が縦
糸の本数の20〜80％が縦糸の耐火絶縁層に対する
接着面積を大きくできる点で好ましい。この場
合、縦糸が多い場合には横糸が多く、縦糸１本当
たりの耐火絶縁層に対する接着面積が小さくなつ
ても他の縦糸でこれを補うことができるので、外
力を分散でき、縦糸の第４図に示す場合のような
剥離を少なくできる。横糸の間隔が小さいほど、
縦糸１本当たりの横糸による耐火絶縁層との間に
生じる空隙は大きく、縦糸と耐火絶縁層との接着
面積の割合を小さくするので横糸を細くする効果
が顕著に現れる。また、横糸が細いほど縦糸と耐
火絶縁層との接着面積の割合を大きくできる。な
お、不織布の場合には横糸を縦糸の一方の側のみ
に結合させることができるが、これを耐火絶縁層
に裏打ちした耐火電線用絶縁テープは導体に重ね
巻きされるので、横糸は細い方が気密性を高める
ことができる。これは他の不織布や織布の場合も
同様である。

上記耐火絶縁層と補強層は、シリコン接着剤、
エポキシ接着剤のような熱硬化性接着剤により接
着される。この接着剤を耐火絶縁層に含浸させて
も良い。

次に本考案の一実施例を第１図ないし第３図に
もとづいて説明する。

第１図は本実施例の耐火電線用絶縁テープを使
用した耐火電線の断面図、第２図はその耐火電線
用絶縁テープの断面図、第３図はその補強層に用
いるガラス織布を示す図である。

図中、１は導体で、この導体１の外側には順次
耐火層２、絶縁層３およびシース４が被覆されて
いる。ここで、絶縁層３はポリエチレン樹脂、シ
ース４は塩化ビニル樹脂からなつている。

上記耐火層２は、第２図に示す耐火電線用絶縁
テープを導体１に巻回することにより形成され
る。この耐火電線用絶縁テープは、ガラス織布２
ａと集成マイカ層２ｂをシリコン接着剤にて接着
させたものである。ここでガラス織布２ａは、第
３図に示すように断面偏平形の縦糸（JIS ECD
450−１／０）と断面偏平形の横糸（JIS ECD
900−１／０）で、前者が後者の２倍の大きさの
糸を25mm幅当り縦糸60本、横糸15本にして織つた
ものである。このようにして形成された耐火電線
用絶縁テープが集成マイカ層２ｂを内側にして半
重ね２回巻き（テープの幅の半分を重ねて順次巻
回しこれを２回くり返す）により導体１に巻回さ
れる。この際、耐火電線用絶縁テープは、強力な
引張り力を受けても縦糸がこれに耐えることがで
きるので、導体１に対する巻回を高速に行える。
この場合、耐火電線用絶縁テープは横糸が縦糸の
半分程度の大きさであり、横糸の間隔も縦糸の４
倍あるので、縦糸の集成マイカ層２ｂに対する接
着面積を横糸が小さくする程度は無視でき（第４
図の空隙ｄが小さい）、その結果縦糸の集成マイ
カ層２ｂからの剥離もなく、巻付角の変動にもよ
く追従して変形し、巻付けられ、しわを生じな
い。また、耐火電線用絶縁テープは、ガラス織布
の横糸の断面形状が小さく、縦糸の断面形状が大
きくかつ相互に密接しているので、ガラス織布２
ａが集成マイカ層２ｂを気密に覆うことができ、
このためこの耐火電線用絶縁テープにより外側の
絶縁層３およびシース４が高温にさらされて熱分
解物を生じても、これを集成マイカ層２ｂに侵入
しないようにできる。

上記のようにして作られた耐火電線用絶縁テー
プを用いて耐火層を形成した第１図に示すような
耐火電線はいずれも上記規格に合格するものであ
つた。

以上説明したように、結局本考案によれば、縦
糸を横糸より太くし、横糸を縦糸の3/4以下の太
さにし、かつ横糸の本数を同じ幅当たり縦糸の本
数の20〜80％にしたガラス織布又はガラス不織布
からなる補強層を有する耐火電線用絶縁テープを
提供できるので、縦糸と横糸を交互に結合させる
布の場合には、縦糸の強度を導体に対する高速巻
付けに必要な強度にしながら、かつ脆いマイカ層
のような耐火絶縁層に対する縦糸の接着面積を大
きくできる。このように縦糸の強度と縦糸の耐火
絶縁層に対する接着強度の両方を満足するように
縦糸と横糸の最適範囲の太さを選択し、さらに横
糸を粗に配したこと等を併せ、耐火絶縁層を導体
に気密に巻付けることができるので、耐火絶縁層
に樹脂を含浸できず、例えばマイカりん片の気密
性だけで外側プラスチツク層の熱分解物の侵入を
防ぐ耐火電線用絶縁テープとして従来にない優れ
た性能を付与できる。また、横糸を細くすること
により耐火電線用絶縁テープを導体に重ね巻きす
るときにその気密性を高めることができる。

また、横糸を節約することによりコストを低減
し、ガラス不織布を用いればさらにコスト低下を
もたらすことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例の耐火電線用絶縁テ
ープを使用した耐火電線の断面図、第２図はその
耐火電線用絶縁テープの断面図、第３図はその耐
火電線用絶縁テープに使用するガラス織布を示す
図、第４図は従来の耐火電線用絶縁テープの断面
図である。 図中、１は導体、２は耐火層、２ａはガラス織
布、２ｂは集成マイカ層、３は絶縁層、４はシー
スである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 少くともマイカを有する耐火絶縁層と、この耐
   火絶縁層と一体に設けられ、この耐火絶縁層を補
   強する補強層を具備し、この補強層はガラス繊維
   の糸からなり横糸を縦糸の3/4以下の太さ又は厚
   さにしかつ同じ幅当たり横糸の本数を縦糸の本数
   の20〜80％にして横糸を粗に配した織布または不
   織布を有することを特徴とする耐火電線用絶縁テ
   ープ。