JPS6360200B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は既設のトンネル等の地下構造物にお
ける背面注入方法に関するものである。

従来技術 従来、トンネル等の地下構造物の内部から構造
物背面に対して背面の空洞充てん裏込め注入、地
山強化や止水を目的とするグラウトの注入を施工
する際に一般に第１図に示されるような装置が採
用されている。すなわち、第１図に示す装置は地
山に形成した注入孔ａにセメントミルクｂ等によ
つてケーシングｃを固設し、該ケーシングｃの内
周面にパツキングｄを有するパツカーｅを連結し
たものであり、注入孔ａ内に削岩機のロツドを挿
入して所要深さまで削孔した後注入パイプｆをケ
ーシングｃ内に挿入し、パツカーｅのパツキング
ｄを膨張せしめて注入孔ａを密封し、ケーシング
ｃに反力を取つて薬液等を注入するものである。

しかし既設のトンネル等の地下構造物において
背面注入を行う場合にはこのような装置では問題
が生ずる。

すなわち既設の地下構造物においては以下の事
項を考慮する必要があるからである。

地下構造物内部には該構造物の使用目的に沿
つて諸設備が存在し、トンネルの場合はその他
列車、自動車等の運行もあり、注入の為の諸装
置を設置することの可能な空間は非常に狭く小
さく限定される。又そのことは設置する為の作
業域も限定されることを意味する。

構造物の背面には被圧水の存在が充分予測さ
れるので、これに抗し得る注入装置が必要とな
る。

既設の地下構造物においては、該構造物を使
用していることがほとんどであつて、注入作業
中に注入装置が脱落することは大きな事故を招
くこととなり絶対避けねばならない。

注入作業中に薬液等が漏液したり、全作業終
了後諸装置が残置することは好しくない。

従つて第１図に示す装置では大きな反力を取る
ために、ケーシングｃを注入孔ａに深く挿入して
固着する必要があるが、大型、大重量で取扱いが
大仰となり、建設工事中の注入工法には使用可能
であつても、既設の地下構造物における注入には
不適である。

発明の目的 この発明は以上のような欠点を改善する為にな
されたもので、使用する装置が小型・軽量となつ
て、小さな作業空間で注入作業が行え又安全に作
業が遂行でき、更に全作業終了後諸装置を略完全
に撤去が可能な既設のトンネル等の地下構造物に
おける背面注入工法を提供することを目的とす
る。

発明の構成 この発明にかかる既設のトンネル等地下構造物
における背面注入工法は、既設の地下構造物躯体
に鍔付ケーシングを係止固設し、該ケーシングに
バルブを介してパツカーを連結し、該パツカーか
らケーシングに連通する注入孔を削孔し、この注
入孔内に注入ノズルを挿入し、躯体自体の剪断応
力を反力として利用し、モルタル等の注入材を地
下構造物背面に注入することによつて上記の目的
を達成するものである。

実施例 以下図に示す実施例に基づきこの発明を詳細に
説明する。

〔1〕 鍔付ケーシングの固設 ケーシング１は円筒状の挿通部１１の一端部
外周には鍔状の係止部１６が形成され、他端部
外周には雄ネジ１４が螺設されている。係止部
１６が形成された側の端部内周面は先端に行く
に従つて徐々に内径が小さくなるようテーパ状
に形成されており、且つこのテーパ状の内周面
には雌ネジ１７が螺設されている。また係止部
１６が形成された側の端部外側面には中心線方
向に一定長さスリツト１８が複数形成されてい
る。

このケーシング１をセグメントｓに削孔した
係止部１６よりも若干内径の小さい定着孔２２
内に嵌着する。定着孔２２は第６図に示すよう
に最奥部に若干径の大きな拡孔部２５が削孔機
９の拡孔ビツト９１によつて形成されている。
ケーシング１を係止部１６側から定着孔２２内
に挿入する。ケーシング１にはスリツト１８が
形成されているため係止部１６が定着孔２２内
周面に当接しても収縮して押し入れることが可
能となる。係止部１６が拡孔部２５に到達する
と係止部１６が弾力によつて拡き拡孔部２５に
係止する。

このケーシング１内に円筒状の内張りリング
１９を嵌着する。内張りリング１９の外径はケ
ーシング１の雄ネジ１４側の内径と略同一に形
成されており、外周には雄ネジ２０が螺設され
ている。また内張りリング１９の外周の一端側
は外径が先端に行くに従つて徐々に小さくなる
ようテーパ状に形成されている。この内張りリ
ング１９を外周がテーパ状となつた側からケー
シング１内に挿入して前進せしめる。内張りリ
ング１９がケーシング１の雌ネジ１７まで到達
したとき回転して、内張りリング１９の雄ネジ
２０をケーシング１の雌ネジ１７に螺合して更
に前進せしめる。内張りリング１９の前進とと
もにケーシング１が拡開されて係止部１６が更
に強固に拡孔部２５に係止せしめられる。

その後ケーシング１外周面と定着孔２２内周
面間の隙間にモルタル、合成樹脂等１０を注入
してケーシング１の固設を完了する。

〔2〕 パツカー等の取付け 躯体であるセグメントｓに固設した鍔付きケ
ーシング１にパツカー５等を取付ける。

ケーシング１の雄ネジ１４にケーシング１を
封鎖するためのバルブ６を螺合して連結する。
バルブ６としては公知のスルースバルブ或いは
ボールコツクバルブ等が使用可能である。

バルブ６には更に円周面にパツキング５１が
装着された円筒状のパツカー５を螺合して連結
する。パツカー５のバルブ６とは反対側端部に
は内周面に螺設された雌ネジに螺合して、中央
にロツド挿通孔５２が形成され外周にハンドル
５３が突設されたパツキング締め具５４が取付
けられている。

〔3〕 注入孔削孔 パツカー５のパツキング締め具側から注入孔
削孔用ドリルロツド８を挿入し、ドリルマシン
にて注入孔２を削孔する。このときバルブ６は
開にし、パツカー５のパツキング締め具５４を
回転してパツキング５１を内側へ膨張せしめ
て、ドリルロツド８とパツキング５１との隙間
を封鎖して削孔作業を行う。

〔4〕 注入作業 パツカー５のパツキング締め具５４側から注
入パイプ７を挿入し、注入先端を注入孔２に当
てがつて注入ポンプ７４を駆動せしめてモルタ
ル、セメントミルク、水ガラス或いはウレタン
等の高分子系の薬液を圧送し注入作業を開始す
る。このときバルブ６は開口しパツカー５のパ
ツキング締め具５４を回転してパツキング５１
を内側へ膨張せしめて注入パイプ７とパツキン
グ５１との隙間を封鎖して注入作業を行う。

〔5〕 装置の取り外し 注入が終了した後一旦コツク７２を閉にして
注入ホース７３を切り離し、その後コツク７２
を開にして漏水が無ければ注入パイプ７を、次
にパツカー５を取外す。

この時点でバルブ６は閉にしておく。

バルブ６を開にして漏水の有無を確認し、漏
水が無ければバルブ６を取り外す。

ケーシング１の端部は酸素、アセチレン等に
て切断し、残孔はセメントミルク等にて充てん
する。

発明の効果 この発明にかかる既設のトンネル等地下構造物
における背面注入工法は以上のような構成を有す
るため以下のような効果を得ることができる。

セグメントにケーシングを固設するためケー
シングが小型、軽量となつて作業が極めて容易
に行え、また小さなスペースでも作業が行え
る。

軟弱な地山よりも安全性が高いセグメントに
固設するため、鍔状の係止部を有するケーシン
グを定着孔内に係止固定するだけでよくケーシ
ングの装着が容易である。

軟弱な地山よりも安定性が高いセグメントに
ケーシングを固設するため、大きく確実な引き
抜き応力が期待でき、更にセグメントから離脱
することなく安全に作業を遂行できる。

注入作業後装置を略完全に撤去できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の注入装置の縦断面図、第２図は
ケーシングの一実施例の縦断面図、第３図は内張
りリングの正面図、第４図はＡ−Ａ線断面図、第
５図〜第８図はケーシングの固設作業順序縦断面
図、第９図及び第１０図はこの発明に使用する注
入装置の一実施例の縦断面図である。 １……ケーシング、２……注入孔、５……パツ
カー、６……バルブ、７……注入パイプ、８……
ドリルロツド、１１……挿通部、１６……係止
部、１８……スリツト、１９……内張りリング。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 既設のトンネル等地下構造物における背面注
   入方法において、地下構造物躯体に削孔された注
   入用ケーシング取付孔の一部分を拡孔し、該拡孔
   部に鍔状の係止部を係止してケーシングをケーシ
   ング取付孔に固設せしめ、該ケーシングにバルブ
   を介してパツカーを連結し該パツカーからケーシ
   ングと連通する注入孔内に注入ノズルを挿入し、
   躯体自体の剪断応力を反力として利用し注入材を
   地下構造物背面に注入することを特徴とする既設
   のトンネル等地下構造物における背面注入方法。