JPS6358303B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は自動車のすべり制限差動装置などに使
用される改良形流体圧方式駆動制限歯車列に関す
る。

自動車の差動装置は相等しい駆動トルクを左右
の駆動軸に伝達する。等しいトルクを車両の両輪
に伝達するというこの特性は、１方の車輪が他方
よりも大きい駆動力をもつときは望ましいもので
はない。

自動車がすべりを生じる表面上でも走行できる
ようにするため、各種タイプのすべり制限作動装
置が開発されている。車両が方向を変えるとき、
タイヤにすべりを生じることなく曲線走行できる
ように、左右の駆動輪に回転速度の差を許しなが
ら有効なトルクを伝えるためにすべり制限作動装
置は使用される。

「流体圧方式車両すべり制限歯車列」なる名称
の、1978年４月18日付の米国特許第4084654号に
は油圧方式の装置が開示されている。その装置で
は差動歯車列の駆動力を制限するばかりでなくこ
の歯車列を冷却するためにも油が使用されてい
る。この特許のすべり制限歯車列においては、流
体抵抗を利用して遊星歯車列の駆動力を制限す
る。しかしながら、この特許装置においては、サ
イドプレートが歯車の先端部にぴつたりはまるよ
う形成されていて、これらの歯車の周縁部をすき
まなく取囲む室が形成されている。その上、この
すべり制限歯車列に使用の遊星歯車は動かないよ
うに支持された軸受に装着されているので、室壁
に対する遊星歯車同志の間隔は固定されていて変
らない。

摩擦力を利用するすべり制限差動装置の先行技
術の例としては、米国ミシガン州ワーレン市に所
在のアスプロ社のデトロイト自動車事業部では、
１対の相互に噛合うローラ型はすば小歯車を使用
する歯車型機構を生産している。同軸に調心され
た太陽歯車対の各太陽歯車には左右の駆動車軸が
連結されている。これらの太陽歯車の１つには１
つの小歯車が係合して差動連動を生じる。本機構
の歯車の幾何学的配置のため小歯車はこれらを取
囲むポケツト状小室の室壁に対し押しつけられる
ので、これら小歯車とポケツトの間にはこすり摩
擦が生じる。先行技術による装置の例にもれず、
摩擦によるこすり作用だけでは完全なすべり制限
を実現することはできない。

本発明の１目的は自動車の車軸差動装置または
差動動力分配装置などに使用される、比較的廉価
で簡単な構造のすべり制限歯車列を提供すること
にある。

本発明の別の目的は、前進後退の両方向に対し
一様なトルク伝達特性を有する、流体圧方式の車
両用すべり制限歯車列を提供することにある。

本発明の上述の目的及びその他の目的は動力分
配装置または差動装置などに使用される、油圧方
式の改良型すべり制限歯車列により達成される。
本発明は遊星歯車型差動装置の歯車列に対し性能
の向上及び流体圧方式によるすべり制限の改善を
もたらすものである。遊星歯車列は内側ハウジン
グを取囲む外側の流体耐密ハウジングを有する。
流体を内側ハウジングの中に供給し且つこの内側
ハウジングを一般に流体で充たされた状態に維持
する装置が備えられる。内側ハウジングは遊星歯
車列を含み、この遊星歯車列は１つの太陽歯車、
複数個の遊星歯車及び内ば歯車を含み、これらの
歯車は全て同一平面内にある。歯車の対向する両
側に、緊密衝合関係にプレートが設けられてい
て、これら両プレートの部分は歯車の周縁部を取
囲んで遊星歯車を含む室を形成する。両プレート
は同軸調心された流体入口孔及び出口孔を含み、
これらの流体孔は歯車の歯と平行に位置するが歯
車の噛合点からはある距離だけ離れている。流体
は歯車により流体入口孔から歯車の噛合点に運ば
れ、こゝで行なわれる流体の絞出し作用は歯車の
動きに抵抗する力を発生する。本発明による改良
型すべり制限歯車列は、遊星歯車を動かしてその
先端部をこれら歯車の収められている室の壁面に
対し密接衝合関係に定置する装置を備える。歯車
の歯が室壁に向つて移動すると、歯の間を通り抜
ける流体の流れは制限され、ために歯車に対する
抵抗力は増大し、こうして歯車列のすべり制限が
改善される。歯車の歯先端部と室壁間の摩擦は、
流体の絞り出し作用による前記抵抗に追加して、
歯車の歯の動きに対する抵抗を生じる。歯車を移
動自在に定置する装置は遊星歯車を軸受にすきま
ばめする装置を含む。

本発明の別の特徴によれば、対をなす遊星歯車
の片方もしくはその双方は軸受に装着されてない
ので、これらの歯車は歯車室の内部で浮動するこ
とになる。遊星歯車に働く種々の力は遊星歯車の
歯先端部を歯車室の壁に押しつけて歯先端部と室
壁間に密接衝合関係を生ぜしめる。内ばリング歯
車と太陽歯車との間に、方位の逆転する遊星歯車
対が交互に配置されている。これら遊星歯車対の
うちの半分は１つの方位を向き、残りの半分は別
の方位を向いて作動する。このため、すべり制限
歯車列が前進方向に動かされても後退方向に動か
されても、改善されたすべり制限及びより円滑に
して一様な歯車列の作動を実現することができ
る。

本発明は米国特許第4084654号に開示のすべき
制限歯車列駆動装置の改良である。

本発明により提供される、車両用の改良形すべ
り制限歯車列駆動装置は、例えば車軸の動力接断
に使用する動力分配装置の差動装置のような、自
動車用差動歯車列に適用するのに特に適してい
る。第１図は代表的な適用例として車軸用差動装
置を示す。本発明は前輪駆動装置に使用して有利
であるが、通例の後輪駆動装置にも同様に有用で
ある。駆動力は適当な駆動源、例えば適当な動力
伝達装置に連結された自動車エンジンから、駆動
軸１２を介して車軸差動駆動装置１０に供給され
る。第１と第２の車軸１４，１５は車軸差動装置
１０により駆動される。車軸１４，１５はそれぞ
れの車輪１６，１７を駆動する。車両が直線走行
するとき、差動装置１０は両車輪１６，１７を等
速で回転させる。車両が曲線走行するとき、差動
装置１０は車軸を異なる速度で回転させる。

第２図を参照して、同図には流体圧方式すべり
制限車軸差動装置２０が示されているが、これは
前記米国特許第4084654号に開示のものと同様な
構造を有する。本発明が車両の動力分配装置など
への適用にも適していることは明らかである。外
側ハウジング２２は内側ハウジング２４を収用す
る。内側ハウジング２４は駆動軸２６から駆動力
の供給を受けるが、駆動軸２６は通常の結合歯車
装置３０を介してハイポイド歯車２８に結合して
いる。内側ハウジング２４はボルト３２（代表と
してその１つを示す）によりハイポイド歯車２８
に固定される。内側ハウジング２４は適当な手段
により軸受装置３４上に装着される。車軸３６と
３７は差動装置２０により駆動される。遊星差動
歯車装置４０が内側ハウジング２４内に収められ
ている。

第３図は遊星歯車装置４０の構成部品を示す。
内ば歯車５０は外に突出する周縁フランジ５２を
備え、このフランジ５２はハイポイド歯車２８と
内側ハウジング２４の間にサンドイツチ状に挾ま
れる。リング歯車５０は駆動軸２６からの動力を
内側ハウジング２４に結合する。遊星歯車６０，
６１の複数個の組（代表としてその１組を示す）
がそれぞれリング歯車５０と太陽歯車６２とに係
合する。なお、太陽歯車６２は、スプライン軸を
形成する車軸３７と係合する、内面スプライン穴
６３を有する。

左車軸カバープレート７０は車軸３６と係合す
る内面スプライン穴７１を有する。右車軸カバー
プレート８０は上方突出中心部８２を有し、その
上面は左車軸カバープレートの内面と衝合する。
左と右の車軸カバープレート７０と８０はナツト
８４（その１つを代表的に図示する）と係合する
ボルト８５（その１つを代表的に図示する）によ
りボルト締めされている。図示のように、車軸カ
バープレート８０はその中に太陽歯車６２と複数
個の遊星歯車６０，６１とを取囲む室を有する。
両車軸カバープレートは共にボルト締めされて、
組となつた遊星歯車６０，６１を収める遊星歯車
箱を形成する。遊星歯車６０，６１はアルミニウ
ム、ニツケル、青銅などの軸受材料で作られた軸
受スリーブ９０（代表的にその２つを図示する）
の周りを回転する。スリーブ軸受９０の外径は遊
星歯車６０，６１を貫通する軸方向の腔口９２の
内径より小さい。スリーブ軸受９０のはめ合いは
ゆるくしてあるので、遊星歯車６０，６１の回軸
転は漂動することができる。右車軸カバープレー
ト８０は例えばテフロン含浸鋳鉄材料または硬化
亜鉛被覆材料でつくられるのに対し、歯車類は例
えば表面硬化処理を施した4330番合金鋼でつくら
れる。異種材料の使用によりカバープレート８０
や歯車のかじりの発生はこれを阻止することがで
きる。

カバープレート８０を構成する各サイドプレー
トは油出入口孔９６を備え、これら油孔のいくつ
かは２つのプレート７０と８０の間で同軸上に並
んでいて、歯車の冷却を行なう。残りの油孔９６
は同一中心線上に並んでいない。しかし、これら
の油孔は全て遊星差動歯車装置のうちの１つの歯
車の歯面に関してはこれに接し且つこれに平行に
配置されている。これらの非調心油孔の役割は、
油やその他適当な流体がこれらの油孔によつて歯
車の歯と歯の間の隙間に導入されるので、油が歯
車の歯に乗つて運ばれこの歯車と隣接する歯車と
の噛合点に到るようにすることにある。噛合点に
おいて、歯車は歯車ポンプとして働き油を絞り出
すので、油は噛合う両歯車の歯の回りのあらゆる
方向に噴出する。その結果、油は流体抵抗により
歯車の回転に対して抵抗する。プレート７０と８
０は歯車の先端面に対しぴつたりと接触し、室１
００，１０１，１０２，１０３（代表的に図示す
る）がこれらプレート中に歯車の歯の先端面を取
囲むように形成される。サイドプレート中の油孔
は隣接する歯車間の噛合い点にはなく噛合点から
離れているので、油のポンプ作用はちようど油孔
のところで起きるのではなくて、油孔から離れて
いる比較的緊密に密封された区域において起きる
ので、歯車の運動に対する抵抗が生ぜしめられる
ことになる。遊星歯車６０，６１は又スリーブ軸
受を伴わずに使用することもできる。こうすれば
遊星歯車はプレート７０，８０により形成された
室内に浮動することができて、これは遊星歯車を
スリーブ軸受上にゆるく装着したのと等しい効果
を生じる。

車軸３６，３７の１つがもう１つの車軸の速度
と異なる速度で回転するとき、車軸３６に連結さ
れているリング歯車５２は車軸３７に連結されて
いる太陽歯車６２の角速度と異なる角速度で回転
する。リング歯車と太陽歯車の角速度に差がある
ため、遊星歯車６０，６１に回転が生じる。これ
ら遊星歯車の回転は前述のように流体により抵抗
を受ける。遊星歯車の中心点６０′，６１′が固定
軸の周りに回転するよう拘束されていないと、噛
合つている両歯車を離そうとする反力に応答して
遊星歯車６０，６１は動き、トルク反力が差動歯
車列の各要素歯車に対し及ぼされることになる。
遊星歯車の圧力角は25度に選ばれている。標準の
25度の圧力角をもつ歯車と比較して、25度よりも
大きい圧力角をもつ歯車は回転力が強いばかりで
なく噛合う両歯車を離そうとする力も又大きいも
のがある。遊星歯車はそれらが収められている
夫々の室内で分離力及びトルク反力に応答して自
由に動くことができるので、これら遊星歯車の歯
の先端部すなわち歯の外周面は室壁内面に押圧さ
れ内面の諸部分と緊密衝合関係を形成する。この
衝合関係が更に室内部における流体の流れを制限
し、歯車と室壁の間の摩擦力が増し、そのため歯
車列に対する抵抗力が増す。

第４図は交互に配置された遊星歯車の対６０，
６１と対１１０，１１１との組を示す。図から明
らかなように、隣接する室がサイドプレート８２
の内部に対称に形成されているので、隣接する室
の壁面も又対称に配置されている。それぞれの隣
接する対に属する両歯車は、太陽歯車や内ばリン
グ歯車に関して、その回転方向が互に逆である。
右サイドプレート８０は遊星歯車室を有し、これ
ら遊星歯車室は遊星歯車が太陽歯車６２の周りに
円周上に離隔して配置された歯車対の組を形成す
るよう配置されている。

１つの組に属する歯車対の回転軸はそれぞれ共
通の直線６３，１１３上にあり、これらの直線は
歯車中心の移動の結果として僅かに転位してい
る。これら共通線のうちのあるものは１つの方位
をとり、ほかのものは、これと異なる反対の方位
をとる。歯車対の組のこの対称配置のため、歯車
が相互にある１つの方向に回転しようとも或は又
これと異なるほかの方向に回転しようとも、実質
的には同一の全体としての抵抗力が生じる。１つ
の回転方向では、１対の歯車はある特定量の抵抗
力を生じる。反対の回転方向では、この同じ歯車
対は異なる量の抵抗力を生じる。遊星歯車対が交
互に同一方位に配列されているため差動歯車の円
滑な係合が生じ歯車が突然動かなくなる傾向は軽
減される。第４図に示すように、交替する歯車対
を対称に配列することにより、歯車がある１つの
方向に動こうとも或は又別の方向に動こうとも、
これら歯車対の組は全体として同様な抵抗力を生
じる。

第４図で遊星歯車１１０，１１１の中心１１
０′，１１１′は軸受により支持されていない、即
ち室中に浮動している。歯車に及ぼされる力に応
答して歯車の中心が動くと、歯車の歯の先端は室
の壁面に自由に接触し、歯車の運動に対する抵抗
を増大させ、歯車のすべり制限をも増大させる。

【図面の簡単な説明】

第１図は代表的な自動車差動装置の略図であ
る。第２図は流体圧方式すべり制限装置を組込ん
だ自動車差動装置の断面図である。第３図は改良
型流体圧方式すべり制限歯車列の部分の分解図で
ある。第４図は本発明による遊星歯車列の部分組
立体の平面図である。 ２０……流体圧方式すべり制限歯車列、２２…
…外側ハウジング、２４……内側ハウジング、５
０……内ばリング歯車、６０，６１，１１０，１
１１……遊星歯車列、歯車対、歯車対の組、遊星
歯車、６０′，６１′，１１０′，１１１′……回転
軸、６２……太陽歯車、６３，１１３……共通
線、７０，８０……プレート装置、９０……（隙
間ばめ関係に装着）する装置、隙間ばめ軸受、９
６……流体入口孔、流体出口孔、１００，１０
１，１０２，１０３……流体で充たされた状態
（室）、１１０，１１１……浮動している遊星歯
車。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 差動装置などを含む動力分配装置に使用する
   改良形流体圧方式すべり制限歯車列であつて、流
   体耐密外側ハウジング、内側ハウジング、この内
   側ハウジング内に納められる遊星歯車列を備え、
   この歯車列は１つの太陽歯車と、複数個の遊星歯
   車と１つの内ばリング歯車とを含み、前記遊星歯
   車の対向する両側にこれら歯車と密接衝合関係に
   定置されると共にこれら歯車の周縁部を密接して
   取囲むプレート装置を備え、前記内側ハウジング
   は一般に流体で充たされた状態に維持されている
   歯車列において、 前記歯車に働く流体の抗力を増やすため、前記
   遊星歯車の歯の端部が動いてこれら歯車を取囲む
   プレート装置と密接衝合関係を結ぶことができる
   ようにこれら遊星歯車の少なくとも１つを隙間ば
   め関係に装着する装置を備え、 前記プレート装置は、前記歯車の歯とは平行関
   係にあるがこれら歯車の噛合点から或る距離だけ
   離れて同歯車の周縁部の回りに配置される、流体
   をこれら歯車の噛合点と、前記遊星歯車の歯に働
   く流体圧を増やすため前記隙間ばめ装置により前
   記プレート装置に対しより密接した間隔にもたら
   された前記少なくとも１つの遊星歯車とこのプレ
   ート装置の間とに、供給するための流体入口孔お
   よび流体出口孔を含み、よつて流体圧方式すべり
   制限を実現するためこれら遊星歯車に働く流体の
   抗力を増すようにするものであることを特徴とす
   る改良型流体圧方式すべり制限歯車列。 ２ 前記遊星歯車は前記太陽歯車の周りに円周上
   に離隔して配置される歯車対の組を形成し、各遊
   星歯車は回転軸をもち、１つの組に属する遊星歯
   車の回転軸は予め定められた方位をもつた１つの
   共通線上に横たわり、前記遊星歯車の組の半分に
   対するこのような共通線は１つの方位をもち、残
   りの半分はこの方位とは異なる、これと反対の方
   位をもつので、それぞれの組に働くトルク負荷は
   全体として前記遊星歯車がどちらの方向に回転し
   ても相等しい量だけ流体の抗力を増大させて、流
   体圧制限力をどちらの回転方向でも等量だけ増大
   させる特許請求の範囲第１項の歯車列駆動装置。 ３ 前記装着する装置は前記少なくとも１つの遊
   星歯車用の隙間ばめ軸受を含む特許請求の範囲第
   １項の歯車列駆動装置。 ４ 遊星歯車の少なくとも１つは浮動している特
   許請求の範囲第１項の歯車列。