JPS6349542Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は直接噴射式デイーゼルエンジンの改良
に関するものである。

（従来技術） 直接噴射式デイーゼルエンジンのなかには、い
わゆるマン型として呼ばれるように、ピストンに
この頂壁に開口するキヤビテイが形成され、燃料
が該キヤビテイ壁面に沿つて流れるように噴射さ
れる蒸発燃焼式のものがある。そして、このよう
な蒸発燃焼式の直接噴射式デイーゼルエンジンに
は、燃料が極力薄膜状となつてキヤビテイ壁面に
広がるように、スワールを、ピストン周方向に旋
回する旋回流となるようにする一方、燃料が該ス
ワールと同方向に流れるように噴射するようにし
たものがある。

ところで、このようなデイーゼルエンジンにお
いては、特に高負荷時の出力向上のため燃料を極
力キヤビテイ内で完全燃焼させることが望まし
く、このためには、吸入空気と共にキヤビテイ内
を流れる燃料がキヤビテイより外に逃げることす
なわち燃焼ガスの吹上がりを防止することが重要
となる。このため、キヤビテイの開口全周縁部に
この内方に向かうようなリツプ部を形成すること
が考えられるが、このようにした場合には、上記
リツプ部による絞り損失が極めて大きくなると共
に、該リツプ部によつていわゆるスキツシユと燃
料とのミキシングが阻害されて、出力向上の上で
不利になつてしまうことになる。

なお、実開昭55−142628号公報には、上記リツ
プ部をキヤビテイ開口縁の一部にのみ設けるよう
にしたものが開示されているが、これはスワール
とスキツシユとが互いに直交するようにするため
のもので、燃料をスワールの方向に沿つて流す蒸
発燃焼式のものではない。

（考案の目的） 本考案は以上のような事情を勘案してなされた
もので、スキツシユを利用した燃料と吸入空気と
の十分なミキシングが確保されると共に、大きな
絞り損失を伴なうことなく燃焼ガスの吹上がりを
防止すなわちキヤビテイ内の空気の利用率を高め
るようにした直接噴射式デイーゼルエンジンを提
供することを目的とする。

（考案の構成） 前述の目的を達成するため、本考案にあつて
は、次のような構成としてある。すなわち、 ピストンにこの頂壁に開口するキヤビテイが形
成され、該キヤビテイ側壁に向けて、かつ前記ピ
ストンの周方向に旋回されるスワールの方向と同
方向に向けて燃料が噴射される直接噴射式デイー
ゼルエンジンにおいて、 前記キヤビテイの開口縁に、前記燃料の流れ方
向終端部に向かうにつれて徐々に幅広くなるリツ
プ部が形成され、 前記リツプ部の燃料流れ方向終端付近に、該リ
ツプ部下方において、該リツプ部に沿つて流れる
ガスと略直交するように前記キヤビテイ内方に突
出して、該リツプ部の下方で該リツプ部に沿つて
流れるガスを前記キヤビテイのほぼ中心方向へ向
けて偏向させるための段部が形成されている、 ような構成としてある。

このように、リツプ部の幅の設定により、スキ
ツシユによる燃料と空気との良好なミキシングが
先ず確保される。勿論、このリツプ部は、キヤビ
テイから燃料と空気との混合物が流出しようとす
る傾向が強くなる位置ほど幅広くされている一
方、スキツシユによる混合が行われる位置の幅は
小さくあるいは全く存在しないようにされるの
で、上述した良好なミキシングを確保しつつリツ
プ部形成に伴なう絞り損失というものが最小限に
止められることになる。

また、キヤビテイ内での燃料と空気との混合物
は、燃料の流れ方向においてリツプ部の終端付近
となつた位置で、段部によつてキヤビテイのほほ
中心に向かうように偏向されて再び当該キヤビテ
イ内に止められるような作用を受けるので、この
キヤビテイ内での燃料と空気との混合が十分に行
われることになる。

（実施例） 第１図において、１はシリンダブロツク、２は
シリンダヘツドで、シリンダブロツク１内に摺動
自在に嵌挿されたピストン３には、この頂部に開
口するほぼ球状のキヤビテイ４が形成されてい
る。そして、吸入空気は、ピストン３の軸心を中
心として旋回するスワールとされるようになつて
おり、このため吸気ポート５が、第２図に示すよ
うにいわゆるヘリカルポートとされている。

前記シリンダヘツド２には燃料噴射弁６が設け
られ、該燃料噴射弁６は、実施例では燃料噴射口
が１つのシングルポイントタイプとされて、その
噴射方向は、上記スワールと同方向となるよう
に、前記キヤビテイの側壁に向けて指向されてい
る。

前記キヤビテイ４の開口縁にはリツプ部７が形
成されており、該リツプ部７は、第３図〜第５図
に示すように、燃料の流れ方向終端部に向かうに
つれて徐々にその幅が小さくなつている。すなわ
ち、燃料は第３図反時計方向に流れることになる
た、ピストン３に形成された燃料噴射弁用の切欠
部３ａを始端として燃料の流れを考えた場合、該
切欠部３ａより流れ方向中間部分まではリツプ部
が存在せず、この流れ方向中間部分よりリツプ部
が形成され始めて、この中間部分より上記切欠部
３ａに向かうにつれてその幅が徐々に大きくなつ
ている。

また、上記リツプ部７の燃料流れ方向終端部付
近には、第３図紙面直角方向に伸びる段部１０が
形成されている。すなわち、この段部１０は、リ
ツプ部７の下方において、リツプ部７に沿うガス
の流れと略直交ようにキヤビテイ４内方に突出し
て形成されている。これにより、リツプ部７の下
方において（キヤビテイ４内において）該リツプ
部７に沿つて流れるガスは、段部１０によつてキ
ヤビテイ４のほぼ中心に向けて偏向され、当該キ
ヤビテイ４から流出してしまうような事態がより
一層確実に回避される。

なお、第１図中８はグロープラグ、第２図中９
は排気ポートである。

上記構成において、吸気行程にあつては、吸入
空気が、キヤビテイ４内において第３図〜第５図
反時計方向に流れるスワールとなる。そして、圧
縮行程にあつては、その上死点付近においてスキ
ツシユが生じると共に、燃料噴射弁より燃料が噴
射される。

ここで、燃料が指向されているキヤビテイ４の
部分にはリツプ部が存在しないため、この部分の
スキツシユの勢いが強く、このため上記燃料噴射
弁６から噴射された燃料と上記スキツシユによる
吸入空気とが十分にミキシングされることにな
る。

また、キヤビテイ４内で燃焼されつつある燃焼
ガスは、燃料の流れ方向終端部で該キヤビテイ４
から第１図上方へ逃げようとするが、この逃げよ
うとする部分にはリツプ部７が存在するため、こ
の燃焼ガスの逃げすなわち吹上がりが防止される
こととなる。勿論、この燃焼ガスの吹上がりは、
燃料の流れ方向下流側ほど強くなるものである
が、本考案においては、この燃焼ガスの吹上がり
が強くなるのに応じてリツプ部７の幅を大きくし
てあるので、当該吹上がりを確実に防止しつつ、
このリツプ部７に起因する絞り損失というものが
小さいものとされる。

さらに、リツプ部４に沿つて流れるキヤビテイ
４内の燃焼ガスは、段部１０によつて、キヤビテ
イ４の壁面から剥離されつつ該キヤビテイ４のほ
ぼ中心方向に向かうように偏向される。これによ
り、キヤビテイ４内での燃料と空気とのミキシン
グより効果的に行われて、燃焼がより一層良好に
行われることとなる。

（考案の効果） 本考案は以上述べたことから明らかなように、
スキツシユを利用した燃料と吸入空気との十分な
ミキシングが得られる一方、リツプ部によつて燃
焼ガスの吹上がりを防止しつつ段部を利用したキ
ヤビテイ内での空気利用率を向上させることがで
きる。また、上記リツプ部は、その幅の設定によ
つて、燃料の吹上がりの強さの位置関係を考慮し
て必要最小限に設けてあるので、該リツプ部によ
る絞り損失も小さいものとなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に示す縦断面図。第
２図はキヤビテイに対する吸・排気ポートの配置
関係を示す平面図。第３図はキヤビテイ部分を示
す平面図。第４図は第３図の−線断面図。第
５図は第３図の−線断面図。 ３：ピストン、４：キヤビテイ、５：吸気ポー
ト、６：燃料噴射弁、７：リツプ部、１０：段
部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ピストンにこの頂壁に開口するキヤビテイが形
   成され、該キヤビテイ側壁に向けて、かつ前記ピ
   ストンの周方向に旋回されるスワールの方向と同
   方向に向けて燃料が噴射される直接噴射式デイー
   ゼルエンジンにおいて、 前記キヤビテイの開口縁に、前記燃料の流れ方
   向終端部に向かうにつれて徐々に幅広くなるリツ
   プ部が形成され、 前記リツプ部の燃料流れ方向終端付近に、該リ
   ツプ部下方において、該リツプ部に沿つて流れる
   ガスと略直交するように前記キヤビテイ内方に突
   出して、該リツプ部の下方で該リツプ部に沿つて
   流れるガスを前記キヤビテイのほぼ中心方向へ向
   けて偏向させるための段部が形成されている、 ことを特徴とする直接噴射式デイーゼルエンジ
   ン。