JPS6344282B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、高電界におけるコイル間耐電圧特
性に優れた油入電気機器の巻線構造に関するもの
である。

油入変圧や油入リアクトル等の油入電気機器
は、電力需要の拡大に伴い、増々超高電圧化、大
容量化が強く要求されている。しかも、この種機
器の据付現場までの輸送に際しては、厳しい寸法
制限があるから、大容量化を達成するために無制
限に機器寸法を増大するという訳にはいかない。
従つて、高電圧大容量化への要請と、相対的な機
器絶縁寸法の縮小による輸送容量の拡大という困
難な課題の調和的解決が追状されている。

従来より油入電気機器の導体コイルとして多用
されている円板巻線は、第１ａ図に示すようにク
ラフト紙絶縁テープ１０による素線絶縁を施した
平角銅線１２を渦巻状に巻回して円板状のセクシ
ヨンコイル１４を形成し、これら円板状セクシヨ
ンコイルを複数個巻線の軸方向に積層し、各コイ
ル１４間にはプレスボード等の絶縁物を材質とす
るスペーサ１６を、第１ｂ図に示すように半径方
向に所定間隔離間して複数配置することにより構
成されている。この場合、前記スペーサ１６は、
コイル１４相互間の絶縁と、冷却媒体である絶縁
油が円滑に流通してコイル内に発生する熱を外部
へ逃すための流路とを確保するものである。な
お、前記円板巻線は、稼動時に電流が流れる際に
生ずる磁界との相互作用により、強大な電磁機械
力が発生し、このため巻線強度が充分でないと変
形を生じたり、巻線支持部が破壊したりすること
がある。従つて、円板巻線は製作過程において、
前締装置を用いて巻線軸方向に所定の締付圧力を
加え、導体と絶縁物とが常に一体であるように強
固に締付けられる。それ故、素線絶縁や絶縁スペ
ーサは、前記締付圧力に充分耐え、しかも稼動中
にクリープ等の機械的変形を生じ難いものである
ことが要求されるが、クラフト紙やプレスボード
等のセルロース系材料はこの種要求を満足するも
のとして良好な使用実績を有している。

このように、油入電気機器の円板巻線の油中絶
縁材料乃至支持体としては、クラフト紙やプレス
ボード等の固体絶縁物は必要不可欠な材料要素と
なつている。しかしながら、これを絶縁特性の見
地から観察すると、機器タンク中に注入される絶
縁油の誘電率に比較して、プレスボード等の固体
絶縁物の誘電率が大きいため（換言すれば、固体
絶縁物と絶縁油とからなる複合絶縁系において、
絶縁油の絶縁耐力が固体絶縁物よりも小さい）、
絶縁油に対する油中電界の集中が発生し、負担電
圧が大きい油中で部分放電（コロナ）が生じ易く
なる欠点がある。

殊に、この部分放電は第１ａ図において参照符
号ｇで示すように、円板状コイル１４の端部と絶
縁スペーサ１６との間に介在する楔状の油ギヤツ
プに発生し易い。これは、この油ギヤツプｇに電
界が集中し負担電圧が高くなるからであり、この
ように絶縁部位における電圧負担分布が著しく不
均衡になると、絶縁破壊に到る惧れがある。ま
た、このように部分放電が生じた場合、誘電率の
大きい絶縁材料ほど、その表面に電荷が集中さ
れ、表面に沿つて火花が進展し易くなる（所謂沿
面ストリーマ）。従つて、前記絶縁スペーサ１６
に生ずる沿面放電は、コイルの素線絶縁１０を損
傷することになる。そこで、このような油ギヤツ
プｇにおける油中電界の集中を緩和し、絶縁破壊
の直接原因となつている油中部分放電の発生を極
力防止するための手段が種々案出されている。そ
の手段としては、例えば、電界集中の起き易い油
ギヤツプが出来ないように、コイル端部とスペー
サとの接触が密となるよう機械的な加工精度を高
めること等が挙げられる。これは油ギヤツプを排
除するという課題解決を提示した場合の１つのア
プローチであつて、それなりに評価し得るもので
ある。

本発明は、油ギヤツプの存在等に起因する部分
放電の発生を前提として、この部分放電による影
響を極力受けることのない、絶縁耐力に優れた円
板巻線の絶縁構造を提供し、これによつて油入電
気機器の超高電圧化、大容量化と、相対的な巻線
寸法の縮小による輸送容量の増大化とを達成する
ことを目的とする。

この目的を達成するため本発明は、円板状コイ
ルと、この円板状コイルに対し半径方向に配置さ
れる複数の絶縁スペーサとを交互に積層して円板
巻線を構成する油入電気機器の巻線構造におい
て、絶縁スペーサが円板状コイルの内径寸法より
１ターン平角銅線の断面幅に対し約1/2程度大き
く、かつ円板状コイルの外径寸法より１ターンの
平角銅線の断面幅に対し約1/2程度小さい位置に
配置されるように絶縁スペーサの長手方向寸法を
設定し、この絶縁スペーサに円板状コイルの半径
方向内方と半径方向外方へ突出する複数の鍔状の
絶縁部材を固定することを特徴とする。

次に、本発明に係る油入電気機器の巻線構造に
つき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照し
ながら以下詳細に説明する。第２ａ図及び第２ｂ
図は、本発明に係る巻線構造の概略を示すもので
あつて、参照符号１０，１２，１４及び１６で指
示する部材は第１ａ図に示す部材と全く同じであ
る。但し、絶縁スペーサ１６には、その長手方向
上面及び下面において、このスペーサ１６の平面
部よりも寸法の大きい鍔部材１８を夫々配設して
ある。すなわち、スペーサ本体１６は、先に説明
したように円板状コイル１４間に介装されて半径
方向に延在した長形部材であるが、このスペーサ
本体は機械的特性に優れたプレスボードのような
セルロース系絶縁材料を材質とし、かつ長手方向
寸法は上下に配設された各円板状コイル１４の外
径寸法と内径寸法の差から半径方向の１ターンの
平角銅線の断面幅寸法を引いた値に設定してあ
る。また、鍔部材１８は同じくプレスボードのよ
うなセルロース系絶縁材料からなる矩形状の薄い
平板で構成されており、各周縁部は第２ａ図及び
第２ｂ図に示すようにスペーサ本体１６の各周縁
部より所定寸法突出している。具体的には、鍔部
材の厚みは、例えば0.5〜２mmとし、またスペー
サ本体の上下面に配設した場合のスペーサ本体１
６の周縁部より突出する長さは５〜10mmに寸法設
定するのが好ましい。

このように構成することによつて、第２ａ図に
示すように各円板状コイル１４の内周端部及び外
周端部に形成される楔状油ギヤツプｇは、鍔部材
１８と円板状コイル１４との境界部分にのみ存在
することになる。従つて、この油ギヤツプｇの部
分における見掛上の誘電率を低減させ、油中電界
の集中を緩和させることができる。このため、次
のような顕著な効果が得られるものである。

(1) 楔状油ギヤツプでの放電開始電圧が向上す
る。

(2) 仮に楔状油ギヤツプにおいて部分放電が発生
しても、鍔部材１８がバリヤー（障壁）として
の役割を果たし、放電が更に進展する惧れがな
くなる。

(3) このように部分放電による沿面ストリーマ
が、絶縁スペーサ１６の沿面に集中進展しなく
なる結果として、沿面放電に起因する素線絶縁
の損傷が低減され、円板巻線の耐電圧特性は20
〜50％も向上する。

(4) 絶縁スペーサは機械的特性に優れたプレスボ
ードにより構成されているので、本発明のよう
にスペーサに鍔部材を設けても、円板巻線の機
械的強度には何等影響がない。

(5) 絶縁耐力が飛躍的に向上する結果として、同
一の円板巻線寸法であつても、より超高圧化、
大容量化が達成せられ、相対的には巻線寸法の
縮小化が容易に実現される。

次に、第３図は本発明に係る巻線構造の別の実
施例を示すものであつて、プレスボードのような
セルロース系絶縁材料を材質とする絶縁スペーサ
１６の長手方向端部に、夫々低誘電率のプラスチ
ツク成形絶縁物からなる鍔状の絶縁部材を固定し
たものである。すなわち、絶縁スペーサ１６の長
手方向寸法は、第３図に示すようにスペーサの上
下に位置する各円板状コイル１４の外径寸法と内
径寸法の差から半径方向の１ターンの平角銅線の
断面幅寸法を引いた値に設定し、かつ長手方向の
端部には、例えば図示のように嵌合突条２０が突
設してある。この絶縁スペーサ１６の各長手方向
端部において、前記プラスチツク成形絶縁物２２
が、この部材に穿設した嵌合溝２４を前記嵌合突
条２０に嵌合させることによりしつかりと固定さ
れている。なお、このプラスチツク成形絶縁物２
２は、絶縁スペーサ１６への取付固定時におい
て、円板状コイル１４の内径端部及び外径端部よ
り夫々半径方向内方及び半径方向外方へ若干突出
するよう構成されている。前記成形絶縁物２２
は、前述したように低誘電率のプラスチツク材料
を材質とするが、好適には架橋ポリエチレン、ポ
リフエニレンオキシド、ポリプロピレン、ポリブ
チレンテレフタレート、ポリブタジエン、テフロ
ン等が使用される。また、プラスチツク成形絶縁
物２２の絶縁スペーサ１６への取付けは、本実施
例では突条と溝との嵌合による場合を示したが、
その他スペーサ１６とプラスチツク成形絶縁物２
２との接触界面における絶縁強度を高め得る手段
であれば、適宜採用し得るものである。

このように構成することによつて、円板状コイ
ル１４の内周端部及び外周端部に形成される油ギ
ヤツプｇは、プラスチツク成形絶縁物２２と円板
状コイル１４との境界部分に存在することにな
り、第１実施例の場合と同様の効果が得られるも
のである。また、プラスチツク成形絶縁物は低誘
電率の材質で構成されているから、同じく低誘電
率の絶縁油と相俟つてこの付近における平均誘電
率を下げて電界を若干強め、その分だけ油ギヤツ
プｇにおける電界集中を緩和してやることができ
る。

次に、第４図は本発明の更に別の実施例を示す
ものであつて、第３図に示す絶縁構造において円
板状コイル１４の内径側に配設される低誘電率プ
ラスチツク成形絶縁物２２を、巻線半径方向のス
ペーサ２６を兼用する形状としたものである。こ
の場合は、円板コイル１４の内径端部との間に楔
状油ギヤツプが出来にくくなるように、スペーサ
２６の立上り部分に前記コイル内径端部と合致す
るアールを付しておくのが好ましい。また、この
スペーサ２６は、円板状コイル１４の内周端部に
沿つて全周連続する環形状とすることも可能であ
り、この場合には円板状コイル内周側に配置され
る低圧巻線（図示せず）に対する絶縁強化にも役
立つものである。

以上説明したように、本発明によれば従来より
使用実績のあるプレスボード製のスペーサの優れ
た機械的特性、殊に製作工程での圧縮締付による
形態安定性を損うことなく、巻線の耐電圧特性を
大幅に向上させることができ、超高電圧化、大容
量化を達成し得ると共に、相対的には巻線寸法の
縮小化が実現され、輸送容量の増大にも寄与する
ものである。

なお、本発明に係る巻線構造を、雷のように波
頭の急峻な衝撃電圧に対するサージプルーフ用に
使用する場合は、円板巻線を構成する個々の円板
状コイルの全てにこれを適用する必要はなく、コ
イル間負担電圧及び対向巻線に対する電位差の最
も大きい巻線線路端の数コイルの部分にだけ適用
すればよく、従つて機器全体の経済的な設計が可
能である。

また、低誘電率のプラスチツク成形絶縁物を使
用する場合、プラスチツク材料は絶縁油を幾分吸
収して膨潤する性質を有しているので、機器中へ
の油注入後は円板状コイルとプラスチツク成形絶
縁物との接触部位において膨潤したプラスチツク
部分が微細な油隙を埋合わせる効果が期待でき、
これも巻線の耐電圧特性の向上に寄与することに
なる。

以上本発明につき、好適な実施例を挙げて種々
説明したが、本発明はこの実施例に限定されるも
のではなく、発明の精神の範囲内で多くの改良変
更をなし得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１ａ図は従来技術に係る円板巻線と絶縁スペ
ーサとからなる油入電気機器の巻線構造の断面
図、第１ｂ図は第１ａ図に示す巻線構造の概略斜
視図、第２ａ図は本発明に係る巻線構造の断面
図、第２ｂ図は第２ａ図の矢印Ａ方向からみた巻
線構造の側面図、第３図は本発明の別の実施例の
断面図、第４図は本発明の更に別の実施例の断面
図である。 １０……素線絶縁（絶縁テープ）、１２……平
角銅線、１４……円板状コイル、１６……スペー
サ、１８……鍔部材、２０……嵌合突条、２２…
…プラスチツク成形絶縁物、２４……嵌合溝、２
６……スペーサ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円板状コイルと、この円板状コイルに対し半
   径方向に配置される複数の絶縁スペーサとを交互
   に積層して円板巻線を構成する油入電気機器の巻
   線構造において、絶縁スペーサが円板状コイルの
   内径寸法より１ターンの平角銅線の断面幅に対し
   約1/2程度大きく、かつ円板状コイルの外径寸法
   より１ターンの平角銅線の断面幅に対し約1/2程
   度小さい位置に配置されるように絶縁スペーサの
   長手方向寸法を設定し、この絶縁スペーサに円板
   状コイルの半径方向内方と半径方向外方へ突出す
   る複数の鍔状の絶縁部材を固定することを特徴と
   する油入電気機器の巻線構造。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の油入電気機器の
   巻線構造において、鍔状の絶縁部材は絶縁スペー
   サよりも外周寸法の大きい板状部材からなり、一
   対の鍔状の絶縁部材により絶縁スペーサを挾持す
   ることを特徴とする油入電気機器の巻線構造。 ３ 特許請求の範囲第１項記載の油入電気機器の
   巻線構造において、鍔状の絶縁部材は絶縁スペー
   サの長手方向端部に夫々固定されることを特徴と
   する油入電気機器の巻線構造。 ４ 特許請求の範囲第１項乃至第３項の何れかに
   記載の油入電気機器の巻線構造において、絶縁ス
   ペーサにはセルロース系絶縁物を使用し、鍔状の
   絶縁部材は低誘電率のプラスチツク系成形絶縁物
   を使用することを特徴とする油入電気機器の巻線
   構造。