JPS6334763B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、廃インキから高純度の顔料を回収す
る方法に関する。 凸版、凹版、オフセツト、グラビア等各種の印
刷に適用されるインキは、一般に、顔料、樹脂、
溶剤、可塑剤等の添加剤からなり、第１図に模式
的に示すように、顔料粒子１が樹脂２を介在して
溶剤３中に均一に分散しているものと考えられ
る。 この顔料粒子は、体質顔料、無機系顔料、有機
系顔料に大別され、それぞれ表１に示すような物
性を有している。

【表】

【表】 なお、溶剤、樹脂、可塑剤等の添加剤は、上記
の顔料の種類に応じて適切なものが使用されるこ
とはいうまでもない。 新品インキの色相は、大別して赤、青、黄、白
および黒系統であり、用途に応じて単独もしくは
二色以上を混合して用いる。 ところで、色が黒くくすんで使用できなくなつ
たインキや、印刷機等を洗浄したあとの廃液は、
廃インキとしてインキ製造工程や印刷工場等から
大量に排出され、いずれの廃インキも各色相のイ
ンキが混合したものであつて、色のくすんだ廃イ
ンキ中にはカーボンブラツクからなる黒インキ
や、フタロシアニンブルーからなる青インキが含
まれている。 上記の廃インキから顔料、溶剤等の有価物を回
収することは困難で、従来は、殆んどが焼却ある
いは投棄され、まれに廃インキ中に熱風、蒸気等
を注入して溶剤を放散させ、凝縮器等により回収
することもあつたが、充分な回収を行うことはで
きなかつた。 本発明者等は、廃インキから顔料を回収し、し
かも回収顔料の再利用度を高めるべく、色のくす
みの原因となるカーボンブラツクや青色顔料（フ
タロシアニンブルー）を除去し、赤、黄、茶色等
の色相の鮮やかな顔料を回収する方法について研
究を重ねた結果、次のような知見を得た。 先ず、表１に示したインキに使用される顔料粒
子は、表２に示すように溶剤の種類によつて異な
つた分散性を示すこと。

【表】

【表】 ○ 分散性良
△ 分散性やや良
× 分散性悪
次に、前記したように顔料粒子をインキに使用
する際には樹脂（第１図中の２）を介在させる
が、この樹脂の種類によつても、表２の分散性は
次のように異なつてくること。 (1) トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素は、
表２に示すようにいずれの顔料も分散せず、沈
降する傾向にあり、しかも介在樹脂の種類にか
かわらず、この傾向は変わらない。 (2) メチルセロソルブ等のエーテル類、シクロヘ
キサノン等のケトン類は表２に示すようにいず
れの顔料も良く分散し、しかも介在樹脂の種類
にかかわらず、この傾向は変わらない。 (3) 酢酸エチル等のエステル類、メチルアルコー
ル、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ル等のアルコール類は、表２に示すように顔料
の種類によつて分散性に選択性を示し、しかも
介在樹脂の種類によつても、例えば、 メチルアルコール、エチルアルコール： 介在樹脂がアルキツド樹脂の場合、これらの
アルコールはアルキツド樹脂を溶解する作用が
ないため、顔料の種類にかかわらず、分散性は
悪い、 介在樹脂がニトロセルロースの場合は、これ
らのアルコールはニトロセルロースを溶解する
作用があるため、表２と同様の分散性を示す、 イソプロピルアルコール： 介在樹脂がアルキツド樹脂、ニトロセルロー
スいずれの場合も、イソプロピルアルコールは
これらの樹脂を溶解する作用がないため、顔料
の種類にかかわらず分散性は悪い、 酢酸エチル： 介在樹脂がアルキツド樹脂、ニトリロセルロ
ースいずれの場合も、酢酸エチルはこれらの樹
脂を溶解する作用があるため、表２と同様の分
散性を示す。 のように分散性に選択性を示す。 (4) 青色顔料（フタロシアニンブルー）およびカ
ーボンブラツクは、いずれの溶剤にもやや分散
し易い傾向がある。 上記の知見から、廃インキに顔料分散性の悪い
溶剤を添加すれば、顔料粒子が凝集、沈降し、分
離、回収できることが判る。 しかし、廃インキ中には、前記したように、顔
料粒子の他、介在樹脂、可塑剤等の添加剤が含ま
れており、上記した顔料分散性の悪い溶剤で処理
して回収された顔料中には、樹脂類等が不純物と
して混入してしまう。 そこで、本発明者等は、廃インキに顔料分散性
の悪い溶剤と良い溶剤とを混合させて添加するこ
とにより、樹脂類の含有量が極力減少した顔料の
回収方法を同日付にて提案したが、顔料分散性の
良い溶剤の代りにメチルアルコール、エチルアル
コールを使用しても同様の効果が得られるという
知見を得て本発明に到達した。 すなわち本発明は、廃インキに顔料分散性の悪
い溶剤とアルコール類との混合溶剤を添加し、廃
インキ中の顔料を沈降させることによつて液相か
ら分離、回収することを特徴とする廃インキから
顔料を回収する方法に関するものである。 本発明方法で用いられる顔料分散性の悪い溶剤
としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水
素が挙げられ、該溶剤に混合するアルコール類と
してはメチルアルコール、エチルアルコールが挙
げられる。 上記の顔料分散性の悪い溶剤とアルコール類の
混合割合は、顔料分散性の悪い溶剤／アルコール
類を容量比で90/10〜10/90、好ましくは80/20〜2
５／７５とすることが顔料の回収率および純度を良好
とする上で適当である。 上記の混合溶剤は廃インキに対し容量比で３〜
10倍量で使用することが好ましい。３倍未満では
顔料の分離効果の点で充分でなく、また該比率が
大になるにともなつて処理量が増大するので設備
が大型化し、経費も増加して不利なため、該比率
の上限は10倍程度が適当である。 上記の混合溶剤を上記の割合で廃インキに添加
し、混合すると、顔料粒子は分散性を失い、凝集
して沈降する。また介在樹脂や他の添加剤等の不
純物は、介在樹脂のうちの特にアルキツド樹脂は
上記顔料分散性の悪い溶剤に溶解性があり、ニト
ロセルロースは上記アルコール類に溶解性があ
り、他の添加剤は上記溶剤、アルコール類のいず
れにも溶解性があるため、上記混合溶剤側に溶出
する。更に、色のくすみの原因となるカーボンブ
ラツクや青色顔料は、前記の知見から明らかなよ
うに、上記混合溶剤中では余り分散性を失わない
ので溶剤側に残る。従つて、上記の混合溶剤添
加、混合後、静置して傾潟すれば、色相の鮮やか
な顔料を回収することができる。 第２図に本発明方法により廃インキ等から顔料
を回収する基本フロー図を示す。この図では、廃
インキ１１と上記混合溶剤１２をまず混合１３
し、つぎに撹拌１４したのち固形分と溶剤を分離
１５し、顔料１６と溶剤１７を分離する。 第２図の回収装置をより具体的に示したのが第
３図である。 第３図において、廃インキタンク２１からの廃
インキ、および混合溶剤タンク２２からの混合溶
剤を各々ポンプＰ（以下、同様）で混合撹拌槽２
３に送り、廃インキと混合溶剤を混合、撹拌した
のち、混合液を沈降分散槽２４へポンプＰ輸送す
る。沈降分離槽２４では、液相から凝集した顔料
粒子を沈降させ、液相から分離する。沈降分離し
た顔料はフイルタープレス２５で濃縮、脱溶剤
し、回収２６する。一方、沈降分離槽２４の上澄
液およびフイルタープレス２５からの分離液はタ
ンクＴを経て蒸留塔２７へ送り、蒸留操作して溶
剤を回収２８する。回収した溶剤は用途に応じて
再利用することになる。蒸留残液（廃液）２９は
焼却等により処分する。 以上の本発明方法は廃インキからの顔料の回収
に適用できるばかりでなく、顔料に類似した性状
をもつ染料の分離回収にも適用可能である。 本発明方法により次のような効果が奏せられ
る。 廃インキ中に上記混合溶剤を加えることによ
つて、均一に分散した液相から顔料（または染
料）を沈降分離できる。 沈降した固形分を回収すれば顔料（または染
料）が得られる。 廃インキ中の顔料分以外の成分は液相に残る
ため、回収した顔料の純度が上がる。 実施例 シクロヘキサノン，トルエン，酢酸エチルを主
溶剤とし、顔料分を20重量％含む印刷廃インキを
用い、トルエンとメタノールの混合比を1/3〜3/1
で変化させて混合溶剤を調整し、廃インキから顔
料分の回収を行つた。 第４図は回収顔料の純度とトルエン，メタノー
ル混合比の関係を示したものである。この図か
ら、廃インキから顔料を回収する際、トルエン，
メタノールの混合溶剤を用いれば、トルエン，メ
タノール各単独の場合に比べ純度の高い顔料が得
られることが判る。またトルエン：メタノール混
合比は90：10〜10：90で効果があり、80：20〜
25：75の範囲が特に好ましいことも判る。 なお、キシレン，エタノールについても同様の
結果を得た。

【図面の簡単な説明】

第１図はインキ中の顔料粒子の分散状況を模式
的に示す図であり、第２図は本発明方法の基本フ
ロー図であり、第３図は本発明方法に用いる装置
の具体例であり、第４図は回収顔料の純度とトル
エン／メタノール混合比の関係を示すグラフであ
る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 廃インキに顔料分散性の悪い溶剤とアルコー
   ル類との混合溶剤を添加し、廃インキ中の顔料を
   沈降させることによつて液相から分離、回収する
   ことを特徴とする廃インキから顔料を回収する方
   法。