JPS6321743B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 この発明は、電解コンデンサ陰極用アルミニウ
ム合金箔に関する。 この明細書において「％」は「重量％」を示す
ものである。 電解コンデンサの性能を向上させるためには、
陽極用箔の静電容量だけではなく、陰極用箔の静
電容量をも増大させることが必要である。箔の静
電容量を増大させるには、箔にエツチングを施し
て表面に微細な凹部を高密度に形成することによ
り、その表面積を大きくすることが有効である
が、エツチングが過度になると、腐食減量も過度
になり、結果的に箔の静電容量が低下する。ま
た、コンデンサの小型軽量化のために箔の厚さを
薄くする必要があり、そのためには箔の強度を大
きくしなければならない。したがつて、電解コン
デンサ陰極用アルミニウム合金箔の具備すべき条
件は、静電容量が大きいこと、エツチングのさい
の腐食減量が過度にならず適量であることおよび
機械的強度が大きいことである。 従来から電解コンデンサ陰極用アルミニウム合
金箔は種々存在するが、上記３つの条件をすべて
満足する箔は存在しなかつたのが実情である。 この発明の目的は、上記の条件をすべて満足し
うる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を
提供することにある。 この発明による電解コンデンサ陰極用アルミニ
ウム合金箔は、ニツケル0.01〜1.0％および銅0.1
〜1.0％を含有し、残部アルミニウムおよび不可
避不純物からなるアルミニウム合金製連続鋳造板
から形成されたことを特徴とするものである。 ニツケルおよび銅は、この両者がともにアルミ
ニウム中に含有せしめられることにより、アルミ
ニウム合金箔の静電容量を増大させる性質を有す
るが、ニツケルの含有量が0.01％未満、銅の含有
量が0.1％未満であると、箔の静電容量増大の効
果を得られず、ニツケルおよび銅の含有量がそれ
ぞれ1.0％を越えると、微細なエツチング組織が
得られなくなつて静電容量が低下するとともに、
腐食減量も過度になる。したがつて、ニツケルの
含有量を0.01〜1.0％、銅の含有量を0.1〜1.0％の
範囲内で選ぶべきである。 ニツケルおよび銅をともにアルミニウム中に含
有せしめることによりアルミニウム合金箔の静電
容量が増大するのは次の理由による。周知のごと
く、アルミニウム合金箔の静電容量は箔の表面積
と比例するが、箔の表面積を増大させるために
は、エツチングを施して箔の表面に微細な凹部を
均一かつ高密度に形成することが必要である。ア
ルミニウム中にニツケルを0.01％以上含有せしめ
ると、微細なAl―Ni化合物（NiAl₃）がアルミ
ニウム・マトリツクス中に多数分散した組織を得
ることができる。Al―Ni化合物（NiAl₃）は電
位的にかなり貴であつて、アルミニウム・マトリ
ツクスと大きな電極電位差を有するので、エツチ
ングのさいにアルミニウム・マトリツクスが優先
的に腐食されて、箔の表面に微細な凹部が均一か
つ高密度に生じ、その表面積が増大する。また、
銅は電位的に貴であるとともに、アルミニウムに
対する固溶範囲が広く、これをアルミニウム中に
0.1％以上含有せしめると、エツチングのさいに
アルミニウム・マトリツクスが優先的に腐食さ
れ、しかもニツケルの固溶限が下がり、Al―Ni
化合物（NiAl₃）がより多く析出するようにな
り、上記のニツケルを含有せしめる効果が一層向
上する。したがつて、ニツケルおよび銅を含有す
るアルミニウム合金箔をエツチングしたさいに、
これらを含有しない箔に比べて、箔の表面に微細
な凹部が均一かつ高密度に生じ、箔の表面積が増
大する。しかしながら、ニツケルおよび銅の含有
量が1.0％を超えると、箔表面の凹部が大きくな
りすぎて腐食減量が過度になり、結果的に静電容
量が低下する。 ニツケルおよび銅の両者を含有するアルミニウ
ム合金の溶湯から直接圧延法によつてつくられた
連続鋳造板においては、Al―Ni化合物がより微
細かつ均一にアルミニウム・マトリツクス中に分
散するとともに、銅も一層均一にアルミニウム・
マトリツクス中に固溶した組織を得ることができ
る。したがつて、このアルミニウム合金製連続鋳
造板から圧延によつて形成されたアルミニウム合
金箔にエツチングを施すと、箔の表面にはより一
層微細な凹部が高密度に発生し、上述したニツケ
ルおよび銅を添加することによるアルミニウム合
金箔の静電容量増大効果が一層向上する。 また、ニツケルおよび銅を含有するアルミニウ
ム合金製連続鋳造板では、アルミニウム中に含有
せしめられた元素が過飽和に固溶しているととも
に晶出物も均一となつているので、その強度は大
きくなる。したがつて、このような連続鋳造板か
ら圧延により形成された箔の強度も当然に大きく
なる。 この発明による電解コンデンサ陰極用アルミニ
ウ合金箔は、ニツケルおよび銅を含むアルミニウ
ム合金の溶湯から直接圧延法により、適当な厚
さ、たとえば25mm以下の厚さの連続鋳造板を製造
し、この連続鋳造板に冷間圧延および箔圧延を施
すことにより形成される。また上記において、冷
間圧延および箔圧延を施す前に連続鋳造板に中間
焼鈍を施してもよい。 また、この発明によるアルミニウム合金箔には
鉄およびケイ素などの不可避の不純物が含まれて
いてもよいが、これらの不純物のうちとくに鉄の
場合はその含有量が0.5％を越え、ケイ素の場合
はその含有量が0.2％を越えると粗大な化合物が
晶出し、この発明によるアルミニウム合金箔の効
果を阻害することがあるので、不純物中鉄の含有
量は0.5％以下、ケイ素の含有量は0.2％以下とす
ることが好ましい。 実施例 以下、この発明の実施例を比較例とともに示
す。 表１に示す組成の５種のアルミニウム合金のう
ち合金Ａ〜ＣおよびＥから、連続鋳造圧延法によ
り、それぞれ冷却速度が１ｍ／分となるように厚
さ25mm以下の連続鋳造板を製造した。ついで、こ
れらの連続鋳造板に冷間圧延および箔圧延を施し
て、各々２枚のアルミニウム合金箔を形成した。
また、合金Ｄから半連続鋳造法によりスラブを鋳
造し（冷却速度0.05ｍ／分）、このスラブから通
常の製箔法で各々２枚の合金箔を形成した。 その後、各々その１枚を用いて各種合金箔の強
度を測定した。また、各々他の１枚の合金箔を液
温60℃の３％塩酸および0.5％シユウ酸水溶液中
に浸漬し、電流密度30A／ｄm²の交流電流を通じ
て１分30秒間エツチングを行ない、各種合金箔の
静電容量を測定した。

【表】 上記実施例および比較例の結果を表２にまとめ
て示す。

【表】 表２から明らかなように、ニツケルおよび銅を
含有するアルミニウム合金製連続鋳造板から形成
されたアルミニウム合金箔は、そうでないものに
比べて静電容量および強度が明らかなように大き
くなつている。 発明の効果 この発明による電解コンデンサ陰極用アルミニ
ウム合金箔は、ニツケル0.01〜1.0％を含有して
いるから、電位的にかなり貴である微細なAl―
Ni化合物（NiAl₃）がアルミニウム・マトリツク
ス中に多数分散した組織を得ることができる。し
たがつて、エツチングのさいにアルミニウム・マ
トリツクスが優先的に腐食されて、箔の表面に微
細な凹部が均一かつ高密度に生じ、その表面積が
増大する。また、電位的に貴であるとともに、ア
ルミニウムに対する固溶範囲が広い銅を0.1〜1.0
％含有しているから、エツチングのさいにアルミ
ニウム・マトリツクスが優先的に腐食され、しか
もニツケルの固溶限が下がり、Al―Ni化合物
（NiAl₃）がより多く析出するようになり、上記
のニツケルを含有せしめる効果が一層向上する。
したがつて、ニツケルおよび銅を含有するアルミ
ニウム合金箔をエツチングしたさいに、これらを
含有しない箔に比べて、箔の表面に微細な凹部が
均一かつ高密度に生じ、箔の表面積が増大して静
電容量が著しく増大する。 また、ニツケルおよび銅の両者を含有するアル
ミニウム合金の溶湯から直接圧延法によつてつく
られた連続鋳造板においては、Al―Ni化合物が
より微細かつ均一にアルミニウム・マトリツクス
中に分散するとともに、銅も一層均一にアルミニ
ウム・マトリツクス中に固溶した組織を得ること
ができるので、このアルミニウム合金製連続鋳造
板から圧延によつて形成されたアルミニウム合金
箔にエツチングを施すと、箔の表面にはより一層
微細な凹部が高密度に発生し、上述したニツケル
および銅を添加することによるアルミニウム合金
箔の静電容量増大効果が一層向上する。 さらに、ニツケルおよび銅を含有するアルミニ
ウム合金製連続鋳造板では、アルミニウム中に含
有せしめられた元素が過飽和に固溶しているとと
もに晶出物も均一となつているので、その強度は
大きくなる。したがつて、このような連続鋳造板
から圧延により形成された箔の強度も当然に大き
くなる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ニツケル0.01〜1.0％および銅0.1〜1.0％を含
   有し、残部アルミニウムおよび不可避不純物から
   なるアルミニウム合金製連続鋳造板から形成され
   た電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔。