JPS62333B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は２サイクルエンジン、特にクランク室
圧縮式２サイクルガソリンエンジンに関するもの
で、低質燃料（灯油、軽油等）での運転を可能と
し、燃料費の節約を図ることを目的としている。

２サイクルエンジンにおいては、その構造上、
掃気行程中の吹抜け現象及びピストン弁式吸入方
式では低速域の吹返し現象等により、４サイクル
エンジンに比べて燃費率の点で劣つており、従つ
て燃料費も高価となる欠点がある。

本発明は、本件出願人が先に排気ガスの清浄化
と給気比、掃気効率の向上を目的として提案した
特公昭51―44249号の機関構造の一部を利用し
て、上記従来の欠点を回避しようとするもので、
大小径部を有するシリンダーに大小径部を有する
ピストンを嵌合してシリンダー大径部とピストン
大径部間に形成される副吸入室をガソリンのよう
な着火性に優れた良質燃料用ポンプとして使用す
るべく、上記副吸入室とエンジン作動室に設けた
副掃気孔間を蓄圧用の過給溜りを介して連通し、
又副吸入室と過給溜り間には副吸入室より過給溜
りへの流通のみを許容する逆止弁を挿入し、上記
副吸入室へは、副吸入室への流通のみを許容する
逆止弁を介して良質燃料と空気の混合気の供給装
置を接続しており、次に図面により説明する。

第１図は本発明による２サイクルエンジンの縦
断面図で、ピストンの上昇行程時を示しており、
第２図はピストンが下死点まで下降した状態を示
している。特に第１図においてシリンダー１は小
径部１ａと大径部１ｂを上下に同芯に備え、この
シリンダー１内には小径部２ａと大径部２ｂを上
下に同芯に有するピストン２が下方から嵌合し、
シリンダー小径部１ａとピストン小径部２ａとシ
リンダーヘツド３により作動室４が形成され、又
シリンダー大径部１ｂとピストン２により環状の
副吸入室５が形成されている。副吸入室５は逆止
弁６を経て副吸入室用気化器７に接続し、逆止弁
６は副吸入室５への流通のみを許す特性を備え、
図示の逆止弁６はリード弁である。気化器７の上
流側には通常エアクリーナ（図示せず）が装着さ
れる。図示の吸気孔８は副吸入室５の下半部に開
口し、第１図のようにピストン２が上昇する行程
の途中でピストン大径部２ｂにより閉塞され、そ
の後は副吸入室５内の過給圧が逆止弁６に作用し
ないようになつている。副吸入室５の側壁上部に
明けた孔９には逆止弁１０を介して過給溜り１１
が接続し、過給溜り１１はシリンダー小径部１ａ
に設けた副掃気孔１２を介して作動室４に連通し
ている。図面に例示した逆止弁１０は孔９の過給
溜り１１側に設けてあり、過給溜り１１への流通
のみを許すリード弁である。図示の副掃気孔１２
は後述する主掃気孔１３と同様に下降するピスト
ン２により同一タイミングで作動室４に向い開放
する位置に設けてあり、作動室４に向い斜め上方
に傾斜している過給溜り１１は上昇するピストン
２により副吸入室５で加圧された良質燃料と空気
の混合気が逆止弁１０を経て圧入され、次に下降
するピストン２により副掃気孔１２が開放される
まで、良質燃料と空気の混合気を過給溜り１１内
で掃気に適した加圧状態に保持しうる程度の容積
を有する。図示の過給溜り１１はシリンダー１の
肉厚内に一体に形成されているが、シリンダー１
に別部材を気密性を保ち締着することにより形成
することもできる。

前記主掃気孔１３は従来のクランク室圧縮式２
サイクルエンジンに備えられているものと同じ
で、シリンダー小径部１ａに開口し、シリンダー
１の肉厚内に設けた主掃気通路１５を経てクラン
クケース１６内のクランク室１７に連通してい
る。ピストン２は従来のものと同様にピストンピ
ン１８、コンロツド１９、クランクピン２０を経
てクランク軸のクランクウエブ２１に接続し、ク
ランク軸は図示されていない軸受を介してクラン
クケース１６に回転自在に支持される。クランク
ケース１６の側壁にクランク室１７側への流通の
みを許す逆止弁２２を介して低質燃料（灯油、軽
油等、但しアルコールを低質燃料に入れることも
ある）と空気の混合気供給用の主気化器２３が接
続し、主気化器２３の上流側には主エアクリーナ
（図示せず）が装着される。又作動室４に開口し
ている排気孔２４は排気通路２５及び図示されて
いない排気マフラーを経て大気に連通している。
２６は点火プラグ、２７はガスケツトである。

第１図のように、クランクウエブ２１が矢印Ａ
方向に回り、ピストン２が上昇する行程におい
て、主気化器２３で形成された低質燃料と空気の
混合気は逆止弁２２を経てクランク室１７内へ吸
入され、次にピストン２が下降する行程において
クランク室１７内でピストン２により予圧され
る。予圧された前記混合気はピストン小径部２ａ
により主掃気孔１３が開放されると主掃気通路１
５、主掃気孔１３を経て作動室４へ供給され、作
動室４内の燃焼ガスを掃気すると共に作動室４内
に充満する。作動室４内に供給された前記混合気
は次にピストン２が上昇する行程において圧縮さ
れ、所定タイミングにおいて点火プラグ２６によ
り着火爆発し、ピストン２に押し下げ力を及ぼ
す。上記動作は従来のクランク室圧縮式２サイク
ルガソリンエンジンの作動と同様である。

次に良質燃料と空気の混合気の供給装置の作用
について説明する。

(1) 副吸入室への吸入：…第２図のようにピスト
ン２が下降行程時、良質燃料と空気の混合気は
副吸入室用気化器７、逆止弁６を経て副吸入室
５へ吸入される。

(2) 副吸入室５内の混合気の圧縮及び過給溜り１
１への圧送：…第１図のようにピストンが上昇
行程に移ると、副吸入室５内への前記の吸入作
用は停止し、副吸入室５内の混合気の圧力は上
昇し、ある圧力に達すると逆止弁１０が開弁
し、混合気は過給溜り１１へ圧送される。逆止
弁１０の開弁圧を、第１図のようにピストン２
が副掃気孔１２を塞いだ後に、副吸入室５より
過給溜り１１へ混合気が流れるように設定して
おくと、過給溜り１１には高圧の混合気が蓄積
される。

(3) 過給溜り１１よりの掃気：…ピストン２が上
死点より下降行程に移ると、ピストン小径部２
ａにより副掃気孔１２が開孔され、過給溜り１
１内に蓄積されている高圧の混合気は副掃気孔
１２より作動室４を経由し燃焼室内へ噴出し、
燃焼室内へ新鮮な混合気を充填する掃気作用を
行なう。この時、良質燃料と空気との混合気
は、高圧で副掃気孔１２より噴射されるので副
掃気孔１２の吹上げ角度を適切な値にとること
によつて、燃焼室の点火プラグ２６の火花間隙
の周囲に充填することができる。副吸入室５の
圧縮行程において、副吸入室５内で圧縮された
混合気の一部はピストン小径部２ａとシリンダ
ー小径部１ａの間の隙間、ピストン大径部２ｂ
とシリンダー大径部１ｂの間の隙間に漏れ込む
が、これらの漏洩混合気はピストン２に対する
冷却作用に役立ち、特に副吸入室５へ潤滑油を
含む混合気が供給される場合は、ピストン２の
潤滑作用に役立つ。ピストン小径部２ａにより
副掃気孔１２が閉塞されている間に、過給溜り
１１内の加圧混合気は副吸入孔１２の部分から
ピストンシリンダー間隙に漏れ込もうとする
が、ピストンシリンダー間隙には前述の通り副
吸入室５内から混合気が入り込んでいるため、
過給溜り１１内の圧力低下は無視することがで
きる。

以上説明したように本発明においては、２段ピ
ストンと２段シリンダーの間に形成した環状の副
吸入室５を良質燃料と空気の混合気の供給ポンプ
の作動室として使用すると共に、そこで加圧され
た混合気をその気筒内に形成した過給溜り１１に
蓄え、所定時期に副掃気孔１２から燃焼室の点火
プラグ周囲へ供給するようにしたので、まず良質
燃料と空気の混合気に点火プラグ２６によつて着
火し、その後主掃気孔１３より作動室４内に供給
された低質燃料と空気の混合気に着火、燃焼を進
めることができる。従つて、良質燃料は着火及び
その後の燃焼に必要な適切量を供給すればよく、
その他は低質燃料の供給によつて充分にエンジン
の運転が可能となる。このために、本発明では、
主に低質燃料での運転が可能となり、燃料費が安
価となる。

なお本発明は複数気筒の２サイクルエンジンに
も同様に適用可能である。又副吸気孔８とピスト
ン大径部２ｂからピストンバルブが有効に作動す
る場合は、逆止弁６を省略することもでき、その
場合は前記ピストンバルブが本発明における「副
吸入室５への流通のみを許容する逆止弁」とな
る。図示の実施例において、副掃気孔１２は排気
孔２４の上縁に向い開口しているが、副掃気孔１
２を２点鎖線１２′で示すようにシリンダー小径
部１ａ近傍において点火プラグ２６の火花間隙に
向う急勾配となるように湾曲させることもでき
る。その場合は副吸入室５で圧縮された良質燃料
と空気の混合気が副掃気孔１２′から直接点火プ
ラグ２６の周囲へ供給されることになり、着火が
確実に行われる利点がある。シリンダーヘツド３
に上方へ凹入した滑らかな椀形の副燃焼室を形成
し、そこに点火プラグ２６の火花間隙を露出さ
せ、副燃焼室へ副掃気孔１２′を指向させること
もできる。その場合は副掃気孔１２′から供給さ
れた良質燃料と空気の混合気が副燃焼室内に滞留
しやすく、着火が一層確実になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は上昇行程時を示す縦断面図、第２図は
下降行程時を示す縦断面図である。１……シリン
ダー、１ｂ，１ａ……大小径部、２……ピスト
ン、２ｂ，２ａ……大小径部、４……作動室、５
……副吸入室、６，１０，２２……逆止弁、７…
…副吸入室用気化器（良質燃料と空気の混合気供
給装置）、１１……過給溜り、１２……副掃気
孔、１３……主掃気孔、１７……クランク室、２
３……主気化器（低質燃料と空気の混合気供給装
置）。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 大小径部を有するシリンダーに大小径部を有
   するピストンを嵌合し、シリンダー小径部とピス
   トン小径部で作動室を形成し、シリンダー大径部
   とピストン大径部で副吸入室を形成し、前記副吸
   入室には副吸入室への流通のみを許容する逆止弁
   を介して良質燃料と空気の混合気供給装置を接続
   し、作動室には主掃気通路を介してクランク室に
   連通した主掃気孔とこの主掃気孔とは別に出口が
   斜め上方に傾斜した副掃気孔を設け、この副掃気
   孔と前記副吸入室間を過給溜りを介して連通さ
   せ、副吸入室と過給溜り間には過給溜りへの流通
   のみを許容する逆止弁を設け、クランク室には逆
   止弁を介して低質燃料と空気の混合気供給装置を
   接続し、副掃気孔から点火プラグ近傍のみに良質
   燃料と空気との混合気を供給するようにしたこと
   を特徴とする２サイクルエンジン。