JPS623032B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、内歯歯車に回転子に軸支した遊星
歯車を噛合し、該遊星歯車に太陽歯車を噛合させ
た遊星歯車機構を具備する無段変速機構に関する
ものである。

この種の無段変速機構において、変速比コント
ロールに流体を用いたものは知られている（実公
昭18−9141号公報参照）。この構成における最大
の欠陥は、高速性能を得る時点で、遊星歯車の自
転・公転が最大となり、ギヤ音が烈しく、伝動効
率が低いという点である。とくに、自転車など、
高速状態での走行頻度が一番高いものでは、こゝ
での伝動効率がほぼ、100％であることが望まれ
るわけで、この無段変速機構をそのまゝ採用する
ことは、実用性がないのである。

そこで、本発明は、高速状態ではほぼ100％の
伝動効率を維維し、しかも、円滑な無段変速が達
成されるように遊星歯車機構にポンプ構造を組込
んだ無段変速装置を提供しようとするものであ
る。

この目的のため、本発明は、内歯歯車に回転方
向にポンプ室を仕切るように構成した回転ポンプ
素子を連結すると共に、太陽歯車に連結するハウ
ジング内部にポンプ室およびその吐出側と流入側
とを連通する循環流路を形成し、上記循環流路に
絞り弁機構を設け、上記絞り弁機構を全閉より全
開まで外部より操作制御する構成にし、上記太陽
歯車を入力部とし、回転子を出力部とすることを
特徴とするものである。

以下、この発明を図示の実施例に基いて具体的
に説明する。図において、符号１は自転車の後車
輪２に一体的に装備された回転子で、該回転子１
には、複数個、例えば三個の遊星歯車３が軸４を
介して軸支されている。上記回転子１は二つのブ
ロツク１ａ，１ｂより構成され、該ブロツク１
ａ，１ｂはボルト５で互いに連着され、上記軸４
を両持ちしている。また上記遊星歯車３には内歯
歯車６が噛合されている。上記遊星歯車３に噛合
する太陽歯車７は固定軸８に対して回転自在に支
承されており、また長いボス部７ａを具備してい
る。上記ボス部７ａの一端には一方向クラツチ９
を介して、自転車の従動側スプロケツトホイール
１０が嵌装されている。また、上記ボス部７ａの
他端には、四枚のジスク形ブロツク１１ａ，１１
ｂ，１１ｃおよび１１ｄよりなるハウジング１１
が装着されており、上記ブロツク１１ａを貫通し
てハウジング１１内に延びる内歯歯車６のボス部
６ａには回転ポンプ素子１２が装着されている。
上記回転ポンプ素子１２は、太陽歯車７と同軸心
の円盤状回転体１３に放射方向に向けてスライド
溝１４を複数個、例えば12個形成し、該スライド
溝１４内にスプリング１５によつて遠心方向に弾
持されたベーン１６を摺動自在に嵌挿したもの
で、該回転ポンプ素子１２を収容するポンプ室１
７はブロツク１１ａ，１１ｃ間においてブロツク
１１ｂ内に形成されている。このポンプ室１７は
長円形をなし、互いに四等分角で、通口１８を備
え、該通口１８を介して、ブロツク１１ｃおよび
１１ｄの間に形成された油室１９に連通してい
る。上記ポンプ室１７を経由して互いに連通され
ない油室相互は、絞り弁機構２０を介して互いに
連通され、全体として、ハウジング１１内に循環
流路を形成している。そして、この循環流路には
制御オイルが充填されている。

該絞り弁機構２０は、回転ポンプ素子１２の回
転の軸線に平行な方向に延びる円柱状弁室２０ａ
を上記ブロツク１１ｃ内に形成し、該弁室２０ａ
に対して上記油室１９を連通する通口２０ｂを備
えると共に、上記弁室２０ａに液密に軸方向摺動
する筒状弁体２０ｃを嵌挿し、該弁体２０ｃに環
状通路２０ｄを形成し、かつ頭部２０ｅをブロツ
ク１１ｄを貫通して外方に突出させ、かつこの外
方に向けてスプリング２１により、上記弁体２０
ｃを弾持したものである。上記頭部２０ｅは、ス
ライトベアリング２２を介して環状の制御素子２
３に圧接されており、上記制御素子２３は、その
ボス部を固定駒２４に螺動自在に螺合している。
上記固定駒２４は後車輪２を貫通する（太陽歯車
７を回転自在に支承する）固定軸８に設けたブラ
ケツト２５に連結固定されている。上記ブラケツ
ト２５にはピン２６により変速制御レバー２７が
枢支してあり、該レバー２７を挺子作用で動作す
ることによつて、制御素子２３を軸方向動作でき
るようにしてある。

また、ボス部７ａの端にはブレーキドラム２８
が固着してあり、これにはブレーキバンド２９が
巻回してあり、該ブレーキバンド２９を緊張した
り、弛めたりするブレーキ制御素子（図示せず）
が用意されている。

このような構成では、スプロケツトホイール１
０が足踏みペタルの回転操作で回転される時、一
方向クラツチ９を介して回転力が太陽歯車７に伝
達される。そこで遊星歯車３は自転するのである
が、この時の自転は内歯歯車６を介して回転ポン
プ素子１２に伝達され、該ポンプ素子１２の回転
でポンプ作用がなされ、一方の油室１９から通口
１８を介してポンプ室１７へ、更に、ポンプ室１
７から他方の通口１８を介して油室１９へと制御
オイルを流通させる。この時、絞り弁機構２０
が、その通路２０ｄを通口２０ｂに一致させた状
態（第１図の状態）にあると、絞り弁機構２０は
全開であつて、制御オイルはスムースに油室１９
から絞り弁機構２０を介して相隣る油室１９に流
れる。このため、回転ポンプ素子１２にかゝる絞
り弁機構２０の流通抵抗は最小となる。しかし
て、この流通抵抗に見合つた回転力が遊星歯車３
に公転力として加わり、回転子１を回転させ、低
速で後車輪２を強制回転させるのである。

速度を上昇させるには、変速制御レバー２７を
操作し、制御素子２３を軸方向動作してスラスト
ベアリング２２を介して、スプリング２１に抗し
て頭部２０ｅを押す。これによつて弁体２０ｃが
弁室２０ａ内で摺動し、通路２０ｄと通口２０ｂ
との重なりを減少させるので、こゝでの流通量が
少くなる。このため、制御オイルの流通抵抗が増
大し、遊星歯車３の自転量が減少し、その分、回
転子１の回転量が増すのである。絞り弁機構２０
がブロツクされると、すなわち、通路２０ｄと通
口２０ｂとの重なりが全くなくなると、流通抵抗
は無限大となり、回転ポンプ素子１２は回転しな
くなり（これはハウジング１１に対しての相対的
回転を意味する）、遊星歯車３は自転をやめ、回
転子１と太陽歯車７とは一致した回転となる。

なお、ペタルの足踏みをやめても、一方向クラ
ツチ９が従動スプロケツトホイール１０と太陽歯
車７との間に介在されているので、太陽歯車７か
ら上記スプロケツトホイール１０には回転が伝わ
らない。

変速制御レバー２７を逆に操作すれば、スプリ
ング２１の働きで弁体２０ｃが摺動し、絞り弁機
構２０を全開に戻す。

また、ブレーキ制御素子（図示せず）を働かせ
てブレーキバンド２９を緊張すると、ブレーキド
ラム２８に摩擦接触して、太陽歯車７の回転が停
止されるので、回転子１の回転により、遊星歯車
３は公転、自転し、内歯歯車６を介して回転ポン
プ素子１２を働かせる。

しかして、絞り弁機構２０の流通抵抗が回転子
１を停止させるように働き、あたかもエンジンブ
レーキのような制動効果を発揮する。従つて、急
制動を要する時には、絞り弁機構２０を全閉方向
に操作すればよい。

この実施例では、回転ポンプ素子としてベーン
式のポンプ構造を採用したが、トロコイドロータ
ーやサイクロイドギヤポンプの構造を採用しても
よいこと勿論である。

この発明は、以上詳述したように、内歯歯車に
回転子に軸支した遊星歯車を噛合し、該遊星歯車
に太陽歯車を噛合させた遊星歯車機構を具備する
無段変速装置において、上記内歯歯車に、回転方
向にポンプ室を仕切るようにして構成した回転ポ
ンプ素子を連結すると共に、上記太陽歯車に連結
するハウジング内部にポンプ室およびその吐出側
と流入側とを連通する循環流路を形成し、上記循
環流路に絞り弁機構を設け、上記絞り弁機構を全
閉から全開まで外部より操作制御する構成にし、
上記太陽歯車を入力部とし、回転子を出力部とし
たので、これを例えば自転車などに応用し、回転
子に後車輪を一体装備するとともに、太陽歯車に
ペタルの駆動力を伝達するようにして使用する場
合には、弁機構の開度を操作して最大速度比を得
る時に、最高の伝動効率（約100％）を得ること
ができ、速度の高い状態での走行頻度の高い自転
車などの乗物を活用する時高い性能を発揮できる
ものである。しかも、ポンプ構造が内部に組込ま
れる点で、小型化が容易である（固定的なポンプ
ハウジングを必要としない。）

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明を自転車に採用した実施例を
示す縦断側面図、第２図は第１図のＡ−Ａ線矢視
図、第３図は第１図のＢ−Ｂ線矢視図、第４図は
第１図のＣ−Ｃ線矢視図である。 １……回転子、３……遊星歯車、４……軸、６
……内歯歯車、７……太陽歯車、１２……回転ポ
ンプ素子、１３……回転体、１４……スライド
溝、１５……スプリング、１６……ベーン、１７
……ポンプ室、１８……通口、１９……油室、２
０……絞り弁機構、２０ｂ……通口、２０ｃ……
弁体、２０ｄ……環状通路。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 内歯歯車に回転子に軸支した遊星歯車を噛合
   し、該遊星歯車に太陽歯車を噛合させた遊星歯車
   機構を具備するものにおいて、上記内歯歯車に、
   回転方向にポンプ室を仕切るようにして構成した
   回転ポンプ素子を連結すると共に、上記太陽歯車
   に連結するハウジング内部にポンプ室およびその
   吐出側と流入側とを連通する循環流路を形成し、
   上記循環流路に絞り弁機構を設け、上記繰り弁機
   構を全閉から全開まで外部より操作制御する構成
   にし、上記太陽歯車を入力部とし、回転子を出力
   部とすることを特徴とする無段変速装置。