JPS6224832Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、動力伝達系に使用するためのクラツ
チに関する。

従来、クラツチの結合・切り離しを行なう機構
として、油圧アクチユエータに操作によつてこれ
を行なう構成があり、これら油圧アクチユエータ
を使用する方法は、クラツチを自動的に操作する
構成とすることにおいて便利である。

ところが、これら油圧アクチユエータはクラツ
チにおける回転体の中に装着されているため、固
定部分である変速機から、回転部分である油圧ア
クチユエータへの圧力油のやりとりを必要とす
る。

そのため、従来は該圧力油のやりとりに必要と
する構成は、クラツチによつて駆動される入力軸
と反対の側において、クラツチと該固定部分との
間に独立した部材を設ける方法によつて行なつて
いた。

これに対し、エンジン、クラツチおよび変速機
を一直線状に配設する構成の動力伝達系において
は、クラツチ自身がエンジンと変速機に直接、挟
設される構成となるため、そのような構成を採用
することが困難となる。

そこで、このような場合、該圧力油をやりとり
する部分は、変速機における入力軸を周方向に包
設した固定部分と、該固定部分が嵌合したクラツ
チの回転部分との間において行なう構成とせざる
をえなくなり、このことは、該入力軸と該固定部
分が同一軸心をもつて、クラツチに嵌合しなけれ
ばならないことになる。

この場合において、変速機は非常に重量のある
ものであることにより、該固定部分のクラツチへ
の嵌合は、十分な隙間を有した嵌合の構成となつ
ていないと、その嵌合の作業が困難となり、且つ
この場合において、該固定部分のクラツチに嵌合
している部分には、作動油の漏れに対して、シー
ル材を介設していなければならない。

しかし、このようにシール材を介設した嵌合の
部分において、その嵌合隙間を十分に大きくな
し、且つ、そのような該固定部分とクラツチとの
間において、相対回転を認めることとすると、該
シール材の耐久性が劣化してしまう欠点を有する
ことになる。

それは、該嵌合隙間が大きいため、該相対回転
の最中において、シール材に曲げおよび振動が生
じ、シール材が疲労破壊を生じ易くなつてしまう
からである。

本考案の目的は、上記のような欠点を解消した
クラツチを提供することにある。

以下、実施例に基づいて本考案を説明する。

第１図は、本考案における一実施例としてのク
ラツチを側断面図によつて示したものである。

伝動体３は図示していないエンジンの出力軸に
直結しており、側板３ｃは伝動体３に螺着し、反
力体４は側板３ｃに螺着している。

クラツチ板６におけるボス６ａには、入力軸１
ｃがスプライン嵌合し、入力軸１ｃは、図示して
いない変速機の駆動軸となつている。

カウンタピストン５ｂは、その外周部５ｅにお
いて、伝動体３とスプライン係合をなすことによ
つて、伝動体３とトルク伝達を可能にし、且つ、
伝動体３に対して、軸方向への摺動運動を可能に
している。

押圧体５ａは、カウンタピストン５ｂに螺着
し、ピストン体５は、押圧体５ａに螺着してお
り、伝動体３とカウンタピストン５ｂとの軸方向
の間には、スプリング３ｂを介設し、ピン３ａ
は、伝動体３に嵌着している。

ピストン体５と反力体４との軸方向の間には、
押しのけ室５ｄを設け、反力体４において、押し
のけ室５ｄに対する背面の側には、押しのけ室５
ｃを設け、ピストン体５およびカウンタピストン
５ｂは、反力体４に対して、軸方向への摺動運動
を可能にしている。

突出材１は、図示していない変速機の前方に突
き出した部分であり、突出材１には、スリーブ１
ｂが嵌着することによつて、溝１ｄおよび１ｇを
形成し、スリーブ２における内径は、回転摺動を
可能に、突出材１に嵌合している。

スリーブ２における外径は、反力体４に嵌合
し、スリーブ２と反力体４との間における嵌合隙
間は、スリーブ２と突出材１との間における嵌合
隙間より、十分大なる嵌合となつており、且つ、
スリーブ２と反力体４との間、およびスリーブ２
と突出材１との間には、それぞれシール１ｆおよ
び１ｅを介設している。

ここで、スリーブ２と反力体４との間は、相対
回転をしない構成となつているため、このスリー
ブ２と反力体４との間のシールには、合成ゴム等
の弾性力のあるシール材を使用することが可能と
なり、その結果、このスリーブ２と反力体４との
間における隙間は、そのシール材の使用から明ら
かなように、その隙間寸法を、相対回転をするス
リーブ２と突出材１との間における隙間寸法に対
し、30〜50倍の値とすることができる。

反力体４には、軸方向への摺動運動を可能にピ
ン４ｄが嵌合し、ピン４ｄには、スプリング４ｃ
による右方向への附勢力が与えられており、ピン
４ｄは、スリーブ２に穿設した穿孔２ｂに插嵌し
ている。

スリーブ２に削設した歯車２ａは、図示してい
ない変速機に固設した油圧ポンプを駆動してお
り、穿孔４ｂを介して押しのけ室５ｄに連通して
いる溝１ｇと、穿孔４ａを介して押しのけ室５ｃ
に連通している溝１ｄのそれぞれは、図示してい
ない制御弁を介して、一方が上記油圧ポンプの吐
出管路に連通しているとき、他方が図示していな
いリザーバへ選択的に連通する構成となつてい
る。

すなわち、反力体４、ピストン体５、スプリン
グ３ｂおよびカウンタピストン５ｂは、油圧アク
チユエータを構成している。

以上の構成において、以下その作用を説明す
る。

図示していないエンジンが駆動されると、これ
に直結した伝動体３、側板３ｃ、反力体４、カウ
ンタピストン５ｂ、押圧体５ａおよびピストン体
５が、該エンジンの出力軸とともに回転する。

この状態において、制御弁が一方へ操作された
結果、油圧ポンプからの吐出圧油が、制御弁、溝
１ｄ、穿孔４ａを介して押しのけ室５ｃに圧送さ
れ、逆に押しのけ室５ｄにおける作動油が穿孔４
ｂ、溝１ｇおよび制御弁を介してリザーバへ連通
する状態とさせているときは、押しのけ室５ｃに
おける油圧とスプリング３ｂの附勢力によつて、
カウンタピストン５ｂは右方へ移行し、その結
果、カウンタピストン５ｂと一体のピストン体５
および押圧体５ａも共に右方に移行している。

そのため、この状態においては、クラツチ板６
は、伝動体３と押圧体５ａとの間において、自由
に回転しうる状態となつて、伝動体３からクラツ
チ板６には動力が伝わらない状態になつている。

これに対し、制御弁が他方へ操作された結果、
油圧ポンプからの吐出圧油が、制御弁、溝１ｇお
よび穿孔４ｂを介して押しのけ室５ｄに圧送さ
れ、逆に押しのけ室５ｃが穿孔４ａ、溝１ｄおよ
び制御弁を介してリザーバへ連通する状態とさせ
ているときは、押しのけ室５ｄ内における圧油
が、反力体４に反力を与えながら、ピストン体５
を左方に押圧する。

このように、ピストン体５が左方に押圧される
と、押圧体５ａも左方に押圧されることとなつ
て、クラツチ板６は、伝動体３と押圧体５ａによ
つて挟着され、クラツチ板６と伝動体３は、一体
状態となつて回転する。

その結果、図示していないエンジンからの駆動
トルクは、伝動体３、クラツチ板６、ボス６ａお
よび入力軸１ｃを介して、図示していない変速機
に動力を伝える。

以上の作動において、突出材１は、図示してい
ない変速機のケーシングに固設した部分であるの
で、回転することなく固定している。

これに対し、スリーブ２は、反力体４との間に
おいて、ピン４ｄを係合しているため、反力体４
と一体的に回転している。

本考案におけるクラツチは上記のように作動す
るものであるが、次に組み付け上の問題を説明す
る。

第１図に図示する状態に総組付される前の段階
においては、クラツチと変速機とは、それぞれ
個々に組み付けられ、この場合において、入力軸
１ｃ、突出材１およびスリーブ２は、変速機の側
に組み付けられている。

このようなザブ・アツセンブリの状態におい
て、エンジンに螺着しているクラツチに変速機を
組み付けるときは、まずスリーブ２が反力体４に
嵌合してゆき、それに続いて、入力軸１ｃがボス
６ａに嵌合してゆく。

ここで該組み付けにおいて、変速機は非常に重
いものであるが、最初に案内として嵌合してゆく
スリーブ２は、反力体４との嵌合において、上述
のように十分に隙間を有した嵌合関係となつてい
ることより、その軸心を容易に一致させることが
可能になり、それに続く次ぎの入力軸１ｃとボス
６ａとの嵌合は、容易に行なわれることになる。

また、このような場合において、スリーブ２と
反力体４との嵌合部分には、シール１ｆを介設
し、且つ、該嵌合における隙間が十分に大きなも
のとなつているが、反力体４、シール１ｆおよび
スリーブ２は、一体的に回転することとなるた
め、シール１ｆが該隙間内において、ねじられ、
あるいは曲げられるような作用によつて破損する
ようなこともない。

これに対し、クラツチの回転部分と固定部分と
の相対回転は、スリーブ２と突出材１との間にお
いて行なわれているものであり、且つ、該相対回
転の行なわれる嵌合隙間にもシール１ｅが開設し
ているが、スリーブ２と突出材１との間における
嵌合は、スリーブ２と反力体４との間における嵌
合隙間より十分に小さな嵌合隙間となつているた
め、該シール１ｅは、そのシール１ｅが埋設して
いる溝の中に密接して保持される。

その結果、シール１ｅには振動や曲げの生ずる
余地がないものとなつて、シール１ｅの耐久性を
劣化させるようなこともないものとなつている。

なお、上記実施例において、反力体４、ピスト
ン体５、スプリング３ｂおよびカウンタピストン
５ｂからなる油圧アクチユエータは、押圧体５ａ
の戻しにおいて、スプリング３ｂの附勢力と押し
のけ室５ｃに圧送した圧油によつてその戻しを行
なつているが、その戻しは、押しのけ室５ｃに圧
送した圧油かあるいはスプリング３ｂの附勢力の
いずれかの力によつてもよい。

したがつて、該油圧アクチユエータの構成にお
いては、スプリング３ｂあるいは押しのけ室５ｃ
のいずれかを省略した構成としてもよいことは、
容易に理解できるであろう。

以上の説明から明らかなように、本発明におけ
るクラツチは、以下のような効果を有しているも
のである。

固定部分と油圧アクチユエータとの間の作動油
のやりとり部分において、固定部分である突出材
１と回転体部分との間に、該回転体との間に連係
具（ピン４ｄ）を介設させたスリーブ２を介設
し、そのことによつて、 ａ：回転体とスリーブ２との間が一体回転する構
成となつて、その回転体とスリーブ２との間に
弾性材のシールを介設させることが可能とな
り、その結果、その回転体とスリーブ２との間
の嵌合を十分に大とすることが可能となり、 ｂ：そのことによつて、変速機における入力軸１
ｃのクラツチへの総組付は、該スリーブ２を固
定部分となつている突出材１の側に嵌合させた
状態において、クラツチと該変速機はその十分
に大きな隙間となつているスリーブ２とクラツ
チの回転部分と嵌合させることが容易となり、 ｃ：且つ、スリーブ２は上記総組付の前に、単独
で突出材１に手軽く嵌合できるものであるか
ら、スリーブ２と突出材１との間における嵌合
を十分に小さくできる。その結果、相対回転を
する突出材１とスリーブ２との間に設けたシー
ルは、その緊密なシール隙間となつた作動によ
つて振動や曲げを受けることなく、耐久性良く
使用することが可能となり、 ｄ：且つ油圧アクチユエータに対する作動流体の
やりとりも可能としたものである。

また、スリーブ２と回転部分との間におけるト
ルク伝達の構成を、回転部分に嵌合したピン４ｄ
と、これに附勢力を与えるスプリング４ｃとから
なる連係具によつて行なうときは、変速機を、単
に、クラツチに組み込んだ後、回転部分に対し
て、スリーブ２を回転させてやれば、ピン４ｄ
は、スプリング４ｃの附勢力によつて、必然的に
穿孔４ｄに插嵌されることになり、その組み付け
が非常に簡単になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案における一実施例としてのク
ラツチを側断面図によつて示したものである。 実施例に使用した符合は下記のとうりである。
１：突出材、１ｂ：スリーブ、１ｃ：入力軸、１
ｄ：溝、１ｅおよび１ｆ：シール。２：スリー
ブ、２ａ：歯車、２ｂ：穿孔。３：伝動体、３
ａ：ピン、３ｂ：スプリング、３ｃ：側板。４：
反力体、４ａおよび４ｂ：穿孔、４ｃ：スプリン
グ、４ｄ：ピン。５：ピストン体、５ａ：押圧
体、５ｂ：カウンタピストン、５ｃ：および５
ｄ：押しのけ室。６：クラツチ板。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 伝動体３は、エンジンの出力軸に連動し、 前記伝動体の回転軸方向において、前記伝動
   体と押圧体５ａとの間には、クラツチ板６を介
   設し、 前記クラツチ板の回転中心となるボス６ａに
   は、変速機における入力軸１ｃがスプライン嵌
   合し、 前記伝動体と前記クラツチ板との関係は、前
   記押圧体が前記伝動体の側であつて且つ前記回
   転軸における軸方向に押圧移行したとき、前記
   伝動体と前記押圧体が前記クラツチ板を挟着す
   る構成をなし、 前記伝動体には、油圧アクチユエータを固設
   し、 前記油圧アクチユエータは、 ａ：前記伝動体と一体に回転し、且つ前記押圧
   体を該伝動体の側へ押圧し、 ｂ：あるいは該押圧を解除して該押圧体を該伝
   動体の側から引き離す、 上記構成をなしている。 上記構成において、 前記入力軸における径方向外周には、前記変
   速機に固着し且つ該変速機の前部に突き出した
   突出材１が包設し、 前記突出材における径方向外周には、スリー
   ブ２が回転摺動を可能に嵌合し、 前記スリーブにおける外周は、前記油圧アク
   チユエータと一体をなす構成部分に嵌合し、 前記突出材における外周面と前記スリーブと
   の間、および前記スリーブと前記スリーブにお
   ける外周面が嵌合している部分との間には、そ
   れぞれ一方のシール１ｅおよび他方のシール１
   ｆが介設し、 前記油圧アクチユエータに一体の部分と前記
   スリーブとの間には、その両者が一体の状態と
   なつて回転するための連係具４ｄを介設し、 前記スリーブにおける外周部分が嵌合してい
   る嵌合部分の隙間は、該スリーブにおける前記
   突出材の外周面に嵌合した嵌合隙間より、十分
   に大なる嵌合隙間を有し、 前記油圧アクチユエータと前記突出材との間
   には、前記スリーブを介して圧力流体の通路が
   連通していることを特徴とするクラツチ。 ２ 連係具は、 軸方向への摺動運動を可能に、油圧アクチユ
   エータと一体の部分へピン４ｄを嵌合し、前記
   ピンはスリーブ２へ穿設した穿孔２ｂに插嵌
   し、且つ、前記ピンには、スプリング４ｃによ
   つて、前記スリーブの側への附勢力が与えられ
   ている構成となつているものである実用新案登
   録請求の範囲第１項記載のクラツチ。