JPS6219257B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はラツクピニオン式舵取装置用ラツク軸
の製造方法に関し、特にラツク軸に軸方向に延び
る中空部を設けたものの製造方法に関する。

ラツクピニオン式舵取装置に用いられるラツク
軸は、車両に取り付けられているギヤボツクス内
に摺動自在に支持され、そのギヤボツクス内にお
いて、舵取ハンドルに連動されたピニオンと噛み
合わされ、ピニオンの回転により軸方向に移動さ
れ、その軸方向の移動によりタイロツドを介して
前輪を左右に操向する。従来このようなラツクピ
ニオン式舵取装置のラツク軸は、中実丸棒にラツ
ク歯を部分的に形成することにより製造されてい
た。

このようなラツク軸は充分な強度を確保するた
めに比較的太いもの例えば直径20mm以上のものが
使用されている。また、一般にラツク軸は操向リ
ンクの一部をなしていることから長いもの例えば
600mm位のものが使用されている。これらのこと
からラツク軸の重量は、ラツクピニオン式舵取装
置の総重量の30％〜50％位を占めている。

近年、自動車の燃費改善等の目的から車両重量
の軽量化が推進され、舵取装置の軽量化が要望さ
れている。そこでその舵取装置の軽量化を行なう
に当たり、総重量の30％〜50％位を占めるラツク
軸の軽量化が最も効果的であることから、軸方向
に中空穴を設けてラツク軸をパイプ状にすること
が試みられている。

このような中空穴を有するラツク軸は厚肉のパ
イプ状素材を用いることによつて製造可能であ
る。しかしながら、ラツク軸はその一側面に比較
的大きな歯のラツク歯を形成するものであるから
肉厚を大きくしなければならないので実際に許容
される穴径は小さなものとなり、軽量効果は余り
期待出来ない。このため第１図に示す如く中空穴
をラツク歯から遠い方に偏心させて設けたり、あ
るいは第２図に示す如くラツク歯のない部分の形
状に合わせた略半円形断面の中空穴を設けること
が提案されている（実開昭54―112235号）。しか
しながら、このような肉厚の不均等なパイプ状素
材を得ることは、例えば引き抜き加工によつても
穴形成工具にかかる応力がアンバランスとなるの
で実事上不可能であり、又穴開加工を施すにして
もラツク軸は長尺であるため加工が極めて困難で
あり、このような中空穴を有するラツク軸を製造
することは実際上不可能であるか、あるいは製造
費用が著しく高価となり実用的でない。

本発明の目的は、ラツク歯を形成する部分の肉
厚が厚く、他の部分の肉厚が簿く肉厚が不均等な
中空のラツク軸を実用的に、経済的に製造するこ
とのできるラツク軸の製造方法を提供することに
ある。

本発明の他の目的は、ラツク歯の強度を損うこ
となく大きな軽量効果が得られるように、ラツク
歯を形成する部分の肉厚を充分に厚く確保しつつ
他の部分の肉厚を極端に簿くすることが可能なラ
ツク軸の製造方法を提供することにある。

本発明のさらに他の目的は、ラツク軸の肉厚
が、軸方向に均一で信頼性の高い中空のラツク軸
を製造することにある。

これらの目的は、棒状素材を、引き抜き加工に
よつて、所定厚みの厚肉部と該厚肉部の端から軸
直角方向に延びるひれ状部とを有するひれ付棒状
素材に成形し、次に曲げ成形加工によつて前記ひ
れ状部を前記厚肉部の背後に曲げ込み、軸方向に
伸びる中空部を有する中空棒状素材に成形し、次
にこの中空素材を所定の長さに切断して前記厚肉
部にラツク歯を形成することを特徴とするラツク
軸の製造方法によつて達せられる。

次に図面を参照しながら本発明の実施例を説明
する。

先ず、第３図に示す如き方形断面の長尺棒状素
材を引き抜き加工によつて第４図に示す如き、所
定厚みの厚肉部１と該厚肉部の端から軸直角方向
左右に延びるひれ状部２とを有するひれ付棒状素
材に成形する。このひれ付棒状素材の成形は、順
次穴形の変化する多数段の引き抜きダイスを通す
ことによつて除々に変形を与えても良いし、ある
いはあらかじめ熱間圧延加工等によつて粗形状を
成形した後に引き抜き加工を施しても良く、いず
れにしても良好な精度と表面肌を得るために、最
終的には引き抜き加工によつて仕上げる。

このようにして得られたひれ付棒状素材を、曲
げ成形加工、例えば連設された多段の成形ローラ
ーによつて、第５図に示す如くひれ状部２を厚肉
部１の背後に円弧状に曲げ込み、軸方向に延びる
中空部３を有する中空棒状素材に成形する。この
時、ひれ状部の接合部４に必要に応じて溶接を施
しても良い。

こうして厚肉部と薄肉部とを有する断面形状の
中空棒状素材が得られるので、次にこれを所定の
長さに切断し、研削加工等によつて外径を所定の
寸法精度に仕上げ、第６図に示す如く厚肉部に切
削加工等によつてラツク歯を形成する。この外径
仕上げ加工は要求される外径精度によつては省略
しても良い。又ラツク歯は転造等の塑性加工によ
つて形成しても良い。

尚、前記ひれ付棒状素材は、第７図に示す如
く、厚肉部背面に凹部５を形成しておくと、ひれ
状部の曲げ加工が無理なく行なわれ、曲げ成形加
工後に良好な外径形状が得られる。

又、前記ひれ状部は第８図に示す如く、肉厚部
の端から一側に延ばして成形し、このひれ状部を
第９図に示す如く曲げ込んで中空棒状素材に成形
しても良い。

又、ラツク軸の外径形状は一般には略円形断面
になされるが、操向装置の使用中にタイロツドを
介してラツク軸に伝達される回転力、即ちラツク
軸をその軸心回りに回転させる力に抗するため
に、ラツク軸の外径形状を方形等非円形に形成す
ることが知られているが、本発明によればこのよ
うな非円形外形で軸方向に延びる中空部を有する
ラツク軸を製造することも容易である。第１０
図、第１１図は略方形断面のラツク軸を製造する
場合を、第１２図、第１３図はラツク軸背面が略
三角形断面のラツク軸を製造する場合を、各々ひ
れ付棒状素材の断面形状と完成状態の断面形状と
で示したものである。

又、引き抜き加工前の棒状素材の断面形状は、
一般的には円形、方形等が入手し易さの点で有利
であるが、引き抜き加工時の成形形状に応じて他
の形状のものを採用しても良いことは当然であ
る。

本発明は前述の如く、棒状素材を、引き抜き加
工によつて、所定厚みの厚肉部と該厚肉部の端か
ら軸直角方向に延びるひれ状部とを有するひれ付
棒状素材に成形し、次に曲げ成形加工によつて前
記ひれ状部を前記厚肉部の背後に曲げ込み、軸方
向に伸びる中空部を有する中空棒状素材に成形
し、次にこの中空素材を所定の長さに切断して前
記厚肉部にラツク歯を形成するものであるから、
ラツク歯を形成する部分の肉厚が厚く、他の部分
の肉厚が薄い肉厚が不均一な中空のラツク軸を、
引き抜き加工と曲げ成形加工とによつて実用的
に、多量生産的に、経済的に製造することがで
き、又引き抜き加工によつて厚肉部とこれから一
体に延びる薄肉部を成形するものであるから、厚
肉部をラツク歯の強度上必要とされる充分な肉厚
に確保しつつひれ状部の肉厚を極端に薄くするこ
とが出来、ラツク歯の強度を損うことなく大きな
軽量効果が得られ、又厚肉部、ひれ状部共にその
肉厚は、引き抜き加工によつて成形されるもので
あるから軸方向に均一で信頼性の高いものが得ら
れる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は従来例のラツク軸の軸直角
断面図、第３図乃至第６図は本発明一実施例を断
面形状で示すもので、第３図は素材断面図、第４
図はひれ付棒状素材の断面図、第５図は中空棒状
素材の断面図、第６図は完成状態の断面図であ
り、又第７図はひれ付棒状素材の変形例の断面
図、第８図乃至１３図は他の実施例を示すもの
で、第８図、第１０図、第１２図はひれ付棒状素
材の断面図、第９図は中空棒状素材の断面図、第
１１図、第１３図は完成状態の断面図である。 符号の説明、１…厚肉部、２…ひれ状部、３…
中空部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 棒状素材を、引き抜き加工によつて、所定厚
   みの厚肉部と該厚肉部の端から軸直角方向に延び
   るひれ状部とを有するひれ付棒状素材に成形し、
   次に曲げ成形加工によつて前記ひれ状部を前記厚
   肉部の背後に曲げ込み、軸方向に伸びる中空部を
   有する中空棒状素材に成形し、次にこの中空素材
   を所定の長さに切断して前記厚肉部にラツク歯を
   形成することを特徴とするラツクピニオン式舵取
   装置用ラツク軸の製造方法。