JPS6217973Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

この考案はマグネトロンに係わり、とくにその
出力部の改良に関する。 一般にマグネトロンは電子レンジなどに多用さ
れているが、従来のマグネトロンにおける出力部
は、セラミツク筒体に排気管を固着し、この排気
管にアンテナリード先端を接続している。この場
合、排気管の深さをλ／４（但しλは第２高調波
の波長）に設定し、第２高調波抑制用チヨークと
して用いている。更にアンテナリードの途中に金
属円筒を取付け第３あるいは第４高調波抑制用チ
ヨークとしているものもある。 ところが上記のようなマグネトロンでは、内部
構造が複雑であり、アンテナリードの途中に金属
円筒を設けるため、機械的に不安定である、又、
チヨークの円筒とその他の部品との間に高周波放
電を起す危険もある。 一方、特開昭49−115465号公報や実開昭51−
113363号公報に開示されるように、出力アンテナ
リードの先端部に第１のチヨーク円筒を接続し、
その外周に第２チヨーク円筒を接合して異なる高
調波に対するチヨーク溝を形成した構造も知られ
ている。しかしながら、これら公知マグネトロン
は、外側第２チヨーク円筒の内側に内側第１チヨ
ーク円筒の一部を嵌合させてろう接などにより接
続する構成であるため、組立ての際にとくに内側
第１チヨーク円筒の位置を定めにくい。そのた
め、高調波に対する最適のチヨーク作用を得る寸
法を決めることが困難で、複雑な位置決め治具を
必要とするなど、組立てが煩雑となる欠点があ
る。 この考案は上記従来の欠点を除去したマグネト
ロンを提供することを目的とする。 以下、図面を参照してこの考案の一実施例を詳
細に説明する。この考案のマグネトロンは第１図
及び第２図に示すように構成され、第２図は第１
図の要部（出力部）を拡大して示したものであ
る。 即ち、真空外囲器の一部を構成する陽極円筒１
の内壁に複数の陽極ベイン２が放射状に取着さ
れ、複数のストラツプ３により１つおきに連結さ
れて陽極４が形成されている。そして陽極円筒１
の両端には、気密壁の一部を兼ねると共に電子作
用空間に一様な軸方向磁界を形成するためにそれ
ぞれ中央に透孔を有する略円錐状の磁極５，６が
固着され、一方磁極５には陰極ステム７が他方の
磁極６には出力部８がそれぞれ突設されている。
又、陽極４の軸心に沿う電子作用空間９には、陰
極つまり炭化処理を施したトリウムタングステン
からなる螺旋状の陰極フイラメント１０が配設さ
れ、この陰極フイラメント１０は両端がそれぞれ
モリブデン製のエンドハツト１１，１２に固着さ
れている。そして一方のエンドハツト１１は給電
線を兼ねた筒状のモリブデン製外側陰極支持体１
３に支持され他方のエンドハツト１２は陰極フイ
ラメント１０及び外側陰極支持体１３の内側を貫
通する給電線を兼ねたモリブデン製内側陰極支持
体１４に支持されている。尚、両陰極支持体１
３，１４間には所定間隔に保つため一部にアルミ
ナセラミツクス製のリング１５が配設されてい
る。そして内側陰極支持体１４は入力端子１６に
固定され、外側陰極支持体１３はコバールよりな
る筒状のセラミツクス封着体１７に固定されてい
る。 一方、磁極６には既述のように出力部８が突設
されている。この出力部８は、陽極４に気密接合
された金属封着体１８、これに気密接合されたセ
ラミツクス筒体１９、高調波チヨーク用第１円筒
２０、それと異なる高調波チヨーク用第２円筒２
１、接続用ブロツク２２、出力アンテナ端帽２
３、及び出力アンテナリード２４等からなつてい
る。この場合、アンテナリード２４の一端は陽極
ベイン２の１つに固着され、封着体１８およびセ
ラミツクス円筒１９の内側を通つて延長された他
端には接続用ブロツク２２が固着されている。そ
して、アンテナリード２４の先端附近の外側には
段付有蓋筒状の高調波チヨーク用第１円筒２０が
配設されて接続用ブロツク２２に固着され、第１
円筒２０及び第２円筒２１の一部よりアンテナリ
ード２４の先端外側に特定の高調波例えば第２高
調波抑制用チヨーク溝２５が形成されている。
尚、このとき第２図から明らかな如く、チヨーク
溝２５の深さＡは約λg₁／４（但しλg₁は第２高
調波の波長）に設定されている。そこで、このよ
うな第２高調波抑制用チヨーク溝２５を構成する
第１円筒２０の外周には、環状にして且つ半断面
略Ｕ字状にしてその内側円筒部の途中に段部２１
ａを有する高調波チヨーク用第２円筒２１が同軸
的に配設固着され、その外側円筒部の開口端がセ
ラミツクス筒体１９に気密に固着されている。と
くに、内側円筒部の段部２１ａに、第１円筒２０
の開口端部が接合係止され気密接合されている。
そして、半断面が略Ｕ字状をなすこの第２円筒２
１により、第４高調波抑制用チヨーク溝２６が前
記第２高調波抑制用チヨーク溝２５の外側に同軸
状に形成されている。尚、チヨーク溝２６の深さ
Ｂは約λg₂／４（但しλg₂は第４高調波の波長）
に設定されている。又、第２円筒２１の段部２１
ａから陽極４の方向に所定長さの内側円筒端部２
１ｂが延長して設けられている。この内側円筒端
部２１ｂは、第１円筒２０と同等の内径寸法を有
して内側チヨーク溝２５の深さＡを規定してい
て、第２高調波抑制用チヨーク溝２５と第４高調
波抑制用チヨーク溝２６の両方の円筒体として共
用されていることになる。そして、第１円筒２０
と第２円筒２１の一部を覆うように出力アンテナ
端帽２３が配設され、それは第２円筒２１の外周
に固着され電気的に接続されている。第１円筒、
第２円筒およびセラミツクス筒体１９は互いに気
密に接合されて真空容器の一部をなしている。 この考案の実施例のマグネトロンによれば、第
２高調波成分および第４高調波成分の輻射が大き
く抑制された。 本発明者が確認した例を次に説明する。 2450MHz帯の基本波発振周波数で、出力電力約
800Wの電子レンジ用マグネトロンに関し、この
考案の出力部構造のものと比較品との第２〜４高
周波輻射レベルを比較した。測定方法は電波暗室
内に被測定マグネトロンをとりつけた電子レンジ
オーブンを設置し、このオーブンの内部に水負荷
を置くとともにオーブンの一つの側壁に直径10cm
の開孔を設けてこの開孔からマイクロ波が漏れう
るようにし、さらにこれから３ｍ離れたところに
ホーンアンテナおよびこのホーンアンテナからの
信号を周波数成分ごとにそのレベルを測定する測
定器を接続したものである。なおこの考案の出力
部構造は第１図および第２図に示すもので、同図
のＡ寸法を13.0mmとし、Ｂ寸法を何種類か用意し
た部品で変えマグネトロンをつつたもので、第２
円筒２１のセラミツク１９への接続端部から底部
までの寸法は図示のようにＢ寸法の約半分に設定
したものである。そしてこのＢ寸法は５〜８mmの
間で変えて比較した。各々について５本づつの測
定を行なつた結果は下記第１表の通りの結果とな
つた。

【表】 この結果から、輻射される第２高調波成分は第
１円筒２０を設けない場合の約1/8のレベルに低
下し、さらにこれは第２円筒２１を設けることに
よりこの第２円筒２１を設けない場合（１／
8.9）よりもきわめてわずかではあるが効果が低
下することが明らかである。しかしこれはほとん
ど無視しうる程度であり、むしろ後述する第４高
調波成分の輻射抑制効果が顕著に得られているこ
との方が重要である。第３高調波は１／1.4とい
うわずかな低減が得られた。第４高調波成分に対
してこの考案は第２円筒２１を設けない比較品に
比べて、１／6.5〜１／8.7の低いレベルに抑える
ことができた。こうして出力部をあまり複雑化お
よび大形化することなく広い帯域の高調波抑制作
用を得ることができるという実用上のすぐれた効
果を奏する。なおこの外側の第２円筒の付加によ
つても内側の第１円筒による高調波抑制効果がほ
とんど悪影響を受けないのは、第１円筒の開口端
部の位置が第２円筒の開口端部すなわちセラミツ
クとの接合部の位置よりも陽極共振空胴の方に近
いためであると考えられる。 とくにこの考案は、半断面略Ｕ字状の高調波チ
ヨーク用第２円筒２１の内側円筒部にその開口端
部が径小となる段部が形成され、この段部にチヨ
ーク用第１円筒の開口端部を嵌合係止させて両円
筒を気密接合した構造であるため、その組立てを
高精度に且つ容易に行ない得る。とくにチヨーク
溝の深さ寸法は、高調波に対するチヨーク作用に
顕著な影響を与えるので、これを高精度に定める
必要がある。そこでこの考案によれば、セラミツ
クス筒体の端面に機械的に安定に支持される高調
波チヨーク用第２円筒の内側段部に、第１円筒の
開口端部を嵌合係止させることによりこの第１円
筒の位置が定まるので、内側チヨーク溝の深さ寸
法Ａも自動的に定まる。しかも第１円筒は段部で
機械的にも安定に保持される。したがつて余分の
位置決め治具を使用しないでも精度よく容易に位
置決めして気密接合することができる。 以上説明したようにこの考案によれば、チヨー
ク用第１円筒を高精度に且つ比較的容易に安定に
組立てることができ、異なる複数の高調波に対す
る所要のチヨーク作用を示すマグネトロンを得る
ことができる。 なお、上記実施例では第２高調波抑制用チヨー
ク２５の外側に第４高調波抑制用チヨーク溝を設
けたが、第４高調波抑制用チヨーク溝の代りに第
３高調波などの抑制用チヨーク溝を形成すること
もできる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例に係るマグネトロ
ンを示す縦断面図、第２図は第１図の要部（出力
部）を拡大して示す縦断面図である。 ４……陽極、２……陽極ベイン、８……出力
部、１８……金属封着体、１９……セラミツクス
筒体、２０……高調波チヨーク用第１円筒、２１
……高調波チヨーク用第２円筒、２１ａ……段
部、２１ｂ……内側円筒端部、２４……アンテナ
リード。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 陽極４から突出して設けられた筒状金属封着体
   １８と、この封着体１８に気密接合されたセラミ
   ツクス筒体１９と、上記陽極の陽極ベイン２から
   上記封着体およびセラミツクス筒体の内側を通つ
   て延長された出力アンテナリード２４と、このア
   ンテナリードの先端部に電気的に結合され且つこ
   のアンテナリード先端部を同軸状にとりまいて設
   けられた高調波チヨーク用第１円筒２０と、この
   第１円筒の外側に気密接合されて同軸状に配設さ
   れ且つその外側筒状端部が上記セラミツクス筒体
   １９に気密接合された半断面略Ｕ字状の高調波チ
   ヨーク用第２円筒２１とを具備してなるマグネト
   ロンにおいて、 上記高調波チヨーク用第２円筒２１は、その内
   側円筒部に段部２１ａを有し、この段部２１ａに
   上記第１円筒２０の開口端部が嵌合係止されて気
   密接合され、且つ前記第２円筒の段部２１ａから
   陽極４方向に所定長さの内側円筒端部２１ｂが延
   長して設けられてなることを特徴とするマグネト
   ロン。