JPS6123381B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明はピストンリング、特にリング接触面
に耐摩耗面又はコーテイング及びリング間隙にオ
ーバーラツプ（重なり）型シールジヨイントを備
える割環状ピストンリング構造に関する。

従来、半径方向外面に耐摩耗コーテイングを有
する割環状リングが、往復ピストン型内燃エンジ
ンで頂部即ち圧縮ピストンリングとして有効に利
用されている。このようなリングの例は米国特許
第3133739号（マリエン）明細書、及び同第
2266692号（オルソン）明細書に開示されてい
る。圧縮ピストンリングのリング間隙に、オーバ
ーラツプ型ジヨイントを設けることがリング間隙
において改良されたシール状態を得て、いわゆる
圧縮ガスのガス漏れ（blow−by）を減少させる
ために望ましい。このようなシールジヨイントの
例は、米国特許第615902号（ラオース）明細書に
開示されている。しかし有効なシールをもたらす
べく従来提案されているオーバーラツプ型ジヨイ
ントは、リング製造時にジヨイント領域の耐摩耗
コーテイングの潜在的なそりはがれが生成し、そ
れがシリンダ壁を傷つけるので通常設計の耐摩耗
コーテイングされたリングに利用できなかつた。
ジヨイント領域を非コーテイング状態に残すこと
が提案されたが、この場合はシールが効果的に行
なわれず、エンジンが損傷することになる。

従つて、この発明の目的は、耐摩耗コーテイン
グされたピストンリングの有利な特性と、オーバ
ーラツプ型ジヨイントの改良されたガス漏れシー
ル特性を組合わせると共に、前記耐摩耗コーテイ
ングがリングの接触面の円周方向全体に延びる、
改良された割環状ピストンリングを提供すること
である。

この発明の別の目的、特徴及び利点は、図面を
参照した下記の詳細な説明から明らかになるであ
ろう。

図面において、第１図はジーゼルエンジンで頂
部即ち圧縮リングとして利用するのに好ましい一
形態として、この発明の原理を実施したピストン
リング２０を示している。第１〜４図を比較する
ことから明らかなように、リング２０はバレル状
外周面２２を有し、即ちリングの外周面２２が半
径Ｒの回りに一様な曲率を有する（第２図）型式
のものである。リング２０の横断面状はくさび石
型（台形）で、即ちリングの頂側面及び底側面２
４，２６は、相互にリングの内側方向に収斂する
ように傾斜している。リング２０の内周面３１は
リングの軸心に平行に延びている。

第３，４図に示すように、リングの外周面２２
は、基面３２、上及び下端面３４，３６から画定
される、円周方向に延びる溝を備える。この溝は
通常技術、例えば硬質耐摩耗材料、例えばモリブ
デンのプラズマ溶射により満たされて、リングの
外面を円周方向に延びるバンド３８を形成してい
る。リングの本体は通常の方法例えば遠心鋳造に
より形成され、延性鉄又はスチールのような鉄金
属からなつている。

この発明の一つの特長において、耐摩耗バンド
３８はリングの軸心方向に片寄つており、その中
心はリングの中央面Ｐの少し下方へ配置されてお
り（第３図）、夫々バンド３８の上部及び下部境
界を形成する鉄製のランド４０，４２はその幅
（リングの軸心方向に測定して）は等しくなく形
成されている。半径Ｒは中央面Ｐ上に中心を有す
る。従つて137.16mmの公称外径を有するリングの
一実施例においては、頂部ランド４０は0.76〜
0.89mmの幅寸法を有するが、底部ランド４２は僅
か0.10〜0.23mmの寸法を有するだけである。この
ような実施例においては、頂部ランド４０及び下
部ランド４２は、ランドとシリンダ孔間のスカフ
イング（表面のはつきりしない傷）の発生の恐れ
を少なくするため十分に狭くされている。前述の
バレル面２２によりランド４０，４２を対向シリ
ンダ壁（図示しない）から離れて位置決めするこ
とにより如何なるスカフイングも減少する。

この発明の別の特長によれば、リング２０には
エンジンのガス漏れを減少するため、リング間隙
にアングル型オーバーラツプジヨイントが設けら
れている。ジヨイントの設計形態は、前記米国特
許第615902号明細書の第６，７図に示される型式
の修正形態である。従つて第６〜９図に示すよう
にリング２０の一方の割端部には舌状部５０が設
けられ、舌状部５０は半径方向及び軸心方向に延
びる端面５１から、リングの他端へ向けて円周方
向に突出している。リング２０の他方の割端部に
は舌状部収容用；補完アングル凹所５４が設けら
れている（第８図）。リング２０がピストンの対
応する頂部圧縮リング溝内の作動位置に配置され
て、ピストンがエンジンの関連シリンダ孔内へ組
立てられた時のように作動径に圧縮された時、舌
状部５０はリングの他方の割端部に重なり、摺動
自在にオーバーラツプする。このような正常にオ
ーバーラツプした作動状態は、第１，４及び５図
に示されている。

オーバーラツプジヨイントは、舌状部５０を形
成すべくリングの端部から材料を切削する通常の
ミリング（フライス）作業により形成でき、ミリ
ング切削により舌状部５０の平坦面即ちアングル
頂面５２（第９図）及び半径方向及び軸心方向に
延びる端面５１が、同時に形成される。頂面５２
の上端は、リングの舌状部端の頂部ランド４０の
ほゞ中央に配置された円周方向に延びる端部５６
で終つている。アングル面５２の下側内端部は、
リングの内周縁３１の内端６０に近接するが、そ
の半径方向外方でリング円周方向に延びる端部５
８に終つている。硬質表面バンド３８は舌状部５
０の軸心方向に延びる外端６２まで、全体にわた
つて延びており、舌状部５０の端面６４はリング
２０の軸心に平行な半径方向の面上に配置され
る。

リング２０の他方の割端部の凹所５４も同様に
ミリング作業により形成され、凹所５４の平坦
面、即ちアングル面７０が前記舌状部５０の平坦
面たるアングル面５２と対向して形成され、また
関連側面７２が形成される。面７０の外頂端部７
４は端部５６と同様に、頂部ランド４０の中央へ
円周方向に延びている（第８図）。面７０の下側
半径内端部７６はリングの円周方向に延び、リン
グのオーバーラツプ状態で端部５８と、実質的に
同延状に配置される（第５図））。リングの凹所端
部の端面７８（第６〜８図）は、面５１に対して
本質的に平行に延びると共に、リング２０のオー
バーラツプ作動状態において前記面５１に並置さ
れる。

リングの外周縁でその端部５６，７４（第８
図）において、オーバーラツプジヨイントがそこ
を介して破断する広幅の上部ランド４０をリング
２０に設けることにより、面５１の外端から端面
６４（第７図）へ舌状部５０に沿つて走る上部ラ
ンド延長部即ち内側ランド４０ａと、面７２，７
８間においてリングの凹所端部の外周縁に沿つて
走る上部ランドを延長部即ち外側ランド４０ｂと
が残される。好ましくは、内側ランド４０ａは外
側ランド４０ｂの軸心方向寸法の、実質的に１〜
３倍の軸心方向寸法を有する。また外側ランド４
０ｂ（第８図）はその軸心方向寸法が、リング２
０の下部ランド４２に少なくとも等しいが、それ
より少し大きくされることが好ましい。面５２，
７０（第５，８及び９図）は中央面Ｐに対して鋭
角（好ましくは24度）をなす面内に存し、リング
本体横断面のほゞ対角線状に延びている。

オーバーラツプジヨイントがリング２０の割端
部でミリング加工されてから、複数のそのような
リングはアーパー（心軸）に固定されて硬質の耐
摩材料をプラズマ溶射コーテイングされる。コー
テイング面はそれから、バンド３８により分離さ
れたランド４０，４２を露出するように研削され
る。それから舌状部４０ａ，４０ｂの端部７４，
５６は溶射金属で満たされたリング表面の外側に
配置される。従つて、膨脹力が溶射されたリング
に、端部を離すように適用されると、硬質金属３
８のそりはがれが生じる可能性のある領域は、端
部６２，８０だけである。このような軸心方向端
部６２，８０に沿うそりはがれの影響は、引続く
間隙研磨作業により最少にされまたは除去され
る。このことは、自由間隙寸法の許容誤差範囲が
比較的大きいので、従つて過度の間隙許容誤差範
囲をもたらさずに、金属を面６４，７２（及びコ
ーテイング端部６２，８０）から除去できるから
便利である。端部５６，７４が硬質コーテイング
金属内に配置された、耐摩耗コーテイングされた
リングにアングルシール・オーバーラツプジヨイ
ントを利用する従来の技術においては、オーバー
ラツプ間隙を介するガス漏出を制御するため面５
２，７０間に最少の間隙状態を維持しながらアン
グル面７０，５２はそりはがれを除去するために
機械加工することはできなかつた。代表的にはこ
れまで説明した例示リングにおいて、これらオー
バーラツプ面間の間隙は0.00〜0.13mmの範囲の維
持される。

アングル型ジヨイントの設計自体は、リングの
頂面から底面の方向をシールするためのもので、
頂面は通常「UP」及び「ｏ」マーク８４（第６
図）が付されて、組立て時、シリンダの燃焼領域
の方向に向けられるようにされる。従つて、リン
グ２０の頂面がピストンの頂部方向に、上方に面
して装着されると、リングジヨイントによるシー
ルは上方から下方の方向になる。また、アング
ル・シールジヨイントがランド４０で破断すると
共に、端部強度を保証するのに十分な幅を有する
ランド４０ａ，４０ｂを残すことができるよう
に、上部ランド４０を下部ランド４２より広幅に
形成することが好ましい。それでもそしてこゝで
は好ましくはないが、下部ランド４２は適当な場
合には、上部ランド４０にその幅を等しく形成す
ることができる。この発明をモリブデンを充填し
たリングに関連して説明してきたが、この発明の
原理は溝充填用にクロム、セラミツク又は酸化ア
ルミニウムのような他の耐摩耗材料を有するリン
グにも同時に適用できる。

これまでの説明及び特許請求の範囲において方
向用語例えば「頂部」；「底部」、「上部」及び
「下部」は説明のためのみに利用されており、ピ
ストンが垂直方向に往復動し、リングが頂部即ち
圧縮シールとして利用される適用例における関連
ピストンに対する前述並びに好ましいリング方向
に限定するものではない。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の原理により構成されたピス
トンリングの頂平面図、第２図は第１図の２−２
線に沿う垂直断面図、第３図は第２図のリングの
一部の拡大図、第４図は第１図の矢印Ａの方向に
見た垂直立面図、第５図は第１図の５−５線に沿
う垂直断面図、第６図は自由状態におけるリング
の割端部の頂平面図、第７図は第６図に対応する
底平面図、第８図はリングの外側で少し上方から
見たリングの割端部の斜視図、第９図はリングの
内側で少し上方から見たリングの割端部の斜視図
である。 ２０……ピストンリング、２２……外周面、２
４，２６……側壁、３８……耐摩耗材料バンド、
４０，４２……ランド、５２，７０……平坦面、
Ｐ……中央面。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ リング溝内に着座する軸心方向側壁及び外周
   面とを備える割環状金属本体と、前記外周面全体
   にわたつて延びると共に該外周面に軸心方向に隔
   置して配置された１対のランドと、該ランドによ
   り画定される溝と、シリンダ壁とシール係合すべ
   く前記溝内に設けられる耐摩耗性材料からなるバ
   ンドであつて前記１対のランドが夫々該バンドの
   対向する軸心方向端部に隣接するように配置され
   るバンドと、および、リング割端部においてリン
   グ横断面のほゞ対角線状に延びると共にリングの
   中央面に対して鋭角に傾斜されてリングの円周方
   向に延びる対向平坦面を含むオーバーラツプジヨ
   イント構造とからなり、前記対向平坦面は前記外
   周面において前記ランドの一方で終つていること
   からなるピストンリング。 ２ ジヨイントの平坦面の半径方向内端部が前記
   一方のランドから遠い方の側壁に終つている、特
   許請求の範囲第１項に記載のピストンリング。 ３ ジヨイントの対向平坦面の各々はリング間隙
   の半径方向面を画定する一方の端部壁から前記間
   隙の他方の半径方向面を画定する別の端部壁まで
   円周方向に延び、溝がリング外周面全体に円周方
   向に延びると共に、バンドはリング割端部と一致
   する端部を備える、特許請求の範囲第１項に記載
   のピストンリング。 ４ 外周面がバレル面隣郭を有すると共に、リン
   グの最大外径が耐摩耗性金属バンドの外周面内に
   存する、特許請求の範囲第１項に記載のピストン
   リング。 ５ 前記一方のランドが、他方のランドより広幅
   である、特許請求の範囲第１項に記載のピストン
   リング。 ６ 前記リングの横断面がくさび石状である、特
   許請求の範囲第１項に記載のピストンリング。 ７ バンドの軸心方向寸法の中心が、リング本体
   の中央面から前記一方のランドからより離れてい
   るリング側壁の方向にかたよつている特許請求の
   範囲第４項に記載のピストンリング。 ８ 外周面を有する割環状金属本体と、前記外周
   面の全体に延びると共にシリンダ壁にシール係合
   する耐摩耗材料からなるバンドとを有し、前記バ
   ンドは前記外周面の軸心方向寸法より小さい軸心
   方向寸法を有すると共に前記リングの中央面から
   軸心方向に片寄つて配置されており、前記外周面
   はリング本体と一体で且つ前記バンドの軸心方向
   両側縁の全周に配置された軸心方向寸法を異にす
   る一対のランド領域を包含し、および、前記リン
   グの横断面のほゞ対角線状に延びる対向平坦面で
   あつて軸心方向寸法の大きいランド領域のある前
   記外周面において終つている前記平坦面を含むリ
   ングの割端部におけるオーバーラツプジヨイント
   構造、からなる往復ピストン型内燃エンジン用ピ
   ストンリング。