JPS6119732B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、ポリエステルマルチフイラメント糸
からなる紡績糸様嵩高糸およびその製造方法に関
する。

従来、連続マルチフイラメント糸から得られる
紡績糸様嵩高糸としては、切断子による擦過加工
法、特性の異なるフイラメントを混合して弱い特
性をもつフイラメントを切断する方法又は未延伸
糸若しくは半延伸糸を利用して部分的に弱点を与
え流体処理によつて部分的に切断、交絡させる方
法などにより得られる毛羽加工糸と、マルチフイ
ラメント糸またはその捲縮加工糸を流体乱流域に
供給し、ループや絡みを形成させたいわゆるルー
プ糸とがある。しかし、毛羽加工糸の場合には、
切断子の目づまり、摩耗などでも毛羽数にばらつ
きが生じたり、毛羽の風合い効果を得るためには
ある程度毛羽数を多くする必要があるが、多くす
れば毛羽長が不揃いでネツプが発生し易く外観が
損なわれ、また抗ピリング性に劣るなどの欠点が
生じる。また、流体乱流を利用したループ糸の場
合には、紡績糸様風合に近づけることはできるも
のの、スナツキング、フアスナー効果（糸同志又
は布同志がひつつく現象を云う。）等の製品上の
問題があり、糸軸方向の張力に対する安定性に欠
け、また、パツケージからの解舒性が悪く、布帛
製造工程においてトラブルの原因となることが多
かつた。また、仮撚加工した後流体処理する方法
もあるが、この方法では第４図に示すようにビリ
状部が多数有し、スナツキング上の問題点が多発
した（特開昭52−5350号公報参照）。

したがつて、本発明の目的は、かかる従来の紡
績糸様嵩高糸を改良した独特の構造の紡績糸様嵩
高糸およびその製造方法を提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明は次の如き
構成を有する。すなわち、本発明は、多数のルー
プや絡みが付与されているポリエステルマルチフ
イラメント糸であつて、該多数のループの大部分
が糸軸に対して傾斜しながら糸のトルクの向きと
同じ向きに捲く付くように糸本体に密着している
ことを特徴とする紡績糸様嵩高糸およびポリエス
テルマルチフイラメント糸を流体処理装置に過剰
供給してループや絡みを形成させ、ついで少なく
とも摩擦摺動体を用いて加撚、熱固定、解撚する
ことを特徴とする紡績糸様嵩高糸の製造方法をそ
の要旨とするものである。次に、本発明を図面に
基づいて説明する。第１図において、紡績糸様嵩
高糸１は、ポリエステルマルチフイラメントから
なり、糸全体にループ２や絡み３が付与されてお
り、糸外周面に出ている多数のループ２が糸軸に
対し傾斜しながらトルクの向きと同じ向きに糸本
体に捲き付くように密着した構造を有する。

本発明に係る紡績糸様嵩高糸は、このような構
造をとることにより、極めて天然繊維に近い風合
を有すると共に、フアスナー効果のない抗スナツ
キング性に優れた特性を有する。従来の糸軸に対
して放射状に多数のループがつき出ているループ
糸の構造では、スナツキング、フアスナー効果な
どの製品上の問題が生じ、糸軸方向の張力に対し
て不安定であるという問題が生じる。本発明は、
羊毛または綿などの天然繊維から紡績された糸の
如き風合、製品性能を有する紡績糸様嵩高糸を提
供することを目標に置いているが、これらの天然
繊維より得られた紡績糸は、かなり多数の撚によ
り集束されており、したがつて発生している毛羽
長も短く均一で、糸断面が丸味を呈し適度な嵩高
構造を有する。毛羽に比較して糸外周面にループ
をもつ構造は、紡績糸様のタツチおよび大きな嵩
高効果附与には有利である反面、糸軸に対してル
ープが放射状につき出やすく、ループ大小がその
まま糸の表面に現われてスナツキングまたはフア
スナー効果などの問題を発生しやすく、また、パ
ツケージからの解舒性を悪くなる原因となり、さ
らにフイラメント相互間に堅固な交絡集束効果を
もたせにくい欠点を併せ有する。したがつて、こ
のような従来のループ糸の構造上の欠点を無くす
るには、糸外周面につき出ている多数のループの
大部分が糸軸に対して傾斜しながらトルクの向き
と同じ向きに捲きついていることが必要である。

かかる構造の場合に、最もループが糸表面に密
着した嵩高糸が得られるのである。ここで、ルー
プを糸軸に対して傾斜させてトルクの向と同じ向
きに捲きつかせているのは、糸の旋回性により該
ループが糸表面から起されるのを防ぐためであ
る。第２図は本発明に係る紡績糸様嵩高糸を製造
する装置の略正面図である。同図において第１フ
イードローラー６は第２フイードローラー９より
も早い表面速度で駆動される。この際のオーバー
フイード率は、目的とする用途、風合いなどによ
り多少異なるが、好ましくは５〜50％より好まし
くは10〜30％にする。７は水付与装置で、流体処
理装置８によりポリエステルマルチフイラメント
糸４に与えられるループやからみ効果を向上させ
るために、流体処理装置８による攬乱と同時に又
はその前にポリエステルマルチフイラメント糸４
に水を付与するものである。流体処理装置８は、
糸条に対して流体乱流作用を与えタスラン（登録
商標）加工糸のようなループやたるみを発生させ
るものであればよい。なお、水付与装置７は、前
記したように流体特にエアによつてポリエステル
マルチフイラメント糸４にループや絡みを付与す
る効果を向上させる作用のほかに、ポリエステル
マルチフイラメント糸４を攬乱すると同時に又は
それ以前に水でぬらすことにより、糸に付着する
オイルを脱落させて、次に続く仮撚部におけるヒ
ーターの汚れを減少させ摩擦摺動体の加撚効率を
高める働きをする。水付与装置７の例としては、
図の如く表面に布をまいたローラー１７を水に浸
漬し、これにポリエステルマルチフイラメント糸
４を接触走行させるものがあげられる。１１は、
摩擦摺動体であり、ポリエステルマルチフイラメ
ント糸４と接触回転してこれを加撚し、糸１の外
周面につき出ているループを糸軸に対して捲きこ
むように集束させるものである。この意味で摩擦
摺動体の表面は、糸との接触によつて容易に摩耗
することのない耐摩耗性部材より構成されている
ことを要し、例えばセラミツクコーテイングなど
を施したフリクシヨンツイスターなどが最良であ
る。これに対して従来のピンタイプの仮撚スピン
ドルでは、ピンによるしごき作用のため、ループ
や絡みが引き伸ばされたり、引つかかつて糸切れ
が発生したりする。したがつて、本発明において
は糸を接触回転して加撚する摩擦摺動体を選択す
ることが必要である。なお、仮撚加工する場合に
は、ループや絡みを有する糸に安定した撚効果を
付与するため、仮撚加工域では若干の伸長を与え
ながら仮撚加工することが好ましい。また、熱固
定された糸の過度の引伸しをさけるため仮撚域の
張力に対する解撚域の張力の比は0.8〜1.2の範囲
にすることが好ましい。加撚された糸の熱固定温
度は、通常ポリエステルマルチフイラメント糸を
仮撚加工する場合の熱固定温度で良い。１２はデ
リベリローラーである。

第３図は、本発明に係る紡績糸様嵩高糸を製造
する装置の他の例の略正面図である。第３図では
第２図とは異なり第１フイードローラーは２個設
けられ、さらにもう１個の摩擦摺動体１１′がヒ
ーター１０の手前に設けられている。これは、摩
擦摺動体１１′によつて予めループを表面に捲き
こんだ状態でヒーター１０により熱固定して摩擦
摺動体１１により加撚、解撚することにより、糸
の外周面につき出ているループを糸軸に対してよ
り良く捲きこむように集束させるためである。

次に本発明の作用を説明する。本発明において
使用されるポリエステルマルチフイラメント糸
は、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマー
からなるマルチフイラメント糸又はエチレンテレ
フタレートを主成分としエチレンイソフタレー
ト、エチレンオキシベンゾエート若しくはエチレ
ンセバケートなどを共重合成分とする共重合ポリ
エステルからなるマルチフイラメント糸、さらに
はこれらの混合マルチフイラメント糸でも良く、
構成フイラメントの繊度は単一でも又は異なるも
のでもよいが、平均で５デニール以下であること
が好ましい。５デニールを越えると風合いが粗硬
になり嵩高性が減少し品質は著しく低下する。第
２図に於てポリエステルマルチフイラメント糸４
は、パーン５から解舒されガイド１５を通つて第
１フイードローラー６により弛緩状態で水付与装
置７、流体処理装置８に供給される。ここでルー
プや絡みが形成された状態でポリエステルマルチ
フイラメント糸４は第２フイードローラー９に供
給され、第２フイードローラー９とデリベリロー
ラー１２との間で摩擦摺動体１１により仮撚加工
され、紡績糸様嵩高糸１となつてガイド１６を通
つてドラム１３によつてパツケージ１４に巻き取
られる。なお、すでに述べた如くポリエステルマ
ルチフイラメント糸４は、ローラー１７によつて
ループやからみ効果を出すために水処理される。
１８はガイドである。

第３図において、２本のポリエステルマルチフ
イラメント糸４′，４″は、パーン５′，５″から解
舒されガイド１５′，１５″を通つて異なる第１フ
イードローラー６′，６″により異速度で水付与装
置７′、流体処理装置８に供給され、異なる弛緩
率で流体乱流処理を受ける。

この場合に、ループや絡みが形成されやすく、
糸軸方向の張力に対してもループが安定化する方
向にある。また、構造的に供給速度の大なる方が
主にループ形成に寄与することになるので、異種
のフイラメントとの組合せとすることにより、異
なる風合いの嵩高糸が得られる。ついで、摩擦摺
動体１１′によつてループが表面に捲きこまれた
状態にされ、ヒーター１０によつて熱固定され、
さらに摩擦摺動体１１によつて加熱、解撚され、
デリベリローラー１２、ガイド１６′をへて紡績
糸様嵩高糸１′は、ドラム１３によつてパツケー
ジ１４に巻き取られる。ループや絡み効果を出す
ためには摩擦摺動体１１，１１′の回転の向きは
同方向にする必要がある。このように、本発明に
よれば、極めて天然繊維に近い風合を有し、抗ス
ナツキング性にすぐれた紡績糸様嵩高糸が、容易
に製造される。

実施例 １ ポリエステルマルチフイラメント糸（150デニ
ール／48フイラメント）を第２図の装置で下記の
条件により加工し、180デニールの紡績糸様嵩高
糸を製造した。

条件； 第１フイードローラーの表面速度‥260ｍ／
min 水付与 ‥2.5c.c.／
min 流体処理装置の空気圧 ‥６Kg／
cm²・Ｇ 第２フイードローラーの表面速度‥200ｍ／
min デリベリローラーの表面速度 ‥220ｍ／
min 摩擦摺動体 ‥摩擦仮撚
装置（ほぼ正三角形の頂点に配置された３軸
にそれぞれ３枚ずつ計９枚のセラミツクコー
テイングデイスクを取り付けたもの） デイスクの表面速度 ‥450ｍ／
min ヒーター ‥1.0ｍ／
210℃ 巻取りローラーの表面速度 ‥206.8
ｍ／min 得られた糸を丸編機にかけダブルピケ組織にて製
織したところ、解舒張力変動による編目長不揃い
や、過張力探知装置の作動による編機停台などの
操業性低下のトラブルは無く、良好な製織性が示
された。得られた編地を染色した結果、梳毛糸風
の風合いをもつ嵩高な編地が得られた。また、こ
の編地は、フアスナー効果がなく、抗スナツキン
グ性も良好であつた。

実施例 ２ ２本のポリエステルマルチフイラメント糸（75
デニール／36フイラメントと75デニール／72フイ
ラメント）を用い、第３図に示す装置で下記条件
により加工し、183デニールの紡績糸様嵩高糸を
製造した。

条件； 第１フイードローラーの表面速度 75デニール／36フイラメント‥330ｍ／
min 75デニール／72フイラメント‥420ｍ／
min 水付与 ‥３c.c.／
min 流体処理装置の空気圧 ‥6.5Kg／
cm²・Ｇ 第２フイードローラーの表面速度‥300ｍ／
min 摩擦摺動体 ‥実施例１
と同じもの デイスクの表面速度 ‥660ｍ／
min 加撚方向 ‥両者とも
同じ向きでＺ方向 ヒーター ‥1.0×210
℃ デリベリローラーの表面速度 ‥306ｍ／
min 巻取りローラーの表面速度 ‥294ｍ／
min 得られた糸を用いて斜文組織（2/2）に製織した
ところ、準備工程及び製織工程での加工張力にも
伸ばされることなく、また整経、緯管巻時の解舒
性にも特に問題はなかつた。得られた織物を染色
加工したところ嵩高性に富み抗スナツキング性に
すぐれた紡績糸様の織物が得られた。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明に係る紡績糸様嵩高糸のモデ
ル図、第２図は本発明に使用する装置の略正面
図、第３図は本発明に使用する装置の他の例の略
正面図第４図は従来のスパン調特殊嵩高糸の側面
図である。 １‥紡績糸様嵩高糸のモデル図、２‥ループ、
３‥絡み、８‥流体処理装置、１１，１１′‥摩
擦摺動体。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 多数のループや絡みが付与されているポリエ
   ステルマルチフイラメント糸であつて、該多数の
   ループの大部分が糸軸に対して傾斜しながら糸の
   トルクの向きと同じ向きに捲き付くように糸本体
   に密着していることを特徴とする紡績糸様嵩高
   糸。 ２ ポリエステルマルチフイラメント糸を流体処
   理装置に過剰供給してループや絡みを形成させ、
   ついで少なくとも摩擦摺動体を用いて加撚、熱固
   定、解撚することを特徴とする紡績糸様嵩高糸の
   製造方法。