JPS6114581B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ビデオテープレコーダ（以下
“VTR”と略す。）の回転ヘツドアセンブリに関
するものである。

従来例の構成とその問題点 代表例として、VHS型VTRについて説明す
る。従来の回転ヘツドアセンブリは第１図にその
具体例を示す様に、磁気テープ（以下“テープ”
と略す。）１に対し、1800rpmで回転摺動する回
転部材２と、非回転摺動する固定シリンダ３でこ
れを支持する構成をとつている。固定シリンダ３
上には、テープ１の走行時の位置規制を行なう目
的でリード４が設けられている。回転部材２上に
マウントされた磁気ヘツド５が、テープ１上を正
確にヘリカルスキヤンすることによつて、テープ
１を介した映像信号の確実な入出力が実現される
ものである。しかしながら、固定シリンダ３では
テープ１がほぼ接触摺動して走行する為、テープ
１は動摩擦力を受ける。特にVTRが高湿度雰囲
気中又は急激な温度変化条件下で使用される場合
には、ミクロな水滴がテープ１と固定シリンダ３
との間に結露し、数百〜数千オングストロームの
薄い水膜が形成される。この水膜の存在によつて
生ずる水の粘性抵抗力により、テープ１と固定シ
リンダ３が完全に付着をおこしたり、あるいは間
欠的な付着現象により、テープ側に一種の自励振
動が励起される場合が多い。上記の場合、正確な
映像及び音声信号のテープを介した入出力は望め
ず、VTRの性能は大幅に下降し、又は全く使用
不可能の状況に陥る。

一方、小型軽量タイプのVTR開発の必要性か
ら、テープ側には、磁気記録密度向上化が要求さ
れる。すなわち、テープは従来のフエライトある
いは２酸化クロムの磁性粉を樹脂のバインダと共
に塗布したものから、樹脂ベース上に、ニツケル
コバルト合金を蒸着したり、あるいは塗布した金
属テープへと移行する動向にある。この場合、金
属テープは、相手シリンダとの摺動状態が金属対
金属摺動になつて相対的な摩擦係数は、より高く
なりテープ走行の安定化を確保し難くなる。

そこで、本発明者らは上記の欠点を解消する為
に、第２図に代表例として示す構成の新型回転ヘ
ツドアセンブリをすでに提案した。これは、回転
部材２あるいは固定シリンダ３の特定の部分に設
けられたスパイラルグルーブ６が、回転ヘツドア
センブリ上の回転部材が回転することによつて作
動し、動圧を生ぜしめることにより、回転部材２
及び固定シリンダ３上でテープ１が微小量（約５
〜10μｍ）浮上して磁気ヘツド５のみがテープ１
に接触する様に考案されたものであつた。この考
案により回転ヘツドアセンブリの対テープ摺動特
性の大幅改善によるテープ走行安定化、自励振動
除去、耐環境条件下での走行ならびに信号特性向
上化に大幅に貢献するとともに、テープ及び回転
ヘツドアセンブリ双方の摩耗劣化を抑止出来ると
いう顕著な効果を有するものである。

しかしながら、上記新構成の回転ヘツドアセン
ブリにおいてテープ１を回転ヘツドアセンブリ上
で浮上せしめるに必要な動圧を確保する為には、
スパイラルグルーブ設定面とこの対向面とのクリ
ヤランスｇを数10ミクロン程度に抑える必要があ
る。しかも、スパイラルグルーブ６からの吐出圧
は、クリヤランスの２乗に反比例する為、吐出性
能効率を上げるにはクリヤランスを極力小さくす
るのが得策であり実用上20〜60μｍのクリヤラン
スが望ましい。

一方、上記のクリヤランスを確保するには、回
転ヘツドアセンブリの主軸７、回転部材２、固定
シリンダ３及び軸受部８の加工組立精度をきびし
く管理する必要がある。更に、加工時のバリの脱
落や空気中のゴミ混入等が、クリヤランス部ｇに
生じた場合、回転部材２が固定シリンダ３との間
でロツクされ回転不能となる致命的な問題が懸念
される。

発明の目的 本発明は上記欠点に鑑み、クリヤランス管理を
容易にするとともに、従来構成で問題となるバリ
脱落及びゴミ混入等による回転部材のロツク事故
を回避し、テープを回転ヘツドアセンブリ上で安
定的に浮上保持しつつ、影像・音声信号の入出力
特性を向上させる回転ヘツドアセンブリを提供す
るものである。

発明の構成 本発明は、固定された円筒部を有する固定シリ
ンダと、この固定シリンダと略同一径を有し、前
記固定シリンダに近接して同一軸上に設けられ磁
気ヘツドを保持した回転部材とから成り、固定シ
リンダと回転部材との間の相対回転部において形
成される対向面のいずれか一方の面にポンプアウ
ト型のスパイラルグループを設け、スパイラルグ
ルーブ設定面の対向面を、平板とこれを弾性的に
支持する支持部材とで形成することにより構成さ
れており、回転ヘツドアセンブリ上でテープを安
定的に浮上せしめ、映像・音声信号の入出力特性
を向上させるとともに、組立性を容易とし、バリ
や空気中のゴミ混入時の回転部材ロツク事故を無
くすという特有の効果を有する。

実施例の説明 以下本発明の一実施例について図面を参照しな
がら説明する。第３図は本発明の第１の実施例に
おける回転ヘツドアセンブリを示すもので、９は
回転部材上に設けられたスパイラルグルーブで、
ａはスパイラルグルーブ設定域を示す。１０は固
定シリンダ１１上のスパイラルグルーブ対向部に
おける直接の対向面となる平板であり、１２はこ
れを弾性的に支持する支持部材であり、ｇはクリ
ヤランスである。また、第４図は回転部材底面上
に設けたスパイラルグルーブの正面図で１３がス
パイラルグルーブの溝、１４がランドである。以
上の様に構成された回転ヘツドアセンブリについ
て、以下にその動作について説明する。

先に述べた通り、ポンプアウト型のスパイラル
グルーブの吐出圧力は第５図に示す通りクリヤラ
ンスｇの２乗に反比例して変化し、ｇがゼロの場
合、理論的には無限大の圧力が発生することにな
る。ここで第６図Ａに示す様にスパイラルグルー
ブ９と対向面上の平板１０との間に適当な与圧を
与え、結果的にクリヤランスｇがゼロとなる様に
初期設定する。回転部材１５が回転速度ωを持つ
事により動圧が発生し、これによつてスパイラル
グルーブ９と対向面の平板１０との間にはクリヤ
ランスｇが生じる。この時の現象を更に具体的に
説明する。第７図に示す通り、初期設定時に弾性
与圧力、ｆ_iを与えた時の対向面の挙動はフツク
の法則が成立するとした場合、一点鎖線１で示す
様になる。一方、スパイラルグルーブ自身の吐出
圧力（相当力換算）特性は実線２で表わされ、両
者の交点、すなわちクリヤランスｇ_O、吐出圧相
当力_Oにてバランスし安定状態となる。

この時の吐出圧相当力_Oは、曲線１の傾きを
Ｅとする時_O＝_i＋ｇ_OＥとなり、少くとも初
期に設定した弾性的与圧力_iを上回る吐出圧力
が回転ヘツドアセンブリの動作時に生じることに
なる。また、数10μｍの微小クリヤランスｇに、
スパイラルグルーブ加工時に生じたバリ脱落や空
気中のゴミ混入等が生じた場合にも弾性的に保持
された平板は容易に局部変形してこれを回避す
る。従つて回転部材がロツクされて回転不能とな
る危険性がなくなる。なお、回転ヘツドアセンブ
リが定常回転状態にまで立上る間の過渡期におい
ては、平板とスパイラルグルーブ設定面とが接触
摺動する。この時の摺動性を良くし併せて平板と
スパイラルグルーブ双方の素材の摩耗を低減させ
る為に平板のスパイラルグルーブ対向面側の表面
にはテフロン加工等の処理を行なうのが望まし
い。

平板に与える初期与圧は、平板を保持する弾性
体で形成された支持部材の作用で接触部全周にわ
たつて平均化され、この平均化された与圧に対応
して平板変形によるクリヤランスｇが決定され
る。従つて、正常運転状態でのクリヤランスは平
均化され均一な吐出圧力が生じる。

以上の様に本実施例によれば、ポンプアウト型
のスパイラルグルーブ設定部の対向面に、弾性的
に支持された平板を形成することにより、特にク
リヤランス管理を容易に行なつて、回転ヘツドア
センブリ上でのテープ浮上を効率的に図ることが
出来る。また加工バリや空気中のゴミ混入に対し
ても安定的にこれらを回避させることが出来る。

以下本発明の第２の実施例について図面を参照
しながら説明する。第８図は本発明の第２の実施
例における回転ヘツドアセンブリを示すもので、
フオイル１０及び、これを支持する弾性体１２
を、固定シリンダ１１の内部に埋め込んだ形で設
けてある点が第１の実施例と異なる点である。

特に本発明実施例においては、直接テープ１が
走行する面に、平板の端面及び支持部材の端面を
露出させない配慮から固定シリンダの内部に内蔵
した構成を取つており、定常運転状態に到りテー
プが完全に浮上保持されるまでの過渡期における
テープ走行に対し、テープのキズ・シワ・局部摩
耗を防止出来る。

なお、第１及び第２の実施例においては、
VHS型VTRに代表される上シリンダ（回転部材
に相当）回転、下シリンダ固定タイプの回転ヘツ
ドアセンブリについて説明したが、前記の内容は
そのまま、上下シリンダ固定で２つの固定シリン
ダ中にはさまれた中央部に位置し、磁気ヘツドを
空間的に保持した回転部材が回転するタイプの回
転ヘツドアセンブリについても適用出来ることは
言うまでもない。更に前記の内容は回転ヘツドア
センブリ上で相対速度を生ぜしめる構成の任意の
部分にスパイラルグルーブを設ける全ての場合に
成立するものである。従つて例えば、回転部材側
に平板及び支持部材を配し、固定シリンダ側にス
パイラルグルーブを設けても効果に関しては同じ
と見做せる。

また、初期に設定するクリヤランスｇは、与圧
を与える場合はゼロとなるが、与圧をゼロとして
正の値で設定しても良い。但しこの場合は、スパ
イラルグルーブの吐出性能は前に比して低下す
る。

発明の効果 以上の様に本発明は、固定された円筒部を有す
る固定シリンダと、この固定シリンダと略同一径
を有し、前記固定シリンダに近接して同一軸上に
設けられ磁気ヘツドを保持した回転部材とから成
り、固定シリンダと回転部材との間の相対回転部
において形成される対向面のいずれか一方の面に
ポンプアウト型のスパイラルグルーブを設け、ス
パイラルグルーブ設定面の対向面を、平板とこれ
を弾性的に支持する支持部材とで形成することに
より構成されており、回転ヘツドアセンブリ上で
テープを安定的に浮上せしめ映像・音声信号の入
出力特性を向上させるとともに、組立性を容易と
し、バリや空気中のゴミ混入時の回転部材ロツク
事故を無くすことも出来、その実用的効果は大な
るものがある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の回転ヘツドアセンブリの斜視
図、第２図は水平対向面にスパイラルグルーブを
設けた回転ヘツドアセンブリの断面図、第３図は
本発明の第１の実施例における回転ヘツドアセン
ブリの断面図、第４図はスパイラルグルーブの正
面図、第５図はスパイラルグルーブのクリヤラン
スと吐出圧力に関する特性図、第６図Ａ，Ｂは本
発明の第１の実施例における動作説明図、第７図
は本発明の第１の実施例における初期与圧量とク
リヤランスの関係を示す特性説明図、第８図は本
発明の第２の実施例の部分断面図である。 ９……スパイラルグルーブ、１０……平板、１
１……固定シリンダ、１２……支持部材、１５…
…回転部材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 固定された円筒部を有する固定シリンダと、
   この固定シリンダと略同一径を有し、前記固定シ
   リンダに近接して同一軸上に設けられ磁気ヘツド
   を保持した回転部材とから成り、前記固定シリン
   ダと前記回転部材との間の相対回転部において形
   成される対向面のいずれか一方の面の、一部又は
   全部にポンプアウト型のスパイラルグルーブを設
   け、スパイラルグルーブ設定面の対向面を、平板
   と前記平板を弾性的に支持する支持部材とで形成
   した回転ヘツドアセンブリ。 ２ 前記平板と前記支持部材を前記スパイラルグ
   ルーブ設定面の対向面の内部に内蔵した特許請求
   の範囲第１項記載の回転ヘツドアセンブリ。 ３ 略同一径を有し間隙をおいて同軸上に配され
   た一対の固定シリンダと前記間隙に前記固定シリ
   ンダと同軸周りに回転可能に設けられ磁気ヘツド
   を保持した回転部材とから成り、前記固定シリン
   ダと前記回転部材との間の相対回転部において形
   成される対向面のいずれか一方の面の一部又は全
   部にポンプアウト型のスパイラルグルーブを設
   け、スパイラルグルーブ設定面の対向面を、平板
   と前記平板を弾性的に支持する支持部材とで形成
   した回転ヘツドアセンブリ。 ４ 前記平板と前記支持部材を前記スパイラルグ
   ルーブ設定面の対向面の内部に内蔵した特許請求
   の範囲第３項記載の回転ヘツドアセンブリ。