JPS6114129Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は高分解能電子顕微鏡に使用して有効な
試料傾斜装置に関する。

電子顕微鏡における試料傾斜装置としてはジン
バル機構を用いたものが広く使用されている。し
かし乍ら斯かるジンバル機構を使用した場合には
試料保持部分（対物レンズの磁極片内部に挿入さ
れる部分）が大型化し、試料傾斜を行う場合には
対物レンズの上磁極の穴径を大きくせざるを得な
くなり、その結果試料の傾斜状態を高分解能で観
察することができない。

一方ジンバル機構に代えて、第１図に示す様に
試料筒１の下部に球状の受部２を設け、該受部に
試料３を内蔵した球状の試料保持部材４を回動可
能に保持させた試料傾斜装置が提案されている。
該試料傾斜装置では試料筒１の内側に遊嵌した筒
体５にて試料保持部材４の上面を押し下げること
により試料３を傾斜させることができ、又筒体５
を回転させることにより試料３の試料方位を変え
ることができる。

しかし乍ら斯かる装置においては傾斜した試料
３を水平に復帰させるために、筒体５の内側に遊
嵌され、且つスプリング（図示せず）にて下方に
押圧された円筒６を試料保持部材４の上面に当接
させなければならない。従つて三重筒を構成する
ため、装置の小型には限界がある。又試料筒と試
料保持部材との接触は球状に加工しなければなら
ないため、加工に非常に手間がかかると共にコス
トアツプの原因となる。

更に又、試料筒下部の受け部に保持された球状
の試料保持部材から軸を伸ばし、電子線光軸と略
平行なアームの下端にこの軸を係合し、電子線光
軸に沿う方向のアームの移動により試料保持部材
を大角度まで傾斜させるようにしたものもある
が、この種の従来装置においては、試料保持部材
を大きく傾斜させると、アーム下端が試料保持部
材よりかなり下に位置することになるため、対物
レンズ上下磁極片の距離を大きくしなければなら
ず、この場合には高分解能の大角度傾斜像を観察
することができない。

本考案は、このような不都合を解決することを
目的とするもので、その構成は試料筒の下部に試
料保持部材を接触保持する受部があり、該試料保
持部材を該受部に対して回転させる力を伝達する
ため電子線光軸と略平行なアームがあり、該アー
ムの下端と該試料保持部材とは突起部又はボール
を介して係合されている装置において、該受部は
円筒面状をしており、該受部と該試料保持部材と
の間に円筒面の一部を成す押え板があり、該押え
板は該突起又はボールと一体的に移動するように
なつており、該押え板の一端は該円筒面の軸に平
行に該受部の側面より外側まで伸ばされており、
該押え板は該外側に位置する部分において該電子
線光軸と略平行なアームの下端と係合されるよう
になしたものである。

以下本考案の一実施例を図面に基づき詳説す
る。第２図は正面図、第３図は第２図のＡ−Ａ断
面図であり、７は試料筒である。該試料筒７は図
示外の試料室内に移動可能に配置された試料移動
台に着脱可能に保持され、又該試料筒の下部には
円筒状に形成された受部８が形成してあり、該受
部８には２つのボール９ａ及び９ｂを介して試料
保持部材１０が回動可能に内接している。前記２
つのボール９ａ及び９ｂは前記受部８の軸心（以
下Ｙと称す）に対して対称におかれると共にＹ軸
と光軸Ｚ上で直交する軸（以下Ｘ軸と称す）上に
おかれる。前記試料保持部材１０内には試料台１
１を介して試料１２が保持されており、この試料
１２は表面が前記Ｘ軸，Ｙ軸と一致する様に配置
されている。

１３及び１４は押え板で、第４図にその斜視図
を示す様に中央部に前記ボール９ａ，９ｂを夫々
嵌合する穴１５ａ，１５ｂが夫々形成され、又該
各押え板は円筒状の受け部の軸に平行な方向に受
部８の両側面（第３図で符号Ｓ１とＳ２で示され
ている面）より外側まで伸ばされている。更に
又、押え板１３，１４には前記両側面Ｓ１，Ｓ２
を挟むように各々ガイド１６ａ，１６ｂ及び１６
ｃ，１６ｄが取り付けられている。各ガイド板１
６ａ，１６ｂ及び１６ｃ，１６ｄは試料保持部材
１０が受部８から外れるのを防止する役目を果た
す。受部８の側面より外側まで伸ばされた押え板
１３の両端部は各々アーム１７の先端分岐部１７
ａ，１７ｂに回転自在に係合されている。同様に
押え板１４の両端部も各々アーム１８の先端分岐
部１８ａ，１８ｂに対して回転自在に係合されて
いる。この各先端分岐部１７ａ，１７ｂと１８
ａ，１８ｂは夫々受部８の両側面Ｓ１，Ｓ２を囲
撓してアーム１７，１８に夫々一体化されてい
る。このアーム１７，１８の上端は前記試料筒７
に回転可能に嵌合された第１の回転体１９に夫々
回動自在に取付けられており、この各アーム１
７，１８の回転体１９への取付にあたつては回転
体の回転軸心を中心にして対称の位置に取付けら
れている。前記第１の回転体１９の回転軸心は光
軸Ｚと直交し、且つ前記Ｙ軸と平行な直線と一致
しており、又該回転体の外壁中央部にはレバー２
０が固定されている。該レバー２０の開放端には
ビス２１を介して前記試料筒７に上下動可能に保
持された第１の駆動棒２２の先端が回動自在に取
付けられている。該駆動棒２２は圧縮用コイルバ
ネ２３により上方に押圧されており、又側面には
棒２４が植設してある。

２５は前記試料筒７に回転可能に嵌合された第
２の回転体で、その回転中心は光軸Ｚと直交し、
且つ前記Ｘ軸と平行な直線と一致しており、又該
回転体の内壁にはＬ字状のアーム２６が回動自在
に取付けられている。該アーム２６は回転体２５
の軸心からはなれた位置に取付けられており、又
該アームの下端には前記試料保持部材１０に植設
されたピン２７に係合されたワイヤー２８が取付
けられている。該ピン２７はＹ軸上におかれてい
る。２９は前記第２の回転体２５の外壁中央部に
固定されたレバーで、その開放端にはビス３０を
介して前記試料筒７に上下動可能に保持された第
２の駆動棒３１が回動自在に取付けられている。
該駆動棒３１は圧縮用コイルバネ３２により上方
に押圧されており、又側面には棒３３が植設して
あ。３４は試料筒７と試料保持部材１０に取付け
られたピン３５との間に張架された引張用スプリ
ングで、該スプリングは光軸Ｚを中心にしてワイ
ヤー２８と反対側におかれ、それによつて常にワ
イヤー２８に張力を与える役目を果す。前記ピン
３５はＹ軸上におかれている。

斯かる装置において、図示外の駆動機構により
棒３３を介して第２の駆動棒３１を第３図中上下
に移動させれば、レバー２９が回動し、それによ
つて第２の回転体２５が回転する。該回転体２５
の回転によりアーム２６及びワイヤー２８が上下
動するため、試料保持部材１０が２つのボール９
ａ，９ｂを中心、つまりＸ軸を中心にして傾動す
る。又他方の軸２４を介して第１の駆動棒２２を
上下に移動させれば、レバー２０が回動し、それ
によつて第１の回転体１９が回転するため、アー
ム１７と１８とが互いに逆方向に上下動する。こ
の各アームの上下動により押え板１３及び１４を
介して２つのボール９ａと９ｂとが互いに逆方向
に上下動するため、試料保持部材１０が受部８に
沿つて傾動、つまりＹ軸を中心にして傾動する。
その結果この試料保持部材１０内の試料１２が同
方向に傾動するため、該試料を光軸Ｚに対して任
意方向に且つ任意角度傾斜させることができる。

尚該実施例において２組のボールと押え板との
間のガタをとりのぞくために、スプリングにより
試料保持部材１０にＹ軸を中心にした回転力が与
えてあることは言うまでもない。

又、前述の説明では試料保持部材１０の受部へ
の内接に際し、ボールを介して行つた場合につい
て述べたが、先端が半球状に形成された突起を用
いてもよい。

以上詳述したように本考案においては試料保持
部材の傾動に際し第１図で示す従来装置の様に押
圧力を加える駆動体を試料保持部材の上面に設け
ることなく、その側方に設けてあるため、試料筒
の試料保持部材を保持している部分の外径を非常
に小さくすることができる。従つて対物レンズの
上磁極片の穴径が非常に小さい高分解能磁極片内
に組み込むことができる。又試料筒に形成する試
料保持部材の受面は従来装置の様に球面状でなく
円筒面状であるため、加工が非常に容易となり、
コストの低減をはかることができる。

更に、本考案に基づく装置においては、押え板
との係合部にあたるアームの下端が受部の円筒面
に沿つてて移動できる。しかも、この場合、アー
ムの下端部は円筒面の最下部より下に位置するこ
とはないため、対物レンズの上下磁極片の問題を
大きくとる必要はない。そのため、試料の大角度
傾斜像を高分解能で観察することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来装置を説明するための断面図、第
２図は本考案の一実施例を示す断面図、第３図は
第２図のＡ−Ａ断面図、第４図は試料保持部材を
傾動させる駆動機構の一部斜視図である。 ７：試料筒、８：受部、９ａ，９ｂ：ボール、
１０：試料保持部材、１１：試料台、１２：試
料、１３，１４：押え板、１７，１８：アーム、
１９：第１の回転体、２０：テコ体、２２：第１
の駆動棒、２５：第２の回転体、２６：アーム、
２８：ワイヤー、２９：レバー、３１：第２の駆
動棒、３４：スプリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 試料筒の下部に試料保持部材を接触保持する受
   部があり、該試料保持部材を該受部に対して回転
   させる力を伝達するため電子線光軸と略平行なア
   ームがあり、該アームの下端と該試料保持部材と
   は突起部又はボールを介して係合されている装置
   において、該受部は円筒面状をしており、該受部
   と該試料保持部材との間に円筒面の一部を成す押
   え板があり、該押え板は該突起又はボールと一体
   的に移動するようになつており、該押え板の一端
   は該円筒面の軸に平行に該受部の側面より外側ま
   で伸ばされており、該押え板は該外側に位置する
   部分において該電子線光軸と略平行なアームの下
   端と係合されていることを特徴とする電子顕微鏡
   等における試料傾斜装置。