JPS6113719Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は内燃機関の燃料噴射時期調整装置に関
するものである。

〔従来の技術〕

従来、遠心力により互いに拡開される遠心錘の
リフトを利用して偏心カム機構を駆動し、機関に
連結される第１の回転体と噴射ポンプに連結され
る第２の回転体との間に回転位相を生じさせる燃
料噴射時期調整装置は例えば特開昭54−3617号公
報などに開示されている。

この従来技術では、第１図に示すように、デイ
ーゼル機関と同期して回転駆動されるカツプ状の
第１の回転体４の内部に円板状の第２の回転体３
０が収容され、この第２の回転体３０の中心に一
体的に設けた円筒状の軸１６が燃料噴射ポンプと
連結される。第２の回転体３０には軸１６に関し
て対称に１対の穴３０ａが形成され、各穴３０ａ
の内部に第１の偏心カム５が回転可能に嵌合さ
れ、また第１の偏心カム５に偏心して形成した穴
5aに第２の偏心カム１５が回転可能に嵌合されて
いる。

軸１６を挾むように１対の遠心錘１４が配置さ
れ、この遠心錘１４の両端部が１対の案内軸２４
により互いに拡開可能に連結される。案内軸２４
の両端側に遠心錘１４の遠心力に対抗するばね２
２が支持される。第１の偏心カム５は遠心錘１４
に設けたピン１３に支持され、第２の偏心カム１
５は第１の回転体４に設けたピン６に支持され
る。したがつて、第１の回転体４の駆動力はピン
６および第２，第１の偏心カム１５，５を経て第
２の回転体３０へ伝達される。

第２図に示すように、第１，第２の回転体４，
３０の軸心Ｏに鑑してピン６の中心Ａと第１の偏
心カム５の中心Ｃとのなす中心角αは、第１，第
２の回転体４，３０の矢印ｘ方向の回転数の増加
に従つて次のように変化する。機関の回転数上昇
に伴つて遠心錘１４が遠心力を受けて互いに拡開
されると、ピン１３の中心Ｄが第１の偏心カム５
の中心Ｃを中心として矢印ｙ方向へ移動する。腕
DCと腕CBが一体的に第１の偏心カム５の中心Ｃ
の回りに回動し、ピン６の中心Ａは図において右
方へ移動し、第１，第２の回転体４，３０の軸心
Ｏに関してピン６の中心Ａと第１の偏心カム５の
中心Ｃとのなす中心角αが次第に小さくなり、機
関の噴射時期が進角する。

この進角を始める回転数は、１対の遠心錘１４
を互いに縮閉する方向へ付勢するばね２２の荷重
により決まる。

ところが、上述した従来の燃料噴射時期調整装
置では、第２の偏心カム１５を収容する穴５ａと
遠心錘１４を支持するピン１３の穴とを、第１の
偏心カム５の内部に配置しなければならない。第
１の偏心カム５の限られたスペース内にこのよう
な２つの穴を設けることは、偏心カム機構１０の
進角特性の自由度に限界が生じ、機関の低回転数
で進角特性をもたせる場合に、遠心錘１４のリフ
トを有効に利用し得ないという欠点がある。

すなわち、第１図に示す従来例では、第１の偏
心カム５に対して第２の偏心カム１５を第１の偏
心カム５の左下方（回転体の回転方向と軸心方向
へ偏つた所）に配置するとともに、遠心錘１４を
支持するピン１３を第１の偏心カム５の回転体３
０の軸心方向へ偏つた所（第２図に鎖線で示す位
置）に配置することが好ましいが、この部分は第
２の偏心カム１５に占められているので不可能で
ある。しいてこれを求めるならば、第１の偏心カ
ム５はより大きくしなければならないが、これで
は装置全体の外径が大きくなり好ましくない。

〔考案が解決しようとする問題点〕

本考案の目的はこのような問題に鑑み、回転体
の限られたスペースで第１の偏心カムに対し第２
の偏心カムおよび遠心錘のピンを互いに干渉する
ことなく自由に配設し得る燃料噴射時期調整装置
を提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案の構成は機
関と燃料噴射ポンプの内の一方に連結される円筒
状の第１の回転体と、他方に連結されかつ前記第
１の回転体に同心に収容される円板状の第２の回
転体と、前記第１の回転体と前記第２の回転体と
を連結する偏心カム機構と、前記偏心カム機構を
駆動する遠心錘とを備えており、前記偏心カム機
構が前記第１の回転体の内部に収容した第１の偏
心カムと前記第２の回転体の内部に収容した第２
の偏心カムとをピンにより連結してなるものであ
る。

〔作 用〕

第１，第２の回転体４，３０の矢印ｘ方向の回
転数の上昇に伴つて遠心錘１４の遠心力が増加す
ると、ピン１３が軸心Ｏから遠ざかり、腕DCと
腕CBが一体的に中心Ｃの回りに回転し、腕CBと
腕BAの屈曲角が次第に大きくなり、軸心Ｏに関
する中心Ａと中心Ｃのなす中心角αが増加し、燃
料噴射時が次第に遅角する。そして、腕CBと腕
BAが一直線に並んだところで、中心角αが最大
となり、この時の燃料噴射時期が最も遅くる。

機関の回転数がさらに増加すると、腕CBと腕
BAが軸心Ｏの方へに屈曲し、中心角αが次第に
小さくなり、機関の燃料噴射時期が進角する。

第２の偏心カム３５を第１の偏心カム５から切
り離し、第１の偏心カム５を支持する第２の回転
体３０とは別の第１の回転体４に支持したことに
より、第１の偏心カム機構５に対して第２の偏心
カム機構３５を自由に配置することができる。

〔考案の実施例〕

本考案を実施例に基づいて説明する。第３，
４，６図に示すように、機関と連結される第１の
回転体４の端壁４０に円筒部３５ａを設け、これ
に第２の偏心カム３５を回転可能に支持する。一
方、第１の回転体４の内部に円板状の第２の回転
体３０を同心かつ回転可能に収容し、これに設け
た穴５ａの内部に第１の偏心カム５を回転可能に
支持する。そして、ピン３６をもつて第１の偏心
カム５と第２の偏心カム３５を互いに連結する
（第５図参照）。

また、第１の偏心カム５にピン１３を支持し、
これに遠心錘１４を連結する。第１の回転体４の
開口端部は蓋板３７により閉鎖し、第１の回転体
４の内部において第２の回転体３０と遠心錘１４
とを互いに接近して配置し、軸方向に移動しない
ようにする。そして、第２の回転体３０と一体を
なす中空状の軸１６を端壁４０に軸受３８をもつ
て、また蓋板３７に軸受３９をもつてそれぞれ相
対回転可能に支持する。

第４図に示すように、１対の遠心錘１４は軸１
６を挾んで配置され、かつ両端部を貫通する案内
軸２４の先端と遠心錘１４との間に介装したばね
２２により、互いに接近するよう付勢されるのは
従来例と同様である。

なお、上述の実施例において、第２の回転体３
０を機関に、第１の回転体４を燃料噴射ポンプに
それぞれ連結しても、同様の作用効果を得ること
ができる。

次に、本考案による燃料噴射時期調整装置の作
動について説明する。第６図に示すように、第２
の偏心カム３５の中心Ａ、第２の偏心カム３５と
第１の偏心カム５を連結するピン３６の中心を
Ｂ、第１の偏心カム５の中心をＣ、ピン１３の中
心をＤとすると、第１，２図に示す従来例と同様
の作用をする。

すなわち、第１，第２の回転体４，３０の矢印
ｘ方向の回転数の上昇に伴つて遠心錘１４の遠心
力が増加すると、ペン１３が軸心Ｏから遠ざか
り、腕DCと腕CBが一体的に中心Ｃの回りに回転
し、腕CBと腕BAの屈曲角が次第に大きくなり、
軸心Ｏに関する中心Ａと中心Ｃのなす中心角αが
増加し、噴射時期が第７図に線２１で示すように
遅角する。

そして、腕CBと腕BAが一直線に並んだところ
で中心角αが最大となり、この時の噴射時期が最
も遅くる。

機関の回転数がさらに増加すると、腕CBと腕
BAが軸心Ｏの方へ屈曲して中心角αが次第に小
さくなり、機関の噴射時期が進角する。

〔考案の効果〕

本考案は上述のように、第２の偏心カム３５を
第１の偏心カム５から切り離し、第１の偏心カム
５を支持する第２の回転体３０とは別の第１の回
転体４に支持したものであるから、第１の偏心カ
ム５に対して第２の偏心カム３５を自由に配置す
ることができる。これにより、第１の偏心カム５
に対して回転体の軸心Ｏの方へ接近する部分に遠
心錘１４を支持するピン１３を配置することが可
能となり、遠心錘１４のリフトに対してピン１３
の変位を大きく採ることができる。

換言すれば、遠心錘１４のリフトの変化につい
て、この全領域を偏心カム機構１０の作動に有効
に使用することができるから、機関の低回転数で
も有効な進角特性を得ることができる。

なお、上記実施例では偏心カム機構１０が遅
角・進角特性をもつが、必要により第８図に示す
ような配置とすれば、偏心カム機構として進角だ
けの特性をもたせることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の燃料噴射時期調整装置の正面断
面図、第２図は同装置の偏心カム機構の正面図、
第３図は本考案に係る燃料噴射時期調整装置の側
面断面図、第４図は同正面断面図、第５図は同装
置の偏心カム機構を分解して示す斜視図、第６図
は同装置の偏心カム機構の作動を説明する正面
図、第７図は同装置の作動特性を表す線図、第８
図は本考案の一部変更実施例を示す第６図と同様
の正面図である。 ４：第１の回転体、５：第１の偏心カム、１
０：偏心カム機構、１４：遠心錘、１６：軸、３
０：第２の回転体、３５：第２の偏心カム、３
６：ピン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 機関と燃料噴射ポンプの内の一方に連結される
   円筒状の第１の回転体と、他方に連結されかつ前
   記第１の回転体に同心に収容される円板状の第２
   の回転体と、前記第１の回転体と前記第２の回転
   体とを連結する偏心カム機構と、前記偏心カム機
   構を駆動する遠心錘とを備えており、前記偏心カ
   ム機構が前記第１の回転体の内部に収容した第１
   の偏心カムと前記第２の回転体の内部に収容した
   第２の偏心カムとをピンにより連結してなること
   を特徴とする燃料噴射時期調整装置。