JPS6113506B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 本発明はセメント含有塗料組成物に関する。 従来の技術 木片セメント建材、石綿セメント建材、プレキ
ヤストコンクリート板建材、木毛セメント建材、
発泡コンクリート建材、ガラス繊維強化セメント
建材等のセメント製品は耐久性、耐候性、耐汚染
性、耐水性等性能の向上をはかるため、各種の塗
料で被覆されている。従来これらセメント製品に
このような目的で塗装を行う場合、基材の養生が
充分なされていないと、塗料を塗布し乾燥した
後、基材から生成する水酸化カルシウムによるエ
フロレツセンスのため塗膜が白化したり、塗膜の
付着性が低下する欠点があつた。そこで、その対
策として、耐アルカリ性エマルジヨン塗料にポル
トランドセメントなどを混合することにより、厚
膜化して、エフロレツセンスを抑え塗膜の付着性
を向上させることが行われている。しかるに、混
合するセメントが一般のポルトランドセメントや
白セメントでは、近年の工場ライン塗装に於い
て、短時間に塗膜を硬化させることが難かしい。
また更に、この上に耐候性、耐汚染性向上の為、
一液型アクリル又は二液型アクリルウレタン樹脂
塗料からなる塗料を塗布することが一般的である
が、上塗塗装までの乾燥時間を要し、大量生産に
於いて、生産性が上らない。その為、強制乾燥を
行うことが試みられているが、塗膜の硬化収縮に
よる亀裂が生じ易く、塗膜外観上、性能上、種々
の欠陥が存在している。 発明の解決すべき問題点 本発明は、従来の問題点を解決し、セメント製
品を被塗物基材とした場合に、耐久性、耐候性、
耐汚染性、耐水性等性能の向上をはかれると共
に、エフロレツセンスによる塗膜の白化を良好に
防止することのできるセメント含有塗料組成物を
提供すべくなされたものである。 本発明は、また、セメント製品との密着性に優
れ緻密で硬い塗膜を得ることのできるセメント含
有塗料組成物を提供すべくなされたものである。 本発明は、更に、短時間に硬化し、量産に適し
たセメント含有塗料組成物を提供すべくなされた
ものである。 問題点を解決するための手段 即ち、本発明によつて提供されるセメント含有
塗料組成物は、(a)アクリル酸又はメタクリル酸エ
ステル共重合エマルジヨン樹脂あるいはアクリル
酸又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重
合エマルジヨン樹脂、(b)ビスフエノール型エポキ
シエマルジヨン樹脂及び(c)加熱硬化型セメント組
成物を含み、前記(a)成分及び(b)成分の樹脂固型分
合計重量が、前記(c)成分のセメント組成物重量１
に対して0.3〜１の範囲にあることを特徴とする
ものである。 本発明のセメント含有塗料組成物は、前記(a)乃
至(c)成分の組合せにより、耐候性、耐汚染性等の
性能の向上と共にエフロレツセンス防止に顕著な
効果を奏するものであり、同時に、セメント製品
との密着性の向上、迅速硬化による量産性の向上
等に格別の効果を達成するものである。 また、前記(a)成分及び(b)成分の樹脂固型分重量
を、前記(c)成分のセメント組成物重量１に対して
0.3〜１の範囲に限定したのは、0.3未満では塗膜
の耐候性、密着性が悪くなり、エフロレツセンス
が発生し、塗膜性能が良い状態での厚膜を形成す
ることが出来ず、１を越えると、塗膜の密着性が
悪く、硬度が不足し、厚膜の形成ができないため
である。 以下、本発明のセメント含有塗料組成物の各成
分について詳しく説明する。 (a)成分のアクリル酸又はメタクリル酸エステル
共重合エマルジヨン樹脂あるいはアクリル酸又は
メタクリル酸エステルとスチレンとの共重合エマ
ルジヨン樹脂としては、例えば乳化重合により調
製されるアクリル樹脂エマルジヨンを適用するこ
とができ、原料モノマー組成等に制限を設けるも
のではない。アクリル酸又はメタクリル酸エステ
ルとしては、通常アクリル酸又はメタクリル酸の
アルキルエステルが用いられ、とりわけ、メチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピル、ｎ−ブチ
ル、イソブチル、ターシヤリ−ブチル、sec−ブ
チル、２−エチルヘキシル等炭素数１〜８のアル
キルエステルモノマーが好ましく用いられる。炭
素数が多すぎるものは、乳化重合時にゲル物が発
生したり、エマルジヨン粒子の疎水性が高くな
り、セメント混和用エマルジヨン樹脂の合成には
余り好ましくない。又、これらのアクリル酸又は
メタクリル酸エステルとスチレンとの共重合エマ
ルジヨン樹脂も用いられるが、スチレン含量が多
すぎると出来たエマルジヨン塗膜の耐候性が著し
く低下するため耐久性の必要な屋外用エマルジヨ
ン樹脂としては余り好ましくない。特に好ましい
アクリル酸又はメタクリル酸エステルとしてはメ
タクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸ブチル、アクリル酸２−エチル−ヘキシルであ
り、またスチレンを含有する場合は30重量％以
下、更には20重量％以下が好ましい。また、アク
リル酸又はメタクリル酸エステル共重合エマルジ
ヨン樹脂あるいはアクリル酸又はメタクリル酸エ
ステルとスチレンの共重合エマルジヨン樹脂は、
セメントと混和されるため、耐アルカリ性を有
し、セメント混和安定性に優れたものがよく、そ
のためには乳化重合時に加える乳化材剤してアル
キルフエノールポリエチレンエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールオ
レイルエーテル等のエーテル類；ソルビタンアル
キルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂
肪酸エステル、ポリグリコール脂肪酸エステル等
のエステル類；ポリプロピレングリコールポリエ
チレングリコール重合体；ポリオキシエチレンア
ルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミ
ンなどのノニオン界面活性剤単独で使用するか又
はアニオン界面活性剤を併用する場合はアニオン
界面活性剤を少量で使用することが好ましい。こ
れらのアクリルエマルジヨン樹脂の分子量は５万
〜30万好ましくは、10万〜20万であるのが有利で
ある。 (b)成分のビスフエノール型エポキシエマルジヨ
ン樹脂としては、ビスフエノールＡとエピクロル
ヒドリンから得られる芳香族ジグリシジルエーテ
ル類で平均分子量350〜1000の樹脂を乳化剤を用
いて、水分散型にしたものが好ましい。 ビスフエノール型エポキシエマルジヨン樹脂を
セメントと同時に加熱硬化させるためには、当業
界で知られているように例えばポリアミド樹脂等
の硬化剤を使用することができる。このポリアミ
ド樹脂は、例えばジアミン又はジアミン誘導体等
と二塩基酸又は二塩基酸誘導体等の重縮合によつ
て得られ、使用量はエポキシ樹脂のエポキシ基の
0.8〜1.2当量になる様に使用するのが好ましい。
少なすぎる場合や多すぎる場合には本来のエポキ
シ樹脂の特性、例えば、密着性、可撓性が著しく
低下し、その耐久性等の性能も低下するので余り
好ましくない。 (c)成分の加熱硬化型セメント組成物は、常温で
は水分が存在しても硬化速度が遅いが一定温度以
上に加熱されると水分の存在下に急速にカルシユ
ウムスルホアルミネート（3CaO・Al₂O₃・
3CaSO₄・30〜32H₂O）の針状結晶を生成し硬化
する性質を有するものである。加熱硬化型セメン
ト組成物は、従来のポルトランドセメント等単独
のものに比較し、短時間で硬化可能なため、塗膜
全体を短時間で乾燥出来、さらに緻密で亀裂等の
生じにくい硬い塗膜が得られる。加熱硬化型セメ
ント組成物は、例えばポルトランドセメント、ア
ルミナセメント、無水石膏及び／又は半水石膏、
石灰及び有機カルボン酸のアルカリ金属塩などを
成分として構成することができる。ポルトランド
セメントとしては普通ポルトランドセメント、早
強ポルトランドセメント等が例示できるが、その
種類は特に制限はない。ポルトランドセメントの
量は加熱硬化型セメント組成物中80〜96重量％が
適当で、この範囲で長時間にわたつて塗膜の機械
的強度を維持出来る。アルミナセメントはカルシ
ウムアルミネートを主成分とするセメントであ
り、水分の存在下で加熱硬化して得られる塗膜の
機械的強度の発現に寄与するカルシウムスルホア
ルミネート水和物を生成させる役割を有するもの
である。アルミナセメントの量は加熱硬化型セメ
ント組成物中2.5〜13重量％が適当で、この範囲
で熱硬化された際の塗膜の機械的強度を向上させ
ることができる。無水石膏及び／又は半水石膏は
加熱硬化型セメント組成物中１〜７重量％、また
石灰は０〜５重量％、好ましくは0.5〜５重量％
使用される。これらの石膏は水の存在下で加熱硬
化させた際に生ずるカルシウムスルホアルミネー
ト水和物の硫黄源、カルシウム源となり、また石
灰はカルシウム源となる。有機カルボン酸のアル
カリ金属塩はセメント組成物の硬化を促進させる
ため添加するものであるが、その添加量は加熱硬
化型セメント組成物中0.2〜２重量％が適当であ
る。有機カルボン酸のアルカリ金属塩としては例
えばクエン酸、リンゴ酸、グリコン酸、グルター
ル酸、グリコール酸等のナトリウム塩、カリウム
塩、カルシウム塩等が例示出来る。 本発明のセメント含有塗料組成物は、前記(a)乃
至(c)成分に、必要に応じて充填剤、着色顔料、各
種添加剤等を成分として適宜の配合量加えて構成
することができ、更に水を加えて加熱硬化型の塗
料組成物として実用に供することができる。 充填剤は、体質顔料としては炭酸カルシウム、
硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレ
ー等の無機質系粒状物が例示出来、骨材として
は、珪砂等が例示できる。この充填剤は、もろさ
の改良、増量のため及び塗布後組成物が未だ流動
性を保持している間に、比重差により、上記樹脂
成分を塗膜表面へ浮上させるため配合されるもの
であり、たとえば比重の大きい粒径50〜1000μ、
好ましくは、50〜500μのものを用いる。 着色顔料としては、一般の無機質顔料が代表的
であるが、色によつては、耐アルカリ性び耐候性
を有する有機顔料でもよい。たとえば黒く着色す
る場合は、カーボンブラツク、酸化鉄等、赤の場
合には、酸化クロム等、白の場合には、二酸化チ
タン等が例示できる。 また添加剤としては、たとえば顔料分散性、塗
装作業性及び保存性等を良好なものとするための
分散剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、塗
膜の成膜性を良くするめたの成膜助剤等が例示で
きる。 次に、本発明のセメント含有塗料組成物の好ま
しい例を以下に示す。 (A) (i) アクリル酸又はメタクリル酸エステル共
重合エマルジヨン樹脂（エステルは炭素数１
〜８のアルキル基）あるいは前記アクリル酸
又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共
重合エマルジヨン樹脂（スチレン含量は30重
量％以下）固型分 ……５〜40重量部、 (ii) ビスフエノール型エポキシエマルジヨン樹
脂固型分 ……0.5〜４重量部、 (iii) 充填剤 ……10〜85重量部、 (iv) （−ａ） ポルトランドセメント
……80〜96重量％、 （(vi)−ｂ） アルミナセメント
……2.5〜13重量％、 （−ｃ） 無水石膏及び／又は半水石膏
……１〜７重量％、 （−ｄ） 石灰 ……０〜５重量％、 （−ｅ） 有機カルボン酸のアルカリ金属
塩 ……0.2〜２重量％、 からなる加熱硬化型セメント組成物
……５〜50重量部、 (v) 着色顔料 0.1〜15重量部、 及び前記エポキシエマルジヨン樹脂の0.8〜1.2
当量のポリアミド樹脂硬化剤、さらに必要に応
じ各種添加剤少量からなり、かつ〔(i)＋(ii)〕／
(iv)の重量比が（0.3〜１）の範囲である混合物
100重量部、ならびに (B) 水 ……30〜300重量部、 からなるセメント含有塗料組成物。 前記(A)の混合物100重量部中、(i)の樹脂固型分
を５〜40重量部としたのは、樹脂が少なすぎると
塗料組成物中における濃度が低すぎて、充填剤、
セメント製組成物及び着色顔料との比重差により
浮上してくる樹脂で形成される塗膜表面がポーラ
スな状態となり、緻密性に欠けるためエフロレツ
センスがおこり易く、更に、樹脂成分が少ないた
め可撓性に欠け、長期間経過後に塗膜にクラツク
及び剥離現象が生じ易くなる。更にその上に上塗
塗装までの時間が長いとセメント中の遊離のアル
カリ成分が空気中の二酸化炭素と反応することを
可能とし、これにより生成した酸化物が上塗塗料
との密着性を低下させることになるためである。
一方樹脂が多すぎると、セメントの硬化及び樹脂
の硬化が遅れ、十分な塗膜強度が得られず塗膜の
耐水性が低下するためである。(i)の樹脂固型分の
より好ましい量は、(A)の混合物100重量部中10〜
30重量部である。 ビスフエノール型エポキシエマルジヨン樹脂固
型分(ii)は、前記混合物(A)100重量部中に0.5〜４重
量部用いられるのが好ましい。樹脂が少なすぎる
と素地との密着性が低下し、多すぎると形成され
た塗膜の耐候性が低下する。樹脂(ii)のより好まし
い量は、(A)の混合物100重量部中１〜３重量部で
ある。 充填剤(iii)は上記混合物(A)100重量部中におい
て、10〜85重量部の割合で配合されるのが好まし
い。これは、この範囲において上記樹脂成分を浮
上させる効果及び塗膜の緻密性、もろさ、及び耐
久性その他を改善する効果が大きいからであり、
更に好ましくは、40〜80重量部配合される。 加熱硬化型セメント組成物(iv)は、上記混合物(A)
100重量部において５〜50重量部の割合で配合さ
れるのが好ましい。セメント組成物(iv)が少なすぎ
ると塗膜硬度の向上が十分ではない。一方セメン
ト組成物(iv)が多すぎると緻密で硬い塗膜が得られ
ずエフロレツセンスが生じ易くもろくなる。着色
顔料(v)は上記の混合物(A)100重量部中において、
0.1〜15重量部の割合で配合されるのが好まし
く、この範囲内での配合により充分に着色するこ
とが出来る。 (B)成分の水は、(A)混合物100重量部に対して30
〜300重量部配合され、粘度約５〜30ポイズにし
たものが特に好ましい。この範囲内であれば塗膜
の硬化及び塗装作業性が良好であるからである。 本発明のセメント含有塗料組成物は、通常の塗
装手段により被塗装物表面に塗布出来るが、特に
吹付塗装法が適している。本発明の塗料組成物の
乾燥条件は40℃以上、好ましくは60〜80℃の温度
で15〜60分間で乾燥するのが適当である。本発明
の塗料組成物は、特に前記各種セメント製品のプ
レス成型直後あるいは脱型のため一次養生された
未硬化のものに、塗布し、未硬化セメント成型物
と同時に、常圧もしくは加圧下で加熱養生硬化す
る方法に使用するのが適している。 以下実施例により本発明を説明する。 第１表の塗料組成物を未硬化の加熱硬化型セメ
ント成型物表面に乾燥膜厚100μになるように吹
付塗布し、80℃、25Kg／cm²の加熱加圧下で20分間
養生し、塗膜とセメント成型物を同時に硬化させ
た。得られた塗膜の硬化性、エフロレツセンス促
進試験、凍結融解性、促進耐候性試験の各試験結
果を第１表の下段に示した。 なお試験方法及び評価は下記の通り行なつた。 (1) 硬化性： 試験方法：鉛筆硬度 評 価：◎……HB以上、 〇……2B〜Ｂ、 ×……3B以下 (2) エフロレツセンス促進試験 試験方法：飽和消石灰雰囲気にて〔５℃×16
時間→20℃×８時間〕 20サイクル 評 価：◎……全く異常なし、〇……極く
一部異常あり、×……全面異常あ
り (3) 凍結融解性 試験方法：〔−20℃×16時間凍結→室温×８
時間〕35サイクル 評 価：◎……全く異常なし、〇……極く
一部異常あり、×……全面異常あ
り（クラツク有） (4) 促進耐候性試験 試験方法：サンシヤインカーボンウエザオメ
ーター2000時間 評 価：◎……全く異常なし、〇……極く
一部異常あり、×……全面異常あ
り（チヨーキング有）

【表】

【表】 第１表より明らかの如く、本発明のセメント含
有塗料組成物を使用した塗膜はいずれも優れた塗
膜性能を有していたが、エポキシエマルジヨン樹
脂の添加がなく、かつ加熱硬化型セメント組成物
を使用しない比較例１は塗膜性能が劣つていた。 なお、本発明のセメント含有塗料組成物を硬化
セメント製品に塗布したところ同様に優れた塗膜
性能を有する塗膜が得られた。 〔発明の効果〕 本発明のセメント含有塗料組成物にれよば、セ
メント製品を被塗物基材とした場合に、耐久性、
耐候性、耐汚染性、耐水性等性能の向上をはかれ
ると共に、エフロレツセンスによる塗膜の白化を
良好に防止することができ、その上、セメント製
品との密着性に優れ緻密で硬い塗膜を得ることが
でき、また加熱効果型であるので短時間に硬化塗
膜を得ることが出来るので工場ライン塗装用に適
用でき、量産に適しているという利点もある。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ (a)アクリル酸又はメタクリル酸エステル共重
   合エマルジヨン樹脂あるいはアクリル酸又はメタ
   クリル酸エステルとスチレンとの共重合エマルジ
   ヨン樹脂、(b)ビスフエノール型エポキシエマルジ
   ヨン樹脂及び(c)加熱硬化型セメント組成物を含
   み、前記(a)成分及び(b)成分の樹脂固型分合計重量
   が、前記(c)成分のセメント組成物重量１に対して
   0.3〜１の範囲にあることを特徴とするセメント
   含有塗料組成物。