JPS6110050Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は油圧緩衝器に於けるピストンロツド部
のオイルシール装置に関し、特に、ゴムシール材
が低温時に硬化して弾性を低下した場合に、バイ
メタルの作用に依り、ピストンロツドに対するゴ
ムシール部材の締付力の低下を補償する様にした
オイルシール装置に関する。

二輪車、四輪車に使用されるシヨツクアブソー
バは、車の使用条件や環境条件等に依つて非常に
広範囲な温度条件に遭遇することになる。例え
ば、厳寒の地では−40℃を下まわり、逆に温暖な
地域においてさえも激しい振動振幅を減衰する様
な運動条件下では作動油の温度は100℃を越え180
℃にも達することがある。

従つて、この種油圧緩衝器におけるシール材料
としては、マイナス40℃〜プラス180℃の範囲に
亘つても性質や材質変化のない材料が切望され、
かつこの耐熱・耐寒性の良いことと同時に往復運
動を繰返すピストンロツドとの摺動接触に対する
耐摩耗性に優れていることもシール材料として兼
備していなければならない特性である。

ところが、現用の油圧緩衝器において使用され
ているシール材料とても上記の温度と摩耗の条件
を完全に満足するものはなく、例えば、比較的低
温シール性の良いシール材として知られているニ
トリルゴムの場合は、ゴム材として可逆的ではあ
つても硬化の著しい低温側許容温度は約−30℃〜
−40℃で満足しても高温側許容温度は1000時間耐
久加温温度は約120℃と低く、また、比較的高温
シール性の良いシール材として知られているフツ
素ゴムの場合は、ゴム材としての可逆性を損わな
い高温側許容温度は200℃で約1000時間の加温に
耐えられるが、低温側は約−20℃と充分なもので
はないと共に、従来のこの種オイルシールの構造
は、例えば、金属性の芯金に対して適当なシール
ゴム材を焼付成形してオイルシールリツプを一体
的に形成し、必要に応じて同一ゴム材料によつて
ダストシールリツプを形成したものであるため、
殊にその低温側シール性能が何れのシール材料の
場合でも夫々に悪いものであつた。

そして、この低温シール性能の低下原因につい
ては、主としてシールゴム材料自体が低温になる
につれてその弾力性を失つて固くなり、シールと
しての締代とピストンロツドの傾動に対する追従
性がなくなることによりロツドとの間に所謂首あ
きと言われる隙間を生じて油が漏れるのであり、
このことは、オイルリツプを取り囲む芯金材が円
筒状であつて弾力性に欠けることに基因してより
一層上記ピストンロツドの傾動に対する追従性を
阻害し悪化させることとなつていた。

本考案は、この様な低温側シール性能を向上さ
せるために、ピストンロツドの傾動に対するオイ
ルシールリツプの追従性を低温時に於いても確保
できる様にゴムシール部材の芯金部材の円筒部を
二つ折りに構成し、この二つ折り円筒部にバイメ
タル機能を付与して低温時のゴムシール部材の締
付力を補助せしめ、以つて首あき現象並びにこれ
に依る油漏れを有効に且つ安価に精度よく防止す
るオイル装置を提供するものである。

以下、本考案の実施例を第１図について述べ
る。

本考案のオイルシール装置は、特に二つ折れ円
筒部１０ａと屈曲片１０ｂとを一体化した弾性芯
金１０のピストンロツド５に臨む側にこれを包む
様に例えば、ニトリルゴム等の低温ゴム弾性材料
からなるリング状のシール部材１１を被覆したも
のからなる。そして弾性芯金１０の円筒部１０ａ
外周はシリンダに嵌着固定され、組付上の位置決
めが精度よく行なわれる。

上記シール部材１１はシリンダの内側方に向つ
てコ字状に屈曲し、これのピストンロツド５の対
向面側にオイルシールリツプ１１ａが設けられて
いる。更に、上記二つ折れ円筒部の二つ折れ片間
には、リング状のバイメタル１２が介装されてい
る。なお、このバイメタル１２はシール部材１１
の弾性限界を越える例えば−40℃を越える温度付
近で、矢印ｂ方向に撓む様に設計され、かつ当該
撓み変位を許容してオイルシールリツプ１１ａへ
と良好に伝えられるように弾性芯金１０の二つ折
り円筒部１０ａの内側部分と屈曲片１０ｂとにわ
たつて円周方向等間隔に図中破線で示すように複
数個のスリツトが設けられている。

かかる構成になるオイルシール構造にあつて
は、シール部材１１の弾性限界を越える温度に至
るやバイメタル１２が上記の如くｂ方向に撓み、
これに依つて弾性芯金１０のピストンロツド５に
臨む部分を同じく矢印ｂ方向に押圧する。すなわ
ち、弾性芯金１０全体に高価なバイメタル材等を
採用することがないのでシール装置全体を安価に
製作でき、かつゴム焼付成形時の変形もなく精度
よく一体化成形することができると共に二つ折り
円筒部１０ａに組入れたリング状バイメタル１２
の作用を受けて弾性芯金１０は縮径作動し、これ
に伴つて硬化したオイルシールリツプ１１ａをそ
の弾性を失つた分ピストンロツド５に押し当て
る。かくして、オイルシールリツプ１１ａのピス
トンロツド５に対する締代が充分に確保され、低
温時に於けるオイルの漏れを有効に防止できるこ
ととなる。

以上詳細に説明した如く、本考案に依れば、次
の効果を有する。

油圧緩衝器に於けるピストンロツド用のオイ
ルシール装置に於いて、弾性芯金１０の円筒部が
その両端位置で規制されてシリンダ内周に確実に
保持されているので、シール装置としての部品点
数を増やすことなくオイルシールの位置決めがで
き、その固定精度もよい。オイルシールリツプ
がピストンロツドに弾圧されるゴムシール部材
に、当該ゴムシール部材の弾性限界温度付近また
はそれ以下で撓むバイメタルを附設したことに依
り、温度低下時の弾性低下に依るシール部材のピ
ストンロツドに対する追従性低下を、そのバイメ
タルの撓みに依り補償することができ、首あき現
象並びにこれに伴うシリンダ内オイルの漏出を有
効に防止することができる。バイメタルを弾性
芯金の二つ折り円筒部間に介装したことにより、
芯金全体を高価なバイメタル材で構成するよりも
安価にでき、ゴムシール部材の焼付成形上の熱の
影響も受けずに精度よく組付けが可能になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかるオイルシール装置の要
部の断面図である。 ５……ピストンロツド、１０……芯金、１１…
…シール部材、１１ａ……オイルシールリツプ、
１２……バイメタル。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 油圧緩衝器に於けるピストンロツド用のオイ
   ルシール装置に於いて、円筒部がシリンダ内周
   に保持され、かつ、オイルシールリツプがピス
   トンロツドに弾圧されるゴムシール部材を、上
   記円筒部に対応する二つ折り円筒部分を有する
   弾性芯金に一体に焼付成形し、上記ゴムシール
   部材の弾性限界温度付近またはそれ以下で撓む
   バイメタルを、上記弾性芯金の二つ折り円筒部
   間に介装したことを特徴とするオイルシール装
   置。 (2) 上記弾性芯金の二つ折り円筒部の内側部と内
   側屈曲片とに亘つて円周方向等間隔にスリツト
   を設けてなる実用新案登録請求の範囲第１項記
   載のオイルシール装置。