JPS609404Y2 - ２サイクルエンジン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は２サイクルエンジンに関し、このエンジンの始
動性を向上させるために起動トルクの低減を図ると共に
、吸入混合気の加熱を図るようにしてものである。

近年、汎用型２サイクルエンジンにおいても、他のエン
ジンと同様、排気量の増大による出力の向上又は小型軽
量化等のために高回転高圧縮化されたエンジンが使用さ
れるようになり、このように高出力化されたエンジンで
はその起動トルクも大きくなるものであって、起動装置
としてスタータモータを備えてバッテリの電力にて始動
するように説ければよいが、取付スペース、重量、製造
コスト等の面で、又はスノーモービルのように寒冷地で
のバッテリが使用不能となるためにスタータモータを採
用しない場合には、ロープ捲付式或いはりコイルスター
タによる手動によって起動させる方式が一般的に用いら
れている。

しかるに、前述のように高出力化されたエンジンでは相
当な起動トルクを必要とするので、人力によって適正な
起動回転速度を与えることは困難となり、特に老人や婦
人にとっては非常な労力を要し、加えて起動操作時の逆
転ショックを伴うという問題があった。

上記問題を解決する手段として、従来より燃焼室内の圧
縮ガスを漏洩させて起動時の圧縮圧力を減少させる方式
が提案されている。

その−例として第５図に示すようにシリンダａ内壁の排
気口すの上方又は燃焼室Ｃから大気中若しくは排気通路
ｄに連通ずるバイパス通路ｅを設け、このバイパス通路
の途中に起動操作時のみ手動によって開く開閉バルブｆ
を設けている。

しかしながら、上記方式においては、起動の都度バルブ
ｆの開閉操作を必要として煩雑であり、またエンジンの
始動後バルブｆの閉鎖を忘れる恐れがあり、更にバルブ
機構が複雑で精度良く製作しなければならず、バルブ操
作レバーｉの設置場所を確保することも難しい。

また、特に、スノーモービル用のように寒冷地で使用さ
れる２サイクルエンジンにおいては、暖機に多くの時間
を要し、燃費性も低下するものであり、これを改善する
ために、例えば、水冷式のものでは、エンジン冷却水を
吸気管部に導入し、吸気管部を加熱するようにしたもの
があるが、この方式ではエンジン始動後よりエンジン冷
却水が加温されるまでにかなりの時間を要し、燃料の霧
化が悪く混合気加熱を最も必要とする時期すなわちエン
ジンが冷機状態にある始動直後に混合気を充分に加熱で
きない不具合を有する。

特に、スノーモービル用水冷エンジンでは、その使用環
境条件および高出力を維持するために、冷却水温度は比
較的低い値に保持されており、エンジン冷却水による吸
気加熱では不充分である。

そこで、本考案はかかる従来の欠点を解消すべくなされ
たもので、簡単な構造でもって、エンジンの通常運転時
の有効燃焼ガスの漏洩並びに圧縮始めにおける未燃有効
混合気の漏洩を減少させて出力損失並びに熱効率の低下
を軽減しつつ、上述の起動トルクの低減によるエンジン
始動性の向上および起動操作時の逆転ショックの防止を
図ると共に、吸入混合気を速やかに加熱して混合気の霧
化を促進するようにした２サイクルエンジンを提供する
ものである。

以下、本考案の構成を実施例につき図面に基づいて説明
する。

第１図に示す２サイクルエンジンにおいて、１はシリン
ダ、２はピストン、３はシリンダヘッド、４は燃焼室、
５は吸気口、６は該吸気口５に連通ずる吸気通路、７は
排気口、８は該排気ロアに連通ずる排気通路、９は掃気
口である。

前記シリンダ１の内壁には、吸気口５の上方において、
排気ロアの開口上端より上死点側の位置でピストン２の
摺動によって開閉される範囲内に圧縮ガス漏洩孔１０が
設けられている。

この圧縮ガス漏洩孔１０は、連通路１１を介して排気通
路８に連通されている。

また、該連通路１１はその途中が拡張されて吸気通路６
の外周を囲繞する加熱室１２に形成されている。

前記圧縮ガス漏洩孔１０の周方向の位置は、特に規定す
る必要はないが、加熱室１２が吸気通路６の外周に設け
られることとの関係より、第１図の如く吸気口５側に開
設するのが好適であり、圧縮ガス漏洩孔１０を直接加熱
室１２に連通開口さぜ、この圧縮ガス漏洩孔１０との連
通位置から離れた位置に開口した吐出孔１３にて加熱室
１２から連通路１１に連通腰この連通路１１の下流端放
出孔１４が排気通路８を開口するように構成されている
。

尚、その他、第１図において、１５は点火プラグ、１６
はトップリング、１７はセカンドリング、１８はピスト
ンピン、１９はコネクティングロッド、２０はガスケッ
ト、２１はランクケースである。

また、前記加熱室１２は、吸気口５近傍の吸気通路６の
外周のほか、さらに上流の吸気通路６を構成する吸気管
等の外周に設けてもよい。

一方、連通路１１の下流端放出孔１４は、排気ロア近傍
の排気通路８を開口させるほか、さらに下流の吸気通路
８を構成する排気管、マフラー等に開口するようにして
もよい。

上記連通路１１はパイプ状のもので形成するほか、シリ
ンダ１壁面内に鋳抜き又は機械加工により形成するよう
にしてもよい。

次に、その作用について説明すると、シリンダ１の内壁
に圧縮ガス漏洩孔１０を設けたことにより、エンジン始
動時において、ピストン２が下死点から上昇行程となっ
た際に、ピストン２によって排気ロアが閉口した後には
混合気を圧縮することになるが、圧縮ガス漏洩孔１０が
開口している間は、圧縮ガスは上記圧縮ガス漏洩孔１０
より加熱室１２ヘリークし、起動時の圧縮ガス圧力を減
少せしめることができるから、起動トルクが少なくてす
み、又、同一起動トルクであれば起動回転速度が上昇し
、エンジンの始動性が大幅に改善される。

更に、起動操作時の圧縮圧力が減少しているため、圧縮
行程を容易に乗り切ることが可能となり、起動操作時の
逆転ショック、所謂ケッチンの発生が皆無となる。

すなわち、第４図に示す指圧線図において、始′動時に
おけるシリンダ内圧力は、破線で示す圧縮ガス漏洩孔１
０を有していないものに対し、圧縮ガス漏洩孔１０を設
けたものは鎖線で示すようにその圧力が低下し、起動ト
ルクが低減するものである。

この始動時の圧力低下は圧縮ガス漏洩孔１０の開口位置
により変化し、上死点側に近くなるほど大きく低下する
。

尚、圧縮ガス漏洩孔１０が閉じるときにおいては始動時
も実線で示す運転時でもシリンダ内圧力には大きな差は
ないが、圧縮ガス漏洩孔１０が開くときには運転時では
大きな′圧力があって始動時と大きな差を有する。

更に、上記圧縮ガス漏洩孔１０からリーフしたガスを吸
気通路６の外周に設けた加熱室１２に導入して、吸入混
合気を加熱するものであって、始動後に混合気の急速加
熱が可能となり、スノーモービル用エンジンのように寒
冷地で使用されるものにおいて特に有効であって、短時
間の暖機が得られる。

更にまた、上記圧縮ガス漏洩孔１０によりアイドリング
運転時の爆発行程中の燃焼ガスの一部がリークされるた
めに、不整燃焼が改善される。

すなわち、２サイクルエンジンでは、一般にアイドリン
グ運転時に不整燃焼を伴うが、この原因はアイドリング
時の給気比が小さいので、新気と燃焼ガスとのガス交換
状態において、新気の供給量が少なく、１回の新気供給
量だけでは着火せず、数サイクルの掃気の後に着火燃焼
するためであり、これに対し、上記実施例のように爆発
行程中の燃焼ガスの一部を抜いて有効仕事量を減少させ
て給気比を大きくすることにより不整燃焼が改善される
。

また、シリンダの温度分布は、排気口周囲が高く、吸気
口周囲は低くなる傾向にあり、この温度分布が均一でな
いと、シリンダの不等変形を助長し、燃焼ガスのブロー
パイ、ピストン焼付、ピストンスラップ音等が生起する
ものであるが、上記圧縮ガス漏洩孔１０により吸気口５
周囲に高温ガスを導入するために、吸気口周囲の温度が
上昇し、シリンダに温度分布が均一となり、上記不具合
の発生が未然に防止できる。

次に、圧縮ガス漏洩孔１０の開口により運転中の有効燃
焼ガスの漏洩による出力損失が問題となるが、上記実施
例における圧縮ガス漏洩孔１０、加熱室１２、連通路１
１のガス流れの等他系は第２図に示す如きものであり、
小径の圧縮ガス漏洩孔１０に対し拡張した加熱室１２を
連通したことにより、ガス流速がある値より大きくなる
と、圧縮ガス漏洩孔１０からのガスの流れを阻止するよ
うに機能するものであって、ガス流速の小さい始動時お
よびアイドリング時には、圧縮ガス漏洩孔１０よりガス
が加熱室１２を経て排気通路８へ流れ、起動トルクの低
減、不整燃焼の改善、吸入混合気の加熱等の作用を有す
るが、負荷の大きい運転域ではガスの流速も大きくなっ
てガスの流れが阻止され、有効圧縮比の低下を抑制でき
るものである。

さらに、第３図に示す如く、加熱室１２′に旋回流を与
えるように圧縮ガス漏洩孔１０を連通し、中心部に連通
路１１への吐出孔１３′を開設するような渦流形式にガ
ス通路系を形成すると、圧縮ガス漏洩孔１０からの流量
が増加した場合、この通路系は顕著に抵抗が大きくなる
特性を有するものであり、このように構成すると運転時
における出力損失を抑制する機能に優れるものである。

従って、以上のような本考案によれば、圧縮ガス漏洩孔
によって始動時の圧縮圧力を減少させ、起動トルクを低
減させてエンジンの始動性を向上させ、且つ起動操作時
の逆転ショックを防止することができると共に、この圧
縮ガス漏洩孔からリークされたガスを吸気通路の外周に
設けた加熱室に導入して吸入混合気を加熱するようにし
たことにより、始動直後においても吸入混合気を速かに
加熱してその霧化を向上し、優れた暖機性を有し、更に
常時運転時の排気行程の有効燃焼ガスの漏洩並びに圧縮
行程の未然有効混合気の漏洩を軽微にすることができる
から、出力損失並びに熱効率の低下が殆んどないなど、
実用上程々の優れた利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例における全体構成を示す縦断
面図、第２図は第１図のガス流れの等他系読図、第３図
は他のガス流れの等他系読図、第４図はクランク角に対
するシリンダ内圧力を示す指圧線図、第５図は従来例を
示す縦断面図である。 １・・・・・・シリンダ、２・・・・・ゼストン、３・
・・・・・シリンダヘッド、４・・・・・・燃焼室、５
・・・・・・吸気口、６・・・・・・吸気通路、７・・
・・・・排気口、８・・・・・・排気通路、９・・・・
・・掃気口、１０・・・・・・圧縮ガス漏洩孔、１１・
・・・・・連通路、１２・・・・・・加熱室、１３・・
・・・・吐出孔、１４・・・・・・放出孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 排気口より上死点側のシリンダ内壁において、ピストン
   の摺動によって開閉される圧縮ガス漏洩孔を設け、該圧
   縮ガス漏洩孔を連通路を介して排気通路に連通ずるとと
   もに、該連通路の途中を拡張して吸気通路の外周に接触
   する加熱室を設けたことを特徴とする２サイクルエンジ
   ン。