JPS6039755B2 - アルミニウム材の陰極防食方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、犠牲陽極を使用したアルミニウムおよびアル
ミニウム合金（以下アルミニウムという）の陰極防食方
法に関するものである。

アルミニウム材は、軽量にして熱伝導性がよく、しかも
中性環境においては比較的腐食を受け難い金属材料であ
るので、近時、広く化学機器などの構造材として使用さ
れているのであるが、例えばこれを熱交換器や貯蔵槽な
どの海水や工業用水（以下水という。

）に直援触れる箇所に使用した場合、いまいま孔食や粒
界腐食など、所謂電気化学的原因に基く不均一腐食を生
ずることが知られている。このような水に触れる箇所に
使用されたアルミニウム材の電気化学的腐食を防ぐ方法
として、アルミニウム材表面に陽極酸化皮膜を施すか、
または塗料などで塗装することも行われているが、この
ような皮膜処理や塗装のみによったのでは、皮膜や塗装
面に存在する潜在的な欠陥や、使用中における皮膜の劣
化や塗装面の剥離などによって、長期に渉つて十分な防
食効果を期得することができなかった。

従釆、このような水中に浸潰された金属材の電気化学的
腐食と防止する方法として、金属材に水中においてその
金属材より卑な自然電位を示す他の金属材を取付けて、
水中における防食しようとする金属材の電位を常に孔食
電位より低く抑制する所謂蟻性陽極法が知られており、
鋼材などの腐食防止に広く用いられて効果を挙げている
。

本発明者らは、水中に浸潰した陰極酸化処理または表面
塗装を施したアルミニウム材、もしくは裸のアルミニウ
ム材に上記犠性陽極を適用して孔食や粒界腐食を防止す
る方法について、種々研究を重ねたが、いずれの場合に
おいても、アルミニウム材に単に従来の犠性陽極法を適
用したのでは、必ずしも鋼材におけるような満足すべき
防食効果を得ることができなかった。この理由は、アル
ミニウム材は鋼材とは異なって、酸およびアルカ川こ溶
ける所謂両性金属であることによるものである。すなわ
ち、アルミニウム材が水中において実質的に腐食を受け
ないで長期間安定して存在するためには、アルミニウム
材の合金の種類や浸債環境などによっても幾分異なるも
のであるが、その水中における自然電位が孔食電位を上
限として、それより０．３Ｖないし０．４Ｖ程度低い狭
い中の電位域内に保たれねばならないことが知られてい
る。

したがって、犠牲陽極を使用してアルミニウム材を防食
するためには、被防食材としてのアルミニウム材全体に
渉つて、その陰極電位が可及的に上記安定電位域内に保
たれるように抑制する必要があるのであるが、蟻性陽極
として、水中におけるアルミニウム材の自然電位に比較
的近い電位をもった金属材を使用した場合、アルミニウ
ム材の犠牲陽極に近接した部分においては、アルミニウ
ム材と犠牲陽極との間に流れる陰極電流によって適正な
電位抑制が行われるのであるが、アルミニウム材の鞠性
陽極と距離的に離れている部分は、水の電気抵抗に起因
して陰極電流の流れが少くなるために、十分な電位抑制
を行うことができず、この部分において孔食や粒界腐食
が発生することを避け難く、また、アルミニウム材の蟻
性陽極から距離的に離れた部分にまで電位抑制をしよう
として、アルミニウム材に比べて十分に卑な自然電位を
もった金属材を犠牲陽極として使用すると、アルミニウ
ム材の犠牲陽極に近い部分において過度の電位抑制が行
われ、この部分に所謂過防食によるアルカリ腐食を起し
勝ちとなるのであった。このように、従来の犠牲陽極法
によったのでは、アルミニウム材全体に渉つて、広範囲
にその陰極電位を安定域内に保つように抑制することが
難しく、このために犠牲陽極法のアルミニウム材への適
用を著しく狭めていたのであった。本発明は、従来の犠
牲陽極を使用したアルミニウム材の陰極防食法における
上託したような欠点を改善すべくなされたものである。

すなわち、本発明は、犠牲陽極を使用したアルミニウム
材の陰極防食法において、水中に設けた参照電極を基準
として測定されたアルミニウム材の陰極電位が、あらか
じめその孔食電位付近に設定され上限電位まで上昇する
ごとに、該アルミニウム材と犠牲陽極とを電気的に短絡
することによって、アルミニウム材の少くとも犠牲陽極
に近接した部分における陰極電位をアルカリ腐食城にま
で間欠的に抑制するアルミニウム材の陰極防食方法であ
る。

以下、添付図面に基いて本発明の方法を、更に具体的に
説明する。

第１図ａは、本発明の方法の実施態様を例示する説明図
である。

図において、１は水中に浸潰された被防食材としてのア
ルミニウム材、２はアルミニウム材１に近接して水中に
設けられた参照電極であって、参照電極２としては飽和
カロメル電極のような基準電極を使用することができる
が、必ずしもカロメル電極に限られるものではなく、亜
鉛やマグネシウムのような外部環境の変化に対して、比
較的安定した陰極電位を示す金属極または金属合金極を
使用することもできる。３は電位測定装置であって、ア
ルミニウム材１と参照電極２とは導線によって電位測定
装置３に結ばれて電位測定回路６，６が形成されており
、電位測定装置３によって測定されたアルミニウム材１
と参照電極２との間の電位差から求められた参照電極２
を基準としたアルミニウム材１の陰極電位Ｖがあらかじ
め設定された上限電位Ｖｕにまで上昇すると、電位測定
装置３からリレー装置５に信号が発せられる。

４は水中に設けられた犠牲陽極であって、リレー装置５
を介してアルミニウム材１に結ばれ、陰極電流回路７，
７が形成されている。

陰極電流回路７，７は、常時は開かれた状態にあるが、
アルミニウム材１の電位が上限電位Ｖｕにまで上昇した
場合、電位測定装置３からの信号によってリレー装置５
が作動して陰極電流回路７，７が短時間閉ざされ、この
間アルミニウム材１と蟻性陽極４との間に短絡電流が流
れて、アルミニウム材１の少くとも蟻性陽極４に近接し
た部分における陰極電位Ｖがアルカリ腐食城にまで間欠
的に抑制されるごと〈に構成されている。第１図ｂは、
本発明の方法の他の実施態様であって、第１図ａに示す
実施態様においては、水中に犠牲陽極４とは別に参照電
極２を設け、アルミニウム材１と参照電極２との間の電
位差から求められた参照電極２を基準としたアルミニウ
ム材１の陰極電位Ｖが、あらかじめ設定された上限電位
Ｖｕになったときに、電位測定装置３からの信号によっ
てリレー装置５が作動し、陰極電流回路７，７が閉ざさ
れてアルミニウム材１と犠牲電極２との間に短絡電流が
流されるごと〈に構成されているが、第１図ｂの実施態
様においては、第Ｉ図ａ示されている参照電極２を省略
し、蟻性陽極４′を参照電極として兼用し、犠牲陽極４
′とアルミニウム材１との電位差から求められたアルミ
ニウム材１の陰極電位Ｖがあらかじめ設定された上限電
位Ｖｕまで到達したときに電位測定装置３から信号が発
せられてリレー装置５が作動し、陰極電流回路７，７が
短時間閉ざされ、アルミニウム材１と犠牲陽極４′との
間に短時間短絡電流が流れてアルミニウム材１の陰極電
位が間欠的に抑制されるごとくに構成されたものである
。

第２図は、第１図（ａおよびｂ）の装置によって、犠牲
陽極としてマグネシウム極を用いて本発明の方法を実施
した場合の被防食材としてのアルミニウム材の比較的蟻
性陽極に近い部分における陰極電位の時間的変化を例示
したものである。

図において、縦軸はアルミニウム材１の陰極電位（飽和
カロメル電極を基準とした電位）、横軸は時間の経過を
表わす。すなわち、電位測定装置３によって測定された
アルミニウム材１と参照電極２（第１図ｂにおいては懐
性陽極４′間の電位差から求められたアルミニウム材１
の陰極電位Ｖが上昇して、あらかじめ設定された上限電
位Ｖｕのａ，点に達したとき、電位測定装置３からの信
号によってリレー装置５が作動して、陰極電流回路７，
７が閉ざされて、蟻・性陽極４（第１図ｂにおいては４
′）とアルミニウム材１とが短時間短絡し、アルミニウ
ム材１の陰極電位Ｖはｑ点にまで急速に引下げられる。
次いで陰極電流回路７，７が開かれると、陰極電位Ｖは
直ちに上昇に転ずる。このときの陰極電位Ｖの上昇は、
曲線ｑ−ａ２に示されるように初期においては急速に回
復し、その後ゆるやかに上昇を続ける。このようにして
アルミニウム材１の陰極電位Ｖが上限電位Ｖｕのａ２点
にまで戻ると、電位測定装置３からの信号によってリレ
ー装置が作動して、陰極電位Ｖは再びＱ点にまで引下げ
られた後、ｂ２一ａ３に沿って上昇に転ずる。上記から
判るように、本発明のアルミニウム材の陰極防食法にお
いては、アルミニウム材の陰極電位があらかじめ設定さ
れた上限電位Ｖｕ‘こまで上昇するごとに、犠牲陽極と
アルミニウム材とを短時間短絡してアルミニウム材の陰
極電位を間欠的に繰返して低下させる方法であるが、上
記本発明の方法における、あらかじめ設定するアルミニ
ゥム材の上限電位Ｖｕとしては、防食しようとするアル
ミニウム材の合金の種類、使用環境などによっても幾分
異なるが、アルミニウム合金材の使用環境における孔食
電位付近（例えば、海水中におけるＡＩｌＯ財材‘こあ
っては、飽和力。

メル電極を基準として−０．７０Ｖ程度）ないしは、孔
食電位より５仇ｈＶ程度低目に設定することが望ましい
。また、犠牲陽極としては、被防食材としてのアルミニ
ウム材よりも同一使様環境において０．３〜０．８Ｖ程
度低い陰極電位を示す金属合金材を使用することが望ま
しいが、特にアルカリ腐食を起し難い環境においてはＩ
Ｖないしそれ以上低い電極電位を示す金属材料を使用し
ても差支えない。このような酸性陽極材としては、既知
の鋼材の陰極防食に用いられている亜鉛、マグネシウム
などを主成分とする儀一性陽極材から使用環境に応じて
適宜選択使用することができる。また、本発明における
アルミニウム材の陰極電位が上限電位にまで上昇したと
きに蟻性陽極とアルミニウム材とを短絡させる時間ｔは
、表程厳格に規定する必要はなく、一般的には０．０１
〜２秒程度であることが望ましいが、特にアルカリ腐食
を受け易い環境下における防食を除けば、数秒間程度ま
では差支えない。上記したように、本発明の方法は、水
中に浸潰されたアルミニウム材の陰極電位が孔食電位付
近にまで上昇するごとに、アルミニウム材と犠性陽極と
を短時間電気的に短絡してアルミニウム材の電位を間欠
的に抑制する方法であるから、アルミニウム材の電位は
常に孔食電位より低く保たれ孔食や粒界腐食を確実に防
止することができるばかりでなく、第２図にも示される
ように、アルミニウム材と犠牲陽極との短絡が解かれた
ときのアルミニウム材の電位は初期において速やかに回
復しその後ゆるやかに上昇するのであるから、アルミニ
ウム材がアルカリ腐食域に曝される時間は、きわめて短
かく、かつ、アルカリ腐食には誘導時間があるので、陰
極電位が一時的にアルカリ腐食城にまで抑制されても、
この間においてアルカリ腐食を受ける恐れはほとんどな
い。したがって、本発明の方法によるときは、従来の陰
極防食法に比べて、十分に卑な電位をもった犠牲陽極材
を使用することができ、アルカリ腐食を起す恐れないこ
アルミニウム材全体に渉つて広い範囲に孔食や粒界腐食
などの電気化学的腐食を防止することができるのである
。さらに本発明の方法は、アルミニウム材と犠牲陽極と
の間に、間欠的に防食電流が流されるのであるから、常
時防食電流を流す従来の方法に比べて犠牲陽極の消耗が
はるかに少なくてすむという利点をも併せて有する。次
に本発明の実施例を掲げる。

実施例 １ 被防食材試片としてＡＩｌ００アルミニウム板材（８０
仇吻長×１００肌中×１胸厚）を使用し実験に供した。

試片の両側の長手方向に沿って流路中約５肋の水路をつ
くり、板の一方の端からほぼ１０肌離れた位置に防食用
の中４仇舷×長さ７仇肋×厚さ１５側の犠性陽極（材質
位６３Ｍｇ−６．０％Ａ夕−３．０％Ｚｎ−０．２％Ｍ
ｎ合金）を設け、犠性陽極と試片の間に、犠性陽極と試
片が間欠的に短絡できるような陰極電流回路を設けた。
使用水は天然海水（水温約２０℃）とし、ほぼ２０肌／
ｓｅｃの流速で流路に沿って流した。試片に対して犠牲
陽極と反対側に参照電極として標準カロメル電極を設置
し、これを基準として測定された謙片の電位が、あらか
じめ設定された上限電位（飽和カロメル電極を基準とし
て−０．７０Ｖに設定）にまで上昇するごとに、電位測
定装置から発せられる信号によって、陰極電流回路を短
時間（０．２秒に設定）短絡させて、試片の電位の間欠
的制御を行った。

このようにして１０ヵ月間の連続試験を行ったが、この
間における孔食の発生は皆無であり、アルカリ腐食も認
められなかった。

実施例 ２ 被防食材試片としてＡＩｌ００アルミニウム板材（寸法
実施例１と同じ）を使用した。

試片の両側に実施例１におけると同様の水路をつくり、
水路の一方の端からほぼ１０ｃの離れた位置に参照電極
兼犠牲陽極としての中４仇肋×長さ７０側ｘ厚さ１５肋
の金属極（材質Ａｚ６３Ｍｇ−６．０％Ａクー３．０％
Ｚｎ−０．２％Ｍｈ合金）を設けた。

使用水は実施例１と同様に天然海水とし、ほぼ２０肌／
ｓｅｃの速度で流した。上記のようにして、参照電極兼
犠牲陽極としての金属を基準として、電位測定位置によ
って測定された試片の電位が、あらかじめ設定された上
限電位（飽和カロメル電極を基準として−０．７０Ｖに
設定）にまで上昇するごとに、電位測定装置から発せら
れる信号によって、陰極電流回路を短時間（０．１秒に
設定）短絡させ、試片の電位の間欠的制御を行いながら
１０カ月間の連続試験を行った。

この間における孔食の発生は皆無であり、アルカリ腐食
も認められなかった。なお、比較のために、同様の試片
の一端に蟻性陽極（材質実施例２と同じ）を取りつけた
状態で防食電流の断続を行わずに試験を行った結果、海
水を流し使めてから１カ月でアルミニウム材の蟻性陽極
に近い部分において、アルカリ腐食による著るしい地荒
れが発生した。

【図面の簡単な説明】

第１図ａおよびｂは、本発明方法の実施態様を例示する
説明図、第２図は、本発明方法によった場合のアルミニ
ウム材の陰極電位の時間的変化を例示したものである。 図において、１・・・アルミニウム材、２・・・参照電
極、３・・・電位測定装置、４・・・蟻性陽極、４′・
・・参照電極兼濠性陽極、５・・・リレー装置、６，６
・・・電位測定回路、７，７・・・陰極電流回路。第１
図 第２図

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 犠性陽極を使用したアルミニウム材の陰極防食法に
   おいて、水中に設けた参照電極を基準として測定された
   アルミニウム材の陰極電位が、あらかじめその孔食電位
   付近に設定された上限電位にまで上昇するごとに、該ア
   ルミニウム材と犠性陽極とを短時間電気的に短絡するこ
   とによつて、アルミニウム材の少くとも犠性陽極に近接
   した部分における陰極電位をアルカリ腐食域にまで間欠
   的に抑制することを特徴とするアルミニウム材の陰極防
   食方法。