JPS584913B2 - 嫌気性細菌の培養法

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【発明の詳細な説明】本発明は、嫌気性細菌の培養法に関するものである。

嫌気性細菌は、チトクローム酵素系を持たないため、分
子状酸素を利用することができないため、普通の培養法
では生育しないものであった。

従って嫌気性細菌の培養には、いろいろな工夫が必要で
あり、かつ特別な器具、装置が必要であった。

そのうえこれらの器具、装置の操作にはかなりの熟練を
要した。

このような嫌気性細菌の培養のため、分子状酸素すなわ
ち遊離酸素を除去するために下記のような多くの方法が
ある。

（イ）重層法：最も簡単な方法であり、培地の表面にワ
セリン、流動パラフィン、寒天などを重層して空気の侵
入をさえぎる方法。

（０）高層固形培地培養法：ぶどう糖寒天地、普通寒天
地等予め煮沸、急冷したものに混合培養するか、あるい
は穿刺培養する方法。

この方法は、培地の内深部には酸素が侵入しない事を利
用したものである。

（ハ）空気置換法：鉄槽またはデシケーター等の壁の厚
いガラス槽の中に菌を接種した培地を納め、真空ポンプ
で槽内の空気を除き、そのままあるいは水素または窒素
ガス等で置換して発育させる。

この方法に比較的多く用いられるものに細谷の嫌気性培
養器がある。

この方法は、物理的方法として確実であるが、真空ポン
プ、ガスボンベ、圧力計等の諸器具が必要であり、また
煩雑な操作が必要である。

（ニ）化学的酸素吸収法：この方法は化学反応により、
酸素を吸収、除去してしまい密封系内を嫌気性を保つも
のである。

用いる化学薬品によりシュートンサック法およびローゼ
ンクールのクロム硫酸法がある。

シュートンサック法：焦性没食子酸と炭酸ナトリウムの
混合物で酸素を吸収させ、嫌気性細菌を発育させる方法
。

ローゼンクールのクロム硫酸法：金属クロムと硫酸の反
応により、水素を発生させ酸素を吸収する方法。

Ｃｒ＋Ｈ２ＳＯ４→ＣｒＳＯ４＋Ｈ２４ＣｒＳＯ４＋２Ｈ２ｓｏ４＋ｏ２→２Ｃ
ｒ（ＳＯ４）３＋２Ｈ２０（力還元剤等を培地に加える方法：培地内に還元性物
質を加えて培地内を嫌気性状態にするものである。

このような培地として肝片肝臓ブイヨン、細谷システイ
ンブイヨン等がある。

（ハ）生物学的方法：好気性細菌の呼吸を利用して器内
の分子状酸素を減らし、その中で嫌気性細菌を培養する
方法。

予め盛んに培養した霊菌又は枯草菌の菌苔が必要である
。

以上述べた方法は、その目的に応じて、それぞれ長所を
有しているが、嫌気状態にするためには、それぞれ煩雑
な操作が必要である。

このためより簡単でかつ確実に密封系内で嫌気状態にす
る方法が望まれていた。

本発明の目的は、上記の要望にかなった嫌気状態をつく
りだす方法を提供することである。

本発明は化学反応により密封系内の分子状酸素を吸収除
去すると同時に低濃度の炭酸ガスを発生させる脱酸素剤
を用いた嫌気性細菌の培養法である。

本発明において使用する脱酸素剤は硫酸第一鉄系または
アスコルビン酸系の物質を主成分としたものである。

この基本的な配合割合を以下に示す。

硫酸第一鉄系アスコルビン酸系以上のように本発明で使用する脱酸素剤は、その組成中
に種類の異なる２種以上のアルカリ性化合物で少なくと
も炭酸塩または炭酸水素塩を含み、このアルカリ性化合
物の配合比を変えることにより、５％以下の低濃度の炭
酸ガス濃度の雰囲気を容易に得ることができる。

このように、本発明は上記組成からなる脱酸素剤を併置
するだけで反応が開始し、好適な嫌気状態をつくること
ができる。

また、本発明において使用する脱酸素剤は、大気との反
応開始において、発熱あるいは吸熱することがなく、広
い温度範囲で反応が開始する。

それで中、高温細菌のみならず、低温細菌の培養の使用
にも可能である。

またこの脱酸素剤は、大気と反応しても水分を放散また
は吸収することがないので、密封容器内の培地を過度に
乾燥させたり、露結現象を生ずることがない。

本発明の方法は、従来のような煩雑な操作や機械、器具
類は必要なく、簡単な操作で嫌気状態にすることができ
、嫌気性細菌の培養法が容易になった。

【特許請求の範囲】

１アスコルビン酸系または硫酸第一鉄を主剤とし種類
の異なる２種以上のアルカリ性化合物で少なくとも炭酸
塩または炭酸水素塩を含む脱酸素剤を嫌気性細菌を接種
した培地と共に密封容器内に封入することを特徴とする
嫌気性細閑の培養法。