JPS582256B2 - 歯科用金合金 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は歯科用金合金に係り、特に機械的性質を改善し
た歯科用金合金に関する。

一般に金属材料は、これを構成する結晶が微細である程
、機械的性質が優れている。

このため、金属材料の組成成分としてレニウムやイリジ
ウムを添加する試みが既になされている。

しかしレニウムやイリジウムは高価で、かつ入手が極め
て困難であり、また微量の添加では効果が少ない。

本発明の目的は、機械的性質に優れ、かつ入手容易な材
料から製造することができる歯科用金合金を提供するこ
とにある。

本発明は、安価、かつ入手容易なジルコニウムを金合金
に対し、極く微量添加することによって、結晶の微細化
が顕著に行る点に着目した結果、達成されたものであっ
て、第１の発明は、重量比でＡｕ：４５〜８０％、Ａｇ
：２〜２０％およびＣｕ：５〜２０％を主成分として含
有し、更にＺｒ：０．００５〜０．５％を含有する歯科
用金合金であり、第２の発明は、重量比でＡｕ：４５〜
８０％、Ａｇ：２〜２０％およびＣｕ：５〜２０％と、
Ｐｄ：１１％以下、Ｐｔ ： １０％以下、Ｚｎ ：
７％以下、Ｆｅ：５％以下、Ｓｎ：５％以下およびＩｎ
：５％以下から選ばれる１種又は２種以上の元素と、Ｚ
ｒ ： ０．０ ０ ５〜０．５％と、を含有する歯
科用金合金である。

本発明において、ジルコニウム以外の元素およびそれら
の添加量は実質的に歯科用金合金等の規格に示される各
元素およびそれらの添加量と共通する。

第１表に示される金合金組成（ＴＹＰＥＩおよびＴＹＰ
ＥｒＶ ）は硬度および強抗力を要求されるところに用
いられ、本発明による結晶微細化が有効な金合金の規格
である。

第 １ 表 ＴＹＰＥＩ ＴＹＰＥＩＶ Ａｕ ７１．０〜７９．８％６２．４〜７１．９％Ａｇ
５．２〜１３．４％８．０〜１７．４％Ｃｕ ７．１
〜１２．６％８．６〜１５．４％Ｐｄ Ｏ〜６．５％０
〜１０．１％ Ｐｔ Ｏ〜７．５％０．２〜８，２％ ＺｎＯ〜２．０％０〜２．７％ また本発明者は陶材焼付用金合金およびブリツヂ用金合
金についてもＺｒ添加の有効性を確認した。

実験に用いた組成は次の通りである。陶材焼付用金合金 Ａｕ Ａｇ＋Ｚｒ Ｃｕ Ｐｔ Ｓｎ Ｆｅ
Ｉｎ８０％ ３％ ５％ ５％ ５％ １％ １
％陶材焼付用金合金については、ＺｒはＡｇとの和が常
に組成全体の３％となるように計量し、組成全体のＺｒ
の含有量が０．００５％から０．５％までの種々の添加
量が異なる試料について実験を行った。

ブリッジ用金合金については下記の組成で実験を行った
。

ブリッジ用金合金 Ａｕ Ａｇ Ｃｕ Ｐｄ Ｐｔ Ｚｎ Ｚ
ｒＡ ６５％ １０％ １３％ ５％ ５％ ２％
％Ｂ ６５％ ９％ １３％ ５％ ５％ ２％ １
％Ｃ ４５％１９，８％ ２０％ １０％ ５％ ０
％ ０、５本発明において、金合金の製造方法としては
、まずＡｇを用い所定量のＺｒ，例えば１０％のＺｒを
含む母合金を作る。

具体的には（１）純Ａｇと純ＺｒとをＺｒが重量比で１
０％となるように計量し、これを不活性ガス、例えばＡ
ｒガス雰囲気下、放電溶解炉中で溶解して作り、この母
合金を最終的に目的とする組成になるように他の合金元
素と混合し、同時溶解する方法、（２）主体となる合金
を予め金合金として溶解し、その溶湯中に上記のような
Ｚｒ入り母合金を投入して共に溶解する方法、（３）上
記のようなＺｒ入り母合金の溶湯を作製し、この溶湯中
に他の合金元素又は他の合金元素からなる金合金を投入
し、溶解する方法によって所期の歯科用金合金を得るこ
とができる。

さらにＺｒ入り母合金の作製において、Ａｇ一Ｚｒ母合
金に限らず、Ａｕ Ｚｒ母合金、Ｃｕ−Ｚｒ母合金を
作製し、上記の各方法によって所期の歯科用金合金を得
ることもできる。

第１図〜第３図に示す実施例ではいずれもＺｒ入り母合
金を用いて歯科用金合金を作製した。

第１図は前記陶材焼付用金合金であって、それぞれ第１
図ＡはＺｒ無添加、第１図ＢはＺｒＯ。

００５％添加、第１図ＣはＺｒ０．０５％添加、第１図
ＤはＺｒ０．１％添加、第１図ＥはＺｒ０．５％添加し
たものである。

第２図Ａ〜第２図Ｃはそれぞれブリッジ用金合金の試料
Ａ−Ｃ，第３図Ａは前記規格歯科用金合金ＴＹＰＥｌ［
（Ｚｒ無添加）第３図Ｂは前記規格歯科用金合金ＴＹＰ
ＥＩ［［の組成成分に対しＺｒＯ．０１％添加したもの
である。

第１図〜第３図に示す顕微鏡写真はいずれも鋳造のまま
の表面状態を２００倍の倍率で示す。

これらの写真を観察すると、第１図において第１図Ａと
第１図Ｂとの比較から明らかなようにＺｒの微量の添加
のみで鋳物組織が変化し、結晶の微細化が始まっている
ことがわかる。

そして第１図Ｃ〜第１図Ｅとなるにつれて、すなわちＺ
ｒの添加量が増加するにつれて結晶の微細化が進行し、
Ｚｒを０．５％添加した合金では極めて微細な組織とな
っている。

また第２図に示すブリツヂ用金合金、および第３図に示
す規格歯科用金合金ＴＹＰＥＤＩの合金においてもＺｒ
の添加による結晶の微細化が認められ、ブリツヂ用金合
金の場合、Ｚｒの添加量が増加するにつれて結晶の微細
化が進行することを示している。

これらの実験結果は歯科用金合金の結晶微細化に対し、
Ｚｒの添加が等しく顕著の効果を発揮しうろことを示す
ものである。

歯科用金合金中のＺｒ添加量は、０．００５〜０．５％
である。

Ｚｒ添加量の下限、すなわち０．００５％はＺｒ添加の
効果が現われ始める実用的限界であり、またＺｒの添加
量が０．５％を超えると、結晶の微細化は顕著になるが
、溶湯の流動性を著しく阻害し、精密鋳造を困難ならし
めるため工業的利用価値の面から０．５％以下とした。

次にＺｒ以外の他の添加元素の作用効果およびその数値
限定の技術的理由について説明する。

Ａｕは歯科用合金の耐蝕性、色採美性のために有効であ
るが、４５％よりも少ないとその効果がなく、８０％を
超えると硬度が低下し、かつＰｄ．Ｐｔ等の添加元素の
相対的添加量が少なくなるため機械的性質が低下するの
で４５〜８０％とする。

Ａｇは歯科世合金の製造時において、合金の溶融点を下
げ作業性を高める効果があるが、２％よりも少ないとそ
の効果がなく、２０％を超えると色採美性が悪くなり、
かつ硫化により腐蝕し易くなるので２〜２０％とする。

ＣｕはＡｕの有する金色を比較的損なうことなく、歯科
用合金の硬度、耐摩耗性、抗張力を上げることができる
。

しかし、Ｃｕの添加量が５％よりも少ないとその効果が
なく、２０％を超えると耐蝕性が悪くなるので５〜２０
％とする。

Ｐｄは耐蝕性を向上させるために添加されるが、１１％
を超えると歯科用合金の色採美性が悪くなるので１１％
以下とする。

Ｐｔは歯科用合金の硬度を上げるのに有効であるが、１
０％を超えると融点を上がりすぎ硬くなるために加工性
が低下するとともに高価となるので１０％以下とする。

Ｚｎは鋳造に際し、湯流れ性をよくして加工性を高め、
また脱酸性により母材中の酸素の除去に有効である。

しかし、Ｚｎめ添加量が７％を超えると耐蝕性が悪くな
るので７％以下とする。

Ｆｅ，Ｓｎ．Ｉｎは金合金を高温下でポーセレン焼付歯
を製造する際、合金表面に選択的に酸化層を作り、その
ためセラミックとよくなじみ強力な接着性を現わすもの
であり、この酸化層がなければポーセレンの焼付はでき
ない。

このような作用効果に必要なＦｅ，Ｓｎ，Ｉｎの添加量
は各々５％以下であり、５％を超えると母材の硬度を低
下させるとともに必要以上に酸化し作業性を低下させる
。

本発明において、主成分元素すなわちＡｕ，Ａｇ，Ｃｕ
三元素は全域にわたって広範な固溶体域をなし、Ｚｒに
よる晶出の性格もほとんど同一とみるととができる。

以上のように本発明によれば、安価にして比較的入手容
易なＺｒの微量の添加によって結晶微細化を図かり、機
械的性質を改善した歯科用金合金を提供することができ
る。

図面の簡単な説明． 第１図は陶材焼付用合金の金属組織を示す顕微鏡写真で
あって、第１図ＡはＺｒ無添加、第１図ＢはＺｒ０．０
０５％添加、第１図ＣはＺｒ０．０５％添加、第１図Ｄ
はＺｒ０．１％添加、第１図ＥはＺｒ０．５％添加した
ものである。

第２図はブリツヂ用金合金の金属組織を示す顕微鏡写真
であって、第２図Ａ１第２図Ｂおよび第２図Ｃはそれぞ
れブリツヂ用金合金の試料Ａ，Ｂ，Ｃに対応する。

第３図は規格歯科用金合金ＴＹＰＥＨの金属組織を示す
顕微鋳写真であづて、第３図ＡはＺｒ無添加、第３図Ｂ
はＺｒＯ．０１％添加したものである。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 重量比でＡｕ：４５〜８０％、Ａｇ：２〜２０％お
   よびＣｕ：５〜２０％を主成分として含有し、更にＺｒ
   ：０．００５〜０．５％を含有することを特徴とする歯
   科用金合金。 ２ 重量比でＡｕ：４５〜８０％、Ａｇ：２〜２０％お
   よびＣｕ：５〜２０％と、Ｐｄ ： １ １％以下、Ｐ
   ｔ ： １０％以下、Ｚｎ：７％以下、Ｆｅ：５％以下
   、Ｓｎ：５％以下およびＩｎ：５％以下から選ばれる１
   種又は２種以上の元素と、Ｚｒ：０．００５〜０．５％
   とを含有することを特徴とする歯科用金合金。