JPS581201B2 - 衣服用芯地 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、衣服用芯地に関するものである。

衣服の仕立てに際して表地のハリ、腰不足を補い保形用
として芯地を用いることは周知のことである。

紳士服分野ではこの特性以外に衣服に所望のシルエット
を付与するために芯地は容易に変形するとともにその形
をいつまでも維持することが必要である。

すなわち、変形しにくい芯地を用い現在一般的な縫製手
段で衣服を仕立てた場合着用者の体型に合ったシルエッ
トをつくり出すことは困難である。

従来、合成繊維使いの芯地としてポリエステル／綿、ポ
リエステル／レーヨン、もしくはポリエステル１００％
などの合成繊維を用いた織物もしくは不織布からなる合
成繊維芯地などはすでに市販されている。

これらの合繊芯地は縫製工程中および着用中のプレス、
アイロン、洗たくなどによって他繊維使いの芯地に比べ
れば比較的寸法安定性がよいという特性をもっている。

しかしこれらの芯地はほとんど変形しないため前記した
シルエットを重視する紳士服分野ではほとんど使用され
ていないのが実状である。

したがって、シルエットを重視する衣服のほとんどは変
形性の優れた毛糸使いの芯地が使われている。

しかし、これら毛芯ぱ前記した合繊芯地に比べアイロン
、プレス、洗たくなどの熱と水分によって寸法が変形し
形くずれしやすい欠点を持っている。

この発明は上記従来技術の欠点を改良し、アクリル系繊
維が熱によって軟化し、変形するという欠点を逆に利用
することによって、芯地として、とくに紳士服用芯地と
して従来の合繊芯地にはなかった賦形性を有するととも
に、芯地として必要な適宜のハリ、腰をもち、しかも従
来毛芯にはなかった寸法安定性をもった合成繊維を主体
とした芯地を提供することを目的とするものである。

第１図は、前身ごろ芯の一例を示す平面図である。

この発明は、衣服のたて方向１にアクリル系繊維が少な
くとも３０％以上混在した糸を使用し、後述する熱賦形
性率が４％以上の性能を有するとともにプレス収縮率、
洗たく収縮率、ドライクリーニング収縮率のうち少なく
とも一つが衣服のだて１：衣服のよこ２とも１％以丁の
衣服用芯地である。

第２図および第３図は、この発明でいう熱賦形率を説明
するだめの平面図である。

この発明でいう熱賦形性率とは、たて２ ５ ｃｍ ％
よこ５ｃｍの芯地を第２図のようにスチームアイロンで
変形を与え、その変形量を表わしたものである。

さらに具体的に測定条件を述べる。

サンプルである芯地について、一般芯地は芯地単独とし
、接着芯地は５％以上の熱賦形性率をもつ表地とあらか
じめ接着したものを使用し、たて２５ｃｍ、よこ５ｃｍ
を正確にカットする。

そのサンプルのたて方向の一端に約２ｋｇの張力をかけ
他端に縮め込み操作を与えながら１６０℃のスチームア
イロンで変形“（わん曲）”を与える。

この操作を２回繰り返す。

次に、わん曲した谷間にできたシワを同条件のアイロン
で５秒間押えっけ第２図のようなシワのないサンプルを
作る。

このサンプルから第３図に示すたて（糸）１′ の長さ
ｌ１およびたて糸１″の長さｌ２から次の式で表わされ
る。

熱賦形性率（％）＝ｌ１−ｌ２／２５×１００なお測定
はサンプル芯地の５個所で行ない、それぞれの値の平均
値を熱賦形性率とする。

上記熱賦形性率を向上させる要因として伸び分Δｌ１も
さることながら縮み分Δｌ２も大きな原因となる。

この縮み分Δｌは生地の自己収縮も若干含まれるが、上
記したようにシワを消すことによるイセ込み要因が大き
い。

次にプレス収縮率、洗たく収縮率、ドライクリーニング
収縮率の測定方法は、第１表に示すとおりである。

上記熱賦形性率は衣服の仕立て方法から考えるとたて方
向に変形しやすいことが必須の要件である。

衣服の表地にウール、ポリエステル／ウール混などの変
形しやすい生地を使っても芯地が変形しにくいと思いど
おりのシルエットが出にくい。

本発明者らの検討結果では従来毛糸使いの芯地は少なく
とも４〜５％の熱賦形性を有する。

コレニ対して従来の合成繊維とくにポリエステル１００
％あるいはポリエステルと綿あるいはレーヨンなどと混
紡もしくは交織した芯地は１〜２チ、大きくとも３％程
度の熱賦形性率しかない。

したがって、これら合成繊維糸使いの芯では寸法安定性
にはすぐれているが、表地がいくらよくてもその特徴を
活かせないという欠点があった。

従来毛芯の寸法安定性は、洗たく収縮率を例にとるとた
て２〜４％と極端に悪く、このような芯地を使用した衣
服を洗たくすると容易に形くずれを起すものである。

この発明による芯地は合成繊維使いの芯地でありながら
前記しだ毛芯と同等もしくはそれに近い熱賦形性を有し
、しかもプレス、ドライクリーニング、あるいは洗たく
によっても形くずれを起さない程度の極めて低い収縮率
をもつものである。

この特長は、たて糸としてアクリル系繊維を用いること
によってえられるものである。

通常アクリル系繊維を用いた織編物は熱もしくは湿熱に
よって伸長、変形し、ヘタリ、軟化が生じ、高温による
染色、セットあるいは縫製時のアイロン、プレスなどは
避ける必要があり、取り扱いが困難な繊維である。

この発明は、このアクリル系繊維の熱によって伸長、変
形しやすいという欠点を逆に利用したものである。

この発明の芯地のたて糸はアクリル系繊維からなる紡績
糸、フィラメント糸、もしくは加工糸を用いることがで
きる。

アクリル系繊維はこれらの織糸中に少なくとも３０％混
在していればこの発明の熱賦形性率４％を達成すること
ができる。

アクリル系繊維の割合が多くなれば熱賦形性率はそれに
比例して大きくなることはもちろんであり、これらの織
糸は混紡糸、混織糸であってもよい。

とくに紳士服芯地としては、よこ糸にアクリル系繊維よ
りもハリ、腰のあるポリエステル系繊維を主体とする繊
維を用いた方が寸法安定性および衣服の幅方向に適度な
ハリ、腰がでるので望ましい。

このよこ糸は紡績糸でもよいし、フィラメント糸、加工
糸、スパンライク加工糸のいずれでもよい。

たて方向は芯地、表地、その他の附属品（ポケット、裏
地など）の自重によりハリが出るので、ハリ、腰よりは
むしろ柔軟性、および、前記した熱賦形性が要求される
ため、熱によって軟化、変形するアクリル系繊維を主体
としていても問題はない。

アクリル系繊維以外の合成繊維は熱セット性を有するが
１００〜１６０℃の湿熱下でアクリル系繊維のように容
易に伸長、変形する特性がないため、シルエットの優れ
た衣服に仕立てることはできない。

これに対してアクリル系繊維が３０％以上混在したこの
発明の芯地は湿熱によって少なくとも４％という熱賦形
性を有し所望の衣服の形をつくることができる。

一方アクリル系繊維を主体として通常の手段で織物を構
成した場合、寸法安定性に劣りプレス、洗たく、ドライ
クリーニングなどにより大きく収縮する。

この発明の衣服用芯地を製造する場合は、収縮率を極力
小さくすると同時に前記した熱賦形性率をより高めるた
めに仕上げ加工時に極力張力を与えないようにする必要
がある。

第４図は、加工時の張力と残留収縮率の関係を示すグラ
フであり、仕上げ加工機はとくに限定しないが布はくに
かかる張力が第４図に示すように染色仕上げＡのみを必
要とする一般芯地の場合は６■／ｄ以下、接着加工Ｂを
必要とする接着芯地の場合ぱ２ｍｇ／ｄ以下であること
が望ましい。

この杢発明の芯地は若干の設計変更により一般の芯地と
しても使用できるし、片面に適宜接着剤を点状（ドット
加工）もしくはスプレーした接着芯地としても使用でき
る。

この発明の芯地は、前記のような構成を有するので、第
２表に示すように従来の毛芯と同じ位熱賦形性率が高く
、しかもそのうち、前記の伸び分Δｔ１ だけでなく
縮み分Δｔ２ も従来の合繊芯より大きいことがわか
る。

また、それによってつくった衣服はシルエットも思いど
おり創出されていることがわかった。

一方たて、よこ糸ともポリエステル系繊維使いの芯地と
同様寸法安定性の面でも優れ、プレス、洗たくなどによ
っても表地の波うち、形くずれなどみられなかった。

以丁にこの発明の実施例を、その製造方法とともに記載
する。

実施例 １ たて糸１．５ｄ×５１ｍｍのアクリル繊維からなる３０
番手の紡績糸とよこ糸１− ５ ｄ× ４ ４ｍｍのポ
リエステル繊維からなる１６番手の紡績糸を用い、織組
織を４枚朱子（トルコ朱子）とし織密度をたて：２８本
／ｃｍ ，よこ：１２本／ｃｍに設定した交織織物を製
織した。

この生機を次のような条件で仕上げ加工した。

すなわち、のり抜き、精練は低張力型液流染色機（１ｍ
ｇ／ｄ）で６０℃×２０ｍｉｎ処理し、水洗、乾燥後、
オーバーフイード率を５％に設定し、１６０〜１８０℃
で仕上げセットした。

さらにこの布はくを接着芯地にするためピンテンター型
の接着加工機（２■／ｄ ）を用いポリアミド樹脂を点
状に配置し接着芯地を作成した。

得られた接着芯地を第２表（注）に示した方法で評価し
たところ第３表に示すように優れた結果を示した。

実施例 ２ たて糸２ｄＸ５１ｍｍのアクリル繊維からなる３０番手
の紡績糸とよこ糸１．５ｄ×４４ｍｍのポリエステル繊
維からなる２０番手の紡績糸を用い、織組織を４枚朱子
とし、織密度をたて： ２ ６本／ｃｍ、よこ：１２本
／ｃｍに設定し、本織織物を製織した。

次に、糊抜き、精練の加工を行なったのち、たて方向の
オーバーフイード率を５％に設定して、１６０〜１８０
℃で仕上げセットした。

この布帛を接着芯地にするため、ポリアミド系樹脂をた
て：２８ケ／ｃｍ．よこ５．６ケ／ｃｍの密度で点状に
配置して接着芯地を作製した。

得られた接着芯地を評価したところ第３表に示すように
熱賦型性率、各収縮率共に優れた結果を示した。

（参考例） 次に参考として本実施例２を同様の設計条件、仕上げ加
工条件で単にたて糸のアクリル繊維の混率を変更した芯
地を作成したところ、アクリル繊維の混率が高いほど熱
賦形性が優れ、アクリル繊維が３０％未満のものは不発
明の目的である熱賦形性率４％以上の芯地を得ることは
できなかった。

たて糸の混紡率をアクリル繊維２０％とポリエステル繊
維８０％とし前記した条件で作成した芯地を第３表に示
す。

【図面の簡単な説明】

第１図は、衣服の身ごろ芯の平面図、第２図および第３
図は、長方形の芯地サンプルをス％ームアイロンで変形
した状態を示す平面図、第４図は、加工時の張力と残留
収縮率との関％を示すグラフである。 １ ， ｌ／， １１１ ：たて糸、２：よこ糸。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 衣服のたて方向にアクリル系繊維が３０％以上混在
   した糸を使用し、よこ方向にポリエステル系繊維を主体
   とした糸を使用した織物からなる衣服用芯地。