JPH1193067A - 温感効果を呈する中空繊維 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、繊維に温感剤を付与する場合の問
題点を解決し、優れた温感効果を有し、その洗濯耐久性
および持続性にも優れ、さらに温感効果付与により風合
が損なわれることなく、これらの全てを満足する中空繊
維を提案することにある。 【解決手段】 本発明は、繊維表面から中空部へ連通す
る連通孔が散在する中空繊維の中空部に、下記一般式
（１）で表される温感剤を含有する水不溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルが充填されている、温感効果を
呈する中空繊維である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は温感効果を呈する中
空繊維に関し、さらに詳細には選択された温感剤が水不
溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルに含有された状
態で中空繊維の中空部に充填されており、そのことによ
って優れた温感効果を呈すると共に良好な風合を可能に
し、それら効果の洗濯耐久性・持続性に優れた中空繊維
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から経験的に唐辛子を足袋や靴に入
れると防寒効果があり、霜焼を防ぐことができるとして
よく知られている。すなわち、唐辛子の主成分であるカ
プサイシンが口腔内で辛味作用を呈するだけでなく、皮
膚や粘膜に温感を与えることが知られている。

【０００３】また、特公昭６１−９２９３号公報には、
かかるカプサイシン類似の辛味作用と温感作用を呈する
化合物として、バニリルアルコール誘導体が記載されて
いる。

【０００４】さらに前記のような温感剤を繊維に加工す
る試みとして、特開平４−１８５７７０号公報に記載さ
れているように、温感剤を添加した硬タンパク質水溶液
に繊維品類を浸漬した後、さらにタンニン溶液に浸漬し
て繊維品類を処理する方法や、特開平７−１７３７７３
号公報に開示されているように水溶性の捺染用糊料、温
感剤、および単分子化処理水の混合物を基布の表面に捺
染処理して得られる温感加工布が提案されている。

【０００５】しかしながら、特開平４−１８５７７０号
公報に記載された方法によって得られる繊維品類におい
ては、硬タンパク質中の温感剤が繊維の表面に付着し、
物理的に保持されているにすぎず、温感剤が揮散や洗濯
によって容易に失われるためその洗濯耐久性や持続性に
劣り、さらに風合変化が大きく到底実用に耐えるもので
はない。

【０００６】また、特開平７−１７３７７３号公報に開
示された加工布では、捺染処理工程において行なうコー
ティング後の高温処理（実施例では１５０℃で２分間）
によって該温感剤が容易に揮散逸失してしまい温感効果
の発現のための有効濃度を維持するのが最初から困難で
あるのみならず、この方法においても温感剤は基布の表
面のみに、捺染用糊料中に分散した状態で塗着されてい
るにすぎないため、洗濯耐久性や持続性が不充分であり
到底満足できるものではない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題
点を解決し、優れた温感効果を有し、その洗濯耐久性お
よび持続性にも優れ、さらに温感効果付与処理により風
合が損なわれることなく、これらの全てを満足する中空
繊維を提案することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、中空繊維の中空部に特
定の構造を有する温感剤を含有する水不溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルを充填させれば良いことを見出
し本発明を完成するに至った。

【０００９】即ち、本発明は、繊維表面から中空部へ連
通する連通孔が散在する中空繊維の中空部に、下記一般
式（１）で表される温感剤を含有する水不溶性ポリオキ
シエチレン系ポリエーテルが充填されていることを特徴
とする温感効果を呈する中空繊維である。

【００１０】

【化２】

【００１１】

【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本
発明の中空繊維とは、レーヨン、アセテート等の化学繊
維用繊維素およびポリエステル、ナイロン等の合成繊維
用ポリマーからなる中空繊維を言い、なかでもポリエス
テル中空繊維が特に好ましく例示される。

【００１２】また、ここで言うポリエステルとは、テレ
フタル酸を主たる酸成分とし、炭素原子数２〜６のアル
キレングリコール、即ち、エチレングリコール、トリメ
チレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタ
メチレングリコール、ヘキサメチレングリコールから、
好ましくは、エチレングリコール及びテトラメチレング
リコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールを、
特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール
成分とするポリエステルが例示される。

【００１３】また、該テレフタル酸成分の一部を他の二
官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであっ
てもよく、及び／又はグリコール成分の一部を前記グリ
コール以外のジオール成分で置き換えたポリエステルで
あってもよい。

【００１４】ここで使用されるテレフタル酸以外の二官
能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフ
タレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェ
ノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、
１，４−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂
肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができ
る。また、前記グリコール以外のジオール化合物として
は、例えば、シクロヘキサン−１，４−ジメタノール，
ネオペンチルグリコール、ビスフェノールＡ、ビスフェ
ノールＳの如き芳香族、脂肪族、脂環族のジオール化合
物をあげることができる。

【００１５】前記ポリエステルは、任意の方法によって
合成したものでよい。例えば、ポリエチレンテレフタレ
ートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレ
ングリコールとを、直接、エステル化反応させるか、テ
レフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸の低級アルキル
エステルとエチレングリコールとをエステル交換反応さ
せるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを
反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステル
および／またはその低重合体を生成させる第１段階の反
応と、該第１段階の反応生成物を減圧下に加熱して所望
の重合度となるまで重縮合反応させる第２段階の反応に
よって製造することができる。

【００１６】なお、前記ポリエステルには艶消剤、紫外
線吸収剤、酸化防止剤等が含有されていてもよく、こう
することは耐光性等の染色堅牢度の面からむしろ好まし
いことである。その他、必要に応じて触媒、安定剤、着
色防止剤、難燃剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、耐熱剤、
着色剤、無機粒子等の添加剤が含有されていてもよい。

【００１７】本発明に使用する中空繊維は、公知の方法
によって製造することができ、例えば、実公平２−４３
８７９号公報に記載の方法等が任意に採用できる。

【００１８】次に、該中空繊維に繊維表面から中空部へ
連通する連通孔を形成させる方法としては、例えば、ポ
リエステル中空繊維の場合には、特公昭６１−６０１８
８号公報、特公昭６１−３１２３１号公報等に記載され
た如き、有機スルホン酸金属塩を添加配合せしめたポリ
エステル中空繊維をアルカリ減量処理することにより繊
維表面から中空部まで連通した微細孔を形成させる方法
を適宜採用することができる。

【００１９】さらに、中空率が２５％以上の高中空率を
有する中空繊維をアルカリ減量処理すれば、前記のよう
な有機スルホン酸金属塩を使用しなくても、繊維の長手
方向に沿った低配向部及び／又は変形歪集中部の除去痕
として連通孔を形成することができる（特開平７−２６
４６６号公報参照）。

【００２０】本発明の中空繊維としては、前記のような
繊維表面から中空部にまで達する連通孔を有する中空繊
維であればよく、その際に該連通孔の大きさや数は特に
限定されるものではないが、連通孔の大きさが中空部に
充填される水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテル
の絶乾状態における非膨潤状態の大きさよりも小さいこ
とが洗濯耐久性等の性能面から好ましい。

【００２１】本発明で言う水不溶性ポリオキシエチレン
系ポリエーテルとしては、本来的に水不溶性のポリオキ
シエチレン系ポリエーテルを用いることもできるが、中
空繊維の中空部への充填性の面から、水溶性のポリオキ
シエチレン系ポリエーテルを中空部に充填した後に適当
な処理を施すことによって変質させ水不溶化せしめたも
のを用いることがより好ましい。

【００２２】このような水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルとしては、下記一般式（２）で示すポリオキ
シエチレン系ポリエーテルが好ましく例示される。 Ｚ［（Ｒ¹Ｏ）_lＲ²］_k （２）

【００２３】一般式（２）において、Ｚは１〜６の活性
水素を有する分子量３００以下の有機化合物残基であ
り、具体的には、メタノール、プロパノール、ブタノー
ル、フェノール、エチレングリコール、ビスフェノール
Ａ、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ブタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ト
リメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ジグリ
セリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のヒド
ロキシル基含有化合物の残基、およびエチレンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等
の１級および２級アミン類の残基等を挙げることができ
る。なかでも、ヒドロキシル基含有化合物が好ましい。

【００２４】Ｒ¹は、エチレン基を主体とし、該ポリオ
キシエチレン系ポリエーテル｛一般式（２）｝が水溶性
である範囲内で一部がプロピレン基やブチレン基等の他
のアルキレン基であってもよく、Ｒ²はアクリロイル基
またはメタクリロイル基であり、一部は水素原子または
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級ア
ルキル基であってもよい。

【００２５】ｋは、Ｚの元になる有機化合物が有する活
性水素原子数に対応する１〜６の整数である。また、ｌ
は正の整数であり、分子間または分子内で同一であって
も異なってもよい。ｌの値があまりに大きくなり過ぎる
と水溶液とした時の粘度が高くなって、中空部への浸透
が困難になる場合もあるので、ｋ×ｌ値が８０以下であ
るのが好ましい。

【００２６】このような水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルの好ましい具体例としては、ポリエチレング
リコール（平均分子量：４００）ジ（メタ）アクリレー
ト、ポリエチレングリコール（平均分子量：６００）ジ
（メタ）アクリレート、ポリエチレングリコール（平均
分子量：１０００）ジ（メタ）アクリレート、メトキシ
ポリエチレングリコール（平均分子量：１３２０）モノ
（メタ）アクリレート、ビスフェノールＡエチレンオキ
サイド３０モル付加物のジ（メタ）アクリレート、グリ
セリンエチレンオキサイド付加物のジ（メタ）アクリレ
ート、グリセリンエチレンオキサイド付加物のトリ（メ
タ）アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオ
キサイド付加物のジ（メタ）アクリレート、トリメチロ
ールプロパンエチレンオキサイド付加物のトリ（メタ）
アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物
のジ（メタ）アクリレート、ソルビトールエチレンオキ
サイド付加物のジ（メタ）アクリレート、ソルビトール
エチレンオキサイド付加物のトリ（メタ）アクリレー
ト、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のテトラ
（メタ）アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイ
ド付加物のペンタ（メタ）アクリレートおよびソルビト
ールエチレンオキサイド付加物のヘキサ（メタ）アクリ
レート等を挙げることができる。このような水溶性ポリ
オキシエチレン系ポリエーテルは１種のみを単独で使用
してもよく、または２種以上を併用してもよい。

【００２７】このような水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルの水不溶化処理、即ち、該水溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルの架橋反応処理の方法として
は、（１）増感剤の存在下紫外線を照射する方法、
（２）ラジカル重合開始剤の存在下に加熱処理する方
法、（３）例えば、０．０１Ｍｒａｄ〜１００Ｍｒａｄ
の如き線量で電子線を照射する方法等を任意に採用すれ
ばよい。なかでも（２）のラジカル重合開始剤の存在下
に加熱処理する方法がより好ましい。

【００２８】かかるラジカル開始剤としては、例えば、
過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過
酸化ベンゾイル等の過酸化物、硫酸第二セリウムアンモ
ニウム、硝酸第二セリウムアンモニウム等のセリウムア
ンモニウム塩、或いはα，α−アゾビスイソブチロニト
リル等が挙げられる。

【００２９】また、該水不溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルを前記中空繊維の中空部内に充填させる方法
としては、以下の方法を好ましく例示することができ
る。 前記中空繊維を、好ましくは織編物等の繊維構造物の
形態で用い（ｉ）前記水溶性ポリオキシエチレン系ポリ
エーテルおよび（ii）ラジカル重合開始剤を含有する溶
液中に浸漬し、該中空繊維の中空部の空気と溶液とを置
換し、次いで加熱することによって該水溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルの重合・架橋反応を生起せしめ
て水不溶化する方法。

【００３０】前記中空繊維を、好ましくは織編物等の
繊維構造物の形態で用い、（ｉ）上記水溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルおよび（ii）ラジカル重合開始
剤を含有する溶液中に浸漬し、次いでマングルなどで圧
絞した後、ポリ塩化ビニリデンフィルム等のポリマーフ
ィルムでシールして放置することによって該中空繊維の
中空部の空気と溶液とを置換し、続いて加熱することに
よって該水溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルの重
合・架橋反応を生起せしめて水不溶化する方法。

【００３１】前記中空繊維を、好ましくは織編物等の
繊維構造物の形態で用い、密閉容器中に入れて減圧し、
該中空繊維の中空部の空気を除いた後、（ｉ）前記水溶
性ポリオキシエチレン系ポリエーテルおよび（ii）ラジ
カル重合開始剤を含有する溶液を該容器に注入して中空
部内に充填させ、次いで加熱することによって該水溶性
ポリオキシエチレン系ポリエーテルの重合・架橋反応を
生起せしめて水不溶化する方法等が例示される。

【００３２】ここで、前記溶液の溶剤としては前記成分
を溶解できるものであればよく、例えば、水および／ま
たは水に可溶な有機溶剤を挙げることができる。水に可
溶な有機溶剤としてはイソプロピルアルコールのような
アルコール、メチルエチルケトンのようなケトン、テト
ラヒドロフラン、Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド、ジメ
チルスルフォキシド、Ｎ，Ｎ−ジメチルアセトアミド、
Ｎ−メチル−２−ピロリドン等が挙げられる。なかでも
水が特に好ましい。

【００３３】本発明の繊維にあっては、該水不溶性ポリ
オキシエチレン系ポリエーテルが中空繊維の中空部のみ
に存在し、中空繊維の外表面や繊維間空隙には実質的に
存在しないことが、最終的に得られる織編物製品の本来
の風合を損なうことなく優れた耐久保湿性等を付与する
上で好ましい。

【００３４】かかる態様を実現する方法としては、例え
ば、（ａ）（ｉ）前記水溶性ポリオキシエチレン系ポリ
エーテルおよび（ii）ラジカル重合開始剤を含む溶液を
中空部に充填した後、該水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルの重合・架橋反応を行うのに先立って該中空
繊維の外表面にヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチル
エーテルの如き重合（架橋）禁止剤を付与する方法や、
（ｂ）（ｉ）前記水溶性ポリオキシエチレン系ポリエー
テルおよび（ii）ラジカル重合開始剤を含む溶液を中空
部に充填した後、温度５０〜１３０℃、好ましくは７０
〜１００℃の湯浴等の溶剤中で処理して中空部の水溶性
ポリオキシエチレン系ポリエーテルを重合・架橋させる
と同時に中空繊維の外表面や繊維間空隙に存在する水溶
性ポリオキシエチレン系ポリエーテルを洗浄除去する方
法や、（ｃ）（ｉ）前記水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルおよび（ii）ラジカル重合開始剤を含む溶液
を中空部に充填した後、水溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルの重合・架橋反応を行うのに先立って該中空
繊維を室温の水等の溶剤で洗浄して中空繊維の外表面や
繊維間空隙に存在する水溶性ポリオキシエチレン系ポリ
エヘテルを除去する方法等が例示される。

【００３５】かかる水不溶性ポリオキシエチレン系ポリ
エーテルの、中空繊維の中空部内における充填量は、絶
乾状態における非膨潤状態で１重量％以上（基体中空繊
維基準）であることが温感効果の点から好ましく、５重
量％以上であるものがより好ましい。この充填量があま
りに多いと該水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテ
ルの吸水膨潤時に中空繊維の割裂等が発生する傾向があ
るので、充填量は８０重量％以下であることが好まし
い。

【００３６】次に本発明の中空繊維においては、前記の
水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテル中に下記一
般式（１）で表される温感剤が含有されていることが重
要である。

【００３７】

【化３】

【００３８】なお、前記一般式（１）中、ＸはＯまたは
ＮＨＣＯであり、Ｙは水素原子またはＯＣＨ₃であり、
Ｙとしては温感効果が大きい点でＯＣＨ₃が好ましい。
Ｒは炭素原子数１〜１０の炭化水素基であり、炭化水素
基としてはアルキル基、シクロアルキル基またはアルケ
ニル基が好ましい。

【００３９】かかる化合物の好ましい具体例としては、
バニリルブチルエーテル、バニリルアミルエーテル、バ
ニリルイソアミルエーテル、バニリルプロピルエーテ
ル、バニリルヘキシルエーテル、バニリルシクルヘキシ
ルエーテル、バニリルシクロペンチルエーテル、バニリ
ルアリルエーテル、バニリルエチルエーテル、バニリル
メチルエーテル、ｐ−ヒドロキシベンジルメチルエーテ
ル、ｐ−ヒドロキシベンジルエチルエーテル、バニリル
ノナアミド、カプサイシン等を挙げることができる。な
かでも、バニリルブチルエーテル、バニリルノナアミ
ド、カプサイシンが特に好ましい。また、前記の温感剤
は１種のみを単独で使用しても良く、又は２種以上を併
用しても良い。

【００４０】かかる温感剤の中空繊維中の含有量は、中
空繊維に対して０．１〜２．０重量％の範囲が好まし
く、なかでも０．２〜１．０重量％の範囲が特に好まし
い。この含有量が０．１重量％未満では温感効果が不充
分となり、逆に含有量が多いほど温感効果及びその洗濯
耐久性・持続性が大きくなるが、２．０重量％を超える
と最早温感効果は著しい増大を示さず、かえって着用の
際に皮膚の刺激感が発生するようになるので好ましくな
い。

【００４１】該温感剤を前記の水不溶性ポリオキシエチ
レン系ポリエーテル中に含有せしめるには、例えば、水
不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルを充填せしめ
た中空部を有する中空繊維を乾燥後、温感剤を含む水溶
液、水乳化液、若しくは水分散液に室温〜沸騰温度の任
意の温度下で接触させて該温感剤含有液を該水不溶性ポ
リオキシエチレン系ポリエーテル中に浸透させた後、乾
燥する方法や、該中空繊維の中空部に水不溶性ポリオキ
シエチレン系ポリエーテルを充填する際に該充填液の中
に前記温感剤を溶解、乳化もしくは分散させ、以後同様
に行う方法が採用される。なかでも、後者の方法のよう
に充填液の中に前記温感剤を溶解、乳化もしくは分散さ
せるものが温感剤の耐久性がより優れる点で好ましい。

【００４２】なお、本発明において使用する該水不溶性
ポリオキシエチレン系ポリエーテルには前記温感剤以外
に、必要に応じて香料、着色剤、安定剤、酸化防止剤、
紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。

【００４３】

【発明の作用】本発明の中空繊維は中空部への連通孔が
散在する中空繊維であって、該中空繊維の中空部には温
感剤を含有する特定の水不溶性ポリオキシエチレン系ポ
リエーテルが存在おり、このような構成によって風合い
を損ねることなく、温感剤の徐放性およびその洗濯耐久
性のすべてを満足するものであり、このような本発明の
中空繊維を使用することにより温感効果の極めて優れた
繊維構造物乃至繊維製品を提供することができる。

【００４４】特に、前記一般式（１）で表される温感剤
を水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルに含有さ
せ、さらに該水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテ
ルを中空繊維の中空部に充填させることにより温感剤の
徐放性と洗濯耐久性向上という二律背反的な作用を同時
に満足させたことは驚くべきことであり、その作用機構
については未だ定かではないが、温感剤が水不溶性ポリ
オキシエチレン系ポリエーテルと中空繊維の中空壁とに
よって二重に保護されているため洗濯により脱落するこ
となく優れた洗濯耐久性を奏すると同時に、一方、水不
溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルの適度な吸放湿
乃至吸放水作用に伴って該水不溶性ポリオキシエチレン
系エーテル中に捕捉された温感剤が徐々に繊維表面方向
に移行できるため優れた徐放性を発現できると推定され
る。

【００４５】

【発明の効果】本発明の中空繊維を使用した繊維製品
は、優れた温感効果及びその洗濯耐久性・持続性に加え
て良好な風合を有するため、そのファッション性を損な
うことなく寒冷地用や厳冬用の肌着、ストッキング、ソ
ックス、手袋、腹巻き、ナイティ、サポーター等に極め
て有用である。また、自己免疫症関連のリューマチ、レ
イノー病（手足に血が流れなくなり、酷いときは壊
死）、更年期障害による手足の冷え性等に対する医療効
果も期待される。

【００４６】

【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定される
ものではない。また、実施例中の部および％はそれぞれ
重量部および重量％を示し、温感効果等は以下の方法で
測定した。

【００４７】（１）温感効果試験法 温湿度を２８℃×６０％ＲＨに調整した人工気象室内に
おいて、丸編地からなる試験布を腕（手と肘との間の部
分）に巻き付け、１０分間にわたって腕表層部の血流量
の変化を測定した（プローブは該腕内側にセットす
る）。その前後にサーモグラフィー解析を行い、腕表面
温度の変化を測定した。同時に、官能試験により腕の試
験布巻き付け部の体感温感を評価した。

【００４８】（２）血流測定法 レーザー血流計（株式会社アドバンス製）ＡＬＦ２１を
用いて組織血流量を測定した。

【００４９】（３）サーモグラフィー サーマルビデオシステム ＴＶＳ−８０００シリーズ
（日本アビオニクス株式会社製）を用いて赤外線熱画像
解析法により腕表面温度の微小変化を測定した。

【００５０】（４）温感剤の含有量の定量分析法 試料から温感剤を温度２４０℃×６分間の条件下に熱脱
着した後、−５０℃の温度でコールドトラップした後、
分析装置 ＧＣ−ＭＳ（横河アナリティカルシステムズ
株式会社製）を用いてそれぞれの温感剤を定量分析し
た。

【００５１】（５）洗濯耐久性 ＪＩＳ Ｌ−１０１８−７７ ６．３６ Ｈ法に準じ、
洗濯は１０回繰り返した後に評価した。

【００５２】［実施例１および比較例１］円形スリット
の４個所が閉じた円弧状の開口部をもつ紡糸孔を穿設し
た紡糸口金を用いて溶融紡糸を行い、固有粘度が０．６
２のポリエチレンテレフタレート（二酸化チタン：０．
０７％含有）からなる中空繊維の未延伸糸を常法に従っ
て延伸し、３５デニール／１２フィラメントで中空率４
０％の丸中空マルチフィラメント糸を得た。この丸中空
マルチフィラメント糸を用いて２８ゲージのトリコット
ハーフ編地を編成し、常法に従って精錬した後、水酸化
ナトリウム５０ｇ／ｌの水溶液中で温度１０５℃にて１
０分間処理して減量率２０％の編地となし、次いで下記
の条件で染色した（未加工布）。 Ｍｉｋａｗｈｉｔｅ ＫＴＮ ｃｏｎｃ（日本化薬
製）：１％ｏｗｆ 酢酸：０．３ｇ／ｌ Ｄｉｓｐｅｒ ＶＧ（明成化学工業製）：０．５ｇ／ｌ 染色温度および時間： １３０℃×３０分 染色後、ソーピングを行い、次いで温度１００℃で５分
間乾燥した。得られた編地からマルチフィラメント糸を
取り出し、その表面を走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、繊維軸方向の長さ１００μｍ当たり、幅１．０〜
１．５μｍ、長さ５０〜１５０μｍの連通孔（スリッ
ト）が少なくとも１個存在していた。

【００５３】次いで該編地を密閉容器内に入れ、真空ポ
ンプを用いて容器内を０．１Ｔｏｒｒまで減圧し、続い
てこの容器内に下記の組成の水乳化液を注入した。 ポリエチレングリコール（平均分子量１０００）ジメタ
クリレート：３０部 バニリルブチルエーテル／ノニオン乳化剤／水（28.5/
1.5/70）乳化液：１４部 過硫酸カリウム：０．５部 水：５５．５部 該水乳化液を注入後、真空ポンプを用いてさらに減圧状
態を１０分間維持した。この時の容器内の真空度は０．
２Ｔｏｒｒであった。

【００５４】次いで、該編地を温度１００℃の熱湯中に
入れて揺動させながら３分間浸漬し、引き続き風乾した
後、温度１２０℃で１分間の熱処理を施し、次いで温度
１６０℃で１分間のファイナルセットを行った。かかる
一連の充填処理による編地の重量増加、即ち充填率は
３．０重量％（対未充填の中空繊維基準）であり、この
編地を走査型電子顕微鏡で観察した結果、固形分が中空
繊維の中空部にのみ存在し、繊維外表面、繊維間空隙、
組織間には全く付着していなかった。このため、得られ
た布帛は未加工品と同等にソフトな風合、タッチを呈し
た（加工布）。

【００５５】加工布（実施例１）と未加工布（比較例
１）について、洗濯０回および洗濯１０回後の、バニリ
ルブチルエーテルの含有量、温感効果（体感温感、血流
量、サーモグラフィー）を評価した。結果は表１に示す
通りであった。

【００５６】［実施例２］実施例１で温感剤として用い
たバニリルブチルエーテルに代えてバニリルノナアミド
を使用する以外は実施例１と同様に行った（充填率：
７．７％）。評価結果を表１に併せて示す。

【００５７】［実施例３］実施例１で温感剤として用い
たバニリルブチルエーテルに代えてカプサイシンを使用
する以外は実施例１と同様に行った（充填率：６．２
％）。評価結果を表１に併せて示す。

【００５８】［実施例４］実施例１において行った真空
処理とそれに引き続く１００℃熱湯中処理との間に１０
分間のスチームキユア処理を追加する以外は実施例１と
同様の工程により行った（充填・付着率：１２％）。評
価結果を表１に併せて示す。電子顕微鏡観察の結果、中
空部内と繊維表面との両方に固形分が存在していること
を認めた。

【００５９】［実施例５］実施例１で水溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルとして使用したポリエチレング
リコール（平均分子量１０００）ジメタクリレートに代
えてポリエチレングリコール（平均分子量６００）ジメ
タクリレートを用いる以外は実施例１と同様に行った
（充填率：３．０％）。評価結果を表１に併せて示す。

【００６０】［実施例６］実施例１で水溶性ポリオキシ
エチレン系ポリエーテルとして使用したポリエチレング
リコール（平均分子量１０００）ジメタクリレートに代
えてソルビトールエチレンオキサイド３０モル付加物の
テトラアクリレートを用いる以外は実施例１と同様に行
った（充填率：４．０％）。評価結果を表１に併せて示
す。

【００６１】［比較例２］実施例１で用いたアルカリ減
量・染色後の未加工布を下記の組成の水乳化液中（浴比
＝１：５０）に浸漬し、温度９８℃で６０分間の液中加
熱処理を行った。 バニリルブチルエーテル： ２８．５％ｏｗｆ ノニオン乳化剤： １．５％ｏｗｆ 次いで、常法に従って、ソーピングを行った後、温度１
６０℃で１分間のファイナルセットを施して処理布を得
た。評価結果を表１に併せて示す。

【００６２】

【表１】

【００６３】表１に示すように温感剤を直接付与したも
の（比較例２）では、得られた処理布には温感剤を残留
させることができなかった。また、試験的に比較例２に
おいて、ファイナルセットの温度を１２０℃まで下げて
１分間のファイナルセットを行なったものは、繊維中の
バニリルブチルエーテルの含有量を大きくすることがで
きたが、温感効果は小さく、且つ、通常のポリエステル
繊維と比較してファイナルセットの温度が十分でないた
めに風合が不良で到底、通常の用途に使用できるもので
はなかった。

【００６４】一方、実施例の処理布では、バニリルブチ
ルエーテルの含有量が少量でも顕著に、しかも大きな温
感効果とその耐久性の効果が得られるだけでなく、ファ
イナルセット等の高温の熱処理を行ってもバニリルブチ
ルエーテルがほとんど揮散しないという特異的に優れた
効果が得られた。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 繊維表面から中空部へ連通する連通孔が
   散在する中空繊維の中空部に、下記一般式（１）で表さ
   れる温感剤を含有する水不溶性ポリオキシエチレン系ポ
   リエーテルが充填されていることを特徴とする温感効果
   を呈する中空繊維。 【化１】
2. 【請求項２】 温感剤がバニリルブチルエーテル、バニ
   リルノナアミドおよびカプサイシンよりなる群から選ば
   れた少なくとも一種の温感剤である請求項１記載の温感
   効果を呈する中空繊維。
3. 【請求項３】 水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエー
   テルが下記一般式（２）で表される水溶性ポリオキシエ
   チレン系ポリエーテルである請求項１又は２記載の温感
   効果を呈する中空繊維。 Ｚ［（Ｒ¹Ｏ）_lＲ²］_k （２） （式中、Ｚは１〜６の活性水素を有する分子量３００以
   下の有機化合物残基、Ｒ¹はエチレン基を主体とするア
   ルキレン基、Ｒ²はアクリロイル基、又はメタクリロイ
   ル基であり、ｌは正の整数、ｋは１〜６の整数を示す）
4. 【請求項４】 水溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテ
   ルがポリエチレングリコールジ（メタ）アクリレート、
   グリセリンエチレンオキサイド付加物のジ（メタ）アク
   リレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物のトリ
   （メタ）アクリレート、トリメチロールプロパンエチレ
   ンオキサイド付加物のジ（メタ）アクリレート、トリメ
   チロールプロパンエチレンオキサイド付加物のトリ（メ
   タ）アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付
   加物のジ（メタ）アクリレート、ソルビトールエチレン
   オキサイド付加物のジ（メタ）アクリレート、ソルビト
   ールエチレンオキサイド付加物のトリ（メタ）アクリレ
   ート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のテトラ
   （メタ）アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイ
   ド付加物のペンタ（メタ）アクリレートおよびソルビト
   ールエチレンオキサイド付加物のヘキサ（メタ）アクリ
   レートよりなる群から選ばれた少なくとも一種の水溶性
   ポリオキシエチレン系ポリエーテルである請求項３記載
   の温感効果を呈する中空繊維。