JPH1192228A - 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法

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JPH1192228A
JPH1192228A JP9251059A JP25105997A JPH1192228A JP H1192228 A JPH1192228 A JP H1192228A JP 9251059 A JP9251059 A JP 9251059A JP 25105997 A JP25105997 A JP 25105997A JP H1192228 A JPH1192228 A JP H1192228A
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JP
Japan
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aln
weight
sintering
sintered body
thermal conductivity
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JP9251059A
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English (en)
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Mitsuo Kasori
光男 加曽利
Fumio Ueno
文雄 上野
Hiroyasu Sumino
裕康 角野
Akihiro Horiguchi
昭宏 堀口
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高熱伝導性を維持しつつ、高い靭性等の機械
的強度を有するAlN焼結体を提供することを目的とす
る。 【解決手段】 平均粒径3μm以下の窒化アルミニウム
粒子からなる窒化アルミニウムマトリックスに、一辺の
長さが5μm以上の窒化アルミニウム粗粒子相および/
または27R型AlONポリタイポイド(Al93
7 )相が30重量%未満混在した微構造を有し、熱伝導
率が110W/mK以上であることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、窒化アルミニウム
焼結体(AlN焼結体)およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】電子回路は、主にICなどの素子、基板
および配線等から構成されている。近年、電子回路の高
速化、小型化、大出力化に伴って、前記素子からの発熱
量が無視できない程大きな値になっている。こうのよう
な電子回路に対応して従来のアルミナセラミック基板に
代わって高熱伝導性のAlNセラミックや低誘電率のガ
ラス−セラミック基板が開発されている。
【0003】AlNセラミック基板は、熱伝導性が高
く、放熱性が優れているものの、誘電率が比較的高く、
かつ焼結温度が高い。したがって、導電成分がタングス
テンやモリブデンのような比較的低導電性の高融点金属
に限られるため、基板の低誘電化および配線の低抵抗化
が望まれている。
【0004】AlNセラミックの熱膨張係数は、4.5
×10-6と従来の基板であるアルミナセラミックに比べ
て小さいため、配線形成用のメタライズの際に導電成分
と熱膨張差によりセラミックに亀裂や割れが生じる。こ
のため、前記基板を有する電子回路を組み込んだの装置
の信頼性が著しく低下する。
【0005】一方、ガラス−セラミック基板は誘電率が
低く、焼結温度も低いために、Au、Ag、Cuのよう
な低融点の高導電性金属を配線材料として使用すること
ができる。しかしながら、熱伝導伝率が低く、かつ機械
的強度が低いという問題がある。
【0006】前述した素材の基板の他に、近年、窒化珪
素(Si34 )セラミックを電子回路の基板として用
いることが検討されている。窒化珪素セラミックは、曲
げ強度、靭性等の機械的特性に優れている。特に、10
00℃以上の高温下でも強度低下が少なく、耐食性に優
れているため、ガスタービン用部材、エンジン部材など
の高温高強度材料として脚光を浴びている。窒化珪素セ
ラミックは、誘電率が比較的低く、高熱伝導化も期待で
きるにも拘らず、実際に得られるセラミックの熱伝導率
が低いために電子回路の基板として使用する試みがなさ
れていない。
【0007】ただし、特開平6−135771号公報に
は熱伝導率が〜120W/mKの窒化珪素セラミックが
開示されている。しかしながら、その後、窒化珪素セラ
ミックの熱伝導率の向上は報告されておらず、前記熱伝
導率の値が実際上、限界であると考えられている。ま
た、窒化珪素セラミックの熱伝導率を高めるには、高温
かつ長時間の焼結を行って粒成長させるために、窒化珪
素セラミック本来の高強度、高靭性が損なわれる恐れが
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高熱伝導性
を維持しつつ、高い靭性等の機械的強度を有するAlN
焼結体およびこの焼結体を簡単かつ安定的に製造し得る
方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるAlN焼
結体は、平均粒径3μm以下のAlN粒子からなるAl
Nマトリックスに、一辺の長さが5μm以上のAlN粗
粒子相および/または27R型酸窒化アルミニウムポリ
タイポイド[27R型AlONポリタイポイド(Al9
37 )]相が30重量%未満混在した微構造を有
し、熱伝導率が110W/mK以上であることを特徴と
するものである。
【0010】本発明に係わるAlN焼結体の製造方法
は、AlN粉末に焼結助剤と、AlNファイバー、Al
Nウィスカー、および27R型酸窒化アルミニウムポリ
タイポイド[27R型AlONポリタイポイド(Al9
37 )]から選ばれる少なくとも1種の添加物を3
0重量%未満加え、成形した後、1500℃以上、17
00℃未満の温度で焼結することを特徴とするものであ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のAlN焼結体は、平均粒径3μm以下のAlN
粒子からなるAlNマトリックスに、一辺の長さが5μ
m以上のAlN粗粒子相および/または27R型AlO
Nポリタイポイド(Al937 )相が30重量%未
満混在した微構造を有する。また、このAlN焼結体は
熱伝導率が110W/mK以上である。
【0012】前記AlNマトリックスのAlN粒子の平
均粒径を3μm以下とし、かつ前記AlN粗粒子相およ
び/または27R型AlONポリタイポイド相の一辺の
長さを5μm以上にすることによってAlN焼結体の亀
裂発生を抑制して、靭性を向上することが可能になる。
より好ましいAlN粒子の平均粒径は2.6μm以下で
ある。より好ましい前記相の量は、0.5〜20重量%
である。
【0013】本発明に係わるAlN焼結体において、前
記AlNマトリックスの粒界相には以下に説明するよう
に目的等に応じて(a)希土類アルミネート、(b)ア
ルカリ土類アルミネート、(c)アルカリ土類希土類ア
ルミネート、および(d)遷移金属、その窒化物、炭化
物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含有されるこ
とを許容する。
【0014】(1)希土類アルミネート、アルカリ土類
アルミネート、アルカリ土類希土類アルミネート これらの成分は、AlN焼結体の焼結助剤として添加し
た希土類化合物、アルカリ土類化合物が焼結により変化
したものである。希土類アルミネートとしては、例えば
Sc、Y、ランタン族のアルミネート、アルカリ土類ア
ルミネートとしては例えばCa、Ba、Srのアルミネ
ートやCaとYを含むアルミネートを挙げることができ
る。これらの成分は、0.1〜10重量%添加すること
が好ましい。
【0015】(2)遷移金属、その窒化物、炭化物 これらの成分は、AlN焼結体の焼結促進、焼結体の黒
色化および焼結体のカラー調節、さらに焼結ムラや色ム
ラ抑制の作用をなす。遷移金属としては、例えばTi、
Nb、Zr、Ta、W、Mo、Cr、Fe、Co、Ni
等を挙げることができる。特に、前記成分は導電性を有
することが好ましい。導電性を有する遷移金属化合物と
しては、例えばW、Moの金属、Zr、Ti、Nb、T
aの窒化物または炭化物を挙げることができる。これら
の成分の添加量は、1.5重量%以下にすることが好ま
しい。添加量が1.5重量%を越えると、AlN焼結体
の電気特性が低下する恐れがある。
【0016】本発明のAlN焼結体において、前記成分
の他にSiO2 、Si34 、SiC、またはGeO2
のようなIVb族元素の酸化物、窒化物、炭化物、或いは
Al23 、AlF3 、GaF3 のようなIII 族元素の
酸化物もしくはハロゲン化物を1重量%以下の範囲で添
加することを許容する。
【0017】次に、本発明に係わるAlN焼結体の製造
方法を説明する。 (第1工程)まず、AlN粉末に焼結助剤と、AlNフ
ァイバー、AlNウィスカー、および27R型AlON
ポリタイポイドから選ばれる少なくとも1種の添加物を
30重量%未満加え、さらにバインダおよび有機溶剤を
加えて混練して原料を調製した後、成形する。
【0018】前記AlN粉末は、BET法による比表面
積が3.0〜4.0m2 /gであることが好ましい。比
表面積を3.0m2 /g未満のAlN粉末を用いると、
粒度が粗すぎて低温での焼結が困難になる。一方、比表
面積が4.0m2 /gを越えるとAlN粉末を用いる
と、嵩高くなって湿式混合の際に多量の有機溶剤やバイ
ンダを必要としたり、脱バインダの残炭素量が多くなっ
て焼結が困難になる恐れがある。
【0019】前記AlN粉末は、不純物酸素量が0.6
0〜2.20重量%、より好ましくは0.90〜1.8
0重量%である。前記焼結助剤としては、例えば希土類
化合物、アルカリ土類化合物、アルカリ土類希土類化合
物を用いることができる。希土類化合物としては、例え
ばSc、Y、ランタン族の元素の酸化物、炭化物、フッ
化物、硼化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、又はアル
コキシド等を挙げることができる。アルカリ土類化合物
としては、例えばCa、Ba、Srの酸化物、炭化物、
フッ化物、硼化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、又は
アルコキシド等を挙げることができる。これらの焼結助
剤は、0.1〜10重量%添加することが好ましい。前
記焼結助剤の添加量を0.1重量%未満にすると、焼結
助剤としての機能を十分達成することが困難になる。一
方、前記焼結助剤の添加量が10重量%を越えると、A
lN焼結体の表面に析出物が発生したり、焼結時間が短
い場合には熱伝導率が低下したりする恐れがある。
【0020】前記AlNファイバー、AlNウィスカー
は、直径が1〜20μm、より好ましくは2〜15μm
であることが望ましい。前記AlNファイバー等の直径
を1μm未満にすると、焼結後にAlNマトリックスに
同化し、その添加効果が得られなくなる恐れがある。一
方、前記AlNファイバー等の直径が20μmを越える
と常圧焼結に際し緻密化が著しく阻害される恐れがあ
る。
【0021】前記AlNファイバー、AlNウィスカー
は、不純物酸素量が15重量%まで含有することを許容
する。より好ましい不純物酸素量は、12重量%以下で
ある。
【0022】前記27R型AlONポリタイポイドは、
板状結晶を有し、その長径が2〜30μm、より好まし
くは4〜20μmである。前記ポリタイポイドの長径を
2μm未満にすると、焼結後にAlNマトリックスに同
化し、熱伝導率が低下したり、高強度、高靭性のAlN
焼結体を得ることが困難になる。一方、前記ポリタイポ
イドの長径が30μmを越えると常圧焼結に際し緻密化
が著しく阻害される恐れがある。
【0023】前記AlNファイバー、AlNウィスカ
ー、27R型AlONポリタイポイドのほかに前述した
遷移金属、その窒化物、炭化物や燐化合物、アルカリ化
合物のような添加物を加えることを許容する。
【0024】(燐化合物、アルカリ化合物)これらの成
分は、AlN焼結体の焼結促進、さらに焼結ムラや色ム
ラ解消の作用をなす。
【0025】燐酸塩としては、例えばCa(PO4
2 、Ba(PO42 、Sr(PO42 のようなアル
カリ土類燐酸塩;Y2 (PO43 、La2 (PO4
3 、Ce2 (PO43 、Gd2 (PO43 、Yb2
(PO43 のような希土類燐酸塩;Li3 PO4 、N
3 PO4 、K3 PO4 のようなアルカリ金属燐酸塩等
を挙げることができる。燐酸水素塩としては、例えばC
a(H2 PO42 、Ba(H2 PO42 、Sr(H
2 PO42 、CaHPO4 、BaHPO4 、SrHP
4 などのアルカリ土類燐酸水素塩;LiH2 PO4
NaH2 PO4 、KH2 PO4 、Li2 HPO4 、Na
2 HPO4 、K2 HPO4 などのアルカリ金属燐酸水素
塩等が挙げられる。この他の燐酸塩としては、例えば燐
酸アルミニウム[AlPO4 またはAl(PO3
3 ]、燐酸水素アルミニウム[Al2 (HPO43
等が挙げられる。
【0026】アルカリ化合物としては、例えばNa2
3 、NaF、NaCl等のアルカリ金属の酸化物やハ
ロゲン化物、もしくは焼成過程でこれらの化合物に変化
する化合物が挙げられる。
【0027】前記燐化合物、アルカリ化合物は、無水物
換算で0.01〜5.0重量%添加することが好まし
い。前記化合物の添加量を0.01重量%未満にする
と、これら化合物の添加効果である焼結ムラの抑制を十
分に発揮することが困難になる。一方、前記化合物魔添
加量が5.0重量%を越えると色ムラや焼結ムラを抑制
することが困難になる。
【0028】前記燐化合物、アルカリ化合物の他に、B
23 もしくは焼結過程でB23に変化する化合物、
例えばNa247 のようなアルカリ金属のホウ酸塩
等を用いることができる。
【0029】前記成分の他にSiO2 、Si34 、S
iC、またはGeO2 のようなIVb族元素の酸化物、窒
化物、炭化物、或いはAl23 、AlF3 、GaF3
のようなIII 族元素の酸化物もしくはハロゲン化物を1
重量%以下の範囲で添加することを許容する。
【0030】前記バインダとしては、例えばアクリル
系、メタクリル系、PVA系、PVB系等が用いられ
る。これらのバインダの添加量は、使用するAlN粉末
の粒度により異なるが、2〜12重量%、より好ましく
は4〜10重量%にすることが望ましい。
【0031】前記有機溶剤としては、例えばn−ブノー
ルなどのアルコール系、メチルイソブチル、トルエン、
キシレン等を用いることができる。前記成形方法として
は、金型を用いるプレス成形やシート成形を採用するこ
とができる。シート成形法では、AlNと添加物からな
る混合粉体、バインダを溶媒の存在下で十分に混練し、
粉体の解砕、分散を行って所定の粘度のスラリーを調製
する。得られたスラリーをドクターブレート法でシート
化した後、加熱乾燥して溶媒を除去し、グリーンシート
を作製する。
【0032】前記成形後において、必要に応じて冷間等
圧加圧(CIP)を施して成形体の高密度化を行っても
よい。 (第2工程)前記成形体を脱バインダ処理する。この脱
バインダ処理は、非酸化性雰囲気中で最高1000℃以
下に加熱して行われる。非酸化性雰囲気とは、例えば窒
素、アルゴン、これらに水素、炭酸ガスを含む雰囲気を
意味する。ただし、グリーンシート中にタングステン、
モリブデンのような導体金属が含まれない場合には、酸
素を含む雰囲気で脱バインダすることを許容する。この
場合、最高加熱温度は550℃とすることが好ましい。
【0033】(第3工程)前記脱バインダ後のグリーン
シートを非酸化性雰囲気中、1500℃以上、1700
℃未満の温度で焼結することによりAlN焼結体を製造
する。この焼結により、平均粒径が3μm以下のAlN
粒子からなるAlNマトリックスが形成される。
【0034】前記非酸化性雰囲気中での焼結は、例えば
AlN、BN、アルミナ等からなる焼結容器内に前記グ
リーンシートをセットし、窒素、アルゴン、必要に応じ
てこれらに水素、炭酸ガスを一部含む雰囲気とし、カー
ボン、タングステン、モリブデン等からなるヒータで加
熱することが好ましい。
【0035】前記焼結時の圧力は、0.01〜10.0
気圧にすることが好ましい。前記焼結温度を規定したの
は、その温度を1500℃未満にすると、AlN焼結体
を十分に緻密化することが困難になる。一方、焼結温度
を1700℃以上にすると、AlNファイバー、AlN
ウィスカーや27R型AlONポリタイポイドとAlN
粉末との反応が顕著になり、結果としてそれら成分の添
加効果を十分に発揮できなくなるばかりか、熱伝導率も
低下する恐れがある。このような焼結において、最高温
度まで単調に昇温させてもよいが、必要に応じて最高温
度まで段階的に昇温するようにしてもよい。
【0036】前記焼結は、常圧焼結の他に、ホットプレ
スにより焼結することが可能である。ホットプレスは、
5〜150MPa、より好ましくは10〜100MPa
の加圧下で行うことが望ましい。加圧のタイミングは、
緻密化の始まる1300〜1400℃付近から焼結温度
間で等速に行うことが好ましい。また、焼結温度に達し
てから加圧したり、緻密化開始温度より低い温度から加
圧する等、任意に設定することが可能である。
【0037】本発明に係わるAlN焼結体は、平均粒径
3μm以下のAlN粒子からなるAlNマトリックス
に、一辺の長さが5μm以上のAlN粗粒子相および/
または27R型AlONポリタイポイド相が30重量%
未満混在した微構造を有する。このようなAlN焼結体
は、200〜350MPaの4点曲げ強度、3MPa・
0.5 の靭性を有する。本発明のAlN焼結体が優れた
機械的強度および靭性を有するメカニズニは不明であ
る。ただし、AlNマトリックスの殆どが粒界割れを生
じている一方で、AlN粗粒子相および/または27R
型AlONポリタイポイド相のいずれも粒界割れを起こ
していることから、前記相の破壊強度がAlN粒子間の
強度より高いために高靭性化したものであると考えられ
る。
【0038】AlN焼結体のような電気絶縁材料の熱伝
導は、結晶格子の振動を介してなされる。このタイプの
熱伝導では、結晶格子の不完全性があると、熱伝導率は
低下する。これは、格子の不完全性が格子振動の伝幡の
散乱を引き起こすためである。したがって、高熱伝導率
はAlNに固溶する元素を極力少なくすることにより達
成される。例えば、酸素のようなAlN中に固溶する元
素を極力少なくする必要があった。
【0039】本発明は、所定粒径のAlN粒子からなる
AlNマトリックスに、所定寸法のAlN粗粒子相およ
び/または27R型AlONポリタイポイド相を所定量
配合した微構造を有し、かつ1700℃未満での焼結に
より、これら添加物の反応が抑制されるため、110W
/mK以上の高熱伝導性を有する。
【0040】一方、AlN焼結体の製造において高熱伝
導性を維持しつつ高靭性を達成することは従来法では困
難であった。これは、AlN焼結体の微構造を制御する
ことが困難であったことに起因する。例えば、多量の酸
素やSi化合物を混在、添加して焼結することによりS
iAlONの柱状粒子が生成されるため、これらの絡み
合い構造を取ることにより高靭性化が可能になる。しか
しながら、この方法では酸素やSiがAlN格子中に固
溶して熱伝導率が著しく低下する。
【0041】本発明の方法のようにAlN粉末に焼結助
剤と共に、AlNファイバー、AlNウィスカー、およ
び27R型AlONポリタイポイドから選ばれる少なく
とも1種の添加物を所定量加え、かつ前記添加物とAl
N粉末との反応を抑えるために1700℃未満の温度で
焼結することによって、初めて高熱伝導性を維持しつつ
微構造の制御が可能になって高靭性化されたAlN焼結
体を製造することができたものである。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。 (実施例1)まず、不純物酸素量0.9重量%、平均粒
径1.1μm、比表面積3.1m2/gのAlN粉末8
0.7重量部と、不純物酸素量5重量%、直径2〜8μ
mのAlNファイバー15重量部と、純度99.5%の
硝酸イットリウムをY23換算で3.0重量部と、純
度99.9%の炭酸カルシウムをCaO換算で1.0重
量部と、平均粒径0.1μm、純度99.9%のWO3
をW換算で0.3重量部とからなる粉体に1−ブタノー
ルを添加して湿式ボールミルで解砕、混合した後、1−
ブタノールを除去して原料粉末を調製した。なお、この
工程で硝酸イットリウムおよび硝酸カルシウムは1−ブ
タノールに溶解した。
【0043】次いで、この原料粉末にブチラール系バイ
ンダとエタノールからなるバインダ溶液をバインダ量で
6重量%を添加した。エタノールを除去し、造粒した
後、この造粒粉末を100MPaの一軸加圧下で成形し
て圧粉体とした。ひきつづき、この圧粉体を乾燥空気
中、500℃まで加熱してバインダを除去した。脱バイ
ンダ後の成形体の密度、つまりグリーン密度は1.82
g/cm3 であった。次いで、この脱バインダ成形体を
AlN焼結体からなる容器内にセットし、これをグラフ
ァイト製ヒータ炉内に入れ、窒素ガス雰囲気、1600
℃で4時間焼成してAlN焼結体を製造した。
【0044】(比較例1)まず、不純物酸素量0.9重
量%、平均粒径1.1μm、比表面積3.1m2/gの
AlN粉末95.7重量部と、純度99.5%の硝酸イ
ットリウムをY23 換算で3.0重量部と、純度9
9.9%の炭酸カルシウムをCaO換算で1.0重量部
と、平均粒径0.1μm、純度99.9%のWO3 をW
換算で0.3重量部とからなる混合粉体に1−ブタノー
ルを添加して湿式ボールミルで解砕、混合した後、1−
ブタノールを除去して原料粉末を調製した。この原料粉
末を用いて実施例1と同様な方法によりAlN焼結体を
製造した。
【0045】得られた実施例1および比較例1のAlN
焼結体は、いずれも黒色で色ムラ、焼きムラは認められ
なかった。また、前記各焼結体の密度、熱伝導率、靭性
および4点曲げ強度を測定した。その結果を下記表1に
示す。なお、密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度
は、次のような方法により測定した。
【0046】(1)密度 AlN焼結体の密度は、アルキメデス法により測定し
た。 (2)熱伝導率 熱伝導率は、焼結体から焼結体から直径10mm、厚さ
3mmの円板を切り出し、21℃±2℃の室温下、JI
S−R1611に従ってレーザフラッシュ法により測定
した。
【0047】(3)靭性 JIS−R1607に準じてIF法により靭性を測定し
た。ビッカース圧子の荷重は9.8N、測定回数は10
回でその平均値を靭性とした。 (4)4点曲げ強度 4点曲げ強度は、JIS−R1601に準じて測定し
た。
【0048】
【表1】
【0049】前記表1から明らかなように実施例1のA
lN焼結体は比較例1のAlN焼結体に比べて熱伝導率
と4点曲げ強度は同等であるが、高い靭性を有すること
がわかる。実施例1の焼結体の破面を走査型電子顕微鏡
により観察した結果、AlN粒子のマトリックス中に4
〜8μm幅で長さ10〜数10μmの粒内割れした粒子
が混在しており、ファイバー添加により微構造が変化し
ていることから確認された。
【0050】(実施例2−1〜2−3)まず、不純物酸
素量1.1重量%、平均粒径0.9μm、比表面積3.
3m2/gのAlN粉末に対し、不純物酸素量2.5重
量%、直径2〜8μmのAlNファイバーを5重量%、
10重量%、20重量%それぞれ添加した。これらAl
N粉末およびAlNファイバーの合計量95.7重量部
と、純度3NのY23換算で3.0重量部と、純度9
9.9%の炭酸カルシウムをCaO換算で1.0重量部
と、平均粒径0.1μm、純度99.9%のWO3 をW
換算で0.3重量部とからなる3種の混合粉体に1−ブ
タノールを添加して湿式ボールミルで解砕、混合した
後、1−ブタノールを除去して原料粉末を調製した。こ
れら原料粉末を用いて実施例1と同様な方法により3種
のAlN焼結体を製造した。なお、焼結は1650℃で
4時間とした。
【0051】得られた3種のAlN焼結体は、いずれも
黒色で色ムラ、焼きムラは認められなかった。また、前
記各焼結体の密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度
を実施例1と同様な方法により測定した。その結果、下
記表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】前記表2から明らかなように実施例2−1
〜2−3のAlN焼結体は、いずれも高い靭性および十
分な熱伝導率と4点曲げ強度を有することがわかる。 (実施例3−1〜3−3)実施例2−1〜2−3と同様
な3種の混合粉体にバインダを加えずに一軸加圧成形し
た後、1550℃、1時間のポットプレスを行うことに
より3種のAlN焼結体を製造した。ホットプレスは、
グラファイト製ホットプレスモールド内で1300℃か
ら加圧を開始し、1550℃で等速で50MPaまで加
圧した。また、前記モールドと焼結体の接合を防ぐため
に成形体とモールドの界面にH−BNを配置し、かつ焼
結時に液相になることが予想される添加物成分を吸収す
るためにグラファイトフェルトを前記モールド内面に配
置した。
【0054】(比較例2)まず、不純物酸素量0.9重
量%、平均粒径1.1μm、比表面積3.1m2/gの
AlN粉末95.7重量部と、純度99.5%の硝酸イ
ットリウムをY23 換算で3.0重量部と、純度9
9.9%の炭酸カルシウムをCaO換算で1.0重量部
と、平均粒径0.1μm、純度99.9%のWO3 をW
換算で0.3重量部とからなる混合粉体をそのまま一軸
加圧成形した後、実施例3と同様な方法によりホットプ
レスすることによりAlN焼結体を製造した。
【0055】得られた実施例3−1〜3−3および比較
例2のAlN焼結体は、黒色で色ムラ、焼きムラは認め
られなかった。また、前記各焼結体の密度、熱伝導率、
靭性および4点曲げ強度を実施例1と同様な方法により
測定した。その結果、下記表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】前記表3から明らかなように実施例3−1
〜3−3のAlN焼結体は、いずれも高熱伝導率と高い
靭性および4点曲げ強度を有することがわかる。これに
対し、比較例2のAlN焼結体は実施例3−1〜3−3
と密度、熱伝導率や4点曲げ強度に関して大きな差異が
認められなかったが、靭性が劣ることがわかる。
【0058】(実施例4−1〜4−3)まず、AlNと
Al23 をモル比で7:1になるように秤量し、これ
らを混合した後、窒素雰囲気中、1900℃、6時間熱
処理して27R型AlONポリタイポイドを合成した。
この粉末をX線回折で調べた結果、27R型AlONポ
リタイポイドのほかに回折ピークの相対強度が1/5の
AlNが含まれていた。
【0059】不純物酸素量0.9重量%、平均粒径1.
1μm、比表面積3.3m2 /gのAlN粉末に対し、
長径が約15μmの前記27R型AlNポリタイポイド
を5重量%、10重量%、20重量%それぞれ添加し
た。これらAlN粉末および27R型AlNポリタイポ
イドの合計量94.4重量部と、純度99.5%のY2
3 換算で4.0重量部と、純度99.9%の炭酸カル
シウムをCaO換算で1.3重量部と、平均粒径0.1
μm、純度99.9%のWO3 をW換算で0.3重量部
とからなる3種の混合粉体にエタノールを添加して湿式
ボールミルで解砕、混合した後、エタノールを除去して
原料粉末を調製した。なお、この工程で硝酸イットリウ
ムおよび硝酸カルシウムはエタノールに溶解していた。
【0060】次いで、これらの原料粉末にブチラール系
バインダとエタノールからなるバインダ溶液をバインダ
量で6重量%を添加した。エタノールを除去し、造粒し
た後、この造粒粉末を50MPaの一軸加圧下で成形し
て圧粉体とした。ひきつづき、これらの圧粉体を窒素雰
囲気中、700℃まで加熱してバインダを除去した。脱
バインダ後の各成形体をAlN焼結体からなる容器内に
セットし、これをグラファイト製ヒータ炉内に入れ、1
気圧の窒素ガス雰囲気、1600℃で6時間焼成して3
種のAlN焼結体を製造した。
【0061】得られた3種のAlN焼結体は、いずれも
黒色で色ムラ、焼きムラは認められなかった。また、前
記各焼結体の密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度
を実施例1と同様な方法により測定した。その結果、下
記表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】前記表4から明らかなようにポリタイポイ
ドの添加量の増加と共にAlN焼結体の靭性が上昇し
た。また、4点曲げ強度も高く、かつ高い靭性を有する
ことがわかる。
【0064】(実施例5−1〜5−3)実施例4−1〜
4−3と同様な3種の混合粉体にバインダを加えずに一
軸加圧成形した後、温度を1500℃、時間を2時間と
した以外、実施例3−1〜3−3と同様な方法によりポ
ットプレスを行うことにより3種のAlN焼結体を製造
した。
【0065】得られた3種のAlN焼結体は、いずれも
黒色で色ムラ、焼きムラは認められなかった。また、前
記各焼結体の密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度
を実施例1と同様な方法により測定した。その結果、そ
の結果、下記表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】前記表5から明らかなように実施例5−1
〜5−3のAlN焼結体は高熱伝導率を保持しつつ、高
い靭性および4点曲げ強度を有することがわかる。 (実施例6)不純物酸素量1.2重量%、平均粒径0.
9μm、比表面積3.8m2 /gのAlN粉末に対し、
不純物酸素量5重量%、直径2〜8μmのAlNファイ
バー10重量部と、前記実施例4−1〜4−3と同様な
27R型AlONポリタイポイドを5重量部と、純度9
9.5%の硝酸イットリウムをY23 換算で3.0重
量部と、純度99.9%の炭酸カルシウムをCaO換算
で1.0重量部と、平均粒径0.1μm、純度99.9
%のTiO2 をTi換算で0.3重量部とからなる混合
粉体に1−ブタノールを添加して湿式ボールミルで解
砕、混合した後、1−ブタノールを除去して原料粉末を
調製した。なお、この工程で硝酸イットリウムおよび硝
酸カルシウムは1−ブタノールに溶解した。
【0068】次いで、前記原料粉末にブチラール系バイ
ンダとエタノールからなるバインダ溶液をバインダ量で
6重量%を添加した。エタノールを除去し、造粒した
後、この造粒粉末を100MPaの一軸加圧下で成形し
て圧粉体とした。つづいて、この圧粉体を乾燥空気中、
500℃まで加熱してバインダを除去した。ひきつづ
き、この脱バインダ成形体をAlN焼結体からなる容器
内にセットし、これをグラファイト製ヒータ炉内に入
れ、1気圧の窒素ガス雰囲気、1600℃で6時間焼成
してAlN焼結体を製造した。
【0069】得られたAlN焼結体は、黒褐色で色ム
ラ、焼きムラは認められなかった。また、前記焼結体の
密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度を実施例1と
同様な方法により測定した。その結果、密度が3.29
g/cm3 、熱伝導率が142W/mK、靭性が4.1
MPa/m0.5 、4点曲げ強度が335MPaで、高熱
伝導率と高い靭性および4点曲げ強度を有することが確
認された。
【0070】(実施例7)まず、不純物酸素量1.7重
量%、平均粒径0.7μm、比表面積3.9m2/gの
AlN粉末84.7重量部と、不純物酸素量1重量%、
直径3〜11μmのAlNファイバー10重量部と、純
度99.5%の硝酸イットリウムをY23 換算で3.
75重量部と、純度99.9%の炭酸カルシウムをCa
O換算で1.25重量部と、平均粒径0.1μm、純度
99.9%のWO3 をW換算で0.3重量部とからなる
粉体に1−ブタノールを添加して湿式ボールミルで解
砕、混合した後、1−ブタノールを除去して原料粉末を
調製した。なお、この工程で硝酸イットリウムおよび硝
酸カルシウムは1−ブタノールに溶解した。
【0071】次いで、この原料粉末にブチラール系バイ
ンダとエタノールからなるバインダ溶液をバインダ量で
6重量%を添加した。エタノールを除去し、造粒した
後、この造粒粉末を100MPaの一軸加圧下で成形し
て圧粉体とした。つづいて、この圧粉体を乾燥空気中、
500℃まで加熱してバインダを除去した。脱バインダ
後の成形体の密度、つまりグリーン密度は1.81g/
cm3 であった。ひきつづき、この脱バインダ成形体を
AlN焼結体からなる容器内にセットし、これをグラフ
ァイト製ヒータ炉内に入れ、窒素ガス雰囲気、1600
℃で4時間焼成してAlN焼結体を製造した。
【0072】得られたAlN焼結体は、いずれも黒色で
色ムラ、焼きムラは認められなかった。また、この焼結
体の密度、熱伝導率、靭性および4点曲げ強度を実施例
1と同様な方法により測定した。その結果、密度は3.
29g/cm3 ,熱伝導率は112W/mK、靭性は
3.9MPA・m0.5 、4点曲げ強度は321MPaで
あり、高熱伝導率であるとともに高い靭性および4点曲
げ強度を有することがわかる。
【0073】さらに、実施例7の焼結体の破面を走査型
電子顕微鏡により観察した結果、AlN粒子のマトリッ
クス中に約2〜10μm幅で長さ10〜数10μmの粒
内割れした粒子が混在しており、ファイバー添加により
微構造が変化していることから確認された。
【0074】
【発明の効果】以上詳述した如く、本発明によれば高熱
伝導性を維持しつつ、高い靭性等の機械的強度を有する
AlN焼結体、およびこの焼結体を簡単かつ安定的に製
造し得る方法を提供できる。
フロントページの続き (72)発明者 堀口 昭宏 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒径3μm以下の窒化アルミニウム
    粒子からなる窒化アルミニウムマトリックスに、一辺の
    長さが5μm以上の窒化アルミニウム粗粒子相および/
    または27R型酸窒化アルミニウムポリタイポイド(A
    937)相が30重量%未満混在した微構造を有
    し、熱伝導率が110W/mK以上であることを特徴と
    するアルミニウム焼結体。
  2. 【請求項2】 窒化アルミニウム粉末に焼結助剤と、窒
    化アルミニウムファイバー、窒化アルミニウムウィスカ
    ー、および27R型酸窒化アルミニウムポリタイポイド
    (Al937 )から選ばれる少なくとも1種の添加
    物を30重量%未満加え、成形した後、1500℃以
    上、1700℃未満の温度で焼結することを特徴とする
    アルミニウム焼結体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2005118505A1 (en) * 2004-04-23 2005-12-15 Kennametal Inc. Whisker-reinforced ceramic containing aluminum oxynitride and method of making the same

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US7309475B2 (en) 2004-04-23 2007-12-18 Kennametal Inc. Whisker-reinforced ceramic containing aluminum oxynitride and method of making the same
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