JPH1176687A - 遠心脱水装置 - Google Patents

遠心脱水装置

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JPH1176687A
JPH1176687A JP9267894A JP26789497A JPH1176687A JP H1176687 A JPH1176687 A JP H1176687A JP 9267894 A JP9267894 A JP 9267894A JP 26789497 A JP26789497 A JP 26789497A JP H1176687 A JPH1176687 A JP H1176687A
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智也 川口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水バランサを用いたバランス調整が可能なよ
うに洗濯物を適度に分散配置させる。 【解決手段】 ドラム5内周上で水バランサ10の対向
位置を挟んで隣接する2個のバッフル9を、広い間隔を
もって設ける。水バランサ10が上方に位置するように
ドラム5を停止し((a)参照)、急速にドラム5を回
転させる((b)参照)。すると、一部の洗濯物のみが
内周壁の他の箇所に分散移動し、多くの洗濯物が遠心力
により対向位置近傍の内周壁面に張り付いて回転する
((c)参照)。偏心位置が対向位置近傍にくるので、
水バランサ10に注水を行ない重量を付加することによ
り、ドラム5全体のバランス調整を達成することができ
る((d)参照)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、籠状のドラムの内
部に洗濯物を収容し、該ドラムを水平軸を中心に高速で
回転させることによって洗濯物の脱水又は洗浄用溶剤の
脱液を実行する遠心脱水装置(ここでは、溶剤の遠心脱
液装置も含めて「遠心脱水装置」と呼ぶこととする)に
関する。なお当然のことながら、本発明は、洗濯から脱
水まで、更には乾燥までを連続的に行なう洗濯機又は洗
濯乾燥機に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】ドラム式遠心脱水装置は、洗浄後の洗濯
物を籠状のドラム内部に収容し該ドラムを水平軸を中心
に高速で回転する構造となっている。この種の遠心脱水
装置における大きな問題点の一つは、洗濯物がドラム内
周壁面上で均等に分散していない状態でドラムを高速回
転させると、回転軸回りの質量分布のアンバランスによ
って異常振動や異常騒音が発生することである。このよ
うな遠心脱水装置を搭載した市販のドラム式洗濯乾燥機
では、上記異常振動を抑制するためにドラムを内装する
外槽の周囲に重錘を取り付けるようにしている。このた
め、従来のこの種の洗濯乾燥機は重量が非常に重くな
り、設置場所が限られると共に移動や運搬も困難であっ
た。
【0003】上記異常振動の問題を解決することを目的
としたドラム式遠心脱水装置は、従来より幾つか提案さ
れている。例えば特開平6−254294号公報記載の
遠心脱水装置では、ドラム高速回転による脱水運転を行
なう前に、ドラム低速回転によって洗濯物をドラム内周
壁面上で均等に分散配置する方法が開示されている。よ
り詳しくは、まず極く短時間ドラムを低速で回転させ、
次いで該回転速度よりは若干速いが脱水運転時の回転速
度よりは充分に遅い回転速度でドラムを回転させる、と
いう二段階の回転速度制御の組合せにより洗濯物の分散
を図っている。
【0004】また上記従来技術では、ドラム内部の洗濯
物の偏在を検出する手段として装置の台座の部分に振動
監視センサを設置し、ドラムの回転速度を脱水運転を行
なうための高速回転速度迄上昇させたときに該振動監視
センサが異常振動を検知すると回転速度を落とすように
している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術のようなドラムの回転制御方法を用いても、一回
のドラム低速回転によって確実に洗濯物が均等に分散さ
れるとは限らない。従って、ドラム低速回転により洗濯
物の分散を試みた後にドラムを高速回転させ、異常振動
が発生する場合には再びドラムの回転速度を落として洗
濯物の分散をやり直さなければならない。このようにし
てドラム低速回転による洗濯物の分散化とドラム高速回
転による偏心荷重の検出とを複数回繰り返すことになる
と、脱水時間が長引いてしまう。
【0006】更には、上述のようにドラム内周壁面上で
洗濯物の均等分散を図るという方法では、ドラムに比較
的重量の重い(例えばジーンズ等)衣類が一枚のみ収容
された場合に、均等分散が行なえず異常振動の抑制が不
可能になってしまう。
【0007】そこで、例えば特公平7−100095号
公報には、ドラムの内周壁の一部に重錘を付加してバラ
ンス調整を行なう遠心脱水装置が開示されている。この
従来の遠心脱水装置では、重錘がドラムの最高位置に到
達したときに洗濯物は重力によりドラム回転軸に対して
重錘に対向する位置にあって両者がバランスしていると
判断し、ドラムを低速回転から高速脱水回転に移行する
ようにしている。しかしながら、このような方法によっ
ても重錘と洗濯物とが確実にバランスした状態で高速脱
水回転に移行できるとは限らず、脱水運転時に完全に異
常振動を防止することはできない。勿論、重錘の重量に
応じた所定重量の洗濯物をドラム内に収容する等の厳密
な条件を課せばバランスさせることも可能であろうが、
このようなことは実際の遠心脱水装置において現実的で
はない。
【0008】上記問題に鑑み、本願出願人は、特願平8
−354520号等において、ドラムのバッフルの一部
に水を一時的に保持可能なポケット状の液体保持部を形
成し、洗濯物の偏在に応じた所定量の水を該液体保持部
に注入することによりドラム全体のバランス調整を行な
う新規な構成の遠心脱水装置を提案している。この遠心
脱水装置では、ドラム内周上で液体保持部に180°対
向する位置近傍に存在する偏心荷重と、液体保持部に注
入する水の重量との釣合によって、ドラム全体の偏心量
をきわめて小さなものとすることができる。
【0009】従って、この種の遠心脱水装置においてバ
ランス調整に要する時間を最小限に抑え、できるだけ早
く高速脱水を立ち上げるには、液体保持部の対向位置に
洗濯物の偏在に起因する偏心荷重が形成されるように洗
濯物の分散配置を短時間で行なうことが望ましい。本発
明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的と
するところは、液体保持部を用いたバランス調整が可能
なように洗濯物を短時間で分散配置することができる遠
心脱水装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明の遠心脱水装置は、籠状のドラム内に
洗濯物を収容し該ドラムを水平軸を中心に回転させるこ
とにより洗濯物の脱水を行なう遠心脱水装置において、
a)その周壁の一部に重錘部を設けたドラムであって、そ
の内周壁上で該重錘部に略180°対向する位置を中心
にして両側に所定角度の範囲を除き且つ該対向位置を挟
む2個のバッフル間の角度が他の隣接するバッフル間の
角度よりも広くなるように3個以上のバッフルを配設し
たドラムと、b)前記ドラムを回転駆動するためのモータ
と、c)前記重錘部がドラム最高位置近傍に位置してドラ
ムが停止又はごく低速度で回転しているとき、洗濯物に
作用する遠心力が重力に勝る回転速度まで該ドラムの回
転速度を急速に上昇させるべく前記モータを制御する回
転制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】本発明に係る遠心脱水装置では、重錘部の
対向位置にはバッフルが存在せず、且つその対向位置を
挟む両側の2個のバッフルの間隔は比較的広く開いてい
る。このため、重錘部がドラム最高位置近傍に位置する
ときには、洗濯物の多くはドラム底部において隣接する
バッフルの間に挟まれて沈んだ状態にある。回転制御手
段は、この状態から大きな起動トルクをもってモータを
駆動する。ドラムが急速に回転され、短時間のうち(つ
まり、あまり回転しない間)に洗濯物に作用する遠心力
が重力に勝る回転速度に到達すると、元々重積した洗濯
物の下方に在る洗濯物はそのままドラムの内周壁面に張
り付いて回る。一方、重積していた洗濯物の上方にのっ
ていた一部の洗濯物のみが加速により移動する。このた
め、洗濯物の大部分は重錘部の対向位置に集中するた
め、その洗濯物による偏心荷重と重錘部との釣合により
バランス調整が可能になる。
【0012】また、本発明に係る遠心脱水装置では、前
記重錘部は、外部より注入された液体を内部に保持可能
に形成された液体保持部とすることが好ましい。このよ
うな構成によれば、液体保持部に注入する液体の量によ
って重錘の重量を可変することができる。
【0013】上述のようなドラムの起動により重錘部の
対向位置近傍に洗濯物を集中させ、洗濯物の偏在に起因
する偏心荷重を対向位置近傍にする。このとき、偏心荷
重の大きさは収容されている洗濯物の量等に大きく依存
しているが、その偏心量に応じて液体保持部に注入する
液体の量を調整することにより、偏心量に拘らず(但し
調整可能な範囲で)バランス調整を達成することができ
る。
【0014】更に確実にバランス調整を行なうために、
本発明に係る遠心脱水装置は、ドラム回転中に該液体保
持部に液体を注入する液体注入手段と、ドラム回転中に
偏心荷重の大きさ及び位置を検出する偏心荷重検出手段
と、前記液体保持部に液体が注入される以前に前記偏心
荷重検出手段により検出された偏心位置が前記重錘部に
対向する位置近傍であるか否かを判定する位置判定手段
と、該偏心位置が前記重錘部に対向する位置近傍である
とき、前記液体注入手段を駆動し偏心量を減少させる注
入制御手段と、を備える構成とすることができる。
【0015】この構成では、始めに液体保持部には液体
が注入されておらず、ドラム自体に偏心荷重はない。こ
の状態で液体保持部の対向位置近傍に洗濯物が集中する
ようにドラムが起動され、洗濯物がドラム内周壁面に張
り付いて回転するときに、偏心荷重検出手段はこの洗濯
物の偏在に起因する偏心荷重を検出する。検出された偏
心位置が液体保持部の対向位置近傍である場合に液体保
持部を用いたバランス調整が可能であるから、位置判定
手段により偏心位置が液体保持部の対向位置近傍である
ことが確認された後に、注入制御手段は液体注入手段を
駆動して液体保持部に偏心量に見合った適宜の量の液体
を注入する。
【0016】また、本発明に係る遠心脱水装置におい
て、重錘部の対向位置を挟んだ両側の2個のバッフルの
間隔が狭過ぎると、そのバッフルに挟まれる洗濯物の量
が少なく、且つバッフル間に洗濯物が落ち着きにくい。
その場合、ドラム起動時に洗濯物の大部分が移動してし
まい、重錘部の対向位置近傍に偏心位置を形成すること
がむずかしい。反対に、重錘部の対向位置を挟んだ両側
の2個のバッフルの間隔が広過ぎると、そのバッフル間
で洗濯物が滑る等して移動し、同様に重錘部の対向位置
近傍に偏心位置を形成することがむずかしい。
【0017】そこで、重錘部の対向位置を挟んだ両側の
2個のバッフルの間隔は、適切に設定される必要があ
る。具体的には、例えば均等角度で5個のバッフルを配
設すると仮定すると隣接角度は72°となるから、重錘
部の対向位置からそれぞれ±37°離れた位置に両側の
バッフルを配置し、他のバッフルを均等角度で配置する
構成とすることができる。また、重錘部の対向位置を挟
んだ両側の2個のバッフルがその対向位置からそれぞれ
±90°以上離れた位置に在ると、洗濯物の偏在に起因
する偏心位置は対向位置から大きくずれる可能性が高
い。そこで、両側の2個のバッフルはそれぞれ対向位置
から±90°以内の角度範囲内に配設することが好まし
い。
【0018】更には、バッフルは通常その内部が中空で
あるので、重錘部は複数のバッフルの中の1個に設ける
構成とすることができる。
【0019】また、バッフルの個数が多過ぎると、ドラ
ム内周壁面の露出部分が減って洗濯物が張り付くことが
困難になるし、逆にバッフルの個数が少な過ぎると、洗
濯物の落ち着きが悪くなる。そこで、バッフルの個数は
5個程度が適当である。
【0020】
【実施例】以下、本発明に係る遠心脱水装置を備えたド
ラム式洗濯機の一実施例を図1〜図8により説明する。
図1は本実施例のドラム式洗濯機の側面断面図、図2は
背面透視図である。
【0021】フレーム1の内部には外槽2がバネ3及び
ダンパ4に吊支され、外槽2内には洗濯物を収容するた
めのドラム5が主軸8に軸支されている。フレーム1の
前面には、外槽2の前面開口を開閉するドア7が設けら
れ、洗濯物はこのドア7を開放してドラム5内へと収容
される。ドラム5の周壁には多数の通水孔6が開口して
おり、外槽2に供給された水は通水孔6を通してドラム
5内へ流入し、また逆にドラム5内で洗濯物から脱水さ
れた水は通水孔6を通して外槽2へ飛散される。ドラム
5の内周壁には、回転に伴って洗濯物をかき上げるため
のバッフル9が5個設けられている。バッフル9の1個
はその内部に水を保持可能な水バランサ10を兼ねてお
り、水バランサ10に180°対向する位置の両側約5
0°の位置と、そのバッフル9と水バランサ10との丁
度中間位置にそれぞれ他のバッフル9が配置されてい
る。これにより、水バランサ10に180°対向する位
置を挟む隣接バッフル間の間隔が大きく開いている。
【0022】ドラム5の背面には、主軸8を中心にした
円周の内周側に大きな注水開口12を有する略円盤形状
の水案内室11が設けられている。水案内室11には、
ドラム5側に水バランサ10と連通する注水孔13が形
成される一方、主軸8を挟んで注水孔13と略180°
対向する部分の外槽2側に排水孔14が形成されてい
る。主軸8は外槽2に装着された軸受15により保持さ
れており、主軸8の先端には主プーリ16が取り付けら
れている。外槽2の下側にはモータ17が配置され、モ
ータ17の回転駆動力はモータプーリ18、Vベルト1
9を介して主プーリ16に伝達される。外部の水道栓等
から給水口20に供給された水は、給水バルブ21を介
して外槽2内へ注水されるとともにバランス調整用注水
バルブ22を介して外槽2の背面に設けられた注水ノズ
ル23から放出される。。一方、外槽2底部に連結され
た排水管24には排水ポンプ25が設けられ、外槽2内
に溜まった水は排水ポンプ25が駆動されることにより
外部に排出される。
【0023】主プーリ16のリング部には開口が円周上
に一箇所設けられており、そのリング部を挟んで両側に
発光部261と受光部262とが配置されている。これ
により、ドラム5が一回転する期間に一回だけ発光部2
61から発した光が開口を通過して受光部262に到達
する。後述の回転センサは、この受光信号に基づいてド
ラム5の回転に同期した検出信号(回転マーカー)を出
力する。
【0024】次に、水バランサ10への注水及び排水に
ついて図3を用いてより詳しく説明する。図3は、水案
内室11を中心とする部分の側面端面図により水の移動
状態を示した模式図である。ドラム5が所定の回転速度
以上で回転しているときに注水ノズル23から水が放出
されると、放出された水は注水開口12から水案内室1
1に入り、ドラム5の外壁面を伝わる等しつつ遠心力に
より外周壁側へ移動する。注水開口12は大きな面積で
あるため、水圧のばらつき等により注水ノズル23から
放出された水の落下方向がばらついていても、水の大部
分は確実に水案内室11に入る。そして、水は遠心力に
より水案内室11の外周壁に張り付いて保持される(図
3(a)参照)。
【0025】水案内室11の外周壁近傍には注水孔13
が開口しており、注水孔13を介して連通している水バ
ランサ10は主軸8に対し更に外周側に広がる中空体と
なっているから、水案内室11内の水は遠心力により注
水孔13を通って水バランサ10内部に入り込み、水バ
ランサ10内の外周壁側つまりドラム5の内周壁面に張
り付く。従って、水バランサ10内に入り込んだ水に作
用する遠心力が重力に勝るような回転速度でドラム5が
回転しているときには、水は水バランサ10から水案内
室11側には逆流せず、水バランサ10内に保持される
(図3(b)参照)。なお、水案内室11の外周壁近傍
には排水孔14も開口しており、この排水孔14を通し
て水案内室11から外槽2へ水が逃げるが、この排水量
は水案内室11に注水される水の量に比較して極めて小
さいので影響は軽微である。
【0026】水バランサ10及び水案内室11に溜まっ
た水を排出する際には、水バランサ10をドラム5の最
高位置近傍で停止させる。すると、水バランサ10内の
水に作用する遠心力がなくなるため、その水は注水孔1
3を通って水案内室11へ流れ出る。そして、水案内室
11の底部に溜まった水は丁度ドラム5の最低位置に位
置している排水孔14を通って外槽2へ流れ出る(図3
(c)参照)。注水孔13や排水孔14の開口面積は小
さいが、水バランサ10を上記位置に保って暫時経過す
れば、水バランサ10及び水案内室11内の水は全て外
槽2に排出される。
【0027】次に、上記洗濯機の要部の電気系構成及び
動作を図4により説明する。マイクロコンピュータを中
心に構成される制御部30は、機能的に、中央制御部3
1、位相制御部32、偏心荷重検出部33、注水制御部
34等から構成される。中央制御部31は脱水運転を含
む洗濯行程を進めるための運転プログラムが予め記憶さ
れたメモリを備えており、脱水行程時には、偏心荷重検
出部33より偏心量及び偏心位置に関する情報を受け取
り、後述のように処理して所望のドラム回転速度に対応
したモータの目標回転速度Npを位相制御部32に指示
するとともに、注水制御部34に指示を与える。
【0028】モータ駆動部40は交流電源41とスイッ
チ部42とから構成され、位相制御部32とともにモー
タ17の回転速度制御部として機能する。モータ17に
はパルス発生器等から成る回転速度検出器51が付設さ
れ、実際のモータ17の回転速度に応じた数の回転パル
ス信号が実回転速度Nrとして位相制御部32にフィー
ドバックされる。
【0029】電流検出部50は、モータ駆動部40から
モータ17に供給される駆動電流を検出し、電圧値に変
換して偏心荷重検出部33に与える。図6は、モータ電
流中のトルク電流成分の時間変動の一例を示す波形図で
ある。図中、回転マーカーは、ドラム5に付設された回
転センサ26により得られるドラム5の一回転周期を示
すマーカー信号である。ドラム5に偏心荷重が存在して
いると、図6に示すようにトルク電流成分はその偏心荷
重に応じて周期的に変動する。この変動は負荷トルクの
変動に対応したものであり、その最大値Vmaxはドラム
一回転期間内で負荷トルクが最大になるときに現われ
る。また、最大値Vmaxと最小値Vminの差(変動振幅)
は偏心量に対応している。そこで、予めこの変動振幅と
偏心量との対応関係を調べて記憶しておくことにより、
変動振幅から偏心量を得ることができる。
【0030】具体的には、偏心荷重検出部33は、図6
に示すような電流波形が入力されると、回転マーカーの
間隔毎つまりドラム一回転期間毎に最大値Vmax及び最
小値Vminを検出する。そして、その最大値Vmaxと最小
値Vminとの差を算出し、記憶している上記対応関係を
参照して偏心量を得る。また、最大値Vmaxの出現する
タイミング(例えば直前の回転マーカーからの遅延時間
又は角度)によりドラム5内周壁面上での偏心位置を検
知する。
【0031】次に、位相制御部32及びモータ駆動部4
0を中心とするモータ17の回転制御の動作を図5を参
照して詳述する。位相制御部32は、目標回転速度Np
と実回転速度Nrとの差に基づき制御角αを算出しスイ
ッチ部42に与える。スイッチ部42はトライアック等
のゲート制御式半導体スイッチ等から成り、交流電源4
1より入力された、図5(a)に示すような正弦波状の
単相交流電流を制御角αに応じてオン/オフする。すな
わち、図5(b)に示すように基準となる位相角0°の
位置から制御角αだけ遅延した位置にパルス信号を生成
し、0°〜αの期間は電流を遮断し、α〜180°の期
間のみ電流を導通させる。これにより、図5(c)に斜
線で示す範囲の断続的な電流がモータ17に駆動電流と
して供給される。従って、位相制御部32が制御角αを
小さくするとモータ17にはより大きな駆動電力が供給
され、逆に制御角αを大きくするとモータ17に供給さ
れる駆動電力は減少する。
【0032】次に、上記構成の洗濯機における脱水の立
上げ時の制御を図7及び図8により説明する。図7は脱
水の立上げ時の制御フローチャート、図8はドラム5内
の洗濯物の移動状況を示す模式図である。以下の説明で
は、ドラムの径を470mmとしたときの数値を例に挙
げているが、ドラム径が相違する場合には各回転速度の
数値を適宜変更することにより対応可能であることは明
白である。
【0033】洗い又はすすぎ行程が終了すると、中央制
御部31は排水ポンプ25を駆動する(ステップS1
0)。これにより、外槽2内に溜まっている洗い水又は
すすぎ水は排水管24を通して外部に排出される。排水
がほぼ終了した時点で、水バランサ10がドラム5の最
高位置近傍にない場合には、モータ17を駆動し、水バ
ランサ10がドラム5の最高位置近傍にくる位置でドラ
ム5を停止させる(ステップS11)。そして、その状
態で10秒が経過するまで待機する(ステップS1
2)。このとき、ドラム5内の洗濯物は図8(a)に示
すようにドラム5底部に重なった状態にある。前述のよ
うに水バランサ10がドラム5の最高位置に在るときに
は排水孔14は反対にドラム5の最低位置に在るから、
水バランサ10及び水案内室11に入っていた水は全て
排出されて、ドラム5自体は偏心荷重を有しない状態に
なる。また、水バランサ10の対向位置を挟む2個のバ
ッフル9の間隔は他のバッフル間隔よりも広いから、洗
濯物の多くがその2個のバッフル9の間に存在してい
る。
【0034】この状態で10秒が経過すると、位相制御
部32は制御角α=0をモータ駆動部40に指示する。
すると、100Vの交流電圧の全波がモータ17に印加
される(ステップS13)。すなわち、これはモータ1
7に供給し得る最大電力をモータ17に与えることを意
味し、これによりドラム5は図8(b)に示すように急
速に回転し始める。ドラム5内に収容されている洗濯物
に作用する遠心力と重力とは、ドラム5の回転速度が6
0〜70rpmでほぼ均衡する。従って、この回転速度
よりドラム5が遅く回転するときには、洗濯物は重力に
より移動する。また、ドラム5の回転速度がそれ以上に
上昇すると、洗濯物は遠心力によりドラム5の内周壁面
に押し付けられて回転する。
【0035】図8(a)に示すようにドラム5が停止し
た状態から図8(b)に示すように急速に加速される
と、ドラム5の回転速度は、短時間の間に上記遠心力と
重力との均衡速度を越える。このため、重積している洗
濯物の中で上にのっている一部の洗濯物のみが加速時の
力や重力により移動する。そして、2個のバッフル9の
間に位置している大部分の洗濯物はその位置に留まり、
すぐに遠心力によりドラム5内周壁面に張り付く。一
方、一時的に移動した他の洗濯物も、遠心力により主と
して先の2個のバッフル間以外のドラム5内周壁面に張
り付く。この結果、ドラム5の回転速度が上記均衡速度
を越えたときには、図8(c)に示すように、水バラン
サ10の対向位置に多くの洗濯物が集中する。つまり、
水バランサ10の対向位置近傍が偏心位置となる。
【0036】中央制御部31はドラム5の回転速度が1
00rpmに到達したか否かを判定し(ステップS1
4)、100rpmに到達したならば位相制御による回
転制御に切り替える。すなわち、それまでは目標回転速
度を設定せずに無条件に100Vの全波をモータ17に
印加していたが、100rpmに到達した後は、前述の
ように位相制御部32に目標回転速度Npを指示し、位
相制御部32は実回転速度Nrが目標回転速度Npとな
るように制御角αを決定する。このように位相制御によ
り、ドラム5の回転速度を130rpmまで上昇させる
(ステップS15)。
【0037】ドラム5の回転速度が130rpmになる
と、偏心荷重検出部33は前述のように偏心荷重の大き
さ及び位置を検出する(ステップS16)。このとき水
バランサ10は空になっているので、検出された偏心荷
重は洗濯物の偏在に起因している。中央制御部31は、
検出された偏心位置が水バランサ10の対向位置近傍の
所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS1
7)。その所定範囲は、偏心位置の検知誤差等を考慮し
て対向位置を中心に適宜の幅に設定される。ステップS
17にて偏心位置が所定範囲内であると判定されたとき
には、次に、偏心量が水バランサ10への注水によりバ
ランス調整が可能な所定値(重量)以下であるか否かを
判定する(ステップS18)。すなわち、偏心位置が水
バランサ10の対向位置近傍にない場合には水バランサ
10によるバランス調整は不可能である。また、偏心位
置が水バランサ10の対向位置に在っても偏心量が所定
値を越えている場合には、やはり水バランサ10による
バランス調整は不可能である。
【0038】偏心位置が水バランサ10の対向位置あっ
て且つ偏心量が所定値以下である場合には、水バランサ
10によるバランス調整が可能である。そこで、ドラム
5の回転速度を130rpm(又はそれよりも高いがド
ラム5の共振点よりも低い回転速度)に維持し、注水制
御部34はバランス調整用注水バルブ22を開放する
(ステップS19)。これにより、前述のように注水ノ
ズル23から放出された水が水バランサ10に徐々に入
ってゆき、遠心力によって外周側に張り付いた状態で保
持される。このとき同時に、徐々に変化する偏心量が偏
心荷重検出部33にて検出され、中央制御部31はその
偏心量が許容値以下であるか否かを判定する(ステップ
S20)。この許容値は、ドラム5を高速脱水回転させ
たときに生じる外槽2又はフレーム1等の振動振幅の許
容値に基づいて予め設定される。
【0039】水バランサ10内の水の量が徐々に増えそ
の重量が増加するに伴い、図6に示したような電流の変
動振幅は次第に小さくなる。偏心量が許容以下になると
ステップS20からS21に進み、注水制御部34はバ
ランス調整用注水バルブ22を閉鎖する。これにより、
水バランサ10内の水の増加は停止し、洗濯物の偏在に
よる偏心荷重と水バランサ10内の水との釣合によりド
ラム5全体の偏心量は小さなものとなる。このようにし
てバランス調整を行なった後に、中央制御部31は目標
回転速度Npを所定の高速回転速度まで徐々に増加させ
ることにより、高速脱水回転を立ち上げる(ステップS
22)。これにより、洗濯物に浸透していた水は遠心力
により飛散して脱水される。高速回転速度は最大で10
00rpm程度とすることができるが、布傷みを生じ易
い洗濯物を保護するためには、使用者によって指定され
た洗濯コース(例えば毛布洗濯コース、ドライ専用衣類
洗濯コース等)に応じた上限値に制限することが好まし
い。勿論、その回転速度に応じて上記許容値を適当に変
えることができる。
【0040】上記ステップS17にて偏心位置が水バラ
ンサ10の対向位置近傍の所定範囲内でないと判定され
たときには、偏心量が許容値以下であるか否かを判定す
る(ステップS23)。ここで、偏心量が許容値以下で
ある場合には偏心位置に拘らず高速脱水回転時の振動が
小さいと判断し、ステップS22へ進み脱水を立ち上げ
る。
【0041】ステップS18にて偏心量が所定値を越え
ていると判定された、或いは、ステップS23にて偏心
量が許容値を越えていると判定された場合には、洗濯物
の分散配置をやり直す必要がある。そこで、まず、絡み
合っている可能性がある洗濯物をほぐすために、ほぐし
運転を行なう(ステップS24)。すなわち、ドラム5
の回転を一旦停止する又は殆ど停止する程度まで低下さ
せ、次に洗い運転時の回転速度(約55rpm)で左方
向に回転させ、その後に回転方向を反転させて同様の回
転速度で右方向に回転させる。このような揺動を複数回
繰り返すと洗濯物が攪拌されるので、各洗濯物の隙間に
空気が入り込み、絡み合っていた洗濯物がほぐれて一枚
一枚の洗濯物が互いに離れ易くなる。
【0042】その後、上記ステップS11と同様に水バ
ランサ10がドラム5の最高位置近傍にくる位置でドラ
ム5を停止させ(ステップS25)、その状態で3秒が
経過するまで待機する(ステップS26)。この場合に
は水バランサ10内に水は入っていないので、ドラム5
が完全に停止するまでの時間的余裕として3秒程度の待
機をすれば充分である。そして、その後にステップS1
3へ戻り再びドラム5を急加速させる。
【0043】以上のように、上記実施例の遠心脱水装置
では、洗濯物を集中的に配置したいドラム内周上の位置
を挟んだ両側の2個のバッフルの間隔を広くとり、その
位置が下方になるようにドラムを停止した状態から回転
速度を急速に上昇させることにより、その位置に残った
多くの洗濯物が遠心力によりドラム内周壁面に張り付く
ようにしている。従って、上記実施例は重量可変の重錘
である水バランスを用いていたが、所定重量を有する重
錘をドラム内周壁上に一部に設けた構成の遠心脱水装置
に適用することができる。
【0044】また、バッフル9の間隔及び個数は一例で
あって、適宜変更することができる。このバッフル9
は、水バランサ10とその対向位置を結ぶ線に対して必
ずしも線対称に配置されなくともよい。勿論、バッフル
9の個数や配置は、洗い、すすぎ又は乾燥性能に大きく
影響するため、洗濯機や洗濯乾燥機では、これらのこと
を考慮して適切に決められるべきである。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る遠心
脱水装置によれば、ドラム内周上で重錘部つまり水バラ
ンサの対向位置近傍に洗濯物の多くを集中して配置する
ことが容易になる。このため、洗濯物の偏在に起因する
偏心荷重と重錘との釣合によりドラム自体のバランス調
整を行ない、高速脱水を立ち上げることができる。これ
により、バランス調整が短時間で終了するので、脱水所
要時間を短縮することができる。
【0046】また、重錘部として水バランサのような液
体保持部を用いる構成によれば、液体保持部の対向位置
近傍に洗濯物を集中させた後、発生した偏心量を液体保
持部に注入する液量により減少させることができるの
で、バランス調整に要する時間がより短くて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による遠心脱水装置を備えた
ドラム式洗濯機の側面断面図。
【図2】 図1のドラム式洗濯機の要部の背面透視図。
【図3】 本実施例の遠心脱水装置における水バランサ
への水の注入及び排出の状態を示す模式図。
【図4】 本実施例のドラム式洗濯機の電気系構成図。
【図5】 本実施例におけるモータの回転制御動作を説
明するための波形図。
【図6】 偏心荷重の影響によるモータ電流の変動の一
例を示す波形図。
【図7】 本実施例における脱水立上げ時の制御動作を
示すフローチャート。
【図8】 脱水立上げ時のドラム内の洗濯物の移動状況
を示す模式図。
【符号の説明】
5…ドラム 9…バッフル 10…水バランサ 11…水案内室 22…バランス調整用注水バルブ 23…注水ノズ
ル 26…回転センサ 30…制御部 31…中央制御部 32…位相制御
部 33…偏心荷重検出部 34…注水制御
部 40…モータ駆動部 41…交流電源 42…スイッチ
部 50…電流検出部 51…回転速度
検出器

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 籠状のドラム内に洗濯物を収容し該ドラ
    ムを水平軸を中心に回転させることにより洗濯物の脱水
    を行なう遠心脱水装置において、 a)その周壁の一部に重錘部を設けたドラムであって、そ
    の内周壁上で該重錘部に略180°対向する位置を中心
    にして両側に所定角度の範囲を除き且つ該対向位置を挟
    む2個のバッフル間の角度が他の隣接するバッフル間の
    角度よりも広くなるように3個以上のバッフルを配設し
    たドラムと、 b)前記ドラムを回転駆動するためのモータと、 c)前記重錘部がドラム最高位置近傍に位置してドラムが
    停止又はごく低速度で回転しているとき、洗濯物に作用
    する遠心力が重力に勝る回転速度まで該ドラムの回転速
    度を急速に上昇させるべく前記モータを制御する回転制
    御手段と、 を備えることを特徴とする遠心脱水装置。
  2. 【請求項2】 前記重錘部は、外部より注入された液体
    を内部に保持可能に形成された液体保持部であることを
    特徴とする請求項1に記載の遠心脱水装置。
  3. 【請求項3】 ドラム回転中に該液体保持部に液体を注
    入する液体注入手段と、ドラム回転中に偏心荷重の大き
    さ及び位置を検出する偏心荷重検出手段と、前記液体保
    持部に液体が注入される以前に前記偏心荷重検出手段に
    より検出された偏心位置が前記重錘部に対向する位置近
    傍であるか否かを判定する位置判定手段と、該偏心位置
    が前記重錘部に対向する位置近傍であるとき、前記液体
    注入手段を駆動し偏心量を減少させる注入制御手段と、
    を備えることを特徴とする請求項2に記載の遠心脱水装
    置。
  4. 【請求項4】 前記重錘部の対向位置を挟んだ両側の2
    個バッフルを該対向位置に対して±37°から±90°
    の角度範囲内に配設することを特徴とする請求項1乃至
    3のいずれかに記載の遠心脱水装置。
  5. 【請求項5】 前記重錘部を複数のバッフルの中の1個
    に設けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに
    記載の遠心脱水装置。
  6. 【請求項6】 バッフルの個数を5個とすることを特徴
    とする請求項5に記載の遠心脱水装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100765211B1 (ko) 2006-06-27 2007-10-09 삼성전자주식회사 세탁기
CN101824727A (zh) * 2009-06-03 2010-09-08 南京乐金熊猫电器有限公司 洗衣装置的控制方法
WO2016180371A1 (zh) * 2015-05-13 2016-11-17 海尔亚洲株式会社 洗衣机

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