JP3188210B2 - 遠心脱水装置 - Google Patents

遠心脱水装置

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JP3188210B2 JP09309897A JP9309897A JP3188210B2 JP 3188210 B2 JP3188210 B2 JP 3188210B2 JP 09309897 A JP09309897 A JP 09309897A JP 9309897 A JP9309897 A JP 9309897A JP 3188210 B2 JP3188210 B2 JP 3188210B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、籠状のドラムの内
部に洗濯物を収容し、該ドラムを回転させることによっ
て洗濯物の脱水又は洗浄用溶剤の脱液を実行する遠心脱
水装置(ここでは、溶剤の遠心脱液装置も含めて「遠心
脱水装置」と呼ぶこととする)に関する。なお当然のこ
とながら、本発明は、洗濯から脱水迄、更には乾燥迄を
連続的に行なう洗濯機又は洗濯乾燥機に利用することが
できる。
【0002】
【従来の技術】ドラム式遠心脱水装置は、洗浄後の洗濯
物を籠状のドラム内部に収容し該ドラムを水平軸を中心
に高速で回転する構造となっている。この種の遠心脱水
装置における大きな問題点の一つは、洗濯物がドラム内
周壁面上で均等に分散していない状態でドラムを高速回
転させると、回転軸回りの質量分布のアンバランスによ
って異常振動や異常騒音が発生することである。このよ
うな遠心脱水装置を搭載した市販のドラム式洗濯乾燥機
では、上記異常振動を抑制するためにドラムを内装する
外槽の周囲に重錘を取り付けるようにしている。このた
め、従来のこの種の洗濯乾燥機は重量が非常に重くな
り、設置場所が限られると共に移動や運搬も困難であっ
た。
【0003】上記異常振動の問題を解決することを目的
としたドラム式遠心脱水装置は、従来より幾つか提案さ
れている。例えば特開平6−254294号公報記載の
遠心脱水装置では、ドラム高速回転による脱水運転を行
なう前に、ドラム低速回転によって洗濯物をドラム内周
壁面上で均等に分散配置する方法が開示されている。よ
り詳しくは、まず極く短時間ドラムを低速で回転させ、
次いで該回転速度よりは若干速いが脱水運転時の回転速
度よりは充分に遅い回転速度でドラムを回転させる、と
いう二段階の回転制御の組合せにより洗濯物の分散を図
っている。
【0004】また上記従来技術では、ドラム内部の洗濯
物の偏在を検出する手段として装置の台座の部分に振動
監視センサを設置し、ドラムの回転速度を脱水運転を行
なうための高速回転速度迄上昇させたときに該振動監視
センサが異常振動を検知すると回転速度を落とすように
している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術のようなドラムの回転制御方法を用いても、一回
のドラム低速回転によって確実に洗濯物が均等に分散さ
れるとは限らない。従って、ドラム低速回転により洗濯
物の分散を試みた後にドラムを高速回転させ、異常振動
が発生する場合には再びドラムの回転速度を落として洗
濯物の分散をやり直さなければならない。このようにし
てドラム低速回転による洗濯物の分散化とドラム高速回
転による偏芯荷重の検出とを複数回繰り返すことになる
と、脱水時間が長引いてしまう。
【0006】更には、上述のようにドラム内周壁面上で
洗濯物の均等分散を図るという方法では、ドラムに比較
的重量の重い(例えばジーンズ等)衣類が一枚のみ収容
された場合に、均等分散が行なえず異常振動の抑制が不
可能になってしまう。
【0007】そこで、例えば特公平7−100095号
公報には、ドラムの内周壁の一部に重錘を付加してバラ
ンス調整を行なう遠心脱水装置が開示されている。この
従来の遠心脱水装置では、重錘がドラムの最高位置に到
達したときに洗濯物は重力によりドラム回転軸に対して
重錘に対向する位置にあって両者がバランスしていると
判断し、ドラムを低速回転から高速脱水回転に移行する
ようにしている。しかしながら、このような方法によっ
ても重錘と洗濯物とが確実にバランスした状態で高速脱
水回転に移行できるとは限らず、脱水運転時に完全に異
常振動を防止することはできない。勿論、重錘の重量に
応じた所定重量の洗濯物をドラム内に収容する等の厳密
な条件を課せばバランスさせることも可能であろうが、
このようなことは実際の遠心脱水装置において現実的で
はない。
【0008】上記問題に鑑み、本願出願人は、特願平8
−354520号等において、ドラムのバッフルの一部
に水を一時的に保持可能なポケット状の液体保持部を形
成し、洗濯物の偏在に応じた所定量の水を該液体保持部
に注入することによりドラム全体のバランス調整を行な
う新規な構成の遠心脱水装置を提案している。
【0009】該遠心脱水装置においては、ドラムを回転
駆動するモータに流れる電流の変動成分に基づき偏芯荷
重の大きさ及び位置を検知することができる。より詳し
くは、モータ電流はトルクの負荷変動に応じた変動成分
を有するから、その変動成分の振幅値は偏芯荷重の大き
さを反映し、その変動のピーク位置はドラム内周壁面上
で偏芯荷重の存在する位置に応じたものとなっている。
偏芯荷重の大きさは、脱水時に振動や騒音が発生するか
否かを判断する際の指標値である。従って、偏芯荷重の
大きさを精度良く検知することができないと、偏芯荷重
が小さいと判断したにも拘らず脱水時に振動や騒音が発
生してしまったり、逆に、実際には偏芯荷重が充分に小
さいにも拘らず偏芯荷重が大きいと判断して脱水運転に
移行できず脱水時間が長引いたりする恐れがある。
【0010】本発明は上記解題を解決するためになされ
たもので、その目的とするところは、脱水運転開始前の
偏芯荷重の検知の精度を向上することにより脱水運転時
の異常振動や異常騒音を一層確実に抑制することができ
る遠心脱水装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】上
記課題を解決するために成された本発明の遠心脱水装置
は、籠状のドラム内に洗濯物を収容し該ドラムを回転さ
せることにより該洗濯物の脱水を行なう遠心脱水装置に
おいて、 a)ドラムを回転駆動するモータと、 b)該モータの回転速度を検出する回転速度検出手段
と、 c)前記ドラムが有する偏芯荷重を検知すべく前記モー
タの回転速度を目標回転数近傍に維持する段階におい
て、前記速度検出手段により検出された前記モータの実
際の回転速度である実回転速度が目標回転速度となるよ
うに前記モータの回転速度を制御する回転速度制御手段
と、 d)該回転速度制御手段により前記モータに供給される
駆動電流の変動に基づき、ドラムが有する偏芯荷重を検
知する偏芯荷重検知手段と、を具備し、前記回転速度制
御手段は、目標回転速度と実回転速度との差分に基づく
絶対速度成分と実回転速度の変動量に基づく相対速度成
分との和により回転速度を制御するための制御量を算出
し、前記偏芯荷重検知手段により検知された偏芯荷重が
大きいときに該相対速度成分の寄与の割合を増すことを
特徴としている。
【0012】
【0013】上記本発明に係る遠心脱水装置において、
まず、回転速度制御手段は回転速度検出手段により検出
された実回転速度が設定された目標回転速度となるよう
に所定の算出方法により制御量を算出し、該制御量に基
づいてモータに駆動電流を供給する。これにより、ドラ
ムは回転し、該ドラムに収容された洗濯物は遠心力によ
りドラム内周壁に張り付いて回る。このときモータに流
れる駆動電流は負荷トルクの変動に応じた成分を有する
から、主としてドラム内周壁面上での洗濯物の偏在に起
因する偏芯荷重により略周期的に変動する。偏芯荷重検
知手段は、該駆動電流の変動振幅に基づいて偏芯荷重の
大きさを検知する。
【0014】ドラム内周壁面の一部に存在する偏芯荷重
がドラムと共に回転している場合、該偏芯荷重がドラム
上方に持ち上げられるときには該偏芯荷重に作用する重
力はドラムを逆回転させる方向に働く。そして、該偏芯
荷重がドラムの最高位置を通過して下方に下がり始める
と重力はドラムを正回転させる方向に働く。このように
ドラムが一回転する間に偏芯荷重の位置によって回転速
度を変動させる力が働くが、偏芯量が小さい範囲では、
ドラムを水平に支持する軸と該軸を支持する軸受との間
の摩擦が相対的に大きいため、上記回転速度の変動への
影響は小さい。しかしながら、偏芯量が或る程度大きく
なると上記摩擦の影響が無視できる程度に小さくなり、
偏芯荷重による回転速度の変動が大きくなる。
【0015】このため、偏芯荷重による回転速度の変動
を抑制するように上記制御量を算出しないと、制御が回
転速度の変動に追従し難くなり、偏芯量の増加分に対す
るモータ駆動電流の変動振幅の増加分が小さくなってし
まう。そこで、偏芯量が大きい場合には、上記制御量を
算出する際に、相対速度成分の寄与の割合を増すように
制御量の算出方法を変更する。これにより、回転速度の
変動に追随してモータ駆動電流の変動が大きくなるの
で、偏芯量の検知精度が良くなる。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【発明の効果】本発明に係る遠心脱水装置によれば、ド
ラムを回転駆動するモータに流れる電流の変動に基づい
て該ドラムの偏芯量を検知する遠心脱水装置において、
偏芯量の範囲に応じて、該偏心量の増加分に対するモー
タ駆動電流の変動の増加分が大きくなるようなモータの
速度制御方法が選択される。このため、幅広い範囲の偏
芯量を高い精度をもって検知することができる。従っ
て、このように検知された偏芯荷重を利用することによ
り、偏芯量の判定が確実に行なえ、脱水運転時に異常振
動や異常騒音が生じることを確実に防止することができ
る。また、実際に偏芯量が充分に小さいにも拘らず大き
いと誤って判定されることがなくなるので、脱水運転に
迅速に移行することができ、脱水所要時間ひいては洗濯
所要時間が長引くことを防止することができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明に係る遠心脱水装置の一実施例
を図面を参照して説明する。まず、図1及び図2に基づ
いて本発明による遠心脱水装置を備えたドラム式洗濯機
の実施例の構造を説明する。図1はこの洗濯機の側面断
面図、図2はこの洗濯機の要部を示す背面透視図であ
る。
【0022】外箱30の内部には外槽32がバネ34及
びダンパ36に吊支され、外槽32内部には洗濯物を収
容するためのドラム38が主軸40に軸支されている。
ドラム38の周壁には多数の通水孔42が設けられてお
り、外槽32内に給水された水は該通水孔42を通して
ドラム38内へ流入し、また逆にドラム38内で洗濯物
から脱水された水は該通水孔42を通して外槽32へと
飛散される。
【0023】ドラム38の内周には、回転に伴って洗濯
物をかき上げるためのバッフル44が回転角90度毎の
位置に四個設けられている。そのバッフル44の内の一
個は、その内部に水を保持するバランサ46を兼ねてい
る。ドラム38の背面には、主軸40を中心とした円周
の内周側に大きな注水開口50を有する略円盤形状の水
案内室48が設けられている。該水案内室48には、ド
ラム38側にバランサ46と連通する注水孔52が形成
され、主軸40に対し該注水孔52と略180度対向す
る外槽32側に排水孔54が形成されている。外箱30
の前面には外槽32の前面開口を開閉するドア56が設
けられ、洗濯物は該ドア56を開放してドラム38内部
へと収容される。
【0024】主軸40は外槽32に装着された軸受58
により保持されており、その先端には主プーリ60が取
り付けられている。外槽32の下面にはモータ62が配
置され、モータ62の回転駆動力はモータプーリ64、
Vベルト66を介して主プーリ60に伝達される。ま
た、外部の水道栓等から給水口68に供給された水は、
給水バルブ70を介して外槽32内へ注水されると共に
バランス用注水バルブ72を介して外槽32に設けられ
た注水ノズル74から放出される。一方、外槽32内に
溜まった水は、排水バルブ76により開閉される排水口
78を通して外部に排出される。主プーリ60のリング
部には開口が円周上に一箇所設けられており、該リング
部を挟んで両側に発光部801と受光部802とが配置
されている。これにより、ドラム38が一回転する期間
に一回だけ発光部801から発した光が開口を通過して
受光部802に到達する。後述の回転センサは、この受
光信号に基づいてドラム38の回転に同期した検出信号
(回転マーカ)を出力する。
【0025】次に、上記バランサ46への注水及び排水
について図3を用いて詳述する。図3はバランサ46及
び水案内室48の作動状態を示した模式図である。ドラ
ム38が所定の回転速度以上で回転しているときに注水
ノズル74から水が放出されると、放出された水は注水
開口50を介して水案内室48に入り、ドラム38の後
壁面を伝わる等しつつ遠心力により外周側へ移動する。
そして、図3(a)に示すように、水は遠心力により水
案内室48外周壁内側に張り付いて保持される。なお、
注水開口50は面積が広いため、水圧のばらつき等によ
り注水ノズル74から放出された水の落下方向がばらつ
いても、その大部分は確実に水案内室48に飛び込む。
【0026】バランサ46は、主軸40に対し水案内室
48よりも更に外周側に広がる中空体となっている。こ
のため、水案内室48に注水された水は遠心力により注
水孔52を通ってバランサ46内部に入り込み、図3
(b)に示すようにバランサ46の外周壁側つまりドラ
ム38の内周壁面に張り付いて保持される。なお、水案
内室48の外周側には排水孔54も開口しており該排水
孔54を通して水案内室48から水が逃げるが、その排
水量は水案内室48に注水される水の量に比較して極め
て少ない。
【0027】バランサ46に溜まった水を排出する際に
は、バランサ46を回転円周上の最高位置で停止させ保
持する。すると、バランサ46内の水に作用する遠心力
が失われるため、図3(c)に示すように、水は注水孔
52を通って水案内室48へ流れ出て、水案内室48の
底部に溜まった水は丁度回転円周上の最低位置になって
いる排水孔54を通って外槽32へ流れ出る。注水孔5
2や排水孔54の開口面積は小さいが、バランサ46を
上記位置に保って暫時経過すれば、バランサ46及び水
案内室48内の水は完全に外槽32へ排出される。
【0028】次に、上記洗濯機における遠心脱水の関連
部分の電気的構成及び動作を図4を参照して説明する。
マイクロコンピュータを中心に構成される制御部10
は、中央制御部11、位相制御部12、偏芯荷重検知部
13及び注水制御部14から成る。中央制御部11は脱
水運転を進めるための運転プログラムが予め記憶された
メモリを含み、偏芯荷重検知部13から偏芯荷重の大き
さ及び位置に関する情報を受け取り、後述のように処理
して所望のドラム回転速度に対応したモータの目標回転
速度Npを位相制御部12に指示する。
【0029】モータ駆動部20は交流電源201と交流
スイッチ部202とから構成され、位相制御部12と共
にモータ62の回転速度制御部として機能する。モータ
62には回転速度検出器22が付設され、実際の回転速
度(以下「実回転速度」という)に応じた指標値が位相
制御部12にフィードバックされる。
【0030】モータ電流検出部21は、モータ駆動部2
0よりモータ62に供給される駆動電流を検出し、電圧
値に変換して偏芯荷重検知部13に与える。図5はモー
タ電流の時間変動の一例を示す図である。図中、回転マ
ーカMは、ドラム38に付設された回転センサ23によ
り得られるドラム38の一回転周期を示すマーカであ
る。ドラム38に偏芯荷重が存在していると、図5に示
すようにモータ電流はその偏芯荷重に応じた変動成分を
有する。このモータ電流の変動はモータ62の負荷トル
クの変動に対応したものであり、モータ電流の最大ピー
クはドラム38の一回転期間内で負荷トルクが最大にな
るときに現われる。また、モータ電流の変動振幅Lは偏
芯荷重の大きさ(偏芯量)に対応している。そこで、予
め変動振幅Lと偏芯量との対応関係を調べてメモリに記
憶しておき、この対応関係を利用して変動振幅Lより偏
芯量を求める。
【0031】偏芯荷重検知部13は、図5に示すような
モータ電流の変動成分を有する信号が入力されると、回
転マーカMの間隔毎つまりドラム38の一回転期間毎に
最大ピーク及び最小ピークを検出する。そして、その最
大及び最小ピークの差(変動振幅L)を算出し、メモリ
に記憶している上記対応関係を参照して偏芯量を得る。
また、最大ピークの出現するタイミング(例えば直前の
回転マーカMからの遅延時間)によりドラム38内周壁
面上での偏芯荷重の位置を検知する。
【0032】次に、上記位相制御部12及びモータ駆動
部20を中心とするモータ62の回転制御の動作を図6
を参照して詳述する。位相制御部12は、目標回転速度
に対応した指標値Npと実回転速度に応じた指標値Nrと
により後述のように制御角αを算出し、交流スイッチ部
202に入力する。また、交流電源201より、図6
(a)に示すような正弦波状の単相交流電流が交流スイ
ッチ部202に与えられる。交流スイッチ部202はト
ライアック等のゲート制御式半導体スイッチから成り、
制御角αに応じて上記交流電流をオン及びオフする。す
なわち、図6(b)に示すように基準となる位相角0度
の位置から制御角αだけ遅延した位置にパルス信号を生
成し、位相角0度〜αの期間は電流を遮断し、位相角α
〜180度の期間は電流を通過させるようにゲート制御
式半導体スイッチのオン/オフを制御する。これによ
り、図6(c)に斜線で示す範囲の断続的な電流がモー
タ62に駆動電流として供給される。従って、位相制御
部12は、モータ62を加速させるときには制御角αを
小さくし、逆に減速させるときには制御角αを大きくす
る。
【0033】本実施例の遠心脱水装置では、位相制御部
12は次式(1)〜(4)に基づき制御角αを決定している。 制御角α=一パルス前の制御角+制御角変化分Δα …(1) 制御角変化分Δα=絶対速度成分β+相対速度成分γ …(2) 絶対速度成分β=(目標回転速度パルス幅−実回転速度パルス幅) /定数a …(3) 相対速度成分γ=(一パルス前の実回転速度パルス幅 −実回転速度パルス幅)/定数b …(4) ここで、パルス幅は回転速度検出器22によりモータ6
2の一回転期間に所定個数得られるパルス信号の時間幅
であり、回転速度が速くなるほどパルス幅は小さくな
る。例えば、回転速度検出器22が一回転する間に10
個のパルス信号が得られる。また、通常、モータ62の
回転速度は減速してドラム38に伝達されるため、例え
ば、減速比が1/3であるとすると、ドラム38が一回
転する間にパルス信号は33乃至34個得られることに
なる。
【0034】上記(1)〜(4)式において、絶対速度成分β
は目標回転速度と実回転速度との差に基づく項であり、
相対速度成分γはモータ62又はドラム38がそれぞれ
所定角度回転する毎の回転速度の変動量に基づく項であ
って、定数a、bを適宜に定めることにより制御角変化
分Δαつまり制御角αに対する絶対速度成分βと相対速
度成分γとの寄与の割合を変えることができる。従来の
この種の回転制御では、予め目標回転速度と実回転速度
とをパラメータとして制御角αを決定する表形式の参照
データを作成してROM等に記憶しておき、目標回転速
度と実回転速度とを与えて制御角αの値を取得するよう
にしていた。このため、制御角αは参照データの精度に
依存してステップ状に変化され、ドラムの回転速度の上
昇・下降が必ずしも滑らかに行なわれなかった。しかし
ながら、本実施例では上述のような式に基づき制御角α
を算出しているので、制御角αをきめ細かく変化させる
ことができ、ドラムの回転速度の上昇・下降がより滑ら
かに行なわれる。
【0035】次に、上記構成の洗濯機における脱水行程
全体の制御の手順を図7のフローチャートに沿って説明
する。以下の説明では、ドラムの径を470mmとした
ときの数値を例に挙げているが、ドラム径が相違する場
合には各回転速度の数値を適宜変更することにより対応
可能であることは明白である。
【0036】洗い行程が終了し脱水行程が開始されると
き、ドラム38内部の洗濯物はその底部に重積した状態
にある。このときバランサ46には全く水が入っておら
ず、ドラム38自体は偏芯荷重を有していない。使用者
により操作部24から脱水行程の開始が指示されると、
モータ62は起動されて後述する偏芯荷重検知処理が実
行される(ステップS1)。このとき、ドラム38は、
洗濯物に作用する遠心力と重力とが均衡する回転速度よ
りも速い回転速度N1(例えば約130rpm)で一方
向に回転される。
【0037】上記ステップS1の偏芯荷重検知処理によ
り偏芯量と偏芯位置とが検知されると、次いで中央制御
部11により偏芯量が所定値a以下であるか否かが判定
される(ステップS2)。該ステップS2にて偏芯量が
所定値a以下であると判定されたときには、その状態の
まま脱水運転を実行しても振動や騒音が小さいと判断で
きる。そこで、ステップS6に進み、所定の高速回転速
度N2迄ドラム38の回転速度を上昇させる。これによ
り、洗濯物に浸透していた水は遠心力により飛散して脱
水される。ここで、高速回転速度N2は1000rpm
程度とすることができるが、布傷みを生じ易い洗濯物を
保護するためには、使用者によって指定された洗濯コー
ス(例えば毛布洗濯コース、ドライ専用衣類洗濯コース
等)に応じた上限値に制限することが好ましい。
【0038】上記ステップS2にて偏芯量が所定値aよ
り大きいと判定されると、次に偏芯位置がバランサ46
に180度対向する位置近傍の所定範囲内であるか否か
が判定される(ステップS3)。該所定範囲は、偏芯位
置の検知誤差等を勘案して主軸40に対しバランサ46
と180度対向する回転位置を中心に適宜の幅に設定さ
れる。該ステップS3にて偏芯位置が所定範囲内である
と判定されたときには、バランサ46に注水を行なうこ
とによりドラム38のバランス調整を行なうことが可能
であると判断できる。そこで、ステップS5へ進み、後
述のバランス注水運転を実行してバランスをとった後に
脱水運転を行なう(ステップS6)。
【0039】上記ステップS3にて偏芯位置がバランサ
46の対向位置近傍の所定範囲内でないと判定されたと
きには、洗濯物の再配置を行なうために後述のほぐし運
転が実行される(ステップS4)。
【0040】図8は上記ステップS4のほぐし運転時の
回転制御の一例を示すフローチャートである。ほぐし運
転では、まずドラム38の回転を一旦停止するか殆ど停
止する程度迄低下させる(ステップS41)。次に、ド
ラム38を洗い行程時の回転速度(例えば約55rp
m)で左方向に回転させ(ステップS42)、その後に
回転方向を反転させて同様の回転速度でドラム38を右
方向に回転させる(ステップS43)。そして、所定時
間が経過する迄左右反転を繰り返して(ステップS4
4)、ほぐし運転を終了する。これにより、ドラム38
内部で洗濯物が攪拌されるので、各洗濯物の隙間に空気
が入り込み、絡み合っていた洗濯物がほぐれて一枚一枚
の洗濯物が互いに離れ易くなる。このため、次にステッ
プS4からS1へ戻りドラム38の回転速度が低速回転
速度N1に迄上昇されたとき、ほぐれた洗濯物がドラム
38内周壁面上で均等に分散し易くなり、偏芯量が所定
値a以下に収まる可能性が高くなる。
【0041】また、図9は上記ステップS5のバランス
注水運転の制御の一例を示すフローチャートである。バ
ランス注水運転では、ドラム38の回転速度をN1(1
30rpm)に維持し偏芯量を検知しつつ(ステップS
51)、注水制御部14によりバランス用注水バルブ7
2を開放する(ステップS52)。これにより、前述の
ように注水ノズル74から水が放出されてバランサ46
に水が徐々に入ってゆき、遠心力によってドラム38の
内周壁面に張り付いた状態でバランサ46内に保持され
る。このとき同時に、徐々に変化する偏芯量が偏芯荷重
検知部13により検知され、中央制御部11により該偏
芯量が所定値b以下であるか否かが判定される(ステッ
プS53)。
【0042】ドラム38内の洗濯物は遠心力により完全
にその内周壁面に押し付けられた状態で回転し、一方バ
ランサ46内部の水の量は徐々に増え重量が増加してゆ
くから、図5に示したようなモータ電流の変動振幅Lは
次第に小さくなってゆく。上記ステップS53にて偏芯
量が所定値b以下であると判定されると、注水制御部1
4によりバランス用注水バルブ72は閉鎖される(ステ
ップS54)。これにより、バランサ46内部の水の増
加は停止し、洗濯物の偏在による偏芯荷重とバランサ4
6内の水との釣合によりドラム38全体の偏芯量は小さ
なものとなる。
【0043】次に、図10のフローチャートにより、本
発明の特徴である上記ステップS1の偏芯荷重検知処理
の動作を詳述する。まず、位相制御部12では初期制御
角α0が90度に設定され、これによりモータ駆動部2
0にて得られた駆動電流がモータ62に供給される(ス
テップS11)。次いで、位相制御部12では、モータ
62の回転時に得られるパルス信号が回転速度検出器2
2から入力されたか否かが判定される(ステップS1
2)。該ステップS12にてパルス信号が入力されてい
ないと判定されたときには、モータ62が回転していな
いと判断することができる。そこで、駆動電流を増すた
めに制御角αが1度減少され(ステップS13)、再び
上記パルス信号の入力の有無が判定される。従って、ス
テップS12〜S13の処理により、モータ62が回転
し始める迄制御角αは1度ずつ小さく修正される。
【0044】上記ステップS12にてパルス信号が入力
されていると判定されると、式(1)〜(4)における定数a
及びbをそれぞれ1000及び500と設定し、且つド
ラム38の回転速度が130rpmとなるようなモータ
62の回転速度を目標回転速度として位相制御が行なわ
れる(ステップS14)。これにより、ドラム38の回
転速度は130rpm近傍に維持される。回転速度が安
定するように数秒間経過した後に、偏芯荷重検知部13
ではモータ電流検出部21により検出された図5に示す
ような変動波形に基づき、変動振幅L及びピーク位置か
ら偏芯量と偏芯位置とがそれぞれ算出される(ステップ
S15)。
【0045】図11(a)は、a=1000、b=50
0と設定して位相制御を行なっているときの変動振幅L
と偏芯量との対応関係を示す図である。この位相制御の
条件では、偏芯量が500g以下の範囲において偏芯量
に対する変動振幅Lの傾斜がほぼ直線で且つ急峻である
ので、偏芯量を精度良く求めることができる。しかしな
がら、偏芯量が500gを越える範囲ではその傾斜は緩
やかになり偏芯量の検知誤差が大きくなる。
【0046】その理由は次のように考えられる。すなわ
ち、偏芯荷重がドラム38の回転に伴って回転すると
き、ドラム38を支持している主軸40には首振りの力
が加わるので、該主軸40と軸受58との摩擦力は偏芯
荷重が存在しないときと比較して大きくなる。偏芯荷重
をドラム38の上方に持ち上げようとするときには、図
12(a)に示すように、該偏芯荷重に作用する重力は
ドラム38の回転と逆方向に作用するため、ドラム38
の回転速度を遅くするように働く。一方、偏芯荷重がド
ラム38の最高位置を通過して下方に下がろうとすると
きには、図12(b)に示すように、該偏芯荷重に作用
する重力はドラム38の回転と同一方向に作用するた
め、ドラム38の回転速度を速くするように働く。とこ
ろが、偏芯量が比較的小さい範囲では、相対的に上記摩
擦力が大きいために、重力により回転速度の変化を促進
する力の影響が小さい。
【0047】上記(1)〜(4)式において、相対速度成分γ
はモータ62の回転速度の変動量に応じた項であり、定
数bが大きいほど該変動量に対する制御角αは小さい。
上述のように、例えばドラム38が一回転する間に回転
速度検出器22より34個のパルス信号が得られるとす
ると、相対速度成分γはドラム38が約11度回転する
毎の回転速度の変動に応じたものとなる。つまり、偏芯
荷重がドラム38内周上で11度回転する毎の回転速度
の変動量を反映したものとなっている。
【0048】上述のように摩擦力の影響が大きな範囲つ
まり偏芯量が小さな範囲では、このような回転速度の変
動は小さいので、定数bを相対的に大きくしておく。と
ころが、偏芯量が大きくなり上記摩擦力の影響が無視で
きる程度に小さくなると、偏芯荷重による回転速度の変
動量が相対的に大きくなり、上記のように相対速度成分
γの項が小さいと回転速度の変動に対する追従特性が劣
化してしまう。この結果、図11(a)に示すように偏
芯量の変化分に対するモータ電流の変動が小さくなる。
【0049】そこで、このように偏芯量が大きな範囲で
は、制御角αを算出する際に、絶対速度成分βの寄与を
減じ相対速度成分γの寄与の割合を増す。すなわち、上
記(1)〜(4)式において、定数aを大きくする一方、定数
bを小さくする。これにより、同一の回転速度に維持す
るように位相制御する場合であっても、回転速度の変動
に対する追従特性が良くなる。
【0050】図10に戻り説明すると、上記ステップS
15にて偏芯量が一旦検知された後、偏芯量が500g
以上であるか否かが判定される(ステップS16)。そ
して、該ステップS16にて偏芯量が500gを越えて
いると判定されたときには、位相制御部12は定数a及
びbをそれぞれ2000及び250に変更した上でドラ
ム38の回転速度が130rpmとなるようなモータ6
2の回転速度を目標回転速度として位相制御を行なう
(ステップS17)。
【0051】図11(b)は、a=2000、b=25
0と設定して位相制御を行なっているときの変動振幅L
と偏芯量との対応関係を示す図である。このような定数
の条件下では、偏芯量が大きい範囲において上述のよう
に回転速度の変動に対する追従特性が良くなるため、傾
斜がほぼ直線で且つ急峻になり、偏芯量を精度良く検知
することができる。
【0052】上記条件による位相制御の下でドラム38
が回転しているとき、偏芯荷重検知部13では、再びモ
ータ電流の変動波形に基づき偏芯量と偏芯位置とがそれ
ぞれ算出される(ステップS18)。そして、上記ステ
ップS15にて検知された偏芯量及び偏芯位置に代わっ
て、新たに検知された偏芯量及び偏芯位置が採用され
る。
【0053】従って、上記一連の処理により、偏芯量が
500g未満の場合とそれ以上の場合とにおいてそれぞ
れ相違する定数に基づいて位相制御が行なわれるので、
広い範囲の偏芯量をそれぞれ精度良く検知することがで
きる。
【0054】なお、上記実施例では、モータの位相制御
のための制御角αを式(1)〜(4)により算出していたが、
目標回転速度及び実回転速度と制御角変化分Δαとの対
応関係を表形式で数値化しておき、これをメモリに記憶
しておくようにしてもよい。すなわち、偏芯量が小さい
範囲において位相制御を行なうための制御角変化分Δα
を求める第一の表と、偏芯量が大きい範囲において位相
制御を行なうための制御角変化分Δαを求める第二の表
とをそれぞれメモリに用意しておき、まず第一の表を参
照して制御角αを得て位相制御を行ない偏芯荷重を検知
し、上記ステップS16にて該偏芯量が500g以上で
あった場合には、第二の表を参照して制御角αを得て位
相制御を行ない再度偏芯荷重を検知する。
【0055】また、上記実施例では、位相制御によりモ
ータの回転速度を一定に制御していたが、例えばパルス
幅を変化させてモータに供給する駆動電流を調整するP
WM制御によりモータの回転速度を一定に制御する構成
にも適用することができる。
【0056】なお、上記実施例はドラム式洗濯機につい
て説明したが、本発明が石油系溶剤等を使用したドライ
クリーナに適用できることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による遠心脱水装置を備えた
ドラム式洗濯機の側面断面図。
【図2】 図1の洗濯機の要部の背面透視図。
【図3】 本実施例の遠心脱水装置におけるバランサへ
の水の注入・排出の状態を示す模式図。
【図4】 本実施例の遠心脱水装置の電気系ブロック構
成図。
【図5】 偏芯荷重の影響によるモータ電流の変動の一
例を示す図。
【図6】 本実施例におけるモータの速度制御動作を説
明するための波形図。
【図7】 本実施例における脱水運転時の制御動作を示
すフローチャート。
【図8】 本実施例における脱水運転時の制御動作を示
すフローチャート。
【図9】 本実施例における脱水運転時の制御動作を示
すフローチャート。
【図10】 本実施例における偏芯荷重の検知動作を示
すフローチャート。
【図11】 モータ電流の変動振幅と偏芯量との対応関
係を示す図。
【図12】 偏芯荷重が存在する場合のドラムの回転状
況を示す模式図。
【符号の説明】
10…制御部 11…中央制御部 12…位相制御部 13…偏芯荷重検
知部 14…注水制御部 20…モータ駆動部 201…交流電源 202…交流スイッチ部 21…モータ電流検出部 22…回転速度検
出器 23…回転センサ 38…ドラム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀田 修司 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 原田 哲夫 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平9−10481(JP,A) 特開 平9−10482(JP,A) 特開 平8−309077(JP,A) 特開 平4−250196(JP,A) 特開 平3−66197(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06F 49/04 D06F 33/02 H02P 5/402 301

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 籠状のドラム内に洗濯物を収容し該ドラ
    を回転させることにより該洗濯物の脱水を行なう遠心
    脱水装置において、 a)ドラムを回転駆動するモータと、 b)該モータの回転速度を検出する回転速度検出手段
    と、 c)前記ドラムが有する偏芯荷重を検知すべく前記モー
    タの回転速度を目標回転数近傍に維持する段階におい
    て、前記速度検出手段により検出された前記モータの実
    際の回転速度である実回転速度が目標回転速度となるよ
    うに前記モータの回転速度を制御する回転速度制御手段
    と、 d)該回転速度制御手段により前記モータに供給される
    駆動電流の変動に基づき、ドラムが有する偏芯荷重を検
    知する偏芯荷重検知手段と、 を具備し、前記回転速度制御手段は、目標回転速度と実
    回転速度との差分に基づく絶対速度成分と実回転速度の
    変動量に基づく相対速度成分との和により回転速度を制
    御するための制御量を算出し、前記偏芯荷重検知手段に
    より検知された偏芯荷重が大きいときに該相対速度成分
    の寄与の割合を増すことを特徴とする遠心脱水装置。
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