JPH1171636A - 耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度高加工性熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度高加工性熱延鋼板およびその製造方法Info
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- JPH1171636A JPH1171636A JP15453398A JP15453398A JPH1171636A JP H1171636 A JPH1171636 A JP H1171636A JP 15453398 A JP15453398 A JP 15453398A JP 15453398 A JP15453398 A JP 15453398A JP H1171636 A JPH1171636 A JP H1171636A
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Abstract
で、かつ動的n値が0.35以上の優れた成形性と耐衝撃特
性を兼ね備え、しかも板幅方向にわたる材質均一性にも
優れた高強度高加工性熱延鋼板を提供する。 【解決手段】 C:0.05〜0.40mass%、Si:1.0 〜3.0
mass%、Mn:0.6 〜3.0mass%を含有する組成になる鋼
スラブを、1000〜1300℃に加熱し、粗圧延後、仕上げ圧
延を 780〜980 ℃の温度で終了し、ついで1秒以内に 1
00℃/s以上の速度で冷却する直近急冷処理により 620〜
780 ℃まで冷却した後、1〜10秒間の等温保持処理また
は冷却速度:20℃/s以下の徐冷処理を施し、ついで同じ
く 100℃/s以上の冷却速度で 350〜500 ℃まで冷却して
から、コイルに巻き取り、しかるのち10〜100 ℃/hの冷
却速度で 300℃以下まで冷却する。
Description
しての用途に用いて好適な耐衝撃特性および材質均一性
に優れた高強度高加工性熱延鋼板およびその製造方法に
関するものである。
に優れる高強度薄鋼板に対する要求が殊の外強くなって
いる。また、最近では、自動車の安全性も重視され、そ
のためには衝突時における安全性の目安となる耐衝撃特
性の向上も要求されている。さらに、経済性に対する配
慮も必要とされ、かかる経済性を考慮した場合には、冷
延鋼板に比べると熱延鋼板の方が有利である。
々の高強度熱延鋼板が開発されている。例えば、特公平
6-41617号、特公平5-65566号および特公平5-67682号
各公報には、高加工性高強度熱延鋼板として、フェライ
ト、ベイナイトおよび5%以上の残留オーステナイトを
含むいわゆる Transformation Induced Plasticity鋼
(以下、TRIP鋼という)の製造方法が開示されてい
る。
高く、成形性は良好ではある(TS×El≧ 24000 MPa・
%)ものの、現在の厳しい耐衝撃特性を満足するまでに
はいかず、また均質性の点にも問題を残していた。さら
に、プレス成形時における加工硬化量(WH)およびそ
の後の塗装焼付時における焼付硬化量(BH)が、70 M
Pa程度と低いという問題もあった。この加工・焼付硬化
量(WH+BH)が低いと、加工−塗装焼付後における
強度保証の面での不利が大きい。
としては、特開平9−111396号公報に開示されているよ
うに、フェライトとマルテンサイトの2相組織になるい
わゆるDual Phase鋼(以下DP鋼という)が開発されて
いる。しかしながら、このDP鋼は、耐衝撃特性には優
れるものの、伸びが十分とはいえず、成形性の点に問題
を残していた。さらに、これらの複合組織鋼とくにTR
IP鋼は、製造条件に敏感であり、例えば板幅方向の端
部などでは熱履歴が中央部と異なるために、中央部と同
等の特性を得ることが難しいというところにも問題を残
していた。
までのところ、十分な成形性と厳しい安全性の両者を満
足する熱延鋼板および端部付近まで材質が良好な熱延鋼
板は見当たらず、その開発が望まれていた。この発明
は、上記の要望に有利に応えるもので、優れた成形性と
耐衝撃特性、さらには材質均一性を兼ね備えた(具体的
には、板幅全体にわたる強度−伸びバランス(TS×El)
が 24000 MPa・%以上、(WH+BH)が 100 MPa以
上、動的n値が0.35以上)、高強度高加工性熱延鋼板
を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とす
る。
特性の指標として新たに見出したもので、この動的n値
を用いることによって、耐衝撃特性を従来よりも一層的
確に評価することができる。すなわち、従来、耐衝突安
全性については、強度との関連で考察され、単に強度が
大きければ耐衝突安全性も高いとされてきたが、強度と
耐衝突安全性とは必ずしも一義的な関係にあるわけでは
ないことが判明した。そこで、この点につき、鋭意研究
を重ねた結果、耐衝突安全性を向上させる、つまり高速
での変形時(自動車の衝突時にはひずみ速度
より多く吸収するためには、鋼板を
う)を高くすることが有効であることが解明されたので
ある。ここでは、伸び10%における瞬間n値を動的n値
とする。なお、この動的n値を高くすることは、高速変
形時における強度向上にも有効であることが併せて見出
されている。
緯について説明する。さて、発明者らは、上記の目的を
達成すべく、まず従来鋼であるTRIP鋼について、そ
の組織と特性との関係について調査した。その結果、T
RIP鋼においては、従来、成形性の向上に有利な残留
オーステナイトを十分な量得るためには、ベイナイト相
を生成させることが不可欠とされてきたが、このベイナ
イト相が耐衝撃特性を劣化させる原因になっていること
が判明した。
相とくに炭化物の生成を抑制したところ、すなわち、主
相である初析フェライト以外の第2相を、従来のベイナ
イト+残留オーステナイトから、針状フェライト+マル
テンサイト+残留オーステナイトの混合組織に変更した
ところ、所期した目的の達成に関し、望外の成果が得ら
れたのである。
らは先に、特願平9−139794号公報において、適量のCr
を含有させることの有用性について開示した。しかしな
がら、かようなコスト高となる元素の添加によらずに所
望の混合組織を得ることができれば、経済的に極めて有
利である。そこで、発明者らは、Crの添加によらずに所
望の混合組織を得べく鋭意研究を重ねた結果、製造条件
を的確に制御することによって、上記の目的が有利に達
成されることの知見を得た。この発明は、上記の知見に
立脚するものである。
りである。 1. C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 ma
ss%、Mn:0.6 〜3.0 mass%を含有し、残部は実質的に
Feの組成になり、初析フェライトを主相として、マルテ
ンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトか
らなる第2相を有することを特徴とする耐衝撃特性およ
び材質均一性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
ことを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた
高強度高加工性熱延鋼板。
さらに Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
ことを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた
高強度高加工性熱延鋼板。
1.0 〜3.0 mass%、Mn:0.6 〜3.0 mass%を含有する組
成になる鋼スラブを、1000〜1300℃に加熱し、粗圧延
後、仕上げ圧延を 780〜980 ℃の温度で終了し、この仕
上げ圧延終了直後1秒以内に 100℃/s以上の冷却速度で
620〜780 ℃まで冷却したのち、1〜10秒間の等温保持
処理または冷却速度:20℃/s以下の徐冷処理を施し、つ
いで同じく 100℃/s以上の冷却速度で 350〜500 ℃まで
冷却してから、コイルに巻き取り、しかるのち10〜100
℃/hの冷却速度で 300℃以下まで冷却することを特徴と
する耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度高加工
性熱延鋼板の製造方法(製造法)。
1.0 〜3.0 mass%、Mn:0.6 〜3.0 mass%を含有する組
成になる鋼スラブを、1000〜1300℃に加熱し、粗圧延
後、仕上げ圧延を 780〜980 ℃の温度で終了し、この仕
上げ圧延終了直後1秒以内に 100℃/s以上の冷却速度で
620〜780 ℃まで冷却したのち、1〜10秒間の等温保持
処理または冷却速度:20℃/s以下の徐冷処理を施し、つ
いで同じく 100℃/s以上の冷却速度で 350〜500 ℃まで
冷却してから、コイルに巻き取り、しかるのち2〜60分
間の等温保持処理または冷却速度:50℃/h未満の緩冷処
理後、50℃/h以上の冷却速度で 300℃以下まで冷却する
ことを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた
高強度高加工性熱延鋼板の製造方法(製造法)。
る。図1に、従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態
曲線図(CCT図)を示す。同図に示したとおり、従来
のTRIP鋼は、熱間圧延後、初析フェライト域に若干
保持して初析フェライト(ポリゴナルフェライトともい
う)を析出させ、同時に未変態オーステナイト相への固
溶炭素の濃縮を促進して、オーステナイトの安定度を増
したのち、ベイナイト域に導き、この領域を徐冷するこ
とによって、ベイナイト変態を生じさせつつ、所定量の
オーステナイトを残留させていた。しかしながら、この
ようにして製造されたTRIP鋼は、強度および加工性
の面では優れるものの、十分な耐衝撃特性が得られない
ことは前述したとおりである。
避すべく数多くの実験と検討を重ねた結果、(1) 熱間圧
延後、できる限り短時間の内に急冷を開始するいわゆる
直近急冷処理を施すと、上記CCT図におけるベイナイ
ト変態域のノーズが後退して、ベイナイトの析出(特に
炭化物の析出)が抑制され、代わりに針状フェライト
(アシキュラーフェライトともいう)が析出する、(2)
かようにして形成された、針状フェライト、残留オース
テナイトおよびマルテンサイトからなる第2相は、成形
性を阻害することなしに、耐衝撃特性を格段に向上させ
る、(3) また、かような直近急冷処理を採用した場合に
は、フェライト変態が均一に進行して、鋼板全体にわた
る材質が均一になることを究明したのである。
を示す。同図に示したとおり、直近急冷処理によってベ
イナイト変態域のノーズが後退し、代わりに針状フェラ
イト域が顕著に出現するので、この針状フェライト域に
短時間保持し、その後に急冷することによって、第2相
を針状フェライト、残留オーステナイトおよびマルテン
サイトからなる混合組織とすることができ、かくして優
れた成形性と耐衝撃特性とを兼ね備えた熱延鋼板を得る
ことができたのである。また、かようにして得られた熱
延鋼板は、均質性にも優れ、板全体にわたって均一な材
質のものを得ることができた。
径が概ね5μm 以下、アスペクト比が1:1.5 以上、そ
してセメンタイト析出量が5%以下のものをいう。な
お、従来のTRIP鋼のベイナイト中には、セメンタイ
トの析出が多く認められる(10%以上)ので、この発明
の針状フェライトとTRIP鋼のベイナイトとは明確に
区別されるものである。
相の特徴的な相構成を、また図3(b) には、従来のTR
IP鋼の第2相の相構成を、それぞれ模式で示す。従来
のTRIP鋼の第2相は、ベイナイト中に残留オーステ
ナイトが点在する相構成になっているのに対し、この発
明の第2相は、針状フェライトとマルテンサイトが層状
にならび、その界面(マルテンサイト側)に残留オース
テナイトが点在する形態になっている。このように、第
2相中に針状フェライトを析出させたことが、この発明
の特徴の一つであり、この針状フェライト相がTS×Elを
増加させると共に、動的n値を向上させるものと考えら
れる。なお、発明者らの知見によれば、針状フェライト
とマルテンサイトの界面面積率が大きくなるほど、動的
n値は大きくなる傾向にあることが確認されている。
織中に占める比率は3〜40%とすることが好ましい。と
いうのは、相比率が3%に満たないと十分な耐衝撃特性
が得られず、一方40%を超えると伸びひいては強度−伸
びバランスがが低下するからである。より好ましい比率
は10〜30%である。なお、この発明において、相比率
は、鋼試料を研磨後、2%硝酸+エチルアルコール溶液
でエッチングし、顕微鏡写真を画像解析することにより
算出した。
は、マルテンサイト:10〜80%(好ましくは30〜60
%)、残留オーステナイト:8〜30%(好ましくは10〜
20%)、針状フェライト:5〜60%(好ましくは20〜50
%)とすることが望ましい。というのは、マルテンサイ
トの比率が10%に満たないと十分な耐衝撃特性が得られ
ず、一方80%を超えると伸びひいては強度−伸びバラン
スが低下するからである。また、残留オーステナイトの
比率が8%に満たないと十分な伸びが得られず、一方30
%を超えると耐衝撃特性が低下するからである。さら
に、針状フェライトの比率が5%に満たないとやはり良
好な耐衝撃特性が得られず、一方60%を超えると伸びが
低下するからである。
ては、マルテンサイトおよび針状フェライトはそれぞれ
5〜15%、残留オーステナイトは2〜10%程度とするの
が好適である。また、この発明において、鋼組織は全
て、主相である初析フェライトと、第2相であるマルテ
ンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトの
混合相からなっているとは限らず、ベイナイト相などが
若干析出する場合もあるが、かような第3相が混入して
も、その比率が第2相全体の10%以下であれば特性上何
ら問題はない。
を前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.05〜0.40mass% Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オー
ステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしなが
ら、含有量が0.05mass%未満では、その効果に乏しく、
一方0.40mass%を超えると延性を低下させるので、C量
は0.05〜0.40mass%の範囲に限定した。
り、そのためには少なくとも 1.0mass%の添加を必要と
するが、 3.0mass%を超える添加は、延性の低下を招く
だけでなく、スケール性状を低下させ表面品質上も問題
となるので、Si含有量は 1.0〜3.0 mass%の範囲に限定
した。
ステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしなが
ら、含有量が 0.6mass%未満ではその効果に乏しく、一
方 3.0mass%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は
0.6〜3.0 mass%の範囲に限定した。
発明では、オーステナイト生成元素としてPやAl、また
強度改善成分としてTiやNbを、以下の範囲で適宜含有さ
せることができる。 P:0.01〜0.2 mass% Pは、残留オーステナイト生成元素として有用である
が、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏
しく、一方 0.2mass%を超えると耐二次加工性が劣化す
るので、添加する場合には0.01〜0.2 mass%の範囲とす
ることが望ましい。
用なものであるが、含有量が0.01mass%に満たないとそ
の添加効果に乏しく、一方 0.3mass%を超えると延性の
低下を招くので、添加する場合には0.01〜0.3 mass%の
範囲とすることが望ましい。
させることによって、強度の向上に有効に寄与するの
で、必要に応じて添加することができる。特にTiを含有
させると、針状フェライトのノーズが短時間側に移行
し、コイルミドル部と比較して冷却速度が速くなるコイ
ル端部においても十分針状フェライトが析出するので、
歩留りが向上する効果もある。しかしながら、含有量が
あまりに少ないとその添加効果に乏しく、一方過度の添
加は延性の低下を招くので、それぞれ上記の範囲で含有
させることが好ましい。なお、その他の元素について
は、成形性を維持するために、Sは0.01mass%以下、N
は0.01mass%以下とすることが好ましい。
すると、この発明鋼は、要するに、第2相としてマルテ
ンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトか
らなる混合組織を形成させれば良いのであるから、前掲
図2に示した冷却曲線に沿って、冷却させれば良い。そ
して、特に熱間圧延終了後の冷却処理として直近冷却処
理を採用すれば良いのである。
行うが、この加熱温度は1000〜1300℃とする必要があ
る。というのは、スラブ加熱温度が1000℃に満たないと
鋼板の表面品質の劣化が著しく、一方1300℃を超えると
鋼の結晶粒が粗大化して、材質の均質性および延性の劣
化を招くからである。なお、加熱時間については、特に
限定されることはないが、あまりに長いと結晶粒が粗大
化するので、60分以下程度とするのが好ましい。
て所望の板厚とする。この時、仕上げ圧延における圧延
終了温度は 780〜980 ℃とする必要がある。というの
は、仕上げ圧延終了温度が 780℃に満たないと鋼中に加
工組織が残存して延性の劣化を招き、一方 980℃を超え
ると組織が粗大化し、フェライト変態の遅延に起因して
成形性の低下を招くからである。
を施すわけであるが、この発明ではこの冷却処理が特に
重要である。すなわち、熱間仕上げ圧延終了後、1秒以
内に 100℃/s以上の速度で強制的に冷却するいわゆる直
近急冷処理を施すのである。ここに、急冷開始時間が1
秒を超えると、組織が粗大化するだけでなく、板幅方向
の組織が不均一となってフェライト変態が遅延かつ不均
一となり、材質の均一性および延性が劣化するので、熱
間圧延終了後の冷却開始時間は1秒以内に限定した。
ないと、やはり板幅方向にわたる組織の不均一に起因し
てフェライト変態が遅延かつ不均一となり、材質均一性
および延性の点で問題が生じるので、冷却速度は 100℃
/s以上に限定した。とはいえ、冷却速度が 300℃/sを超
えると鋼板形状の悪化が懸念されるので、冷却速度の上
限は 300℃/s程度とするのが好適である。
析フェライト域のノーズ近傍まで冷却したのち、この温
度に1〜10秒間保持するかまたは20℃/s以下の速度で徐
冷することによって、主相である初析フェライトを析出
させる。上記した 620〜780 ℃という温度範囲は、フェ
ライト変態が最もスムーズに進行する温度範囲なので、
1〜10秒間程度の短時間の保持処理または徐冷処理によ
って、所望量の初析フェライトを得ることができる。な
お、徐冷処理の場合、冷却停止温度が 600℃を下回ると
パーライト変態が生じるおそれがあるので、冷却停止温
度は 600℃以上とすることが好ましい。
まで冷却するが、この際の冷却速度も 100℃/s以上とす
る必要がある。というのは、この時の冷却速度が 100℃
/hに満たないと、板幅方向の組織が不均一になるだけで
なく、パーライト変態が生じて材質の均一性と延性が劣
化するからである。なお、この場合も冷却速度の上限に
ついては、鋼板形状の面から 300℃/s程度とするのが好
ましい。
℃/hの冷却速度で徐冷することにより、所望量の針状フ
ェライトを析出させる。上記の徐冷処理において、冷却
速度が10℃/hに満たないとベイナイト変態が生じるおそ
れが大きく、一方 100℃/hを超えると所望量の針状フェ
ライトが得難くなるので、冷却速度は10〜100 ℃/hの範
囲に限定した。
以下まで冷却する間に、未変態のオーステナイトが、一
部マルテンサイトに変態し、一部はそのままオーステナ
イトとして残留するわけである。なお、かような徐冷処
理における冷却停止温度を 300℃以下としたのは、やは
りベイナイト変態が生じるおそれを回避するためであ
る。
イト主相中に、針状フェライト、マルテンサイトおよび
残留オーステナイトからなる第2相が存在する、所望の
鋼組織とすることができるのである。また、かような直
近急冷により得られた材料はすべて、結晶粒径が10μm
以下の微細粒となっており、また材質均一性にも優れて
いた。
巻き取り後、10〜100 ℃/hの冷却速度で 300℃以下まで
冷却する徐冷処理(図2中イ)に代えて、コイルに巻き
取り後、2〜60分間の等温保持または冷却速度:50℃/h
未満の緩冷却を施したのち、強制冷却により50℃/h以上
の冷却速度で 300℃以下まで冷却する処理(図2中ロ)
を行うこともできる。
おいて、保持または緩冷時間を2〜60分に限定したの
は、保持または緩冷時間が2分に満たないと十分な量の
針状フェライトが得られず、一方60分を超えるとベイナ
イト変態の惹起が懸念されるからである。また、緩冷却
における冷却速度を50℃/h未満とした理由は、この速度
があまりに大きいとやはり十分な量の針状フェライトが
得られないからであり、さらに等温保持または緩冷却後
の冷却速度を50℃/h以上とした理由は、この速度が小さ
いとベイナイト変態が生じるおそれが避けられないから
である。
を含有し、残部は実質的にFeの組成になる鋼スラブを、
熱間圧延後、図4に示すパターンに従い、表1に示す種
々の条件で室温まで冷却した。得られた熱延板から、引
張試験片を切り出し、それらの試験片について、ひずみ
速度:2×10-2/sの条件で引張試験を実施し、降伏強さ
(YS)、引張強さ(TS)および伸び(El)を求めた。また、ホ
プキンソンプレッシャーバー試験材(材料とプロセス v
ol.9 (1996)P.1108〜1111)を用いて、ひずみ速度:2
×103/s の条件で引張試験を実施し、伸びが10%の時の
瞬間n値(動的n値)を求めた。さらに、プレス成形時
における加工硬化量(WH)およびその後の塗装焼付時
(170 ℃)における焼付硬化量(BH)についても測定
した。なお、WH、BHは、ひずみ速度:2×10-2/s
の引張試験機を用い、図5により求めた。得られた熱延
板の板幅方向にわたる強度−伸びバランスについて調査
した結果を図6に示す。また、動的n値および加工・焼
付硬化量(WH+BH)についての測定結果を表1に併
記する。
い、熱間圧延後、直近急冷処理を施した場合には、板幅
全体にわたって(TS×El)≧24000MPa・%という優れた
強度−伸びバランスを得ることができた。これに対し、
冷却速度は適正範囲を満足していても、急冷開始時間が
1.2秒とこの発明の要件( 1.0秒以内)を満たさなかっ
た場合(No.2)には、板幅中央部は(TS×El)≧24000M
Pa・%であったものの、その値は端部にいくほど低下
し、両端部では 20000〜21000MPa・%程度にまで劣化し
ていた。
加熱後、粗圧延し、ついで仕上げ温度:850 ℃で熱間仕
上げ圧延を終了したのち、0.8 秒以内に 160℃/sの速度
で 720℃まで冷却し、この温度に5秒保持してから、11
0 ℃/sの速度で450 ℃まで冷却したのち、コイルに巻取
り、一部は引き続き50℃/hの速度で室温まで冷却した
(製造パターン)。また、残りについては、巻取り
後、15分間保持してから、120 ℃/hの速度で室温まで冷
却した(製造パターン)。ここで、各鋼ともSは10〜
20 ppm、Nは20〜30 ppmの範囲であった。各熱延板の鋼
組織、TS×Elバランス、(WH+BH)および動的n値
について調べた結果を、表3に示す。
間圧延後に直近急冷処理を施して、第2相として、マル
テンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイト
の混合組織を形成させたものはいずれも、板幅全体にわ
たりTS×El≧ 24000 MPa・%という優れた強度−伸びバ
ランスが得られただけでなく、WH+BH≧100 MPaと
いう良好な加工・焼付硬化性および動的n値≧0.35とい
う優れた耐衝撃特性が併せて得られている。
後、直近処理を施して、主相が初析フェライト、第2相
がマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステ
ナイトからなる混合組織とすることにより、優れた成形
性と耐衝撃特性とを兼ね備え、しかも材質均一性にも優
れた熱延鋼板を得ることができる。
図(CCT図)である。
曲線図(CCT図)である。
相構成および(b) 従来のTRIP鋼の第2相の相構成を
示す模式図である。
る。
の説明図である。
ある。
Claims (5)
- 【請求項1】 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass% を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、初析フェラ
イトを主相として、マルテンサイト、針状フェライトお
よび残留オーステナイトからなる第2相を有することを
特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度
高加工性熱延鋼板。 - 【請求項2】 請求項1において、鋼組成が、さらに P:0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
ことを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた
高強度高加工性熱延鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2において、鋼組成が、
さらに Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
ことを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた
高強度高加工性熱延鋼板。 - 【請求項4】 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass% を含有する組成になる鋼スラブを、1000〜1300℃に加熱
し、粗圧延後、仕上げ圧延を 780〜980 ℃の温度で終了
し、この仕上げ圧延終了直後1秒以内に 100℃/s以上の
冷却速度で 620〜780 ℃まで冷却したのち、1〜10秒間
の等温保持処理または冷却速度:20℃/s以下の徐冷処理
を施し、ついで同じく 100℃/s以上の冷却速度で 350〜
500 ℃まで冷却してから、コイルに巻き取り、しかるの
ち10〜100℃/hの冷却速度で 300℃以下まで冷却するこ
とを特徴とする耐衝撃特性および材質均一性に優れた高
強度高加工性熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass% を含有する組成になる鋼スラブを、1000〜1300℃に加熱
し、粗圧延後、仕上げ圧延を 780〜980 ℃の温度で終了
し、この仕上げ圧延終了直後1秒以内に 100℃/s以上の
冷却速度で 620〜780 ℃まで冷却したのち、1〜10秒間
の等温保持処理または冷却速度:20℃/s以下の徐冷処理
を施し、ついで同じく 100℃/s以上の冷却速度で 350〜
500 ℃まで冷却してから、コイルに巻き取り、しかるの
ち2〜60分間の等温保持処理または冷却速度:50℃/h未
満の緩冷処理後、50℃/h以上の冷却速度で 300℃以下ま
で冷却することを特徴とする耐衝撃特性および材質均一
性に優れた高強度高加工性熱延鋼板の製造方法。
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JP15453398A JP3684850B2 (ja) | 1997-06-23 | 1998-06-03 | 耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度高加工性熱延鋼板およびその製造方法 |
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JP16613697 | 1997-06-23 | ||
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JPH1171636A true JPH1171636A (ja) | 1999-03-16 |
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JP15453398A Expired - Lifetime JP3684850B2 (ja) | 1997-06-23 | 1998-06-03 | 耐衝撃特性および材質均一性に優れた高強度高加工性熱延鋼板およびその製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3684850B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000054072A (ja) * | 1998-08-03 | 2000-02-22 | Kobe Steel Ltd | プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板 |
JP2004508944A (ja) * | 2000-09-29 | 2004-03-25 | ニューコア・コーポレーション | 薄鋼ストリップの製造 |
KR100450613B1 (ko) * | 1999-12-28 | 2004-09-30 | 주식회사 포스코 | 충격인성이 우수한 후판용접용 선재의 제조방법 |
KR101490579B1 (ko) * | 2013-02-06 | 2015-02-05 | 주식회사 포스코 | 스케일 박리성이 우수한 용접봉용 선재 및 그 제조방법 |
-
1998
- 1998-06-03 JP JP15453398A patent/JP3684850B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2000054072A (ja) * | 1998-08-03 | 2000-02-22 | Kobe Steel Ltd | プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板 |
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JP2004508944A (ja) * | 2000-09-29 | 2004-03-25 | ニューコア・コーポレーション | 薄鋼ストリップの製造 |
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KR101490579B1 (ko) * | 2013-02-06 | 2015-02-05 | 주식회사 포스코 | 스케일 박리성이 우수한 용접봉용 선재 및 그 제조방법 |
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JP3684850B2 (ja) | 2005-08-17 |
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