JPH1164309A - 圧延材の材料特性測定方法及び装置 - Google Patents

圧延材の材料特性測定方法及び装置

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JPH1164309A
JPH1164309A JP9229192A JP22919297A JPH1164309A JP H1164309 A JPH1164309 A JP H1164309A JP 9229192 A JP9229192 A JP 9229192A JP 22919297 A JP22919297 A JP 22919297A JP H1164309 A JPH1164309 A JP H1164309A
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measuring
rolled material
wave
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rolled
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JP9229192A
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Inventor
Gakuo Ogawa
岳夫 小川
Katsuya Takaoka
克也 高岡
Akio Suzuki
紀生 鈴木
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧延材の結晶異方性の検査を行う従来の圧延
材の材料特性測定装置では,板厚方向の材料特性分布を
測定することができず,被測定材をスライスして求める
必要があり,測定に時間がかかる等の欠点があった。 【解決手段】 本発明は,圧延材の板厚方向に略垂直な
方向の異なる2つ以上の面で表面波の伝播時間を測定す
るか,若しくは圧延方向に対して異なる2つ以上の方向
で内部伝播波及び表面波の伝播時間を測定することによ
り,スライスすることなく簡便迅速に板厚方向の材料特
性分布を測定することを図ったものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,圧延材の材料特性
測定方法及び装置に係り,詳しくは,例えば鋼やアルミ
ニウム等の金属圧延板の厚さ方向の材料特性分布を従来
より簡便に測定評価することのできる圧延材の材料特性
測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば鋼やアルミニウム等の金属圧延板
は,その圧延工程において生成される集合組織によって
弾性的に異方性を示す。ここで,集合組織とは,多結晶
体である金属組織において,結晶方位が特定の方向に偏
っているか否かを示す指標をいい,金属圧延板のように
集合組織がある材料は,結晶がランダムに配向した等方
的な結晶粒群と,集合組織で定まる特定の配向を有する
単結晶粒群との混合体であるということができる。とこ
ろで,単結晶を塑性変形させた場合,変形は等方的に進
むわけではなく,結晶方位で定まる一定方向に偏って進
む。同様に,金属圧延板のように集合組織がある場合,
結晶方位が特定方向に揃っているためその塑性変形は異
方的に進み,これが金属圧延板の異方性の原因となる。
金属圧延板が弾性異方性を示すと,加工性や使用用途が
乏しくなる恐れがあるため,この異方性を評価すること
を目的として,種々の測定方法及び装置が提案されてい
る。このような圧延材の材料特性測定方法及び装置に関
する技術は,例えば特開平7−318540号公報等に
記載されている。上記参考文献に記載の圧延材の材料特
性測定方法及び装置では,上記単結晶粒群の中を例えば
超音波が伝播する場合,その伝播方向によって伝播速度
が変化する音速異方性を示すことを利用している。即
ち,複数方向に送信した超音波の金属圧延板における伝
播時間に基づいて,異方性を示す指標である例えば耳率
を定めている。より詳しくは,上記圧延材の材料特性測
定装置では,金属圧延板に超音波を送信/受信するため
に例えば図9に示すような集束型超音波探触子対が用い
られる。上記圧延材の材料特性測定装置において,送信
用探触子91(91a,91b,91c)から被測定板
92に斜入射した超音波パルスは,被測定板92の表裏
両面で反射されながら圧延面に沿って伝搬し,受信用探
触子93(93a,93b,93c)によって検出され
る。そして,送信から受信までの時間を基に超音波の伝
播時間(即ち平均音速)が求められる。さらに,送信/
受信探触子91,93を圧延面方線を中心に回転させた
り複数設けることにより,異なる2つ以上の伝播方向に
超音波を伝播させることで,集合組織が示す音速異方性
が伝播時間変化として求められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来法で得られる値
は,金属圧延材内を多重反射して伝播する内部伝播波を
利用していることからも理解されるように,いずれも圧
延板の板厚方向での平均的な材料特性である。ところ
が,板厚の厚い圧延板等では板厚方向に集合組織の分布
が顕著に生じる場合があり,圧延条件の最適化等のため
には,この板厚方向の分布をも評価する必要がある。し
かし,従来法を用いて板厚方向の異方性の分布を測定す
るには,板厚方向に圧延板をスライスして測定するしか
方法がなかった。そして,金属圧延板をスライスする方
法では,スライスする板厚が薄くなるとスライス加工が
困難であった。また,スライスを行うため測定に余計に
時間及び費用がかかってしまうという問題もあった。本
発明は,このような従来の技術における課題を解決する
ために,圧延材の材料特性測定方法及び装置を改良し,
金属圧延材の板厚方向の材料特性分布を従来より簡便に
評価測定することのできる圧延材の材料特性測定方法及
び装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
.上記目的を達成するために第1の発明は,圧延材の圧
延面に対し略垂直な異なる2つ以上の被測定面に測定波
をそれぞれ送信し,上記被測定面各々の表面を伝搬した
測定波をそれぞれ受信し,上記それぞれ受信された測定
波の伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特性を測定し
てなる圧延材の材料特性測定方法として構成されてい
る。このため,圧延材をスライスする必要なく板厚方向
の所望位置の材料特性を測定することができる。さら
に,上記第1の発明に係る圧延材の材料特性測定方法に
おいて,上記圧延材の材料特性の測定を上記圧延材の板
厚方向に走査すれば,上記圧延材の板厚方向の材料特性
分布を測定することが可能となる。尚,上記圧延材の材
料特性とは,例えば結晶異方性であり,結晶異方性を示
す指標には耳率等が用いられる。また,上記被測定面
は,例えば圧延方向に対し0°,45°,及び90°を
なす方向に形成される。
【0005】また,第2の発明は,圧延材の圧延面に対
し略垂直な異なる2つ以上の被測定面に沿って設けら
れ,上記被測定面に測定波をそれぞれ送信する測定波送
信手段と,上記被測定面に沿って設けられ,上記被測定
面各々の表面を伝播した測定波をそれぞれ受信する測定
波受信手段と,上記測定波受信手段によりそれぞれ受信
された測定波の伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特
性を測定する材料特性測定手段とを具備してなる圧延材
の材料特性測定装置として構成されている。この第2の
発明に係る圧延材の材料特性測定装置は,上記第1の発
明に係る圧延材の材料特性測定方法を実施するのに好適
な装置である。
【0006】次に,第3の発明は,圧延材の圧延面に沿
った異なる2つ以上の被測定方向について上記圧延材の
内部及び表面に測定波をそれぞれ送信し,上記被測定方
向各々について上記圧延材の内部及び表面を伝播した上
記測定波をそれぞれ受信し,上記圧延材の内部及び表面
を伝播した測定波それぞれの伝播時間に基づいて上記圧
延材の材料特性を測定してなる圧延材の材料特性測定方
法として構成されている。上記第3の発明に係る圧延材
の材料特性測定方法では,圧延材の内部を伝搬した測定
波の伝播時間から圧延材の平均的な材料特性が測定さ
れ,圧延材の表面を伝播した測定波の伝播時間から圧延
材の表面付近の材料特性が測定される。このため,上記
第3の発明に係る圧延材の材料特性測定方法では,板厚
方向の材料特性の分布を得るために従来必要であった圧
延材のスライスの工程が不要となり,オンライン測定も
可能となる。上記圧延材の材料特性測定方法において,
上記圧延材の表面に送信する測定波の周波数を複数切り
換えれば,圧延材表面を伝播する測定波の波長が変化
し,伝播深さを調節することができる。上記圧延材の材
料特性測定方法において,上記被測定方向は,例えば上
記圧延材の圧延方向に対し0°,45°,及び90°の
方向に設定される。
【0007】また,第4の発明は,上記第3の発明に係
る圧延材の材料特性測定方法を実施するのに好適な装置
であって,圧延材の圧延面に沿って設けられ,上記圧延
材の圧延面に沿った異なる2つ以上の被測定方向につい
て上記圧延材の内部及び表面に測定波を送信する測定波
送信手段と,上記圧延面に沿って設けられ,上記圧延材
の内部及び表面を伝播した上記測定波をそれぞれ受信す
る測定波受信手段と,上記圧延材の内部及び表面を伝播
した測定波それぞれの伝播時間に基づいて上記圧延材の
材料特性を測定する材料特性測定手段とを具備してなる
圧延材の材料特性測定装置として構成されている。
【0008】
【発明の実施の形態】以下,添付図面を参照して,本発
明の実施の形態につき説明し,本発明の理解に供する。
尚,以下の実施の形態は,本発明の具体的な一例であっ
て,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではな
い。まず,第1及び第2の発明の一実施の形態に係る圧
延材の材料特性測定方法及び装置1について説明する。
ここで,図1は上記第1の発明の一実施の形態に係る圧
延材の材料特性測定装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように,第2の発明の一実施の形態に係る圧
延材Aの材料特性測定装置1は,圧延材Aの圧延面に対
し略垂直な異なる2つ以上の被測定面S(Sa,Sb,
…)に沿って設けられ,上記被測定面Sに測定波をそれ
ぞれ送信する測定波送信手段11(11a,11b,
…)と,上記被測定面Sに沿って設けられ,上記被測定
面S各々の表面を伝播した測定波をそれぞれ受信する測
定波受信手段12(12a,12b,…)と,上記測定
波受信手段12によりそれぞれ受信された測定波の伝播
時間に基づいて上記圧延材の材料特性を測定する材料特
性測定手段13とを具備する。上記圧延材の材料特性測
定装置1を用いて測定を行う場合,予め圧延板Aが切り
出され,例えば圧延面S0に直交し圧延方向に平行な面
(0度面Sa),圧延面に直交し圧延方向に直交する面
(90度面Sb),及び圧延面に直交し圧延方向に45
度傾いた面(45度面Sc)に被測定面が形成される。
それぞれの被測定面Sに沿って設けられる測定波送信手
段11及び受信手段12には,例えば点集束型の超音波
探触子対が用いられる。これらの測定波送信手段11及
び受信手段12は,送受信される超音波の伝播距離と,
圧延面からの距離とがそれぞれ等しくなるように配置さ
れている。
【0009】また,第1の発明の一実施の形態に係る圧
延材の材料特性測定方法は,圧延材Aの圧延面S0に対
し略垂直な異なる2つ以上の被測定面Sに測定波をそれ
ぞれ送信し(S11),上記被測定面S各々の表面を伝
搬した測定波をそれぞれ受信し(S12),上記それぞ
れ受信された測定波の伝播時間に基づいて上記圧延材A
の材料特性を測定する(S13)ものであり,上記圧延
材の材料特性測定装置1は,この圧延材の材料特性測定
方法を好適に実施するためのものである。以下,上記圧
延材の材料特性測定装置1の動作を簡単に説明する。上
記材料特性測定装置1において,始めに圧延材Aの圧延
面S0に対し略垂直な異なる2つ以上の被測定面Sに超
音波(測定波)が送信される(S11)。上記測定波送
信手段11により送信された超音波は,各被測定面Sの
表面を伝播し,上記測定波受信手段12により受信され
る(S12)。上記測定波受信手段12により受信され
た超音波の波形信号は,例えば材料特性測定手段13内
のディジタルオシロ131に出力されてディジタル変換
され計算機132に取り込まれる。そして,計算機13
2により予め基準材を用いて求めておいた波形と比較さ
れ,この波形の比較結果から超音波の伝播時間が定めら
れる(S13)。この伝播時間の測定は,上記0度面,
90度目,及び45度面の被測定面について同様に行わ
れ,それぞれの基準波形との伝播時間の差が求められ
る。図2はアルミニウム材について上記0度面,90度
目,及び45度面の被測定面で求めた伝播時間の差を示
すものである。図2に示すように超音波の伝播方向によ
って伝播時間が異なり,このアルミニウム材が異方性を
有することが理解される。そして,板厚方向の所定位置
での伝播時間の差が計測されると,超音波の伝播距離を
保ったまま,板厚方向に上記測定波送信手段11及び受
信手段12の走査が行われ,各位置での伝播時間の測定
が行われる。ここで,0度面の基準波形との伝播時間の
差をT0,90度面の基準波形との伝播時間の差をT9
0,及び45度面の基準波形との伝播時間との差T45
とし,音速の変化分を表す特徴量が次式で示す評価値Z
に従って求められる。 Z=T0+T90−2×T45 この評価値を用いて,板厚方向の異方性の変化を示した
のが図3である。尚,評価値Zは例えば耳率等の異方性
の指標となる値と相関関係を有する。また,評価値Zの
算出式を(例えばZ=a・T0+b・T90+c・T4
5として,係数a,b,cを線形回帰して求めておき)
変更する事により,ランクフォード値等の他の材料特性
と相関関係を持たせることも可能である。そして,図3
に示すように上記圧延材の材料特性測定方法及び装置1
により板厚方向の異方性の変化が分解能良く測定されて
いる。このように第1及び第2の発明の一実施の形態に
係る圧延材の材料特性測定方法及び装置1では,圧延材
Aのスライスを行うことなく,板厚方向の異方性の分布
を簡便にしかも精度良く測定することができる。
【0010】次に第3及び第4の発明の一実施の形態に
係る圧延材の材料特性測定方法及び装置2について説明
する。ここで,図4は上記圧延材の材料特性測定装置2
の概略構成を示す図である。図4に示すように,上記第
4の発明の一実施の形態に係る圧延材の材料特性測定装
置2は,圧延材Aの圧延面S0に沿って設けられ,上記
圧延材Aの圧延面S0に沿った異なる2つ以上の被測定
方向について上記圧延材Aの内部及び表面に測定波を送
信する測定波送信手段41と,上記圧延面S0に沿って
設けられ,上記圧延材Aの内部及び表面を伝播した上記
測定波をそれぞれ受信する測定波受信手段42と,上記
圧延材Aの内部及び表面を伝播した測定波それぞれの伝
播時間に基づいて上記圧延材Aの材料特性を測定する材
料特性測定手段43とを具備する。また,上記測定波送
信手段41は,金属圧延材Aに対して,超音波を斜角入
射し金属圧延材の内部に超音波を伝播させる内部向測定
波送信手段411(411a,…)と,金属圧延材Aの
表面に超音波を伝播させる表面向測定波送信手段412
(412a,…)とを具備する。これに対応して,上記
測定波受信手段42は,金属圧延材Aの内部を伝播した
超音波を受信する内部向測定波受信手段421(421
a,…)と,金属圧延材Aの表面を伝播した超音波を受
信する表面向測定波受信手段(422a,…)とを具備
する。尚,この実施の形態では,サンプルとなる金属圧
延材は水中に載置される。また,上記測定波送信手段4
1及び受信手段42には,送信用集束型超音波探触子と
受信用集束型超音波探触子とからなる超音波探触子対が
用いられる。上記測定波送信手段41の入射角度は,金
属圧延材Aに効率良く横波が入射する角度となってお
り,測定対象が例えばアルミニウム板であれば15度〜
20度の間に設定される。
【0011】また,第3の発明の一実施の形態に係る圧
延材の材料特性測定方法は,圧延材Aの圧延面S0に沿
った異なる2つ以上の被測定方向について上記圧延材A
の内部及び表面に測定波をそれぞれ送信し(S41),
上記被測定方向各々について上記圧延材Aの内部及び表
面を伝播した上記測定波をそれぞれ受信し(S42),
上記圧延材Aの内部及び表面を伝播した測定波それぞれ
の伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特性を測定する
(S43)ものであり,上記圧延材の材料特性測定装置
2は,上記圧延材の材料特性測定方法を好適に実施する
ための装置である。以下,上記圧延材の材料特性測定装
置2の動作について説明する。始めに上記圧延材の材料
特性測定装置2では,上記内部向測定波送信手段411
により圧延材Aの内部に超音波(測定波)が送信される
(S41)。上記内部向測定波送信手段41より上記金
属圧延材Aに斜角入射された超音波は,金属圧延材Aの
表面と裏面とで多重反射しながら金属圧延材A内部を伝
播し,上記内部向測定波受信手段421により受信され
る(S42)。超音波パルスの送信から受信に至る波形
は,材料特性測定手段43内の波形サンプリング装置4
31により採取され,内部伝播波解析装置432aによ
り伝播時間が計算される。また,圧延材Aの反り等の影
響を補正するために,圧延板表面S0と探触子保持板4
4との間を伝播する水中伝播波の伝播時間も計測され
る。表面波を送受信する表面向送信手段412及び受信
手段422は,内部伝播波とほぼ同様に用いられる。即
ち,表面向送信手段412及び受信手段422は,表面
波を効率良く発生する所定角度で,入射点と出射点が内
部伝播波のそれを結ぶ直線上を通る位置に配置される。
上記表面向送信手段によって金属圧延材に入射されると
きの上記所定角度は,接触媒質(例えば水等)や測定対
象等によって変化するが,例えば30度前後が適当であ
る。また,上記測定波送信手段41及び受信手段42は
図4に示した探触子保持板44により保持されており,
上記探触子保持板44は圧延面Aの法線を中心軸として
回転可能に構成されている。そして,上記探触子保持板
44を回転させることにより,圧延面に沿った複数方向
の伝播時間が測定される。そして,所定の各方向に関し
て内部伝播波及び表面波の伝播時間を測定し,板厚方向
全体及び表面付近それぞれの材料特性が求められる。こ
の材料特性は,例えば基準サンプルの測定により予め求
めた伝播時間と材料特性との相関曲線を基に計算され
る。そして,板厚全体の材料特性と,表面付近の材料特
性と,表面波の伝播深さを基に板厚方向の材料特性分布
が評価される(S43)。ここで,表面波はその波長の
数倍程度まで金属圧延材に浸透する。
【0012】例えば板厚5mmの圧延板での耳率分布を
測定する場合で,更に圧延状況や過去の知見から材料特
性の分布が板厚中心を対称面とする対象分布であるもの
について説明する。尚,内部伝播波及び表面波には,5
MHzの探触子を使用したとする。まず,内部伝播波の
結果を基に,板厚全体の平均耳率が求められる。ここで
は,内部伝播波の音速分布と予め求めた校正線(破壊法
耳率と音速分布の相関曲線)との比較から平均耳率が5
%になったものとする。次に,内部伝播波と同様に表面
付近の耳率が求められる。ここでは,表面付近の耳率が
8%になったものとする。尚,表面波についても予め校
正線が求められるが,この校正線はスライスサンプル等
での破壊法耳率と表面波の音速分布との比較に基づいて
定められる。この時,表面の周波数は5MHzであり,
表面波音速分布を2800m/secとすれば,表面波
波長が0.56mmとなり,この表面波はおよそ1〜
1.5mm程度の深さ範囲を評価していることとなる。
そして,平均耳率が5%で,表面付近1.5mmの耳率
が8%であるから,サンプル中心付近の(5−1.5×
2=)2mmの耳率は5パーセント以下となる。そこ
で,中心付近2mm範囲の耳率をYパーセントとする
と,(1.5×2×8+2×Y)/5=5%より,Y=
0.5%と算出される。即ち,この例では,表面から8
%,0.5%,8%の分布があり,平均で耳率が5%に
なると推定される。ここで,上記圧延材の材料特性測定
装置2における材料特性の測定を評価するために,表面
波による測定と内部伝播波による測定とを比較する。
尚,図5は両者の測定結果を示す図であり,図5におけ
る白丸が内部伝播波による評価値,黒丸が表面波による
評価値である。この例では,板厚t=30mmのアルミ
ニウム板について,表面〜3mm,6mm〜9mm,1
3.5mm〜16.5mm,21mm〜24mm,27
mm〜30mmの板厚方向位置でスライスが行われ5枚
の3mm厚のスライス板が作成された。また,表面波に
よる測定は各スライス板の表裏両面で行われた。また,
この測定に用いられた探触子は10MHzであり,表面
波音速3000m/sとして,波長は0.3mm,表面
波の伝播深さはおおよそ1mm程度である。白丸で示し
た内部伝播波の測定結果は,スライス前のアルミニウム
板が板厚方向に逆W型の耳率分布をもっていることを示
しており,スライス板はその一部を切り出したものであ
るから,耳率が傾斜分布を示すことが予想される。一
方,黒丸で示した表面波による測定結果では,上記の予
想の通り各スライス板が傾斜分布を持って,全体では逆
W型を有することが示されている。この両者の実験結果
の一致は,スライス板を通常の1枚の圧延材と想定した
場合,内部伝播波による値と表面波による値とを比較評
価することによって,板厚方向の分布が推定できること
を表している。尚,通常の圧延材の場合,材料特性の板
厚方向分布は,板厚中心を対称面として裏表が対象とな
っており,上記の測定によって板厚方向の材料特性分布
を十分に評価することが可能である。また,材料特性分
布が予め上記のような逆W型の分布を示すことが分かっ
ている場合,表面波の周波数を下げて伝播深さが板厚方
向の1/4程度になるようなものも合わせて評価するこ
とによって,板厚方向の分布推定精度がより向上する。
このように本実施の形態に係る圧延材の材料特性測定方
法及び装置2では,スライスを行うことなく容易迅速に
圧延材の板厚方向の材料特性分布を測定することができ
る。
【0013】
【実施例】上記実施の形態における圧延材の材料特性測
定装置1では,超音波の送信用,受信用それぞれに超音
波探触子11,12が用いられていたが,図6に示すよ
うに被測定材に例えば切り欠きCを設ける等して超音波
を容易に反射できるようにし,各被測定面Sにおける送
受信を1つの探触子で行うことも可能である。また,上
記圧延材の材料特性測定装置1において,複数組の探触
子対を用いずに,超音波探触子を被測定材に対して相対
的に回転若しくは移動させることにより1対の探触子の
みで測定を行うことも可能である。このような圧延材の
材料特性測定装置も本発明における圧延材の材料特性測
定装置の一例である。
【0014】また,上記実施の形態における圧延材の材
料特性測定装置2では,内部伝播波と表面波との測定に
別々の探触子対が用いられているが,両者を共用するこ
とも可能である。この場合,装置構成が簡素化される。
また,上記圧延材の材料特性測定装置2において,内部
伝播波として,板波を用いることも可能である。例えば
図7に示すように板波と表面波の測定に電磁超音波探触
子(EMAT)71,72,73,74を用いる。尚,
板波は冷延鋼板等の薄板でよく用いられるが,3mm程
度の厚さでも発生は可能である。この場合,周波数を低
く設定すればよい。EMATとしては,例えばメアンダ
コイルが用いられ,板波用メアンダコイルと表面波用メ
アンダコイルとの違いは,両メアンダコイルのピッチが
表面波用の方が狭く周波数が高く設定されることであ
る。尚,上記メアンダコイルのピッチと発信する超音波
の波長とは一致する。また,材料評価に用いられる板波
はS0モード板波が一般的であり,これを安定的に発生
するためには板波波長λが板厚tよりも4〜5倍以上大
きい必要がある。従って,メアンダコイルのピッチpを
用いれば,ピッチpは板厚tよりも4〜5倍以上大きく
設定される。一方,表面波では波長λよりも板厚tより
も小さい必要がある。従って,メアンダコイルのピッチ
pを用いれば,ピッチpは板厚tよりも小さく設定され
る。このため,板波用と表面波用とではメアンダコイル
を変える必要が生じ板波用が表面波用よりも大きく設定
される。また,上記圧延材の材料特性測定装置2におけ
る板厚方向の平均を求めるために,図8に示すように板
厚方向に多重反射する内部伝播波の共振周波数を用いて
もよい。この装置では,共振周波数測定用電磁超音波探
触子81により高周波数の超音波の送信及び受信を行
う。送信された超音波は,圧延材の表裏面間で多重反射
を行う,圧延板内の平均音速と板厚とで定まる共振周波
数において共振現象を示す。従って,この共振周波数を
測定することにより圧延材の平均的な材料特性を測定す
ることができる。また,上記実施の形態では,耳率を結
晶異方性の評価値としたが,例えばランクフォード値や
ヤング率等の他の値を用いてもよい。このような圧延材
の材料特性測定装置も本発明における圧延材の材料特性
測定装置の一例である。
【0015】
【発明の効果】上記のように第1の発明は,圧延材の圧
延面に対し略垂直な異なる2つ以上の被測定面に測定波
をそれぞれ送信し,上記被測定面各々の表面を伝搬した
測定波をそれぞれ受信し,上記それぞれ受信された測定
波の伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特性を測定し
てなる圧延材の材料特性測定方法として構成されてい
る。このため,圧延材をスライスする必要なく板厚方向
の所望位置の材料特性を測定することができる。さら
に,上記第1の発明に係る圧延材の材料特性測定方法に
おいて,上記圧延材の材料特性の測定を上記圧延材の板
厚方向に走査すれば,上記圧延材の板厚方向の材料特性
分布を測定することが可能となる。尚,上記圧延材の材
料特性とは,例えば結晶異方性であり,結晶異方性を示
す指標には耳率等が用いられる。また,上記被測定面
は,例えば圧延方向に対し0°,45°,及び90°を
なす方向に形成される。
【0016】また,第2の発明は,圧延材の圧延面に対
し略垂直な異なる2つ以上の被測定面に沿って設けら
れ,上記被測定面に測定波をそれぞれ送信する測定波送
信手段と,上記被測定面に沿って設けられ,上記被測定
面各々の表面を伝播した測定波をそれぞれ受信する測定
波受信手段と,上記測定波受信手段によりそれぞれ受信
された測定波の伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特
性を測定する材料特性測定手段とを具備してなる圧延材
の材料特性測定装置として構成されている。この第2の
発明に係る圧延材の材料特性測定装置は,上記第1の発
明に係る圧延材の材料特性測定方法を実施するのに好適
な装置である。
【0017】次に,第3の発明は,圧延材の圧延面に沿
った異なる2つ以上の被測定方向について上記圧延材の
内部及び表面に測定波をそれぞれ送信し,上記被測定方
向各々について上記圧延材の内部及び表面を伝播した上
記測定波をそれぞれ受信し,上記圧延材の内部及び表面
を伝播した測定波それぞれの伝播時間に基づいて上記圧
延材の材料特性を測定してなる圧延材の材料特性測定方
法として構成されている。上記第3の発明に係る圧延材
の材料特性測定方法では,圧延材の内部を伝搬した測定
波の伝播時間から圧延材の平均的な材料特性が測定さ
れ,圧延材の表面を伝播した測定波の伝播時間から圧延
材の表面付近の材料特性が測定される。このため,上記
第3の発明に係る圧延材の材料特性測定方法では,板厚
方向の材料特性の分布を得るために従来必要であった圧
延材のスライスの工程が不要となり,オンライン測定も
可能となる。上記圧延材の材料特性測定方法において,
上記圧延材の表面に送信する測定波の周波数を複数切り
換えれば,圧延材表面を伝播する測定波の波長が変化
し,伝播深さを調節することができる。上記圧延材の材
料特性測定方法において,上記被測定方向は,例えば上
記圧延材の圧延方向に対し0°,45°,及び90°の
方向に設定される。
【0018】また,第4の発明は,上記第3の発明に係
る圧延材の材料特性測定方法を実施するのに好適な装置
であって,圧延材の圧延面に沿って設けられ,上記圧延
材の圧延面に沿った異なる2つ以上の被測定方向につい
て上記圧延材の内部及び表面に測定波を送信する測定波
送信手段と,上記圧延面に沿って設けられ,上記圧延材
の内部及び表面を伝播した上記測定波をそれぞれ受信す
る測定波受信手段と,上記圧延材の内部及び表面を伝播
した測定波それぞれの伝播時間に基づいて上記圧延材の
材料特性を測定する材料特性測定手段とを具備してなる
圧延材の材料特性測定装置として構成されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第2の発明の一実施の形態に係る圧延材の材
料特性測定装置1の概略構成を示す図。
【図2】 上記圧延材の材料特性測定装置1による所定
板厚方向位置での測定結果を示す図。
【図3】 上記圧延材の材料特性測定装置1よる板厚方
向の材料特性分布の測定結果を示す図。
【図4】 第4の発明の一実施の形態に係る圧延材の材
料特性測定装置2の概略構成を示す図。
【図5】 上記圧延材の材料特性測定装置2による材料
特性測定を説明するための図。
【図6】 第2の発明の一実施例に係る圧延材の材料特
性測定装置の概略構成を示す図。
【図7】 第4の発明の一実施例に係る圧延材の材料特
性測定装置の概略構成を示す図。
【図8】 第4の発明の他の実施例に係る圧延材の材料
特性測定装置の概略構成を示す図。
【図9】 従来の材料特性測定装置の一例を示す図。
【符号の説明】
11,41…測定波送信手段 12,42…測定波受信手段 13,44…材料特性測定手段

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延材の圧延面に対し略垂直な異なる2
    つ以上の被測定面に測定波をそれぞれ送信し,上記被測
    定面各々の表面を伝搬した測定波をそれぞれ受信し,上
    記それぞれ受信された測定波の伝播時間に基づいて上記
    圧延材の材料特性を測定してなる圧延材の材料特性測定
    方法。
  2. 【請求項2】 上記圧延材の材料特性の測定を上記圧延
    材の板厚方向に走査し,上記圧延材の板厚方向の材料特
    性分布を測定してなる請求項1記載の圧延材の材料特性
    測定方法。
  3. 【請求項3】 上記圧延材の材料特性が結晶異方性であ
    る請求項1若しくは2記載の圧延材の材料特性測定方
    法。
  4. 【請求項4】 上記被測定面が,圧延方向に対し0°,
    45°,及び90°をなす方向に形成されてなる請求項
    1〜3のいずれかに記載の圧延材の材料特性測定方法。
  5. 【請求項5】 圧延材の圧延面に対し略垂直な異なる2
    つ以上の被測定面に沿って設けられ,上記被測定面に測
    定波をそれぞれ送信する測定波送信手段と,上記被測定
    面に沿って設けられ,上記被測定面各々の表面を伝播し
    た測定波をそれぞれ受信する測定波受信手段と,上記測
    定波受信手段によりそれぞれ受信された測定波の伝播時
    間に基づいて上記圧延材の材料特性を測定する材料特性
    測定手段とを具備してなる圧延材の材料特性測定装置。
  6. 【請求項6】 圧延材の圧延面に沿った異なる2つ以上
    の被測定方向について上記圧延材の内部及び表面に測定
    波をそれぞれ送信し,上記被測定方向各々について上記
    圧延材の内部及び表面を伝播した上記測定波をそれぞれ
    受信し,上記圧延材の内部及び表面を伝播した測定波そ
    れぞれの伝播時間に基づいて上記圧延材の材料特性を測
    定してなる圧延材の材料特性測定方法。
  7. 【請求項7】 上記圧延材の表面に送信する測定波の周
    波数を複数切り換えてなる請求項6記載の圧延材の材料
    特性測定方法。
  8. 【請求項8】 上記被測定方向が,上記圧延材の圧延方
    向に対し0°,45°,及び90°の方向である請求項
    6若しくは7記載の圧延材の材料特性測定方法。
  9. 【請求項9】 圧延材の圧延面に沿って設けられ,上記
    圧延材の圧延面に沿った異なる2つ以上の被測定方向に
    ついて上記圧延材の内部及び表面に測定波を送信する測
    定波送信手段と,上記圧延面に沿って設けられ,上記圧
    延材の内部及び表面を伝播した上記測定波をそれぞれ受
    信する測定波受信手段と,上記圧延材の内部及び表面を
    伝播した測定波それぞれの伝播時間に基づいて上記圧延
    材の材料特性を測定する材料特性測定手段とを具備して
    なる圧延材の材料特性測定装置。
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