JPH1163139A - トロイダル式無段変速機 - Google Patents

トロイダル式無段変速機

Info

Publication number
JPH1163139A
JPH1163139A JP24466397A JP24466397A JPH1163139A JP H1163139 A JPH1163139 A JP H1163139A JP 24466397 A JP24466397 A JP 24466397A JP 24466397 A JP24466397 A JP 24466397A JP H1163139 A JPH1163139 A JP H1163139A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gear
toroidal
disk
transmission
continuously variable
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP24466397A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3716568B2 (ja
Inventor
Hisanori Nakane
久典 中根
Hidenao Taketomi
秀直 武富
Yasuaki Ishida
恭聡 石田
Shinya Shibata
伸也 柴田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP24466397A priority Critical patent/JP3716568B2/ja
Publication of JPH1163139A publication Critical patent/JPH1163139A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3716568B2 publication Critical patent/JP3716568B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Gear Transmission (AREA)
  • Gears, Cams (AREA)
  • Friction Gearing (AREA)
  • Transmission Devices (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 トロイダル変速機構のディスクの周縁部に動
力伝達用のギアを備えるトロイダル式無段変速機におい
て、パワーローラーが圧接される上記ディスクの中央部
は該ローラとの間の回転摩擦や圧力に耐えて変形し難
く、上記ギアが設けられる周縁部は該ギアと他のギアと
の噛み合いにおいて歯が折れる等の損傷が発生し難くな
るようにすることを課題とする。 【解決手段】 パワーローラーが圧接されるトロイダル
変速機構のディスク34を、浸炭組織の層の厚みが大き
くなるように浸炭して、その硬さを大きくする一方で、
他のギアとの噛み合って動力を伝達するギア91を、浸
炭組織の層の厚みが小さくなるように浸炭して、その硬
さを小さくし、これらのディスク34とギア91とを溶
接して一体化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トロイダル式無段
変速機、特に、ギヤードニュートラル発進方式を採用す
る等のために、トロイダル変速機構を経由させて動力伝
達を行なうためのギアが設けられているトロイダル式無
段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用無段変速機として、相互に対向
配置された入力ディスクと出力ディスクとの間に両ディ
スク間の動力伝達を行うローラーを圧接状態で介設する
と共に、このローラーを傾転させて両ディスクに対する
接触位置を半径方向に変化させることにより、両ディス
ク間の動力伝達の変速比を無段階に変化させるようにし
たトロイダル式無段変速機が実用化されつつあるが、こ
の種の無段変速機のなかには、ギヤードニュートラルを
用いた発進方式を採用するものが知られている。
【0003】この発進方式では、エンジンに連結された
インプットシャフト上に、上記のような一対の入出力デ
ィスクやローラー等を有する構成のトロイダル変速機構
が配置されると共に、該インプットシャフトに平行なセ
カンダリシャフト上に、サンギヤと、インターナルギヤ
と、これら両ギヤに噛み合うプラネタリピニオンを支持
するピニオンキャリヤとの3つの回転要素を有する遊星
歯車機構が配置され、これらの回転要素のうちのインタ
ーナルギヤを出力要素としながら、エンジン回転をピニ
オンキャリヤには直接に、サンギヤには上記トロイダル
変速機構を介してそれぞれ入力するように構成される。
【0004】そして、上記トロイダル変速機構の変速比
を制御することにより、遊星歯車機構のピニオンキャリ
ヤとサンギヤとに入力される回転速度の比を、出力要素
であるインターナルギヤが停止する比に制御してニュー
トラル状態を実現させると共に、この状態からトロイダ
ル変速機構の変速比を増減させることにより、インター
ナルギヤを前進または後退方向に回転させるように構成
されるものである。
【0005】この発進方式によれば、発進時に接続され
るクラッチやトルクコンバータ等を用いなくても車両を
発進させることができ、発進時の応答性や動力伝達効率
が向上することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この場合、
エンジン回転をトロイダル変速機構を介して遊星歯車機
構のサンギヤに入力させるために、上記トロイダル変速
機構とサンギヤとにそれぞれ相互に噛合し合うギアが配
設されることがあるが、例えば特開昭63−21995
6号公報には、トロイダル変速機構側のギアを、ローラ
の傾転により変速比が変化される上記ディスクの周縁部
に設けることが開示されている。
【0007】これによれば、上記ギアを独立してディス
クやローラ等と共にインプットシャフト上に配設する場
合と比べて、トロイダル変速機構の該シャフト上での軸
方向の寸法の増大が抑制されることになり、該変速機
構、ひいてはこのトロイダル式無段変速機全体のレイア
ウト性の向上が図られる。
【0008】しかしながら、一般に、このように遊星歯
車機構等との間で動力伝達を行なうためのギアをディス
クに設けるようにした場合には、次のような問題が生じ
る。
【0009】すなわち、上記ディスクは、インプットシ
ャフトを中心として回転自在に設けられ、そのインプッ
トシャフトに近い中央部においてローラが圧接されて、
ディスク間の動力伝達が行なわれ、また該動力伝達の変
速比が変化されるようになっている。したがって、上記
ローラとの間の回転摩擦や圧力に耐えて塑性変形しない
だけの硬さがインプットシャフトに近い中央部に求めら
れる。
【0010】これに対し、ギアをディスクの周縁部に設
けるようにした場合では、その周縁部の硬さが中央部と
同じように高いと、上記ギアとサンギア側のギアとの噛
み合いにおいて歯が折れる等の損傷が発生し易くなるか
ら、該ギアが設けられるディスクの周縁部においてはあ
る程度の靭性があった方がよい。
【0011】このように、トロイダル変速機構のディス
クにギアを設ける場合には、該ギアが設けられる部位
と、ローラが圧接される部位とで相互に異なる材料特性
が要求されるので、この要求にどのようにして対応する
かが問題となるのである。
【0012】本発明は、例えばギヤードニュートラル発
進方式を採用する等のために、遊星歯車機構側のギアと
噛み合うギアをトロイダル変速機構のディスクに設けよ
うとする場合における上記問題に対処するもので、ロー
ラが圧接される中央部は該ローラとの間の回転摩擦や圧
力に耐えて塑性変形せず、ギアが設けられる周縁部は該
ギアと他のギアとの噛み合いにおいて歯が折れる等の損
傷が発生し難いディスクを備えたトロイダル式無段変速
機を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0014】まず、本願の特許請求の範囲の請求項1に
記載の発明(以下「第1発明」という。)は、相互に対
向配置された一対のディスク間に介在するローラの傾転
により該ディスク間の変速比が無段階に変化するように
構成されたトロイダル変速機構が備えられ、該変速機構
を経由させる動力伝達のためのギアが上記ディスクの周
縁部に設けられているトロイダル式無段変速機であっ
て、上記ディスクの硬さが、周縁部において小さく、中
央部において大きくされていることを特徴とする。
【0015】また、請求項2に記載の発明(以下「第2
発明」という。)は、上記第1発明と同様に、トロイダ
ル変速機構のディスクの周縁部にギアが設けられている
トロイダル式無段変速機であって、上記トロイダル変速
機構における一対のディスクが二組設けられ、これらの
二組のディスクが、所定方向に伸びる軸上に該軸の長手
方向に沿って配置されていると共に、異なる組の相互に
隣接するディスク同士が一体化されて、この一体化ディ
スクの周縁部に上記ギアが設けられ、該一体化ディスク
の硬さが、周縁部において小さく、中央部において大き
くされていることを特徴とする。
【0016】さらに、請求項3に記載の発明(以下「第
3発明」という。)は、同じく上記第1発明と同様に、
トロイダル変速機構のディスクの周縁部にギアが設けら
れているトロイダル式無段変速機であって、上記ディス
クが、浸炭組織の層の厚みが周縁部において小さく、中
央部において大きくなるように浸炭されていることを特
徴とする。
【0017】一方、請求項4に記載の発明(以下「第4
発明」という。)は、同じく上記第1発明と同様に、ト
ロイダル変速機構のディスクの周縁部にギアが設けられ
ているトロイダル式無段変速機であって、上記ディスク
が、周縁部を構成する硬さの小さい部材と、中央部を構
成する硬さの大きい部材とでなることを特徴とする。
【0018】次に、請求項5に記載の発明(以下「第5
発明」という。)は、同じく上記第1発明と同様に、ト
ロイダル変速機構のディスクの周縁部にギアが設けられ
ているトロイダル式無段変速機であって、上記ディスク
が、浸炭組織の層の厚みが小さくなるように浸炭された
周縁部を構成する部材と、浸炭組織の層の厚みが大きく
なるように浸炭された中央部を構成する部材とでなるこ
とを特徴とする。
【0019】そして、請求項6に記載の発明(以下「第
6発明」という。)は、上記第4発明又は第5発明にお
いて、周縁部を構成する部材と、中央部を構成する部材
とが別体とされ、これら両部材が塑性変形により一体化
されていることを特徴とする。
【0020】また、請求項7に記載の発明(以下「第7
発明」という。)は、同じく上記第4発明又は第5発明
において、周縁部を構成する部材と、中央部を構成する
部材とが別体とされ、これら両部材が溶接により一体化
されていることを特徴とする。
【0021】さらに、請求項8に記載の発明(以下「第
8発明」という。)は、上記第7発明において、周縁部
を構成する部材と中央部を構成する部材との接合部が、
ディスク面から退避して設けられていることを特徴とす
る。
【0022】上記の構成により、本願各発明はそれぞれ
次のように作用する。
【0023】まず、第1発明によれば、トロイダル変速
機構のディスクの硬さが、ギアが設けられる周縁部にお
いて小さく、ローラが圧接される中央部において大きく
されているので、それぞれ、周縁部では上記ギアと他の
ギアとの噛み合いにおいて歯が折れる等の損傷が発生し
難く、中央部ではローラとの間の回転摩擦や圧力に耐え
て塑性変形し難いディスクが得られることになり、相互
に異なるそれぞれの材料特性要求に対応できて、ディス
クの周縁部にギアを問題なく設けることが可能となる。
【0024】特に、第2発明によれば、トロイダル変速
機構のディスクの組が二組設けられ、これらの二組のデ
ィスクがシャフト上に配置されている場合に、相互に隣
接するディスク同士が一体化されているので、各ギアを
それぞれ独立してシャフト上に配置する場合と比べて、
トロイダル変速機構の該シャフト上での軸方向の寸法の
増大が抑制されることになり、該変速機構、ひいてはこ
のトロイダル式無段変速機全体のレイアウト性の向上が
図られる。
【0025】また、第3発明によれば、特に、トロイダ
ル変速機構のディスクが、ギアが設けられる周縁部にお
いて浸炭組織の層の厚みが小さく、ローラが圧接される
中央部において大きくなるように浸炭されているので、
これにより、該ディスクの硬さが、周縁部において小さ
く、中央部において大きくされることになる。
【0026】そして、第4発明によれば、トロイダル変
速機構のディスクが、硬さの小さい周縁部の部材と、硬
さの大きい中央部の部材との二つの部材で構成され、ま
た第5発明によれば、浸炭組織の層の厚みが小さくなる
ように浸炭された周縁部の部材と、浸炭組織の層の厚み
が大きくなるように浸炭された中央部の部材との二つの
部材で構成されているから、これにより、それぞれ、周
縁部ではギアの噛み合いにおいて歯が折れる等の損傷が
発生し難く、中央部ではローラとの間の回転摩擦や圧力
に耐えて塑性変形し難いディスクが得られることにな
る。
【0027】その場合に、第6発明によれば、周縁部の
部材と中央部の部材とが別体とされたうえで、これらの
両部材が塑性変形によって一体化され、また第7発明に
よれば、溶接によって一体化されているから、これによ
り、それぞれ、硬さの小さい周縁部の部材と、硬さの大
きい中央部の部材との二つの部材で構成されたディス
ク、又は浸炭組織の層の厚みが小さくなるように浸炭さ
れた周縁部の部材と、浸炭組織の層の厚みが大きくなる
ように浸炭された中央部の部材との二つの部材で構成さ
れたディスクが得られることになる。
【0028】さらに、第8発明によれば、特に、周縁部
の部材と中央部の部材とが溶接によって一体化されてい
る場合に、その接合部がディスク面から退避されている
ので、該接合部において溶接用の金属が盛り上がった状
態で残っても、その盛り上がった溶接用金属がローラが
圧接されるディスク面から突出することが回避されて、
該ローラを上記溶接用金属と干渉させることなく、ディ
スク面の広い範囲で傾転させることが可能となり、幅広
い変速比が得られることになる。
【0029】また、周縁部の部材と中央部の部材とがそ
れぞれ浸炭されたものの場合においては、溶接が部材表
面に存在する浸炭組織の層を避けて行なわれることにな
り、両部材を確実に溶接することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る
無段変速機について、その機械的構成、油圧制御回路の
構成および変速制御の具体的動作を説明する。
【0031】図1は、本実施の形態に係るトロイダル式
無段変速機の機械的構成を示す骨子図であり、この変速
機10は、エンジン1の出力軸2にトーショナルダンパ
3を介して連結されたインプットシャフト11と、該シ
ャフト11の外側に遊嵌合された中空のプライマリシャ
フト12と、これらのシャフト11,12に平行に配置
されたセカンダリシャフト13とを有し、これらのシャ
フト11〜13が、いずれも当該車両の横方向に延びる
ように配置されている。
【0032】また、この無段変速機10における上記イ
ンプットシャフト11およびプライマリシャフト12の
軸線上には、トロイダル式の第1、第2変速機構20,
30と、ローディングカム40とが配設されていると共
に、セカンダリシャフト13の軸線上には、遊星歯車機
構50と、ローモードクラッチ60およびハイモードク
ラッチ70とが配設されている。そして、インプットシ
ャフト11およびプライマリシャフト12の軸線と、セ
カンダリシャフト13の軸線との間に、ローモードギヤ
列80と、ハイモードギヤ列90とが介設されている。
【0033】上記第1、第2変速機構20,30はほぼ
同一の構成であり、いずれも、対向面がトロイダル面と
された入力ディスク21,31と出力ディスク22,3
2とを有し、これらの対向面間に、両ディスク21,2
2間および31,32間でそれぞれ動力を伝達するロー
ラー23,33が2つづつ介設されている。
【0034】そして、エンジン1から遠い方に配置され
た第1変速機構20は、入力ディスク21が反エンジン
側に、出力ディスク22がエンジン側に配置され、ま
た、エンジン1に近い方に配置された第2変速機構30
は、入力ディスク31がエンジン側に、出力ディスク3
2が反エンジン側に配置されており、かつ、両変速機構
20,30の入力ディスク21,31はプライマリシャ
フト12の両端部にそれぞれ結合され、また、出力ディ
スク22,32は一体化されて、該プライマリシャフト
12の中間部に回転自在に支持されている。
【0035】また、インプットシャフト11の反エンジ
ン側の端部には上記ローモードギヤ列80を構成する第
1ギヤ81が結合されていると共に、該第1ギヤ81と
上記第1変速機構20の入力ディスク21との間にロー
ディングカム40が介設されており、さらに、第1、第
2無段変速機構20,30の一体化された出力ディスク
22,33(以下「一体化出力ディスク34」とい
う。)の外周に、上記ハイモードギヤ列90を構成する
第1ギヤ91が設けられている。
【0036】一方、セカンダリシャフト13の反エンジ
ン側の端部には、上記ローモードギヤ列80を構成する
第2ギヤ82が回転自在に支持されて、アイドルギヤ8
3を介して上記第1ギヤ81に連結されていると共に、
該セカンダリシャフト13の中間部には上記遊星歯車機
構50が配設されている。そして、該遊星歯車機構50
のピニオンキャリヤ51と上記ローモードギヤ列80の
第2ギヤ82との間に、これらを連結しもしくは切断す
るローモードクラッチ60が介設されている。
【0037】また、遊星歯車機構50のエンジン側に
は、上記第1、第2変速機構20,30の一体化出力デ
ィスク34の外周に設けられたハイモードギヤ列90の
第1ギヤ91に噛み合う第2ギヤ92が回転自在に支持
され、該第2ギヤ92と遊星歯車機構50のサンギヤ5
2とが連結されていると共に、該遊星歯車機構50のイ
ンターナルギヤ53がセカンダリシャフト13に結合さ
れており、また、該遊星歯車機構50のエンジン側に、
上記ハイモードギヤ列90の第2ギヤ92とセカンダリ
シャフト13とを連結しもしくは切断するハイモードク
ラッチ70が介設されている。
【0038】そして、上記セカンダリシャフト13のエ
ンジン側の端部に、第1、第2ギヤ4a,4bとアイド
ルギヤ4cとでなる出力ギヤ列4を介してディファレン
シャル装置5が連結されており、このディファレンシャ
ル装置5から左右に延びる駆動軸6a,6bを介して左
右の駆動輪(図示せず)に動力を伝達するようになって
いる。
【0039】次に、図2以下の図面を用い、上記変速機
10の各構成要素について詳しく説明する。
【0040】まず、上記第1、第2変速機構20,30
について説明すると、これらの変速機構20,30はほ
ぼ同一の構成であり、前述のように、対向面がトロイダ
ル面とされた入力ディスク21,31と、出力ディスク
22,32(一体化出力ディスク34)とを有し、これ
らの対向面間に、入、出力ディスク21,22間および
31,32間でそれぞれ動力を伝達するローラー23,
33が2つづつ介設されている。
【0041】そして、図3により、第1変速機構20を
例に取ってその構成をさらに詳しく説明すると、一対の
ローラー23,23は、入、出力ディスク21,22の
ほぼ半径方向に延びるシャフト24,24を介してトラ
ニオン25,25にそれぞれ支持され、入、出力ディス
ク21,22の互いに対向するトロイダル面の円周上の
180°反対側にほぼ水平姿勢で上下に平行に配置され
ており、その周面の180°反対側の2箇所で上記両デ
ィスク21,22のトロイダル面にそれぞれ対接してい
る。
【0042】また、上記トラニオン25,25は、変速
機ケース100に取り付けられた左右の支持部材26,
26間に支持され、両ディスク21,22の接線方向で
あってローラー23,23のシャフト24,24に直交
する水平方向の軸心X,X回りの回動および該軸心X,
X方向の直線往復運動が可能とされている。そして、こ
れらのトラニオン25,25に、上記軸心X,Xに沿っ
て一側方に延びるロッド27,27が連設されていると
共に、変速機ケース100の側面には、これらのロッド
27,27およびトラニオン25,25を介して、上記
ローラー23,23を傾転させる変速制御ユニット11
0が取り付けられている。
【0043】この変速制御ユニット110は、油圧制御
部111とトラニオン駆動部112とを有すると共に、
トラニオン駆動部112には、上方に位置する第1トラ
ニオン251のロッド27に取り付けられた増速用およ
び減速用のピストン1131,1141と、下方に位置す
る第2トラニオン252のロッド27に取り付けられた
同じく増速用および減速用のピストン1132,1142
とが配置され、上方のピストン1131,1141の互い
に対向する面側に増速用および減速用油圧室1151
1161が、また、下方のピストン1132,1142
互いに対向する面側に増速用および減速用油圧室115
2,1162がそれぞれ設けられている。
【0044】なお、上方に位置する第1トラニオン25
1については、増速用油圧室1151がローラー23側
に、減速用油圧室1161が反ローラー23側にそれぞ
れ配置され、また、下方に位置する第2トラニオン25
2については、増速用油圧室1152が反ローラー23側
に、減速用油圧室1161がローラー23側にそれぞれ
配置されている。
【0045】そして、上記油圧制御部111で生成され
た増速用油圧PHが、油路117,118を介して、上
方に位置する第1トラニオン251の増速用油圧室11
1と、下方に位置する第2トラニオン252の増速用油
圧室1152とに供給され、また、同じく油圧制御部1
11で生成された減速用油圧PLが、図示しない油路を
介して、上方に位置する第1トラニオン251の減速用
油圧室1161と、下方に位置する第2トラニオン252
の減速用油圧室1162とに供給されるようになってい
る。
【0046】ここで、第1変速機構20を例にとって上
記増速用および減速用油圧PH,PLの供給制御と当該変
速機構20の変速動作との関係を簡単に説明する。
【0047】まず、図3に示す油圧制御部111の作動
により、第1、第2トラニオン251,252の増速用油
圧室1151,1152に供給されている増速用油圧PH
が、第1、第2トラニオン251,252の減速用油圧室
1161,1162に供給されている減速用油圧PLに対
して所定の釣り合い状態より相対的に高くなると、上方
の第1トラニオン251は図面上、右側に、下方の第2
トラニオン252は左側にそれぞれ水平移動することに
なる。
【0048】このとき、図示されている出力ディスク2
2がx方向に回転しているものとすると、上方の第1ロ
ーラー231は、右側への移動により該出力ディスク2
2から下向きの力を受け、図面の手前側にあって反x方
向に回転している入力ディスク21からは上向きの力を
受けることになる。また、下方の第2ローラー23
2は、左側への移動により、出力ディスク22から上向
きの力を受け、入力ディスク21からは下向きの力を受
けることになる。その結果、上下のローラー231,2
2とも、入力ディスク21との接触位置は半径方向の
外側に、出力ディスク22との接触位置は半径方向の内
側に移動するように傾転し、当該変速機構20の変速比
が小さくなる(増速)。
【0049】また、上記とは逆に、第1、第2トラニオ
ン251,252の減速用油圧室1161,1162に供給
されている減速用油圧PLが、第1、第2トラニオン2
1,252の増速用油圧室1151,1152に供給され
ている増速用油圧PLに対して所定の釣り合い状態より
相対的に高くなると、上方の第1トラニオン251は図
面上、左側に、下方の第2トラニオン252は右側にそ
れぞれ水平移動する。
【0050】このとき、上方の第1ローラー231は出
力ディスク22から上向きの力を、入力ディスク21か
ら下向きの力を受け、また、下方の第2ローラー232
は、出力ディスク22から下向きの力を、入力ディスク
21から上向きの力を受けることになる。その結果、上
下のローラー231,232とも、入力ディスク21との
接触位置は半径方向の内側に、出力ディスク22との接
触位置は半径方向の外側に移動するように傾転し、当該
変速機構20の変速比が大きくなる(減速)。
【0051】なお、このような油圧制御部111による
増速用および減速用油圧PH,PLの供給動作について
は、後述する油圧制御回路の説明で詳しく述べる。
【0052】以上のような第1変速機構20についての
構成および作用は、第2変速機構30についても同様で
ある。
【0053】そして、図2に示すように、インプットシ
ャフト11上に遊嵌合された中空のプライマリシャフト
12の両端部に、第1、第2変速機構20,30の入力
ディスク21,31がそれぞれスプライン嵌合されて、
これらの入力ディスク21,31が常に同一回転するよ
うになっており、また、前述のように、両変速機構2
0,30の出力ディスク22,32は一体化されている
ので、両変速機構20,30の出力側の回転速度も常に
同一となる。そして、これに伴って、上記のようなロー
ラー23,33の傾転制御による第1、第2変速機構2
0,30の変速比の制御も、該変速比が常に同一に保持
されるように行われる。
【0054】ここで、図4に拡大して示すように、一体
化出力ディスク34の外周面には、ハイモードギヤ列9
0のリング状に形成された第1ギヤ91が嵌合され、こ
の状態で例えば電子ビームによる溶接で一体化出力ディ
スク34に一体に固着されている。その場合に、一体化
出力ディスク34の一方の側面側における外周と、第1
ギヤ91の対応する側面側における内周とに渡って座ぐ
り部Yが設けられ、この座ぐり部Y内で上記ギヤ91と
ディスク34との溶接が行われている。つまり、接合部
が上記一方の側面側のトロイダル面(ディスク面)34
aから退避して設けられているのである。
【0055】したがって、この溶接に伴い、溶接部にお
いて溶接用金属Zが盛り上がって残っても、該接合部が
トロイダル面34aから退避しているので、上記溶接用
金属Zがトロイダル面34aから突出することが回避さ
れて、該溶接用金属Zとローラーとが干渉することがな
く、該ローラーをトロイダル面34aの広い範囲で傾転
させることが可能となる。
【0056】また、このように、上記第1ギヤ91が一
体化出力ギヤ34の外周に溶接により固着されているの
で、該第1ギヤ91の軸方向のガタツキが抑制されて、
その支持が安定することになる。
【0057】そして、その場合に、上記第1ギヤ91は
硬さの小さい素材で成形され、逆に、一体化出力ディス
ク34は硬さの大きい素材で成形されている。これによ
り、第1ギヤ91は、遊星歯車機構50のサンギア52
と連結された同じハイモードギヤ列90の第2ギヤ92
との噛み合いにおいて、靭性を有し、歯が折れる等の損
傷が発生し難くなる一方で、一体化出力ディスク34自
体は、ローラーとの接触において、その接触圧や回転摩
擦に耐えて塑性変形し難くなる。
【0058】また、このように、最初から相互に硬さの
異なる素材を用いて、一体化出力ディスク34と第1ギ
ヤ91とをそれぞれ作成するだけでなく、同じ素材を用
いて一体化出力ディスク34と第1ギヤ91とをそれぞ
れ作成したのち、第1ギヤ91を浸炭組織の厚みが小さ
くなるように浸炭し、一体化出力ディスク34を逆に浸
炭組織の厚みが大きくなるように浸炭することによって
も、第1ギヤ91の硬さを小さくし、一体化出力ディス
ク34の硬さを大きくすることができる。このように浸
炭により硬さを異ならせた場合には、接合部がディスク
面から退避して設けられていることによって、溶接が素
材表面に存在する浸炭組織の層を避けて行なわれるの
で、確実な接合が可能となる。
【0059】また、第1ギヤ91と一体化出力ディスク
34との一体化は、上記のような溶接だけでなく、部材
の塑性変形によっても可能である。例えば、図5に示す
ように、一体化出力ディスク34と第1ギヤ91とに渡
って設けた座ぐり部Y’の内面をローレット加工し、該
座ぐり部Y’に軟鉄で成形したリング状の結合部材Z’
を嵌入する。そして、該結合部材Z’を矢印のように加
圧すれば、その結合部材Z’がローレット加工部ないし
座ぐり部Y’を充填するように塑性変形され、これによ
り第1ギヤ91と一体化出力ディスク34とが一体化さ
れる。
【0060】さらに、第1ギヤ91と一体化出力ディス
ク34とを個別に作成してから一体化するのではなく、
最初から一つの部材を加工して、周縁部に第1ギヤ91
を成形し、中央部に一体化出力ディスク34を成形して
もよい。この場合は、ギヤ91が成形された周縁部を、
例えば浸炭組織の厚みが小さくなるように浸炭すること
により、その硬さを小さくし、逆に一体化出力ディスク
34が成形された中央部を、例えば浸炭組織の厚みが大
きくなるように浸炭することにより、その硬さを大きく
する。
【0061】一方、上記ローディングカム40は、上記
ローモードギヤ列80の第1ギヤ81と第1無段変速機
構20の入力ディスク21との間に介設されたカムディ
スク41を有し、図6に示すように、このカムディスク
41と上記入力ディスク21の互いに対向する面を周方
向に凹凸を繰り返すカム面として、これらのカム面間に
リテーナディスク42に保持された複数のローラー43
…43を配置した構成とされている。
【0062】そして、上記カムディスク41は、インプ
ットシャフト11の反エンジン側の端部にスプライン嵌
合されたローモードギヤ列80の第1ギヤ81に、軸方
向に配置された複数のピン部材44…44を介して一体
回転するように連結されていると共に、図7に示すよう
に、このカムディスク41とプライマリシャフト12に
設けられたフランジ部12aとの間には、皿バネ45,
45と、ニードルスラストベアリング46と、そのベア
リングレース47とが介設されており、上記皿バネ4
5,45のバネ力により、カムディスク41が入力ディ
スク21側に押圧されている。
【0063】これにより、上記ローラー43…43が上
記両ディスク21,41のカム面の凹部21a,41a
間に挟持されて、インプットシャフト11からローモー
ドギヤ列80の第1ギヤ81を介してカムディスク41
に入力されるトルクを第1変速機構20の入力ディスク
21に伝達し、さらに、プライマリシャフト12を介し
て第2変速機構30の入力ディスク31にも伝達するよ
うになっている。
【0064】なお、図7に示すように、反エンジン側の
カバー101にはオイルポンプ102が取り付けられ、
インプットシャフト11と一体的に回転するローモード
ギヤ列80の第1ギヤ81により駆動されるようになっ
ている。
【0065】次に、図8により、セカンダリシャフト1
3上の遊星歯車機構50、ローモードクラッチ60およ
びハイモードクラッチ70等の構成を説明する。
【0066】このセカンダリシャフト13の中央部に
は、上記ハイモードギヤ列90を構成する第2ギヤ92
が配置されていると共に、その後方(反エンジン側、以
下同様)に隣接させて遊星歯車機構50が配設され、該
第2ギヤ92と遊星歯車機構50のサンギヤ52とが連
結されている。また、その後方において、遊星歯車機構
50のインターナルギヤ53に結合されたフランジ部材
54が該セカンダリシャフト13にスプライン嵌合され
ている。
【0067】さらに、遊星歯車機構50の後方にはロー
モードクラッチ60が配設されている。このクラッチ6
0は、セカンダリシャフト13に回転自在に支持され、
かつ、上記ローモードギヤ列80の第2ギヤ82が固着
されたドラム部材61と、その半径方向の内側に配置さ
れて、上記遊星歯車機構50におけるピニオンキャリヤ
51にフランジ部材55を介して結合されたハブ部材6
2と、これらに交互にスプライン結合された複数枚のク
ラッチプレート63…63と、上記ドラム部材61の内
部に配置されたピストン64とを有する。
【0068】そして、上記ピストン64の背部のドラム
部材61との間が油圧室65とされ、該油圧室65に、
図3に示すクラッチ制御ユニット120で生成された締
結用油圧が供給されたときに、ピストン64がスプリン
グ66に抗して前方(エンジン側、以下同様)へストロ
ークすることにより上記クラッチプレート63…63が
締結され、これにより、該クラッチ60を介して上記ロ
ーモードギヤ列80の第2ギヤ82と遊星歯車機構50
のピニオンキャリヤ51とが結合されるようになってい
る。
【0069】なお、上記ピストン64の前面側にはバラ
ンスピストン67が配置され、両ピストン64,67間
のバランス室68に潤滑油が導入されることにより、上
記油圧室65内の作動油に働く遠心力によってピストン
64に不均衡に作用する圧力を相殺して均一化するよう
になっている。
【0070】また、上記ハイモードギヤ列90の第2ギ
ヤ92の前方には、ハイモードクラッチ70が配設され
ている。このクラッチ70も、セカンダリシャフト13
にスプライン嵌合された出力ギヤ列4の第1ギヤ4aに
パーキング機構用ギヤ4dを介して結合されたドラム部
材71と、その半径方向の内側に配置されて、上記第2
ギヤ92に結合されたハブ部材72と、これらに交互に
スプライン結合された複数枚のクラッチプレート73…
73と、上記ドラム部材71の内部に配置されたピスト
ン74とを有する。
【0071】そして、該ピストン74の背部に設けられ
た油圧室75に上記クラッチ制御ユニット120で生成
された締結用油圧が供給されたときに、該ピストン74
がスプリング76に抗して後方へストロークすることに
より上記クラッチプレート73…73が締結され、これ
により、該クラッチ70を介して、上記ハイモードギヤ
列90の第2ギヤ92と、セカンダリシャフト13ない
し該シャフト13にスプライン結合された出力ギヤ列4
の第1ギヤ4aとが結合されるようになっている。
【0072】なお、このハイモードクラッチ70にも、
ピストン74の後方にバランスピストン77が備えら
れ、両ピストン74,77間のバランス室78に潤滑油
が導入されることにより、上記油圧室75内の作動油に
働く遠心力によってピストン74に不均衡に作用する圧
力を相殺して均一化するようになっている。
【0073】そして、上記反エンジン側カバー101に
は、図3に示すクラッチ制御ユニット120で生成され
た作動圧をローモードクラッチ60の油圧室65に供給
する油路131と、セカンダリシャフト13に設けられ
た油路132を介してハイモードクラッチ70の油圧室
75に供給する油路133とが設けられている。
【0074】なお、上記クラッチ制御ユニット120に
よるローモードクラッチ60およびハイモードクラッチ
70に対する締結用油圧の供給制御についても、後述す
る油圧制御回路についての説明で詳しく述べる。
【0075】ここで、以上のような構成の無段変速機1
0の機械的な動作について説明する。
【0076】まず、当該車両の停車中においては、図1
および図2において、ローモードクラッチ60が締結さ
れ、かつ、ハイモードクラッチ70が解放された状態、
即ちローモードの状態にあって、エンジン1からの回転
は、インプットシャフト11の反エンジン側の端部から
第1ギヤ81、アイドルギヤ83および第2ギヤ82で
なるローモードギヤ列80を介してセカンダリシャフト
13側に伝達されると共に、さらに上記ローモードクラ
ッチ60を介して遊星歯車機構50のピニオンキャリヤ
51に入力される。
【0077】また、上記インプットシャフト11に入力
されたエンジン1からの回転は、上記ローモードギヤ列
80の第1ギヤ81から、これに隣接するローディング
カム40を介して第1変速機構20の入力ディスク21
に入力され、ローラー23,23を介して一体化出力デ
ィスク34に伝達されると同時に、上記入力ディスク2
1からプライマリシャフト12を介して、該シャフト1
2のエンジン側の端部に配置された第2変速機構30の
入力ディスク31にも入力され、上記第1変速機構20
と同様に、ローラー33,33を介して一体化出力ディ
スク34に伝達される。その場合に、図3に示す変速制
御ユニット110による増速用および減速用油圧PH
Lの制御により、第1、第2変速機構20,30にお
けるローラー23,33の傾転角、つまり両変速機構2
0,30の変速比が所定の変速比に制御される。
【0078】そして、この第1、第2変速機構20,3
0の一体化出力ディスク34の回転は、該ディスク34
の外周に設けられた第1ギヤ91とセカンダリシャフト
13上の第2ギヤ92とでなるハイモードギヤ列90を
介して上記遊星歯車機構50のサンギヤ52に伝達され
る。
【0079】したがって、この遊星歯車機構50には、
ピニオンキャリヤ51とサンギヤ52とに回転が入力さ
れることになるが、このとき、その回転速度の比が上記
第1、第2変速機構20,30の変速比制御によって所
定の比に設定されることにより、該遊星歯車機構50の
インターナルギヤ53の回転、即ちセカンダリシャフト
13から出力ギヤ列4を介してデファレンシャル装置5
に入力される回転がゼロとされ、当該変速機10がギヤ
ードニュートラルの状態となる。
【0080】そして、この状態から上記第1、第2変速
機構20,30の変速比を変化させて、ピニオンキャリ
ヤ51への入力回転速度とサンギヤ52への入力回転速
度との比を変化させれば、変速機10の全体としての変
速比(以下「最終変速比」という。)が大きな状態、即
ちローモードの状態で、インターナルギヤ53ないしセ
カンダリシャフト13が前進方向または後退方向に回転
し、当該車両が発進することになる。
【0081】なお、このローモードにおいては、エンジ
ン1により当該自動車が正駆動状態にあるときに、図9
に示すような循環トルクが発生する。つまり、矢印aで
示すように、エンジン1からのトルクがインプットシャ
フト11の反エンジン側の端部からローモードギヤ列8
0を介してセカンダリシャフト13側へ伝達される一
方、該セカンダリシャフト13上の遊星歯車機構50で
生じる反力としてのトルクが、矢印bで示すように、ハ
イモードギヤ列90を介して無段変速機構20,30の
出力ディスク34に還流されるのである。したがって、
このローモードでは、変速機構20,30においては、
トルクは出力ディスク34から入力ディスク21,31
側に伝達されることになる。
【0082】一方、上記のようにして前進方向に発進し
た後、所定のタイミングでハイモードクラッチ70を締
結する一方、上記ローモードクラッチ60を解放すれ
ば、インプットシャフト11に入力されたエンジン1か
らの回転は、ローディングカム40から、上記のローモ
ードの場合と同様にして、第1、第2変速機構20,3
0の入力ディスク21,31に入力され、それぞれロー
ラー23,33を介して一体化出力ディスク34に伝達
されると共に、さらに、ハイモードギヤ列90からハイ
モードクラッチ70を介してセカンダリシャフト13に
伝達される。
【0083】このとき、上記遊星歯車機構50は空転状
態となって、最終変速比は上記第1、第2変速機構2
0,30の変速比にのみ対応することになり、該最終変
速比が小さな状態、即ちハイモードの状態で無段階に制
御されることになる。
【0084】次に、図3に示す変速制御ユニット110
とクラッチ制御ユニット120によって構成される当該
無段変速機10の油圧制御回路について説明する。
【0085】図10に示すように、この油圧制御回路2
00には、オイルポンプ102から吐出される作動油の
圧力を所定のライン圧に調整してメインライン201に
出力するレギュレータバルブ202と、該メインライン
201から供給されるライン圧を元圧として所定のリリ
ーフ圧を生成し、これをリリーフ圧ライン203に出力
するリリーフバルブ204と、当該車両の運転者による
レンジの切り換え操作によって作動し、上記メインライ
ン201をDレンジでは第1、第2出力ライン205,
206に、Rレンジでは第1、第3出力ライン205,
207にそれぞれ連通させると共に、NレンジおよびP
レンジではライン圧を遮断するマニュアルバルブ208
とが備えられている。
【0086】上記レギュレータバルブ202およびリリ
ーフバルブ204には、ライン圧用リニアソレノイドバ
ルブ209およびリリーフ圧用リニアソレノイドバルブ
210がそれぞれ備えられていると共に、上記ライン圧
を元圧として一定圧を生成するレデューシングバルブ2
11が備えられ、このレデューシングバルブ211で生
成された一定圧に基づいて、上記リニアソレノイドバル
ブ209,210がそれぞれ制御圧を生成するようにな
っている。そして、これらの制御圧が上記レギュレータ
バルブ202およびリリーフバルブ204の制御ポート
202a,204aに供給されることにより、ライン圧
およびリリーフ圧の調圧値が各リニアソレノイドバルブ
209,210によってそれぞれ制御されることにな
る。
【0087】また、この油圧制御回路200には、変速
制御用として、上記ライン圧およびリリーフ圧に基づい
て、前進時および後退時のそれぞれにおいて、増速用油
圧PHおよび減速用油圧PLを生成する前進用三層弁22
0および後退用三層弁230と、これらの三層弁22
0,230を選択的に作動させるシフトバルブ241と
が備えられている。
【0088】このシフトバルブ241は、一端の制御ポ
ート241aに制御圧としてライン圧が供給されるか否
かによりスプールの位置が決定され、ライン圧が供給さ
れていないときは、該スプールが右側に位置して、上記
メインライン201を前進用三層弁220に通じるライ
ン圧供給ライン242に連通させ、また、ライン圧が供
給されたときには、スプールが左側に位置して、メイン
ライン201を後退用三層弁230に通じるライン圧供
給ライン243に連通させるようになっている。
【0089】また、前進用および後退用の三層弁22
0,230は同一の構成とされ、いずれも、図3に示す
変速制御ユニット110における油圧制御部111のバ
ルブボディ111aに設けられたボア221,231
(図11参照)に軸方向に移動可能に嵌合されたスリー
ブ222,232と、該スリーブ222,232に同じ
く軸方向に移動可能に嵌合されたスプール223,23
3とを有する。
【0090】そして、中央部に上記シフトバルブ241
から導かれたライン圧供給ライン242,243が接続
されたライン圧ポート224,234が、両端部に上記
リリーフ圧ライン203が分岐されてそれぞれ接続され
た第1、第2リリーフ圧ポート225,226,23
5,236がそれぞれ設けられており、また、上記ライ
ン圧ポート224,234と第1リリーフ圧ポート22
5,235との間には増速圧ポート227,237が、
同じくライン圧ポート224,234と第2リリーフ圧
ポート226,236との間には減速圧ポート228,
238が、それぞれ設けられている。
【0091】この三層弁220,230の作用を前進用
三層弁220を例に取って説明すると、図10に示すよ
うにスリーブ222とスプール223の位置関係が中立
位置にある状態からスリーブ222が相対的に図面上、
右側に移動すると、ライン圧ポート224と増速圧ポー
ト227との連通度、および第2リリーフ圧ポート22
6と減速圧ポート228との連通度がそれぞれ増大し、
逆にスリーブ222が相対的に左側に移動すると、上記
ライン圧ポート224と減速圧ポート228との連通
度、および第1リリーフ圧ポート225と増速圧ポート
227との連通度がそれぞれ増大するようになってい
る。
【0092】また、前進用および後退用三層弁220,
230の増速圧ポート227,237からそれぞれ導か
れたライン244,245と、同じく前進用および後退
用三層弁220,230の減速圧ポート228,238
からそれぞれ導かれたライン246,247とが上記シ
フトバルブ241に接続されている。
【0093】そして、シフトバルブ241のスプールが
右側に位置するときに、前進用三層弁220の増速圧ポ
ート227および減速圧ポート228から導かれたライ
ン244,246が、図3に示す変速制御ユニット11
0のトラニオン駆動部112における増速用油圧室11
1,1152に通じる増速圧ライン248および減速用
油圧室1161,1162に通じる減速圧ライン249に
それぞれ連通され、逆に、シフトバルブ241のスプー
ルが左側に位置するときは、後退用三層弁230の増速
圧ポート237および減速圧ポート238から導かれた
ライン245,247が、上記増速用油圧室1151
1152に通じる増速圧ライン248および減速用油圧
室1161,1162に通じる減速圧ライン249にそれ
ぞれ連通されるようになっている。
【0094】なお、図11に示すように、上記前進用お
よび後退用三層弁220,230のスリーブ222,2
32は、ステップモータ251,252によりそれぞれ
リンク部材253,254を介して軸方向に駆動される
ようになっている。また、これらのステップモータ25
1,252によるスリーブ222,232の移動に応じ
てスプール223,233をスプリング229,239
のバネ力に抗して軸方向に移動させるカム機構260が
備えられている。
【0095】このカム機構260は、図11、図12に
示すように、一方の端面が螺旋面状のカム面261aと
されて、所定のトラニオン、具体的には第2無段変速機
構30における上方に位置する第1トラニオン351
ロッド37の端部に取り付けられたプリセスカム261
と、前進用および後退用三層弁220,230のスプー
ル223,233の一端側にこれらに直交する方向に配
置されて、油圧制御部111のバルブボディ111aに
回動自在に支持されたシャフト262と、このシャフト
262の一端部に取り付けられて、揺動端が上記プリセ
スカム261のカム面261aに当接された従動レバー
263と、同じくシャフト262に取り付けられて、揺
動端が上記前進用および後退用三層弁220,230の
スプール223,233の一端に設けられた切り込み2
23a,233aに係合された前進用および後退用の駆
動レバー264,265とで構成されている。
【0096】そして、上記第2変速機構30における第
1ローラー331の傾転により、第1トラニオン351
よびロッド37が軸心X回りに一体的に回動したとき
に、上記プリセスカム261もこれらと一体的に回動し
て、そのカム面261aに揺動端が当接した従動レバー
263が所定量揺動すると共に、シャフト262を介し
て前進用および後退用の駆動レバー264,265も同
じ角度だけ揺動することにより、その揺動角度に応じた
量だけ前進用および後退用三層弁220,230のスプ
ール223,233が軸方向に移動するようになってい
る。
【0097】したがって、これらのスプール223,2
33の位置は、第2変速機構30のローラー33(およ
び第1変速機構20のローラー23)の傾転角、換言す
ればこれらの変速機構20,30の変速比に常に対応す
ることになる。
【0098】一方、図10に示すように、上記油圧制御
回路200には、クラッチ制御用として、第1、第2ソ
レノイドバルブ271,272が備えられており、上記
マニュアルバルブ208から導かれた第1出力ライン2
05が第1ソレノイドバルブ271に、第2出力ライン
206が第2ソレノイドバルブ272にそれぞれ接続さ
れている。
【0099】そして、第1ソレノイドバルブ271が開
いたときに、上記第1出力ライン205からのライン圧
に基づくクラッチ締結圧が、フェルセーフ用バルブ27
3およびローモードクラッチライン274を介してロー
モードクラッチ60の油圧室65に供給されて該クラッ
チ60を締結し、また、第2ソレノイドバルブ272が
開けば、上記第2出力ライン206からのライン圧に基
づくクラッチ締結圧が、ハイモードクラッチライン27
5を介してハイモードクラッチ70の油圧室75に供給
されて、該クラッチ70を締結するようになっている。
【0100】ここで、上記ローモードクラッチライン2
74およびハイモードクラッチライン275にはそれぞ
れアキュムレータ276,277が備えられ、ローモー
ドクラッチ60およびハイモードクラッチ70への締結
圧の供給を緩やかに行わせることにより、これらのクラ
ッチ60,70の締結時におけるショックの発生を抑制
するようになっている。
【0101】なお、マニュアルバルブ208から導かれ
た第3出力ライン207は、上記フェールセーフ用バル
ブ273を介してシフトバルブ241の制御ポート24
1aに接続され、該マニュアルバルブ208がRレンジ
の位置に移動したときに、ライン圧が上記シフトバルブ
241の制御ポート241aに供給されて、該シフトバ
ルブ241のスプールを左側、即ち後退時用の位置に移
動させるようになっている。
【0102】また、上記フェールセーフ用バルブ273
を作動させるフェールセーフ用ソレノイドバルブ278
が備えられ、該ソレノイドバルブ278からの制御圧に
より上記フェールセーフ用バルブ273のスプールが右
側に位置して、上記第1出力ライン205およびローモ
ードクラッチライン274が連通するようになってい
る。
【0103】ここで、上記第1、第2ソレノイドバルブ
271,272およびフェールセーフ用ソレノイドバル
ブ278は、いずれも三方弁であって、当該ラインの上
流側と下流側とを遮断したときに、下流側のラインをド
レンさせるようになっている。
【0104】なお、以上の構成に加えて、図10に示す
油圧制御回路200には潤滑ライン281が設けられて
いる。この潤滑ライン281は、レギュレータバルブ2
02のドレンポートから導かれ、当該変速機10の第
1、第2変速機構20,30における各潤滑部に潤滑油
を供給するライン282と、遊星歯車機構50や、ロー
モードクラッチ60およびハイモードクラッチ70のバ
ランス室68,78等の変速機構20,30以外の変速
機各部に潤滑油を供給するライン283とに分岐されて
おり、また、該ライン281には、潤滑油圧を所定値に
調整するリリーフバルブ284が接続されている。
【0105】そして、上記の変速機構20,30に通じ
るライン282の上流部は、潤滑油を冷却するクーラー
285が設置された冷却ライン286と、該クーラー2
85をバイパスするバイパスライン287とに分岐され
ていると共に、冷却ライン286におけるクーラー28
5の上流側には、オリフィス288と第1開閉バルブ2
89とが並列に配置され、また、バイパスライン287
には該ライン287を開閉する第2開閉バルブ290が
設置されている。
【0106】ここで、上記第1、第2開閉バルブ28
9,290による変速機構20,30に対する潤滑油の
供給制御について説明すると、第2開閉バルブ290
は、作動油の温度が所定値より低いとき、および作動油
の圧力が所定値より高いときに開き、これらのときにク
ーラー285を通過させることなく、変速機構20,3
0に潤滑油を供給するようになっている。これは、油温
が低いときにはクーラー285によって潤滑油を冷却す
る必要がないから、これを抵抗の少ないバイパスライン
287により効率よく供給するためであり、また、油圧
が著しく高いときにクーラー285を通過させないの
は、該クーラー285の高圧による損傷や耐久性の低下
を防止するためである。
【0107】そして、これら以外の場合には第2開閉バ
ルブ290は閉じて、潤滑油はクーラー285によって
冷却された上で変速機構20,30に供給されることに
なり、これにより、特に入、出力ディスク21,22,
31,32のトロイダル面における潤滑油の油膜が良好
に保持され、該トロイダル面およびこれに接触するロー
ラー23,33の周面の耐久性が確保されることにな
る。
【0108】また、第1開閉バルブ289は、第2開閉
バルブ290が閉じた状態で、エンジン1の回転数が所
定値より低いとき、および当該車両の速度が所定値より
低いときに閉じられる。これは、低速時や低回転時は変
速機構20,30での潤滑油の要求量が少なくなる一
方、クラッチ60,70側では所要量の潤滑油が要求さ
れるので、潤滑油量がもともと少ないこれらのときに、
無段変速機構20,30側への潤滑油の供給量を抑制し
て、クラッチ60,70側への供給量を確保するためで
ある。
【0109】なお、上記ライン282によって無段変速
機構20,30に供給される潤滑油は、図3に示すよう
に、油路282aによってローラー23,33の軸受部
に供給されると共に、ノズル282bから入、出力ディ
スク21,22,31,32のトロイダル面に噴射され
るようになっている。
【0110】この実施の形態に係る無段変速機10は、
以上のような機械的構成および油圧制御回路200の構
成を有すると共に、この油圧制御回路200を用いて、
第1、第2変速機構20,30の変速比制御およびクラ
ッチ60,70の締結制御を行うことにより、変速機1
0の全体としての変速制御を行うコントロールユニット
300を有する。
【0111】このコントロールユニット300には、図
13に示すように、当該車両の車速を検出する車速セン
サ301、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転
数センサ302、エンジン1のスロットル開度を検出す
るスロットル開度センサ303、運転者によって選択さ
れたレンジを検出するレンジセンサ304等に加え、各
種の制御用として、作動油の温度を検出する油温センサ
305、変速機構20,30の入力回転数および出力回
転数をそれぞれ検出する入力回転数センサ306および
出力回転数センサ307、アクセルペダルの解放を検出
するアイドルスイッチ308、ブレーキペダルの踏込み
を検出するブレーキスイッチ309、並びに当該車両の
走行路面の勾配を検出する勾配センサ310等からの信
号が入力されるようになっている。
【0112】そして、これらのセンサやスイッチからの
信号が示す当該車両ないしエンジンの運転状態に応じ
て、ライン圧制御用およびリリーフ圧制御用のリニアソ
レノイドバルブ209,210、ローモードクラッチ6
0用およびハイモードクラッチ70用の第1、第2ソレ
ノイドバルブ271,272、フェールセーフ用ソレノ
イドバルブ278、潤滑制御用の第1、第2開閉バルブ
289,290、並びに前進用三層弁220用および後
退用三層弁230用のステップモータ251,252等
に制御信号を出力するようになっている。
【0113】次に、上記油圧制御回路200とコントロ
ールユニット300による変速制御の基本的動作につい
て説明する。なお、ここでは、必要な場合以外、図10
に示すマニュアルバルブ208がDレンジ位置にあり、
これに伴ってシフトバルブ241のスプールが図面上、
右側の前進位置にある場合について説明し、また、変速
機構については、図3に示す第1変速機構20の上方に
位置する第1ローラー231ないし第1トラニオン251
を例にとって説明する。
【0114】まず、油圧制御回路200を用いた変速機
構20,30の変速比制御について説明すると、コント
ロールユニット300からの信号により、油圧制御回路
200におけるレギュレータバルブ用リニアソレノイド
バルブ209およびリリーフバルブ用リニアソレノイド
バルブ210が作動して、ライン圧制御用およびリリー
フ圧制御用の制御圧がそれぞれ生成され、これらがレギ
ュレータバルブ202およびリリーフバルブ204の制
御ポート202a,204aにそれぞれ供給されること
により、所定のライン圧とリリーフ圧とが生成される。
【0115】これらの油圧のうち、ライン圧は、メイン
ライン201から上記シフトバルブ241およびライン
242を介して前進用三層弁(以下単に「三層弁」とい
う。)220のライン圧ポート224に供給される。ま
た、リリーフ圧は、ライン203を介して三層弁220
の第1、第2リリーフ圧ポート225,226に供給さ
れる。
【0116】そして、このライン圧とリリーフ圧とに基
づいて、三層弁220により変速制御ユニット110の
増速用油圧室115(1151,1152、以下同様)お
よび減速用油圧室116にそれぞれ供給される増速用油
圧PHおよび減速用油圧PLの差圧ΔP(=PH−PL)の
制御が行われる。
【0117】この差圧制御は、変速機構20のトラニオ
ン25に作用するトラクション力Tに抗して該トラニオ
ン25ないしローラー23を所定の中立位置に保持する
と共に、この中立位置からトラニオン25およびローラ
ー23を軸心X方向に沿って移動させて該ローラー23
を傾転させることにより、無段変速機構20の変速比を
変化させるために行われるものである。
【0118】ここで、上記トラクション力Tについて、
説明すると、図14に示すように、変速機構20におい
て、入力ディスク21のc方向の回転によりローラー2
3が駆動されるとき、該ローラー23およびこれを支持
するトラニオン25には、これらを入力ディスク21の
回転方向cと同方向に引きずろうとする力が作用する。
また、このローラー23のd方向の回転により出力ディ
スク22がe方向(図3のx方向)に駆動されるとき、
その反力として、出力ディスク22の回転方向eと反対
方向の力が該ローラー23ないしトラニオン25に作用
する。その結果、ローラー23およびトラニオン25に
は、図示の方向のトラクション力Tが作用することにな
るのである。
【0119】したがって、このトラクション力Tに抗し
てローラー23を中立位置に保持するために、トラニオ
ン25にロッド27を介して取り付けられたピストン1
13,114によって形成される増速用油圧室115お
よび減速用油圧室116に、差圧ΔPが上記トラクショ
ン力Tと釣り合う大きさとなるように、増速用油圧P H
と減速用油圧PLとがそれぞれ供給されるのである。
【0120】そして、今、この状態から例えば無段変速
機構20の変速比を小さく(増速)するものとし、ステ
ップモータ251により、三層弁220のスリーブ22
2を、図11において左側(図10では右側)に移動さ
せれば、該三層弁220のライン圧ポート224と増速
圧ポート227との連通度、および第2リリーフ圧ポー
ト226と減速圧ポート228との連通度が大きくな
る。
【0121】そのため、図10に示す増速圧ライン24
8から上記増速用油圧室115に供給されている増速用
油圧PHは、相対的に高圧のライン圧により増圧される
と共に、減速圧ライン249から上記減速用油圧室11
6に供給されている減速用油圧PLは、相対的に低圧の
リリーフ圧により減圧されて、差圧ΔPが大きくなり、
その結果、この差圧ΔPが上記トラクション力Tに打ち
勝って、トラニオン25ないしローラ23が図15に示
すf方向に移動することになる。そして、この移動によ
り、ローラー23は、入力ディスク21との接触位置が
半径方向の外側に、出力ディスク22との接触位置が半
径方向の内側にそれぞれ移動する方向に傾転して、当該
無段変速機構20の変速比が増速されることになる。
【0122】そして、このローラー23の傾転は、図1
2に示す第2無段変速機構30においても同様に生じ、
トラクション力Tに打ち勝つ差圧ΔPによるトラニオン
35のg方向の移動により、ローラー33は、入力ディ
スク31との接触位置が半径方向の外側に、出力ディス
ク32との接触位置が半径方向の内側にそれぞれ移動す
る方向に傾転することになるが、この傾転と一体的にカ
ム機構260におけるプリセスカム261が同方向(図
11に示すh方向)に同じ角度だけ回転することによ
り、該カム機構260においては、従動レバー263、
シャフト262および駆動レバー264がいずれも図1
2に示すi方向に回動する。
【0123】その結果、三層弁220のスプール223
は、スプリング229のバネ力によってj方向、即ち図
11の左方向に移動することになるが、この方向は上記
ステップモータ251によりスリーブ222を移動させ
た方向であり、したがって、上記のように、一旦、増大
したライン圧ポート224と増速圧ポート227との連
通度、および第2リリーフ圧ポート226と減速圧ポー
ト228との連通度が当初の中立状態に復帰することに
なる。
【0124】これにより、上記差圧ΔPは再びトラクシ
ョン力Tと釣り合う状態となって上記のような変速動作
が終了し、無段変速機構20(および30)の変速比
は、所定量変化した上で固定されることになる。
【0125】その場合に、この変速動作は、上記スプー
ル223がスリーブ222との位置関係において所定の
中立状態となる位置まで移動した時点で終了することに
なるが、その位置はステップモータ251によりスリー
ブ222を移動させた位置であり、また、カム機構26
0を介してローラー23およびトラニオン25の傾転角
に対応付けられた位置であるから、スリーブ222の位
置がローラー23およびトラニオン25の傾転角に対応
することになる。その結果、ステップモーター251の
制御量が当該無段変速機構20の変速比に対応すること
になり、該ステップモーター251のパルス制御によ
り、無段変速機構20(無段変速機構30についても同
様)の変速比が制御されることになる。
【0126】なお、以上の動作はステップモータ251
により三層弁220のスリーブ222を反対側に移動さ
せた場合も同様に行われ、この場合、無段変速機構20
の変速比は大きくなる(減速される)。
【0127】ここで、ステップモータ251,252に
出力する制御信号のパルス数に対する無段変速機構2
0,30の変速比の変化の特性は例えば図15に示すよ
うになり、パルス数の増加に応じて変速比が小さくなる
ように(増速)変化する。
【0128】次に、以上のような無段変速機構20,3
0の変速比制御を用いた変速機10の全体としての変速
比(最終変速比)の制御について説明する。
【0129】前述のように、無段変速機構20,30の
変速比は、ステップモータ251,252に対するステ
ップ制御により行われるが、このとき、変速機10がロ
ーモードにあるかハイモードにあるかにより、すなわち
ローモードクラッチ60とハイモードクラッチ70のい
ずれが締結されているかにより、異なる最終変速比が得
られる。
【0130】まず、ハイモードにおいては、前述のよう
に、無段変速機構20,30の出力回転がハイモードギ
ヤ列90およびハイモードクラッチ70を介してセカン
ダリシャフト13に直接伝達され、遊星歯車機構50を
経由しないので、図16に示すように、最終変速比のパ
ルス数に対する特性Hは、図15に示す無段変速機構2
0,30の変速比の特性と同じになる。ただし、ハイモ
ードギア列90を構成する第1ギア91と第2ギア92
との径ないしは歯数の違いによって変速比自体の値が相
互に異なるようになることはいうまでもない。
【0131】一方、ローモードでは、前述のように、エ
ンジン1の回転がインプットシャフト11からローモー
ドギヤ列80およびローモードクラッチ60を介して遊
星歯車機構50のピニオンキャリヤ51に入力されると
共に、無段変速機構20,30の出力回転がハイモード
ギヤ列90を介して上記遊星歯車機構50のサンギヤ5
2に入力される。その場合に、無段変速機構20,30
の変速比を制御することにより、上記ピニオンキャリヤ
51に入力される回転の速度とサンギヤ52に入力され
る回転の速度との比を所定の値に設定すれば、遊星歯車
機構50の出力要素であるインターナルギヤ53の回転
速度がゼロとなり、ギヤードニュートラルの状態が得ら
れる。
【0132】このとき、最終変速比は、図16に符号
ア,イで示すように無限大となるが、この状態から上記
ステップモータ251,252に対する制御信号のパル
ス数を減少させることにより、無段変速機構20,30
の変速比を大きくする方向(減速側)に変化させて、上
記サンギヤ52への入力回転速度を低下させれば、遊星
歯車機構50のインターナルギヤ53は前進方向に回転
し始め、パルス数の減少に従って最終変速比が小さくな
る特性Lが得られ、Dレンジのローモードが実現され
る。
【0133】そして、これらのDレンジのローモード特
性Lとハイモード特性Hとは、図中符号ウで示すよう
に、所定のパルス数(図例では500パルス付近)、即
ち変速機構20,30の所定の変速比(図例では1.8
付近)において交差するような特性になっている。した
がって、この交差点ウでローモードクラッチ60とハイ
モードクラッチ70の掛け替えを行えば、最終変速比を
連続的に変化させながら、モードの切り換えを行なうこ
とができることになる。
【0134】なお、上記のギヤードニュートラルの状態
からステップモータ251,252に対する制御信号の
パルス数を増加させることにより、変速機構20,30
の変速比を小さくする方向(増速側)に変化させて、上
記サンギヤ52への入力回転速度を上昇させれば、遊星
歯車機構50のインターナルギヤ51は後退方向に回転
し始め、パルス数の増加に従って最終変速比の絶対値が
小さくなるRレンジの特性Rが得られる。
【0135】そして、以上のような制御特性に基づき、
コントロールユニット300は、当該車両の運転状態に
応じた最終変速比の制御を次のように行う。
【0136】すなわち、コントロールユニット300
は、車速センサ301およびスロットル開度センサ30
3からの信号に基づいて、現時点の車速Vとスロットル
開度θとを読み取り、これらの値と図17に示すように
予め設定された変速特性のマップとから、目標エンジン
回転数Neoを設定する。そして、この目標エンジン回
転数Neoに対応する最終変速比(図17の角度αに対
応する値)が得られるように、図16の制御特性に基づ
いて、上記のようなステップモータ251,252に対
するパルス制御と、図10に示す第1、第2ソレノイド
バルブ271,272に対する制御によるローモードク
ラッチ60およびハイモードクラッチ70の締結制御と
を行うのである。
【0137】ところで、この無段変速機10において、
エンジン1の駆動トルクを駆動輪に伝達する動力伝達経
路は、ローモードクラッチ60が締結され、ハイモード
クラッチ70が開放されたローモードでは、インプット
シャフト11からローディングカム40を介して変速機
構20,30、ハイモードギア列90及び遊星歯車機構
50を経由してサカンダリシャフト13に至る経路と、
インプットシャフト11からローモードギア列80を介
して遊星歯車機構50のみを経由してサカンダリシャフ
ト13に至る経路とがあり、一方、ローモードクラッチ
60が開放され、ハイモードクラッチ70が締結された
ハイモードでは、インプットシャフト11からローディ
ングカム40を介して変速機構20,30及びハイモー
ドギア列を経由して直接サカンダリシャフト13に至る
経路がある。
【0138】したがって、エンジン1の1サイクル中の
燃焼圧の変動により該エンジン1の出力回転に角速度変
動(回転変動)が生じた場合には、その回転変動は、上
記動力伝達経路を介してサカンダリシャフト13の回転
に影響を及ぼし、該サカンダリシャフト13の回転変動
に起因して、駆動軸6a,6bから駆動輪に回転変動が
生じ、さらには車体へと伝わって、車体振動が発生する
という問題がある。
【0139】一方、この無段変速機10においては、D
レンジでは、ローモードでもハイモードでも、上記のよ
うに動力伝達経路が変速機構20,30を経由し、エン
ジン1側からの入力回転を無段階比率に変速して一体化
出力ディスク34から駆動輪側に出力することができる
ので、この無段変速機10における上記コントロールユ
ニット300には、Dレンジで走行中等に、通常の変速
制御に加えて、上記のようなエンジン1の回転変動を打
ち消して、回転変動の低減された出力回転を一体化出力
ディスク34から駆動輪側に出力するように変速機構2
0,30の変速比を変化させる制御プログラムが格納さ
れている。
【0140】まず、この出力回転変動低減制御の原理を
先に概略説明すると、エンジン1の角速度Ωeは次の数
式1のように表わされる。ここで、第一項(Ω0)は基
本の角速度、すなわち角速度の中心点であり、第二項
(Ωt・sinωt)は、振幅を(Ωt)とした場合の
変動成分、tは時間である。
【0141】
【数1】 変速機構20,30の変速比をNgとすると、セカンダ
リシャフト13に連結し、駆動輪側に出力回転を出力す
る一体化出力ディスク34ないし第1ギア91の回転数
は、次の数式2のように表わされ、同式2を展開した第
二項(Ng・Ωt・sinωt)で示される変動成分に
より振動を生じることがわかる。
【0142】
【数2】 ここで、変速機構20,30の変速比Ngを、上記振動
系と逆位相の振動系として表わすと、次の数式3のよう
になる。ここで、第一項(Ng0)は基本の変速比、す
なわち変速比の中心点であり、第二項(Ngt・sin
ωt)は、振幅を(Ngt)とした場合の変動成分であ
る。
【0143】
【数3】 上記式3を式2に代入して展開し、整理すると、次の数
式4のように表わされる。
【0144】
【数4】 ここで、最終第二項の括弧内を次の数式5のようにDと
おく。
【0145】
【数5】 また、変速機構20,30の変速比Ngの振幅Ngtを
次の数式6のようにおく。
【0146】
【数6】 すると、Dは次の数式7のように表わされる。
【0147】
【数7】 ここで、通常、ΩtはΩ0に比べてかなり小さいから、
Dは0に近くなる。
【0148】すなわち、エンジン1の角速度Ωeが上記
式1のように変動しても、変速機構20,30の変速比
Ngの振幅Ngtを例えば式6のように設定したうえ
で、該変速比Ngを逆位相で変化させることによって、
式4において、一体化出力ディスク34ないし第1ギア
91の回転数(Ng・Ωe)は、最終第一項の(Ng0
・Ω0)という固定成分だけで略表わされることにな
り、これにより、駆動輪側への出力回転の変動が低減さ
れることになる。なお、上記式6は、式5における第三
項の二次成分を0として、D=0を解いたものである。
【0149】この出力回転変動低減制御は、図18に示
すフローチャートに従って行なわれ、まずステップS1
でエンジン回転数Nが所定値K以下か否かを判定し、N
Oの場合、つまりエンジン回転数Nが比較的大きい場合
には当該制御は行なわれない。すなわち、エンジン1側
からの入力回転数が大きいときには、該入力回転におい
て角速度変動ないしエンジン1の出力変動がそれほど大
きく現れないので、そのような状態のときには、徒に過
度の制御を実行しないのである。
【0150】一方、逆にエンジン回転数Nが所定値K以
下の場合、つまり入力回転において角速度変動ないしエ
ンジン1の出力変動が大きく現れるような状態のときに
は、ステップS2に進んで、スロットル開度TVOが所
定値C1以上か否かを判定する。すなわち、車両が加速
走行をしているか、定常走行をしているかを判定するの
である。そして、NOの場合、すなわち、スロットル開
度TVOがそれほど大きくなく、定常走行をしている場
合には、ステップS3に進んで、ステップモータのパル
ス数P(t)を、上記式3に準じて、エンジン1側から
の入力回転の変動に対して逆位相で制御する。ここで、
図中、Poは現時点における変速制御パルスの中心値、
Ptoは現時点における変速制御パルスの振幅であっ
て、上記式6に準じて設定された値、Woは現時点にお
ける角速度である。これにより、定常走行時の駆動輪側
への出力回転の変動が低減されることになる。
【0151】一方、ステップS2でスロットル開度TV
Oが所定値C1以上であるとき、つまり加速走行をして
いる場合には、ステップS4に進んで、さらにスロット
ル開度TVOが第2の所定値C2以下か否かを判定す
る。ここで、この第2所定値C2は、上記第1所定値C
1よりも大きい値とされている。すなわち、車両が緩加
速走行をしているか、急加速走行をしているかを判定す
るのである。そして、NOの場合、つまり急加速走行を
していると判定された場合には、加速応答性が重要視さ
れ、速やかな本来の変速制御の実行が要求されるので、
当該制御は行なわれない。
【0152】これに対し、緩加速走行であると判定され
たときは、ステップS5に進んで、ステップモータのパ
ルス数P(t)を、上記式3に準じて、エンジン1側か
らの入力回転の変動に対して逆位相で制御する。ここ
で、図中、P1は目標変速制御パルスの中心値、Pt1
は目標変速制御パルスの振幅であって、上記式6に準じ
て設定された値、W1は目標変速制御パルスの出力時に
おける角速度であり、それぞれ前述のPo、Pto及び
Woとの相加平均値を用いている。これにより、緩加速
走行時の駆動輪側への出力回転の変動が低減されること
になる。
【0153】なお、上記制御に代えて、ステップS2で
定常走行をしていると判定されたときに、ステップS3
に進まず、当該制御を行なわないようにしてもよい。す
なわち、ステップS1でエンジン回転数Nが所定値K以
下で角速度変動ないしエンジン1の出力変動が大きく現
れるような状態と判断されても、定常走行時は加速時に
比べるとそのような変動がそれほど大きくは現れないの
であるから、そのような状態のときには、徒に過度の制
御を実行しないようにするのである。
【0154】以上のようにして、この無段変速機10に
おいては、Dレンジで走行中等に、通常の変速制御に加
えて、エンジン1の入力回転変動を打ち消すように変速
機構20,30を制御して、車体振動を抑制しようとす
るが、このような車体振動の問題は、ローモードクラッ
チ60、ハイモードクラッチ70のいずれもが開放され
て、動力伝達経路が遮断状態にあるNレンジやPレンジ
等の非走行レンジでも起こり得る問題である。
【0155】すなわち、NレンジやPレンジ等の非走行
レンジでは、いずれの動力伝達経路も遮断状態とされる
ので、エンジン1の回転により、変速機構20,30の
一体化ディスク34、ないしローモードギア列80の第
1、第2ギア81,82及びハイモードギア列90の第
1、第2ギア91,92等が空転状態となる。
【0156】しかしながら、このように、駆動側と駆動
輪側との間の動力伝達経路が遮断されていても、上記の
ようにセカンダリシャフト13の軸線上に配設された第
2ギア82,92等の回転要素が、エンジン1のアイド
ル回転等の入力回転により回転しているから、これによ
り、例えば同じくセカンダリシャフト13の軸線上に配
設された遊星歯車機構50内の回転要素が共振する等し
て、やはり車体振動が発生することになるのである。
【0157】そこで、この無段変速機10における上記
コントロールユニット300には、非走行レンジにおい
て、エンジン1の回転変動によって発生する車体振動を
変速機構20,30の変速比制御により抑制する制御プ
ログラムが格納されている。
【0158】この非走行レンジ変速比制御は、図19に
示すフローチャートに従って行なわれる。まずステップ
S11でレンジがNレンジあるいはPレンジの非走行レ
ンジであるか否かが判定され、YESの場合は、次いで
ステップS12で油温tが0°C以上かどうか、つまり
作動油の粘度がそれほど高くならない常温時かどうかが
判定される。さらに、常温時の場合は、ステップS13
でアイドルアップ状態でないか否かが判定され、以上の
結果に応じて、レンジがNレンジあるいはPレンジの非
走行レンジである場合に、変速機構20,30の変速比
Ngが、第1変速比Ng1(ステップS14)、第2変
速比Ng2(ステップS15)、又は第3変速比Ng3
(ステップS16)にそれぞれ制御される。
【0159】なお、ステップS13におけるアイドルア
ップ状態であるかどうかの判定は、アイドルスイッチ3
08がONで、エンジン回転数センサ302で検出され
るエンジン回転数が、例えばエアコン等の作動によりエ
ンジンの駆動負荷が増大して通常のアイドル回転数より
大きい回転数に制御されているか否か等により判定され
る。
【0160】ここで、この無段変速機10においては、
Dレンジにおける発進時には、変速機構20,30の変
速比をギヤードニュートラルを実現する変速比とせず、
図20に示すように、変速機構20,30の変速比を、
ギヤードニュートラルを実現する変速比Nggから前進
方向(変速機構20,30の変速比を大きくする方向
(減速側))にずらせた変速比Ngoとして、変速機構
20,30の変速比をただ一点しかないギヤードニュー
トラルを実現する変速比Nggに正確に制御することの
困難性を回避しつつ、トルクコンバータを備える自動変
速機のようにクリープ力を生成するようになっている。
【0161】そして、上記第1〜第3変速比Ng1,N
g2,Ng3は、この順に、上記Dレンジにおける発進
時の変速比Ngoよりも徐々に増速側の変速比とされて
いる。すなわち、いずれの場合においても、非走行レン
ジにおいては、変速機構20,30の変速比Ng1,N
g2又はNg3が、走行レンジにおける発進時の変速比
Ngoに比べて増速側であるので、変速機構20,30
の慣性が大きくなり、エンジン1に対する回転抵抗が増
して、該エンジン1の回転変動が低減され、その結果、
車体振動が抑制されることになる。
【0162】その場合に、アイドルアップ状態、つまり
アイドル回転数が高められて、エンジン抵抗が増大した
状態(ステップS14)のときは、アイドルアップがO
FFの状態(ステップS15)のときに比べて、変速機
構20,30の変速比の増速側への変化が小さくされる
から、これにより、エンジン1の燃費性能の低下が抑制
される。
【0163】また、これとは逆に、アイドルアップ状態
(ステップS14)のときは、アイドルアップがOFF
の状態(ステップS15)のときに比べて、変速機構2
0,30の変速比の増速側への変化を大きくしてもよ
い。エンジン1の回転変動がより低減され、車体振動が
有効に抑制されることになるからである。
【0164】さらに、作動油の温度が低いとき、つまり
作動油の粘度が高くなって、振動が伝わり易い状態(ス
テップS16)のときは、常温時(ステップS14又は
ステップS15)に比べて、変速機構20,30の変速
比の増速側への変化が大きくされるから、エンジンの回
転変動がより低減され、その結果、車体振動が有効に抑
制されることになる。
【0165】また、これとは逆に、作動油の温度が低い
ときは、作動油の粘度が高くなって、エンジン1の回転
負荷が増大するから、そのようなのとき(ステップS1
6)は、常温時(ステップS14又はステップS15)
に比べて、変速機構20,30の変速比の増速側への変
化を小さくしてもよい。エンジン1に過大な負荷を作用
させることが回避できるからである。
【0166】さらには、油温による区分をさらに細分化
し、作動油の粘度が著しく高くなって、エンジン1の回
転変動が殆ど抑制される状態の極低温時、低温時、常温
時の順に、変速機構20,30の変速比の増速側への変
化を大きくするようにしてもよい。極低温時においてエ
ンジン1に過大な負荷が作用し、エンジン1の燃費性能
が低下することを抑制できると共に、常温時において車
体振動を効果的に抑制できるからである。
【0167】なお、このような非走行レンジにおいて
も、前述のDレンジにおける出力回転変動低減制御のよ
うに、エンジン1の入力回転変動を打ち消すように、変
速機構20,30の変速比を逆位相で周期的に変化させ
るようにしてもよい。
【0168】また、図21に示すように、例えばハイモ
ードギア列90の第2ギア92にフライホイールのよう
なイナーシャ付与のための質量マス部材92aを取り付
けて回転変動を低減するようにしてもよい。このとき、
より大きな慣性を得るための大型のマス部材92aを図
面上手前側に有する第2ギア92を先に組み付けたの
ち、第1ギア91を同じく図面上手前側から組み付けよ
うとする場合において、該第1ギア91の組付け性を改
善するため、図示したように、上記マス部材92aに、
第1ギア91が干渉せず通過できるような円弧形状の切
欠きを設けるとよい。そして、その場合には、該マス部
材92aの切欠きは、軸心対称に二個形成し、第2ギア
92の回転に均衡がとれるようにする。
【0169】前述したように、この無段変速機10にお
いては、コントロールユニット300は、図17に示し
たような、予め車速とスロットル開度に応じて設定され
た変速特性のマップを用い、これと車速センサ301で
検出される車速の実測値、及びスロットル開度センサ3
03で検出されるスロットル開度の実測値を当てはめ
て、現実の走行状態に最適となるエンジン回転数の目標
値を求め、そして該目標エンジン回転数に対応する最終
変速比が得られるように、図16に示したような制御特
性に基づいて、変速機構20,30の変速比を無段階に
変化させる変速制御を行なう。
【0170】そして、発進当初は、ローモードクラッチ
60が締結され、ハイモードクラッチ70が解放された
ローモードでエンジン1の駆動トルクの動力伝達が行な
われ、車速ないしスロットル開度で示される車両の走行
状態が、図17中に示すモード切換ラインを横切って変
化するときに、今度はローモードクラッチ60が解放さ
れ、ハイモードクラッチ70が締結されたハイモードで
の動力伝達に切り換えられる。そして、以降は、車両の
走行状態が変化して、図17に示すローモード領域とハ
イモード領域との間を行き来する毎に、クラッチ60,
70の掛け替え、すなわち動力伝達経路の切換え、ない
しはモードの切換えが行なわれることになる。
【0171】その場合に、これらの切換えが行なわれる
上記モード切換ライン上では、Dレンジのローモード特
性Lとハイモード特性Hとにおいて、相互に最終変速比
が同じとなっているから、該最終変速比を連続的に変化
させながら、切換時の大きなショックを抑制しつつモー
ドの切換えを行なうことができる。
【0172】ところで、車両の走行状態が上記モード切
換ラインを横切って変化するのは、一つには運転者自身
のアクセル操作により車速ないしスロットル開度が変化
する場合があるが、これ以外に、運転者のアクセルペダ
ルの踏み込みが一定、つまりスロットル開度が同一のと
きに、例えば車両が登坂降坂を繰り返す坂道に入ったよ
うなときにも起こる。つまり、路面勾配の変化に伴って
エンジン1の駆動負荷が変化し、車速が増減するからで
ある。そして、このときに、車速が上記モード切換ライ
ンを挟んで加減速を繰り返すと、動力伝達経路ないしモ
ードの切換えが短時間中に頻繁に起こり、その切換制御
にハンチングが起こるという不具合が生じる。
【0173】また、運転者としては、アクセル操作をし
ていないのであるから、該切り換えに伴うショックに対
する違和感が大きく、それが頻繁に起こることにもな
る。
【0174】そこで、この無段変速機10における上記
コントロールユニット300には、ローモードとハイモ
ードとの間の切換えを行なう際に、該切換制御のハンチ
ングを抑制し、それに伴う違和感の大きいショックを有
効に回避するための制御プログラムが格納されている。
【0175】このモード切換制御は、図22に示すフロ
ーチャートに従って行なわれ、まずステップS21で各
種信号を読み込んだのち、ステップS22でモードの切
換中か否かを判定する。すなわち、変速機構20,30
の入力回転数ESPが、モード切換ラインに対応する最
終変速比c(=エンジン回転数/車速)と現車速Vとを
乗算して得られる値に略等しいか否かを判定するのであ
る。そして、YESの場合は、ステップS23に進ん
で、ローモードクラッチ60とハイモードクラッチ70
との掛け替え中は、最終変速比を上記切換ライン対応変
速比cに固定しておく。これは、クラッチの掛替えには
所定の時間が必要とされ、掛替え終了時点では走行状態
が変化してしまってモード切換ラインから外れ、その結
果、切換ショックが生じる場合があるので、そのような
ことのないように、クラッチの掛替動作中は、最終変速
比を切換ライン対応変速比cに固定しておいて、上記シ
ョックを回避しようとするものである。
【0176】一方、ステップS22でモードの切換中で
はない、つまり走行状態が図17に示すローモード領域
又はハイモード領域にある場合は、次にステップS24
でハイモード領域かどうかをみて、ハイモードのとき
は、ステップS25で減速中か否かを判定する。そし
て、YESの場合は、次にステップS26で前回加速中
であったかどうかをみて、加速中であった場合、つまり
今回初めて加速から減速に転じた場合には、ステップS
27で現時点における変速比を維持し、ステップS28
で走行状態が減速ライン上に到達するまで、その変速比
固定を続ける。
【0177】このとき、コントロールユニット300に
格納された変速マップには、図23に示すように、スロ
ットル開度毎に(図23にはそのうちの一つを拡大図
示)、モード切換ラインを挟むローモード領域及びハイ
モード領域の所定の範囲内で、二つの変速特性のライン
が設定されており、それぞれ、同範囲内で、目標エンジ
ン回転数が高く設定された方が加速用変速ラインと、低
く設定された方が減速用変速ラインとされている。そし
て、これらの二つの変速特性ラインが設定されている範
囲内において、例えば、上記のようにハイモード領域内
で加速中であったものが路面勾配等の影響を受ける等し
て減速に転じた場合には、コントロールユニット300
は、それまで用いていた加速用変速ラインを減速用変速
ラインに切り換えるのである。そして、その場合に、該
切換期間中は、その変速ラインの切換えが開始された時
点における変速比が上記ステップS27のように維持さ
れるから、図23に概念的に示すように、加速用変速ラ
イン上の符号カで示す走行状態から該加速用変速ライン
上を低車速側に後戻りするのではなく、減速用変速ライ
ン上の符号キで示す走行状態に移行し、したがって加速
用ラインと減速用ラインとの間の変速特性の切換えの前
後に渡って変速比が同一となり、その結果、変速比が急
変せず、切換えに伴うショックの発生が抑制されること
になる。
【0178】そして、ステップS28で加速用変速ライ
ンから減速用変速ラインへの切換えが終了したと判定さ
れたときには、該減速用変速ラインを用いた変速制御が
行なわれる。つまり、前述したように、ステップS29
で、車速Vとスロットル開度TVOとから目標エンジン
回転数ESPOを求め、次いでステップS35で、該目
標エンジン回転数ESPOと、変速機構20,30の現
入力回転数(エンジン回転数)ESPとの偏差ΔNを算
出し、そしてステップS36で、その偏差ΔNに対応す
るパルス数ΔPULSを設定して、最終的にステップS
37で、該パルス数ΔPULSをステッピングモータに
出力することになる。
【0179】また、ステップS24でローモードである
と判定された場合には、ステップS30に進み、以下ス
テップS31からステップS34で上記に準じた制御が
行なわれる。すなわち、同じく図23に概念的に示すよ
うに、ローモード領域の減速用変速ライン上の符号サで
示す走行状態において減速から加速に転じた場合には、
該走行状態サから減速用変速ライン上を高車速側に後戻
りするのではなく、加速用変速ライン上の符号シで示す
走行状態に移行するのである。そして、加速用変速ライ
ンへの切り換えが終了したときに、該加速用変速ライン
を用いる変速制御が実行され、上記ステップS35〜ス
テップS37で最終的にステッピングモータのパルス数
制御、つまり変速制御が行なわれる。
【0180】このように、同一のスロットル開度に対し
て、加速用変速ラインと減速用変速ラインとが設けられ
ているから、例えば図23において、運転者がアクセル
操作をしていない状態で、車両が下り坂に入って加速走
行となり、加速用ライン上を符号スのように変化してい
るとすると、モード切換ラインを横切った時点でモード
の切り換えが行なわれる。そしてハイモード領域に入っ
てから、次に路面が登り坂となって減速走行となったと
きには、符号カから減速用ライン上の符号キの状態に移
行し、そののち該減速用ライン上を符号クのように変化
して、再びモード切換ラインを横切った時点でモードの
切り換えが行なわれる。
【0181】さらに、ローモード領域に入ってから、次
に走行路面がまた下り坂となって車両が加速状態となる
と、符号サから符号シのように加速用変速ライン上に移
行して、該加速用ライン上を符号スのように移動するこ
とになる。
【0182】したがって、同一のスロットル開度に対し
て単一の変速特性ラインのみが設定され、例えば上記設
例でいえば、符号カの状態から同じ加速変速ライン上を
反ス方向に移動したり、又は符号サの状態から同じ減速
変速ライン上を反ク方向に移動したりする場合に比べ
て、上記符号カの状態からキの状態、又は符号サの状態
からシの状態に移行するのに要する時間だけ、先のモー
ド切換が起こってから次のモード切換えが起こるまでの
時間が長引き、これにより、モード切換制御のハンチン
グが抑制され、それに伴う違和感の大きいショックの頻
繁な発生が低減されることになる。
【0183】なお、その場合に、変速特性ラインの切換
中に変速比をライン切換開始時点における変速比に固定
する制御に代えて、図23に符号ケ又は符号セで示すよ
うに、一気に特性ラインの切換えを行なってもよい。こ
の場合は、変速特性ラインの切換えには時間が費やされ
ないけれども、上記符号ケの状態からク方向に移動して
モード切り換えラインを横切るまでの時間が、符号カの
状態から反ス方向に移動してモード切り換えラインを横
切るまでの時間に比べて長くかかることになり、また、
上記符号セの状態からス方向に移動してモード切り換え
ラインを横切るまでの時間が、符号サの状態から反ク方
向に移動してモード切り換えラインを横切るまでの時間
に比べて長くかかることになるから、これによってもモ
ード切換制御のハンチングが抑制され、それに伴う違和
感の大きいショックの頻繁な発生が低減されることにな
る。
【0184】さらに、加速用変速ラインと減速用変速ラ
インとが、モード切換ラインを挟む所定の範囲内におい
てのみ個別に設定されているから、これらの両特性を格
納するコントロールユニット300のメモリの容量消費
が抑制される。なお、これらの二つの変速ラインをモー
ド切換ラインを挟む狭い範囲で設定すると、該変速ライ
ンの切換え前後におけるエンジン回転数の変化が大きく
なるので、メモリの容量消費との兼ね合いにおいて、二
つの変速ラインを個別に設定する範囲を定めることが好
ましい。
【0185】
【発明の効果】以上説明したように、本願の第1発明に
よれば、トロイダル変速機構のディスクの硬さが、ギア
が設けられる周縁部において小さく、ローラが圧接され
る中央部において大きくされているので、それぞれ、周
縁部では上記ギアと他のギアとの噛み合いにおいて歯が
折れる等の損傷が発生し難く、中央部ではローラとの間
の回転摩擦や圧力に耐えて塑性変形し難いディスクが得
られることになり、相互に異なるそれぞれの材料特性要
求に対応できて、ディスクの周縁部にギアを問題なく設
けることが可能となる。
【0186】特に、第2発明によれば、トロイダル変速
機構のディスクの組が二組設けられ、これらの二組のデ
ィスクがシャフト上に配置されている場合に、相互に隣
接するディスク同士が一体化されているので、各ギアを
それぞれ独立してシャフト上に配置する場合と比べて、
トロイダル変速機構の該シャフト上での軸方向の寸法の
増大が抑制されることになり、該変速機構、ひいてはこ
のトロイダル式無段変速機全体のレイアウト性の向上が
図られる。
【0187】また、第3発明によれば、特に、トロイダ
ル変速機構のディスクが、ギアが設けられる周縁部にお
いて浸炭組織の層の厚みが小さく、ローラが圧接される
中央部において大きくなるように浸炭されているので、
これにより、該ディスクの硬さが、周縁部において小さ
く、中央部において大きくされることになる。
【0188】そして、第4発明によれば、トロイダル変
速機構のディスクが、硬さの小さい周縁部の部材と、硬
さの大きい中央部の部材との二つの部材で構成され、ま
た第5発明によれば、浸炭組織の層の厚みが小さくなる
ように浸炭された周縁部の部材と、浸炭組織の層の厚み
が大きくなるように浸炭された中央部の部材との二つの
部材で構成されているから、これにより、それぞれ、周
縁部ではギアの噛み合いにおいて歯が折れる等の損傷が
発生し難く、中央部ではローラとの間の回転摩擦や圧力
に耐えて塑性変形し難いディスクが得られることにな
る。
【0189】その場合に、第6発明によれば、周縁部の
部材と中央部の部材とが別体とされたうえで、これらの
両部材が塑性変形によって一体化され、また第7発明に
よれば、溶接によって一体化されているから、これによ
り、それぞれ、硬さの小さい周縁部の部材と、硬さの大
きい中央部の部材との二つの部材で構成されたディス
ク、又は浸炭組織の層の厚みが小さくなるように浸炭さ
れた周縁部の部材と、浸炭組織の層の厚みが大きくなる
ように浸炭された中央部の部材との二つの部材で構成さ
れたディスクが得られることになる。
【0190】さらに、第8発明によれば、特に、周縁部
の部材と中央部の部材とが溶接によって一体化されてい
る場合に、その接合部がディスク面から退避されている
ので、該接合部において溶接用の金属が盛り上がった状
態で残っても、その盛り上がった溶接用金属がローラが
圧接されるディスク面から突出することが回避されて、
該ローラを上記溶接用金属と干渉させることなく、ディ
スク面の広い範囲で傾転させることが可能となり、幅広
い変速比が得られることになる。
【0191】また、周縁部の部材と中央部の部材とがそ
れぞれ浸炭されたものの場合においては、溶接が部材表
面に存在する浸炭組織の層を避けて行なわれることにな
り、両部材を確実に溶接することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無段
変速機の機械的構成を示す骨子図である。
【図2】 同変速機の要部の具体的構造を示す展開図で
ある。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 ハイモードギア列を構成する第1ギアの組付
けの態様を示す断面図である。
【図5】 同第1ギアの別の組付けの態様を示す拡大断
面図である。
【図6】 ローディングカムとローモードギア列を構成
する第1ギア及び入力ディスクとの組付け関係を示す一
部切欠き図である。
【図7】 インプットシャフト上の構成を示す拡大断面
図である。
【図8】 セカンダリシャフト上の構成を示す拡大断面
図である。
【図9】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無段
変速機における循環トルクの流れを説明する概略線図で
ある。
【図10】 同変速機の油圧制御の回路図である。
【図11】 図3のB方向からみた変速制御用の油圧を
生成する三層弁の部分断面図である。
【図12】 図3のC方向からみたカム機構の部分断面
図である。
【図13】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無
段変速機における制御システム図である。
【図14】 変速制御の前提となるトラクション力の説
明図である。
【図15】 ステップモータのパルス数とトロイダル変
速比との関係を示す特性図である。
【図16】 ステップモータのパルス数と最終変速比と
の関係を示す特性図である。
【図17】 変速制御に用いられる特性図である。
【図18】 コントロールユニットが行なう出力回転変
動低減制御のフローチャート図である。
【図19】 コントロールユニットが行なう非走行レン
ジ変速比制御のフローチャート図である。
【図20】 同非走行レンジ変速比制御における特性図
である。
【図21】 回転変動を低減するためのマス部材をハイ
モードギア列を構成する第2ギアに組み付ける態様を示
す説明図である。
【図22】 コントロールユニットが行なうモード切換
制御のフローチャート図である。
【図23】 同モード切換え制御に用いられる特性図の
特徴を拡大図示する説明図である。
【符号の説明】
1 エンジン 10 トロイダル式無段変速機 11 インプットシャフト 12 プライマリシャフト 13 セカンダリシャフト 20,30 無段変速機構 21,31 入力ディスク 22,32 出力ディスク 34 一体化出力ディスク 23,33 ローラー 25 トラニオン 50 遊星歯車機構 51 ピニオンキャリヤ 52 サンギヤ 53 インターナルギヤ 60 ローモードクラッチ 70 ハイモードクラッチ 80 ローモードギヤ列 90 ハイモードギヤ列 91 ハイモードギヤ列の第1ギア 92 ハイモードギヤ列の第2ギア 100 変速機ケース 110 変速制御ユニット 111 油圧制御部 112 トラニオン駆動部 115 増速用油圧室 116 減速用油圧室 120 クラッチ制御ユニット 220,230 三層弁 222,232 スリーブ 223,233 スプール 241 シフトバルブ 271,272 ソレノイドバルブ Y,Y’ 座ぐり部 Z 溶接用金属 Z’ 結合部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柴田 伸也 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相互に対向配置された一対のディスク間
    に介在するローラの傾転により該ディスク間の変速比が
    無段階に変化するように構成されたトロイダル変速機構
    が備えられ、該変速機構を経由させる動力伝達のための
    ギアが上記ディスクの周縁部に設けられているトロイダ
    ル式無段変速機であって、上記ディスクの硬さが、周縁
    部において小さく、中央部において大きくされているこ
    とを特徴とするトロイダル式無段変速機。
  2. 【請求項2】 相互に対向配置された一対のディスク間
    に介在するローラの傾転により該ディスク間の変速比が
    無段階に変化するように構成されたトロイダル変速機構
    が備えられ、該変速機構を経由させる動力伝達のための
    ギアが上記ディスクの周縁部に設けられているトロイダ
    ル式無段変速機であって、上記トロイダル変速機構にお
    ける一対のディスクが二組設けられ、これらの二組のデ
    ィスクが、所定方向に伸びる軸上に該軸の長手方向に沿
    って配置されていると共に、異なる組の相互に隣接する
    ディスク同士が一体化されて、この一体化ディスクの周
    縁部に上記ギアが設けられ、該一体化ディスクの硬さ
    が、周縁部において小さく、中央部において大きくされ
    ていることを特徴とするトロイダル式無段変速機。
  3. 【請求項3】 相互に対向配置された一対のディスク間
    に介在するローラの傾転により該ディスク間の変速比が
    無段階に変化するように構成されたトロイダル変速機構
    が備えられ、該変速機構を経由させる動力伝達のための
    ギアが上記ディスクの周縁部に設けられているトロイダ
    ル式無段変速機であって、上記ディスクが、浸炭組織の
    層の厚みが周縁部において小さく、中央部において大き
    くなるように浸炭されていることを特徴とするトロイダ
    ル式無段変速機。
  4. 【請求項4】 相互に対向配置された一対のディスク間
    に介在するローラの傾転により該ディスク間の変速比が
    無段階に変化するように構成されたトロイダル変速機構
    が備えられ、該変速機構を経由させる動力伝達のための
    ギアが上記ディスクの周縁部に設けられているトロイダ
    ル式無段変速機であって、上記ディスクが、周縁部を構
    成する硬さの小さい部材と、中央部を構成する硬さの大
    きい部材とでなることを特徴とするトロイダル式無段変
    速機。
  5. 【請求項5】 相互に対向配置された一対のディスク間
    に介在するローラの傾転により該ディスク間の変速比が
    無段階に変化するように構成されたトロイダル変速機構
    が備えられ、該変速機構を経由させる動力伝達のための
    ギアが上記ディスクの周縁部に設けられているトロイダ
    ル式無段変速機であって、上記ディスクが、浸炭組織の
    層の厚みが小さくなるように浸炭された周縁部を構成す
    る部材と、浸炭組織の層の厚みが大きくなるように浸炭
    された中央部を構成する部材とでなることを特徴とする
    トロイダル式無段変速機。
  6. 【請求項6】 周縁部を構成する部材と、中央部を構成
    する部材とが別体とされ、これら両部材が塑性変形によ
    り一体化されていることを特徴とする請求項4又は請求
    項5に記載のトロイダル式無段変速機。
  7. 【請求項7】 周縁部を構成する部材と、中央部を構成
    する部材とが別体とされ、これら両部材が溶接により一
    体化されていることを特徴とする請求項4又は請求項5
    に記載のトロイダル式無段変速機。
  8. 【請求項8】 周縁部を構成する部材と中央部を構成す
    る部材との接合部が、ディスク面から退避して設けられ
    ていることを特徴とする請求項7に記載のトロイダル式
    無段変速機。
JP24466397A 1997-08-25 1997-08-25 トロイダル式無段変速機 Expired - Fee Related JP3716568B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24466397A JP3716568B2 (ja) 1997-08-25 1997-08-25 トロイダル式無段変速機

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24466397A JP3716568B2 (ja) 1997-08-25 1997-08-25 トロイダル式無段変速機

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1163139A true JPH1163139A (ja) 1999-03-05
JP3716568B2 JP3716568B2 (ja) 2005-11-16

Family

ID=17122110

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24466397A Expired - Fee Related JP3716568B2 (ja) 1997-08-25 1997-08-25 トロイダル式無段変速機

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3716568B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1186798A2 (en) 2000-09-06 2002-03-13 Nissan Motor Company, Limited Dual cavity toroidal type cvt with common output disc
EP1188956A2 (en) 2000-09-14 2002-03-20 Nissan Motor Co., Ltd. Infinitely variable transmission
EP1201965A2 (en) 2000-10-25 2002-05-02 Nissan Motor Co., Ltd. Cooling and lubricating mechanism of toroidal continuously variable transmission
US6616564B2 (en) 2001-03-07 2003-09-09 Nissan Motor Co., Ltd. Infinitely variable transmission
JP2004060707A (ja) * 2002-07-25 2004-02-26 Aichi Mach Ind Co Ltd 変速装置用ギヤの製造方法
US7118462B2 (en) 2004-03-29 2006-10-10 Nsk, Ltd. Disk for toroidal continuously variable transmission and method of machining the same
US7273437B2 (en) 2004-02-26 2007-09-25 Nsk Ltd. Toroidal-type continuously variable transmission
JP2011112105A (ja) * 2009-11-25 2011-06-09 Nsk Ltd 無段変速装置

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1186798A2 (en) 2000-09-06 2002-03-13 Nissan Motor Company, Limited Dual cavity toroidal type cvt with common output disc
EP1186798A3 (en) * 2000-09-06 2005-07-20 Nissan Motor Company, Limited Dual cavity toroidal type cvt with common output disc
US6659907B2 (en) 2000-09-06 2003-12-09 Nissan Motor Co., Ltd. Dual cavity toroidal type CVT with common output disc
US6517461B2 (en) 2000-09-14 2003-02-11 Nissan Motor Co., Ltd. Infinitely variable transmission
EP1188956A2 (en) 2000-09-14 2002-03-20 Nissan Motor Co., Ltd. Infinitely variable transmission
EP1201965A3 (en) * 2000-10-25 2003-07-02 Nissan Motor Co., Ltd. Cooling and lubricating mechanism of toroidal continuously variable transmission
US6656080B2 (en) 2000-10-25 2003-12-02 Nissan Motor Co., Ltd. Cooling and lubricating mechanism of toroidal continuously variable transmission
EP1201965A2 (en) 2000-10-25 2002-05-02 Nissan Motor Co., Ltd. Cooling and lubricating mechanism of toroidal continuously variable transmission
US6616564B2 (en) 2001-03-07 2003-09-09 Nissan Motor Co., Ltd. Infinitely variable transmission
JP2004060707A (ja) * 2002-07-25 2004-02-26 Aichi Mach Ind Co Ltd 変速装置用ギヤの製造方法
US7273437B2 (en) 2004-02-26 2007-09-25 Nsk Ltd. Toroidal-type continuously variable transmission
US7118462B2 (en) 2004-03-29 2006-10-10 Nsk, Ltd. Disk for toroidal continuously variable transmission and method of machining the same
DE102005013862B4 (de) * 2004-03-29 2007-12-06 Nsk Ltd. Verfahren zur Fertigbearbeitung der Funktionsoberflächen einer einteiligen Ausgangsscheibe eines stufenlos variablen Toroidgetriebes, sowie eine danach hergestellte Ausgangsscheibe
JP2011112105A (ja) * 2009-11-25 2011-06-09 Nsk Ltd 無段変速装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP3716568B2 (ja) 2005-11-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3716569B2 (ja) 無段変速機の制御装置
US5980420A (en) Control system for toroidal type continuously variable transmission
US6217473B1 (en) Toroidal continuously variable transmission
US6932739B2 (en) Continuously variable transmission apparatus
JP3796916B2 (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JPH1163139A (ja) トロイダル式無段変速機
EP1158211A2 (en) Belt-type continuously variable transmission
JP2001165265A (ja) トロイダル型無段変速機
JP2004169719A (ja) トロイダル型無段変速機及び無段変速装置
JP2000055177A (ja) 無段変速機の制御装置
JPH10267117A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP3713917B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JPH1163184A (ja) 無段変速機の制御装置
KR100544220B1 (ko) 최소의 오비터를 갖는 트랜스미션
JPH10267116A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP4957647B2 (ja) 無段変速機
JP3716542B2 (ja) トロイダル式無段変速機
JP2000179674A (ja) パワートレインの制御装置
JPH10267118A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP2000179669A (ja) パワートレインの制御装置
WO2014196281A1 (ja) 動力伝達装置
JPH10267098A (ja) トロイダル式無段変速機の潤滑装置
JP2000179673A (ja) パワートレインの制御装置
JP2000193076A (ja) パワ―トレインの制御装置
JP2000179672A (ja) パワートレインの制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040713

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050421

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20050517

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050707

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050809

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050822

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees