JPH10267098A - トロイダル式無段変速機の潤滑装置 - Google Patents

トロイダル式無段変速機の潤滑装置

Info

Publication number
JPH10267098A
JPH10267098A JP9069937A JP6993797A JPH10267098A JP H10267098 A JPH10267098 A JP H10267098A JP 9069937 A JP9069937 A JP 9069937A JP 6993797 A JP6993797 A JP 6993797A JP H10267098 A JPH10267098 A JP H10267098A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
toroidal
continuously variable
control
variable transmission
transmission mechanism
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9069937A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshihiko Osumi
敏彦 大住
Tatsuya Uesugi
達也 上杉
Hidenao Taketomi
秀直 武富
Kazuhiko Ueda
和彦 上田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP9069937A priority Critical patent/JPH10267098A/ja
Publication of JPH10267098A publication Critical patent/JPH10267098A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Friction Gearing (AREA)
  • General Details Of Gearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】トロイダル式無断変速機の潤滑装置において、
トロイダル変速機構を構成するディスクとローラーとの
接触部を油圧回路のレイアウト性を損なう事なく、効率
良く冷却・潤滑することを課題とする。 【解決手段】トロイダル変速機構を構成するディスクと
ローラーとの接触部へ潤滑油を供給する潤滑路と、上記
接触部以外の潤滑要部へ潤滑油を供給する潤滑路とを独
立して構成させ、上記両潤滑路のうち、上記接触部へ潤
滑油を供給する潤滑路にのみオイルクーラーを設定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トロイダル式無段
変速機の潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用無段変速機として、例えば特開
平3−223555号公報や特開平6−101754号
公報等に示されているように、入力ディスクと出力ディ
スクとの間に両ディスク間の動力伝達を行うローラーを
介設すると共に、このローラーを傾転させて両ディスク
に対する接触位置を半径方向に変化させることにより、
両ディスク間の動力伝達の変速比を無段階に変化させる
ようにしたトロイダル式無段変速機が実用化されつつあ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
構成の無断変速機においては変速機を構成する各機構を
潤滑する潤滑油を冷却するオイルクーラーの設置箇所が
問題となる。すなわち、トロイダル変速機構においては
入、出力ディスクとローラー間のトラクションにより動
力を伝達しており、ディスクとローラーとの接触部の油
膜温度が非常に重要である。油膜温度が過剰に上昇する
と接触部にスリップを起こして適正な変速制御の実行を
妨げたり、ディスクもしくはローラーの少なくとも一方
が破損する恐れがある。そこで、油膜温度が過剰に上昇
しないように冷却された潤滑油を上記接触部に供給する
必要がある。一方、その他の潤滑部では、潤滑部へ必要
流量の潤滑油を供給することが主目的となり、通常使用
の範囲では潤滑油への温度への要求は少ない。したがっ
て、上記ディスクとローターとの接触部への潤滑油を供
給する第一潤滑油路と、他の部分への潤滑油を供給する
第二潤滑油路との両方を冷却すべくオイルクーラーを設
けると、上記接触部の冷却要求を満たす温度の潤滑油を
締結要素にも供給することになり、その結果、必要以上
に低温のオイルが締結要素に供給されて、潤滑油の粘性
による抵抗増大が生じ伝達経路の切り換えショックが生
じる、オイルクーラーの冷却効率の低下によるトロイダ
ル変速機構の破損する、またはオイルクーラーの要領を
確保しようとして大きなオイルクーラーを採用し油圧回
路のレイアウト性が悪化する、という様々な問題が生じ
る。 そこで、本発明は、トロイダル式無段変速の潤滑
装置において、トロイダル変速機構のディスクとローラ
ーの接触部を油圧回路のレイアウト性を損なう事なく、
効率良く冷却・潤滑することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のように構成したことを特徴とする。ま
ず、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以
下、第1発明という)は、エンジンと駆動輪との一方側
に設けられた入力ディスクと他方側に設けられた出力デ
ィスクとの間に圧接状態で配置されたローラーを傾転さ
せることにより両ディスク間の変速比を変化させるトロ
イダル変速機構と、少なくともエンジン回転と車速に関
する値を含む車両の走行状態を検出する走行状態検出手
段と、該検出手段の検出結果に基づいて上記トロイダル
変速機構を制御する制御手段を備えたトロイダル式無断
変速機の潤滑装置であって、潤滑油を生成する油圧源
と、上記ディスクと上記ローラーとの接触部を潤滑すべ
く上記トロイダル変速機構に設けられた潤滑孔とを連通
する第一潤滑路と、上記油圧源と上記接触部以外で潤滑
が必要な部分とを連通する第二潤滑路とを備え、上記第
一潤滑路と上記第二潤滑路とのうち第一潤滑路にのみオ
イルクーラーを備えていることを特徴とする。
【0005】また、請求項2に記載の発明(以下、第2
発明という)は、エンジンと駆動輪との一方側に設けら
れた入力ディスクと他方側に設けられた出力ディスクと
の間に圧接状態で配置されたローラーを傾転させること
により両ディスク間の変速比を変化させるトロイダル変
速機構と、上記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路
上に設けられ、締結することにより上記動力伝達経路を
切り換える締結要素と、該締結要素の締結状態を調整す
る調整手段と、少なくともエンジン回転と車速に関する
値を含む車両の走行状態を検出する走行状態検出手段
と、該検出手段の検出結果に基づいて上記トロイダル変
速機構調整及び上記調整手段とを制御する制御手段を備
えたトロイダル式無断変速機の潤滑装置であって、潤滑
油を生成する油圧源と、上記ディスクと上記ローラーと
の接触部を潤滑すべく上記トロイダル変速機構に設けら
れた潤滑孔とを連通する第一潤滑路と、上記油圧源と上
記締結要素とを連通し該締結要素を潤滑する第二潤滑路
とを備え、上記第一潤滑路と上記第二潤滑路とのうち第
一潤滑路にのみオイルクーラーを備えていることを特徴
とする。
【0006】また、請求項3に記載の発明(以下、第3
発明という)は、エンジンと駆動輪との一方側に設けら
れた入力ディスクと他方側に設けられた出力ディスクと
の間に圧接状態で配置されたローラーを傾転させること
により両ディスク間の変速比を変化させるトロイダル変
速機構と、締結することによりエンジンの駆動トルクを
上記トロイダル変速機構および該変速機構と駆動輪との
間の動力伝達経路上に設けられた遊星歯車機構とを用い
て駆動輪に伝達させる第一の伝達経路を形成する第一の
締結要素と、締結することによりエンジンからの出力ト
ルクを上記トロイダル変速機構のみを用いて駆動輪に伝
達させる第二の締結要素と、該第一、第二締結要素の締
結状態をそれぞれ調整する第一、第二の調整手段と、少
なくともエンジン回転と車速に関する値を含む車両の走
行状態を検出する走行状態検出手段と、該検出手段の検
出結果に基づいて上記トロイダル変速機構調整及び上記
調整手段とを制御する制御手段を備え、該制御手段が車
速がエンジン回転に基づいてあらかじめ設定された値の
時にのみ上記第一締結要素を締結して上記第二締結要素
を解放した状態から上記第一締結要素を解放して上記第
二締結要素を締結した状態に変更するように上記調整手
段を制御するように構成されたトロイダル式無断変速機
の潤滑装置であって、潤滑油を生成する油圧源と、上記
ディスクと上記ローラーとの接触部を潤滑すべく上記ト
ロイダル変速機構に設けられた潤滑孔とを連通する第一
潤滑路と、上記油圧源と上記締結要素とを連通し該締結
要素を潤滑する第二潤滑路とを備え、上記第一潤滑路と
上記第二潤滑路とのうち第一潤滑路にのみオイルクーラ
ーを備えていることを特徴とする。
【0007】上記の構成により、本願の各発明によれば
次の作用が得られる。まず、第1発明によれば、トロイ
ダル変速機構のディスクとローラーとの接触部に潤滑油
を供給する潤滑路と、上記接触部以外の部分を潤滑する
潤滑路とを独立させ、両潤滑路のうち上記接触部に潤滑
油を供給する潤滑路にのみオイルクーラーを設けたの
で、トロイダル変速機構のディスクとローラーの接触部
を油圧回路のレイアウト性を損なう事なく、効率良く冷
却・潤滑することができる。
【0008】また、第2発明によれば、トロイダル変速
機構の他にも動力伝達経路を切り換える締結要素を備え
たトロイダル式無断変速装置において、トロイダル変速
機構のディスクとローラーとの接触部に潤滑油を供給す
る潤滑路と、上記締結要素を潤滑する潤滑路とを独立さ
せ、両潤滑路のうち上記接触部に潤滑油を供給する潤滑
路にのみオイルクーラーを設けたので、トロイダル変速
機構のディスクとローラーの接触部を油圧回路のレイア
ウト性を損なう事なく、効率良く冷却・潤滑することが
できる。
【0009】さらに、第3発明によれば、トロイダル変
速機構と遊星歯車機構とを備え、締結することによりエ
ンジンの駆動トルクを上記トロイダル変速機構および上
記遊星歯車機構とを用いて駆動輪に伝達させる第一の伝
達経路を形成する第一の締結要素と、締結することによ
りエンジンからの出力トルクを上記トロイダル変速機構
のみを用いて駆動輪に伝達させる第二の締結要素とを備
えたトロイダル式無断変速装置において、トロイダル変
速機構のディスクとローラーとの接触部に潤滑油を供給
する潤滑路と、上記第一、第二の締結要素を潤滑する潤
滑路とを独立させ、両潤滑路のうち上記接触部に潤滑油
を供給する潤滑路にのみオイルクーラーを設けたので、
トロイダル変速機構のディスクとローラーの接触部を油
圧回路のレイアウト性を損なう事なく、効率良く冷却・
潤滑することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る
無段変速機について、その機械的構成、油圧制御回路の
構成および変速制御の具体的動作を説明する。 (機械的構成)図1は、本実施の形態に係るトロイダル
式無段変速機の機械的構成を示す骨子図であり、この変
速機10は、エンジン1の出力軸2にトーショナルダン
パ3を介して連結されたインプットシャフト(第1シャ
フト)11と、該シャフト11の外側に遊嵌合された中
空のプライマリシャフト(第3シャフト)12と、これ
らのシャフト11,12に平行に配置されたセカンダリ
シャフト(第2シャフト)13とを有し、これらのシャ
フト11〜13が、いずれも当該車両の横方向に延びる
ように配置されている。
【0011】また、この無段変速機10における上記イ
ンプットシャフト11およびプライマリシャフト12の
軸線上には、トロイダル式の第1、第2無段変速機構2
0,30と、ローディングカム40とが配設されている
と共に、セカンダリシャフト13の軸線上には、遊星歯
車機構50と、ローモードクラッチ(第1クラッチ機
構)60およびハイモードクラッチ(第2クラッチ機
構)70とが配設されている。そして、インプットシャ
フト11およびプライマリシャフト12の軸線と、セカ
ンダリシャフト13の軸線との間に、ローモードギヤ列
80と、ハイモードギヤ列90とが介設されている。
【0012】上記第1、第2無段変速機構20,30は
ほぼ同一の構成であり、いずれも、対向面がトロイダル
面とされた入力ディスク21,31と出力ディスク2
2,32とを有し、これらの対向面間に、両ディスク2
1,22間および31,32間でそれぞれ動力を伝達す
るローラー23,33が2つづつ介設されている。
【0013】そして、エンジン1から遠い方に配置され
た第1無段変速機構20は、入力ディスク21が反エン
ジン側に、出力ディスク22がエンジン側に配置され、
また、エンジン1に近い方に配置された第2無段変速機
構30は、入力ディスク31がエンジン側に、出力ディ
スク32が反エンジン側に配置されており、かつ、両無
段変速機構20,30の入力ディスク21,31はプラ
イマリシャフト12の両端部にそれぞれ結合され、ま
た、出力ディスク22,32は一体化されて、該プライ
マリシャフト12の中間部に回転自在に支持されてい
る。
【0014】また、インプットシャフト11の反エンジ
ン側の端部には上記ローモードギヤ列80を構成する第
1ギヤ81が結合されていると共に、該第1ギヤ81と
上記第1無段変速機構20の入力ディスク21との間に
ローディングカム40が介設されており、さらに、第
1、第2無段変速機構20,30の一体化された出力デ
ィスク22,33(以下、「一体化出力ディスク34」
と記す)の外周に、上記ハイモードギヤ列90を構成す
る第1ギヤ91が設けられている。
【0015】一方、セカンダリシャフト13の反エンジ
ン側の端部には、上記ローモードギヤ列80を構成する
第2ギヤ82が回転自在に支持されて、アイドルギヤ8
3を介して上記第1ギヤ81に連結されていると共に、
該セカンダリシャフト13の中間部には上記遊星歯車機
構50が配設されている。そして、該遊星歯車機構50
のピニオンキャリヤ(第3回転要素)51と上記ローモ
ードギヤ列80の第2ギヤ82との間に、これらを連結
しもしくは切断するローモードクラッチ60が介設され
ている。
【0016】また、遊星歯車機構50のエンジン側に
は、上記第1、第2無段変速機構20,30の一体化出
力ディスク34の外周に設けられたハイモードギヤ列9
0の第1ギヤ91に噛み合う第2ギヤ92が回転自在に
支持され、該第2ギヤ92と遊星歯車機構50のサンギ
ヤ(第1回転要素)52とが連結されていると共に、該
遊星歯車機構50のインターナルギヤ(第2回転要素)
53がセカンダリシャフト13に結合されており、ま
た、該遊星歯車機構50のエンジン側に、上記ハイモー
ドギヤ列90の第2ギヤ92とセカンダリシャフト13
とを連結しもしくは切断するハイモードクラッチ70が
介設されている。
【0017】そして、上記セカンダリシャフト13のエ
ンジン側の端部に、第1、第2ギヤ4a,4bとアイド
ルギヤ4cとでなる出力ギヤ列4を介してディファレン
シャル装置5が連結されており、このディファレンシャ
ル装置5から左右に延びる駆動軸6a,6bを介して左
右の駆動輪(図示せず)に動力を伝達するようになって
いる。
【0018】次に、図2以下の図面を用い、上記変速機
10の各構成要素について詳しく説明する。まず、上記
第1、第2無段変速機構20,30について説明する
と、これらの無段変速機構20,30はほぼ同一の構成
であり、前述のように、対向面がトロイダル面とされた
入力ディスク21,31と、出力ディスク22,32
(一体化出力ディスク34)とを有し、これらの対向面
間に、入、出力ディスク21,22間および31,32
間でそれぞれ動力を伝達するローラー23,33が2つ
づつ介設されている。
【0019】そして、図3により、第1無段変速機構2
0を例に取ってその構成をさらに詳しく説明すると、一
対のローラー23,23は、入、出力ディスク21,2
2のほぼ半径方向に延びるシャフト24,24を介して
トラニオン25,25にそれぞれ支持され、入、出力デ
ィスク21,22の互いに対向するトロイダル面の円周
上の180°反対側にほぼ水平姿勢で上下に平行に配置
されており、その周面の180°反対側の2箇所で上記
両ディスク21,22のトロイダル面にそれぞれ対接し
ている。
【0020】また、上記トラニオン25,25は、変速
機ケース100に取り付けられた左右の支持部材26,
26間に支持され、両ディスク21,22の接線方向で
あってローラー23,23のシャフト24,24に直交
する水平方向の軸心X,X回りの回動および該軸心X,
X方向の直線往復運動が可能とされている。そして、こ
れらのトラニオン25,25に、上記軸心X,Xに沿っ
て一側方に延びるロッド27,27が連設されていると
共に、変速機ケース100の側面には、これらのロッド
27,27およびトラニオン25,25を介して、上記
ローラー23,23を傾転させる変速制御ユニット11
0が取り付けられている。
【0021】この変速制御ユニット110は、油圧制御
部111とトラニオン駆動部112とを有すると共に、
トラニオン駆動部112には、上方に位置する第1トラ
ニオン251のロッド27に取り付けられた増速用およ
び減速用のピストン1131,1141と、下方に位置
する第2トラニオン252のロッド27に取り付けられ
た同じく増速用および減速用のピストン1132,11
42とが配置され、上方のピストン1131,1141
の互いに対向する面側に増速用および減速用油圧室11
51,1161が、また、下方のピストン1132,1
142の互いに対向する面側に増速用および減速用油圧
室1152,1162がそれぞれ設けられている。
【0022】なお、上方に位置する第1トラニオン25
1については、増速用油圧室1151がローラー23側
に、減速用油圧室1161が反ローラー23側にそれぞ
れ配置され、また、下方に位置する第2トラニオン25
2については、増速用油圧室1152が反ローラー23
側に、減速用油圧室1161がローラー23側にそれぞ
れ配置されている。
【0023】そして、上記油圧制御部111で生成され
た増速用油圧PHが、油路117,118を介して、上
方に位置する第1トラニオン251の増速用油圧室11
51と、下方に位置する第2トラニオン252の増速用
油圧室1152とに供給され、また、同じく油圧制御部
111で生成された減速用油圧PLが、図示しない油路
を介して、上方に位置する第1トラニオン251の減速
用油圧室1161と、下方に位置する第2トラニオン2
52の減速用油圧室1162とに供給されるようになっ
ている。
【0024】ここで、第1無段変速機構20を例にとっ
て上記増速用および減速用油圧PH,PLの供給制御と
当該無段変速機構20の変速動作との関係を簡単に説明
する。
【0025】まず、図3に示す油圧制御部111の作動
により、第1、第2トラニオン251,252の増速用
油圧室1151,1152に供給されている増速用油圧
PHが、第1、第2トラニオン251,252の減速用
油圧室1161,1162に供給されている減速用油圧
PLに対して所定の中立状態より相対的に高くなると、
上方の第1トラニオン251は図面上、右側に、下方の
第2トラニオン252は左側にそれぞれ水平移動するこ
とになる。
【0026】このとき、図示されている出力ディスク2
2がx方向に回転しているものとすると、上方の第1ロ
ーラー231は、右側への移動により該出力ディスク2
2から下向きの力を受け、図面の手前側にあって反x方
向に回転している入力ディスク21からは上向きの力を
受けることになる。また、下方の第2ローラー232
は、左側への移動により、出力ディスク22から上向き
の力を受け、入力ディスク21からは下向きの力を受け
ることになる。その結果、上下のローラー231,23
2とも、入力ディスク21との接触位置は半径方向の外
側に、出力ディスク22との接触位置は半径方向の内側
に移動するように傾転し、当該無段変速機構20の変速
比が小さくなる(増速)。
【0027】また、上記とは逆に、第1、第2トラニオ
ン251,252の減速用油圧室1161,1162に
供給されている減速用油圧PLが、第1、第2トラニオ
ン251,252の増速用油圧室1151,1152に
供給されている増速用油圧PLに対して所定の中立状態
より相対的に高くなると、上方の第1トラニオン251
は図面上、左側に、下方の第2トラニオン252は右側
にそれぞれ水平移動する。
【0028】このとき、上方の第1ローラー231は出
力ディスク22から上向きの力を、入力ディスク21か
ら下向きの力を受け、また、下方の第2ローラー232
は、出力ディスク22から下向きの力を、入力ディスク
21から上向きの力を受けることになる。その結果、上
下のローラー231,232とも、入力ディスク21と
の接触位置は半径方向の内側に、出力ディスク22との
接触位置は半径方向の外側に移動するように傾転し、当
該無段変速機構20の変速比が大きくなる(減速)。
【0029】なお、このような油圧制御部111による
増速用および減速用油圧PH,PLの供給動作について
は、後述する油圧制御回路の説明で詳しく述べる。以上
のような第1無段変速機構20についての構成および作
用は、第2無段変速機構30についても同様である。
【0030】そして、図2に示すように、インプットシ
ャフト11上に遊嵌合された中空のプライマリシャフト
12の両端部に、第1、第2無段変速機構20,30の
入力ディスク21,31がそれぞれスプライン嵌合され
て、これらの入力ディスク21,31が常に同一回転す
るようになっており、また、前述のように、両無段変速
機構20,30の出力ディスク22,32は一体化され
ているので、両無段変速機構20,30の出力側の回転
速度も常に同一となる。そして、これに伴って、上記の
ようなローラー23,33の傾転制御による第1、第2
無段変速機構20,30の変速比の制御も、該変速比が
常に同一に保持されるように行われる。
【0031】ここで、図4に拡大して示すように、一体
化出力ディスク34の外周面には、ハイモードギヤ列9
0のリング状に形成された第1ギヤ91が嵌合されて溶
接により固着されているが、その場合に、一体化出力デ
ィスク34の一方の側面側には、該ディスク34の外周
と第1ギヤ91の内周とにわたって座ぐり部Yが設けら
れ、この座ぐり部Y内で該ディスク34とギヤ91との
溶接が行われている。
【0032】したがって、溶接に伴い、その溶接面から
溶接用金属Zが盛り上がっても、これが上記一方の側面
側のトロイダル面34aと干渉することはなく、ローラ
ーを広い範囲で傾転させることが可能となる。また、こ
のように、上記第1ギヤ91が一体化出力ギヤ34の外
周に溶接により固着されているので、該第1ギヤ91の
軸方向のガタツキが抑制されて、その支持が安定するこ
とになる。
【0033】一方、図5、図6に示すように、上記ロー
ディングカム40は、上記ローモードギヤ列80の第1
ギヤ81と第1無段変速機構20の入力ディスク21と
の間に介設されたカムディスク41を有し、このカムデ
ィスク41と上記入力ディスク21の互いに対向する面
を周方向に凹凸を繰り返すカム面として、これらのカム
面間にリテーナディスク42に保持された複数のローラ
ー43…43を配置した構成とされている。
【0034】そして、上記カムディスク41は、インプ
ットシャフト11の反エンジン側の端部にスプライン嵌
合されたローモードギヤ列80の第1ギヤ81に、軸方
向に配置された複数のピン部材44…44を介して一体
回転するように連結されていると共に、図6に示すよう
に、このカムディスク41とプライマリシャフト12に
設けられたフランジ部12aとの間には、皿バネ45,
45と、ニードルスラストベアリング46と、そのベア
リングレース47とが介設されており、上記皿バネ4
5,45のバネ力により、カムディスク41が入力ディ
スク21側に押圧されている。
【0035】これにより、上記ローラー43…43が上
記両ディスク21,41のカム面の凹部21a,41a
間に挟持されて、インプットシャフト11からローモー
ドギヤ列80の第1ギヤ81を介してカムディスク41
に入力されるトルクを第1無段変速機構20の入力ディ
スク21に伝達し、さらに、プライマリシャフト12を
介して第2無段変速機構30の入力ディスク31にも伝
達するようになっている。
【0036】そして、特に、図5に鎖線で示すように、
入力トルクの大きさに応じて上記ローラー43…43が
両ディスク21,41のカム面の凹部21a,41aか
ら凸部21b,41b側に向って転動して、これらのカ
ム面間に食い込むことにより、第1無段変速機構20の
入力ディスク21、ローラー23、一体化出力ディスク
34、および第2無段変速機構30のローラー33を順
次該第2無段変速機構30の入力ディスク31側に押し
付ける。これにより、第1、第2無段変速機構20,3
0におけるローラー23,33の挟圧力が入力トルクに
応じて自動的に調整されるようになっている。
【0037】また、このローディングカム40において
は、上記カムディスク41とローモードギヤ列80の第
1ギヤ81とを連結するピン部材44…44が、該カム
ディスク41における肉圧が厚くなっている凸部41b
…41bの位置に配設されている。したがって、該カム
ディスク41の全体的な肉厚を必要以上に厚くして、そ
の軸方向寸法を増大させたり、或はピン部材44…44
の挿通穴とカム面の凹部41a…41aとが近接して該
カムディスク41の強度を低下させたりすることが回避
される。
【0038】さらに、図6により、上記インプットシャ
フト11の外側に遊嵌合されたプライマリシャフト12
の支持構造について説明すると、該プライマリシャフト
12のエンジン側の端部はベアリング131を介して変
速機ケース100に支持されており、一方、反エンジン
側の端部には、上記ローモードギヤ列80の第1ギヤ8
1がスプライン嵌合され、該ギヤ81がベアリング13
2を介して変速機ケース100の反エンジン側のカバー
101に支持されている。
【0039】そして、該プライマリシャフト12におけ
る上記ローディングカム40の皿バネ45,45を支持
するフランジ部12aと上記第1ギヤ81との間には、
ニードルスラストベアリング133およびベアリングレ
ース134を介して、該プライマリシャフト12と第1
ギヤ81とを互いに離反する方向に付勢する皿バネ13
5が配置されている。
【0040】したがって、プライマリシャフト12が熱
膨張等により伸縮したときに、該シャフト12のエンジ
ン側の端部は軸方向に移動できないから、第1ギヤ81
にスプライン嵌合された反エンジン側の端部が軸方向に
変位することになるが、このとき、その変位が上記皿バ
ネ135によって吸収されると共に、上記第1ギヤ81
が該皿バネ135のバネ力に応じた適度の力で常にベア
リング132側に押圧されることになる。したがって、
該第1ギヤ81が、上記プライマリシャフト12の伸び
によりベアリング132側に強く押し付けられたり、逆
に、プライマリシャフト12の縮みにより該第1ギヤ8
1が軸方向にがたつくといった状態が回避される。
【0041】また、この皿バネ135のバネ力をプライ
マリシャフト12および第1ギヤ81を介して受けるエ
ンジン側および反エンジン側のベアリング131,13
2にも常に適度の軸方向の力が作用することになり、特
に、これらのベアリング131,132が図示のような
テーパーローラー型のスラストベアリングである場合
に、軸方向の予圧が適度に保持されて、これが小さすぎ
る場合のガタツキや、大きすぎる場合の回転抵抗の増大
といった不具合が防止される。
【0042】なお、上記反エンジン側カバー101には
オイルポンプ102が取り付けられ、インプットシャフ
ト11と一体的に回転するローモードギヤ列80の第1
ギヤ81により駆動されるようになっている。
【0043】次に、図7により、セカンダリシャフト1
3並びに該シャフト13上の遊星歯車機構50、ローモ
ードクラッチ60およびハイモードクラッチ70等の構
成を説明する。
【0044】このセカンダリシャフト13は、エンジン
側の端部が変速機ケース100のエンジン側カバー10
3に、反エンジン側の端部が上記反エンジン側カバー1
01にそれぞれベアリング141,142を介して回転
自在に支持されている。そして、このセカンダリシャフ
ト13の中央部に、上記ハイモードギヤ列90を構成す
る第2ギヤ92が配置されていると共に、その後方(反
エンジン側、以下同様)に隣接させて遊星歯車機構50
が配設され、該第2ギヤ92と遊星歯車機構50のサン
ギヤ52とが連結されている。また、その後方におい
て、遊星歯車機構50のインターナルギヤ53に結合さ
れたフランジ部材54が該セカンダリシャフト13にス
プライン嵌合されている。
【0045】さらに、遊星歯車機構50の後方にはロー
モードクラッチ60が配設されている。このクラッチ6
0は、セカンダリシャフト13に回転自在に支持され、
かつ、上記ローモードギヤ列80の第2ギヤ82が固着
されたドラム部材61と、その半径方向の内側に配置さ
れて、上記遊星歯車機構50におけるピニオンキャリヤ
51にフランジ部材55を介して結合されたハブ部材6
2と、これらに交互にスプライン結合された複数枚のク
ラッチプレート63…63と、上記ドラム部材61の内
部に配置されたピストン64とを有する。
【0046】そして、上記ピストン64の背部のドラム
部材61との間が油圧室65とされ、該油圧室65に、
図3に示すクラッチ制御ユニット120で生成された締
結用油圧が供給されたときに、ピストン64がスプリン
グ66に抗して前方(エンジン側、以下同様)へストロ
ークすることにより上記クラッチプレート63…63が
締結され、これにより、該クラッチ60を介して上記ロ
ーモードギヤ列80の第2ギヤ82と遊星歯車機構50
のピニオンキャリヤ51とが結合されるようになってい
る。
【0047】なお、上記ピストン64の前面側にはバラ
ンスピストン67が配置され、両ピストン64,67間
に設けられたバランス室68に潤滑油が導入されること
により、上記油圧室65内の作動油に働く遠心力によっ
てピストン65に作用する圧力を相殺するようになって
いる。
【0048】また、上記ハイモードギヤ列90の第2ギ
ヤ92の前方には、ハイモードクラッチ70が配設され
ている。このクラッチ70も、セカンダリシャフト13
にスプライン嵌合された出力ギヤ列4の第1ギヤ4aに
パーキング機構用ギヤ4dを介して結合されたドラム部
材71と、その半径方向の内側に配置されて、上記第2
ギヤ92に結合されたハブ部材72と、これらに交互に
スプライン結合された複数枚のクラッチプレート73…
73と、上記ドラム部材71の内部に配置されたピスト
ン74とを有する。
【0049】そして、該ピストン74の背部に設けられ
た油圧室75に上記クラッチ制御ユニット120で生成
された締結用油圧が供給されたときに、該ピストン74
がスプリング76に抗して後方へストロークすることに
より上記クラッチプレート73…73が締結され、これ
により、該クラッチ70を介して、上記ハイモードギヤ
列90の第2ギヤ92と、セカンダリシャフト13ない
し該シャフト13にスプライン結合された出力ギヤ列4
の第1ギヤ4aとが結合されるようになっている。
【0050】なお、このハイモードクラッチ70にも、
ピストン74の後方にバランスピストン77が備えら
れ、両ピストン74,77間のバランス室78に潤滑油
が導入されることにより、上記油圧室75内の作動油に
働く遠心力によってピストン74に作用する圧力を相殺
するようになっている。
【0051】一方、セカンダリシャフト13の反エンジ
ン側の端部には、端面から軸方向前方に延びる凹部13
aが形成され、該凹部13aに上記反エンジン側カバー
101に設けられて前方に突出するボス部101aが相
対回転自在に嵌合されている。また、上記エンジン側カ
バー103にも後方に突出するボス部103aが設けら
れ、セカンダリシャフト13の前端部の凹部13bに相
対回転自在に嵌合されている。
【0052】そして、上記反エンジン側カバー101の
ボス部101aにはローモードクラッチ60およびハイ
モードクラッチ70用の2本のクラッチ締結油路15
1,161が軸方向に穿設されていると共に、上記クラ
ッチ制御ユニット120から反エンジン側カバー101
内を通過して上方に導かれた油路152,162が、こ
れらのクラッチ締結油路151,161にそれぞれ接続
されている。
【0053】これらの油路のうち、上記ローモードクラ
ッチ60用の油路151は、上記反エンジン側カバー1
01のボス部101aに設けられた半径方向の通孔15
3、該ボス部101aの外周面に設けられた周溝15
4、該ボス部101aに嵌合されたセカンダリシャフト
13の凹部13aの周壁に設けられた半径方向の通孔1
55、該シャフト13の外周面に設けられた周溝156
およびローモードクラッチ60におけるドラム部材61
のボス部に設けられた通孔157を介して該クラッチ6
0の油圧室65に連通されている。これにより、上記ク
ラッチ制御ユニット120で生成されるローモードクラ
ッチ締結用油圧が該クラッチ60の油圧室65に供給さ
れるようになっている。
【0054】また、ハイモードクラッチ70用の油路1
61は、上記ボス部101aの前端面に開口し、該ボス
部前端面とセカンダリシャフト13の凹部13aの内端
面との間の空間163に連通している。そして、さら
に、該セカンダリシャフト13に軸方向に穿設されて後
端部が上記凹部13aの内端面に開口された油路164
に連通し、該セカンダリシャフト13および出力ギヤ列
4の第1ギヤ4aにそれぞれ設けられた半径方向の通孔
165,166を介してハイモードクラッチ70の油圧
室75に連通されている。これにより、上記クラッチ制
御ユニット120で生成されるハイモードクラッチ締結
用油圧が該クラッチ70の油圧室75に供給されるよう
になっている。
【0055】このように、ローモードクラッチ60用お
よびハイモードクラッチ70用の締結油路151,16
1が、いずれもオイルポンプ102が設けられた反エン
ジン側カバー101側から導かれ、セカンダリシャフト
13を介して上記両クラッチ60,70の油圧室65,
75に連通されているから、例えば一方の油路をエンジ
ン側カバー103側から導いた場合等に比較して、上記
油圧室65,75への油圧の供給が迅速に行われ、クラ
ッチ60,70の締結制御の応答性が向上することにな
る。
【0056】なお、上記エンジン側カバー103のボス
部103aにも油路171が設けられ、上記クラッチ制
御ユニット120から該カバー103内を通過して上方
に導かれた油路172(図2参照)に接続されている。
また、上記ボス部103aに嵌合されたセカンダリシャ
フト13の前端部の凹部13bからは、軸方向に延びて
後端部がプラグ173によって閉塞された潤滑用油路1
74が穿設されていると共に、該セカンダリシャフト1
3の所定位置には、この油路174に連通する複数の半
径方向の通孔175…175が設けられている。これに
より、上記クラッチ制御ユニット120から供給される
潤滑油が、上記ローモードクラッチ60およびハイモー
ドクラッチ70におけるバランス室68,78や、その
他の潤滑部位に供給されるようになっている。
【0057】ここで、図3に示すように、変速機ケース
100には、その側部に変速制御ユニット110が、下
部に上記ローモードクラッチ60およびハイモードクラ
ッチ70を制御するクラッチ制御ユニット120が取り
付けられているが、このように、制御ユニットが分割さ
れ、その一方を変速機ケース100の側部に、他方を下
部にそれぞれ取り付ける構成とすることにより、その全
体を一体化して変速機ケースの下部に取り付ける場合に
比較して、該変速機ケースから下方への突出量が少なく
なる。したがって、当該車両の最低地上高を確保する上
で有利となる。
【0058】また、上記のように、変速制御ユニット1
10を変速機ケース100の一方の側部(図3の左側)
に配置すると共に、該ユニット110のトラニオン駆動
部112から変速機ケース100の内方に向かって水平
方向に延びる上下のロッド27,27にトラニオン2
5,25をそれぞれ取り付けて、これらのトラニオン2
5,25を水平方向の軸心X,Xに沿って作動させるよ
うに構成されているので、該トラニオンを垂直方向に作
動させる場合のようにトラニオン駆動部が変速機ケース
の上部に配置されて幅方向の大きなスペースを占めると
いうようなことがなくなる。
【0059】したがって、遊星歯車機構50やローモー
ドクラッチ60およびハイモードクラッチ70が配置さ
れたセカンダリシャフト13を配設するに際し、その軸
心をインプットシャフト11およびプライマリシャフト
12の軸心に接近させることができ、それだけ当該変速
機10の全体がコンパクト化されることになる。
【0060】なお、上記クラッチ制御ユニット120に
よるローモードクラッチ60およびハイモードクラッチ
70に対する締結用油圧の供給制御についても、後述す
る油圧制御回路についての説明で詳しく述べる。
【0061】次に、以上のような構成の無段変速機10
の機械的な動作について説明する。まず、当該車両の停
車中においては、図1および図2において、ローモード
クラッチ60が締結され、かつ、ハイモードクラッチ7
0が解放された状態、即ちローモードの状態にあって、
エンジン1からの回転は、インプットシャフト11の反
エンジン側の端部から第1ギヤ81、アイドルギヤ83
および第2ギヤ82でなるローモードギヤ列80を介し
てセカンダリシャフト13側に伝達されると共に、さら
に上記ローモードクラッチ60を介して遊星歯車機構5
0のピニオンキャリヤ51に入力される。
【0062】また、上記インプットシャフト11に入力
されたエンジン1からの回転は、上記ローモードギヤ列
80の第1ギヤ81から、これに隣接するローディング
カム40を介して第1無段変速機構20の入力ディスク
21に入力され、ローラー23,23を介して一体化出
力ディスク34に伝達されると同時に、上記入力ディス
ク21からプライマリシャフト12を介して、該シャフ
ト12のエンジン側の端部に配置された第2無段変速機
構30の入力ディスク31にも入力され、上記第1無段
変速機構20と同様に、ローラー33,33を介して一
体化出力ディスク34に伝達される。その場合に、図3
に示す変速制御ユニット110による増速用および減速
用油圧PH,PLの制御により、第1、第2無段変速機
構20,30におけるローラー23,33の傾転角、つ
まり両無段変速機構20,30の変速比が所定の同一変
速比に制御される。
【0063】そして、この第1、第2無段変速機構2
0,30の一体化出力ディスク34の回転は、該ディス
ク34の外周に設けられた第1ギヤ91とセカンダリシ
ャフト13上の第2ギヤ92とでなるハイモードギヤ列
90を介して上記遊星歯車機構50のサンギヤ52に伝
達される。
【0064】したがって、この遊星歯車機構50には、
ピニオンキャリヤ51とサンギヤ52とに回転が入力さ
れることになるが、このとき、その回転速度の比が上記
第1、第2無段変速機構20,30の変速比制御によっ
て所定の比に設定されることにより、該遊星歯車機構5
0のインターナルギヤ53の回転、即ちセカンダリシャ
フト13から出力ギヤ列4を介してデファレンシャル装
置5に入力される回転がゼロとされ、当該変速機10が
ギヤードニュートラルの状態となる。
【0065】そして、この状態から上記第1、第2無段
変速機構20,30の変速比を変化させて、ピニオンキ
ャリヤ51への入力回転速度とサンギヤ52への入力回
転速度との比を変化させれば、変速機10の全体として
の変速比(以下、「最終変速比」と記す)が大きな状
態、即ちローモードの状態で、インターナルギヤ53な
いしセカンダリシャフト13が前進方向または後退方向
に回転し、当該車両が発進することになる。
【0066】また、上記のようにして前進方向に発進し
た後、所定のタイミングで上記ローモードクラッチ60
を解放すると同時に、ハイモードクラッチ70を締結す
れば、インプットシャフト11に入力されたエンジン1
からの回転は、ローディングカム40から、上記のロー
モードの場合と同様にして、第1、第2無段変速機構2
0,30の入力ディスク21,31に入力され、それぞ
れローラー23,33を介して一体化出力ディスク34
に伝達されると共に、さらに、ハイモードギヤ列90か
らハイモードクラッチ70を介してセカンダリシャフト
13に伝達される。
【0067】このとき、上記遊星歯車機構50は空転状
態となって、最終変速比は上記第1、第2無段変速機構
20,30の変速比にのみ対応することになり、該最終
変速比が小さな状態、即ちハイモードの状態で無段階に
制御されることになる。
【0068】そして、この変速機10によれば、上記の
ギヤードニュートラルないしローモードの状態で、イン
プットシャフト11からセカンダリシャフト13側の遊
星歯車機構50に回転を伝達するローモードギヤ列80
が、上記インプットシャフト11およびセカンダリシャ
フト13の反エンジン側の端部に配置されているから、
このギヤ列80と、セカンダリシャフト13のエンジン
側の端部に配置されたディファレンシャル装置5ないし
該装置5へ動力を伝達する出力ギヤ列4とが干渉するこ
とがなく、したがって、この干渉を避けるためにこれら
のギヤ列を軸方向にオフセットすること等による当該変
速機10の軸方向寸法の増大が回避されることになる。
【0069】ところで、この無段変速機10のように、
トロイダル式無段変速機構として第1、第2無段変速機
構20,30を備え、その入力ディスク21,31をプ
ライマリシャフト12の両端部に連結し、出力ディスク
22,32を該プライマリシャフト12の中間部に配置
すると共に、インプットシャフト11の反エンジン側の
端部にセカンダリシャフト13側へ回転を伝達するロー
モードギヤ列80を配置した場合、インプットシャフト
11と無段変速機構20,30への入力部との間に介設
されるローディングカム40をどこに配置するかが問題
となる。
【0070】つまり、図8に示すように、ローディング
カム40′をインプットシャフト11′とエンジン1′
側に位置する無段変速機構30′の入力ディスク31′
との間に配置すると、ローモードにおいて、矢印aで示
すように、エンジン1′からのトルクがインプットシャ
フト11′の反エンジン側の端部からギヤ列80′を介
してセカンダリシャフト13′側へ伝達される一方、該
セカンダリシャフト13′上の遊星歯車機構50′で生
じる反力としてのトルクが、矢印bで示すように、ギヤ
列90′を介して無段変速機構20′,30′の出力デ
ィスク34′に還流されて循環トルクとなるときに、こ
の循環トルクが無段変速機構20′,30′の入力ディ
スク21′,31′に伝達された後、エンジン側の無段
変速機構30′の入力ディスク31′からローディング
カム40′を介して再びインプットシャフト11′に入
力され、該インプットシャフト11′を介して反エンジ
ン側の端部のギヤ列80′に再び伝達されることにな
る。
【0071】そのため、インプットシャフト11′には
エンジン1′からのトルク(矢印a)と、循環トルク
(矢印b)とが並行して流れることになり、該シャフト
11′の径を太くする等、強度を高めなければならない
ことになる。そして、これに伴い、当該変速機10の重
量が増大すると共に、インプットシャフト11′の剛性
が高くなってエンジン1′の振動が出力側へ伝達され易
くなり、当該車両の振動や騒音が増大することになるの
である。
【0072】これに対して、この実施の形態に係る無段
変速機10によれば、インプットシャフト11の反エン
ジン側の端部にセカンダリシャフト13側へ回転を伝達
するローモードギヤ列80を配置すると共に、該インプ
ットシャフト11と無段変速機構20,30との間に介
設されるローディングカム40も該インプットシャフト
11の反エンジン側の端部に設けたので、上記のような
インプットシャフト11についての強度や剛性の問題が
回避される。
【0073】つまり、この場合、図9に示すように、エ
ンジン1からのトルクは、矢印cで示すように、インプ
ットシャフト11の反エンジン側の端部からローモード
ギヤ列80を介してセカンダリシャフト13側へ伝達さ
れる一方、該セカンダリシャフト13上の遊星歯車機構
50からの循環トルクは、矢印dで示すように、ハイモ
ードギヤ列90を介して第1、第2無段変速機構20,
30における出力ディスク34に還流された後、第1無
段変速機構20側については、入力ディスク21からロ
ーディングカム40を介して直接ローモードギヤ列80
の第1ギヤ81に、また、第2無段変速機構30側につ
いては、入力ディスク31からプライマリシャフト12
を通過した後、同じくローディングカム40からローモ
ードギヤ列80の第1ギヤ81に、それぞれ伝達される
ことになる。
【0074】したがって、第1、第2無段変速機構2
0,30のいずれに還流される循環トルクもインプット
シャフト11を通過することはなく、該インプットシャ
フト11はエンジン1からのトルクだけを伝達すれば足
りることになる。その結果、該インプットシャフト11
の径を細くすることが可能となり、当該変速機10の軽
量化が実現されると共に、インプットシャフト11の剛
性が低下してエンジン1の振動を効果的に吸収すること
ができ、当該車両の振動や騒音が低減されることにな
る。 (油圧制御回路)次に、図3に示す変速制御ユニット1
10とクラッチ制御ユニット120によって構成される
当該無段変速機10の油圧制御回路について説明する。
【0075】図10に示すように、この油圧制御回路2
00には、オイルポンプ102から吐出される作動油の
圧力を所定のライン圧に調整してメインライン201に
出力するレギュレータバルブ202と、該メインライン
201から供給されるライン圧を元圧として所定のリリ
ーフ圧を生成し、これをリリーフ圧ライン203に出力
するリリーフバルブ204と、当該車両の運転者による
レンジの切り換え操作によって作動し、上記メインライ
ン201をDレンジでは第1、第2出力ライン205,
206に、Rレンジでは第1、第3出力ライン205,
207にそれぞれ連通させると共に、NレンジおよびP
レンジではライン圧を遮断するマニュアルバルブ208
とが備えられている。
【0076】上記レギュレータバルブ202およびリリ
ーフバルブ204には、ライン圧用リニアソレノイドバ
ルブ209およびリリーフ圧用リニアソレノイドバルブ
210がそれぞれ備えられていると共に、上記ライン圧
を元圧として一定圧を生成するレデューシングバルブ2
11が備えられ、このレデューシングバルブ211で生
成された一定圧に基づいて、上記リニアソレノイドバル
ブ209,210がそれぞれ制御圧を生成するようにな
っている。そして、これらの制御圧が上記レギュレータ
バルブ202およびリリーフバルブ204の制御ポート
202a,204aに供給されることにより、ライン圧
およびリリーフ圧の調圧値が各リニアソレノイドバルブ
209,210によってそれぞれ制御されることにな
る。
【0077】また、この油圧制御回路200には、変速
制御用として、上記ライン圧およびリリーフ圧に基づい
て、前進時および後退時のそれぞれにおいて、増速用油
圧PHおよび減速用油圧PLを生成する前進用三層弁2
20および後退用三層弁230と、これらの三層弁22
0,230を選択的に作動させるシフトバルブ241と
が備えられている。
【0078】このシフトバルブ241は、一端の制御ポ
ート241aに制御圧としてライン圧が供給されるか否
かによりスプールの位置が決定され、ライン圧が供給さ
れていないときは、該スプールが右側に位置して、上記
メインライン201を前進用三層弁220に通じるライ
ン圧供給ライン242に連通させ、また、ライン圧が供
給されたときには、スプールが左側に位置して、メイン
ライン201を後退用三層弁230に通じるライン圧供
給ライン243に連通させるようになっている。
【0079】また、前進用および後退用の三層弁22
0,230は同一の構成とされ、いずれも、図3に示す
変速制御ユニット110における油圧制御部111のバ
ルブボディ111aに設けられたボア221,231
(図11参照)に軸方向に移動可能に嵌合されたスリー
ブ222,232と、該スリーブ222,232に同じ
く軸方向に移動可能に嵌合されたスプール223,23
3とを有する。
【0080】そして、中央部に上記シフトバルブ241
から導かれたライン圧供給ライン242,243が接続
されたライン圧ポート224,234が、両端部に上記
リリーフ圧ライン203が分岐されてそれぞれ接続され
た第1、第2リリーフ圧ポート225,226,23
5,236がそれぞれ設けられており、また、上記ライ
ン圧ポート224,234と第1リリーフ圧ポート22
5,235との間には増速圧ポート227,237が、
同じくライン圧ポート224,234と第2リリーフ圧
ポート226,236との間には減速圧ポート228,
238が、それぞれ設けられている。
【0081】この三層弁220,230の作用を前進用
三層弁220を例に取って説明すると、図10に示すよ
うにスリーブ222とスプール223の位置関係が中立
位置にある状態からスリーブ222が相対的に図面上、
右側に移動すると、ライン圧ポート224と増速圧ポー
ト227との連通度、および第2リリーフ圧ポート22
6と減速圧ポート228との連通度がそれぞれ増大し、
逆にスリーブ222が相対的に左側に移動すると、上記
ライン圧ポート224と減速圧ポート228との連通
度、および第1リリーフ圧ポート225と増速圧ポート
227との連通度がそれぞれ増大するようになってい
る。
【0082】また、前進用および後退用三層弁220,
230の増速圧ポート227,237からそれぞれ導か
れたライン244,245と、同じく前進用および後退
用三層弁220,230の減速圧ポート228,238
からそれぞれ導かれたライン246,247とは上記シ
フトバルブ241に接続されている。
【0083】そして、シフトバルブ241のスプールが
右側に位置するときに、前進用三層弁220の増速圧ポ
ート227および減速圧ポート228から導かれたライ
ン244,246が、図3に示す変速制御ユニット11
0のトラニオン駆動部112における増速用油圧室11
51,1152に通じる増速圧ライン248および減速
用油圧室1161,1162に通じる減速圧ライン24
9にそれぞれ連通され、逆に、シフトバルブ241のス
プールが左側に位置するときは、後退用三層弁230の
増速圧ポート237および減速圧ポート238から導か
れたライン245,247が、上記増速用油圧室115
1,1152に通じる増速圧ライン248および減速用
油圧室1161,1162に通じる減速圧ライン249
にそれぞれ連通されるようになっている。
【0084】なお、図11に示すように、上記前進用お
よび後退用三層弁220,230のスリーブ222,2
32は、ステップモータ251,252によりそれぞれ
軸方向に駆動されるようになっている。また、これらの
ステップモータ251,252によるスリーブ222,
232の移動に応じてスプール223,233をスプリ
ング229,239のバネ力に抗して軸方向に移動させ
るカム機構260が備えられている。
【0085】このカム機構260は、図11、図12に
示すように、一方の端面が螺旋面状のカム面261aと
されて、所定のトラニオン、具体的には第2無段変速機
構30における上方に位置する第1トラニオン351の
ロッド37の端部に取り付けられたプリセスカム261
と、前進用および後退用三層弁220,230のスプー
ル223,233の一端側にこれらに直交する方向に配
置されて、油圧制御部111のバルブボディ111aに
回動自在に支持されたシャフト262と、このシャフト
262の一端部に取り付けられて、揺動端が上記プリセ
スカム261のカム面261aに当接された従動レバー
263と、同じくシャフト262に取り付けられて、揺
動端が上記前進用および後退用三層弁220,230の
スプール223,233の一端に設けられた切り込み2
23a,233aに係合された前進用および後退用の駆
動レバー264,265とで構成されている。
【0086】そして、上記第2無段変速機構30におけ
る第1ローラー331の傾転により、第1トラニオン3
51およびロッド37が軸心X回りに一体的に回動した
ときに、上記プリセスカム261もこれらと一体的に回
動して、そのカム面261aに揺動端が当接した従動レ
バー263が所定量揺動すると共に、シャフト262を
介して前進用および後退用の駆動レバー264,265
も同じ角度だけ揺動することにより、その揺動角度に応
じた量だけ前進用および後退用三層弁220,230の
スプール223,233が軸方向に移動するようになっ
ている。
【0087】したがって、これらのスプール223,2
33の位置は、第2無段変速機構30のローラー33
(および第1無段変速機構20のローラー23)の傾転
角、換言すればこれらの無段変速機構20,30の変速
比に常に対応することになる。
【0088】ここで、このカム機構260によれば、上
記のように、前進用および後退用三層弁220,230
のスプール223,233が、単一のプリセスカム26
1および従動レバー263によって駆動されるので、各
スプール223,233ごとにプリセスカム等を備える
場合に比べて、当該カム機構の構成が簡素化されること
になる。
【0089】また、図11に示すように、上記ステップ
モーター251,252は、三層弁220,230が内
蔵された変速制御ユニット110における油圧制御部1
11のバルブボディ111aの側面に、対応する三層弁
220,230と軸心を一致させて直付けされていると
共に、連結部材253,254で両三層弁220,23
0のスリーブ222,232に直接連結されているか
ら、ステップモータを例えば変速機ケースのカバー部材
やオイルパン等に三層弁とは独立して配置して、連動機
構を介して両者を連結する場合に比較して、ステップモ
ータ251,252により三層弁220,230のスリ
ーブ222,232を駆動する機構が著しく簡素化され
ることになり、また、該スリーブ222,232の位置
の制御を精度よく行うことが可能となる。
【0090】さらに、この変速制御ユニット110にお
いては、前進用および後退用の2つの三層弁220,2
30の中間にシフトバルブ241が配置されているか
ら、該シフトバルブ241と両三層弁220,230と
の間の油路、具体的には図10の油圧制御回路における
ライン242〜247が短くなり、したがって、これら
の三層弁220,230を用いた制御の応答性が向上す
ることになる。
【0091】一方、図10に示すように、上記油圧制御
回路200には、クラッチ制御用として、第1、第2ソ
レノイドバルブ271,272が備えられており、上記
マニュアルバルブ208から導かれた第1出力ライン2
05が第1ソレノイドバルブ271に、第2出力ライン
206が第2ソレノイドバルブ272にそれぞれ接続さ
れている。
【0092】そして、第1ソレノイドバルブ271が開
いたときに、上記第1出力ライン205からのライン圧
に基づくクラッチ締結圧が、フェルセーフ用バルブ27
3およびローモードクラッチライン274を介してロー
モードクラッチ60の油圧室65に供給されて該クラッ
チ60を締結し、また、第2ソレノイドバルブ272が
開けば、上記第2出力ライン206からのライン圧に基
づくクラッチ締結圧が、ハイモードクラッチライン27
5を介してハイモードクラッチ70の油圧室75に供給
されて、該クラッチ70を締結するようになっている。
【0093】ここで、上記ローモードクラッチライン2
74およびハイモードクラッチライン275にはそれぞ
れアキュムレータ276,277が備えられ、ローモー
ドクラッチ60およびハイモードクラッチ70への締結
圧の供給を緩やかに行わせることにより、これらのクラ
ッチ60,70の締結時におけるショックの発生を抑制
するようになっている。
【0094】なお、マニュアルバルブ208から導かれ
た第3出力ライン207は、上記フェールセーフ用バル
ブ273を介してシフトバルブ241の制御ポート24
1aに接続され、該マニュアルバルブ208がRレンジ
の位置に移動したときに、ライン圧が上記シフトバルブ
241の制御ポート241aに供給されて、該シフトバ
ルブ241のスプールを左側、即ち後退時用の位置に移
動させるようになっている。
【0095】また、上記フェールセーフ用バルブ273
を作動させるフェールセーフ用ソレノイドバルブ278
が備えられ、該ソレノイドバルブ278からの制御圧に
より上記フェールセーフ用バルブ273のスプールが右
側に位置して、上記第1出力ライン205およびローモ
ードクラッチライン274が連通するようになってい
る。
【0096】ここで、上記第1、第2ソレノイドバルブ
271,272およびフェールセーフ用ソレノイドバル
ブ278は、いずれも三方弁であって、当該ラインの上
流側と下流側とを遮断したときに、下流側のラインをド
レンさせるようになっている。
【0097】また、上記第1、第2ソレノイドバルブ2
71,272等が配置されたクラッチ制御ユニット12
0は、図13に示すように、上側部材121と、中間部
材122と、下側部材123とを複数のボルト124…
124で結合一体化した構成で、上記第1、第2ソレノ
イドバルブ271,272が中間部材122の側面に取
り付けプレート125を用いて取り付けられている。
【0098】その場合に、ソレノイドバルブ271,2
72の本体外周に設けられたフランジ271a,272
aを取り付けプレート125と中間部材122の側面と
の間に挟み付けることにより、これらのソレノイドバル
ブ271,272を固定しているのであるが、上記取り
付けプレート125は、ボルト126,126により上
側部材121と下側部材123とにそれぞれ締め付けら
れており、したがって、この取り付けプレート125を
介して上側部材121と下側部材123とが連結される
ことになり、これにより、三層構造とされたクラッチ制
御ユニット120の全体の剛性が向上することになる。
【0099】以上の構成に加えて、図10に示す油圧制
御回路200には潤滑ライン281が設けられている。
この潤滑ライン281は、レギュレータバルブ202の
ドレンポートから導かれ、当該変速機10の第1、第2
無段変速機構20,30における各潤滑部に潤滑油を供
給するライン282と、遊星歯車機構50や、ローモー
ドクラッチ60およびハイモードクラッチ70のバラン
ス室68,78等の無段変速機構20,30以外の変速
機各部に潤滑油を供給するライン283とに分岐されて
おり、また、該ライン281には、潤滑油圧を所定値に
調整するリリーフバルブ284が接続されている。
【0100】そして、上記の無段変速機構20,30に
通じるライン282の上流部は、潤滑油を冷却するクー
ラー285が設置された冷却ライン286と、該クーラ
ー285をバイパスするバイパスライン287とに分岐
されていると共に、冷却ライン286におけるクーラー
285の上流側には、オリフィス288と第1開閉バル
ブ289とが並列に配置され、また、バイパスライン2
87には該ライン287を開閉する第2開閉バルブ29
0が設置されている。
【0101】ここで、上記第1、第2開閉バルブ28
9,290による無段変速機構20,30に対する潤滑
油の供給制御について説明する。まず、後述するコント
ロールユニット300(図14参照)からの信号によ
り、第2開閉バルブ290は、作動油の温度が所定値よ
り低いとき、および作動油の圧力が所定値より高いとき
に開き、これらのときにクーラー285を通過させるこ
となく、無段変速機構20,30に潤滑油を供給するよ
うになっている。これは、油温が低いときにはクーラー
285によって潤滑油を冷却する必要がないから、これ
を抵抗の少ないバイパスライン287により効率よく供
給するためであり、また、油圧が著しく高いときにクー
ラー285を通過させないのは、該クーラー285の高
圧による損傷や耐久性の低下を防止するためである。
【0102】そして、これら以外の場合には第2開閉バ
ルブ290は閉じて、潤滑油はクーラー285によって
冷却された上で無段変速機構20,30に供給されるこ
とになり、これにより、特に入、出力ディスク21,2
2,31,32のトロイダル面における潤滑油の油膜が
良好に保持され、該トロイダル面およびこれに接触する
ローラー23,33の周面の耐久性が確保されることに
なる。
【0103】また、第1開閉バルブ289は、同じくコ
ントロールユニット300からの信号により、第2開閉
バルブ290が閉じた状態で、エンジン1の回転数が所
定値より低いとき、および当該車両の速度が所定値より
低いときに閉じるように制御される。これは、低速時や
低回転時は無段変速機構20,30での潤滑油の要求量
が少なくなる一方、クラッチ60,70側では所要量の
潤滑油が要求されるので、潤滑油量がもともと少ないこ
れらのときに、無段変速機構20,30側への潤滑油の
供給量を抑制して、クラッチ60,70側への供給量を
確保するためである。
【0104】なお、上記ライン282によって無段変速
機構20,30に供給される潤滑油は、図3に示すよう
に、油路282aによってローラー23,33の軸受部
に供給されると共に、ノズル282bから入、出力ディ
スク21,22,31,32のトロイダル面に噴射され
るようになっている。 (変速制御) (1)制御の基本的動作 この実施の形態に係る無段変速機10は、以上のような
機械的構成および油圧制御回路200の構成を有すると
共に、この油圧制御回路200を用いて、第1、第2無
段変速機構20,30の変速比制御およびクラッチ6
0,70の締結制御を行うことにより、変速機10の全
体としての変速制御を行うコントロールユニット300
を有する。
【0105】このコントロールユニット300には、図
14に示すように、当該車両の車速を検出する車速セン
サ301、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転
数センサ302、エンジン1のスロットル開度を検出す
るスロットル開度センサ303、運転者によって選択さ
れたレンジを検出するレンジセンサ304等に加え、各
種の制御用として、作動油の温度を検出する油温センサ
305、無段変速機構20,30の入力回転数および出
力回転数をそれぞれ検出する入力回転数センサ306お
よび出力回転数センサ307、アクセルペダルの解放を
検出するアイドルスイッチ308、ブレーキペダルの踏
込みを検出するブレーキスイッチ309、並びに当該車
両の走行路面の勾配を検出する勾配センサ310等から
の信号が入力されるようになっている。
【0106】そして、これらのセンサやスイッチからの
信号が示す当該車両ないしエンジンの運転状態に応じ
て、ライン圧制御用およびリリーフ圧制御用のリニアソ
レノイドバルブ209,210、ローモードクラッチ6
0用およびハイモードクラッチ70用の第1、第2ソレ
ノイドバルブ271,272、フェールセーフ用ソレノ
イドバルブ278、潤滑制御用の第1、第2開閉バルブ
289,290、並びに前進用三層弁220用および後
退用三層弁230用のステップモータ251,252等
に制御信号を出力するようになっている。
【0107】次に、上記油圧制御回路200とコントロ
ールユニット300による変速制御の基本的動作につい
て説明する。なお、ここでは、必要な場合以外、図10
に示すマニュアルバルブ208がDレンジ位置にあり、
これに伴ってシフトバルブ241のスプールが図面上、
右側の前進位置にある場合について説明し、また、無段
変速機構については、図3に示す第1無段変速機構20
の上方に位置する第1ローラー231ないし第1トラニ
オン251を例にとって説明する。
【0108】まず、油圧制御回路200を用いた無段変
速機構20,30の変速比制御について説明すると、コ
ントロールユニット300からの信号により、油圧制御
回路200におけるレギュレータバルブ用リニアソレノ
イドバルブ209およびリリーフバルブ用リニアソレノ
イドバルブ210が作動して、ライン圧制御用およびリ
リーフ圧制御用の制御圧がそれぞれ生成され、これらが
レギュレータバルブ202およびリリーフバルブ204
の制御ポート202a,204aにそれぞれ供給される
ことにより、所定のライン圧とリリーフ圧とが生成され
る。
【0109】これらの油圧のうち、ライン圧は、メイン
ライン201から上記シフトバルブ241およびライン
242を介して前進用三層弁(以下、単に「三層弁」と
記す)220のライン圧ポート224に供給される。ま
た、リリーフ圧は、ライン203を介して三層弁220
の第1、第2リリーフ圧ポート225,226に供給さ
れる。
【0110】そして、このライン圧とリリーフ圧とに基
づいて、三層弁220により変速制御ユニット110の
増速用油圧室115(1151,1152、以下同様)
および減速用油圧室116にそれぞれ供給される増速用
油圧PHおよび減速用油圧PLの差圧ΔP(=PH−P
L)の制御が行われる。
【0111】この差圧制御は、無段変速機構20のトラ
ニオン25に作用するトラクション力Tに抗して該トラ
ニオン25ないしローラー23を所定の中立位置に保持
すると共に、この中立位置からトラニオン25およびロ
ーラー23を軸心X方向に沿って移動させて該ローラー
23を傾転させることにより、無段変速機構20の変速
比を変化させるために行われるものである。
【0112】ここで、上記トラクション力Tについて説
明すると、図15に示すように、無段変速機構20にお
いて、入力ディスク21のe方向の回転によりローラー
23が駆動されるとき、該ローラー23およびこれを支
持するトラニオン25には、これらを入力ディスク21
の回転方向eと同方向に引きずろうとする力が作用す
る。また、このローラー23のf方向の回転により出力
ディスク22がg方向(図3のx方向)に駆動されると
き、その反力として、出力ディスク22の回転方向gと
反対方向の力が該ローラー23ないしトラニオン25に
作用する。その結果、ローラー23およびトラニオン2
5には、図示の方向のトラクション力Tが作用すること
になるのである。
【0113】したがって、このトラクション力Tに抗し
てローラー23を中立位置に保持するために、トラニオ
ン25にロッド27を介して取り付けられたピストン1
13,114によって形成される増速用油圧室115お
よび減速用油圧室116に、差圧ΔPが上記トラクショ
ン力Tと釣り合う大きさとなるように、増速用油圧PH
と減速用油圧PLとがそれぞれ供給されるのである。
【0114】そして、今、この状態から例えば無段変速
機構20の変速比を小さく(増速)するものとし、ステ
ップモータ251により、三層弁220のスリーブ22
2を、図11において左側(図10では右側)に移動さ
せれば、該三層弁220のライン圧ポート224と増速
圧ポート227との連通度、および第2リリーフ圧ポー
ト226と減速圧ポート228との連通度が大きくな
る。
【0115】そのため、図10に示す増速圧ライン24
8から上記増速用油圧室115に供給されている増速用
油圧PHは、相対的に高圧のライン圧により増圧される
と共に、減速圧ライン249から上記減速用油圧室11
6に供給されている減速用油圧PLは、相対的に低圧の
リリーフ圧により減圧されて、差圧ΔPが大きくなり、
その結果、この差圧ΔPが上記トラクション力Tに打ち
勝って、トラニオン25ないしローラ23が図15に示
すh方向に移動することになる。そして、この移動によ
り、ローラー23は、入力ディスク21との接触位置が
半径方向の外側に、出力ディスク22との接触位置が半
径方向の内側にそれぞれ移動する方向に傾転して、当該
無段変速機構20の変速比が増速されることになる。
【0116】そして、このローラー23の傾転は、図1
2に示す第2無段変速機構30においても同様に生じ、
トラクション力Tに打ち勝つ差圧ΔPによるトラニオン
35のi方向の移動により、ローラー33は、入力ディ
スク31との接触位置が半径方向の外側に、出力ディス
ク32との接触位置が半径方向の内側にそれぞれ移動す
る方向に傾転することになるが、この傾転と一体的にカ
ム機構260におけるプリセスカム261が同方向(図
11に示すj方向)に同じ角度だけ回転することによ
り、該カム機構260においては、従動レバー263、
シャフト262および駆動レバー264がいずれも図1
2に示すk方向に回動する。
【0117】その結果、三層弁220のスプール223
は、スプリング229のバネ力によってl方向、即ち図
11の左方向に移動することになるが、この方向は上記
ステップモータ251によりスリーブ222を移動させ
た方向であり、したがって、上記のように、一旦、増大
したライン圧ポート224と増速圧ポート227との連
通度、および第2リリーフ圧ポート226と減速圧ポー
ト228との連通度が当初の中立状態に復帰することに
なる。
【0118】これにより、上記差圧ΔPは再びトラクシ
ョン力Tと釣り合う状態となって上記のような変速動作
が終了し、無段変速機構20(および30)の変速比
は、所定量変化した上で固定されることになる。
【0119】その場合に、この変速動作は、上記スプー
ル223がスリーブ222との位置関係において所定の
中立状態となる位置まで移動した時点で終了することに
なるが、その位置はステップモータ251によりスリー
ブ222を移動させた位置であり、また、カム機構26
0を介してローラー23およびトラニオン25の傾転角
に対応付けられた位置であるから、スリーブ222の位
置がローラー23およびトラニオン25の傾転角に対応
することになる。その結果、ステップモーター251の
制御量が当該無段変速機構20の変速比に対応すること
になり、該ステップモーター251のパルス制御によ
り、無段変速機構20(無段変速機構30についても同
様)の変速比が制御されることになる。
【0120】なお、以上の動作はステップモータ251
により三層弁220のスリーブ222を反対側に移動さ
せた場合も同様に行われ、この場合、無段変速機構20
の変速比は大きくなる(減速される)。
【0121】ここで、ステップモータ251,252に
出力する制御信号のパルス数に対する無段変速機構2
0,30の変速比の変化の特性は例えば図16に示すよ
うになり、パルス数の増加に応じて変速比が小さくなる
ように(増速)変化する。
【0122】次に、以上のような無段変速機構20,3
0の変速比制御を用いた変速機10の全体としての変速
比(最終変速比)の制御について説明する。前述のよう
に、無段変速機構20,30の変速比は、ステップモー
タ251,252に対するステップ制御により行われる
が、このとき、変速機10がローモードにあるかハイモ
ードにあるかにより、すなわちローモードクラッチ60
とハイモードクラッチ70のいずれが締結されているか
により、異なる最終変速比が得られる。
【0123】まず、ハイモードにおいては、前述のよう
に、無段変速機構20,30の出力回転がハイモードギ
ヤ列90およびハイモードクラッチ70を介してセカン
ダリシャフト13に直接伝達され、遊星歯車機構50を
経由しないので、図17に示すように、最終変速比のパ
ルス数に対する特性Hは、図16に示す無段変速機構2
0,30の変速比の特性と同じになる。ただし、ハイモ
ードギア列90を構成する第1ギア91と第2ギア92
との径ないしは歯数の違いによって変速比自体の値が相
互に異なるようになることはいうまでもない。
【0124】一方、ローモードでは、前述のように、エ
ンジン1の回転がインプットシャフト11からローモー
ドギヤ列80およびローモードクラッチ60を介して遊
星歯車機構50のピニオンキャリヤ51に入力されると
共に、無段変速機構20,30の出力回転がハイモード
ギヤ列90を介して上記遊星歯車機構50のサンギヤ5
2に入力される。その場合に、無段変速機構20,30
の変速比を制御することにより、上記ピニオンキャリヤ
51に入力される回転の速度とサンギヤ52に入力され
る回転の速度との比を所定の値に設定すれば、遊星歯車
機構50の出力要素であるインターナルギヤ53の回転
速度がゼロとなり、ギヤードニュートラルの状態が得ら
れる。
【0125】このとき、最終変速比は、図17に符号
ア,イで示すように無限大となるが、この状態から上記
ステップモータ251,252に対する制御信号のパル
ス数を減少させることにより、無段変速機構20,30
の変速比を大きくする方向(減速)に変化させて、上記
サンギヤ52への入力回転速度を低下させれば、遊星歯
車機構50のインターナルギヤ53は前進方向に回転し
始め、パルス数の減少に従って最終変速比が小さくなる
特性Lが得られ、Dレンジのローモードが実現される。
【0126】そして、これらのDレンジのローモード特
性Lとハイモード特性Hとは、図中符号ウで示すよう
に、所定のパルス数(図例では500パルス付近)、即
ち無段変速機構20,30の所定の変速比(図例では
1.8付近)において交差するような特性になってい
る。したがって、この交差点ウでローモードクラッチ6
0とハイモードクラッチ70の掛け替えを行えば、最終
変速比を連続的に変化させながら、モードの切り換えを
行なうことができることになる。
【0127】なお、上記のギヤードニュートラルの状態
からステップモータ251,252に対する制御信号の
パルス数を増加させることにより、無段変速機構20,
30の変速比を小さくする方向(増速)に変化させて、
上記サンギヤ52への入力回転速度を上昇させれば、遊
星歯車機構50のインターナルギヤ51は後退方向に回
転し始め、パルス数の増加に従って最終変速比が大きく
なるRレンジの特性Rが得られる。
【0128】そして、以上のような制御特性に基づき、
コントロールユニット300は、当該車両の運転状態に
応じた最終変速比の制御を次のように行う。すなわち、
コントロールユニット300は、車速センサ301およ
びスロットル開度センサ303からの信号に基づいて、
現時点の車速Vとスロットル開度θとを読み取り、これ
らの値と図18に示すように予め設定されたマップとか
ら、目標エンジン回転数Neoを設定する。そして、こ
の目標エンジン回転数Neoに対応する最終変速比(図
18の角度αに対応する値)が得られるように、図17
の制御特性に基づいて、上記のようなステップモータ2
51,252に対するパルス制御と、図10に示す第
1、第2ソレノイドバルブに対する制御によるローモー
ドクラッチ60およびハイモードクラッチ70の締結制
御とを行うのである。
【0129】一方、以上のようなステップモーター25
1,252のパルス制御による無段変速機構20,30
の変速比制御(以下、「三層弁制御」と記す)の他に、
この変速機10におけるコントロールユニット300
は、リリーフ圧をリニアソレノイドバルブ210で制御
することにより所定の差圧ΔPを直接生成して無段変速
機構20,30の変速比制御を行なうようになっている
(以下、この制御を「ダイレクト制御」と記す)。その
理由は次の通りである。
【0130】三層弁制御は、ステップモーター251,
252のパルス数、すなわちスリーブ222,232の
移動量と、それに伴って発生する差圧ΔPとの間に一定
の相関関係があることが前提とされるが、該スリーブ2
22,232の移動時に働く摩擦力等によって、例えば
図19に示すように、これらの間にヒステリシスが生じ
ることが考えられる。そして、このようなヒステリシス
のために、例えばギヤードニュートラル(GN)付近の
符号エで示すような点において差圧ΔPの反転が起こ
り、その結果、前進と後退とで逆駆動の回転が発生す
る。
【0131】このような不具合に対処するためには、上
記差圧ΔPを直接生成して増速用油圧室115及び減速
用油圧室116に供給すればよく、そのためにはライン
圧を制御することも考えられるが、ライン圧は一般に制
御幅が4〜16kg程度と大きいために緻密な差圧ΔP
の制御には不利であると共に、所定の差圧ΔPを生成す
るためにライン圧を高めなければならず回路内全体の油
圧が高くなってオイルポンプロスが増大することにな
る。
【0132】したがって、同じ差圧ΔPを生成するので
あれば、ライン圧以下の油圧であるリリーフ圧を低下さ
せることで生成する方が有利であり、またリリーフ圧の
制御幅が一般に0〜4kg程度と狭いため、緻密な差圧
ΔPの制御に好適に用いることが可能である。
【0133】このダイレクト制御では、増速用油圧室1
15および減速用油圧室116にそれぞれ供給される増
速用油圧PHおよび減速用油圧PLとして、ライン圧お
よびリリーフ圧が三層弁220で調圧されることなくそ
のまま供給される。そして、今、三層弁220のスリー
ブ222とスプール223とが図10に示す中立状態に
あり、この状態から無段変速機項20の変速比を小さく
(増速)するものとすると、まずスリーブ222を図面
上右側に所定量移動させて、ライン圧ポート224と増
速圧ポート227との連通度、および第2リリーフ圧ポ
ート226と減速圧ポート228との連通度を大きく
し、ライン圧が増速圧ライン248から上記増速用油圧
室115に供給され、リリーフ圧が減速圧ライン249
から上記減速用油圧室116に供給されるようにする。
【0134】その結果、これらの増速用油圧PHとして
のライン圧と減速用油圧PLとしてのリリーフ圧との差
圧ΔPによりトラニオン25ないしローラ23が増速方
向に移動して該ローラー23が傾転し、該ローラー23
の傾転角に応じてスプール223がカム機構260によ
りスリーブ222の移動方向に移動することになるが、
この場合はローラー23の傾転角ないしスプール223
の移動量が上記差圧ΔPによって決定されているのであ
り、スリーブ222の上記の最初の移動量によって決定
されているわけではないから、そのスリーブ222の移
動量を、ローラー23が傾転してスプール223が移動
しても上記のポート間の連通関係が保たれるように設定
しておけば、あるいはさらに該スリーブ222を所定方
向に移動させて上記ポート間の連通関係が保たれるよう
にしておけば、ローラー23が傾転してスプール223
が移動したのちにおいても上記差圧ΔPによる直接の変
速制御が常に可能となる。
【0135】この変速機10においては、ダイレクト制
御は、特に三層弁制御におけるヒステリシスの影響を受
け易いギヤードニュートラル付近、つまり低車速時に行
なわれる。そしてまた、この変速機10におけるコント
ロールユニット300は、そのダイレクト制御が行なわ
れる低車速時で、かつアイドルスイッチ308がオンの
ときには、トルクコンバータを備える自動変速機のよう
にクリープ力を生成するため、上記ギヤードニュートラ
ルの状態をあえて実現しない制御(以下、「クリープ制
御」と記す)を行なうようになっている。その理由は次
の通りである。
【0136】すなわち、ギヤードニュートラルは、ハイ
モードギア列90を介して遊星歯車機構50のサンギア
52に入力される回転速度と、ローモードギア列80を
介して遊星歯車機構50のピニオンキャリヤ51に入力
される回転速度との比を所定の値に設定することによっ
て遊星歯車機構50のインターナルギア53を回転させ
ないようにすることであり、そのためにローモードでの
トロイダル変速比が上記の三層弁制御やダイレクト制御
により制御されるのであるが、このようなギヤードニュ
ートラルを実現するサンギア52とピニオンキャリヤ5
1との回転速度比の値は一つであり、したがってトロイ
ダル変速比の値も一点にしかない。その結果、非常に精
緻なトロイダル変速比の制御が要求され、往々にして前
進方向又は後退方向にずれてしまうことがある。
【0137】また、一時停止ののちに発進するときのこ
とを考えると、ギヤードニュートラルではブレーキペダ
ルから足を放しただけでは車は発進せず、アクセルを踏
まなければならない。したがって、トルクコンバータを
備える自動変速機のように、常にある程度の駆動力を車
両に働かせて良好な発進性を確保しようとすると、例え
ばDレンジ等の前進走行レンジでは前進方向の駆動力が
わずかに働くように、またRレンジの後退走行レンジで
は後退方向の駆動力がわずかに働くようにそれぞれギヤ
ードニュートラルからずらせてトロイダル変速比を制御
することになるのである。そして、このようなクリープ
制御では緻密な制御がそれほど必要とされないため制御
動作の点からも有利となる。
【0138】なお、前述したように、この変速機10に
おいては、このクリープ制御はダイレクト制御が行なわ
れる低車速時かつアイドルスイッチ308がオンのとき
に実行されるので、例えば運転者がアクセルペダルから
足を放したままで車速が低下していった場合には、三層
弁制御からダイレクト制御に切り換わると同時にクリー
プ制御に入り、一方、登坂路等でアクセルペダルを踏ん
だ状態で車速が低下していった場合には、変速マップに
基づく通常の変速制御がダイレクト制御で行なわれたの
ち、ブレーキペダルを踏み込むため等でアクセルペダル
を放した時点でクリープ制御が開始されることになる。
【0139】そして、車両が停車中は、できるだけクリ
ープ力を小さくしておいて燃費をセーブし、発進時にお
いては、クリープ制御が当初から開始され、アクセルペ
ダルの踏込みによって通常のダイレクト制御に移行し、
そして車速が所定車速以上となった時点で三層弁制御に
切り換わることになる。 (2)各制御の具体的動作 図20に示すように、コントロールユニット300に
は、以上説明した変速動作を基本としながら各種状況に
対処するための種々の制御プログラムが格納されてお
り、各制御は独立して、又は他の制御と関連づけられて
必要時に割り込み実行される。 (2−1)ライン圧制御 前述したように、オイルポンプ102から吐出された作
動油の圧力はレギュレータバルブ202を介してリニア
ソレノイドバルブ209により所定のライン圧に調圧さ
れてメインライン201に供給されるが、変速制御に関
しては、このライン圧は、リリーフバルブ204を介し
てリニアソレノイドバルブ210により該ライン圧以下
の油圧に調圧されてリリーフ圧ライン203に供給され
るリリーフ圧と共に三層弁220,230に導かれ、無
段変速機構20,30のローラー23,33ないしトラ
ニオン25,35をトラクション力Tに抗して中立位置
に保持しつつ該トラニオン25,35を所定方向に移動
させて上記ローラー23,33を傾転させる変速制御の
ための差圧ΔPを生じさせる重要な圧力として使用され
る。
【0140】したがって、トラクション力Tの増減に対
応して、トラニオン25,35を中立位置に保持させる
ための差圧ΔPの制御を行なうことになるが、例えばリ
リーフ圧を一定とした場合は、ライン圧を増大させるこ
とにより上記差圧ΔPが拡大してより大きなトラクショ
ン力Tに対向することができ、逆にライン圧を一定とし
た場合は、リリーフ圧を減少させることにより上記差圧
ΔPが拡大してより大きなトラクション力Tに対向する
ことができることになる。
【0141】その場合に、上記トラクション力Tは、単
にエンジントルクの大きさ等によって変化するのではな
く、ローラー23,33の傾転角によっても変わってく
るのである。すなわち、図21に第1無段変速機構20
の第1ローラー231を例にして示すように、変速制御
の結果としてこのローラー231が図中実線で示すよう
に減速側に傾転した場合は、鎖線で示すように増速側に
傾転した場合に比べて、該ローラー231と入力ディス
ク21との接触位置の半径r1が小さくなるので、この
ときトルクTzが該入力ディスク21側からローラー2
31へ伝達されているものとすると、トルクTzの大き
さが同じであっても、この接触位置におけるローラー2
31を引きずろうとする力がより大きくなり、また該ロ
ーラー231と出力ディスク22との接触位置における
反力も大きくなる。したがってローラー231が減速側
に傾転するにつれて全体としてのトラクション力Tが増
大する。
【0142】そして、トルクTzの伝達方向が上記のよ
うになるのは、ローモードクラッチ60が解放され、ハ
イモードクラッチ70が締結されたハイモード(Hモー
ド)のときであるから、このハイモード時には、無段変
速機構20.30の変速比(以下、「トロイダル変速
比」とも記す)が大きくなるほど、上記トラクション力
Tに対向する差圧ΔPが拡大するように、リリーフ圧を
一定とした場合はライン圧を増大させ、ライン圧を一定
とした場合はリリーフ圧を減少させる制御を行なうので
ある。
【0143】一方、ローモード(Lモード)時は、前述
の遊星歯車機構50からの反力として無段変速機構2
0.30側に還流される循環トルクによりトルク伝達の
方向がハイモード時とは逆になる(図9参照)。したが
って、ローモード時には、ローラー231が図21に鎖
線で示すように増速側に傾転した場合に、該ローラー2
31と出力ディスク22との接触位置の半径r2が小さ
くなってトラクション力Tが増大するから、トロイダル
変速比が小さくなるほど、上記トラクション力Tに対向
する差圧ΔPが拡大するように、リリーフ圧を一定とし
た場合はライン圧を増大させ、ライン圧を一定とした場
合はリリーフ圧を減少させる制御を行なうのである。
【0144】コントロールユニット300が行なうライ
ン圧制御の具体的動作は例えば図22のようになり、ス
テップS11でエンジン回転数Neとスロットル開度θ
とからエンジントルクTeを、ステップS12でオイル
ポンプロスLossを、ステップS13で無段変速機構
20,30の入力回転数と出力回転数とからトロイダル
変速比Rtdをそれぞれ算出したのち、ステップS14
で、これらの各算出値及びモードをパラメータとして、
例えば図23に示すようなマップから伝達トルクTzの
値を求める。図示したように、このマップでは、ローモ
ードDレンジで、トロイダル変速比Rtdが増速側とな
るにつれて伝達トルクTzが大きくなり、ハイモードで
は伝達トルクTzが1.0に固定されている。
【0145】次いで、ステップS15で、上記伝達トル
クTzに基づいて、例えば図24に示すようなマップか
らライン圧PLの値を求め、ステップS16でこのライ
ン圧PLが得られるようにリニアソレノイドバルブ20
9を制御する。上記マップでは、トラクション力Tに対
向し得るように、伝達トルクTzが所定値以上でライン
圧PLが大きくなり、その場合に、前述したように、ロ
ーモード時はトロイダル変速比Rtdが増速側となるに
つれてライン圧PLがより大きく設定され、ハイモード
時はトロイダル変速比Rtdが減速側となるにつれてラ
イン圧PLがより大きく設定されている。
【0146】なお、伝達トルクTzが所定値未満ではラ
イン圧PLが一定値に固定されているが、この範囲内で
はリリーフ圧を増減させて差圧ΔPを制御する。すなわ
ち、ローモード時はトロイダル変速比Rtdが増速側と
なるにつれてリリーフ圧をより減少させ、ハイモード時
はトロイダル変速比Rtdが減速側となるにつれてリリ
ーフ圧をより減少させるのである。 (2−2)エンゲージ制御 前述したように、Nレンジではライン圧を供給するメイ
ンライン201と第1〜第3出力ライン205〜207
とがマニュアルバルブ208によって遮断されるので、
ローモードクラッチ60、ハイモードクラッチ70共に
解放された状態にある。そして、この状態から、運転者
によってレンジがDレンジあるいはSレンジ、Lレンジ
等の前進走行レンジや、Rレンジの後退走行レンジに切
り換えられたときには、まずローモードを達成するよう
にローモードクラッチ60が締結される。このとき、ト
ロイダル変速比がギヤードニュートラルを実現する変速
比に制御されていると、遊星歯車機構50のピニオンキ
ャリヤ51とローモードギア列80の第2ギア82との
間に回転の同期がとれているため、これらを連結しもし
くは切断する上記ローモードクラッチ60が締結されて
も、その締結によるショックはほとんど発生しない。
【0147】しかしながら、Nレンジが選択されている
のは、通常、アイドル状態の停車時もしくは低車速時で
あるため、N−D又はN−Rのエンゲージ動作は前述の
クリープ制御中に行なわれることになる。したがって、
該クリープ制御中はギヤードニュートラル状態ではない
ために、ローモードクラッチ60の締結時にクリープト
ルクによるショックが発生するのである。
【0148】そこで、コントロールユニット300は、
このような締結ショックを抑制するために、図25に示
すフローチャートによるエンゲージ制御を行なう。次
に、このエンゲージ制御を図26に示すステップモータ
251のパルス数と最終変速比との関係図、図27に示
すリリーフ圧と出力トルクとの関係図、及び図31に示
すタイムチャートを参照しながら説明する。
【0149】すなわち、コントロールユニット300
は、まずステップS21で前回の制御サイクルでレンジ
がNレンジであったか否かを判定し、YESの場合はス
テップS22で今回レンジがD,S,L,R等の走行レ
ンジであるか否かを判定する。そして、NOの場合、つ
まりNレンジが継続している場合は、ステップS23で
リリーフ圧Prfを0とすると共に、ステップS24で
ステップモータ251のパルスPULSをギヤードニュ
ートラルが実現するPNとしたのち、ステップS25で
タイマー値TIMを0とする。
【0150】ここでNレンジ継続中にリリーフ圧Prf
を0とするのは、リリーフ圧制御用リニアソレノイドバ
ルブ210の非作動時にリリーフ圧Prfが0となって
余分な電力が消費されず有利となるからである。また、
パルスPULSをギヤードニュートラルが実現するPN
とするのは、次にエンゲージ動作が行なわれた場合のク
リープ力をダイレクト制御で生成する準備としてスリー
ブ222を基準位置に戻しておくためであり、必ずしも
この位置に限られるものではなく、三層弁222におけ
るスリーブ222とスプール223との位置関係が所定
の中立状態となって各ポート間の連通が遮断される位置
であればよい。
【0151】一方、ステップS22で今回レンジがD,
S,L,R等の走行レンジになると、ステップS26で
タイマー値TIMがローモードクラッチ60の締結に要
する所定時間TIMx中は、ステップS27でリリーフ
圧Prfを比較的高い所定油圧Prf(on)とすると
共に、三層弁222における各ポート間の連通状態が保
たれてダイレクト制御が実行できるように、ステップS
28でステップモータ251のパルスPULSを、Dレ
ンジ等の前進走行レンジへの切り換えであれば上記PN
から最終変速比が高速側のPD1に、またRレンジの後
退走行レンジへの切り換えであれば同じく最終変速比が
高速側のPR1にしたのち、ステップS29でタイマー
値TIMを1だけプラスする。
【0152】つまり、ローモードクラッチ60の締結に
要する所定時間TIMx中は、リリーフ圧Prfが高く
され、その結果ライン圧との差圧ΔPが小さくなってギ
ヤードニュートラルに近づき、クリープ力(出力トル
ク)が低く設定されることになる。したがって、エンゲ
ージ動作における締結ショックが抑制される。
【0153】そして、ステップS26でタイマー値TI
Mがローモードクラッチ60の締結に要する所定時間T
IMxを越えたときは、ステップS31でリリーフ圧P
rfを比較的低い所定油圧Prf(off)とすると共
に、三層弁222における各ポート間の連通状態が保た
れてダイレクト制御が実行できるように、ステップS3
2でステップモータ251のパルスPULSを、Dレン
ジ等の前進走行レンジへの切り換えであれば上記PNか
ら最終変速比が低速側のPD0に、またRレンジの後退
走行レンジへの切り換えであれば同じく最終変速比が低
速側のPR0にしたのち、ステップS33でタイマー値
TIMを0とする。
【0154】つまり、ローモードクラッチ60が締結さ
れたのちは、リリーフ圧Prfが低くされ、その結果ラ
イン圧との差圧ΔPが大きくなってギヤードニュートラ
ルからのずれが拡大されて、クリープ力(出力トルク)
が高く設定されることになる。したがって、良好な発進
性が確保されることになる。 (2−3)ダイレクト制御 ダイレクト制御そのものの基本的動作は先に述べた通り
であるが、この変速機10におけるコントロールユニッ
ト300は、特にブレーキペダルが踏み込まれたとき
や、クリープ時の車速について特殊な制御を行なうよう
になっている。その場合の具体的制御動作は図28に示
すフローチャートのようになり、これを図31に示すタ
イムチャートを参照しながら説明すると、まずステップ
S41で車速Vがクリープ制御における目標車速Voよ
り所定量ΔV大きい車速を下回ったときに三層弁制御か
らこのダイレクト制御に移行し、その場合に、ステップ
S42でブレーキスイッチ309がオンのときは(この
ときアイドルスイッチ308はオンでありクリープ制御
が開始されている)、ステップS43でリリーフ圧Pr
fを比較的高い所定油圧Prf(on)として、このリ
リーフ圧Prf(on)が得られるようにステップS4
4でリニアソレノイドバルブ210を制御する。つま
り、ブレーキペダルが踏み込まれているときは早期に減
速するのが好ましく、そのためにリリーフ圧Prfを高
くしてクリープ力を小さくするのである。
【0155】一方、ステップS42でブレーキスイッチ
309がオフのときは、ステップS45でリリーフ圧P
rfを比較的低い所定油圧Prf(off)とする。そ
して、ステップS46でアイドルスイッチ308がオン
のときは、ステップS47で現在の車速Vと上記クリー
プ制御における目標車速Voとの偏差dVを求めたの
ち、ステップS48で図29に示すマップから上記偏差
dVに基づいてリリーフ圧のフィードバック油圧ΔPr
fを求める。そして、ステップS49でこのフィードバ
ック油圧ΔPrfを加算したリリーフ圧Prfを求め、
このリリーフ圧Prfが得られるようにステップS44
でリニアソレノイドバルブ210を制御する。これによ
り、ブレーキペダルが踏み込まれていないときはクリー
プ力が小さくされることなく、車速が目標車速Voにフ
ィードバック制御で保持されることになる。なお、ステ
ップS41でダイレクト制御の開始条件をこの目標車速
Voより所定量ΔV大きい車速としたのは、この車速V
のフィードバック制御中にオーバーシュートして三層弁
制御に切り換わらないようにするためである。
【0156】また、ステップS46でアイドルスイッチ
308がオフ、つまりアクセルペダルが踏み込まれてい
るときは、ステップS50でスロットル開度θに応じて
リリーフ圧Prfを決定し、このリリーフ圧Prfが得
られるようにステップS44でリニアソレノイドバルブ
210を制御する(Δtの期間)。その場合に、リリー
フ圧Prfとスロットル開度θとの関係は、図30に示
すように、スロットル開度θが大きくなるほどリリーフ
圧Prfが大きくなるようなマップに設定されている。
これにより、アクセルの踏込み量が大きいほどクリープ
力が小さく、換言すればギヤードニュートラル状態に近
づき、その結果、変速比が大となってエンジン回転数が
高まり、良好な加速性が得られて三層弁制御との切り換
えが円滑に行なわれることになる。
【0157】そして、ステップS41で車速Vがダイレ
クト制御の開始条件である車速以上となった時点でステ
ップS51に進み、ここで三層弁制御時の差圧ΔPをラ
イン圧との間で生成するリリーフ圧Prfを0にし、ス
テップS52でこのリリーフ圧Prfが得られるように
リニアソレノイドバルブ210を制御して、ステップS
53で三層弁制御に移行することになる。
【0158】なお、三層弁制御とダイレクト制御の切り
換え時点におけるステップモータ251のパルス数は必
ずしも一致するものとは限らず、ダイレクト制御開始時
には三層弁制御終了時のスリーブ222の位置を該ダイ
レクト制御に応じた位置(パルス数PD0)に移動さ
せ、また、三層弁制御開始時にはダイレクト制御終了時
のスリーブ222の位置(パルス数PD0)を該三層弁
制御に応じた位置に移動させることになる。
【0159】ところで、このダイレクト制御では、ステ
ップS42でブレーキスイッチ309がオンのときは、
リリーフ圧Prfを高くしてクリープ力を小さくする制
御を行なうのであるが、例えば車両が平坦路でなく登坂
路等の勾配のある斜面で停止するような場合では、ブレ
ーキスイッチ309のオンで直ちにクリープ力を小さく
すると前進駆動力が低下して逆走する懸念がある。そこ
で、この変速機10におけるコントロールユニット30
0には、このような不具合に対処するための第2のダイ
レクト制御プログラムが格納されている。
【0160】次に、この勾配制御を含んだ第2のダイレ
クト制御を図32に示すフローチャート及び図35に示
すタイムチャートに従って説明する。なお、図32のフ
ローチャートは、図28のフローチャートにおけるステ
ップS41の前にステップS40が追加され、かつステ
ップS43が変更されたもので、その他は同じである。
【0161】まず、ステップS41のダイレクト制御の
開始又は終了条件の判定の前に、ステップS40で、勾
配センサ310で検出された路面勾配kに応じて遅延時
間Tcd及びリリーフ圧Prfを決定する。その場合
に、図33に示すように、登り勾配が急となるほど、遅
延時間Tcdは長く、リリーフ圧Prfは小さく(クリ
ープ力が大きく)なるように設定されている。なお、平
坦路であるときのリリーフ圧Prf0が通常のクリープ
力を生じさせる値とされている。
【0162】そして、ステップS41でダイレクト制御
が開始され、ステップS42でブレーキスイッチ309
がオンのときには、まず、ステップS43aに進んで、
カウント数countが0か否かを判定し、YESの場
合、つまり初めてこのステップS43aに進んだとき
は、ステップS43bで、ブレーキスイッチ309がオ
フの場合と同様、リリーフ圧Prf(ただし勾配に応じ
て決定されたもの)を比較的低い所定油圧Prf(of
f)としたのち、ステップS43cでカウント数を1だ
けプラスして、ステップS43dで、該カウント数と、
勾配に応じて決定された遅延時間Tcdとの比較を行な
う。
【0163】そして、まだ遅延時間Tcd以内であれ
ば、ステップS43eで、上記の比較的低い所定油圧P
rf(off)を維持する一方で、遅延時間Tcdを越
えたときには、ステップS43fで、カウント数に応じ
てリリーフ圧Prfを高めていく演算を行なう。その演
算に用いられる補正係数Ckは、図34に示すように勾
配が急なほど小さく、つまりリリーフ圧Prfがゆっく
りと高くなるように(クリープ力がゆっくりと小さくな
るように)設定されている。そして、以上のようにして
求められたリリーフ圧Prfが得られるようにステップ
S44でリニアソレノイドバルブ210を制御するので
ある。
【0164】この制御によれば、車両の走行路面におけ
る登り勾配が急なときほど、ブレーキペダルを踏んだの
ちのクリープ力がより大きくされ、かつその保持時間で
ある遅延時間が長くされると共に、該遅延時間が経過し
たのちにクリープ力を低下させる場合においても、登り
勾配が急なときほどゆっくりと行なわれるから、勾配の
ある路面上における車両の逆送が効果的に防止されるこ
とになる。 (2−4)D−R切り返し制御 例えば車庫入れをする場合等では、車両がまだ前進して
いるうちにバックしようとしてレンジがRレンジに切り
換えられたり(D−R)、その逆の操作(R−D)が行
なわれたりすることがある。このときの状態をこの変速
機10のギアトレインで考えると、マニュアルバルブ2
08がDレンジ位置とRレンジ位置との間で移動する途
中でNレンジ位置を通過するのであるが、ごく短時間で
あるからローモードクラッチ60は締結されたままとな
る。
【0165】そして、この状態でトロイダル変速比がギ
ヤードニュートラルを挟んで変化するわけであるが、こ
のときインターナルギア53ないしセカンダリシャフト
13を現回転方向と逆方向に回転させるように、トロイ
ダル変速比を制御してサンギア52の回転速度を変化さ
せることになる。したがって、そのように無段変速機構
20,30のローラ23,33をディスク21,22,
31,32に対して傾転させるのは大きな力が必要とな
り、結果的に上記ローラ23,33やディスク21,2
2,31,32に滑りが生じ、損傷を起こす虞がある。
【0166】そこで、コントロールユニット300は、
このような前進後退間の切り返し時には、無段変速機構
20,30に大きな負荷をかけないように、図36に示
すフローチャートに従って次のような制御を行なう。
【0167】まず、ステップS61でDレンジのとき
は、ステップS62で例えば図18に示したような変速
線図(変速マップ)に基づくスリーブ移動による通常の
三層弁制御を行なう一方で、ステップS61でDレンジ
でなく、ステップS63でNレンジのときは、ステップ
S64でローモードクラッチ60を解放し、ステップS
65で三層弁220のスリーブ222をギヤードニュー
トラルの近傍の位置に移動させたのち、ステップS66
でステップモータ251の原点補正を行なう。なお、上
記ステップS65で、スリーブ222をギヤードニュー
トラル位置ではなく、ギヤードニュートラルの近傍の位
置に移動させるのは、スリーブ222を正確にギヤード
ニュートラル位置に移動させるのが困難であるという前
述の理由によるものであり、ギヤードニュートラル位置
に移動させるようにしてもよいことはいうまでもない
(このステップS65でスリーブ222を移動させる位
置を「基準位置」という)。
【0168】これにより、Nレンジでは、動力伝達経路
が遮断されると共に、スリーブ222が基準位置に移動
され、そしてここでステップモータ251の原点補正が
行なわれることになる。このステップモータ251の原
点補正は概略次のようにして行なわれる。まず、入力回
転センサ306はローモードクラッチドラム61に設け
られていると共に、出力回転センサ307はハイモード
ギア列90の第2ギア92に設けられて、これらの検出
値に基づき、スリーブ222が上記基準位置にあるとき
のトロイダル変速比を算出する。また、スリーブ222
を上記基準位置に移動させたときのパルス数を原点パル
ス数とする(例えば図17についていえば1360付
近)。そして、この算出されたトロイダルの実変速比
と、予め設定されている基準位置でのトロイダルの理想
変速比とを比較して、その差が解消する方向にスリーブ
222を移動させる。このスリーブ222の移動はフィ
ードフォワード制御とし、この数パルス分だけスリーブ
222を移動させたのちのステップモータ251のパル
ス数を上記の原点パルス数に置き換えるのである。
【0169】図36に戻ると、ステップS61でDレン
ジでなく、かつステップS63でNレンジでもないとき
は、ステップS67でRレンジか否かを判定し、NOの
場合はSレンジかLレンジであるからステップS62に
進む一方で、YESの場合はステップS68で後退走行
中か否かを判定する。そして、後退走行中のときはステ
ップS62で通常の三層弁制御を行なう一方で、NOの
場合はステップS69で車速が0でないかどうかを判定
し、YESのとき、つまり車両がまだある程度の車速で
前進走行しているときは、上記のNレンジで行なう各ス
テップS64〜66を実行する。
【0170】これに対し、ステップS69でNOのと
き、つまりレンジはRレンジで車両が停止しているとき
には、ステップS70に進んで、三層弁220のスリー
ブ222をリバース発進位置に移動させる。具体的に
は、インターナルギア53ないしセカンダリシャフト1
3が後退回転となるクリープ発進時の位置に移動させる
のである。そして、ステップS71でローモードクラッ
チ60を締結する。
【0171】この制御によれば、前進走行中にRレンジ
への切り返しが行なわれた場合には、ステップS61,
S63,S67,S68,S69と進んで、ステップS
64でローモードクラッチ60を切ったのち、ステップ
S69で車両の停止を確認してから、ステップS70で
後退方向へのスリーブ移動を行ない、そしてステップS
71でローモードクラッチ60をつなぐので、遊星歯車
機構50のサンギア52は、ローモードクラッチ60が
切れている間は負荷が少ない状態で回転し、その間に、
該サンギア52の回転速度を変化させるように無段変速
機20のローラ23を傾転させるから、その傾転を負荷
が少ない状態で行なうことができ、これにより、該ロー
ラ23,33やディスク21,22,31,32に滑り
が生じることがなく、また損傷を起こす虞がなくなる。 (2−5)R−D切り返し制御 図36に示すフローチャートはD−R切り返し制御に関
するものであったが、逆のR−D切り返し制御もこれに
準じて行なわれる。その制御フローを図37に示す。 (2−6)後退時変速制御 この無段変速機10ではトロイダル変速比を無段階に制
御することができ、その結果、サンギア52の回転速度
を変化させることによって、ギヤードニュートラルから
前進方向及び後退方向のいずれにも最終変速比を任意に
変えることが可能である。したがって、後退走行時にも
無数のギア段を設定することが可能であるが、特に後退
速では、良好な発進加速性が要求される前進走行時とは
異なり、発進時には格別の注意が要求される。
【0172】そこで、この無断変速機10におけるコン
トロールユニット300は、図38に示すように、ステ
ップS101でレンジがRレンジのときはステップS1
02で後退用の変速マップを用いて変速制御を行い、レ
ンジがDレンジのときはステップS103で前進用の変
速マップを用いて変速制御を行うようになっている。
【0173】その場合に、図39に合わせて示すよう
に、後退速用の変速マップでは、同じ車速V及びスロッ
トル開度θであっても、前進速用の変速マップに比べ
て、低い値のエンジン回転数が目標値Neoとして決定
されるようになっている。換言すれば、最終変速比が全
体に高速段側にシフトされており、これにより、後退時
における急な飛び出しが抑制されることになる。
【0174】なお、このような後退速用変速マップの特
性を所定車速以下の場合にのみ適用するようにしてもよ
い。その場合には、特に注意が要求される発進時以外
は、前進走行の場合と同じ最終変速比での走行が実現す
ることになる。
【0175】また、図39において、前述のダイレクト
制御における判定車速Vo+ΔV以下では変速特性が設
定されていないが、これは図31のタイムチャートに準
じて付記したものであり、この場合は三層弁制御からダ
イレクト制御への切り換わり時には、すでにアイドルス
イッチ308がオンとなっており、したがって直ちにク
リープ制御が開始されるので、上記判定車速Vo+ΔV
以下では通常の変速制御が行なわれず、この種の変速マ
ップは使用されないということを示すものである。 (2−7)ローモード/ハイモード切換制御 先に図17を参照して述べたように、Dレンジのローモ
ード特性とハイモード特性とは所定のパルス数ないしト
ロイダル変速比において交差するような特性になってい
る。このことは、図18又は図39の変速マップにおけ
るモード切換ラインとして表わされる。つまり、両モー
ドで最終変速比が一致する点でローモードクラッチ60
とハイモードクラッチ70の掛け替えを行なうのであ
る。これにより、急な変速比の変化を生じさせずにショ
ックのないモードの切り換えを実現することが可能とな
る。
【0176】しかしながら、上記クラッチ60,70の
掛け替えにはある程度の時間がかかるため、モードの切
り換えが終了した時点では、車両の走行状態がすでに上
記モード切換ライン上になく、その結果、急な変速比の
変化が生じることになる。
【0177】そこで、コントロールユニット300は、
このような不具合に対処するために、図40に示すフロ
ーチャートによるモード切換制御を行なう。まず、コン
トロールユニット300は、ステップS111で、エン
ジン回転数センサ302で検出される実エンジン回転数
Neが、モード切換ラインの最終変速比Goと車速セン
サ302で検出される車速Vとを乗算して得られる値に
近づいているか否かを判定する。つまり、現在の最終変
速比がモード切換ラインに略同じかどうかを判定するの
である。
【0178】そして、YESの場合は、ステップS11
2で、クラッチ60,70の掛け替え中、その現最終変
速比Gが維持されるようにトロイダル変速比の制御を行
なう。次いで、ステップS113で、上記最終変速比G
を維持するための目標エンジン回転数Neoと実回転数
Neとの偏差ΔNを算出し、ステップS114で、この
回転偏差ΔNが解消されるように設定された図41に示
すマップからパルスPULSのフィードバック量ΔPU
LSを求めて、最終的に、ステップS115で、このフ
ィードバック量ΔPULSをステップモータ251に出
力する。
【0179】これにより、三層弁220のスリーブ22
2位置がフィードバック制御されて、上記回転偏差ΔN
が解消され、その結果、最終変速比Gが一定値に固定さ
れる。そして、その間にモードが切り換えられることに
なるので、該モードの切り換え前後において変速比の変
化がなく、ショックのない円滑なモードの切り換えが実
現することになる。
【0180】
【発明の効果】以上のように本願第1発明によれば、ト
ロイダル変速機構のディスクとローラーとの接触部に潤
滑油を供給する潤滑路と、上記接触部以外の部分を潤滑
する潤滑路とを独立させ、両潤滑路のうち上記接触部に
潤滑油を供給する潤滑路にのみオイルクーラーを設けた
ので、トロイダル変速機構のディスクとローラーの接触
部を油圧回路のレイアウト性を損なう事なく、効率良く
冷却・潤滑することができる。
【0181】また、第2発明によれば、トロイダル変速
機構の他にも動力伝達経路を切り換える締結要素を備え
たトロイダル式無断変速装置において、トロイダル変速
機構のディスクとローラーとの接触部に潤滑油を供給す
る潤滑路と、上記締結要素を潤滑する潤滑路とを独立さ
せ、両潤滑路のうち上記接触部に潤滑油を供給する潤滑
路にのみオイルクーラーを設けたので、トロイダル変速
機構のディスクとローラーの接触部を油圧回路のレイア
ウト性を損なう事なく、効率良く冷却・潤滑することが
できる。
【0182】さらに、第3発明によれば、トロイダル変
速機構と遊星歯車機構とを備え、締結することによりエ
ンジンの駆動トルクを上記トロイダル変速機構および上
記遊星歯車機構とを用いて駆動輪に伝達させる第一の伝
達経路を形成する第一の締結要素と、締結することによ
りエンジンからの出力トルクを上記トロイダル変速機構
のみを用いて駆動輪に伝達させる第二の締結要素とを備
えたトロイダル式無断変速装置において、トロイダル変
速機構のディスクとローラーとの接触部に潤滑油を供給
する潤滑路と、上記第一、第二の締結要素を潤滑する潤
滑路とを独立させ、両潤滑路のうち上記接触部に潤滑油
を供給する潤滑路にのみオイルクーラーを設けたので、
トロイダル変速機構のディスクとローラーの接触部を油
圧回路のレイアウト性を損なう事なく、効率良く冷却・
潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無段
変速機の機械的構成を示す骨子図である。
【図2】 同変速機の要部の具体的構造を示す展開図で
ある。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 ハイモードギア列を構成するギアの組付けの
態様を示す断面図である。
【図5】 ローディングカムとローモードギア列を構成
するギア及び入力ディスクとの組付け関係を示す一部切
欠き図である。
【図6】 インプットシャフト上の構成を示す拡大断面
図である。
【図7】 セカンダリシャフト上の構成を示す拡大断面
図である。
【図8】 循環トルクによる問題点を説明する概略線図
である。
【図9】 本発明の実施の形態に係る変速機における循
環トルクの流れを説明する概略線図である。
【図10】 同変速機の油圧制御の回路図である。
【図11】 図3のB方向からみた変速制御用の油圧を
生成する三層弁の部分断面図である。
【図12】 図3のC方向からみたカム機構の部分断面
図である。
【図13】 変速機ケースの下部構造を示す断面図であ
る。
【図14】 本発明の実施の形態に係る変速機における
制御システム図である。
【図15】 変速制御の前提となるトラクション力の説
明図である。
【図16】 ステップモータのパルス数とトロイダル変
速比との関係を示す特性図である。
【図17】 ステップモータのパルス数と最終変速比と
の関係を示す特性図である。
【図18】 変速制御に用いられる特性図である。
【図19】 三層弁による変速制御における問題点の説
明図である。
【図20】 コントロールユニットが行なう制御のメイ
ンフローチャート図である。
【図21】 同コントロールユニットが行なうライン圧
制御の特徴の説明図である。
【図22】 同ライン圧制御のフローチャート図であ
る。
【図23】 同ライン圧制御における特性図である。
【図24】 同ライン圧制御における特性図である。
【図25】 同コントロールユニットが行なうエンゲー
ジ制御のフローチャート図である。
【図26】 同エンゲージ制御における特性図である。
【図27】 同エンゲージ制御における特性図である。
【図28】 同コントロールユニットが行なうダイレク
ト制御のフローチャート図である。
【図29】 同ダイレクト制御における特性図である。
【図30】 同ダイレクト制御における特性図である。
【図31】 同ダイレクト制御及びエンゲージ制御によ
るタイムチャート図である。
【図32】 勾配制御を含む第2のダイレクト制御のフ
ローチャート図である。
【図33】 同第2のダイレクト制御における特性図で
ある。
【図34】 同第2のダイレクト制御における特性図で
ある。
【図35】 同第2のダイレクト制御によるタイムチャ
ート図である。
【図36】 同コントロールユニットが行なう切り返し
制御のフローチャート図である。
【図37】 別の切り返し制御のフローチャート図であ
る。
【図38】 同コントロールユニットが行なう後退時変
速制御のフローチャート図である。
【図39】 同後退時変速制御における変速特性図であ
る。
【図40】 同コントロールユニットが行なうモード切
換制御のフローチャート図である。
【図41】 同モード切換制御における特性図である。
【符号の説明】
1 エンジン 10 トロイダル式無段変速機 11 第1シャフト(インプットシャフト) 12 第3シャフト(プライマリシャフト) 13 第2シャフト(セカンダリシャフト) 20 第1無段変速機構 30 第2無段変速機構 21,31 入力ディスク 22,32 出力ディスク 23,33 ローラー 25,35 接触位置変更部材(トラニオン) 40 ローディング機構(ローディングカム) 44 ピン部材 50 遊星歯車機構 51 第3要素(ピニンオンキャリヤ) 52 第1要素(サンギヤ) 53 第2要素(インターナルギヤ) 60 第1クラッチ機構(ローモードクラッ
チ) 70 第2クラッチ機構(ハイモードクラッ
チ) 80 ローモードギヤ列 81 第1ギヤ 82 第2ギヤ 83 アイドルギヤ 90 ハイモードギヤ列
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上田 和彦 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンと駆動輪との一方側に設けられ
    た入力ディスクと他方側に設けられた出力ディスクとの
    間に圧接状態で配置されたローラーを傾転させることに
    より両ディスク間の変速比を変化させるトロイダル変速
    機構と、少なくともエンジン回転と車速に関する値を含
    む車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該検
    出手段の検出結果に基づいて上記トロイダル変速機構を
    制御する制御手段を備えたトロイダル式無断変速機の潤
    滑装置であって、潤滑油を生成する油圧源と、上記ディ
    スクと上記ローラーとの接触部を潤滑すべく上記トロイ
    ダル変速機構に設けられた潤滑孔とを連通する第一潤滑
    路と、上記油圧源と上記接触部以外で潤滑が必要な部分
    とを連通する第二潤滑路とを備え、上記第一潤滑路と上
    記第二潤滑路とのうち第一潤滑路にのみオイルクーラー
    を備えていることを特徴とするトロイダル式無段変速機
    の潤滑装置。
  2. 【請求項2】 エンジンと駆動輪との一方側に設けられ
    た入力ディスクと他方側に設けられた出力ディスクとの
    間に圧接状態で配置されたローラーを傾転させることに
    より両ディスク間の変速比を変化させるトロイダル変速
    機構と、上記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上
    に設けられ、締結することにより上記動力伝達経路を切
    り換える締結要素と、該締結要素の締結状態を調整する
    調整手段と、少なくともエンジン回転と車速に関する値
    を含む車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
    該検出手段の検出結果に基づいて上記トロイダル変速機
    構調整及び上記調整手段とを制御する制御手段を備えた
    トロイダル式無断変速機の潤滑装置であって、潤滑油を
    生成する油圧源と、上記ディスクと上記ローラーとの接
    触部を潤滑すべく上記トロイダル変速機構に設けられた
    潤滑孔とを連通する第一潤滑路と、上記油圧源と上記締
    結要素とを連通し該締結要素を潤滑する第二潤滑路とを
    備え、上記第一潤滑路と上記第二潤滑路とのうち第一潤
    滑路にのみオイルクーラーを備えていることを特徴とす
    るトロイダル式無段変速機の潤滑装置。
  3. 【請求項3】 エンジンと駆動輪との一方側に設けられ
    た入力ディスクと他方側に設けられた出力ディスクとの
    間に圧接状態で配置されたローラーを傾転させることに
    より両ディスク間の変速比を変化させるトロイダル変速
    機構と、締結することによりエンジンの駆動トルクを上
    記トロイダル変速機構および該変速機構と駆動輪との間
    の動力伝達経路上に設けられた遊星歯車機構とを用いて
    駆動輪に伝達させる第一の伝達経路を形成する第一の締
    結要素と、締結することによりエンジンからの出力トル
    クを上記トロイダル変速機構のみを用いて駆動輪に伝達
    させる第二の締結要素と、該第一、第二締結要素の締結
    状態をそれぞれ調整する第一、第二の調整手段と、少な
    くともエンジン回転と車速に関する値を含む車両の走行
    状態を検出する走行状態検出手段と、該検出手段の検出
    結果に基づいて上記トロイダル変速機構調整及び上記調
    整手段とを制御する制御手段を備え、該制御手段が車速
    がエンジン回転に基づいてあらかじめ設定された値の時
    にのみ上記第一締結要素を締結して上記第二締結要素を
    解放した状態から上記第一締結要素を解放して上記第二
    締結要素を締結した状態に変更するように上記調整手段
    を制御するように構成されたトロイダル式無断変速機の
    潤滑装置であって、潤滑油を生成する油圧源と、上記デ
    ィスクと上記ローラーとの接触部を潤滑すべく上記トロ
    イダル変速機構に設けられた潤滑孔とを連通する第一潤
    滑路と、上記油圧源と上記締結要素とを連通し該締結要
    素を潤滑する第二潤滑路とを備え、上記第一潤滑路と上
    記第二潤滑路とのうち第一潤滑路にのみオイルクーラー
    を備えていることを特徴とするトロイダル式無段変速機
    の潤滑装置。
JP9069937A 1997-03-24 1997-03-24 トロイダル式無段変速機の潤滑装置 Pending JPH10267098A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9069937A JPH10267098A (ja) 1997-03-24 1997-03-24 トロイダル式無段変速機の潤滑装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9069937A JPH10267098A (ja) 1997-03-24 1997-03-24 トロイダル式無段変速機の潤滑装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10267098A true JPH10267098A (ja) 1998-10-06

Family

ID=13417087

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9069937A Pending JPH10267098A (ja) 1997-03-24 1997-03-24 トロイダル式無段変速機の潤滑装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10267098A (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01303349A (ja) * 1988-05-30 1989-12-07 Nissan Motor Co Ltd 自動変速機のセレクトショック軽減装置
JPH03223564A (ja) * 1990-01-25 1991-10-02 Mazda Motor Corp 自動変速機の油圧回路
JPH0492147A (ja) * 1990-08-02 1992-03-25 Jatco Corp 変速機の潤滑装置
JPH06101754A (ja) * 1992-09-18 1994-04-12 Nissan Motor Co Ltd 変速比無限大無段変速機の変速制御装置
JPH07243513A (ja) * 1994-03-08 1995-09-19 Mazda Motor Corp 自動変速機の潤滑装置
JPH07259895A (ja) * 1994-03-23 1995-10-09 Nissan Diesel Motor Co Ltd 湿式クラッチ装置
JPH0828646A (ja) * 1994-07-13 1996-02-02 Mazda Motor Corp トロイダル型無段変速機

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01303349A (ja) * 1988-05-30 1989-12-07 Nissan Motor Co Ltd 自動変速機のセレクトショック軽減装置
JPH03223564A (ja) * 1990-01-25 1991-10-02 Mazda Motor Corp 自動変速機の油圧回路
JPH0492147A (ja) * 1990-08-02 1992-03-25 Jatco Corp 変速機の潤滑装置
JPH06101754A (ja) * 1992-09-18 1994-04-12 Nissan Motor Co Ltd 変速比無限大無段変速機の変速制御装置
JPH07243513A (ja) * 1994-03-08 1995-09-19 Mazda Motor Corp 自動変速機の潤滑装置
JPH07259895A (ja) * 1994-03-23 1995-10-09 Nissan Diesel Motor Co Ltd 湿式クラッチ装置
JPH0828646A (ja) * 1994-07-13 1996-02-02 Mazda Motor Corp トロイダル型無段変速機

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3711688B2 (ja) トロイダル式無段変速機
JP3724175B2 (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP3716569B2 (ja) 無段変速機の制御装置
US8306709B2 (en) Engagement of selectable one-way clutch or mechanical diode by active engine speed control
US8478498B2 (en) Engine power management for a selectable one-way clutch or mechanical diode in automatic transmissions
JP3796916B2 (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP2002323124A (ja) 動力伝達装置用作動油温の制御装置
JPH10267117A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP3716568B2 (ja) トロイダル式無段変速機
JPH10267116A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JP2001165265A (ja) トロイダル型無段変速機
JP3716542B2 (ja) トロイダル式無段変速機
JPH10267118A (ja) トロイダル式無段変速機の制御装置
JPH10267098A (ja) トロイダル式無段変速機の潤滑装置
JP2000179674A (ja) パワートレインの制御装置
JP3713917B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP4378844B2 (ja) 車両駆動装置
JP2000179669A (ja) パワートレインの制御装置
JP3460676B2 (ja) 変速比無限大無段変速機の制御装置
JP3698931B2 (ja) トロイダル型無段変速機の油圧回路
JP2000179673A (ja) パワートレインの制御装置
JP2000179672A (ja) パワートレインの制御装置
JPH1163184A (ja) 無段変速機の制御装置
JP3157267B2 (ja) 車両の動力伝達装置
JP2000193076A (ja) パワ―トレインの制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040122

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20040122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050510

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050706

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050816

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060110