JPH1156345A - 水産廃棄物の培地への利用方法 - Google Patents

水産廃棄物の培地への利用方法

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JPH1156345A JP9222423A JP22242397A JPH1156345A JP H1156345 A JPH1156345 A JP H1156345A JP 9222423 A JP9222423 A JP 9222423A JP 22242397 A JP22242397 A JP 22242397A JP H1156345 A JPH1156345 A JP H1156345A
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Isao Yumoto
勲 湯本
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 水産廃棄物を栄養源として含む発酵又は
菌培養用の培地、及び該培地を用いて発酵又は菌培養を
行うことを特徴とする発酵又は菌培養方法。 【効果】 本発明によれば、高価な培地成分である酵母
エキスやペプトンなどに代わりに、莫大量で排出されて
いる魚類又は貝類の臓物などの水産廃棄物を発酵又は菌
培養の培地に活用できる。これにより、大規模な発酵法
や菌培養法を行うことを可能とし、同時に経済性の向上
に寄与することができる。また、廃棄物処理に貢献する
こともできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水産廃棄物を含む発酵
又は菌培養用の培地及びこの培地を用いた発酵や菌培養
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発酵法または菌培養法においては、菌の
活性を維持し、菌の増殖を促進させるために、無機塩
類、ビタミン類、タンパク質等の栄養源の補給が不可欠
である。このための処置として、従来は酵母エキスやペ
プトンなどが使用されてきた。しかし、これらには高価
であることや大規模に生産することが困難であることな
どの問題がある。そこで、大規模な培養に適した安価な
培地の開発が緊急の課題となっている。
【0003】
【発明が解決しようする課題】そこで、本発明の目的
は、大規模な培養に適した安価な培地を提供すること及
び該培地を用いた発酵又は菌培養方法を提供することに
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】大規模発酵や大規模菌培
養を経済的に行うためには、安価で大量に確保すること
のできる栄養源を新たに開発する必要がある。一方、廃
棄物処理に関して社会的課題となっているものの1つ
に、水産廃棄物がある。本発明者らは、この水産廃棄物
の栄養源としての活用について鋭意研究した結果、この
水産廃棄物を用いることにより、酵母エキスやペプトン
に勝る効果が得られることを見出し、本発明をするに至
った。
【0005】すなわち、本発明は、水産廃棄物を栄養源
として含む発酵又は菌培養用の培地である。この水産廃
棄物としては、魚貝類の臓物、イカゴロ、帆立貝ウロ、
または鮭、鰯若しくは秋刀魚の臓物等が挙げられる。
【0006】また、この水産廃棄物は酸、アルカリ若し
くは酵素による加水分解処理、粉末乾燥処理ならびに冷
凍乾燥処理等の前処理をしたものも用いられる。さら
に、本発明は上記いずれかの培地を用いて発酵又は菌培
養を行うことを特徴とする発酵又は菌培養方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、発酵や菌培養に用いる培地の栄養源成分と
して水産廃棄物を使用する。ここで、「水産廃棄物」と
は、水産物のうち不用なものとして廃棄されるものをい
い、「水産物」とは海、川又は湖中に産する魚貝類また
は藻類をいう。本発明に用いる水産廃棄物の例として
は、魚類または貝類の臓物が挙げられ、好ましくは、イ
カゴロ、帆立貝ウロ、または鮭、鰯若しくは秋刀魚など
の臓物であるが、特にこれらに限定するものではない。
【0008】本発明の培地は、水産廃棄物を水洗後、ス
ラリー化し、滅菌し、これと基質とを混合することによ
り調製される。また、本発明の培地は、この水産廃棄物
を酸、アルカリまたは酵素を用いて加水分解し、滅菌し
て、基質と混合しても調製される。これらの培地を発酵
または菌培養用の培地として使用する。ここで用いる基
質は、発酵または菌培養の目的または種類によって異な
るため、特に限定されない。また、必要に応じて他の培
地成分を添加することもできるが、これらの成分として
は公知のものが使用でき、特に限定しない。
【0009】この水産廃棄物は生のまま使用できるる
が、必要に応じて粉末乾燥や冷凍乾燥などの前処理を施
したものを使用してもよい。こうして調製した培地を使
用して、様々な菌を培養することができる。その目的は
菌自体の培養、あるいはそれら菌を培養して代謝生産物
の製造、発酵によるアミノ酸、有機酸等の生産のいずれ
でもよい。すなわち、それぞれの目的に応じて、所望の
菌を培養することができる。
【0010】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に具体的に
説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限
定されるものでない。 (実施例1)ラクトバチルス・アミロフィルス(Lactob
acillus amylophylus)JCM1125 株(NRRL B-4436 (DSM
20534) )を用いた、馬鈴薯液化澱粉質を原料とする直
接的なL-乳酸の発酵製造法(特許第2667641号)
に、イカゴロ、帆立貝ウロを栄養源として使用した。
【0011】発酵槽としては電磁誘導撹拌方式の20L
容ジャーファメンターを使用した。これに所定量の馬鈴
薯及び所定量の栄養源としてのイカゴロ若しくは帆立貝
ウロをミキサーを用いてスラリー化前処理して投入し、
所定基質濃度になるように水を加えて調製した。これに
所定量の乳酸と燐酸を触媒として添加して約130℃まで
昇温し、0.5〜2時間加熱を続けた。以上の操作によ
り、馬鈴薯澱粉質を液化(加水分解による水溶性化)す
ると同時に、イカゴロ若しくは帆立ウロの一部を加水分
解した。さらに、発酵原料の滅菌も同時に行った。30℃
まで冷却後、上記乳酸菌(ラクトバチルス・アミロフィ
ルス)を植菌し、生産されるL-乳酸をNaOHやアンモニア
水で中和してpHを6.5にコントロールしながら、4つの
試験区(a)〜(d) について乳酸発酵を行った。それぞれ
の試験区の培養条件を以下に示す。
【0012】(a) 培地として以下の成分を使用し、NaOH
を中和剤として発酵試験を行った。 馬鈴薯 : 6760 g (澱粉質約20%) Tween80 : 15 g H3PO4 : 4.2 g KOH : 2.41 g 酢酸ナトリウム : 7.5 g クエン酸アンモニウム:7.5 g MgSO4 ・ H2O : 3 g MnSO4 ・ xH2O : 0.75 g 水 : 13 L
【0013】(b) 培地として以下の成分を使用し、NaOH
を中和剤として発酵試験を行った。 馬鈴薯 : 6730 g (澱粉質約20%) ポリペプトン : 150 g 酵母エキス : 75 g Tween80 : 15 g H3PO4 : 4.2 g KOH : 2.41 g 酢酸ナトリウム : 7.5 g クエン酸アンモニウム:7.5 g MgSO4 ・ 7H2O : 3 g MnSO4 ・ xH2O : 0.75 g 水 : 13 L
【0014】(c) 培地として以下の成分を使用し、アン
モニア水を中和剤として発酵試験を行った。 馬鈴薯 : 6650 g (澱粉質約20%) 帆立ウロ : 1600 g (蛋白等固形分17.3%) Tween80 : 15 g H3PO4 : 4.2 g 酢酸ナトリウム : 7.5 g クエン酸アンモニウム:7.5 g MgSO4 ・ 7H2O : 3 g MnSO4 ・ xH2O : 0.75 g 水 : 13 L
【0015】(d) 培地として以下の成分を使用し、アン
モニア水を中和剤として発酵試験を行った。 馬鈴薯 : 4200 g (澱粉質約14% ) イカゴロ : 500 g (蛋白等固形分25.8%) Tween80 : 7.5 g H3PO4 : 3.5 g 水 : 4 L 以上の条件による発酵試験の結果を図1に示す。
【0016】(a) は無機塩のみを培地成分として用
いた場合である。馬鈴薯の乳酸発酵は進むが、発酵速度
は極めて遅く、発酵開始後約360時間経過時において
乳酸濃度48g/Lという低い値を示した。乳酸収率も約
63%と低く、好ましい結果ではなかった。これに対し
て、培地成分として一般的に使用されているポリペプト
ンと酵母エキスを添加した発酵試験では、(b) に示すよ
うに、発酵は速やかに進行し、約170時間経過時にお
いて乳酸濃度は約62g/L に達した。乳酸収率も約87
%という値を示し、良好な結果が得られた。以上の結果
から、ポリペプトンや酵母エキスは本発酵を促進させる
ために不可欠な栄養源であることが確かめられた。
【0017】このポリペプトンや酵母エキスに代わる培
地成分として、水産廃棄物を使用した結果が(c), (d)で
ある。(c) すなわち帆立貝ウロを培地として使用した場
合には、(b) 培地よりもさらに速やかに発酵が進み、発
酵開始後約150時間経過時において乳酸濃度約67g/
L 、乳酸収率約94%という高い値を示し、さらに良好
な結果が得られた。また、(d) すなわちイカゴロを培地
として使用した場合には、無機塩の添加を抑えたにも拘
わらず、さらに速やかに発酵が進行し、発酵開始後約7
8時間経過時において乳酸濃度約61g/L という値を得
た。乳酸収率は約84%であり、ほぼ満足できる結果が
得られた。
【0018】以上の試験結果が示すように、帆立貝ウロ
やイカゴロなどの水産廃棄物は、一般的な培地成分であ
るポリペプトンや酵母エキスに匹敵する、あるいは勝る
効果を有する培地成分である。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、高価な培地成分である
酵母エキスやペプトンなどの代わりに、莫大量で排出さ
れている魚類又は貝類の臓物などの水産廃棄物を発酵又
は菌培養の培地に活用できる。これにより、大規模な発
酵法や菌培養法を行うことを可能とし、同時に経済性の
向上に寄与することができる。また、廃棄物処理に貢献
することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】馬鈴薯液化澱粉質の直接L-乳酸発酵における培
地の比較を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 重信 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 横田 祐司 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 湯本 勲 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 日下部 哲朗 北海道札幌市中央区南1条西6丁目16 株 式会社セテック内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水産廃棄物を栄養源として含む発酵又は
    菌培養用の培地。
  2. 【請求項2】 水産廃棄物が魚貝類の臓物である、請求
    項1記載の培地。
  3. 【請求項3】 水産廃棄物がイカゴロ、帆立貝ウロ、ま
    たは鮭、鰯若しくは秋刀魚の臓物からなる群より選ばれ
    る少なくとも1種以上のものである、請求項1記載の培
    地。
  4. 【請求項4】 水産廃棄物がそれを前処理したものであ
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の培
    地。
  5. 【請求項5】 前処理が、酸、アルカリ若しくは酵素に
    よる加水分解処理、粉末乾燥処理ならびに冷凍乾燥処理
    からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかの項記載の培
    地を用いて発酵又は菌培養を行うことを特徴とする発酵
    又は菌培養方法。
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