【発明の詳細な説明】
ポリフルオロアルキルトリプトファントリペプチド
トロンビン阻害剤発明の背景
抗凝固剤は、例えば急性深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症、四肢の急性動脈塞栓
化、心筋梗塞、発作、再狭窄および播種性血管内凝固の薬理学的治療における有
用な治療剤である。抗凝固剤の予防的投与は、リウマチ性または動脈硬化心疾患
の患者の塞栓症の再発を予防し、手術でのある血栓塞栓併発症を予防するものと
信じられる。抗凝固剤の投与は、また、冠状動脈および脳血管疾患の治療に適用
される。特に心筋および脳に供給されている動脈における動脈血栓症は、死亡の
主要な原因である。
血栓症の疾患を治療および予防するために現在使用されている方法は、トロン
ビン活性またはトロンビン形成を阻害し、結果として血餅形成を予防することか
らなる。トリペプチド(D)-Phe-Pro-Argがトロンビン接触部位阻害剤であること
は、当該技術において知られている。さらに、米国特許第5,391,705号は、トロ
ンビンおよびトリプシンの両方を阻害するポリ弗素化トリペプチドを記載してい
る。同様に、PCT特許出願公開WO 94/25051は、アルギニンがアミノシクロヘキ
シル部分により置換されたトロンビン阻害剤を記載している。しかしながら、こ
れらの文献記載の技術は、トリプトファンを酵素認識部位のP1位置におけるアル
ギニンの代わりに使用した場合に、トリペプチドが抗トロンビン活性を保持する
ということを示唆していない。
本発明者等は、トリプトファンを既知のペンタフルオロエチル置換されたトリ
ペプチドのP1位置におけるアルギニンまたはアルギニンの誘導体の代わりに使用
した場合に、抗トロンビン活性が観察されるだけでなく、他
のプロテアーゼ、例えばトリプシンに比較してトロンビンに対して高度に選択的
である阻害剤が得られるということを発見した。この新規な級の化合物は、すで
に知られているトロンビン阻害剤に代わるまたは補助的な有用な治療剤であり、
そして貯蔵された全血液の凝固の阻止および試験または貯蔵に対する他の生物学
的試料における凝固の阻止に有用である。発明の要約
本発明は、冠状動脈および脳血管疾患、深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症、発作
(血栓症または塞栓症源の)、心筋梗塞、不安定または難治性アンギナ、血管形
成術後の冠状動脈血栓症、再狭窄の治療または予防、貯蔵した全血液の凝固の予
防などに有用な、式
または
〔式中、
Aは、フェニルまたはシクロヘキシルであり;
Bは、式
の基であり;
Xは、-CF3、-CF2CF3、-CF2(CH2)tCH3、-CF2(CH2)tCOOR1、-CF2(CH2)tCONHR1
、-CF2(CH2)tCH2OR1または-CF2(CH2)vCH=CH2であり;
Rは、Hまたは-CH3であり;
R1は、HまたはC1-C6アルキルであり;
nは、0または1であり;
tは、整数2、3または4であり;
vは、整数1、2または3である〕の新規な化合物またはその立体異性体また
は混合物、水和物または医薬的に許容し得る塩;およびトロンビン阻害剤として
のこれらの化合物の使用に関するものである。
発明の詳細な説明
本明細書において使用される
ない結合を意味する。
“C1-C6アルキル”なる用語は、1〜6個の炭素原子から構成された直鎖状、
分枝鎖状または環状の配置の飽和ヒドロカルビル基を意味する。メ
チル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第2ブ
チル、第3ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシルなどが、この
用語の範囲に包含される。
“立体異性体”なる用語は、空間における原子の配向においてのみ異なるすべ
ての異性体に対する一般的用語である。それは、鏡像異性体(エナンチオマー)
、幾何学的(シス/トランス)異性体、および相互に鏡像でない1個より多くの
キラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を包含する。
“水和物”なる用語は、本発明の化合物のケトンがジヒドロキシメチレン基と
して存在することができるということを意味する。
“医薬的に許容し得る塩”なる表現は、式(I)または(IA)の化合物のす
べての非毒性の有機または無機酸塩に適用すべく意図するものである。適当な塩
を形成する無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸および燐酸並びにオルト燐
酸一水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムのような酸性金属塩が含まれる。適
当な塩を形成する有機酸の例には、モノ、ジおよびトリカルボン酸が含まれる。
このような酸の例は、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、グリコール酸、乳酸、ピ
ルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、
クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒ
ドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香
酸、およびスルホン酸、例えばメタンスルホン酸および2−ヒドロキシエタンス
ルホン酸である。このような塩は、水和形態または実質的に無水の形態で存在す
ることができる。
表1に記載したようなアミノ酸並びにアミノおよびカルボキシ末端基の次の略
号を、本明細書を通じて使用する。
グリシンを除いた天然アミノ酸は、キラル炭素原子を含有する。特にことわら
ない限り、示したように、式IにおけるP3部分、例えばPhe、Cha、PhgまたはChg
部分がD−配置にあることが好ましいということを除いて、好ましい化合物は、
L−配置の光学的に活性なアミノ酸である。
式(I)および(IA)の化合物に関して、P1−α−アミノ酸残基(トリプトファ
ン)は、D−もしくはL−配置またはその混合物であることができ、そしてP2−
α−アミノ酸残基(プロリン)は、好ましくはL−配置にある。同様に、P3部分
のα−アミノ酸残基(すなわち、フェニルアラニン、シクロヘキシルアラニンな
ど)は、好ましくはD−配置にある。好ましい残基はPheまたはChaであり、そし
てもっとも好ましい置換分は、Pheである。式IAの化合物の場合において、P3
部分(置換分“B”)は、“TIC”誘導体または“TIC様”誘導体と称されるもの
である(“TIC”なる表現は、テトラヒドロイソキノリンカルボン酸から派生す
る)。このような場合において、P3窒素原子およびP3−α−炭素で形成された二
環式TIC部分は、式
である。これらの式において、それぞれ、(2a)および(2b)は、1,2,3,4−テトラ
ヒドロイソキノリン部分を示し、(2′a)および(2′b)は、1,2,3,4−デカヒドロ
イソキノリン部分を示し、そして(2c)および(2′c)は、2,3−ジヒドロ−1H−
イソインドリルおよびオクタヒドロ−1H−イソイン
ドリル部分を示す。便宜上、以下においては、これらの部分もまた’“TIC様変
性”と称する。
一般に、式(I)および(IA)の化合物は、当該技術において知られている標準
化学反応を使用して製造することができる。例えば、Xが-CF2CF3である式(I
)の化合物は、スキームAに示したようにして製造することができる。スキーム
Aにおいて使用された出発物質、試薬、技術および操作は、公知でありそして当
該技術に精通する者に知られている。
スキームA
スキームAは、Xが-CF2CF3であり、Aおよびnが上述した通りでありそしてP
gがN−保護基である式(I)の化合物を製造する一般的合成操作を示す。N−
保護基は、第3ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、
第3ブチルジメチルシリル(TBOMS)、第3ブチルジフェニルシリル(TBDPS)など
を包含する適当な保護基を意味する。第3ブチルオキシカルボニル(Boc)が好
ましい。
スキームAの工程aにおいては、保護されたアミノ酸エステル3を、保護され
たペンタフルオロエチルケトン4に変換する。この場合、一緒に副生成物5が形
成される。例えば、保護されたアミノ酸エステル3を、P.G.GassmanおよびN.J.
O'Reilly,J.Org.Chem.52,2481-2490(1987)によって記載されているように
沃化ペンタフルオロエチルおよびメチルリチウム・臭化リチウム複合体から反応
系内で生じさせることのできるペンタフルオロエチルリチウム3〜6モル当量と
反応させる。この反応は、適当な無水の溶剤、例えばジエチルエーテル、または
無水の溶剤混合物、例えばジエチルエーテル−トルエン(9:1)中において都
合よく実施することができる。反応は、−30℃〜−80℃の温度で実施される。−
50℃〜−65℃の温度が好ましい。保護されたペンタフルオロエチルケトン4は、
当該技術においてよく知られているように、抽出および蒸発によって反応帯域か
ら単離することができる。生成物は、当該技術においてよく知られている技術、
例えばクロマトグラフィーおよび再結晶によって精製することができる。
このようにする代わりに、保護されたペンタフルオロエチルケトン4は、M.R
.Angelastro,J.P.Burkhart,P.Bey,N.P.Peet,Tetrahedron Letters,33
,3265-3268(1992)に記載されている型の反応を使用して、3の保護されたヒ
ドロキサメート類似体を変換することによって製造する
ことができる。
スキームAの工程bにおいては、T.H.Green“Protection Groups in Organic
Synthesis”,John Wiley and Sons,Chapter 7(1981)に記載されているよう
な当該技術において公知の条件下で4のアミノ酸側鎖官能基を保護したまま、保
護されたペンタフルオロエチルケトン4のα−アミン部分を脱保護して、α−ア
ミン脱保護されたペンタフルオロエチルケトン6を得る。例えば、ビス−Boc保
護されたペンタフルオロエチルケトン4を、適当なエーテル性溶剤、例えばジオ
キサンなどの存在下において、適当な酸、例えば塩化水素と接触させて、α−ア
ミン脱保護されたペンタフルオロエチルケトン6を得ることができる。生成物6
は、当該技術において公知の技術によって、単離および精製することができる。
スキームAの工程cにおいては、α−アミン脱保護されたペンタフルオロエチ
ルケトン6を、標準ペプチドカップリング技術によって、式
(式中、置換分はすべて上述した通りである)の化合物とカップリングさせる。
例えば、通常のペプチド合成において、記載された方法を使用してN−末端残基
のα−アミンを脱保護しそしてペプチド結合により次の適当にN−保護されたア
ミノ酸とカップリングさせることによってペプチドを延長する。この脱保護およ
びカップリング操作を、所望の配列が得られるまで反復する。このカップリング
は、元来Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,1963,85,2149-2154に記載されてい
る方法により、段階的様式で、またはフラグメントの縮合または両方法の組み合
わせによって、または固
相ペプチド合成によって、構成アミノ酸を使用して遂行することができる。上記
文献の開示を参照により本明細書に加入する。固相合成法を使用する場合は、C
−末端カルボン酸を不溶性担体(普通ポリスチレン)に結合させる。これらの不
溶性担体は、延長条件に対しては安定であるが後で容易に開裂することのできる
結合を形成する。このような担体の例は、クロロ−またはブロモメチル樹脂、ヒ
ドロキシメチル樹脂、およびアミノメチル樹脂である。これらの樹脂の多くは、
すでに組み込まれた所望のC−末端アミノ酸を有するものとして商業的に入手す
ることができる。
上記のほかに、ペプチド合成は、次の文献に記載されている。
StewartおよびYoung,“Solid Phase Peptide Synthesis”,2nd ed.,Pierce
Chemical Co.,Rockford,II(1984); Gross,Meienhofer,Udenfriend,Eds.,
“The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology”Vol.1,2,3,5および9、Acade
mic Press,New York,1980-1987; Bodanszky,“Peptide Chemistry: A Practi
cal Textbook”,Springer-Verlag,NewYork(1988);およびBodanszky等.“The
Practice of Peptide Synthesis",Springer-Verlag,New York(1984)。
これらの文献の開示は、参照により本明細書に加入する。
2個のアミノ酸の、アミノ酸とペプチドとの、または2個のペプチドフラグメ
ントの間のカップリングは、アジド法、混合炭酸−カルボン酸無水物(クロロギ
酸イソブチル)法、カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソ
プロピルカルボジイミドまたは水溶性カルボジイミド)法、活性エステル(p−
ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシ−スクシニックイミドエステル)法、
Woodward試薬K法、カルボニルジイミダゾール法、燐試薬、例えばBOP-C1、また
は酸化還元法のような標準カップリング操作を使用して実施することができる。
これらの方法の若干(特
にカルボジイミド法)は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを加えることによ
って強化することができる。これらのカップリング反応は、溶液(液相)または
固相技術を使用して遂行することができる。
構成アミノ酸の官能基は、一般に、望ましくない結合の形成を避けるために、
カップリング反応の間保護しなければならない。使用することのできる保護基は
、Greene,“Protective Groups in Organic Chemistry”,John Wiley & Sons
,New York(1981)および“The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology”,Vo
l.3,Academic Press,New York(1981)に記載されている。これらの文献の開示
は、参照により本明細書に加入する。
C−末端残基のα−カルボキシル基は、通常、開裂してカルボン酸を与えるこ
とのできるエステルによって保護される。使用することのできる保護基には、(
1)アルキルエステル、例えばメチルおよび第3ブチル、(2)アリールエステル
、例えばベンジルおよび置換ベンジル、または(3)おだやかな塩基処理またはお
だやかな還元手段によって開裂することのできるエステル、例えばトリクロロエ
チルおよびフェナシルエステルが含まれる。
ペプチド鎖を成長させるためにカップリングさせるそれぞれのアミノ酸のα−
アミノ基は、保護されなければならない。当該技術において既知の保護基を使用
することができる。これらの保護基の例には、(1)アシル型、例えばホルミル、
トリフルオロアセチル、フタロイルおよびp−トルエンスルホニル;(2)芳香族
カルバメート型、例えばベンジルオキシカルボニル(CbzまたはZ)および置換
されたベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニル)−1−メチルエトキシ
−カルボニル、および9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc);(3)
脂肪族カルバメート型、例えば第3ブチルオキシカルボニル(Boc)、エトキシカ
ルボニル、ジイソプロ
ピル−メトキシカルボニルおよびアリルオキシカルボニル;(4)環式アルキルカ
ルバメート型、例えばシクロペンチルオキシカルボニルおよびアダマンチルオキ
シカルボニル;(5)アルキル型、例えばトリフェニルメチルおよびベンジル;(
6)トリアルキルシラン、例えばトリメチルシラン;および(7)チオール含有型
、例えばフェニルチオカルボニルおよびジチアスクシノイルが含まれる。好まし
いα−アミノ保護基は、Boc、CbzまたはFmoc、好ましくはBocである。ペプチド
合成のために適当に保護された多くのアミノ酸誘導体が商業的に入手される。
新しく加えたアミノ酸残基のα−アミノ基保護基は、次のアミノ酸のカップリ
ングに先立って開裂される。このような保護基の開裂の条件は、Greene、“Prot
ective Groups in Organic Chemistry”,Chapter 7,John Wiley & Sons,New
York(1981)に記載されている。Boc基を使用する場合は、選択される方法は、正
味もしくはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸、またはジオキサンもしくは酢
酸エチル中のHClである。それから、得られたアンモニウム塩は、カップリング
に先立ってまたは反応系内において、水性緩衝剤またはジクロロメタンもしくは
ジメチルホルムアミド中の第3アミンのような塩基性溶液で中和する。Fmoc基を
使用する場合は、選択される試薬は、ジメチルホルムアミド中のピペリジンまた
は置換されたピペリジンであるが、何れの第2級アミンまたは塩基性水溶液も使
用することができる。脱保護は、0℃と室温との間の温度において実施される。
側鎖官能基を有するアミノ酸の何れも、ペプチドの製造の間、上述した基の何
れかを使用して保護しなければならない。当該技術に精通する者により理解され
るように、これらの側鎖官能基に対する適当な保護基の選定および使用は、ペプ
チド中のアミノ酸および他の保護基の存在に依存する。このような保護基の選定
は、これらがα−アミノ基の脱保護およびカップ
リング中除去されてはならないという点において重要である。
例えば、Bocがα−アミノ保護基として使用される場合は、Tyr、SerまたはThr
のようなアミノ酸のヒドロキシ含有側鎖を保護するために、ベンジル(Bn)エー
テルを使用することができる。
固相合成を使用する場合は、ペプチドは、通常、保護基の除去と同時的に樹脂
から開裂される。Boc保護スキームを合成に使用する場合は、0℃における硫化
ジメチル、アニソール、チオアニソールまたはp−クレゾールのような無水のHF
含有添加剤による処理が、樹脂からペプチドを開裂する好ましい方法である。ペ
プチドの開裂は、また、トリフルオロメタンスルホン酸/トリフルオロ酢酸混合
物のような他の酸試薬によって達成することもできる。Fmoc保護スキームを使用
する場合は、N−末端Fmoc基は、初期に記載した試薬で開裂される。他の保護基
およびペプチドは、トリフルオロ酢酸およびアニソールなどのような種々な添加
剤の溶液を使用して、樹脂から開裂される。
さらに詳しくは、スキームAの工程cにおいては、構造6aの適当に保護され
たジペプチドを、不活性雰囲気、例えば窒素下において、適当な有機溶剤に溶解
する。酢酸エチルが、このカップリング反応に対する好ましい溶剤である。それ
から、溶液を、適当なアミン1〜4当量で処理する。適当なアミンの例は、第3
級有機アミン、例えばトリ(低級アルキル)アミン、例えばトリエチルアミン、
または芳香族アミン、例えばピコリン、コリジンおよびピリジンである。ピリジ
ン、ピコリンまたはコリジンを使用する場合は、これらは高い過剰の量で使用す
ることができ、そしてそれ故に、また反応溶剤として使用することもできる。N
−メチルモルホリン(NMM)が、カップリング反応に対して特に適している。それ
から、溶液を約−20℃に冷却し、そしてクロロギ酸イソブチル1当量を加える。
反応混
合物を約10〜30分撹拌しそしてα−アミン脱保護されたペンタフルオロエチルケ
トン6の1〜1.1当量を反応混合物に加える。反応混合物を、約−20℃で30分〜
2時間撹拌し、それから室温に加温し、そして1〜3時間撹拌する。それから、
構造7のカップリングした生成物を単離し、そして当該技術において公知の技術
、例えば抽出技術およびフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。例え
ば、反応混合物を、適当な有機溶剤、例えば塩化メチレンでうすめ、水ですすぎ
、無水の硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮する。残留
物を、適当な溶離剤、例えば酢酸エチル/ヘキサンを使用してシリカゲル上でフ
ラッシュクロマトグラフィー処理することにより精製して、構造7のカップリン
グした生成物を得る。
スキームAの工程dにおいては、カップリングした生成物7上のα−アミン保
護基(Pg)およびP1アミノ酸側鎖官能基の保護基(Pg)を、T.W.Green,“Protect
ive Groups in Organic Synthesis”,Chapter 7,1981,John Wiley & Sons,In
c.によって記載されているような当該技術において公知の条件下で除去して、
脱保護されたトリペプチド8を得る。例えば、カップリング生成物7上の両方の
Pgが第3ブチルカルバメート(Boc)である場合は、化合物を、トリフルオロ酢酸
に溶解し、数分撹拌し、そしてそれから真空下で濃縮する。それから、残留物を
、Et2Oに溶解し、そしてヘキサンで沈殿させて脱保護されたトリペプチド8を得
る。
トリプトファン化合物を脱保護する方法は、Franzin等、J.Chem.Soc.,1699-
1700(1984)によって記載されているように、当該技術において公知である。
スキームAの工程eにおいては、脱保護されたトリペプチド8を、脱カルボキ
シル化反応にうけしめて式(I)の化合物を得る。例えば脱保護さ
れたトリペプチド8を、適当な塩素化炭化水素溶剤、例えば四塩化炭素、塩化エ
チレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2,4−トリクロロベンゼンまたはo−
ジクロロベンゼンに溶解し、そして脱カルボキシル化を完了するのに十分な時間
、例えば24〜72時間撹拌する。生成物(I)は、当該技術において公知の技術によ
って単離することができる。
さらに、XがX′(ここでX′は、-CF3、-CF2CF3、-CF2(CH2)tCH3、-CF2(CH2)t
C(O)NHR、-CF2(CH2)tCH2ORまたは-CF2(CH2)vCH=CH2である)本発明の化合物は、
1995年2月21日に発行された米国特許第5,391,705号に記載されているような既
知の操作と同様にして製造することができる。本質的に、式(I)および(IA
)の弗素化アルキルトリペプチドの合成は、重要な中間体として使用される必要
なポリフルオロアルキルケトンアミノ酸誘導体を与える2−フェニル−5(4H)−
オキサゾロンとトリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸またはジフルオ
ロペンテン酸(所望のX′部分に依存する)の無水物またはアシルハライドとの
変性Dakin-West反応に依存する。それから、さらなる反応は、式(I)および(
IA)の所望のペプチドへのこれらのアミノ酸類似体の変換を可能にする。Xが
-CF3、-CF2CF3、-CF2(CH2)tCH3、-CF2(CH2)tC(O)NHR、-CF2(CH2)tCH2ORまたは-C
F2(CH2)vCH=CH2である本発明の化合物を製造する一般的合成操作は、スキームB
に示す通りである。スキームBにおいて、特にことわらない限りは、出発物質お
よび試薬は、公知でありそして当該技術に精通する者に知られている。
スキームB
スキームB(続き)
スキームBは、X′が-CF3、-CF2CF3、-CF2(CH2)tCH3、-CF2(CH2)、C(O)NHR1、
-CF2(CH2)tCH2OR1または-CF2(CH2)vCH=CH2である場合の本発明の化合物を製造す
る一般的合成操作を示す。スキームBに記載された置換分は、すべて、特にこと
わらない限りは、上述した通りである。
スキームBの工程aにおいては、δ−K−トリプトファン9を、公知のそして
当該技術に精通する者により知られている標準N−保護技術によってNα−保護
して、Nα−K−Nδ−ベンジルオキシカルボニル−トリプトファン10を得る。K
は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、第3ブチルジメチルシリル(TBDMS)、第3ブ
チルジフェニルシリル(TBDPS)などを包含する適当な保護基を意味する。カル
ボベンジルオキシ(Cbz)が好ましい。
例えば、δ−Cbz−L−トリプトファン9を、塩化ベンゾイルおよび標準ショ
ッテン−バウマン条件を使用してNα−保護する。特に、反応温度を約0℃〜5
°の間に維持しながら、ジエチルエーテルのようなエーテル溶剤中の塩化ベンゾ
イルの溶液を、水酸化ナトリウムと同時に約0.5〜1時間にわたって、水酸化ナ
トリウム中のδ−Cbz−L−トリプトファン9の溶液に加える。それから、反応
混合物を、室温で約4時間撹拌し、ジエチルエーテルのようなエーテル溶剤で抽
出し、そして濃塩酸溶液を使用して約pH1に酸性化する。それから、さらに水を
加え、そして混合物を約48時間放置する。固体を集め、当該技術に精通する者に
よく知られている技術によって精製して、Nα−ベンゾイル−Nδ−ベンジルオキ
シカルボニルトリプトファン10を得る。
スキームBの工程bにおいては、Nα−ベンゾイル−Nδ−ベンジルオキシカル
ボニルトリプトファン10を環化して2−フェニル−5−(4H)−オキサゾロン11を
得る。
例えば、塩化メチレンのような適当な有機溶剤中のNα−ベンゾイル−Nδ−ベ
ンジルオキシカルボニルトリプトファン10のスラリーを、ジシクロヘキシルカル
ボジイミド約0.1〜1.0モル当量と接触させる。それから、反応混合物を、約2〜
5時間撹拌し、そして得られる沈澱したジシクロヘキシル尿素副生成物を濾過し
、適当な有機溶剤、例えば塩化メチレンで洗浄する。それから、濾液を濃縮し、
適当なエーテル溶剤、例えばジエチルエーテルでうすめ、そして場合によっては
方法を反復する。それから、環化生成物2−フェニル−5−(4H)−オキサゾロン
11を単離し、そして当該技術に精通する者によく知られている技術、例えば沈澱
および結晶化によって精製する。
スキームBの工程cにおいては、2−フェニル−5−(4H)−オキサゾロン11を
、標準アシル化技術によってアシル化して、構造12の相当するO−アシル化合物
を得る。
例えば、不活性雰囲気、好ましくは窒素下で約−10℃〜10℃の温度範囲で、適
当な第3級アミン、例えばトリエチルアミンを、適当な有機溶剤、例えばテトラ
ヒドロフランまたはテトラヒドロフラン/ヘプタン混合物中の2−フェニル−5
−(4H)−オキサゾロン11の溶液に加える。反応温度を約−10℃〜10℃の間に維持
しながら、適当な有機溶剤、例えばヘプタン中の適当なハロゲン化アシルまたは
相当する適当な無水物、例えばα,α−ジフルオロペンテノイルクロライド、ト
リフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物などの溶液を、反応
混合物に徐々に加える。約30〜60分後に、反応混合物を室温に加温し、そしてさ
らに約30分撹拌する。トリエチルアミン塩酸塩を、当該技術において公知の抽出
技術、例えば濾過によって除去し、そして濾液を濃縮して構造12の相当するO−
アシル化合物を得る。
スキームBの工程dにおいては、構造12の相当するO−アシル化合物を、場合
によってはアシル化触媒と反応させて、構造13の相当するC−アシル化合物を得
る。
例えば、構造12の相当するO−アシル化合物を、適当な有機溶剤、例えばテト
ラヒドロフランに溶解し、そしてアシル化触媒例えばジアルキルアミノピリジン
、好ましくは4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と接触させる。それから、反
応混合物を、室温で約2〜4時間撹拌して構造13のC−アシル化合物を得、これ
を、さらに単離または精製することなしに使用する。
スキームBの工程eにおいては、構造13のC−アシル化合物を、脱カルボキシ
ル化剤、例えば蓚酸、コハク酸など(蓚酸が好ましい)で脱カルボキシル化して
、ケトンおよびその水和形態の混合物として構造14の所望の脱カルボキシル化弗
素化化合物を得る。
例えば、テトラヒドロフランのような適当な有機溶剤中の乾燥した蓚酸1〜5
モル当量を含有する溶液を、構造13のC−アシル化合物を含有するスキームBの
工程dからの反応混合物に加え、そして16〜32時間撹拌する。それから、反応混
合物を濃縮し、適当な酸、例えば塩酸で処理し、そして酢酸エチルで抽出する。
層を分離し、そして有機層を適当な塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリ
ウムまたは水酸化ナトリウムで洗浄し、場合によってはブラインで洗浄し、適当
な乾燥剤、例えば硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濃縮する。それから、脱カ
ルボキシル化生成物14を単離し、そして当該技術に精通する者によく知られてい
る技術、例えば沈澱および結晶化によって精製する。
スキームBの工程fにおいては、構造14の脱カルボキシル化弗素化生成物を、
適当な還元剤と接触させて構造15のアルコールを得る。
当該技術において公知であるように、この還元で、立体異性体の混合物である
誘導体が得られる。
適当な還元剤は、当該技術において公知であり、そして限定するものではない
が、リチウムトリ−第3ブチルオキシアルミノ水素化物、水素化硼素カリウム、
リチウムトリ第2ブチル硼水素化物、水素化硼素リチウム、水素化硼素ナトリウ
ムおよびリチウムトリエチル硼水素化物が含まれる。水素化硼素ナトリウムが好
ましい。
例えば、構造14の脱カルボキシル化弗素化生成物を、モル過剰の適当な還元剤
と接触させる。反応は、適当な溶剤中で実施される。水素化物還元に対する適当
な溶剤は、当該技術において公知であり、例えばトルエン、ジエチルエーテル、
メチル第3ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびテトラヒドロフ
ラン/エタノール混合物である。反応は、−78℃〜約10℃の範囲の温度で実施さ
れる。還元生成物である構造15のアルコールは、抽出によって反応帯域から単離
し、そしてそれから、当該技術において公知の方法、例えばクロマトグラフィー
および再結晶により精製することができる。
スキームBの工程gにおいては、構造15のアルコールを適当な脱保護剤、例え
ば濃塩酸と接触させ、約100℃〜110℃に加熱して、構造16の脱保護されたアルコ
ールを得る。
例えば、6N水性塩酸中の構造15のアルコールの溶液を、約15〜20時間加熱還
流(約110℃)する。それから、反応混合物を冷却し、そして安息香酸結晶を濾過
により除去する。濾液をジエチルエーテルで抽出し、そして層を分離する。水性
層を活性炭で処理し加熱する。それから、それを濾過し、濃縮し、そして乾燥し
て、構造16の脱保護されたアルコール生成物を得る。
Xが-CF2(CH2)2CH3である化合物を製造することが望まれる特定の場合におい
ては、構造12の化合物を製造するために使用される酸無水物またはハロゲン化ア
シル反応剤は、部分-CF2CH2CH=CH2を有する。したがって、構造15のアルコール
も、また部分-CF2CH2CH=CH2を有する。この部分を、脱保護に先立ってアルキレ
ン還元剤と接触させて構造16の脱保護されたアルコールを得ることができる。適
当なアルキレン還元剤には、ジボラン、ジイソアルキルボラン、ボラン/第3級
アミン複合体および水素化触媒の存在下における水素が含まれる。もっとも好ま
しいアルキレン還元剤は、水素添加触媒の存在下における水素である。水素添加
触媒の例は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびニッケルである。
微細に分散した固体としての、または炭素またはアルミナのような不活性支持体
上に吸着した金属、およびこれらの金属のある可溶性複合体が、触媒活性を示す
。
例えば、Xが-CF2CH2CH=CH2である構造15のアルコールを、適当なアルコール
、例えばイソプロパノール、および適当な酸、例えば塩酸に溶解する。それから
、この溶液を、アルキレン還元剤、例えば不活性炭素支持体上に吸着されたパラ
ジウムジヒドロキシドで処理し、そして水素ガス(40〜60psi)下で約20〜30時
間を振盪する。反応混合物を濾過し、濃縮して、Nα−ベンゾイル−ジフルオロ
アルコール塩酸塩を得る。それから、Nα−ベンゾイル−ジフルオロアルコール
塩酸塩を、適当な脱保護剤、例えば塩酸と触媒させ、そして加熱還流する。反応
混合物を室温に冷却し、濾過し、そして濾液をジエチルエーテルで抽出し、層を
分離する。水性層を活性炭で処理し、加熱し、濾過し、そして濃縮して、構造16
の適当な脱保護されたアルコールを得る。
R3が-CF2(CH2)tCH3(式中、tは整数3または4である)である特定の
場合においては、相当するオレフィン(例えば-CF2CH2=CH-CH3またはCF2CH2CH=CH
CH2CH3)を還元する。これらの後者の型のオレフィンを製造するためには、R.W.
Lang等 Tetrahedron Letters,29,3291(1988)により記載された方法によって、
出発ハロゲン化アシルまたは無水物を製造することができる。
スキームBの工程hにおいては、上記のスキームAの工程cに記載したような
標準ペプチドカップリング技術によって、構造16の適当な脱保護されたアルコー
ルを6aの化合物とカップリングさせて、構造17のトリペプチドアルコール17を
得る。
スキームBの工程iにおいては、構造17のトリペプチドアルコールを、適当な
酸化剤と反応させて、構造18のN−末端保護されたトリペプチドを得る。
例えば、構造17の適当なトリペプチドアルコールを、公知のそして当該技術に
精通する者に知られている標準酸化技術を使用して、適当な酸化剤、例えばDess
-Martinパーアイオジナン、無水クロム酸ピリジン複合体、ピリジニウムジクロ
メート、またはジメチルスルホキシド複合体、例えばDMSO-(COCl)2(Swern条件)
で酸化して、構造18のN−末端保護されたトリペプチドを得る。標準酸化技術は
、Swern酸化操作、Synthesis,165(1981); Dess-Martinパーアイオジナンの使用
、Dess Martin,J .Org.Chem.48,4155(1983); およびJones酸化操作(米国特許
第5,391,705号参照)のような操作を包含する。Swern酸化操作がもっとも好まし
い。例えば、塩化オキサリル約1.5当量を、適当な無水の有機溶剤、例えば塩化
メチレンに溶解し、そして約−55℃〜−78℃の温度に冷却する。この溶液に、温
度を−55℃またはそれ以下に維持しながら、メチルスルホキシド約3〜8当量を
滴加する。構造17のトリペプチドアルコールの相当量を、適当な量
の無水の有機溶剤、例えば塩化メチレンに溶解し、そして撹拌しながら、徐々に
反応混合物に加える。添加完了後に、反応混合物を、約−55℃〜−78℃の温度で
約30分間撹拌し、過剰な適当な有機塩基、例えばトリエチルアミンまたはN−メ
チルモルホリンを加え、そして反応混合物を室温に加温する。それから、酸化生
成物である構造18のN−末端保護されたトリペプチドを単離し、そして当該技術
に精通する者によく知られている技術、例えば抽出技術、沈澱、結晶化およびク
ロマトグラフィーによって精製する。
スキームBの工程jにおいては、構造18のN−末端保護されたトリペプチドを
、スキームBの工程gに記載した操作によって脱保護して、式(I)の所望の化合
物を得る。
Xが-CF2(CH2)tCOOR1である特定の場合においては、必要な中間体(所望のX部
分が-CF2(CH2)tCOOR1である以外、構造16の化合物に相当する)を製造する操作は
、スキームCの反応を利用することができる。
スキームC
中間体19は、D.Ranganathan等、J .Chem.Res.Synop.,3,78(1983)およびD
.Ranganathan等、J .Org.Chem.45,1185(1980)によって開示されている。反
応剤20は、Reformatsky条件下でブロモジフルオロエチルアセテート〔R.H.Abel
esおよびC.P.Govardham,Archives of Biochemistry and Biophysics,280,13
7(1990)参照〕を適当なアルデヒドと反応させて相当するジフルオロアルコール
を得ることによって製造することができる。それから、ジフルオロアルコール20
および構造19の中間体を、当該技術に
おいて公知の技術および条件を使用して、テトラヒドロフランのような適当な有
機溶剤中で炭酸カリウムを使用して縮合させて、構造21のニトロアルコール中間
体を形成させる。それから、構造21のニトロアルコール中間体を、触媒水素添加
によって還元して、構造22の中間体を得る。それから構造22の中間体は構造16に
とり込まれ、スキームBの工程h、iおよびjに記載したように処理して、Xが
-CF2(CH2)tCOOR1である式(I)の所望の化合物を得る。
このようにする代わりに、Sham等、Biochem .and Biophys.Res.Comm.175,9
14(1991)および米国特許第5,391,705号によって記載されているような標準のそ
して公知の操作および技術によって、構造19および20の化合物に対してメシル化
、除去および水素添加反応を行って、構造22の中間体を得ることができる。
Xが-CF2(CH2)2CH3である場合の構造12のO−アシル化合物の製造に対して必
要なα,α−ジフルオロペンテノイルクロライド中間体12aは、米国特許第5,391,
705号において説明されている、およびスキームDに記載されているようにして
得ることができる。この工程に使用する試薬、出発物質および技術は、当該技術
に精通する者が容易に利用できるものである。
スキームD
スキームDの工程aにおいては、2,2−ジフルオロ−4−ペンテン酸12cは、当
該技術において公知の技術および操作、例えば塩基加水分解によって、α,α−
ジフルオロペンテン酸エチル12b(1995年2月21日発行の米国特許第5,391,705号
)の加水分解によって製造される。
例えば、水酸化リチウムのような適当な塩基約1.0〜1.5モル当量を、約−10℃
〜10℃の温度で、水中のα,α−ジフルオロペンテン酸エチル(2,2−ジフルオロ
−4−ペンテン酸エチルとしても知られている)12b(1989年7月11日発行の米
国特許第4,847,401号)の溶液に加える。反応混合物を、約2〜4時間室温に加
温し、そしてそれから約40℃〜55℃でさらに2〜4時間加熱する。エタノールお
よび水を、反応混合物から除去し、そして2,2−ジフルオロ−4−ペンテン酸12c
を、抽出によって反応帯域から単離し、それから当該技術において公知の方法に
よって精製することができる。
スキームDの工程bにおいては、2,2−ジフルオロ−4−ペンテン酸12c
を、適当な塩素化剤と接触させて、2,2−ジフルオロ−4−ペンテノイルクロラ
イド12aを得る。
適当な塩素化剤は、ヒドロキシル基をクロロ基に変換し出発物質または生成物
を分解しないものである。適当な塩素化剤には、三塩化燐、塩化チオニル、塩化
オキサリルなどが含まれる。
例えば、2,2−ジフルオロ−4−ペンテン酸12cを、適当な塩素化剤約1.0〜1.5
モル当量と接触させる。反応は適当な溶剤、例えばジクロロメタン、トルエンま
たはジメチルホルムアミド中で実施される。反応は、約20℃〜35℃の温度で実施
され、そして一般に約4〜24時間を必要とする。生成物2,2−ジフルオロ−4−
ペンテノイルクロライド12aは、分別蒸溜によって単離し、そして当該技術にお
いて公知の技術、例えばクロマトグラフィーによって精製することができる。
Xが-CF2CF3でありそして残りの置換分のすべてが上述した通りである式(IA
)の化合物を製造するために、スキームEを使用することができる。
スキームE
スキームEは、Xが-CF2CF3でありそして残りの置換分のすべてが上述した通
りである式(IA)の化合物を製造する一般的合成操作を示す。
スキームEの工程aにおいては、スキームAにおいて製造されたα−アミン脱
保護されたペンタフルオロエチルケトン6を、Pg-T-C(O)Pro-OH(式中、Tは上述
したような、そして(2a)、(2b)、(2c)、(2′a)、(2′b)および(2′c)として示し
たようなTIC様部分である)とカップリングさせて、カップリングした生成物23を
形成させる。TIC様部分は、1995年2月21日に発行された米国特許第5,391,705号
およびShuman等、J .Med.Chem.36,314-319(1993)に開示されている。該特許お
よび該文献は、参照によって本明細書中に加入する。カップリング反応は、スキ
ームAの工程cにおいて上述した操作と同様にして実施される。
スキームEの工程bにおいては、カップリングした生成物23を、スキームAの
工程dおよびeにおいて上述したような当該技術において公知の条件下で、脱保
護または固相から開裂して式(IA)のトリペプチドを得る。
置換分のすべてが上述した通りである式(IA)の化合物を製造するために、ス
キームFを使用することができる。
スキームF
スキームFは、置換分のすべてが上述した通りである式(IA)の化合物を製造
する操作を示す。
スキームFの工程aにおいては、スキームBにおいて製造されたα−アミン脱
保護されたアルコール16を、Pg-T-C(O)Pro-OH(式中、Tは上述したそして(2a)
、(2b)、(2c)、(2′a)、(2′b)および(2′c)として示したようなTIC様部分であ
る)とカップリングさせて、カップリングした生成物24を形成させる。カップリ
ング反応は、スキームAの工程cにおいて上述した操作と同様にして実施される
。
スキームFの工程bにおいては、カップリングした生成物24を、スキームBの
工程iに記載した操作によって酸化して、構造25のN−保護された
トリペプチドを得る。
スキームFの工程cにおいては、構造25のN−保護されたトリペプチドを、ス
キームBの工程jに記載した操作によって脱保護して、式(IA)の所望の化合物
を得る。
N−メチル化α−アミノ酸は、スキームGおよび一般にPitzele、B.S.等、J . Med.Chem
.37,888-896(1994)に記載されたようにして製造することができる。
これらの文献は、参照により本明細書中に加入する。とくにことわらない限り、
置換分はすべて上述した通りである。試薬および出発物質は、当該技術に精通す
る者によって容易に入手することができる。
スキームG
スキームGの工程aにおいては、構造26(式中、Wは適当なα−カルボキシル
保護基、例えばメチルエステルまたは固相樹脂である)のα−アミノ酸を、スキ
ームAの工程cにおいて記載した操作と同様な方法で、Pgとカップリングさせて
、カップリングした生成物を得る。
スキームGの工程bにおいては、カップリングした生成物を、当該技術におい
て公知の条件下で、脱保護または固相から開裂して、構造27の酸を得る。例えば
Wが構造26上のメチルまたはエチル基である場合は、化合物
を適当な有機溶剤、例えばエタノールに溶解し、そしてほぼ等容量の水で処理す
る。この溶液に、撹拌しながら水酸化リチウム1〜2当量を加え、そして反応混
合物を1〜6時間撹拌する。それから得られた酸を単離し、そして当該技術にお
いて公知の技術によって精製する。例えば、有機溶剤を真空下で除去し、そして
残った水溶液を稀塩酸で酸性にする。それから、水性相を適当な有機溶剤、例え
ば酢酸エチルで抽出し、そして合した有機抽出液を、無水の硫酸マグネシウム上
で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮する。それから、残留物を適当な溶離剤
、例えばメタノール/クロロホルムを使用してシリカゲル上でフラッシュクロマ
トグラフィー処理して精製し、構造27の酸を得る。
スキームGの工程cにおいては、酸27をN−メチル化して、構造28のN−保護
されたN−メチル化化合物を得る。例えば、酸27を適当な有機溶剤、例えばテト
ラヒドロフランに溶解し、約0℃に冷却し、そして過剰の沃化メチルで処理する
。それから、水素化ナトリウム1〜3当量を溶液に加え、これを0℃で約10分間
撹拌し、それから室温に加温し、そして24〜48時間撹拌する。それから生成物を
、当該技術においてよく知られている技術、例えば抽出方法によって単離する。
例えば、稀水性塩酸を加え、そして反応混合物を適当な有機溶剤、例えば酢酸エ
チルで抽出する。それから、有機抽出液を合し、5%チオ硫酸ナトリウム、ブラ
インで洗浄し、無水の硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルの床を通して濾
過し、そして真空下で濃縮して、N−保護されN−メチル化された化合物28を得
る。
このようにする代わりに、N−保護されN−メチル化された化合物28は、スキ
ームGの工程dおよびeに記載した操作によって、構造27の酸から製造すること
ができる。
スキームGの工程dにおいては、酸27を環化して構造27aによって記載
されるオキサゾリジンを得る。例えば、酸27を適当な有機溶剤、例えばベンゼン
に溶解し、そして過剰のパラホルムアルデヒドで処理する。これにp−トルエン
スルホン酸約0.2〜0.4当量を加え、そして反応混合物をジェーン−スタークトラ
ップを使用して水を連続的に除去しながら、約23時間加熱還流する。それから反
応混合物を室温に冷却し、そして生成物を単離し、当該技術において公知の技術
によって精製する。例えば、冷却した反応混合物を真空下で濃縮し、残留物を適
当な有機溶剤、例えば酢酸エチルにとり、飽和重炭酸ナトリウムですすぎ、有機
相を無水の硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮する。そ
れから残留物を適当な溶離剤、例えば酢酸エチル/ヘキサンを使用してシリカゲ
ル上でフラッシュクロマトグラフィー処理することにより精製して、オキサゾリ
ジン27aを得る。
スキームGの工程eにおいては、オキサゾリジン27aを、当該技術において公
知の条件下で還元して、N−保護され、N−メチル化された化合物28を得る。例
えば、オキサゾリジン27aを適当な有機溶剤、例えばクロロホルムに溶解し、そ
して過剰のトリフルオロ酢酸で処理する。この溶液に、室温で撹拌しながら、過
剰のトリエチルシランを加える。反応混合物を1〜7日間撹拌し、そしてそれか
ら真空下で濃縮して、N−保護され、N−メチル化された化合物28を得る。
以下の実施例は、スキームA〜Gに記載したような典型的な合成を示す。これ
らの実施例は、単に説明のためのものであって、本発明の範囲を如何なる点にお
いても限定するものでないことは理解されるべきである。NMRスペクトルは、13C
に対しては75MHz、19Fに対しては282MHzおよび1Hに対しては300MHzにおいて記録
した。19F NMRシグナルは、CFCl3からのppmで記録した。MSおよびHRMSデータは
、HRMSリファレンスとしてパーフルオロ
ケロセンによるコンピューター化ピークマッチングを使用して70eVで記録した。
TLC分析は、アルカリ性過マンガン酸塩およびUV照射による可視化を使用して、M
erck DC-F254またはAnaltech GHLFシリカゲルプレートで遂行した。フラッシュ
クロマトグラフィーは、Merckシリカゲル60(0.040-0.063mm)で遂行した。CF3C
F2Liは、Richmond Chemical Companyから得られたCF3CF2Iを使用してGassman &
O'Reilly,J.Org.Chem.52,2481-2490(1987)に記載されているようにして形
成した。トリプトファン化合
1699-1700(1984)〕を利用した。
本明細書において使用される次の用語は、以下に示した意義を有する。“g”
はグラムを意味し;“mmol”はミリモルを意味し;“ml”はミリリットルを意味
し;“bp”は沸点を意味し;“mp”は融点を意味し;“℃”は摂氏度を意味し;
“mmHg”は水銀のミリメーターを意味し;“μl”はミクロリットルを意味し;
“μg”はミクログラムを意味し、そして“μM”はミクロモルを意味する。
実施例1
(S)−3−〔2−〔〔(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノ〕−4,4,5
,5,5−ペンタフルオロ−3−オキソペンチル〕−1H−インドール−1−カルボン
酸1,1−ジメチルエチルエステル(C);および(S)−〔3,3,4,4,4−ペンタフルオ
ロ−1−(1H−インドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−カルバミン
酸1,1−ジメチルエチルエステル(D)の製造
スキームAの工程a;窒素雰囲気下そして−60℃(内部温度計)に冷
Soc.,1699-1700,1984)(7.15g、17.08ミリモル)の撹拌溶液に、凝縮したCF3CF2
I(6.85ml、58.09ミリモル)を加えた。内部反応温度を−52℃〜−62℃の間に
維持するような速度で、MeLi-LiBr(Et2O中の1.5M溶液37.6ml、56.36ミリモル)
を加える。添加完了後に、反応混合物を−55℃〜−60℃で1時間撹拌する。−55
℃より下の内部反応温度を維持するような速度でイソプロパノール(4.31ml、56
.3ミリモル)を加えることによって、反応をクエンチする。反応混合物を−35℃
に加温し、そしてそれから反応混合物を10%水性KHSO4(100ml)に注加する。層を
分離し、有機層を10%水性KHSO4(50ml)およびブライン(25ml)で洗浄し、そ
してMgSO4で乾燥する。濾過および濃縮して粗製生成物CおよびDを得る。溶離
剤としてヘキサン中のEtOAcの勾配(15〜25%)を使用してフラッシュクロマト
グラフィー処理(シリカゲルカラム7.5×19cm)して、黄色のフォーム状物と
してC(5.43g、63%)および淡黄色の固体としてD(1.50g、22%)を得た。
化合物C:
TLC Rf 0.37(25:75 EtOAc:ヘキサン);1H NMR(CDCl3,3日,ケトンのみ,主
ロータマー)δ 8.14(br d,1H,J=7.9Hz,H7),7.50(ddd,1H,J=0.8,1.1,7.
8Hz,H4),7.42(br s,1H,H2),7.35(ddd,J=1.3,7.4,8.4Hz,H6),7.27(dt
,J=1.0,7.8Hz,H5),5.15-5.05(m,1H,CH),4.99(br d,1H,J=7.6Hz,NH),
3.36(dd,1H,4.7,15.0Hz,1/2 CH2),3.04(dd,1H,J=7.5,15.0Hz,1/2 CH2)
,1.67(s,9H,Nin-Boc),1.38(s,9H,Boc);19F NMR(CDCl3,3日,ケトンの
み,主ロータマー)δ-82.06(s,CF3),-120.85および-122.48(pr d,J=297Hz,
CF2);MS(CI,NH3)m/z(相対強度)524(100,M+NH4 +),507(3,M+),468(30)
,412(17),230(32),130(54)。
分析(C23H27F5N2O5・0.34 H2O)C,H,N。
化合物D:
融点=135-141℃;TLC Rf 0.15(25:75 EtOAc:ヘキサン);1HMR(DMSO-d6+D2O
,水和物のみが存在)δ 7.44-7.50(m,1H),7.32-7.26(m,1H),7.06-6.90(m,
3H),4.15-4.08(m,0.3H,ロータマーAのCH),3.98-3.91(m,0.7H,ロータマー
BのCH),3.16(dd,0.3H,J=1.8,14.2Hz,ロータマーAの1/2 CH2),3.12(dd,
0.7H,J=1.6,14.5Hz,ロータマーBの1/2 CH2),2.75(dd,0.7H,J=11.7,14.6
Hz,ロータマーBの1/2 CH2),2.58(dd,0.3H,J=11.9,14.2Hz,ロータマーA
の1/2 CH2),1.10(s,6.3H,ロータマーBのBoc),0.67(s,2.7H,ロータマーA
のBoc);19F NMR(DMSO-d6+D2O,水和物のみが存在)δ-77.54(s,ロータマーB
のCF3),-77.63(s,ロータマーAのCF3),-121.46および-123.59(pr d,J=276Hz
,ロータ
マーBのCF2),-121.46および-123.35(pr d,J=267Hz,ロータマーAのCF2);MS
(CI,NH3)m/z(相対強度)424(37,M+NH4 +),368(100),130(40)。
分析(C18H19F5N2O3・0.34 H2O)C,H,N。
実施例2
(S)−3−(2−アミノ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−3−オキソペンチル)
−1H−インドール−1−カルボン酸1,1−ジメチルエチルエステルモノ塩酸塩の
製造
スキームAの工程b;ジオキサン(5.0ml)中の4.0N塩化水素を、窒素雰囲気
下でジオキサン(2.4ml)中の実施例1からの化合物C(1.04g、2.00ミリモル
)の撹拌溶液に徐々に加える。1時間後に得られた懸濁液を吸引濾過し、そして
集めた固体をEt2O(3×10ml)で洗浄する。灰白色の固体を高真空下KOHペレッ
ト上で乾燥して、ケトンおよび水和物(比2:3)の混合物として標記化合物19
5mg(22%)を得た。標記化合物の不安定性のため、標記化合物は直ぐに次の工
程に使用する。上記からの合した濾液を稀釈し冷凍して、追加的な標記化合物(
571mg、64%)を得た。1
H NMR(CDCl3)δ 8.79(br s),7.99(br,d,1H,J=6.6Hz),7.88-7.66(m),7.
51(d,0.4H,J=7.4Hz,ケトンのAr-H),7.41(d,0.6H,J=7.4Hz,水和物のAr-H)
,7.28-7.12(m,2H),6.48(br s,水和物 OH),5.10-4.96
(m,0.4H,ケトンのCH),3.75-3.93(m,0.6H,ケトンのCH),3.63-3.10(m,2H,
CH2),1.55(s,9H,Boc);19F NMR(CDCl3)δ-79.48(s,水和物のCF3),-81.77(s
,ケトンのCF3),-119.56および-122.40(pr d,J=297Hz,ケトンのCF2),-123.3
8(br s,水和物のCF2);MS(CI,NH3)m/z(相対強度)424(21,M+NH4 +),407(4
2,MH+),387(100)。
実施例3
(S)−N−〔(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル〕−N−メチル−D−フェニ
ルアラニル−N−〔1−〔〔1−〔(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル〕−1H
−インドール−3−イル〕メチル〕−3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−2−オキソ
ブチル〕−L−プロリンアミドの製造
スキームA、工程c;窒素雰囲気下そして−18℃に冷却したEtOAc(3ml)中の
N−Boc−N−メチル−D−Phe−L−Pro−OH(1994年11月10日に公開されたVebe
r等、PCT特許出願公開No.WO94/25051)(0.15g、0.41ミリモル)の撹拌溶液に、
N−メチルモルホリン(45μl、0.41ミリモル)次いでクロロギ酸イソブチル(5
3μl、0.41ミリモル)を加える。15分後に、さらにN−メチルモルホリン(45μ
l、0.41ミリモル)次いで実施例2の生成物(0.18g、0.41ミリモル)を加える
。反応混合物を−15℃〜−20℃で4時間撹拌し、EtOAc(50ml)でうすめ、そし
て10%水性クエン酸(2
×25ml)、半飽和水性NaHCO3(2×15ml)およびブライン(25ml)で洗浄する。
乾燥(MgSO4)し、次いで濾過および濃縮して粗製生成物を得る。溶離剤としてE
tOAc−ヘキサン(45:55)を使用してフラッシュクロマトグラフィー処理(シリ
カゲルカラム 2.5×12cm)して、淡黄色のフォーム状物として標記化合物(ケト
ンおよび水和物の混合物、0.16g、52%)を得た。
TLC Rf 0.34(45:55 EtOAc:ヘキサン);19F NMR(CDCl3)δ-79.27(s,水和物のC
F3),-82.09(s,ケトンのCF3),-122.81および-124.74(pr d,J=275Hz,水和物
のCF2),-121.75〜-121.90(m,ケトンのCF2),ケトン:水和物の比=2:3;MS
(CI,NH3)m/z(相対強度)782(30,M+NH4 +),765(45,MH+),205(92),122(1
00);
HRMS C38H46F5N4O7(MH+)計算値 765.3287,実測値 765.3281。
実施例4
(S)−N−メチル−D−フェニルアラニル−N−〔1−〔(1−カルボキシ−1H
−インドール−3−イル)メチル〕−3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−2−オキソブ
チル〕−L−プロリンアミドモノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームA、工程d;窒素雰囲気下で、実施例3の生成物(150mg、0.2
ミリモル)に、CF3CO2H(2ml)を加え、そして得られた溶液を3分間撹拌する
。溶剤を除去し、残留物をEt2O(3ml)に溶解し、そしてヘキサン(20ml)を撹
拌しながら徐々に加える。窒素雰囲気下で吸引濾過して、灰白色の固体として標
記化合物(117mg、82%)を得た。標記化合物は、脱カルボキシル化に対して不
安定である。1
H NMR(CDCl3,NCH3シグナルのみ)δ 2.44(s,3H,NCH3);19F NMR(CDCl3)δ -8
2.11(s,ケトンのCF3),-121.60〜-122.91(m,ケトンのCF2);MS(FAB,MNBA)m/
z(相対強度)609.2(MH+,46),565.2(MH-CO2 +,81),448.2(6),404.2(38),1
34.1(100)。
実施例5
N−メチル−D−フェニルアラニル−N−〔3,3,4,4,4,−ペンタフルオロ−1−
(1H−インドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−L−プロリンアミ
ドモノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームA、工程e;実施例4の生成物(82mg、0.1ミリモル)をCHCl3に溶解
し、48時間撹拌する。溶剤を除去し、そして残留物をCH2Cl2−ヘキサンに溶解し
、それから濃縮して、明るい黄色の固体として標記化合物(DLLおよびDLDジアス
テレオマーの1:1混合物、76mg、100%)を得た。TLC Rf 0.66(5:95 Et3N:C
H3CN);TLC Rf 0.12(5:95 Et3N:EtOAc);1H NMR(CDCl3)δ 9.69(s,0.5H,DL
LジアステレオマーのNin-H),9.26(s,0.5H,DLDジアステレオマーのNin-H),8.
18(br d,0.5H,J=6.4Hz,DLDジアステレオマー),7.61-7.02(m),5.11(dd,0.5
H,J=5.8,11.8Hz,DLDジアステレオマーのTrpのCH),5.04(dt,0.5H,J=3.6,1
0.9Hz,DLLジアステレオマーのTrpのCH),4.54(dd,0.5H,J=2.0,7.7Hz,DLDジ
アステレオマーのProのCH),4.42(dd,0.5H,J=1.9,7.8Hz,DLLジアステレオマ
ーのProのCH),4.03(dd,0.5H,J=4.2,11.2Hz,DLDジアステレオマーのPheのCH
),3.97(dd,0.5H,J=4.4,11.3Hz,DLLジアステレオマーのPheのCH),3.5-2.9(
m),2.23(s,1.5H,DLDジアステレオマーのNCH3),2.10-1.90(m),
1.93(s,1.5H,DLLジアステレオマーのNCH3),1.70-1.65(m),1.50-1.22(m);19
F NMR(CDCl3)δ -82.11(s,DLLジアステレオマーのCF3),-82.34(s,DLDジアス
テレオマーのCF3),-120.22および-123.54(pr d,J=294Hz,DLDジアステレオマ
ーのCF2),-121.92(s,DLLジアステレオマーのCF2),DLD:DLLの比=1:1;MS
(CI,NH3)m/z(相対強度)565(MH+,100),547(39),436(15),276(12),259(
8);
HRMS C28H30F5N4O3(MH+)計算値 565.2238,実測値 565.2253。
実施例6
〔2S-〔1(S*),2R*〕〕−N−〔3,3,4,4,4-ペンタフルオロ−1−(1H-インドー
ル−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−1−〔(1,2,3,4−テトラヒドロ−
3−イソキノリニル)カルボニル〕−2−ピロリジンカルボキサミドモノ(トリ
フルオロ酢酸)塩の製造
(a) Boc-D-3-Tiq-Pro-Trp(Boc)-CF2CF3の製造
スキームE、工程a;窒素雰囲気下そして−18℃に冷却したEtOAc(3ml)中のB
oc-D-3-Tiq-Pro-OH(1995年2月21日発行のNeises等の米国特許第5,391,705号)(0
.15g、0.41ミリモル)の撹拌溶液を、N−メチルモルホリン(45μl、0.41ミリ
モル)次いでクロロギ酸イソブチル(53μl、0.41ミリモル)と接触させ、そし
て実施例3に記載した方法と同様な方法で実
施例2の生成物(0.18g、0.41ミリモル)にカップリングさせて標記化合物を得
た。
(b) D-3-Tiq-Pro-Trp(COOH)-CF2CF3モノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームE、工程b;実施例6(a)の生成物(150mg、0.2ミリモル)を、実施
例4に記載された方法と同様な方法で、CF3CO2H(2ml)、Et2O(3ml)およびヘ
キサン(20ml)で脱保護して標記化合物を得た。
(c) 〔2S-〔1(S*),2R*〕〕−N−〔3,3,4,4,4-ペンタフルオロ−1−(1H−イン
ドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−1−〔(1,2,3,4−テトラヒド
ロ−3−イソキノリニル)カルボニル〕−2−ピロリジンカルボキサミドモノ(
トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームA、工程e;実施例6(b)の生成物(82mg、0.1ミリモル)を、実施
例5に記載した方法と同様にして、CHCl3(2ml)およびCH2Cl2−ヘキサンで脱
カルボキシル化して標記化合物を得た。
実施例7
〔2S-〔1(S*),2R*〕〕−N−〔3,3,4,4,4-ペンタフルオロ−1−(1H−インドー
ル−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−1−〔(1,2,3,4-テトラヒドロ−
1−イソキノリニル)カルボニル〕−2−ピロリジンカルボキサミドモノ(トリ
フルオロ酢酸)塩の製造
(a) Boc-D-1-Tiq-Pro-Trp(Boc)-CF2CF3の製造
スキームE、工程a;窒素雰囲気下そして−18℃に冷却したEtOAc(3ml)中のB
oc-D-1-Tiq-Pro-OH(1995年2月21日発行のNeises等の米国特許第5,391,705号)(0
.15g、0.41ミリモル)の撹拌溶液を、N−メチルモルホリン(45μl、0.41ミリ
モル)次いでクロロギ酸イソブチル(53μl、0.41ミリモル)と接触させ、そし
て実施例3に記載した方法と同様な方法において実施例2の生成物(0.18g、0.
41ミリモル)にカップリングさせて標記化合物を得た。
(b) D-1-Tiq-Pro-Trp(COOH)-CF2CF3モノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームE、工程b;実施例7(a)の生成物(150mg、0.2ミリモル)を、実施
例4に記載した方法と同様な方法において、CF3CO2H(2ml)、Et2O(3ml)お
よびヘキサン(20ml)で脱保護して標記化合物を得た。
(c) 〔2S-〔1(S*),2R*〕〕−N−〔3,3,4,4,4-ペンタフルオロ−1−(1H−イン
ドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−1−〔(1,2,3,4−テトラヒド
ロ−1−イソキノリニル)カルボニル〕−2−ピロリジンカルボキサミドモノ(
トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームA、工程e;実施例7(b)の生成物(82mg、0.1ミリモル)を、実施例
5に記載した方法と同様な方法において、CHCl3(2ml)およびCH2Cl2−ヘキサ
ンで脱カルボキシル化して標記化合物を得た。
実施例8
3−シクロヘキシル−N−メチル−D−アラニル−N−〔3,3,4,4,4−ペンタフ
ルオロ−1−(1H−インドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−L−
プロリンアミドモノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
(a) N-Boc-N-メチル-D-Cha-OHの製造
スキームG、工程c;Boc-D-Cha-OH(10.8g、40ミリモル)をTHF(200ml)に
溶解し、そして溶液を0℃に冷却する。水素化ナトリウム(油中の60%分散液、
4.8g、120ミリモル)を、1時間にわたって少量ずつ加え、20分間撹拌する。そ
れから沃化メチル(19.7ml、316ミリモル)を加え、反応混合物を0℃で3時間
そして室温で一夜にわたって撹拌する。反応混合物を0℃に再冷却し、そして徐
々に水(100ml)を加える。濃縮してTHFを除去し、そして混合物をジエチルエー
テル(2×150ml)で洗浄する。水性層を6N HClで酸性化して約pH3となし、そ
して酢酸エチル(4×100ml)で抽出する。有機抽出液を合し、5%チオ硫酸ナト
リウム(100ml)、ブライン(100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、
そして真空下で濃縮して標記化合物を得た。
(b) N-Boc-N-メチル-D-Cha-Pro-OCH3の製造
スキームA、工程c;HCl・Pro-OCH3(0.33g、2.0ミリモル)をDMF(20ml)に
溶解し、そして溶液を0℃に冷却する。トリエチルアミン(0.31ml、2.2ミリモ
ル)を加え、10分間撹拌する。それから実施例8(a)の生成物(THF 100mlに溶
解、2.0ミリモル)を加え、次いでHOBt・1H2O(0.27g、2.0ミリモル)およびEDC
(0.40g、2.1ミリモル)を加える。反応混合物
を0℃で3時間、それから室温で一夜にわたって撹拌する。反応混合物を真空下
で濃縮し、そして残留物を1N HCl(100ml)にとり、酢酸エチル(3×100ml)で
抽出する。有機抽出液を合し、飽和重炭酸ナトリウム(100ml)、ブライン(100
ml)ですすぎ、無水の硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルの短い床を通過
させ、そして真空下で濃縮する。残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより
精製して標記化合物を得る。
(c) N-Boc-N-メチル-D-Cha-Pro-OHの製造
スキームG、工程b;実施例8(b)の生成物(4.0g、10.2ミリモル)をTHF(
100ml)および水(50ml)に溶解する。水酸化リチウムモノ水和物(900mg、21.5
ミリモル)を加え、そして反応混合物を室温で一夜にわたって撹拌する。濃縮し
てTHFを除去し、それから残留物をジエチルエーテル(2×100ml)で洗浄し、そ
して水性層を6N HClで酸性化してpH3にする。それから酸性化した水性層を酢酸
エチル(3×100ml)で抽出する。有機抽出液を合し、無水の硫酸マグネシウム
上で乾燥し、そして濾液を真空下で濃縮して標記の酸を得た。
(d) N-Boc-N-メチル-D-Cha-L-Pro-Trp(Boc)-CF2CF3の製造
スキームA、工程c;窒素雰囲気下そして−18℃に冷却したEtOAc(3ml)中実
施例8(c)の生成物(0.16g、0.41ミリモル)の撹拌溶液をN−メチルモルホリ
ン(45μl、0.41ミリモル)次いでクロロギ酸イソブチル(53μl、0.41ミリモル
)と接触させ、そして実施例3に記載した方法と同様な方法において、実施例2
の生成物(0.18g、0.41ミリモル)にカップリングさせて標記化合物を得た。
(e) N-メチル-D-Cha-L-Pro-Trp(COOH)-CF2CF3モノ(トリフルオロ酢酸)塩の製
造
スキームA、工程d;実施例8(d)の生成物(154mg、2.0ミリモル)を、
実施例4に記載した方法と同様な方法において、CF3CO2H(2ml)、Et2O(3ml
)およびヘキサン(20ml)で脱保護して標記化合物を得た。
(f) 3−シクロヘキシル−N−メチル−D−アラニル−N−〔3,3,4,4,4−ペン
タフルオロ−1−(1H−インドール−3−イルメチル)−2−オキソブチル〕−
L−プロリンアミドモノ(トリフルオロ酢酸)塩の製造
スキームA、工程e;実施例8(e)の生成物(73mg、0.1ミリモル)を、実施
例5に記載した方法と同様な方法において、CHCl3(2ml)およびCH2Cl2−ヘキ
サンで脱カルボキシル化して標記化合物を得た。
さらに他の実施例においては、本発明は式(I)または(IA)の化合物の治療的
に有効な量を患者に投与することからなる、トロンビンの阻害を必要とする患者
におけるトロンビンを阻害する方法または罹患した患者のトロンビン状態を治療
または予防する方法を提供する。“トロンビン状態”なる用語は、血栓または塞
栓形成を特徴とする疾患または状態を意味し、そして限定するものではないが、
冠状動脈および脳血管疾患、深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症、発作(血栓症また
は塞栓症源)、心筋梗塞、不安定性または難治性アンギナ、血管形成術後の冠状
動脈血栓症、再狭窄などを包含する。この分野に経験を有するものは、トロンビ
ン阻害剤および(または)抗凝固剤治療を必要とする情況について容易に知るこ
とができる。
トロンビン状態の治療に対して特に好ましい式(I)および(IA)の化合物には
、以下の表5および6に開示されている化合物が含まれる。トロンビン状態の治
療に対してもっとも好ましい化合物は、N−メチル−D−フェニルアラニル−N
−〔3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−(1H−インドール−3−イルメチル)−
2−オキソブチル〕−L−プロリンアミドモノ(トリフルオロ酢酸)塩である。
本明細書において使用される“患者”なる用語は、哺乳動物のような温
血動物であり、そしてモルモット、犬、猫、ラット、マウス、馬、牛、羊および
ヒトがこの用語の意義の範囲内の哺乳動物の例であることは理解されるべきであ
る。
“治療的に有効な量”なる用語は、患者に対する連続した注入によってまたは
単一のもしくは多数回の用量投与によって、血栓または塞栓の大きさを減少また
はトロンビン状態に関連した損傷の程度を低下して、治療しない場合において予
期される結果に比較して改善された結果および(または)疾患進行の遅延または
阻止を招くのに有効な量を意味する。“治療的に有効な量”なる用語は、必ずし
も完全に疾患を除去または治療することを示すものではない。治療的に有効な量
または投与量の決定においては、限定するものではないが、哺乳動物の種類;そ
の大きさ、年令および一般的健康;関係する特定の疾患;疾患の程度;個々の患
者の応答;投与される特定の化合物;投与の型式;投与される製剤の生物学的利
用能特性;選定される投与レジメン;付随的な医薬の使用;および他の関連した
情況を包含する多数の因子が担当診断医師によって考慮される。
式(I)または(IA)の化合物の治療的に有効な量は、1日につき体重1kg当り
約25mg(約25mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の間で変わる。好ましい量は、約4
0〜70mg/kg/日の間で変わる。静脈内には、もっとも好ましい投与量は、一定
速度の注入の間、約0.1〜20mg/kg/分の範囲にある。
本発明の化合物は、トロンビンの選択的阻害剤である。本発明の化合物は、酵
素トロンビンの阻害によって薬理学的作用を示し、そしてそれによって冠状動脈
および脳血管疾患、深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症、発作(血栓症または塞栓症
源)、心筋梗塞、不安定性または難治性アンギナ、血管形成術後の冠状動脈血栓
症、再狭窄などを包含するトロンビン状態を
遅延または阻止するものと信じられる。しかしながら、本発明が最終用途での適
用におけるその有効性を説明する特定の理論または提案された機構に限定されな
いことは理解されるべきである。
上述した疾患に罹患した患者の有効な治療において、式(I)の化合物は、経口
的および非経口的経路を包含する、化合物を有効な量で生物学的に利用すること
を可能にする形態または方法で投与することができる。例えば、式(I)の化合物
は、経口的、皮下、筋肉内、静脈内、経皮的、鼻内、直腸的、局所的などに投与
することができる。経口的または静脈内投与が一般的に好ましい。処方を製造す
る技術に精通する者は、治療すべき疾患に対して選択された化合物の特性、疾患
の段階および他の関連した情況によって、適当な形態および投与方法を容易に選
定することができる。
Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(1
990)。
本化合物は、単独でまたは医薬的に許容し得る担体または賦形剤と組み合わさ
れた医薬組成物の形態で投与することができる。これらの担体または賦形剤の割
合および性質は、選定された化合物の溶解性および化学的性質、選定された投与
経路および標準製薬プラクチスによって決定される。本発明の化合物は、それ自
体で有効であるけれども、安定性、結晶化の便利さ、増加した溶解度などのため
に、医薬的に許容し得る塩、例えば酸付加塩の形態で処方しそして投与すること
ができる。
他の実施化においては本発明は、1種または2種以上の不活性担体と混合され
たまたは一緒にされた式(I)または(IA)の化合物からなる組成物を提供する。
これらの組成物は、例えば検査標準として、バルク輸送を可能にする有利な手段
として、または貯蔵した全血の凝固を阻止するようなおよび試験または貯蔵のた
めの他の生物学的試料における凝固を阻止する
ような血液凝固の阻止が必要である場合に有用である。すなわち、トロンビン阻
害剤は、トロンビンを含有するかもしくはトロンビンを多分含有していると思わ
れる媒質に加えるか、または該媒質と接触させることができ、そして例えば哺乳
動物の血液が血管移植片、ステント、整形プロテーゼ、心臓プロテーゼおよび体
外循環系からなる群から選択された物質と接触する場合に、血液凝固が阻止され
るということが望ましい。
式(I)または(IA)の化合物の抗凝固量は、血液を液状状態に維持する量であ
る。式(I)または(IA)の化合物の抗凝固量は、一般に約45μM〜約1,000μMの
間で変わる。式(I)または(IA)の化合物の好ましい抗凝固量は、約90μM〜約3
00μMである。不活性担体は、式(I)または(IA)の化合物を分解しない、また
はこれらの化合物と共有的に反応しない何れかの物質であることができる。適当
な不活性担体の例は、水;一般に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にお
いて有用であるような水性緩衝液;有機溶剤、例えばアセトニトリル、酢酸エチ
ル、ヘキサンなど;および医薬的に許容し得る担体または賦形剤である。
さらに特に本発明は、1種または2種以上の医薬的に許容し得る担体または賦
形剤と混合された、または一緒にされた式(I)または(IA)の化合物の治療的に
有効な量からなる医薬組成物を提供する。
医薬組成物は、製薬技術において公知の方法で製造される。担体または賦形剤
は、活性成分に対するベヒクルまたは媒質として役立つことのできる固体、半固
体または液状の物質である。適当な担体または賦形剤は、当該技術において公知
である。医薬組成物は、経口的、非経口的または局所的使用に適しており、そし
て錠剤、カプセル、坐剤、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与することができ
る。
本発明の化合物は、例えば不活性稀釈剤または可食担体と一緒に経口的
に投与することができる。これらはゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤
に圧縮することができる。経口的治療投与の目的に対して、化合物は賦形剤と混
合され、そして錠剤、トローチ、カプセル、エリキサー、懸濁液、シロップ、ウ
エハース、チューインガムなどの形態で使用することができる。これらの製剤は
、特定の形態によって変えることができるけれども、活性成分として本発明の化
合物少なくとも4%を含有しなければならずそして有利には、単位の重量の4〜
70%の間にあることができる。組成物中に存在する化合物の量は、適当な投与量
が得られるような量である。本発明による好ましい組成物および製剤は、経口的
投与単位が本発明の化合物5.0〜300mgを含有するように製造される。
錠剤、ピル、カプセル、トローチなどはまた、1種または2種以上の次の補助
剤を含有することができる:結合剤、例えば微小結晶性セルロース、トラガント
ゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば澱粉またはラクトース;崩壊剤、例えばア
ルギン酸、プリモゲル、とうもろこし澱粉など;滑沢剤、例えばステアリン酸マ
グネシウムまたはステロテックス;滑剤、例えばコロイド二酸化珪素;および甘
味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;風味剤、例えばペパーミント、サリ
チル酸メチルまたはオレンジ風味料。投与単位形態がカプセルである場合は、そ
れは上記の型の物質のほかに、液状担体、例えばポリエチレングリコールまたは
脂肪油を含有することができる。他の投与単位形態は、投与単位の物理的形態を
変性する他の種々な物質、例えばコーティングを含有することができる。すなわ
ち、錠剤またはピルは、糖、シェラックまたは他のエンテリック被覆剤で被覆す
ることができる。シロップは本化合物のほかに、甘味剤としてのスクロース、お
よびある防腐剤、染料および着色剤および風味料を含有することができる。これ
らの種々な組成物の製造に使用される物質は、医薬的に純粋であ
り、そして使用される量において非毒性であらねばならない。
非経口的治療投与の目的に対しては、本発明の化合物を溶液または懸濁液中に
混入させることができる。これらの製剤は、本発明の化合物少なくとも0.1%を
含有しなければならないが、製剤の重量の0.1〜約50%の間に変化することがで
きる。このような組成物中に存在する本発明の化合物の量は、適当な投与量が得
られるような量である。本発明による好ましい組成物および製剤は、非経口的投
与単位が本発明の化合物5.0〜100mgを含有するように製造される。
本発明の式(I)または(IA)の化合物はまた、局所的に投与することもでき、
そのようにする場合は、担体は好ましくは、溶液、軟こうまたはゲル基材からな
る。例えば基材は、1種または2種以上の次の物質からなる:ワセリン、ラノリ
ン、ポリエチレングリコール、みつろう、鉱油、稀釈剤、例えば水およびアルコ
ール、並びに乳化剤、および安定剤。局所用処方は、約0.1〜10 w/v(重量/
単位容量)%の濃度の式(I)もしくは(IA)の化合物またはその医薬的塩を含有
する。
溶液または懸濁液はまた、1種または2種以上の次の補助剤を含有することが
できる:滅菌稀釈剤、例えば注射用の水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチ
レングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;抗菌
剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベシ;抗酸化剤、例えばアスコ
ルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢
酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩または燐酸塩、および緊張性の調節剤、
例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口的製剤は、ガラスまたはプ
ラスチックから製造されたアンプル、使い捨て注射器または多数回投与バイアル
に封入することができる。試験管内阻害検査
本発明の化合物は、トリプシンのような他のセリンプロテアーゼと対比して、
高度に選択的なトロンビン阻害剤である。例えば、式(I)および(IA)の化合物
のトロンビン阻害活性は、Tuppy等、Hoppe-Seyler's Z .Physiol.Chem.,329 ,
p.278(1962)の方法による分光測光検査を使用して証明することができる。この
方法においては、405nmにおける吸光度(ε=10800M-1cm-1)の増加を測定する
ことによって、p−ニトロアニリンの遊離を測定する。トロンビンはヒト血漿か
ら得られ、Sigma Chemical Co.から入手できる。活性度は、NIH単位で表示され
る。1バイアルは、水1mlで再構成される凍結乾燥された粉末として290単位(
比活性=蛋白質1mg当り3000単位)を含有する。基質は発色ペプチドサルコシル
−プロリン−アルギニン−p−ニトロアニリド(KM=0.9mM)であり、緩衝液は0
.1Mトリス(pH7.4)(最終容量1ml)であり、そして検査は約30℃の温度で実施さ
れ、1回の検査当り酵素の0.029NIH単位が必要である。即時型阻害剤の動力学的
確認は、Dixonプロットにより、そしてこれに反して、緩慢におよび(または)
強固に結合する阻害剤の確認は、WilliamsおよびMorrisonにより検討されたデー
タ分析技術を使用する。時間依存性阻害剤の動力学的確認は、Kitz & Wilsonプ
ロット、Kitz R.およびWilson I.B.,J .Biol.Chem.,237,3245-3249(1962)に
よる。
式(I)および(IA)の化合物のトリプシン阻害活性は、上述したTuppy等、Hop pe-Seyler's Z .Physiol.Chem
.,329,p.278(1962)の方法による分光測光検査
を使用して証明することができる。トリプシンは豚の膵臓から得られ、Sigma Ch
emical Co.から入手できる。活性度は、シグマ単位で表示される。トリプシン源
の比活性は、蛋白質1mg当り15900シグマ単位であり、1単位はpH7.6および25℃
におけるベンゾイル−アルギニン−
エチルエステルの加水分解の結果として1分当り0.001の253nmにおける吸光度の
増加をもたらす酵素の量として定義される。基質はペプチドベンゾイル−アルギ
ニン−p−ニトロアニリド(KM=1.7mM)であり、緩衝液は0.05Mトリス、0.05
M CaCl2(pH7.8)(最終容量1ml)であり、そして検査は30℃の温度で実施され、
1回の検査当り酵素の8シグマ単位が必要である。即時型阻害剤の動力学的確認
はDixonプロットにより、そしてこれに反して緩慢におよび(または)強固に結合
する阻害剤の確認は、WilliamsおよびMorrisonにより検討されたデータ分析技術
を使用する。時間依存性阻害剤の動力学的確認は、Kitz & Wilsonプロットによ
る。
表2は、トリプシンと対比してトロンビンを選択的に阻害する本発明の選択さ
れた化合物の能力を要約する。本明細書において“TFA”はトリフルオロ酢酸を
意味する。
抗凝固活性の測定
実験動物 Harlan Sprague Dawley Inc.(インジアナポリス、IN 46 229)から
購入した雄のスプラグ−ダウレーラット(200〜450g)を、これらの研究に使用
した。
凝固検査 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)測定を、Dade Diagnos
tics Inc.(Aguada,Puerto Rico 00602)の試薬および方法を使用して実施する
。全血液凝固時間は、MLA-Electra 750,MLA Inc.(Pleasantville,NY 10570
)を使用して半自動的に測定した。凝固時間を2倍にするのに必要な濃度(ID2
)を、簡単な線状回帰を使用して計算
した。表3は、本発明の選択された化合物の抗凝固活性を示す。
ラットの血漿における活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の生体内測定
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)測定をラットの血漿において、ラ
ットにTFA・HNMe-D-Phe-L-Pro-D,L-Trp-CF2CF3を注射した後の種々な時間で実施
した。Harlan Sprague Dawley Inc.(インジアナポリス,IN46229)から購入し
た雄のスプラグ−ダウレーラット(200〜450g)を、これらの研究に使用した。5
mg/kg(静脈内)、10mg/kg(静脈内)および30mg/kg(静脈内)の投与からの
結果は、表4に開示される通りである。
*i.v.=静脈内;i.p.=腹腔内
aaPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間
特に重要である本発明の好ましい化合物(IおよびIA)は、表5および6に
記載した化合物である。表5は、式Iの好ましい化合物を開示する。
同様に、表6は、式IAの好ましい化合物を開示する。
本発明をその特定の実施化に関して記載したけれども、本発明はさらに変形す
ることができ、そして本出願は、一般に本発明の原理にしたがった、そして本発
明が関係する技術の範囲内の既知または慣用の実施であるような、上述した本質
的特徴に適用できるような、および特許請求の範囲内に包含されるような本発明
の開示からの離脱を包含する、本発明のすべての変形、使用または適応を包含す
ることを企図するものであることは理解されるべきである。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,
CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,H
U,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ
,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,
MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,P
T,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ
,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 ブルースマ,ロバート・ジエイ
アメリカ合衆国オハイオ州45242.シンシ
ナテイ.バイアーストーンレーン10170
(72)発明者 ピート,ノートン・ピー
アメリカ合衆国ニュージャージー州08853.
ネシヤニクステーション.ブライアーウエ
イ97