【発明の詳細な説明】
組成物
本発明は、着色フィルター及び着色ポリマー、それらの製法、さらにプラスチ
ック、インキ及び着色リプログラフィックトナー(coloured repr
ographic toners)の着色を含めたそれらの様々な用途に関する
。
米国特許第 5,231,135号には、例えば自動車のような支持体上に着色ポリマー
の塗膜を形成する方法が記載されており、この方法では、反応性着色剤及びカッ
プリング剤を含む反応性アクリルポリマーを支持体に塗被し、架橋させている。
このようにして形成された塗膜は、下地となる支持体が、直射日光及び風雨を浴
びたり、それらに曝されるのを防ぐのに用いられている。
最近我々は、ある種の染料とトリアジン化合物とを重合させることにより、有
益な着色剤が製造可能であることを見出した。これらの着色剤は、プラスチック
、トナー、特にインキに有用である。
本発明によって、染料と、アルコキシメチルアミノ及びヒドロキシメチルアミ
ノから選択した基を少なくとも二個有するトリアジン化合物とから本質的に成る
混合物の重合により、得られた、または得ることの可能な着色ポリマーが提供さ
れる。そのトリアジン化合物は、アルコキシメチルアミノ及びヒドロキシメチル
アミノから選んだ基を二または三個有するのが好ましい。トリアジン化合物に存
在するアルコキシメチルアミノ及びヒドロキシメチルアミノ基は、式 -N(Ra)(
CH2ORb)であるのが好ましく、式中Ra及びRbは、それぞれが独立してH、
アルキル(好ましくはC1-6-アルキル)、アルコキシアルキル(好ましくは -(
CH2)m-O(CH2)nCH3で、式中mは 1-6、nは 0-5)、アリール(好ましく
はフェニル)またはヒドロキシアルキル(好ましくは -(CH2)mOHで、式中m
は前記定義の通り)である。
アルコキシメチルアミノ及びヒドロキシメチルアミノから選択した基を少なく
とも二個有する好ましいトリアジン化合物は、式(A):
で表され、式中Rcはアルキル、アリールまたは好ましくは式 -N(Ra)(CH2O
Rb)の基であり、Ra及びRbは、それぞれが独立して先に定義した通りである。
好ましい態様におけるRcは、C1-6-アルキル、C6-12-アリールまたは好まし
くは先に定義したような -N(Ra)(CH2ORb)である。各RaはHで、各Rbは
メチルであるのが好ましい。特に好ましいトリアジン化合物は、トリ(メトキシ
メチルアミノ)-1,3,5-トリアジンである。
前記染料及びトリアジン化合物の混合物には、その染料及び/またはトリアジ
ン化合物に反応性の他の成分が少量含まれていてもよいが、それら成分の量は、
染料及びトリアジン化合物の総重量に対し、重量で 20%未満、好ましくは 10%
未満、より好ましくは 5%未満であるのが望ましい。着色ポリマーを形成するた
めに重合する混合物においては、染料と前記トリアジン化合物のみが成分である
のが特に好ましい。このようにすると、重合法は簡素化され、得られたポリマー
は単離、配合、取り扱いが容易で、濃い色を有する。この混合物には、着色ポリ
マーの一部にはならない成分、例えば重合が起こる時の触媒、稀釈剤または溶媒
が含まれていてもよい。
重合の際、染料とトリアジン化合物とは互いに反応して望みの着色ポリマーを
与える。従って染料には、例えば -SH、一級アミノ、二級アミノ、ヒドロキシ
、エポキシド、酸、酸ハロゲン化物、反応活性エステルまたは活性ビニル基のよ
うな、前記トリアジン化合物に反応性の基を有するものが選択される。一級アミ
ノ、二級アミノ及びヒドロキシ基は芳香族炭素原子に付いていないのが好ましい
。何故ならば、これにより、トリアジン化合物に対するそれらの基の反応性が低
下するからである。活性ビニル基は、式 -COCH=CH2または -SO2CH=C
H2で表されるのが好ましい。
使用可能な染料の種類で好ましいのは、アゾ(好ましくはモノアゾまたはジア
ゾ)、アゾメチン、トリフェノジオキサジン、フタロシアニン、ベンゾジフラノ
ン、アントラキノン、インジゴイド、ポリメチン、キノフタロン、ピロリン及び
ベンゾフラノン系染料で、もちろんその染料は、前記トリアジン化合物に反応性
の基を有するものとする。
好ましい染料は、前記トリアジン化合物に反応性のアゾ染料で、特に式(1):
A-N=N-D (1)
で表され、式中:
Aが任意に置換された複素環または炭素環基であり;及び
Dが任意に置換された複素環または炭素環基、または式(2):
-E-N=N-G (2)
で表される基で、式中:
E及びGが、それぞれが独立して任意に置換された複素環または炭素環基であ
る
アゾ染料が好ましく、この式(1)の染料は、前記トリアジン化合物に反応性の基
を有するものとする。
A、D、EまたはGが複素環基の場合、それはチエニル、チアゾリル、イソチ
アゾリル、ピラゾリル、ベンゾピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリドニ
ル、チアジアゾリル、フラニル、ピロリル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニ
ル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、
インドリル、ピリドチアゾリル、ピリドイソチアゾリル、トリアゾリル、ピロリ
ル、ジオキサゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル及びカルバゾリルから選
択するのが望ましい。A、D、EまたはGが炭素環基の場合、それは任意に置換
されたフェニルまたはナフチルであるのが好ましい。
基Aは、フェニル、ピラゾリル、チアゾリル、ピロリル、インドリルまたはカ
ルバゾリルが好ましく、より好ましいのは任意に置換されたフェニルまたはピラ
ゾリルである。
Aが任意に置換されたフェニルの場合、それは式(3):
で表されるのが好ましく、式中:
R1、R2及びR3は、それぞれが独立してH、CN、NO2、ハロ、CF3、-S
O2R18、-SO2NHR18、-COOR18または -COR18であり;及びR18は、
H、任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリールである。
R1、R2及びR3は、それぞれが独立してF、Cl、Br、CN、-SO2R18、-
SO2NHR18、NO2、CF3、-COOR18または -COR18であるのが好まし
く、その際のR18は先に定義した通りである。
Aがピラゾリルの場合、それは式(4):
で表されるのが好ましく、式中:
R4は、H、-CN、CO2H、F、Cl、Br、-COR18、-CONR18R19、-
SO2R18、-SO2NR18R19または -COOR18であり;
R5は、H、アリール、-CN、-CH2CN、-SO2R18、アルキル、あるいは
-CN、-CSNR18R19、-SR18または -COOR18で置換されたアルキルで
あり;
R6は、H、アルキル、アルケニル、アリール、-SO2R18、-COR18、ある
いは -CNまたは -COOR18で置換されたアルキルであり;さらに
R19は、H、任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリールであ
る。
R4は、CN、-COR18、-CONR18R19または -COOR18であるのが好
ましい。
R5は、フェニル、-CNまたは -CH2CNであるのが好ましい。
R6は、HまたはC1-4アルキルが好ましく、特にHであるのが好ましい。
基Dは、任意に置換されたフェニルまたはピラゾリルであるのが好ましい。D
が任意に置換されたフェニルの場合、それは式(5):
で表されるのが好ましく、式中:
R7及びR8は、それぞれが独立してH、あるいは任意に置換されたアルキルま
たはアリールであり;
R9は、H、アルキル、アルコキシ、OH、Cl、Br、-COOH、-NHCO-
アルキル、NO2または -COO-アルキルであり;
R10は、H、OH、アルキル、-NR18R19、-NHCOR18、-NHSO2R18
、-NHCONHR18、-NHCOOR18または -NHCO-アルケニルであり;
さらに
R18及びR19は、先に定義した通りである。
R7及びR8に存在可能な置換基は、OH、COOH、-COO-アルキル、CN
、フェニル、フェノキシ、アルコキシ、アルキル、Cl、Br、SH、アルケニル
、アルキニル、CHF2、NH2、-NH-アルキル、エポキシ、-CO-アルケニル
及び -NHCO-アルケニルから選択するのが好ましい。
R7及びR8は、それぞれが独立して任意に置換されたC1-10-アルキルである
のが好ましく、より好ましくはC1-8-アルキルまたはC1-6-ヒドロキシアルキル
で、特に好ましいのは、分枝鎖のC1-8-アルキルまたは分枝鎖のC1-6-ヒドロキ
シアルキルである。
R9は、H、C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、NO2、COOHまたは -C
OO(C1-4-アルキル)が好ましく、より好ましいのは、H、OCH3、NO2、C
H3、COOHまたはCOOCH3である。
R10は、H、C1-4-アルキルまたは -NHCO(C1-4-アルキル)が好ましく、
より好ましいのはH、CH3または -NHCOCH3である。
Dがピラゾリルの場合、それは式(6):
で表されるのが好ましく、式中:
R11は、H、アルキルまたはアリールであり;
R12は、NH2または-NH-アルキルであり;さらに
R6は、先に定義した通りである。
R11は、HまたはC1-4-アルキルが好ましく、より好ましいのはC1-4-アルキ
ルである。
R12は、NH2または-NH-(C1-4-アルキル)であるのが好ましく、より好ま
しいのはNH2である。
Eは、任意に置換されたフェニレン、チエニルまたはイソチアゾリレンが好ま
しく、特に好ましいのは式(7):
で表されるフェニレンで、式中:
R13は、H、OH、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、-NHCOR18また
は -NHSO2R18であり;さらに
R14は、H、アルキル-NHCO-アルキルまたは -NHCO-アリールである
。
R13は、H、C1-6-アルコキシまたはC1-6-アルコキシ-C1-6-アルコキシで
あるのが好ましい。
R14は、H、OH、C1-6-アルキル、-NHCO(フェニル)または -NHCO(
C1-6-アルキル)であるのが好ましい。
基Gは、任意に置換されたフェニルまたはピラゾリルが好ましく、特に式(5)
または式(6)で表される基が好ましい。
R1、R2、R3、R5、R6、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R18または
R19で表される基が、アルキルまたはアルコキシ基である、またはそれらのいず
れかを含む場合、それはC1-6-アルキルまたはC1-6-アルコキシであるのが好ま
しい。
R5、R6、R7、R8、R11、R18またはR19で表される基がアリール基である
、またはそれを含む場合、そのアリール基はフェニルまたはナフチル基であるの
が好ましく、より好ましいのはフェニル基である。
R6、R7、R8またはR10で表される基がアルケニル基である、またはそれを
含む場合、それはC2-6-アルケニルが好ましく、特に好ましいのはビニルまたは
アリルである。
R7またはR8で表される基がアルキニル基を含む場合、それはC2-6-アルキニ
ルであるのが好ましい。
アルキルまたはアルコキシ基、あるいはR、R1からR3、R5からR14、R16
、R18及びR19のいずれかで表されるアルキルまたはアルコキシ基含有置換基は
、直鎖でも分枝鎖でもよい。
A、D、E、G及びR1からR3で表される基のいずれかが任意に置換されてい
る場合、それらの置換基は、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CF3、-SO2F
、-OR18、-SR18、-NR18R19、-COOR18、-SO2R18、-COR18、-S
O2NR18R19、-CONR18R19、-NHCOR18、-NHSO2R18、-NHCO
OR18、C1-6-アルキルまたはC1-6-アルコキシから選択するのが好ましく、こ
こでのR18及びR19は先に定義した通りである。
R18及びR19が任意に置換されている場合、それらの置換基は、F、Cl、Br
、NO2、CN、CF3、SO2F、OPh、OC1-6-アルキル及びC1-6-アルキル
から選択するのが好ましい。
アゾ染料は、式(8)及び(9):
で表されるものが特に好ましく、式中:
R15は、H、C1-4-アルキル、フェニル、C1-4-シアノアルキルまたは -CN
であり;
R16は、C1-4-アルキルであり;
R17は、Hまたはフェニルであり;さらに
R6、R7及びR8は先に定義した通りである。
式(8)の染料の一具体例には、R15が -CN、R16がt-ブチル、さらにR17
がフェニルの染料1がある。
式(9)の染料の具体例には、R6が -H、R7がエチル、R16がメチル、R8エ
チル、さらにR15が -CNの染料2;及びR6が -H、R7がエチル、R16がメチ
ル、R8が 1-メチルプロピル、さらにR15がフェニルの染料3がある。
フタロシアニン系染料で好ましいのは、式(10):
MPc[XR20]n (10)
で表される染料で、式中:
Mは、H、Si、Ge、金属、オキシメタル、ヒドロキシメタルまたはハロメタ
ルであり;
Pcは、フタロシアニン発色団であり;
Xは二価のヘテロ原子または二価の結合基であり;
R20は、Hまたは置換基であり;さらに
nは 1 から 16 で;
式(10)の染料は、前記トリアジン化合物に反応性の基を含むものとする。
Mの種類は、H、遷移金属、ハロメタル、SiまたはGeから選択するのが好ま
しく、より好ましくは、H、Ni、Cu、Mn、Fe、Sn、Co、Ti、V、(ハロ)
Al(例えばAl(Cl))、(ハロ)In(例えばIn(Cl))、Si及びGeであり、特
にCuまたはNiが好ましい。
基Xは、OまたはS、またはN、O及びSから選択された一個もしくは一組の
結合したヘテロ原子を含む基であるのが好ましく、特に-NR-、-COO-、-S
O2O-、-SO2-、-SO2NH-が好ましい。
R20がH以外の場合、それはアルキル、特にC1-4-アルキル;アリール、特に
フェニル;エポキシ、-CO-C2-6-アルケニル、特にアクリロイル;-NHCO-
C2-6-アルケニル、特にアクリロイルアミドから選択するのが好ましく、または
XがNRの場合には、R及びR20がN原子と結合して 5-、6-または7-員環の複
素環を形成していてもよい。
nの値は 1 から 8 が好ましく、より好ましくは 1 から 4、特に好ましいの
は 2、3 または 4 である。フタロシアニンはテトラ(スルホンアミド)フタロシ
アニンが好ましく、特にXが -SO2NH-または-S-で、R20がC1-4-ヒドロキ
シアルキル、C1-4-アミノアルキル及びC1-4-カルボキシアルキルから選択され
たものが好ましい。
トリアジン化合物に反応性の基は、例えばアルキレン基のように、発色団から
単離されるのが望ましい。何故ならば、この種の染料とポリマー先駆物質との反
応は、ほとんど色に変化をもたらさないからである。
本発明に用いられる染料は、通常の方法によって製造しても良く、例えばモノ
アゾ及びジアゾ染料は、アミンのジアゾ化及びカップリングによって製造が可能
である。
式MPc(XR20)nのフタロシアニンは、当該技術分野において公知の方法と類
似した方法により、例えば、銅フタロシアニンをクロロスルホン酸と加熱し、さ
らに五塩化リンと加熱して銅フタロシアニンテトラ(スルホニルクロリド)とし、
続いて前記トリアジン化合物に反応性の基を有するアミンと縮合することによっ
て製造が可能である。この縮合は、望むのであれば液体媒質、例えばジオキサン
中で行うこともできる。
着色ポリマーを製造するため、混合物中で用いることができる染料のさらなる
例は、米国特許第 5,231,135号に記載されている構造式A(表1中)からVがあ
り、これらは本明細書において援用される。
染料及び前記トリアジン化合物を含む混合物の重合は、熱的または化学的に、
例えばその混合物の加熱によって開始されるのが好ましい。好ましい熱的開始に
は、染料及びトリアジン化合物の重合を引き起こすのに十分な温度にまで、好ま
しくは 40℃から 250℃、より好ましくは 50℃から 200℃、特に好ましくは 50
℃から 100℃にまで混合物を加熱することが含まれる。
混合物中の前記トリアジン化合物に対する染料の比は、それらの相対モル重量
及びそれぞれに含まれている反応基の数によって決まる。染料及び前記トリアジ
ン化合物の比は、重量比で 1:0.1 から 1:10 の範囲にあるのが好ましく、よ
り好ましくは 1:0.5 から 1:2.5 である。
重合は、溶媒または稀釈剤中で行うのが好ましく、特に水または有機溶媒、例
えばアルカノールまたは脂肪族ケトン、あるいは水及び有機溶媒の混合物中で行
うのが好ましい。好ましい方法としては、溶媒中に染料及びトリアジン化合物を
溶かした溶液を、好ましくは前述の温度で加熱し、その溶液から沈殿した着色ポ
リマーを回収する。沈殿物は通常の方法、例えば濾過によって回収してもよい。
重合は、pH 7 未満、例えば 2.5 から 5、好ましくは 3 から 4 のpHで行
うのが好ましい。未反応の出発原料は、洗浄によって生成物から取り除くことが
できる。未反応のトリアジン化合物は、有機溶媒、例えばアセトンで洗浄するこ
とによって、着色ポリマーから取り除くことが可能であり、さらに未反応の水溶
性染料は、水または稀アルカリ、例えば稀水酸化ナトリウム溶液で洗浄すること
によって、着色ポリマーから除去可能である。
上記の方法によって得ることの可能な着色ポリマーは、非常に不溶性で、従っ
てその化学的構造を決定するための分析は容易でない。なんらかの理論に限定す
ることで、本発明の範囲を制限するつもりはないが、そのポリマーには、10 以
下、またはそれより多い反応物分子が一緒になって結合した様々なサイズのユニ
ットが含まれていると考えられる。このように、例えば二個の -CH2CH2OH
基有する染料は、二個のトリメトキシメチルメラミン分子と反応することが可能
であったが、さらに各トリアジン環上にある二個の遊離した -NHCH2OCH3
基は、また別な染料分子との反応が可能となり、今度は、新しく付加した染料分
子がまた別なトリメトキシメチルメラミン分子と反応することが可能となる。そ
してこれは、トリアジン環上に -NHCH2OCH2CH2-基によって結合した染
料分子を含む着色ポリマーが得られるまで続く。
本発明により提供される着色ポリマーには、数多くの可能な用途がある。この
ポリマーは、プラスチック、書いたり印刷したりするためのインキの着色に、ま
たは電子写真に用いられる着色トナーの一成分としての使用が可能である。この
着色ポリマーは、有機及び水性媒質中で容易に分散可能である。本発明は、それ
が広く様々な色を提供するのに用いられるという点で、従来の顔料を越える利点
を有している。
本発明の別の面によれば、液体媒質と、そこに分散した着色ポリマー粒子とを
含むインキが提供されるが、その着色ポリマーは、染料と、アルコキシメチルア
ミノ及びヒドロキシメチルアミノから選択した基を少なくとも二個有するトリア
ジン化合物とから本質的に成る混合物の重合により、得られた、または得ること
の可能なものである。
本質的には染料と前記トリアジン化合物とから成る混合物の重合により、得ら
れた、または得ることの可能な着色ポリマーは、粒状であるのが好ましく、その
粒子サイズは 15 mm未満で、より好ましくは 0.01 から 10 mm、特に好ましくは
0.04 から 5 mm、さらに好ましいのは 0.05 から 1 mmであり、特に 0.05 から
0.3 mmが好ましい。これらのサイズは、その着色ポリマー粒子が、通常、直径1
0 から 50 mmのインクジェットプリンターのノズルを通過できるものであるのが
好ましい。
着色ポリマーの粒子が、染料及び前記トリアジン化合物を含む混合物の重合に
よって得られる、または得ることが可能な場合、その混合物には、染料及び/ま
たはトリアジン化合物に反応性の他の成分が含まれていてもよい。このような他
の成分の例を、皮膜形成剤(film-forming ingredients)及び皮膜形成樹脂として
以下に記載する。しかしながら、その混合物は、本質的には染料及び前記トリア
ジン化合物から成るのが望ましい。何故ならば、そのようにして得られた着色ポ
リマーの方が製造、単離、配合、取り扱いが容易で、しかも色の純度が高いから
である。
インキには、そのインキの総重量に対して着色ポリマーが、重量で 0.5%から
20%含まれているのが好ましく、より好ましくは 0.5%から 15%、特に好まし
いのは 1%から 5%である。インキには、一種より多い、例えば二または三種の
このようなポリマーが含まれていてもよい。
液体媒質には有機溶媒が好ましいが、より好ましいのは、水または水と一種以
上の水溶性有機溶媒との混合物を含む水性媒質である。ここでの溶媒に対する水
の重量比は、99:1 から 1:99 であるのが好ましく、より好ましくは 95:5 か
ら 50:50、特に好ましいのは 90:10 から 60:40 である。
各水溶性有機溶媒には、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、
イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールまたはイ
ソブタノールのようなC1-4-アルカノール;例えばジメチルホルムアミドまたは
ジメチルアセトアミドのようなアミド;例えばジアセチンのようなエステル;例
えばアセトンメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはジアセトンア
ルコールのようなケトンまたはケトアルコール;例えばテトラヒドロフランまた
はジオキサンのようなエーテル;例えば、好ましくは分子量が 1000 以下、特に
100 から 500 のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのよ
うなポリアルキレングリコール;例えばエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブチレングリコール、トリエチレングリコールまたはジエチレングリコー
ルのような、炭素原子が 2 から 6 個のアルキレングリコール、及びチオグリコ
ール及びそれらのジグリコール等価体;例えばグリセロール、1,2,6-ヘキサント
リオールのようなポリオール;例えば 2-メトキシエタノール、2-[2-(2-メトキ
シエトキシ)エトキシ]エタノールまたは2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エ
タノールのような多価アルコールの低級アルキルエーテル;例えば 2-ピロリド
ンまたはN-メチルピロリドンのような複素環式ケトンが好ましい。液体媒質は
、一から五種の水溶性有機溶媒を含むのが好ましく、一、二または三種のそのよ
うな溶媒を含むのがより好ましい。
水溶性有機溶媒は、複素環式ケトン、特に 2-ピロリドンまたはN-メチルピロ
リドン;アルキレングリコールまたは多価アルコールの低級アルキルエーテル、
特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び
2-メトキシ-2-エトキシ-2-エトキシエタノール;分子量が 100 から 500 のポ
リエチレングリコールから選択するのが好ましい。好ましい特定の溶媒混合物に
は、ジエチレングリコール、2-ピロリドンまたはN-メチルピロリドンのいずれ
かと水との二種から成る混合物があり、その重量比は上記の通りである。
適当なインキ媒質の例が、米国特許第 4,963,189号、米国特許第 4,703,113号
、米国特許第 4,626,284号及び欧州特許出願公開第 425,150A号にある。
液体媒質が水または水性媒質の場合、それは、着色ポリマーの分散を助ける親
水性界面活性剤を含むのが好ましい。適当な分散剤には、例えばポリ(アルキレ
ンオキシ)鎖のような親水性の鎖を有する芳香族系のもの;ホモ-またはヘテロ-
ポリ(アルキレンオキシレート);リグニンスルホネート;及びホルムアルデヒド
-アリールスルホン酸付加物が含まれる。
液体媒質は有機溶媒でもよく、これは、支持体の性質及びそのインキに求めら
れる性能によって、極性が高くても低くてもよい。このような非水性インキは、
分散した着色ポリマーを安定化させる助けとなる分散剤を含むのが好ましい。適
当な分散剤には、有機溶媒の液体に親和性のあるポリエステル及び/またはポリ
エーテル鎖、及び着色ポリマーに親和性のある基を有するものが含まれる。この
ような分散剤の例には、非極性溶媒中で好ましいSOLSPERSE 13000、及
び極性媒質(例えばエステル及びケトン)中で好ましいSOLSPERSE 240
00が含まれる。
またインキには、支持体への着色ポリマーの接着性を高めるため、皮膜形成樹
脂または皮膜形成剤(film−forming ingredients)、
特に空気硬化性または熱硬化性の皮膜形成樹脂が含まれるのが好ましい。どの皮
膜形成樹脂が好ましいのかは液体媒質の性質によって決まるが、一般に、水性及
び非水性液体媒質には異なる種類の樹脂が用いられる。
水及び水性インキ中で用いる際に好ましい皮膜形成樹脂は、空気硬化性のアク
リル樹脂(例えばNEOCRYL樹脂)、及び光硬化性のポリエステルまたはウ
レタン樹脂(例えばNEORAD樹脂)である。
非水性インキ中で用いる際に好ましい皮膜形成樹脂は、例えばSYNOLAC
名称で市販されている樹脂のようなアルキド樹脂(空気硬化性またはイソシアネ
ート硬化)、熱硬化性アクリル樹脂(例えばSYNACRYL)、例えばUNI
THANEの名称で市販されている樹脂のようなウレタン樹脂(熱硬化性)、及
び、例えばSYNOLACの名称で市販されている樹脂のようなポリエステル樹
脂(熱硬化性)である。インキ製造の際、着色ポリマーは微粉砕され、好ましく
は界面活性剤の存在下に液体媒質中に分散されるのが好ましい。
皮膜形成剤は、一種の有機系モノマー、コモノマー、プレポリマー、未硬化ポ
リマーまたはコポリマーの混合物、及び重合及び/または架橋が可能なその混合
物を含むのが好ましい。異なるポリマー前駆体の混合物を用いる場合、それらポ
リマー前駆体のうちの少なくとも一種は、着色ポリマーと反応しうるのが好まし
い。ポリマー前駆体の例には、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド
、メタクリルアミド、エポキシド、エステル、ウレタン、イソシアネート、アル
コール、ビニルアルコール類、イミド、アミド、フェノール類、アセテート、カ
ーボネート及びそれらの誘導体、アミン、カルボン酸及びオルトホルムアルデヒ
ド縮合体、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミンホルムアル
デヒド樹脂縮合体、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド樹脂
、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネー
ト樹脂、ウレタン樹脂及びそれらの誘導体とコポリマーとが含まれる。
皮膜形成剤は、アクリルアミド、エポキシド、エポキシ樹脂、アクリルアミド
/エポキシ樹脂系、メラミンホルムアルデヒド樹脂縮合体、ポリエステル、アル
キド樹脂、ヒドロキシル化またはカルボキシル化されたアクリル樹脂、ヒドロキ
シル化されたアクリル-メラミンホルムアルデヒド系から選択した、特にアクリ
ルアミド/エポキシ樹脂系及びヒドロキシル化されたアクリル-メラミンホルム
アルデヒド系から選択した一種以上の成分を含むのが好ましい。
皮膜形成剤の重合は、着色ポリエステルの製造に関連して先に述べたように、
化学的、光化学的または熱的方法によって起こるのが好ましい。硬化は熱的硬化
が好ましく、その条件は着色ポリマー製造の際に記載した通りである。
さらにインキは、そのインキの色彩を改良するために、一種以上の顔料を含ん
でいてもよい。しかしながら、その着色ポリマーが濃く、鮮やかで、色あせしな
い色彩を特徴としている場合、それは、これらの好ましい特徴を何らかの形で減
ずるような顔料は含まない方がよい。
本発明のもう一つの特徴は、支持体に本発明のインキまたは着色ポリマーを塗
被することを含めた、支持体の着色法を提供することにある。
インキは、プリント法によって支持体に塗被することが可能で、好ましいのは
フレキソ(flexographic)、オフセット平板、グラビア、凹板、インキジェットま
たはスクリーンの各印刷法による塗被である。得られたプリントの映像は、耐久
性に優れ、鮮やかで色が濃い。インキジェットプリントの原理及び方法は、当該
技術分野において公知であり、例えばP.Gregory著のHigh Technology Appl
ications of Organic Colorants、9章 ISBN 0-306-43637-Xに記載があ
る。
適当な支持体には、平面であるか、またはその上に処理するとインキの特性が
高められるような、透明または不透明の、例えば紙のようなもの、布及びオーバ
ーヘッドプロジェクターのスライドがある。本発明のインキは、如何なる前処理
も行っていない支持体上にすら、優れた特性を与えるという利点を持っている。
もう一つの局面において、本発明は、好ましくはプリント法、特に好ましくは
インキジェットプリント法により、着色フィルター毎にそれに適したやり方で、
透明な支持体に本発明の赤、緑及び/または青インキを塗布することを含む、光
学フィルターの製法を提供する。このインキには、上記の皮膜形成剤を含むのが
好ましい。
透明な支持体には、ガラスまたはプラスチックが好ましく、プリント法はイン
キジェットプリント法を含むことが好ましい。
着色フィルターとしても知られている光学フィルターは、液晶ディスプレイに
用いられ、例えば小さなテレビ受像機に用いられる。
好ましい光学フィルターの製法には、次のステップ:
(a)透明な支持体上に、多数の離散フィルター領域(discreat filter regions
)を形成すること(これら領域の少なくとも一領域は、本発明の赤、緑または青
インキを用いて着色されている);及び
(b)ステップ(a)で得られたものを加熱または熟成させ、インキから液体媒質
を取り除くこと
が含まれる。
ステップ(a)に記載の離散フィルター領域は、支持体上にインキを均一に塗被
し、続いてそのインキの一部を取り除いて望むようなのフィルター領域にするこ
とにより、形成可能である。別法として、その離散フィルター領域は、支持体上
にインキを望ましいやり方で、好ましくはインキジェットプリント法によって塗
被することによっても形成可能である。
好ましい光学フィルターには、赤、緑及び青の素子から成る三種で被覆した透
明な支持体が含まれる。
支持体上に離散フィルター領域を形成するのに用いられる方法がインキジェッ
トプリント法の場合、三つ原色(赤、緑及び青)の全てを同時にプリントし、フ
ィルター素子を三組に、または好きなように組分けすることが可能である。
本発明を以下の実施例により、さらに説明する。実施例1 着色ポリマーの製造
次の構造:
を有するフタロシアニン染料(0.1 g)及びトリ(メトキシメチルアミノ)-1,3,5-
トリアジン(ブタノール中 90%;0.25 g)を水に溶かした溶液を、濃塩酸を用
いてpH 3-4 に調節し、これを 45 分間、50-55℃で温めた。この間に、着色ポ
リマーは溶液から沈殿した。これを冷ました後、着色ポリマーを濾取した。未反
応の染料を除去するために、この着色ポリマーを稀水酸化ナトリウム溶液と激し
く撹拌して、水で洗浄し、さらに過剰のトリアジン化合物を除去するためにアセ
トンと激しく撹拌してから回収し、乾燥させると、鮮やかなシアン色の着色ポリ
マーが 0.2 g得られた。インキの製造
ベータ-ナフトール-ポリエチレンオキシド付加物(0.5 g)を含む界面活性剤
の存在下、ガラスビーズ(直径 5 mm)及び実験室用振盪機を用い、先の着色ポ
リマー(1 g)を水(3.5 ml)中に分散させた。得られたインキを紙の上にバー
コート(bar-coated)すると、瞬間耐水堅牢度が 100%の鮮やかなシアンプリント
が得られた。実施例2−4
実施例1に記載の一般法に従い、トリ-(メトキシメチルアミノ)-1,3,5-トリア
ジンを、次の式:
実施例2 Q=p-C6H4OCH2CH2OH
実施例3 Q=m-C6H4SO2NHCH2CH2OH
実施例4 Q=m-C6H4SO2N(CH2CH2OH)2
で表される染料と反応させることにより、さらに着色ポリマーを製造した。実施例5−7
フタロシアニン染料の替わりに、式 12、13、14:
の染料を用いること以外は実施例1の方法を繰り返した。